豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

野澤啓佑

第101回日本選手権の見どころ ③ ~男女ハードル


今夜はDL第5戦オスロからの連戦で、第6戦ストックホルム大会『DNガラン』が行われるのですけど、前回書いたような事情もあって、いま一つ観戦気分が盛り上がりません。それと何より、この伝統の北欧2大会には今回、アメリカ勢がほとんどエントリーしていないんですね。日本と同様、大事な国内大会を控えているから、というところでしょう。日程編成の大失敗でしょうかね。
ということで、放送は後でゆっくりビデオチェックすることにして、「見どころ」を進めておきます。

◆男子110mHは久々のハイレベル
昨年は難関と思われたリオ五輪の標準記録を矢澤航(デサント)がクリアしてオリンピック出場を射止めましたが、今年はすでに到達済みの大室秀樹(大塚製薬)を筆頭に、矢澤ほか複数の選手により標準突破と3位以内を目指しての激戦が期待されます。
先の『布施スプリント』では、予選(第1レース)のみを走った大室が13秒54(+1.5)で余裕の1着となり、決勝は大室を除き、矢澤、高山峻野(ゼンリン)、増野元太(ヤマダ電機)、佐藤大志(日立化成)と実力者が揃う前哨戦さながらの顔ぶれとなりました。レースは+3.2mの追風参考だったものの、増野が標準記録を上回る13秒43で快勝。日本選手権でも、これらに金井大旺(法政大4)、古谷拓夢(早稲田大3)ら学生勢を交えた熾烈な代表争いが繰り広げられそうです。
大室には優勝で代表内定、3位以内でほぼ当確というアドバンテージがありますが、あと1名か2名、標準を突破してくることは十分に期待できます。谷川聡・内藤真人の「2強」時代以来の活況を再現してもらいたいものです。



◆野澤の復調なるか?
昨季は世界のトップ戦線に躍り出るかとまで期待させた野澤啓佑(ミズノ)が、今年はマウントサック・リレーズでの開幕戦以来、絶不調に喘いでいます。5月以降は予定されていた試合もキャンセルして調整に努めているようではありますが、48秒台を連発していた1年前の勢いは取り戻せそうにありません。
現状、この種目での標準到達者は安部孝駿(デサントTC)ただ一人で、その安部にしてもレースにムラが大きく、すんなり3位以内を獲ることは容易ではありません。松下祐樹(ミズノ)、小西勇太(住友電工)、岸本鷹幸(富士通)らがよほど奮起しないと、日本伝統のこの種目で、何十年ぶりかに代表なしという事態も起こりかねません。まずは予選で、各選手の気迫を見てみたいものです。

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◆木村文子が絶好調
『布施スプリント』決勝で男子110mHと同様強い追い風(+3.7m)ながら、12秒99の快記録を叩き出した木村文子(エディオン)が好調です。その前には『GG川崎』で、13秒10(0.0)をマークしています。
ただこの種目は世界のレベルも昨年来急速に上がり、標準記録はとうとう日本記録を上回る12秒98という高いラインに設定されてしまっています。20代最後の日本選手権にピークを作らんとしている木村の孤軍奮闘ぶりには何とか結果で報われてほしいものだと思います。
本来なら木村とともに代表狙いの最前線にいる柴村仁美(東邦銀行)は、今季やや低空飛行。「美女トリオ」の一角・伊藤愛里(住友電工)はエントリーなし。あとは青木益未(七十七銀行)、ヘンプヒル恵(中央大3)、福部真子(日体大4)といった若手の躍進に、期待です。

◆常勝・久保倉の後継者は?
通算9度の日本一とリオ五輪出場、55秒34の日本記録(2011年日本選手権)を置き土産に引退した久保倉里美の後継者を巡っての争い。
本命は世界代表経験のある青木沙弥佳(東邦銀行)か一昨年の優勝者・吉良愛美(アットホーム)かというところ。優勝戦線に入ってくる力を持っているはずの石塚晴子(東大阪大2)は昨季のU-20世界選手権から長いスランプ状態で、その石塚に代わって日本インカレを制した梅原紗月(立命館大→住友電工)も、社会人1年目は苦戦中。あとは本職の七種競技でDNFに終わった宇都宮絵莉(長谷川体育施設)が、男子の中村明彦さながらに大駆けをやってのけるか、というあたりまででしょう。
標準記録の56秒10は、勢い次第で決して不可能な数字ではありません。

