豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

岡本春美

『全日本実業団女子駅伝』大外れ予想の言い訳集



予想どおり、駅伝の予想で赤っ恥をかいてしまいました。
「3強」と断言していた豊田自動織機、ヤマダ電機、ユニバーサルエンターテインメントはいずれも前半の3区までに撃沈。5区では資生堂、九電工、ワコール、日本郵政グループ、第一生命グループという最大4行しか取り上げなかった5チームが横一線で競り合う展開に、茫然。この時点で、豊田は失格、ヤマダとユニバはシード権がどうかという位置で汲々とする有様でした。

◆「3強」それぞれの言い訳
まったく駅伝は何がどうなるか、予測不能で、だから面白い。
豊田にとっては優勝に向け上々の序盤の展開でしたが、第1中継所でのタスキリレーが違反を取られて失格とは!
1区で途中遅れかけた福田有以が実力者の片鱗を見せて3位まで盛り返し、首位から8秒差でリレーゾーンに到達したものの、引き継ぐ島田美穂がスタンバイしていません。数秒のロスの後に待機スペースから慌てて飛び出してきた島田が、前にいた福田からタスキをもぎ取るようにしてスタートしていったのですが、この時に福田がリレーゾーンをオーバーしてしまっていた、ということなのでしょうか?TV画面ではゾーンのエンドライン、選手の足元が見切れてしまっていたので、判りませんでした。
リレーゾーンでのスタンバイが遅れたのは島田の大チョンボでしたし、福田がオーバーゾーンしたとすれば、これも残念なボーンヘッドです。しかし、そこを責めてもしょうがありません。豊田にツキがなかった、という以外には言いようがないですね。
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実業団駅伝初出場の島田とすれば、先輩方に申し訳ない気持ちでいっぱいの結果となりましたが、まだ失格を知らない状態でスタート時には12~3秒に広がっていた差を一気に詰め、先行する2チームを交わしてトップに立った走りは見事でした。記録には残らないとはいえ、12分10秒で岡本春美(三井住友海上)、堀優花(パナソニック)と並ぶ区間2位タイ。昨年の高校ランキング3000m1位(日本2位)ながら、初出場で不安視された上にリレーのミスで舞い上がってしまっても仕方がなかったこの区間で、百点満点の走りだったと言えるでしょう。
3区の林田も序盤は強豪に互していい走りに見えましたが、後半はズルズルと後退。この時点で失格がなかったとしても、豊田の優勝はかなり苦しいことになっていたように思えます。
それでも、4区から白タスキでの繰り下げ?スタートを課せられ、モチベーションと競走相手を失って走った4区アン・カリンジ、5区・沼田未知、6区・横江里沙の本気の追い込みを、見たかったところでした。ヤマダ電機などとの位置関係からして、もしかしたら終盤もつれる展開があったかもしれません。

ヤマダ電機は、1区・竹地志帆が後手を踏んだことが響き、2区・石橋麻衣が区間8位、3区・石井寿美が10位、4区・森唯我が8位と波に乗れず、5区・6区での猛烈な追い上げでもどうしようもない大差をつけられてしまいました。いかに序盤の流れが重要かを、身をもって思い知らされる結果でした。

ユニバーサルは、3区・鷲見梓沙の状態がすべてでした。4区フェリスタ・ワンジュグと5区・和久夢来の不調も計算外で、これがシード権まで危うし!の要因となったのですが、2区・木村友香の区間賞と6区・中村萌乃の追い上げ(区間2位タイ)は期待どおり。全員が実力を発揮するのは、本当に難しいことですねえ。
ホンネを言えば、シード権を逃してくれるくらいのほうが、来年は予選会からこのチームを見られるのでいいかな、なんて考えてました。予選会システムの微妙なところですね。



◆「予想外の優勝争い」の言い訳

一方で、優勝したJP日本郵政グループは5区・鍋島莉奈の区間賞&トップ奪取が決め手となって、創部3年目にして初優勝の快挙です。
このチームも、大エースの鈴木亜由子が不調、1か月前の予選会ではナンバー2の関根花観とナンバー3の鍋島が目を覆わんばかりの凡走ということで万全の状態かどうかが疑われましたが、この3人が今できる最高の走りを見せ、最低でも区間11位(4区)という堅実なリレーが大金星につながりました。
鈴木がエース区間をぶっちぎれる状態であれば、と考えると、一躍来年以降も優勝候補の一角としてしばらく取り沙汰されることになるでしょう。

