豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

飯塚翔太

実業団選手権最終日~やはりツートップ、山縣亮太の10秒00


『第65回全日本実業団対抗陸上競技選手権』3日目の“目玉”は、男子100m。
予選・準決勝・決勝の3レースを1日で消化するハードスケジュールの中で、実業団の「大将」山縣亮太が見事に完全復活、学生「大将」の桐生祥秀が出したばかりの日本記録9秒98に事実上肩を並べる10秒00のPB(+0.2m)で優勝を飾りました。
10秒0台を6人が記録するという、史上空前の群雄割拠ぶりを呈していた今年の日本短距離界でしたが、世界的にはシーズンオフを迎えた9月に入り、数年来9秒台への先陣を競ってきた桐生・山縣の二枚看板がきっちりとその存在を印象付ける形となりました。
山縣はレース後のコメントで「今年中に9秒台」への意欲を語っており、10月の国体、あるいは地区記録会などを含めて記録を狙うレースをあと2,3計画しているようです。


<2017年男子100mパフォーマンス10傑+α>

 ① 9"98(+1.8) 桐生 祥秀(東洋大4) 9/9 日本インカレ決勝(福井)
 ② 10"00(+0.2) 山縣 亮太(SEIKO) 9/24 全日本実業団決勝(長居)
 ③ 10"04(+1.4) 桐生 3/11 サマー・オブ・アスレティックスGP(キャンベラ)
10"04(-0.3) 桐生 4/29 織田記念決勝(広島)
 ⑤ 10"05(+0.6) サニブラウン・ハキーム(東京陸協) 6/24 日本選手権決勝(長居)
10"05(-0.6) サニブラウン 8/4 世界選手権予選(ロンドン)
 ⑦ 10"06(+1.3) 山縣 3/11 サマー・オブ・アスレティックスGP(キャンベラ)
10"06(+0.4) サニブラウン 6/23 日本選手権予選(長居)
10"06(+0.5) サニブラウン 6/23 日本選手権準決勝(長居)
 ⑩ 10"07(+1.8) 多田 修平(関西学院大3) 9/9 日本インカレ決勝(福井)
 ⑪ 10"08(+1.9) 飯塚 翔太(ミズノ) 6/4 布施スプリント(鳥取)
10"08(-0.9) ケンブリッジ飛鳥 6/23 日本選手権予選(長居)
10"08(+1.9) 多田 6/10 日本個人インカレ決勝(平塚)
10"08(-0.1) 山縣 3/11 サマー・オブ・アスレティックスGP(キャンベラ)
10"08(-0.5) 桐生 4/23 吉岡記念決勝(出雲)

 ※  9"94(+4.5) 多田 6/10 日本個人インカレ準決勝(平塚)
 9"98(+5.1) ケンブリッジ 4/15 (フロリダ州クレアモント)

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最終日のリザルト上位は、次のとおりです。

― 男子 ―
◇100m(+0.2)
 ① 10"00 山縣 亮太(SEIKO) GR
 ② 10"24 飯塚 翔太(ミズノ)
 ③ 10"29 女部田 祐(筑波銀行)

◇400m
 ① 46"79 東 魁輝(NTN)
 ② 46"93 山田 淳史(山口FG)
 ③ 47"03 板鼻 航平(リニアート)

◇5000m(タイムレース3組)
 ① 13'24"07 ジョナサン・ディク(日立物流)
 ② 13'33"72 レダマ・ウェズレイ(SUBARU)
 ③ 13'34"48 アッバイナ・デグ(安川電機)
 ⑦ 13'41"30 横手 健(富士通)

◇110mH(+1.1)
 ① 13"61 増野 元太(ヤマダ電機)
 ② 13"65 高山 峻野(ゼンリン)
 ③ 13"65 大室 秀樹(大塚製薬)

◇4×400mR
 ① 3'08"82 ミズノ(松下・飯塚・川面・野澤)
 ② 3'12"19 リニアート
 ③ 3'13"52 新潟アルビレックスRC

◇棒高跳
 ① 5m60 山本 聖途(トヨタ自動車)
 ② 5m50 澤野 大地(富士通)
 ③ 5m20 逸見 俊太(近大高専教)
 -  NM 荻田 大樹(ミズノ)

◇三段跳
 ① 15m93(+0.5) 石川 和義(長野吉田高教)
 ② 15m86(-0.1)  花谷 昂(ユメオミライ)
 ③ 15m57(-0.4)  濱口 隆翔(まるよし)