明日は静岡国際


GWも中盤。5月3日(水)は『第33回静岡国際陸上競技大会』がエコパスタジアムで行われます。
かつては草薙競技場で開催され、『草薙リレーカーニバル』という大会名だったような覚えがあります。(間違ってたらごめんなさい!)
エコパは日本では屈指の陸上競技場で、私的には日産、ヤンマー、エディオンと並んで好記録を生みやすい「ビッグ4」ではないかと思っています。何より、静岡西部の温暖な気候が、特にこの季節のトラック&フィールドにはうってつけです。

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https://www.ecopa.jp/facilities/stadium/ エコパスタジアムHPより

例年この大会では、男女の200mや周回レース(400m、400mH)に好記録が出ます。男子200には「ビッグ4」+桐生祥秀という、目のくらむような顔ぶれがエントリー。(織田記念の100m決勝をDNSした藤光謙司は微妙でしょうか?)特に、最近チームの勢いが凄まじい上にお膝元でもあるスズキ浜松ACの原翔太に期待しています。
男子400mもトップクラスが揃いましたが、ウォルシュ・ジュリアン(東洋大3)は『ワールドリレーズ』での様子から察するに、今回は欠場でしょう。金丸祐三(大塚製薬)の復調如何をチェック。
男子400mHでは、海外を転戦した野澤啓佑(ミズノ)の調子が上がってこないのが心配です。どうも、昨秋のDL最終戦以来、リズムを狂わせているのかもしれません。彼のように海外で試合数をこなすという姿勢は非常に大切なことなので、今後も引き続き取り組んでもらいたいですし、この静岡から川崎にかけて、取り戻してもらいたいものです。
女子200mは、福島千里の状態が心配。昨年は春先から「絶好調宣言」がありましたが、やはり軽い故障の連続に苦しみました。プロに転じた今季は焦らず慌てず、経験を重ねつつじっくりと日本選手権にピークを合わせる感じでよいと思います。何と言っても彼女は女子陸上界の宝ですから。
他では、400mの青木りん(東邦銀行)、400mHの梅原紗月(住友電工)といった社会人ルーキーの躍進に期待しています。 


 

山本聖途・福田有以が優勝!~『マウントサック・リレーズ』日本選手の成績


アメリカ・カリフォルニア州トーランスのエル・カミノ・カレッジで開催された『第59回マウントサック・リレーズ』に出場した日本選手の結果をお伝えします。
ゲーム数が非常に多いため、日本選手の名前をピックアップするのに遺漏があったかもしれません。その点はご容赦を!
また一部エントリーリストに名前がありながら、DNSだった選手もいるようです。

― 男子 ー
◇100mオープン8組/9(+2.1) ①10"24 飯塚 翔太(ミズノ)※総合1位
②10"37 馬場 友也(LALL AC)
◇100m招待2組/2(-0.2) ④10"34 多田 修平(関西学院大)
◇200mオープン1組/7(+0.4) ⑤21"54 高平 慎二(富士通)
◇400mH招待2組/2 ⑤51"78 野澤 啓佑(ミズノ)
◇棒高跳 ①5m70 山本 聖途(トヨタ自動車)
④5m20 山本 智貴
⑥5m20 笹瀬 弘樹(スズキ浜松AC)
◇走幅跳 ③7m69(0.0) 城山正太郎(ゼンリン)

