豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

陸上用語

陸上用語のまとめ ②(トラック編)



だいぶ前に投稿した『陸上用語のまとめ(ごく基礎編)』というネタが、常に人気記事の上位に居続けるもんですから、「そういや、基礎編から先を放ったらかしにしてたな。続きを書くべきか…」などとは考えるものの、実は「初級編」とか「中級編」とかって計画があったわけでもないので、ついついそのまま時が過ぎておりました。
さまざまな用語については、これまでの記事の中で細かく触れてきたことでもありますが、そうした説明の重複も含めて、改めて思いつくままに羅列してみたいと思います。


◇トラック(track)
陸上競技場の、レースを行う走路のこと。日本における第1種・2種公認競技場は、すべて1周400メートル。ホームとバックの直線は各80mで、第1・第2コーナーと第3・第4コーナーの曲走路はそれぞれ120mあります。(曲走路の長さは、トラックとフィールド部分を区切る縁石の外側・30㎝の位置で計測)
IAAF公認競技場(クラス1・2)も1周400mですが、直線部分と曲走路の配分は必ずしも日本と同じではなく、直線の短い競技場や、逆に長い分カーブが急になっている競技場などが存在します。
これら公認競技場のサーフェス(表面)は、合成ゴムまたはポリウレタン素材によって舗装されている(全天候型舗装)必要があります。全天候型サーフェスが初めて登場したのは1968年メキシコシティ・オリンピックの会場となったエスタディオ・オリンピコ・ウニベルシタリオで、その製品名から「タータン・トラック」と呼ばれ、現在でも「タータン」が「全天候型」の代名詞としてしばしば用いられます。
全天候型が登場する以前は、アンツーカー(レンガを砕いたもの)やシンダー(粘土に石炭殻をまぶしたもの)など、固く水はけの良い土で舗装されたトラックが一般的でした。ちなみに、私が在住する町(市ではない)の町営グラウンドは、いまだに400mのシンダー・トラックです(笑)

近年建設・改修された競技場では、9つのレーン数が確保され、通常8名以下で行われるセパレート・レーンでの競走の際に使用頻度の高い第1レーンの使用を避ける、予選等の結果次ラウンド進出者が定員を超えた場合に対処できる、等のメリットをもたらしています。ただ、ダイヤモンドリーグなど著名な大会や世界選手権が開催される競技場でも、8レーンしか設けられていないトラック、リオ五輪会場のようにホームストレートのみ9レーンとなっているような“一流”競技場も、たくさん存在します。

◇トルソー(torso)
文字どおり「胴体」のことで、ジャンルによっては上半身のみの彫刻や衣料品陳列用の半身マネキンのことを言ったりもしますが、陸上競技では「頭部および四肢を除いた胴体部分」のことです。フィニッシュラインに到達することでフィニッシュと認められる体の部位であり、言い換えれば頭や手足が先に到達しても、まだフィニッシュとは見なされません。(極端な例ですが、ゴール寸前で倒れてしまい、手を伸ばしてゴールラインに触れたとしても、まだ「ゴールイン」ではないのです)

◇ゴールテープ
現在ではマラソンなどのロードレースやトライアスロンでしかお目にかかれない、ゴールライン上の胸の高さくらいの場所に張られる、大会名の記載された帯のようなもの。「ゴールイン」の象徴として、1着の選手だけが体で触れる場合もあれば、上位何着までか繰り返し張り直される場合もあります。
「ゴールテープを切る=レースに勝つ」という言葉があり、中には真ん中から「切れる」ように細工されたテープもありますが、多くは選手の通過によって切れることはなく、両側で保持する係員の力加減によって、地面にハラリと落ちるようになっています。

手動計時の時代にはトラック・ロードすべてのレースで、1着の選手を判定する目安としてゴールライン上の平均的な胸の高さのあたり(だいたい1.3mくらい?)に、白い毛糸が張られていたのが「ゴールテープ」と呼ばれていました。ランナーが走り抜けると、簡単に切れるほどのものです。(トラック以外がゴールになるロードレースの場合は、現在のような幅広のゴールテープを使用していましたが、大会名の記載などはなかったと思います)
ゴールの横にリールのようなものを装着した支柱があり、そのリールから毛糸を引き出して反対側の支柱に固定してピンと張った状態で選手の到着を待ったわけですね。先頭の選手と周回遅れの選手が錯綜する長距離種目では、なかなか大変な作業でした。映画『東京オリンピック』では、10000m競走の激しい優勝争いがフィニッシュに近付いた時、周回遅れの選手を掻き分けるように慌ててゴールテープを張る役員の姿がしっかりと記録されています。
1着の目安とはいっても、必ずしもトルソーで毛糸に触れるとは限らないので、ほんと、あくまでも目安です。顎や鼻柱で毛糸に触れた瞬間の写真があったのを覚えていますし、メキシコシティ・オリンピックのマラソンで優勝したマモ・ウォルデ選手のように、手を伸ばして引きちぎる、などという光景もありました。
むろん、テープを切ったけれども判定の結果僅差で2着だった、というケースもあったとはいえ、「ゴールテープを切る」というのはおおむね最先着選手の特権であり、「1着になる」ということの言い換えとして通用していたものです。