◇砲丸投
 ① 17m92 畑瀬 聡(群馬綜合ガードシステム)
 ② 17m76 山元 隼(フクビ化学)
 ③ 17m45 中村 太地(落合中教)

◇やり投
 ① 77m37 田原 紘樹(京大職)
 ② 76m64 寒川 建之介(大体大職)
 ③ 73m23 高力 裕也(倉北高教)



― 女子 ―
◇100m(+0.1)
 ① 11"65 名倉 千晃(NTN)
 ② 11"78 青木 益未(七十七銀行)
 ③ 11"79 市川 華菜(ミズノ)

◇400m
 ① 54"13 青木 沙弥佳(東邦銀行)
 ② 54"54 武石 この実(東邦銀行)
 ③ 54"91 樫山 楓(NTN)

◇5000m(タイムレース2組)
 ① 15'09"68 ローズメリー・ワンジル・モニカ(スターツ)
 ② 15'16"36 シュル・ブロ(TOTO)
 ③ 15'20"11 福田 有以(豊田自動織機)
 ㉑ 15'55"66 福士 加代子(ワコール)

◇100mH(-0.5)
 ① 13"33 青木 益未(七十七銀行)
 ② 13"55 柴村 仁美(東邦銀行)
 ③ 13"56 清山 ちさと(いちご)

◇4×400mR(出場1チーム)
 ① 3'52"57 七十七銀行(倉沢・佐藤・伊藤・齋藤)

◇走高跳
 ① 1m79 福本 幸(甲南大職)
 ② 1m76 平山 遥(高稜高教)
 ③ 1m73 照井 はるか(埼玉医科大職)

◇三段跳
 ① 13m40(+0.9) 宮坂 楓(ニッパツ)GR
 ② 12m94(-0.3) 喜田 愛以(ミライトテクノ)
 ③ 12m80(+0.2) 中野 瞳(マグノリア)

◇円盤投
 ① 47m01 敷本 愛(新潟アルビレックスRC)
 ② 43m45 中村 枝理子(鹿児島きもつき)
 ③ 43m10 中田 恵莉子(四国大職)

◇ハンマー投
 ① 64m16 渡邊 茜(丸和運輸機関)
 ② 61m93 勝山 眸美(オリコ)
 ③ 59m27 佐藤 若菜(東邦銀行)

◇ジュニア3000m
 ① 9'08"01 一山 麻緒(ワコール)
 ② 9'09"13 渡邊 菜々美(パナソニック)
 ③ 9'18"56 中舎 朱音(積水化学)

ロンドン世界選手権観戦記 ⑧ ~チームJAPANのこれから


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10日間の2017IAAF世界選手権が終って、私のブログもすっかり静かになりました。終盤、無駄に長すぎるTV放映時間(おそらく男子400mリレーのVTRが10回は流れたでしょうね)と仕事と飲み会が錯綜した結果、更新が滞ってしまいましてすみません。
日本にとっては、400mRの銅メダル、男子50km競歩の銀・銅メダル、さらにはDay7の男子200m7位入賞と、終盤にいいところが集中した結果となったわけですけれども、全般的にはメダル3個はよしとして、入賞5名、ほか決勝進出者なし(一発決勝種目除く)という成果は、目標達成には程遠いものだったと思われます。
今回の世界選手権は、事前に何度か触れましたように、世界の陸上界がオリンピック翌年ということもあってか、やや停滞気味な中で行われました。ダイヤモンドリーグなどを見ていても、トップレベルの競争が、実は意外に日本記録などと近いレベルのところで行われている、ということがままあったのです。
典型的だったのが男子の100m、200mで、あのボルトをはじめとする別世界にいたスプリンターたちが、日本選手が手を伸ばせば届くような距離にいた、というところがありました。
ただ、世界の停滞に輪をかけて、日本選手の多くが実力を発揮できませんでした。100mのサニブラウンと400mHの安部孝駿は「ああっ!」の瞬間がなければあるいは、という惜しさはありましたが、その他はほぼ壊滅状態。地区インカレ・レベルの記録に終始した男子400m、4×400mRをはじめ、箸にも棒にも掛からない結果が多過ぎたようです。「なぜそうなったのか」を、単に「実力不足」の一言で片づけずに研究することは、とても重要な課題です。
逆に、そうした研究が積み重ねられ、チームで総力を挙げる結果が実を結んだ種目が、400mリレーと競歩だった、ということが言えるかもしれません。