増田明美さんの予想が当たった、と思うと少々悔しい(私、この人の解説は「細かすぎる選手情報」以外まったく信用していません)ですが、第一生命グループも、区間賞こそなかったものの両エースが実力を発揮し、不安視されたルーキーも予想以上に健闘して、各区間6位・6位・7位・6位・3位・2位という実に隙のないリレーで優勝争いに食い込みました。特に、4区の湯田向日葵はヤマダの森を抑えて日本人トップで田中智美の追い上げを引き出し、隠れた殊勲賞的存在となりました。

驚いたのはワコールと資生堂のトップ8入りです。
ワコールは福士加代子がまずまずの走りをしたことで後半まで首位戦線に踏み止まる理想的な展開。それを引き出したのが、予選会でも活躍したルーキー一山麻緒の区間賞でした。どうやら、今年の女子長距離は駅伝での活躍に関する限り、高卒ルーキーの当たり年、それもどちらかというと高校時代無名に近い存在だった選手がスターダムに駆け上がってきた感があります。

資生堂は予選会とまったく同じ「先行逃げ粘り」のオーダーで、3区でトップに立つ展開は十分に予想の範疇にありました。しかしこれでは4区以降の凋落は仕方がないかな、と思っていたところ、4区・須永千尋がムルリ・ワイディラ(九電工)を抜き返す根性を見せ、5区・奥野有紀子の粘りにつなげました。両者ともに区間16位、21位とパフォーマンスは良くなかったのですが、「1秒を削り出す」姿勢が7位シード権へと結びついたのだと思います。

昨年の日本選手権1500mチャンピオンの須永は、駅伝では短距離区間でも「長過ぎる」タイプと見え、これまで常にチーム低迷の一因を作ってきたようなところがあった選手。相手が外国人ランナーの中ではやや格下だったとは言え終盤の粘り腰を見せたことで、今後の自信になる走りだったのではないでしょうか。実は「美走者列伝」には欠かせない超美人ランナーで、私、いつも密かに応援はしています。
またアンカーの池田睦美は区間8位とそれなりにいい走りでトップ8を死守し、埋もれかけていた「リッツのキャプテン」がようやく復活のきっかけを掴んだかもしれません。
資生堂に関しては、「シード権までにはあと1年かかる」なんて書いてましたんで赤っ恥の上塗りもいいところですが、もともと私はここのピンクのユニフォームのファンです。2006年の優勝以来、分裂、リストラ等々紆余曲折があって、一時は存続さえ危ぶまれたチーム。来年の補強次第では、もっと面白い存在になっていってくれるでしょう。

予想は大外れに終わったものの、1区や3区の豪華な顔ぶれ、5区からの激しい優勝争いと、今年も素晴らしいレースを見せてくれた『実業団女子駅伝』。これを観終わると、いつも「ああ、今年ももう終わりだなあ…」という気分になったもんですが、開催が早まった今年は、まだ1カ月以上残っているんですね。
年内は高校駅伝、大学女子選抜駅伝、年明けて実業団男子に箱根、都道府県対抗駅伝と、お楽しみはまだまだ続きます。

 

ホクレンディスタンスに大迫傑登場!



『ホクレンディスタンスチャレンジ2016』最終戦の北見大会が昨日行われました。
このシリーズ、遠い北海道での開催ということでなかなか現地観戦の望みは叶いませんが、わずかな情報からいろいろと想像力を働かせることが、毎回とても楽しみです。

今回のハイライトは、リオ男子長距離代表・大迫傑(NIKE.O.P)の緊急参戦でしょう。
“本番”まで1カ月を切った(男子10000m決勝は8月12日)この時期、スピードチェックの意味でか1500mAに登場した大迫選手は、 3分40秒49と日本歴代15位に相当するPBで1着。5000mにもエントリーという強行軍でしたが、こちらは疲労の蓄積を考慮してか、DNFでした。
今晩行われるDLモナコ大会には、チームメイトのモー・ファラー(GBR)がやはり1500mに出場予定とのことで、どうせなら大迫選手にもそっちで走ってもらいたかった気もしますが、まずまずの成果というところでしょう。

同じレースで、800m代表の川元奬(スズキ浜松AC)は3分58秒44の9位。こちらは代表追加が決まったばかりで、少々気が抜けたタイミングでしたか?

