豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

村澤明伸

元陸上競技王者の、いま<第3弾!>


昨日は『第31回北海道マラソン』が行われ、男子で村澤明伸(日清食品G.)、女子で前田穂南(天満屋)が、それぞれ日本陸連が設定したMGC出場資格記録を突破して優勝、話題沸騰の東京オリンピック・マラソン代表へ向けて有資格者第1号としての名乗りを上げました。

女子の前田は、序盤の解説にあったとおり、「キロ3分30秒のペースをずっと続けていける強さがある」という武富豊監督の言葉を見事に実践。途中先頭集団から抜け出した野上恵子(十八銀行)のペースアップにも冷静に対処してイーブンペースを守り、夏の北海道では好記録と言える2時間28分48秒でのフィニッシュとなりました。
北海道マラソンと天満屋と言えば、1997年に優勝してブレイクした山口衛里さん(2000年シドニー五輪7位)を思い出しますが、天満屋はその翌年にも松尾和美さんが、また2011年には森本友さんが、タイトルホルダーになっています。まさに、相性抜群の大会と言えるでしょう。
前田選手は、薫英女学院高校が全国高校駅伝を初制覇した2014年の補欠。1年先輩には世界選手権代表となった松田瑞生、2年先輩には学生長距離界のヒロインだった大森菜月(ともにダイハツ)がいます。
比べてこれといって実績のなかった前田がマラソンの英才教育を施され、チームにとってゲンのいい北海道を制したあたりは、4回連続してオリンピックのマラソン代表を送り出したマジシャン武富監督の手腕未だ衰えず、といったところでしょう。山口さんや坂本直子さんがブレイクした時の状況に通じるものがありますし、長身・脚長の体形は小原怜選手を彷彿とさせます。
私にとっても好きなタイプのランナーとなるかもしれません。安藤友香・清田真央に続くニューカマーとして、大いに注目していこうと思います。

村澤は3月の『びわ湖毎日』で、ハイペースの中、日本人トップを引っ張りながらも撃沈してから約半年。思い知らされたマラソンの怖さを十分な教訓として、この日のレースプランにつなげました。
自身が語っていたように、彼がレースで1着になったというのは、本当に久しぶりのことです。おそらく東海大学1年時の箱根駅伝予選会以来ではないでしょうか。 駅伝男としての活躍ぶりは数々印象に残っている一方で、跳びの大きい走法のためラストにスプリントを利かせられないことが、ヨーイドンのレースになかなか勝てない理由でしょう。その意味では、マラソンは彼にとって最適な種目であり、潜在能力からすれば冬場のレースで2時間6分、7分といったタイムで走る可能性は十分だと考えられます。
なかなかマラソンで芽が出ない「箱根のスター」が多い中で、ようやく期待の星が1人、「夢の東京オリンピック代表」を目指して羽ばたこうとしています。

さて、ここまでは前置きです。


同じ日の夜、TBSテレビで放送された『消えた天才』という番組、ゴールデンタイムの放送でしたからご覧になった方も多いかと思います。
「箱根のスター」と言えば、近年では1、2を争う大スターでありながら、実業団・富士通に入社後は鳴かず飛ばずに終わり、今春27歳の若さで陸上界に別れを告げた柏原竜二さんの近況が紹介されました。
富士通陸上競技部を退部した今、柏原さんは驚いたことにアメリカンフットボール部「富士通フロンティアーズ」のマネジャーとして、一生懸命にスポーツの裏方に励んでいました。(私はまったく知りませんでした)