典型的な個人スポーツである陸上競技に、チームとしての戦いを取り込んでいくことは、リレーに限らず今後の大きなテーマとなっていくことでしょう。
同じ個人スポーツの競泳では、早くからそうした意識が浸透し、「トビウオJAPAN」というチーム名称も定着しています。
種目は違えど同じプールで競技をし、一人がさまざまな種目を掛け持ちすることも多い競泳は、陸上に比べて仲間意識・共有意識が容易に形成される、ということはあるでしょう。ですが、個人競技と言っても一人だけの力で強くなることには限界がある、コーチや仲間や裏方の人々とのコミュニケーションが、個人の成長を大いにサポートするということに早くから着目してきたのが日本の競泳界です。選手選考にまつわる悶着を一掃するなど周辺の環境を整備し、チーム意識を高めることでこんにちの「世界と戦う」日本競泳陣を作り上げてきたことは、ひところ競泳が陸上競技と同じく1個のメダル獲得に四苦八苦するような日本スポーツ界の“お荷物”であったことを思い返せば、その努力と成果は明らかなのです。
激しい競争を経て同じチームになったからには、先輩が後輩の面倒を見たり、後輩がサポートに奔走し力いっぱいの応援に声を涸らしたり、叱咤激励し合うことの効果は計り知れないと思います。そうしたチーム精神は、チームJAPANの大先達である古橋廣之進氏のニックネームから採った「トビウオ」のチーム名と、国際大会ではおなじみとなった士気鼓舞のパフォーマンス「ワンパ」に象徴されています。

陸上競技も競泳と同じように、ということはなかなか難しいかもしれません。短距離、中長距離、ハードル、跳躍、投擲、混成、競歩といった種目ブロックの隔たりがあり、またたった一人で海外遠征に出向くこともままある陸上で、どうやって仲間意識を醸成していけというのか?…まあ、方法はいくらでもあります。基本的な考え方としては、チームJAPANがあくまでも一つの「陸上部」である意識を共有すること、そして一人では強くなれない、みんなであいつを強くしようという意識を共有すること、それでスタートすればよいのです。もちろんそれは、チームの指導者たる立場の人々が率先して持たなければならない意識です。
同時に、種目ブロックごとのチーム体制にも、いっそうの工夫と努力が傾けられなければなりません。

競歩ブロックにチーム意識が強くてマラソンにはそれが欠けている…それは明らかに、実業団という日本の長距離・ロードレース界を支配する構造に起因している弊害です。もちろん、企業のバックアップに支えられた実業団は、個々の競技環境や実力養成に大いに貢献しているのも事実です。実業団どうしの競争と協力、そこのところを大人の話し合いをじっくり重ねてうまくやってもらえたら、頓挫した「日本マラソン・ナショナルチーム」の構想も再び日の目を見ることができるのではないでしょうか。
そしてまた、競泳の平井伯昌氏のような指導力と統率力、政治力を兼ね備えたリーダーシップを、瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーに、そんな長ったらしい肩書はやめて「瀬古ヘッドコーチ」として発揮してもらいたいものだと思います。

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チームJAPANといえば、リオ五輪に続いて今回も、400mリレーをメダルに導いた短距離ブロックのチーム戦略が大きくクローズアップされています。
今回、400mリレー・チームは選手6人。コーチ陣は短距離・リレー担当オリンピック強化コーチの苅部俊二氏に、土江寛裕・小島茂之の両コーチ。

ご存知のように、陸上競技のリレーでは最大6人を1チームとしてエントリーし、そのうちの4人を予選・決勝のメンバーとして出場させることができます。したがって、予選から決勝に向けて、2人までを入れ替えることが可能となります。
従来、戦力に余裕のない日本チームは、予選からその時点でベストと考えられるオーダーで戦うことが当たり前となっていました。現在でも、同じです。
ところが今回、個々の走力においては現状ナンバーワンと目されるまでに成長したサニブラウン・ハキームが200m決勝でハムストリングスに軽い故障を発生し、当初計画されていた1走での起用を見送られることになりました。代役として起用されたのが、今大会の100mでスタートダッシュの鋭さを世界に印象付けた多田修平です。
予選を6番目のタイムで無事通過した後、今度は従前から脚部に不安を抱えていたケンブリッジ飛鳥に代わって、今回個人種目では標準記録に到達できなかった藤光謙司が投入されることになりました。
期せずして、日本チームは6枚のカードをすべて使う総動員体制でリレーの決勝に臨むことになったわけです。