女子3000mAでは、社会人ルーキーの岡本春美(三井住友海上)が8分59秒96の快記録。国内では久々に見る8分台ではないでしょうか?しかもアン・カリンジ(豊田自動織機)を僅差で抑えての1着は見事です。
日本人2番手の中村萌乃(ユニバーサル)も9分06秒29の好タイム、以下上田未奈(城西大)、倉岡奈々(デンソー)、横江里沙(豊田自動織機)、森林未来(諫早高)と続いています。

男子10000m競歩に出場した高橋英輝(富士通)は自身の日本記録に1分以上及ばない39分29秒03。リオでの金メダル候補としては、調整順調と見るか、思ったほどではないと見るか、どうなんでしょう?
男女の5000m、10000mを見る限り、この時期のオホーツク沿岸地方としては気温が20度を超えるコンディションは思いのほかだったようで、顔ぶれの割には軒並み記録は平凡でした。この影響は高橋選手にもあったかもしれません。

女子3000mBという低いレベルの種目で、動向の気になる選手名がありました。
4着になった吉本ひかり(9分34秒06)、17着の久馬悠(9分48秒95)、21着の久馬萌(9分58秒99)…いずれもダイハツの3選手です。

10000mの日本学生記録保持者・吉本は、佛教大からヤマダ電機に入社しましたがほどなくして一時競技を引退、昨年からダイハツの所属となりました。その間の事情はよく分かりませんが、ようやく競技会に出てそこそこの走りを見せてくれたことは、復活への期待をしてもいいのかな、という気にさせてくれます。
一方の久馬姉妹は、言わずと知れた中学生時代からのスター選手ながら、高校時代、大学2年以降と2度のスランプ期間を経て、ようやくお目覚めモードに入ってくれたでしょうか?あれだけのルックスですからいろいろと雑音も多くて大変かもしれませんが、大学の後半は故障の影響もあってポッチャリ体形のサボリモードだったのは明らかなので、厳しい社会人生活の、最初の1,2年が肝要でしょうね。 
ダイハツがいい意味での「再生工場」となってくれるかどうか、またチームにとっても準エースの坂井田歩選手が抜けた後の戦力として期待するところは大でしょう。現在お休み中の前田彩里選手ともども、目が離せません。
 



※筆者夏休みのため、次回アップは7月19日頃の予定です。

横江里沙が5000mで好タイム



夏の北海道・中長距離シリーズとして恒例の『ホクレンディスタンスチャレンジ2016』第3戦の網走大会が昨日行われました。
今回はオリンピックの代表選考が、5000mと10000mに限っては日本選手権で最終となり、そのため例年見られるような「日本選手権以降に標準記録を破っての追加代表狙い」でのエントリーはなく、第1・2戦はやや寂しい顔ぶれと見えましたが、網走ではトップランカーも多数出場してきました。

その中で、女子5000mAでは横江里沙選手が15分18秒11の好タイムで圧勝しました。
このタイムは日本歴代23位、今季1位にランクされるもので、リオ標準記録の15分24秒00、日本選手権優勝記録をも上回っています。前述のように代表追加とはなりませんが、昨日は標準記録有効期間の最終日だったため、横江選手は形式上はオリンピック参加資格を持ったことになります。
私は日本選手権の長距離種目優勝候補の一人として横江選手の名前を挙げていただけに、あの時この走りができていたら、と惜しまれますが、今後のさらなる飛躍に注目していくことにしましょう。
その他、5000mでは上位選手が軒並み自己ベストを更新(4位の山本選手は僅かに届かず)、また10000mでも日本選手権上位で健闘した石井寿美選手(ヤマダ電機)はじめ4人が31分台に突入しています。
また男子10000mでは、リオ代表の設楽悠太選手(Honda)が登場、27分48秒35で2位(日本人1位)となり、引き続き好調をキープしています。

◇女子5000mA

Hokuren02


◇女子10000m
Hokuren01
※いずれも http://www.jaaf.or.jp/distance/result/abashiri.pdf より


 
ギャラリー
  • 『第42回全日本実業団対抗女子駅伝』大胆展望
  • <再掲載>連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#3 ~1987年/第22回福岡国際マラソン
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  • 『第105回日本陸上競技選手権』観戦記+α その⑤⑥
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