番組自体は、低俗バラエティそのものの作りでせっかくのイイ話を台無しにしていました(なんで、ああいう無駄な時間ばかりかける演出で視る者をイライラさせるんでしょうかね?特にこの局は『世界陸上』の中継同様ヒドイです)けど、柏原さんのひたむきな仕事ぶりと明るい言動、チームで一番の有名人がマネジャーという状況をプラスの方向に発散している様子などはよく窺い知ることができました。
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「ランナーの将来を潰す」とまで極論する「箱根駅伝有害論」を再燃させるきっかけともなってしまった、柏原さんの引退劇。
事実、「山の神」というビッグネームが途轍もない重圧になっていたことは彼自身も認めていましたが、低迷から引退へと流れるプロセスには、「4年間箱根を走ったから」という因果関係はまったく認められないと思います。あくまでも、柏原さん自身のアスリートとしての幸運が学生時代に集約され、卒業後にお釣りがくるほどの不運に揺り戻された、というよくある事象なのだと思います。
「有害論」を唱える人々は、オリンピックや世界選手権のマラソン・長距離代表選手が、学生時代はスターと呼ばれる存在でなかったにしろ大部分「箱根」出身者であることを、どう説明するんでしょうか?
「箱根」や「都大路」があるから、男子の長距離界には次から次へと有望なジュニア選手たちがその場所を目指して健脚を磨き、スターとしての名乗りを挙げていく、そのどこが「有害」なのか、私には理解できません。
標高864メートルの「箱根」を征服し、さらに高みを目指そうとした選手が、過度のトレーニングに挫折して心身の故障を抱えてしまうことは、「箱根」の存在とはまったく別の問題です。柏原さんやかつての渡辺康幸さんのように挫折のまま無念の終局を迎えるランナーもいれば、村澤選手や大迫傑選手のように再び大輪の花を咲かせようとする選手もいる。それこそ、選手の数だけいろいろな紆余曲折がある。当たり前のことです。

そんなことを考えさせてくれた、久々にTVを通じて見た柏原さんの笑顔。過ぎ去った陸上人生にさまざまな思いはあるでしょうが、溌溂とした現在の境遇を経て、彼ならではの大輪の花を目指してもらいたいものです。

なお、この番組は数名の「天才アスリート」の現在を追いかけた特集番組で、陸上界からはもう一人の「消えた天才」が紹介されていました。そちらについては、また次回<第4弾!>でということで。
(「元陸上競技王者の、いま」は不定期ながらシリーズ読み物として、新たにカテゴリーを設定しました。)

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気が早いけど、今季の日本マラソンを振り返ると…



『びわ湖毎日マラソン』と『名古屋ウィメンズマラソン』の時期を迎えると、 寒い冬も、陸上ファンにとってワクワクドキドキ連続のロードレース・シーズンも、ともに「ああ、終わっちゃうなあ…」という感じになりますね。自らも走っている人などは、そろそろ重装備のウェアを1枚どうしようか、という陽気になってきました。

リオ五輪の“惨敗”を承けた今シーズンの日本マラソン界は、特に目立った急展開はなかったにしろ、「日進月歩」の僅かな1歩はあったかなと、そういう印象のシーズンだったと思います。
男子では、川内優輝・中本健太郎のかつて別府のコースで死闘を演じた両ベテランが存在感を示したのに続いて、 前週の『東京マラソン』では井上大仁(M.H.P.S)や設楽悠太(Honda)といった若手ランナーが希望をつなぐ結果を残しました。まだフルマラソンを走ってはいませんが、駅伝、10マイル、ハーフ、30kmと着実にレースをこなす神野大地(コニカミノルタ)への期待は、大きく膨れ上がりつつあります。加えて、大迫傑(NIKE.O.P.)のマラソン挑戦表明というニュースは、気が早いながら来シーズンに向けてのプラスアルファ要素としてついつい“皮算用”してしまいます。

◆“無名の新鋭”井上大仁の評価
井上大仁の快走は、一般的には「意外な無名選手が…」とか「ハイペースの先頭集団に付かなかった消極的レース」というように捉えられていたところがあるようですが、私はどちらも違うという気がしています。
井上は、2014年の関東インカレ・1部ハーフマラソンの優勝者です。この時の2部優勝が神野大地、2着は同じ青学の一色恭志でした。1部と2部は5分の時差スタートをしますから同じレースを走ったわけではないのですが、気象コンディションは同じと言ってよい中で、優勝タイムは井上が16秒上回っています。
以来私はこの選手にはずっと注目してきましたし、同シーズン『箱根』での3区3位(区間賞は駒澤の中谷)、初マラソンでの2時間12分台という結果にも「まずまず…」の感想を持っていました。
今シーズンは11月の『九州実業団対抗毎日駅伝』3区(13.0km)で今井正人(トヨタ自動車九州)、村山謙太(旭化成)を40秒以上上回る区間賞。本番の『全日本』では市田孝(旭化成)、今井に次ぐ4区(22.0km)3位。
これらを見ても、今まで注目度の高い『箱根』や『ニューイヤー』では目立った活躍がなかったことで地味な印象を持たれてはいたものの、相当な実力者であることが知れようというものです。さかのぼれば、2013年の『全日本大学駅伝』2区では大迫傑(早大)、山中秀仁(日体大)と区間賞を分け合ってもいます。
彼を「無名の新鋭」として扱ってしまうのは、ひとえにマスコミの認識不足であり、大学駅伝を注視し続けてきたはずの日テレの放送席ですらまともに取り合わなかったのは、少々残念なことではありました。
(ところで、前身の『東京国際マラソン』以来ずっと、西暦奇数年にはフジレテビ系列が中継してきたのに、今回初めて日テレが中継したのは、どういう事情だったのでしょうか?日テレが世界選手権代表選考会を中継するのは、去年の『さいたま国際』での女子に続いて、男子でもこれが初めてのことだったと思います)

