全国の陸上競技ファンが待ちに待った、今季長距離トラック開幕戦とも言える『ホクレン・ディスタンスチャレンジ2020』第1戦の士別大会が、4日行われました。
まずは、無観客大会とはいえ、厳重なCOVID-19対策のもと開催に漕ぎつけていただいた主催者および関係者の皆様に、心から感謝を申し上げたいと思います。
また逆境にあっても日々のトレーニングを積み重ね、見事にこの場でその成果を発揮してくれた選手の皆様、敬意を捧げずにはいられません。
LIVE配信をご覧になった方も多かったと思いますが、従来の映像垂れ流し的な配信から一歩進んで、画面でのタイマー表示、タイムスケジュールの表示、そして河野匡・大塚製薬監督による的確な実況と、大変分かりやすいものになっており、有難かったです。実況マイクは周辺の雑談を拾い放題、というのがご愛敬ではありましたけれども、それもまた関係者の生の声が聴ける楽しみで、結構でした。時折機材の不具合か回線の問題か、映像がフリーズしたり乱れたりという点を修正していただくとともに、今後さらに、素人配信ならではの工夫で、いい映像を届けていただけることを期待します。
さて、本ブログでは「女子中長距離」がメインの話題ということで、今回男子では目ぼしい記録的話題もなかったということもあり、女子2種目に限ってレース結果を振り返ってまいります。
スタートからイーブンのハイペースで飛び出した田中希実とヘレン・エカラレの一騎討ち。
ラップ表を見ると800以降はエカラレが取っていますが、むしろレースの過半は田中が主導権をとっており、国内外国人ランナーの中でも最強の部類に入るエカラレが意地にかけても前に出ようとするところ、終始そのイニシアティヴを渡さなかった田中が、ラスト1周の激烈な抜きつ抜かれつを制し切る、という見事な内容でした。
小林祐梨子が14年前に作った日本記録まで、あと僅か0.81秒。
「田中さんはスパイクを履いていませんでした。マラソンシューズで走っております」
という河野監督のコメントが衝撃的でした。
もう一人、期待された廣中璃梨佳は、陣内綾子・菊地梨紅とともに3位グループでの追走となり、終盤の伸びなく、さらに後方から軽快な走りで追い上げた石澤ゆかりにも差されて5位に留まりました。1月の『全国女子駅伝』では、田中を含む名だたる1区スペシャリストの面々を相手に圧倒的な力の違いを見せつけ、歴史的な区間新記録を出した廣中は、現時点ではまだ調子が上がっていない様子です。
スタート時の気温は19℃、強めだった風も収まりつつあり、コンディションは良好です。ジェロティッチ・ウィニーが当初は15分45秒(3分09秒/km)を想定したペースメーカーを務めました。
スタートしてすぐに好位置につけた前田穂南の走りが軽やかで、自然とPMの背中をつつくような流れになり、想定よりも速いペース。早くもソーシャルディスタンスの縦長に、選手の間隔が切れていきます。
PMウィニーの背後は同僚九電工勢の中でも“最下級生”、20歳になったばかりの宮田梨奈、その後ろに前田という隊列はそのままずっと続き、しばらく追走していた3人の九電工先輩や平井、棚池といったあたりは3000mまでには振り落とされてしまいます。
3番手を耽々と、ジョギングを楽しむかのように走る前田は、もう惚れ惚れしてしまう美しい走りです。これは優勝間違いなしと見ていましたが、残り2周でPMが外れるとともにスパートするも、意外や宮田が離れず、勝負はラストの直線まで持ち越されました。スパートしたとは言ってもこの1周で75秒を要した前田は必死に相手を振り切ろうというものではなく、マラソン女王にふさわしい余裕のまとめ方だったと言えるでしょう。
“大金星”を挙げた宮田のタイムは15分52秒23のPBを約18秒も上回り、前田も約3秒、PBを更新する実りあるレースとなりました。意外ではありましたが、また新たな力の台頭が見られてよかったと思います。
第2戦の深川大会は8日(水)開催。男女5000m、10000mのほか、女子は3000m、3000mSCも行われます。前田穂南は一山麻緒・安藤友香・福士加代子のワコールトリオらとともに10000mにエントリー。田中、廣中、宮田は3000mに、士別の3000mを制した佐藤早也伽(積水化学)は5000mに登場する予定です。