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― 女子 ―
◇100mオープン1組/7(+0.5) ④11"51 福島 千里
⑧12"05 土井 杏南(大東文化大)
◇100m招待1組/2(+0.7) ⑧11"47 福島 千里
◇200mオープン5組/6(+1.1) ⑥24"79 土井 杏南
◇200m招待1組/2(+2.1) ⑨23"90 福島 千里
◇800mオープン2組/5 ④2'10"89 大宅 楓(大東建物管理)
◇5000m招待 1組/2 ①15'23"48 福田有以(豊田自動織機)※総合1位
◇100mH招待 1組/2(-2.2) ③13"62 木村 文子(エディオン)
◇400mH招待 1組/2 ③57"66 青木沙弥佳(東邦銀行)
⑧61"96 石塚 晴子(インプレス)
◇棒高跳 招待 -NH 仲田 愛(水戸信用金庫)

 

2017トラック&フィールドのお楽しみ


トラック&フィールド・シーズンが始まっています。
すでに男子400mリレーの銀メダル・メンバーのうち、桐生祥秀と山縣亮太は3月上旬にオーストラリアの大会で100mレースに出場して、それぞれ10秒04(+1.4)、10秒06(+1.3)という上々のシーズンインを飾りました。遅れじと、飯塚翔太は本日行われる『マウントサック・リレーズ』で、ケンブリッジ飛鳥も15日にアメリカの別の競技会で、と、いずれも海外で初戦を迎えます。

『マウントサック』は日本時間の今未明から3日間の日程で始まっていて、飯塚選手だけでなく結構な数の日本選手がエントリーしています。
400mHには野澤啓佑、棒高跳には山本聖途、荻田大樹など4選手、走幅跳に城山正太郎などなど。
女子では100mにプロ転向した福島千里、100mHに木村文子・柴村仁美の美女コンビ。女子5000mには、豊田自動織機の横江里沙・福田有以・林田みさきの3選手が登場。

いっぽう国内では、日本GPシリーズとして22(土)・23(日)の両日に『兵庫リレーカーニバル』(神戸総合)と『TOKYO COMBINED EVENTS MEET』(駒沢)が、29日(土)には『織田幹雄記念』(エディオン)、3日(水)には『静岡国際』(草薙)が開催されます。『TOKYO COMBINED…』は、開催が打ち切られた『混成和歌山』の代替大会で、男子十種競技と女子七種競技のみが行われる模様です。
22・23日には『出雲陸上』もあり、短距離勢は出雲、長距離勢は兵庫、という分かれ方になりそうです。
とりあえず、『兵庫RC』のエントリー・リストが出ていますので、ここに貼っておきましょう。
2017HyogoRC(1)
2017HyogoRC(2)
2017HyogoRC(3)
2017HyogoRC(4)

さらにさらに、同じ2日間、海外では『第3回ワールドリレーズ』(ナッソー)。今年はオリンピック出場権云々とは無関係のためか、日本は男子のみ、若手主体のチームを派遣します。
●4×100m 山下 潤・齊藤勇真(以上筑波大)・増田拓巳(東海大)・
大嶋健太(日大) 水久保漱至(城西大)
●4×400m ウォルシュ・ジュリアン(東洋大)・堀井浩介・田村朋也(以上住友電工)・
小林直己(セゾン情報システムズ)・藤原 武(ユメオミライ)

5月5日(金)には毎年全米のトップクラスや好条件を狙って日本からも多くの長距離選手が遠征する『ペイトン・ジョーダン招待陸上(旧・カーディナル招待)』があります。日本時間では同じ日になりますが、6日(土)は『ゴールデンゲームズ・インのべおか』(西階)。
例年GWの終盤に行われてきた『セイコー・ゴールデングランプリ』(等々力)は、今年は5月21日(日)の開催です。20(土)・21の両日は『東日本実業団選手権』(秋田県立中央公園)も開催されますので、ちょっともったいない日程編成となりました。
翌週の25日(木)~28日(日)は『第96回関東インカレ陸上』(日産)…
だいたいこのあたりまでに、世界選手権(ロンドン)代表を目指す選手たちは参加標準記録の突破を果たして、6月の『日本選手権』(長居)に備えたいところ。特に気候条件に左右されやすく試合数も限られる長距離勢は、海外レースや各地区での記録会などを含めたスケジュールから、狙いのレースをそれぞれに決めていることでしょう。