400mリレーリレーのメンバーは、単純に100mの走力の優れた者が選ばれる、というわけではありません。私があえて「4×100mリレー」ではなく「400mリレー」と表記し続けているのは、「400mリレーは4人が100mずつ走る競走ではない」というかねてからの考えによるものなのです。
(このあたりの論証は、1年前に投稿した以下の記事をご参照ください)
http://www.hohdaisense-athletics.com/archives/6261252.html

多田はスタートの鋭さは世界でも一流であることを示したとはいえ、その分100mないし110mの距離における終盤のスピードには不安があり、それは彼が200mではほとんど試合経験のない100mに特化したスプリンターだということにも表れています。多田が当初から本番メンバー入りの構想に入っていなかったのは、当然と言えば当然だと私には思えましたが、走力の調子は上々と見られます。
また藤光は、6人の中で唯一100mのベストが10秒23と見劣りがするものの、引退した朝原宣治の後任として2009年にアンカーに抜擢されて以来、2015年のワールドリレーズ銅メダル・メンバーでは2走を務めるなど、代表経験は豊富で最も信頼されるバトンワークの持ち主です。
バトンワークの習得に不安の残るサニブラウン、調子の上がらないケンブリッジ、2人に代えて総合的に遜色のない2人のサブを投入できたというのが、日本のチーム力の現れ、その1でした。

その2は、予選通過したとはいえ日本記録からは大きく遅れる38秒21というタイムをいかに修正してメダル圏内まで押し上げるか、というチーム戦略に発揮されました。(結果的には予選のタイムでも同じ着順に入れたのですが、あくまでも結果論です)
リオでも、実は2走から3走、3走から4走のバトンパスは詰まり気味、つまり受け手のスタートが若干遅れ気味でテイクオーバーゾーンの半ばでバトンを受ける形になっていたのが、同じメンバーによる今回も課題として残っていました。1走の多田も、初代表だけに予選のままでよいのか疑問が残ります。このタイミングはスタートマークを変えることで調整するわけですが、一歩間違えると今度はバトンが届かないというミスのリスクが高まります。話し合いの結果、3走までは予選より半足長マークを遠ざけ、4走の藤光は練習時よりも1足長伸ばしたのだそうです。これを躊躇なくやってのけたのが、年間何十日もの合宿を重ね、経験と情報を集積した成果であったことは間違いありません。

実業団や大学といった本来の属性を超えて、チームJAPANとして普段から行動することによって培ってきた日本ヨンケイ・チームの強さが、改めて浮き彫りになった今回の世界選手権でした。
ちなみに、私は当日前々から約束があった宴席に出ていまして、ライブで見られないリレーの結果にソワソワと気を揉んでいたんですけど、そこは陸上観戦半世紀のキャリアにモノを言わせ、
「イギリスが優勝するであろう」
と大胆な予言をカマしていました。
今回のイギリス・チームはチジンドゥ・ウジャをはじめとして戦力は充実、特に200m4位のネザニール・ミッチェル‐ブレイクとサニブラウンより速いタイムながら準決勝敗退したダニエル・タルボットを投入してきたことで、リオ五輪以降、地元開催の今回に向けてヨンケイの本格的強化と研究に取り組んでいることが伺えたからです。(ヨンケイにロングスプリンターを投入するのは、日本の“隠し玉”的な高等戦略なのです)
100mの金・銀を擁するアメリカは例によってバトンワークの成否は五分五分、ボルト・ブレイクがもはや「超人」ではなくなったジャマイカは、日本にとっても与しやすい相手に思えました。いちばんの強敵はイギリスだろう、と思ったわけです。

今や超人不在となった短距離界、「チームのチカラ」は、ますます日本が頂点に駆け上がる可能性を大きくしていくことになるでしょう。その一方でイギリスのように、他の国々もこうしたことに少しずつ目覚めてくるに決まっています。
来年5月の「ワールドリレーズ」では、ますます面白いヨンケイが見られることを楽しみにしています。蛇足ながら、日本ヨンケイの「韋駄天スプリンターズ」という愛称は、さすがにTBSでも一言も使いませんでしたが、もう少しどうにかならないものですかね?

18歳キーム、天下を獲る!


