さて、このブログは陸上競技専門とか言いながら、どうも女子長距離に肩入れしすぎるんじゃないかとのご批判もどこ吹く風、今回も駅伝の合間を縫ってのそっち方面情報です。
ただ、当方の都合により2週間以上も経過しての旧情報であります点、平にご容赦を。

12月10日(土)に開催された『日本実業団陸上競技連合女子長距離記録会』の10000mで、宮田佳菜代選手(ユタカ技研)が、32分14秒40の好記録をマークして1着。この記録は従来のPBを28秒も上回る大ベストであると同時に、ロンドン世界選手権の参加標準記録32分15秒00をギリギリながら突破するものでした。
ロンドン標準記録については、トラック種目のうち10000mに限っては今年1月1日以降の記録が有効(他種目は10月1日以降)ということになっていますので、すでに15名ほどの選手が到達を果たしているのですが、豊川高校時代から長距離界随一のアイドルと言われながらも実業団で芽が出ない日々の続いた宮田選手、遂にその一角に名乗りを挙げたというわけです。



レースはペースメーカーも速い外国人ランナーの参加もなく、1周77~78秒、各1000mを3分14~16秒というラップタイムをきっちりと刻んで進行、序盤から上位を形成した5人の選手が最後までトップ争いを繰り広げるという、絵に描いたような平板な展開となりました。
標準記録の32分15秒で走るには、平均ペースとして1周77.4秒、1000mあたり3分13秒5のラップが目安となりますが、これを僅かに超えるペースをずっと維持したまま、ラスト1000のビルドアップで測ったように標準突破が達成されました。
前半積極的にレースを牽引した一山麻緒(ワコール)、6600mから先頭に出てペースダウンを抑えた宮田、9000mでロングスパートを仕掛けてビルドアップに貢献した谷本観月(天満屋)と、平板な中にも記録を生み出す見どころは随所に見られます。
宮田のラスト1周は約70秒。『全日本実業団女子駅伝』1区で強豪・竹中理沙(資生堂)を振り切って区間賞を獲得した一山を抑えての1着は、大きな自信につながるレースとなったのではないでしょうか。
2着の一山は惜しくも標準に0.73秒届かず。しかしおそらく10000mは初レースだったと思いますので、ルーキー・イヤーとしては申し分のない成長ぶりを見せた、と言えるでしょう。

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宮田選手は2010年から3年続けて『全国高校駅伝』のメンバーとなり、1年=4区4位、2年=2区3位、3年=2区8位と、常に女子駅伝の主役の座にあった強豪校の主軸の一人として活躍、そのルックスから、おそらくコアな陸上ファンの間では非常な人気を博した選手ではないかと思われます。(私の“タイプ”ではありませんが)
とりわけ、2012年の豊川は1走から順に、岩出玲亜(3年→ノーリツ)、宮田、鷲見梓沙(1年→ユニバーサル)、関根花観(2年→日本郵政G)、堀優花(1年→パナソニック)と錚々たる顔ぶれが揃った黄金メンバーで、男子で言えば2008年に優勝した佐久長聖の豪華オーダーを彷彿とさせます。ただ、2012年の女子は菅野七虹(→立命館大)を筆頭に1年時から鍛え上げられたメンバーを揃えた立命館宇治が制し、豊川は2位に甘んじています。 

高校を卒業した宮田は、新興実業団チームの時の栖(ときのすみか)に入社、豊川の1年先輩である安藤友香(→スズキ浜松AC)とたった2人での活動を開始しましたが、何やら問題があったのか、2人とも1年ほどで離脱し移籍先を探す苦難に見舞われます。
折しも2005年の豊川駅伝部創設以来、僅か2年目にして『全国』出場(7位)、3年目で初優勝、以後4度の日本一を果たすまでチームを育て上げた名匠・森安彦監督がユタカ技研のヘッドコーチに転任することになり、その誘いを受けたものでしょうか、同チームの一員として落ち着くと、2014年の『実業団駅伝』では1区を走りました。
ところが今度は2015年の春になって、ユタカ技研の選手たちが宮田を残して集団退部(事情はまったく知りません。何やらキナ臭い感じはしますけど…)する事態となり、丸々1年間というもの、駅伝出場はおろか、ユタカ技研は選手=宮田ただ1人での活動を細々と続けることになります。
そして今年、ようやく7人の新人部員を迎え入れて陣容の整ったチームは、『実業団駅伝』予選会で前半首位争いを繰り広げる健闘を見せ、みごとに本戦出場の切符を獲得したのです。

『予選会』で躍動したユタカ技研のルーキーたちは、いずれも高校時代まったくと言っていいほど実績のない、いわゆる無名選手ばかり。そのチームを本戦出場にまで押し上げた森監督の指導力が改めて注目されるとともに、21歳にしてキャプテンの重責を担うことになった宮田選手の気持ちの持ちようが大きく変化し、それが今回の大ベストにつながったのだろう、とは容易に想像されます。
2012年に同じチームで戦った豊川OGたちの中では、唯一紆余曲折に苛まれ記録的にも伸び悩んだ宮田選手。今回の「標準突破」をきっかけに、女子トップランナーへの階段をさらに上がってくれるようになれば、再び人気に火が着くということもあるかもしれません。陸上界全体が盛り上がるためにも、“アイドルランナー”の今後に、注目していきましょう。(あくまでも、私の“タイプ”ではないんですけどね)