今回のレースの序盤で、設楽悠太に先んじて先頭のペースに食い下がろうかという動きを見せた時から、私はレース中ずっと、その位置取りを気にしていました。結局井上は5kmまでに追走を諦め、かといってその後日本人主力選手の集まったグループに吸収されたという情報もなく、30km以上にわたってほとんどテレビに映ることのなかった井上がどんなレースをしているのか、想像を巡らすほかはありませんでした。
自分のペースを貫いた結果とはいえ、先頭の「世界記録ペース」にも後方で佐藤悠基がつくる「巡航ペース」にも迎合せず、ほぼ単独走となった厳しいレース展開を耐え抜いての日本人トップ。彼こそは、この日のマラソンで最も勇気あるレースをしたランナーであり、ここ数年では好タイムと言える2時間8分22秒でのフィニッシュという成績は、評価してよいのではないかと思います。

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感想(1件)


◆「レース展開への評価」は無用!
ここのところ、日本人選手が苦戦を続けるマラソンという種目への姿勢について、陸連上層部の見解に妙な“揺らぎ”が目立つことに、とても違和感を覚えています。このことについては『大阪国際女子マラソン』のくだりでも述べたのですが、「世界のペースに付いていかなければダメ」とか、「前後半をフラットに、いやむしろネガティヴ・スプリットで」とか、およそ相反する指針を公然と口にする指導者が、信用ならんという感じなのです。つい、私がむかし所属していた会社で「レギュラーワークの売上を伸ばしつつ、新規事業を立ち上げろ」と常々言っていた上司を思い出してしまいます。「んな無茶な!」ということですよ。
「世界のペースに付いていく」ことが大事なら、ネガティヴ・スプリットを想定した遅めのペースメーカーを設定するのはおかしいし、また人為的に前半を遅くしたペースでネガティヴを実現したとしても、そこに何の意味があるのか、という気がします。
『大阪』で好成績を残した重友梨佐や堀江美里、『東京』で上位を占めた井上や山本浩之(コニカミノルタ)、設楽、それぞれが「自分のレース」に徹底した結果だったというのは明らかです。
設楽の場合は、前半ハーフのペースは3週間前の『香川丸亀国際』で試運転済みの想定レースで、そこから先は未知の領域へのチャレンジ。上手くいったとまではいきませんでしたが、今回はこれでOKです。今後は後半の落ち込みを食い止めるためのトレーニングを積み重ねればいい、という目標は「体感」としてしっかりと掴んだはずです。

42.195kmを走り通しての結果がナンボ、それがマラソンという種目の全てであるといってもいいのです。ペース配分は人それぞれ、結果の受け止め方も人それぞれ、日本のマラソン界が「強い選手」を代表に選ぶことができない現状では、こうした中から将来性や堅実性(あるいは逆に一発の魅力)を勘案して、目先の大会に選手を送り込んでいくしか、ないのではないでしょうか?…異なる大会でのタイム比較や、理想とするレース展開に適ったかどうか、そんなことは二の次で構わないと思うのですが、どうでしょう?

◆『びわ湖』への期待
今日の『びわ湖』には、大学駅伝路線では常に「日なたの道」を歩んできた一色恭志が2度目のマラソンに挑みます。本人から「練習不足」のコメントが出ていますので、あまり期待はせずに見守ってみたいとは思います。一般参加選手のリストには、宮脇千博(トヨタ自動車)や村澤明伸(日清食品G.)、市田宏(旭化成)などの名前もあります。
いっぽう迎え撃つ、昨シーズン日本ランク1位の佐々木悟(旭化成)や松村康平(M.H.P.S.)がどんなレースをするか、三十路を迎えたこの世代の力量を推し量る意味でも、そこが私の注目するところです。
小さいけれど確実な一歩、それを感じられるレースを見たいものです。

 
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