◇フライング・スタート
多くの競走競技で「不正スタート=スタート合図よりも早くスタートする反則行為」の意味で定着しており、日常会話でも、少々逸って行動を起こす様子を揶揄する場合などに使われますが、これらは和製英語です。
本来の「flying start」は、「助走をつけてスタートする行為」のことで、陸上競技ではリレー競走における第2走者以降のスタートがこれに相当します。陸上以外では、自転車競技の「200mフライングラップ」(スプリント競走の予選として行われる)やモータースポーツでの「ローリングスタート」、ボートレース(競艇)のスタート方式などがあります。
一般に言う「フライング」は英語では「false start(フォールス・スタート)」と呼びます。和製英語というのは要は新しい日本語ですから、別に「その言い方は間違っている!」などと神経質になる必要はありませんが、正しい訳語は知っておくべきでしょう。
ちなみに、本来の意味での「flying start」の対義語=静止した状態からのスタートは、「standing start」です。これも、「手を地面に着かない姿勢からのスタート」という別の意味で使われることが多いので、要注意。

◇ゼッケン/ナンバーカード/ビブス
陸上競技大会出場選手は、個々のIDを示す「ナンバー」を表記したカードを体の前後に装着する義務があります。(走高跳・棒高跳のみ片面だけでOK) 昔はこれを「ゼッケン」と呼んでいましたが、1996年に日本陸連のルールが改定されてこの用語は廃止され、「ナンバーカード」と称するようになりました。
さらに近年は大規模大会でフロントのカードには選手の個人名を表記することが一般的になり、「ナンバーカード」とは言えなくなってしまったため「ビブ(ビブス)」という呼称に代わってきています。ただ日本では「ゼッケン」という言葉の認知度が高かったため、現在でも市民マラソン大会などではこの呼称を用いる場合が見られます。
「ゼッケン」は本来は馬術用語で、競馬などでは今でも使われているようです。
ナンバーカード(ビブス)は、大会に協賛するスポンサーにとっては極めて重要な広告素材となります。レース中に故意に外した場合はDNFの意思表示と判断されます。

同じく1996年に廃止された用語に、選手の走路を示す「コース」があります。こちらは「レーン」という用語で完全に定着しています。



◇テイクオーバー・ゾーン

リレー競走でバトンパスを行うことのできる「受け渡し(テイクオーバー)」区域。400mリレーの場合、スタートから100m・200m・300mの各地点から前後10mずつ、合計20mの区域がこのゾーンになります。これより手前で受け渡ししたり、ゾーンを過ぎてからバトンパスが完了した場合などは、そのチームは失格となります。また途中でバトンを落とした場合は、落とした地点に落とした本人が戻ってバトンを拾えば(あるいは拾ってから落とした地点に戻れば)、レースを再開することが認められます。
また、400mリレーでバトンを受け取る走者に限り、ゾーンの開始線よりも最大10メートルまで手前の位置からスタートすることが許されます。つまり第2走者の場合で言うと、80m地点から助走を開始して90m地点から110m地点までの間に第1走者からバトンを受け取る、ということになります。
駅伝における「タスキ・リレー・ゾーン」も基本的なルールは同じで、稀に「タスキ引き継ぎ違反による失格」という裁定が下ることがあります。(例:2015年全国都道府県対抗男子駅伝で、愛知県チームのランナーがゾーン手前で昏倒し、ゾーン内にタスキを放り投げたケースなど) 