個人的に、私が今年期待しているのが女子やり投という種目です。
海老原有希(スズキ浜松AC)という絶対女王が君臨しつつ、たまに宮下梨沙(大体大AC)が足元を掬うという構図が長年続いてきたこの種目、昨年は日本歴代2位のU-20記録61m38をぶん投げた北口榛花(日大2)を筆頭に、イキのいい若手スロワーがぐんぐんと台頭してきました。
ランク4位以下にも58m21の斉藤真理菜(国士舘大4)、56m79の瀧川寛子(東大阪大→大学院)、56m57(PB59m22)の佐藤友佳(東大阪市陸協)、56m48の長 麻尋(和歌山北高3)、56m17の當間沙織(九州共立大4)、55m94(PB58m98)の久世生宝(筑波大→コンドーテック)、55m74(PB58m76)の山内 愛(大阪成蹊大→長谷川体育施設)と、ベスト10の人材は豊富でいずれも若い!高校時代に58m59を投げた山下実花子(九州共立大2)もいます。
日本人には不利と言われ、その“風評”がまた逸材の参入を阻んできた感のある投擲種目の中で、新井涼平選手や村上幸史選手、そして海老原選手などが世界に互して戦う姿に、僅かながらも競技人口、あるいはその質の底上げが見られるのがこの種目、と言えるのではないかと思っています。
4人目・5人目…の60mスロワーが誕生し、「標準」をめぐるレベルでデッドヒートが繰り広げられる日本選手権を期待します。

※これを書いた時点では知らなかったのですが、3月24日(金)の国士舘大競技会(国士舘大多摩競技場)で、斉藤真理菜が60mスロワーの仲間入りを果たしていました。記録は日本歴代5位・現役4位・学生歴代2位となる60m01です。昨年の関東インカレでは6投目に2㎝差大逆転で久世の4連覇を阻止した勝負強さが、ここでも発揮されましたね。

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トラック&フィールドではありませんが、明後日・16日(日)には『日本選手権50km競歩』(輪島)と『長野マラソン』、翌週23日(日)には『高橋尚子記念ぎふ清流ハーフマラソン』と、ロードでも春のお楽しみは盛りだくさん。『50km競歩』には、世界選手権代表の残り2枠をめぐる激しい争いが期待されています。
17日(月)には、大迫 傑(NIKE O.P.)や宇都宮亜未(キヤノンAC九州)がマラソン初挑戦するボストンマラソン、こちらも楽しみです。

国内ハーフ大会では唯一のIAAFゴールドレーベル・レース『ぎふ清流』では、当初エントリーされていた神野大地がアキレス腱の故障で欠場となったのは残念ですが、女子でロンドン代表に決定している安藤友香・清田真央(ともにスズキ浜松AC)が揃って参加、さらに、つい先日の4月1日にプラハ・ハーフマラソンで1時間04分52秒という途轍もない世界新記録(公認保留中)を叩き出したジョイシリネ・ジェプコスゲイ(KEN)が参戦するということで、俄然注目度が高まりました。

ほとんどの大会にテレビ中継がないため、よほど時間とお金と行動力に恵まれた人でないと、主要大会だけでも観戦フォローするのは厳しいですね。私のようなしがない陸上ファンにできるのは、せいぜいネットに上がってくるリザルトや動画サイトに目を配りつつ、ヤキモキするくらいが関の山です。でもそれが、陸上ファンの密やかな楽しみだったりもするんです。
できるだけ早く詳しく、情報を共有していきたいと思いますので、今シーズンも当ブログをご贔屓に、よろしくお願いいたします。

 

