予想どおり、駅伝の予想で赤っ恥をかいてしまいました。
「3強」と断言していた豊田自動織機、ヤマダ電機、ユニバーサルエンターテインメントはいずれも前半の3区までに撃沈。5区では資生堂、九電工、ワコール、日本郵政グループ、第一生命グループという最大4行しか取り上げなかった5チームが横一線で競り合う展開に、茫然。この時点で、豊田は失格、ヤマダとユニバはシード権がどうかという位置で汲々とする有様でした。
◆「3強」それぞれの言い訳
まったく駅伝は何がどうなるか、予測不能で、だから面白い。
豊田にとっては優勝に向け上々の序盤の展開でしたが、第1中継所でのタスキリレーが違反を取られて失格とは!
1区で途中遅れかけた福田有以が実力者の片鱗を見せて3位まで盛り返し、首位から8秒差でリレーゾーンに到達したものの、引き継ぐ島田美穂がスタンバイしていません。数秒のロスの後に待機スペースから慌てて飛び出してきた島田が、前にいた福田からタスキをもぎ取るようにしてスタートしていったのですが、この時に福田がリレーゾーンをオーバーしてしまっていた、ということなのでしょうか?TV画面ではゾーンのエンドライン、選手の足元が見切れてしまっていたので、判りませんでした。
リレーゾーンでのスタンバイが遅れたのは島田の大チョンボでしたし、福田がオーバーゾーンしたとすれば、これも残念なボーンヘッドです。しかし、そこを責めてもしょうがありません。豊田にツキがなかった、という以外には言いようがないですね。
実業団駅伝初出場の島田とすれば、先輩方に申し訳ない気持ちでいっぱいの結果となりましたが、まだ失格を知らない状態でスタート時には12~3秒に広がっていた差を一気に詰め、先行する2チームを交わしてトップに立った走りは見事でした。記録には残らないとはいえ、12分10秒で岡本春美(三井住友海上)、堀優花(パナソニック)と並ぶ区間2位タイ。昨年の高校ランキング3000m1位(日本2位)ながら、初出場で不安視された上にリレーのミスで舞い上がってしまっても仕方がなかったこの区間で、百点満点の走りだったと言えるでしょう。
3区の林田も序盤は強豪に互していい走りに見えましたが、後半はズルズルと後退。この時点で失格がなかったとしても、豊田の優勝はかなり苦しいことになっていたように思えます。
それでも、4区から白タスキでの繰り下げ?スタートを課せられ、モチベーションと競走相手を失って走った4区アン・カリンジ、5区・沼田未知、6区・横江里沙の本気の追い込みを、見たかったところでした。ヤマダ電機などとの位置関係からして、もしかしたら終盤もつれる展開があったかもしれません。
ヤマダ電機は、1区・竹地志帆が後手を踏んだことが響き、2区・石橋麻衣が区間8位、3区・石井寿美が10位、4区・森唯我が8位と波に乗れず、5区・6区での猛烈な追い上げでもどうしようもない大差をつけられてしまいました。いかに序盤の流れが重要かを、身をもって思い知らされる結果でした。
ユニバーサルは、3区・鷲見梓沙の状態がすべてでした。4区フェリスタ・ワンジュグと5区・和久夢来の不調も計算外で、これがシード権まで危うし!の要因となったのですが、2区・木村友香の区間賞と6区・中村萌乃の追い上げ(区間2位タイ)は期待どおり。全員が実力を発揮するのは、本当に難しいことですねえ。
ホンネを言えば、シード権を逃してくれるくらいのほうが、来年は予選会からこのチームを見られるのでいいかな、なんて考えてました。予選会システムの微妙なところですね。
◆「予想外の優勝争い」の言い訳
一方で、優勝したJP日本郵政グループは5区・鍋島莉奈の区間賞&トップ奪取が決め手となって、創部3年目にして初優勝の快挙です。
このチームも、大エースの鈴木亜由子が不調、1か月前の予選会ではナンバー2の関根花観とナンバー3の鍋島が目を覆わんばかりの凡走ということで万全の状態かどうかが疑われましたが、この3人が今できる最高の走りを見せ、最低でも区間11位(4区)という堅実なリレーが大金星につながりました。
鈴木がエース区間をぶっちぎれる状態であれば、と考えると、一躍来年以降も優勝候補の一角としてしばらく取り沙汰されることになるでしょう。
増田明美さんの予想が当たった、と思うと少々悔しい(私、この人の解説は「細かすぎる選手情報」以外まったく信用していません)ですが、第一生命グループも、区間賞こそなかったものの両エースが実力を発揮し、不安視されたルーキーも予想以上に健闘して、各区間6位・6位・7位・6位・3位・2位という実に隙のないリレーで優勝争いに食い込みました。特に、4区の湯田向日葵はヤマダの森を抑えて日本人トップで田中智美の追い上げを引き出し、隠れた殊勲賞的存在となりました。
驚いたのはワコールと資生堂のトップ8入りです。
ワコールは福士加代子がまずまずの走りをしたことで後半まで首位戦線に踏み止まる理想的な展開。それを引き出したのが、予選会でも活躍したルーキー一山麻緒の区間賞でした。どうやら、今年の女子長距離は駅伝での活躍に関する限り、高卒ルーキーの当たり年、それもどちらかというと高校時代無名に近い存在だった選手がスターダムに駆け上がってきた感があります。
資生堂は予選会とまったく同じ「先行逃げ粘り」のオーダーで、3区でトップに立つ展開は十分に予想の範疇にありました。しかしこれでは4区以降の凋落は仕方がないかな、と思っていたところ、4区・須永千尋がムルリ・ワイディラ(九電工)を抜き返す根性を見せ、5区・奥野有紀子の粘りにつなげました。両者ともに区間16位、21位とパフォーマンスは良くなかったのですが、「1秒を削り出す」姿勢が7位シード権へと結びついたのだと思います。
昨年の日本選手権1500mチャンピオンの須永は、駅伝では短距離区間でも「長過ぎる」タイプと見え、これまで常にチーム低迷の一因を作ってきたようなところがあった選手。相手が外国人ランナーの中ではやや格下だったとは言え終盤の粘り腰を見せたことで、今後の自信になる走りだったのではないでしょうか。実は「美走者列伝」には欠かせない超美人ランナーで、私、いつも密かに応援はしています。
またアンカーの池田睦美は区間8位とそれなりにいい走りでトップ8を死守し、埋もれかけていた「リッツのキャプテン」がようやく復活のきっかけを掴んだかもしれません。
資生堂に関しては、「シード権までにはあと1年かかる」なんて書いてましたんで赤っ恥の上塗りもいいところですが、もともと私はここのピンクのユニフォームのファンです。2006年の優勝以来、分裂、リストラ等々紆余曲折があって、一時は存続さえ危ぶまれたチーム。来年の補強次第では、もっと面白い存在になっていってくれるでしょう。
予想は大外れに終わったものの、1区や3区の豪華な顔ぶれ、5区からの激しい優勝争いと、今年も素晴らしいレースを見せてくれた『実業団女子駅伝』。これを観終わると、いつも「ああ、今年ももう終わりだなあ…」という気分になったもんですが、開催が早まった今年は、まだ1カ月以上残っているんですね。
年内は高校駅伝、大学女子選抜駅伝、年明けて実業団男子に箱根、都道府県対抗駅伝と、お楽しみはまだまだ続きます。