◇ブレイクライン
行程の途中までをセパレートレーンで走る必要がある種目(800m、4×400mリレー)で、「ここからオープンレーンで走行可」という地点を示すライン。「レーン規制が解除(ブレイク)されるライン」のことです。
第1・第2コーナーを回り切ってバックストレートに入った地点(日本の陸上競技場では800mの120m地点、4×400mリレーの520m地点)に設けられます。ここから第3コーナーの入り口まで、内側のレーンと外側のレーンとの距離を等しくさせるために、ラインは緩やかな曲線を描きます。またレース中にはラインの存在を明確にするため、各レーンの最内側に小型のコーンが置かれます。自分のレーンのコーンの内側を通ったり、コーンを跳び越えたり蹴飛ばしたりてしまうと、ショートカットの反則行為ということになります。
最内レーンのランナーはブレイクラインを気にする必要はありませんが、それ以外の選手は、早く内側に入りたいという意識が強いとブレイクラインぎりぎりでショートカットをしてしまうケースが時たまあって、専任の審判員=監察員の摘発を受けるとアウトです。近年はヴィデオ判定によって確認が行われますが、基本的には審判員の目視による判定となります。かつて女子中距離界の女王的存在だったマリア・ムトラ選手(MOZ)が、世界選手権で失格になったことがありました。

◇3000mSC(Steeplechace)
3000m障害物競走。「スティープルチェイス」の由来については「ごく基礎編」を参照。
ハードル種目の一つに分類されることもありますが、性格上は長距離種目の、いわば「トラックで行うクロスカントリー」とも言うべきものでしょう。
1周回のうちに4台の置き障害とトラックに常設された1か所の水壕障害を飛越しながら7周+残りの距離を走破します。日本の競技場がほとんどトラックの外側(最外レーンよりも外側)に3000mSC用の水壕を備えているのに対し、欧米の競技場では内側(第1レーンの内側に、一部直線部分を含めたコースを設定)に備えています。1周回の長さは前者が420m、後者が390mで、このためスタート位置が異なるほか、欧米方式のトラックでは、スタートしてから半周以上にわたって障害飛越のないランが続きます。

◇スプリットタイム/ラップタイム
競走種目で、スタートしてからある地点を通過した時の経過時間を「スプリットタイム」と言います。同じような意味合いで「ランニングタイム」という言葉がありますが、これは通過距離に関係なくその時点での経過時間のこと。「いま、スタートして何分何秒経ちました」という意味の言葉です。
また、トラック種目の中長距離走のように周回ごとの定点でタイムが計測できる場合は、各周回ごとの400m区間、あるいは2.5周回ごとの1000m区間などの走破タイムを「ラップタイム」と言います。ロードレースの場合は、1㎞ごと、5kmごとといった尺度で計測・表示されます。
「3000m地点のスプリットタイムは8分30秒、2000mから3000mまでのラップタイムは2分45秒、この1周のラップタイムは65秒」というように使い分けます。
いずれも本人にとりまた観戦者らにとりゴール記録の参考・目安となったり、レース結果を分析する際の指標となるタイムです。以前はこの2つの言葉が完全に逆転して認識されており、私自身もそのように覚えてきました。現在でも少々混乱気味なところが見受けられないでもありません。

 

陸上用語のまとめ(ごく基礎編)



陸上競技専門ブログを始めて間もないタイミングで日本選手権を迎えたものですから、ついついはしゃぎ過ぎて大量の投稿をしてしまいました。ま、私の勝手なんですが。

ここからリオ五輪に向けては、いろいろと私なりの陸上雑感や思い出話などをご紹介してみたいなと思いますが、ジジイの昔話に興味はないという若い方は、どうぞスルーしてください。(呵々)

その前に…
記事を書き散らしていますと、陸上競技の用語をどういうふうに使って書いたら適切なのかな、ということが気になりました。このブログにお越しになるような方々は(私の個人的知り合いは別として)、ほぼほぼ陸上競技ファン、その多くはご自身が現役あるいは元アスリートでいらっしゃるような、陸上競技には詳しい方だと思います。なので、今さらこんな話は釈迦に説法もいいところなんですが、ちょっと整理してみたくなったので、基礎的な「陸上用語」についてまとめてみたいと思います。
「そんな細かい話はいいよ」と思われるでしょうが、私は携わっている仕事の関係もあって、結構「ことば」にはこだわるタチなもんですから、ご容赦ください。 

まず、種目名の表記について
これは、日本陸連が採用している表記法が「正式」なものと考えるべきだと思います。
つまり、

100m/200m/400m/800m/1500m/5000m/10000m
100mH/110mH/400mH/3000mSC(これらについては、この表記では一般的に伝わらないので、100mハードル・3000m障害物といった表記も可)
4×100m(または4×100mR、4×100mリレー)/4×400m(同様)
走高跳/棒高跳/走幅跳/三段跳
砲丸投/円盤投/ハンマー投/やり投
十種競技/七種競技