◇男子100m決勝(6月24日20時38分・W+0.6m)
① 10"05=CR サニブラウン・アブデル・ハキーム(東京陸協)RT0.156
② 10"16 多田 修平(関西学院大3) 0.140
③ 10"18 ケンブリッジ飛鳥(NIKE) 0.140
④ 10"26 桐生 祥秀(東洋大4) 0.131
⑤ 10"38 川上 拓也(中央大4) 0.146
⑥ 10"39 山縣 亮太(セイコー) 0.150

こんな結果を1か月前に予測した人がいたとしたら、お目にかかりたいくらいですね。
5月の時点で、男子100mの「標準」到達者は桐生祥秀と山縣亮太の2人だけ。まあそのうち、ケンブリッジ飛鳥も来るだろう。日本選手権の上位3人=ロンドン代表はこの3人で決まり。あとは誰が勝つのか、だよね……てなことを皆さん思っていたはず。もちろん私もです。
18歳のサニブラウン・ハキームが、10秒0台を3発揃えて文句なしの頂点に立ちました。2着は2週間前の日本個人インカレで急速に頭角を顕した多田修平。日本中を感動の渦に叩き込んだリオ五輪ヨンケイ・メンバー4人のうち、2人が100m代表の座を滑り落ちることになってしまうとは…。
なんという時代の奔流というやつでしょう。そして、なんという日本男子スプリント界の面白さでしょうか。長く焦らされる9秒時代への期待感、誰が勝つのか分からない選手層の充実ぶり、そして新たなリレー・チームへの期待。こんな時代に陸上競技を楽しむことが出来ている私たちは、なんと幸せなんでしょうかね?
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予選で久々にサニブラウンが国内で走る姿を目にした時、「うわ、キームでかくなったな!」と驚きました。そう思いませんでしたか?(追記:5月のGG川崎でも見ていたはずなのですが、その時はあまり注目していなかったせいか気付きませんでしたね。)
昨シーズンは故障でリオ選考会もU-20 もインターハイも棒に振っていたわけですから、日本選手権は2年ぶり。高校2年時に大嶋健太(東京高→日大2)と競っていた頃の細身のイメージは一変していて、その雄大な体躯と一見ゆったりとした走りはまさに「和製ボルト」。これは、モノが違います。
どちらかというと「もともとは200mランナー」のイメージなのも、ボルトと同じ。思い返せば世界の頂点に駆け上がった2008年北京オリンピックの時、ボルトは大会直前まで100mに出場することを逡巡していたほどの、200mのスペシャリストだったんですから。
若くして「超高校級」とか騒がれ、その後大きく成長することなく齢を重ねていったアスリートは、たくさんいます。たとえば桐生にしたって、いまだ発展途上とは言いながら100mの記録に限って言えば高校時代から伸びていないのです。そこへ行くとこのサニブラウン、もしかすると「世界のファイナリスト」という日本人スプリンターの悲願を、いとも簡単に達成してしまうのではないかというくらいの底知れなさを感じます。

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感想(2件)


多田の勢いも見事でしたが、決勝は得意のスタートでサニブラウンに先行できなかったのが悔しかったですね。両手を大きく広げた、いわゆるロケットスタートからのダッシュは、確かに急成長の証と言えます。インカレでの快記録は条件に恵まれた部分も多々あったかと思っていたのですが、現実に「3強」を総なめにしたわけですから、これもまた文句なしです。

4着の桐生には、まだリレー要員としての代表入りの可能性が残されているでしょう。何度も指摘してきたとおり、100mの速さだけでは務まらないのが400mリレーという種目ですから、サニブラウン、多田という“新顔”を加えたチーム編成は今一つ心もとないというのが間違いないところ。200mの結果次第ではありますが、現時点で200の代表資格を持っているのはサニブラウンと飯塚翔太だけなので、ここに藤光謙司か原翔太が加わったとしても、熟練メンバーとして桐生が招集される可能性は濃厚だと思います。(本人は「世界選手権をテレビで観ることになるとは…」とか言ってるらしいですが)

山縣亮太は、「仕上がっていなかった」の一言でしょう。技術的には間違いなく日本一の100mランナーだと思っていますので、今季は故障の回復と基礎体力の再構築に専念して、捲土重来を期待します。

素晴らしき日本の男子スプリント!次のステージは、一人の先駆者を皮切りに、次々と「9秒台」の領域になだれ込んでいく「その時」を待ちたいと思います。