ラヴィレニ7連覇!…DL16種目でチャンピオン決まる



IAAFダイヤモンドリーグ、今年のファイナル前半となる第14戦・チューリッヒ大会が終わったところです。
全般に記録的には低調でしたが、面白いレースあり、シーズン優勝争いでの大逆転ありで、見どころは満載、大いに楽しめました。
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<ダイヤモンドレース・チャンピオン>
 (ファイナル優勝者が別の選手だった場合※に表記)
 ◇男子100m アサファ・パウエル(JAM)
 ◇男子400m ラショーン・メリット(USA)
 ◇男子5000m ハゴス・ゲブリウェト(ETH)
 ◇男子400mH カーロン・クレメント(USA)
 ◇男子PV ルノー・ラヴィレニ(FRA) ※サム・ケンドリクス(USA)と1位分け合う
 ◇男子TJ クリスチャン・テイラー(USA)
 ◇男子SP トム・ウォルシュ(NZL)
 ◇男子JT ヤクブ・ヴァドレイヒ(CZE)
 ◇女子200m ダフネ・スキッパーズ(NED) ※エレイン・トンプソン(JAM)
 ◇女子800m キャスター・セメンヤ(RSA)
 ◇女子1500m ローラ・ミュアー(GBR) ※シャノン・ロウベリー(USA)
 ◇女子100mH ケンドラ・ハリソン(USA)
 ◇女子3000mSC ルース・ジェベト(BRN)
 ◇女子HJ ルース・ベイティア(ESP)
 ◇女子LJ イワナ・スパノヴィッチ(SRB) ※ブリトニー・リース(USA)
 ◇女子DT サンドラ・ペルコヴィッチ(CRO)
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DLは4カ月余りの間に15大会のうちに各種目7戦を消化するというハード・スケジュールのため、特に今年のようにオリンピック・イヤーともなると全戦参戦という選手は多くなく、男子100mのように種目によってはトップ選手がなかなか揃わないというケースも出てきます。
そこで、種目の中で必ずしもナンバーワンと目されていなくとも、コツコツと貯めたポイントで年間優勝にまで行きつく場合もあったり、シーズン途中から急速にパワーアップしてマクリを決めたりすることがあるのが、面白いところ。最終戦はダブル・ポイントで1位が20点、2位が12点、3位が8点…と大きな差がつくので、逆転可能な位置に付けている選手にとっては、十分にそのチャンスがあるのです。

たとえば、男子砲丸投は、普通に考えますとオリンピックの金・銀を占めたアメリカの2人、ライアン・クラウザーとジョー・コヴァックスがこれまでの「2強」のイメージですが、ファイナルを前にしたポイントでは5戦に出場して2勝・2位3回のトム・ウォルシュが38点でトップ。全米までは水面下の存在だったクラウザーはともかく、4戦3勝のコヴァックスが34点で2位という状況。ウォルシュはコヴァックスよりも1戦多く出ていることと、直前のパリ大会でクラウザーを1センチ差で破って優勝したことで、この状況にこぎつけてきたところです。
そのウォルシュが、ファイナルでは堂々の22m20(AR)をぶん投げて、力勝負で「2強」を圧倒、「もう2強とは呼ばせないぜ!」とばかりに年間チャンピオンの座に就いてみせました。

同じような経緯で、直前のパリ大会からの「マクリ」を放ったのが、女子1500mのローラ・ミュアー。
この種目はゲンゼベ・ディババ不在の間にフェイス・キピエゴン(KEN)が3戦3勝と圧倒的な力を見せ、ディババが出てきたオリンピックでもこれを返り討ちに仕留めたことでDL女王も不動かと思われていたのですが、パリ大会で意表を衝く大逃げで出し抜いたミュアーが8点差の2位と迫り、このファイナルで優勝すれば、キピエゴンが2着でも同点優勝に持ち込める位置に付けました。
レースはキピエゴンがパリの二の舞はご免とばかりにミュアーのロングスパートを許さず、逆に自分が先頭に出て一気に決着を図ったのですが、意外や直線でパッタリと脚が止まって集団に飲み込まれ、万事休す。優勝なら文句なしのシーズン逆転Vだったミュアーもゴール寸前にロウベリーに差されて2着。キピエゴンのほうも5着以内に粘れば優勝できたのに、最後は精根尽き果てて7着・ノーポイントで、結局ミュアーに初優勝が転がり込みました。
オリンピックでは無敵かと思われたゲンゼベを破って金メダルに輝いたキピエゴンと、自慢のロングスパートがゲンゼベに完封される形で7位に敗れたミュアー、その立場が見事なまでに逆転した、ファイナルの結果となりました。たった2週間ばかりで、こうも変わってしまうものなのですね!
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もう一つ「大逆転」が起きたのが、男子やり投です。