※言うまでもないですが、「3000mSC」のSCとはSteeplechaseの略語です。steepleとは教会の尖塔のことで、イギリスでの原始的な長距離走の形態が、教会をゴールに見立て敷地の柵などを跳び越えながら行われたことに由来するのだそうです。陸上競技映画の最高峰『炎のランナー』の冒頭で、砂浜を走る若い選手たちの一群(1924年パリ・オリンピックのイギリス陸上代表チームが合宿中という設定)が、やがて教会ではありませんが尖塔のあるカールトン・ホテルを目指して白い柵を次々に超えていく、という印象深いシーンがあります。

いっぽう、前々回の記事に掲載した日刊スポーツのWEB記事をご覧いただくとお分かりいただけるかと思いますが、新聞などの表記では必ずしもこれに準拠していなくて、「走り幅跳び」「3段跳び」「やり投げ」「10種競技」といった表記が用いられています。
新聞の場合は「正しい(とされる)日本語」について非常に厳格な基準を持っていて、私なども新聞の採用している日本語の表記法を参考にすることはよくあります。この場合も正しい送り仮名を用いるべきだという判断がもとになっているのだと思われますが、これには一言申し上げましょう。
スポーツ競技の種目名というのは固有名詞みたいなもので、極端な例としては「競輪」と「KEIRINもしくはケイリン」では、似て非なる種目であることがよく知られています。そう考えれば、その競技の統括団体が採用している表記法をみだりに変更すべきではない、というのが私の考えです。したがって、私の記事では意識して、(私の使っているパソコンの変換では「走幅跳」と「ハンマー投」「やり投」が出てこないんですが)「正式表記」を用いています。

ちなみに、現在TVでトラック&フィールドを扱っているのはNHK(日本選手権、IH、国体など)、TBS(世界選手権、ゴールデングランプリ、実業団選手権など)、NTV(ダイヤモンドリーグ、関東インカレなど)の3局くらいですが、正しい日本語にウルサイNHKではやはり新聞方式(ただし「3段跳び」とか「10種競技」なんて表記はしていないと思います。日刊スポーツでも、このあたりはWEBでなく紙面になれば「三段跳び」「十種競技」に改めていると思いますが、確認はしていません)。
TBSは基本的に陸連方式ですが、たまに「送り仮名つき」のテロップが入ることがありますので、分かってる人とそうでない人が混在して制作にあたっていて、局として特に統制はしていないことが伺えます。分かってない人の一人が長年世界選手権のメインキャスターを務める某スチャラカ俳優氏で、しきりに4×100mリレーのことを「ヨンカケ ヒャク…」と言うのがとても耳障りだったりします。
日テレはほぼ、陸連方式に則って表記しています。また陸上競技専門誌でも、とうぜん陸連方式の表記です。

さて、正式名称があれば俗称=スラングというものが派生するのも当たり前のことで、特に“陸上仲間”の間で交わされる会話の中ではいちいち「ヨンカケルヒャクメートルリレー」なんて言ってられないので、「ヨンケイ」などの略語を使うわけですね。ご存じとは思いますが、「ヨンケイ」とは4×100mリレーの古い言い方である「400メートル継走(けいそう)」の略です。競泳でも「ヨンケイ=400m継泳」「ハチケイ=800m継泳」という言い方をします。

ヨンケイに対して4×400mリレーは「センロッケイ」と言うのももどかしいので、「マイル(平板読み)」なんて言いますね。日本では1マイル(1609.344メートル)のレースが行われることはあまりないので、「マイル」といったら1600mリレーのこと、という認識が一般的です。

なお、個人的にですが私は4×100mリレーという言い方・表記のしかたが好きではありません。あえて「400mリレー」という言い方を多用します。
なぜかというと、400mリレーは他のリレー種目(駅伝や競泳なども含め)と異なり、「4人が100mずつをつなぐ競走ではない」と考えるからです。100m走力の4人分にプラスされる要素が、あまりにも大きな比重を占める種目だと考えているのです。実際、ヨンケイのメンバーは全員が100メートルをかなり超える距離を全力疾走する必要があるのですから、これを「4×100m」としてしまうのはおかしいだろう、と。
まあ、陸連やIAAFが定めた種目名をないがしろにする気はありません。あくまでも個人的な気持ちとして、です。

