年末年始の駅伝三昧からこのかた、しばらく投稿が途絶えまして申し訳ございません。
ビッグレースの間が空いたということもありますが、当方の仕事の都合やら家庭の事情やらもろもろありまして、ついついご無沙汰いたしました。何度も「そろそろ新しい記事があるかな?」と覗きに来てくださっている方々には、本当に感謝申し上げます。
『第35回皇后盃全国都道府県対抗女子駅伝』が、雪の降りしきる京都で行われました。
初めに、大会実施に尽力してくださった多くの関係者、地元住民の方々に、心からの感謝と敬意を表させていただきます。
私の友人にテレビ関係の業務で現地に赴いた者がおりまして、当日朝の状況をSNSに伝えてきたんですが、とても開催が可能とは思えないような雪景色の写真でした。選手の安全を第一にとの観点からすれば、中止の英断も止む無しだったと思われる一方、同じような大雪明けの数時間の間に除雪作業を完了して開催にこぎつけた東京国際マラソンの例なども思い出し、ハレのレースを目前に迎えた選手や毎年恒例のレースを心待ちにしている市民の皆さんなどのお気持ち心情を察するに、何とか実施してほしいという思いを禁じ得ませんでした。
◆「強行開催」に批判??ウソでしょ?
ネット記事の中には、こんな無責任な論評をする輩もいます。おそらくランナーの気持ちなどひとかけらも理解していない、外野席のさらに外側からの暴言ですね。
↑ http://netgeek.biz/archives/90809 より
賭けてもいいですが、
「こんな条件のレースは中止にしてほしい」
などと思っていた選手は、ただの一人だっていないと思います。
中継番組の中で、タスキの到着を待つ中継所からのレポートで、
「ふだん体験することのできないレースに、ワクワクしています」
という選手の声があったり、
「競技場はともかく中継所付近の裏道は除雪がされていないだろうから、選手はアップができなくて困るだろう」
という解説・小林祐梨子さんのコメントに、すかさず
「関係者だけでなく近在の住民も加わって除雪が行われ、選手は雪のない道でアップができている」
とのナイスなインフォメーションがあったり。
それが陸上競技をやる者、観る者の偽らざる声であり、行動なんです。駅伝・ロードレースを愛する人々が心を一つにして開催し、懸命にレースを戦った、いつまでも記憶に残りそうな『全国女子駅伝』が実現したのではありませんか。
上記のような記事は、これらの方々の真摯な気持ちを冒涜する、失礼千万なタワゴトと言うほかありません。
台風の影響で中止になった一昨年の『出雲駅伝』のように、選手や観客の安全が保証されない場合の開催中止は致し方ありません。大雪による積雪が完全に排除できなかったり、路面の凍結が解消できない場合も同様で、とにかく優先すべきは選手の安全第一。それさえ確保できていれば、どんなに寒かろうが頭に雪が積もろうが、ランナーは嬉々としてレースに臨むんです。かくいう私だって、4月なのに気温5度の雨中のレースに出て、ランナーの気持ちを解さない友人から「気が知れない」と言われたことがあります。
もちろん、「嫌だなあ、晴れてる方がいいなあ」と思う選手もいますよ。でも、誰も「中止してほしい」なんて思いませんよ。代替試合が行われる競技と違って、ロードレースは一期一会のものなんですから。
ぬくぬくとした部屋でテレビ観戦を決め込む当方としては、ただただスリップによる転倒だとか、低体温症などのアクシデントが起こらないことを願うばかり。幸い、映像などから伺う限り、そうした懸念も杞憂に終わったようで、まずはめでたし。
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◆“和製ラドクリフ”現る!