この種目は今シーズンを通じて、常にトーマス・レーラー(GER)が主導権を握っているという印象が強かったので、試合前の時点で2位のヴァドレイヒに4点差というのは、意外なほどの僅差でした。前2者と同じように、パリ大会で優勝したことがヴァドレイヒ逆転優勝の大きな布石となったのです。
(これまでレーラー:5戦2勝・2位2回・3位1回、ヴァドレイヒ:5戦2勝・2位、4位、6位各1回)
ゲームはレーラーが早々に85mラインを超えて余裕の笑みを浮かべていましたが、ヴァドレイヒの5投目が87mを超えて、絵に描いたような逆転劇となり、レーラーのオリンピック・DL2冠を阻止する結果となりました。

「逆転」とは言っても、本人自身「何だかなあ…」といった表情を浮かべていたのが男子100mのアサファ・パウエルです。
何しろポイント・リーダーのジャスティン・ガトリンがファイナルをパスしたために、代わってリーダーとなったのがやはりパリで10点を稼いだベン・ユセフ・メイテ(CIV)。そのメイテにしたところで2戦しか出ていないので持ち点は16に過ぎず、つまりはこの日出場した全選手に年間チャンピオンの可能性があったという変な状況でした。まあ、仮にガトリンが出ていたとしても2戦2勝の20点ですから、大して変わりありません。
で、このレースで優勝しファイナルポイント20を加えて26点としたパウエルが年間王者。9秒94のタイムは立派ですし、パウエルにしてみれば来年の世界選手権でのワイルドカードを得たわけですから、悪くない結果だったと思います。
リオ五輪の400mリレーについて書いた時、「ボルトとパウエルがいなくなれば…」みたいなことを書いてしまいましたが、パウエルじいさん、まだまだやる気は十分のように見えました。
メイテのほうは、2着なら28点で年間王者でしたが、数センチの差で3着となり大魚を逸しました。
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やる気は十分、というと、女子200mに出てきて3着になったアリソン・フェリックスにも言えます。
彼女が今季一度も出ていないこのレースに今さら出場する意義はありませんし、もしかして?と思って見ていたのですけど、レース後に「引退?」を伺わせるような動きも特になく、現在の「2強」にはなかなか勝てなくてもそうそう簡単には引き下がらないわよ、という気配が見えました。
レースはコーナーを快調に先行したスキッパーズがゴール手前でトンプソンに差されてやはりリベンジならず。思っていたよりスキッパーズの出来は良かったと思いますが、この放送では再三指摘されてきた「競り合った時に堅くなる」いつもの悪癖が出てしまいました。

…といった逆転シーンや波乱の展開もあったとはいえ、文句なしに種目ナンバーワンの地位を主張した王者・女王も数多く、7戦全勝のペルコヴィッチ、6戦全勝のハリソン、5戦全勝のテイラーなどはオリンピック・チャンピオンあるいは世界記録保持者の称号とともに、突出した実力を見せつけての最終戦となりました。
特筆すべきは、DL創設以来、7季連続チャンピオンを続けているラヴィレニ…しかし、ここ2戦でのケンドリクスとのイチャイチャぶりは、どうしたもんでしょうかねえ?
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ケンドリクスにビブを直してもらっているラヴィレニ。TVの実況では
「ケンドリクスって、本当にラヴィレニが大好きなんですねえ…」って、なんか変な感じ。


日本の野澤啓佑(ミズノ)が出場した男子400mHは、優勝タイムが48秒72とあまり高いものではありませんでしたが、野澤はオリンピックの準決勝と同じようなガチガチのレース運びで完走選手中最下位(49秒42)に終わりました。
これでいいんだと思います。これを重ねることによって、DLのレースも国内のゴールデングランプリと大差ないなと感じられるようになれば、必ず「世界」の決勝進出は見えてきますから。
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いよいよ最終戦は、9日(金)、日本時間10日(土)未明、ブリュッセルでの開催となります。
世界規模でのトラック&フィールド・シーズンの2016ラスト・シーンをお見逃しなく!
 
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