このほか、400mHを「ヨンパー」と言ったり、走高跳を「ハイジャン」と言ったり、陸上仲間どうしの話の中では略語はいろいろとありますし、それぞれの学校独自の伝統的な呼び方もあるかと思います。
いっぽうで、会話の中ではあまり使わないものの、 表記上少々面倒くさいな、という場合に使われる略語というのもあります。トラック種目ではすでに「ハードル→H」「スティープルチェイス→SC」「リレー→R」と略していますが、主にフィールド種目名をアルファベット略語で表すような場合ですね。

走高跳→HJ(High Jump)/棒高跳→PV(Pole Vault)/走幅跳→LJ(Long Jump)※私の若い頃にはBJ(Broad Jump)と言ってました/三段跳→TJ(Triple Jump)/砲丸投→SP(Shot Put)/円盤投→DT(Discus Throw)/ハンマー投→HT(Hammer Throw)/やり投→JT(Javelin Throw)/十種競技→DEC(Decathlon)/七種競技→HEP(Heptathlon)



略語と言えば、主に記録表記に関わる用語として、いくつかアルファベット表記が出てきますね。これも整理しておきましょう。オリンピックなど国際映像の画面や会場のビジョンには頻繁に表示される言葉なので、意味を正確に理解しておくとよろしいかと思います。


WR=World Record(世界記録)
NR=Nation Record(その国の国内記録…日本の場合は「日本記録」。日本に限って言うと「国内記録」には「日本国内で出された記録」という意味があるので注意)
AR=Area Record(世界をアジア・ヨーロッパ・アフリカ・オセアニア・北米・南米に分けた場合の国際エリア記録。ただし、「Asia Record」「Africa Record」等の略語である場合もある)
WL=World Leader(シーズン世界最高記録)
CR=Championship Record(世界選手権など選手権大会の大会記録)
MR=Meeting Record(選手権以外の大会の大会記録。ただし日本では国体などでGR=Game Recordも用いる)
なお、「~タイ記録」の場合は「=WR」などと表記します。
PB=Personal Best(自己最高記録…くだんの某知ったかぶり俳優氏は「プライベート・ベスト」と言って視聴者の失笑を買っていました)
SB=Season Best(シーズン自己最高記録…PBを上回ってはいない場合に使われる)
DQまたはDSQ=Disqualified(失格。「予選落ち」の意味にもなるが、陸上競技でこう表記された場合は規則違反による失格を示す。さらに細かい失格理由が略語で併記されることがあるが、ここではそこまで触れない)
DNS=Did Not Start(棄権=「途中棄権」と紛らわしいがエントリーしながら出場を取り止めること)
DNF=Did Not Finish(途中棄権)
Qq=いずれもqualify(予選または準決勝通過)だが、トラック競技では着順で通過した場合はQ、着順で通過できずにそれ以下の中からタイム順に拾われた場合はq、フィールド競技ではあらかじめ設定された予選通過記録に到達した場合はQ、到達者が12名に達しなくてそれ以下から記録順に拾われた場合はqで表記する。


プロのアナウンサーの中にも、たとえば「世界記録」と「世界新記録」の区別がちゃんとできていない人がたまに見受けられるのは甚だ遺憾なことですが、一般の人となると違いが分からないという人もいるかもしれません。
違いは明らかなんですが、ちょっと言葉で説明するのは難しい…意味が、というよりも使う状況が違うんですね。
「世界記録」というのは、いま現在存在している、その種目の世界最高の記録(陸上競技の場合はIAAFが公認しているという条件付き)のこと。
「世界新記録」とはその記録が出た時の状況、つまり「世界記録が破られた」「新しい世界記録が生まれた」という状態を表す言葉で、記録が出た「その時」に関連付けられた場合の言い方。したがって「現在の世界新記録」「世界新記録保持者」といった言い方は間違い。
「一つのレースで2人が世界新記録」ということも、同着でない限りあり得ません。理論上は、1着の選手がゴールを通過した時点で世界記録は変わってしまっている(ビッグゲームの場合は即時公認)ので、2着の選手がそれを上回ることはできないからです。「それまでの世界記録を2人が破った」というのであれば、いいでしょう。また、フィールド種目であれば、一つのイベントで「2人以上が世界新記録」という状況はあり得ます。
なお、世界新記録誕生の瞬間であっても画面表記上は「NWR(New World Record)」などと表示されることはあまりないようで、だいたい「WR」の文字が点滅する、といった表現になります。

もっといろいろな用語にも言及しようと思ったのですが、結構長くなってしまいましたんで、このあたりで。
で、結局何が言いたかったのかというとですね、このブログ上では原則正しい陸上用語の表記に努めますが、たまにこうした略語も使いますよ、てなことです。
引き続き、どうぞよろしくお願いします。

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