さて、都道府県対抗駅伝は、言ってみれば国体の駅伝版。ふだんの所属チームをシャッフルして、47の都道府県別チームに編成するところに何とも言えない妙味があります。
『実業団駅伝』や『全国高校駅伝』に出られなかった選手を見る機会もあり、また同じチームの選手が同じ区間の競走相手として登場することもあり、423人という出場選手数は、数ある駅伝レースの中でも群を抜いた百花繚乱ぶりです。
観る側としては、もちろんそれぞれの属性によって「おらが国さ」を応援する心情はあるとして、どのチームがどんなメンバーになるのかは毎回変わってきますし、前回A県で出ていた選手が今回はB県で、なんてことが頻繁に起きますから、勝ち負けそのものに熱中するというよりは、特定の個人ビイキや高校生・中学生のニューカマーに注目する、という「ミカタ」になるところがあります。
で、今回の最大のトピックは、4区で並み居るシニア選手たちを向こうに回して区間賞・11人抜きの快走で長崎県をトップに押し上げた、廣中璃梨佳(長崎商高1年)。
首と肩を大きく振るダイナミックな走法から、解説の金哲彦さんから「和製ラドクリフ」のニックネームを奉られた超新星です。その表情は、どことなく同じ解説席にいた小林祐梨子さんをも彷彿とさせました。
区間タイムの12分47秒は、木﨑良子が3年前に作った区間記録にあと7秒と迫る、区間歴代7位。
岡山インターハイの3000mで、9分03秒51の高1最高記録で5位に食い込み、その後10月の県新人戦で9分00秒81に更新。その1週間後には5000mでも高1最高(その後小笠原朱里=山梨学院高が大幅に更新)の15分42秒23、また新人戦の前週には国体の少年女子B800mで2位に入るというスピードランナーぶりも発揮しています。
長崎商高は惜しくも全国駅伝への出場は叶いませんでしたが、廣中は県大会、地区大会ともに1区を走り、森林未来(諫早高)、矢田みくに(ルーテル学院)といったところを相手にいずれも区間賞、特に地区大会では18分47秒という区間新記録。
つまり、昨年のトラックシーズンからこの冬まで、ずっと一貫してハイレベルなランニング・パフォーマンスを続けているわけです。しかも高校1年生。これはもう、期待するしかないですね。すぐにでも、ゴールデン・アスリートへの追加をお願いしたいほどですよ。
今シーズンの高校女子勢は、3000mと5000mの記録レベルが非常に高く、12月3日の記録会で矢田、小笠原、森林の3人が揃って高校歴代10傑入りする快記録で走ったことは既報のとおり。他にも、3000m8分台の高松智美ムセンビ(大阪薫英女学院)をはじめ、田中希実(西脇工)、加世田梨花(成田高)、樺沢和佳奈(常盤高)、向井優香(世羅高)…と、何人もの名前が挙がります。
その多くがこの日の大会にも出て、実業団・学生顔負けの走りを見せていましたが、廣中までの活躍に至った選手はいませんでした。間違いなく、今大会の「新人賞」「最優秀高校選手賞」でしょう…と思ったら、廣中は3区区間賞の不破聖衣来(群馬/大類中)とともに「未来くん賞」だって。2区区間賞の片山弓華(立命館宇治2年)が、「優秀選手賞」に選ばれています。区間賞を獲得した高校生4人は、いずれも1年・2年生です。
◆シニア選手はイマイチだったが…
実業団・学生勢では、関根花観(東京/JP日本郵政グループ)や上原美幸(鹿児島/第一生命)、伊藤舞(徳島/大塚製薬)といった「リオ組」に話題が集まりましたが、いずれも第一人者の貫録を示すまでには至らず。1区“3連覇”を狙った安藤友香(静岡/スズキ浜松AC)、駅伝女復活を期待された鷲見梓沙(愛知/ユニバーサル)、あるいは私のご贔屓・中村萌乃(新潟/ユニバーサル)なども、不発に終わりました。
また、大学長距離界を席巻した松山大学勢も、出身各県に分かれての参戦となりましたが、いいところがありませんでした。学生陣では唯一、佐藤成葉(神奈川/立命館大)が2区2位と5000m現役最速の実力を見せたのが目立つ程度で、それも高校生の片山弓華(立命館宇治)に競り負けたのは少し消化不良でした。
さすが、の走りを見せたのは岡山のアンカーで6人を抜き、首位に肉薄した小原怜(天満屋)。マラソンでの世界再挑戦を見据えてこの時期・この距離での快走は、絶好調ぶりを伺わせます。
3月の名古屋ウィメンズマラソンには、この小原をはじめ、昨年のリオ選考会で好走したメンバーが顔を揃え、また安藤友香などの初参戦も噂されています。実に楽しみ。
もう一人、年末の記事で紹介した宮田佳菜代(静岡/ユタカ技研)が、またも「キター!」と思わせる走りで8人抜き、区間賞こそ廣中に持って行かれましたが4区2位。実は彼女、木﨑が区間新をマークした2014年大会(当時は愛知/時の栖)でも、この4区で8秒差の区間2位となっています。
今大会には、2012年の高校駅伝で2位になった「豊川高5人衆」…区間順に、岩出玲亜(兵庫/ノーリツ)、宮田、鷲見、関根、堀優花(岐阜/パナソニック)が、揃ってすべて別々のチームから出場していました。社会人4年目にして、それまでいちばん遅れをとっていた感のある宮田が、今大会に関して言えばナンバーワンの走りを見せたわけです。アイドル・ランナーの大飛躍にも、ますます期待です。