豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

室伏広治

世界に注目、世界も注目



第100回日本陸上競技選手権が行われていた先週末は、イギリス、フランス、イタリア、南アフリカ、ポーランドなどでも国内選手権が開催され、オリンピック代表が続々と名乗りを挙げているようです。


日本選手権の模様も、IAAF(国際陸連)のHPに紹介されています。
世界に通用する選手としては、新井涼平(Shohei Araiと誤記)、野澤啓佑の2人が紹介され、ほかに話題として男子100mのケンブリッジ飛鳥、女子200mの福島千里、そして何といってもラスト・ステージを迎えることになった室伏広治について、長々と記述されています。

話題性は別として公平に見渡した場合、日本のトラック&フィールドではIAAFの見立てどおり、新井と野澤のレベルは最も大きな期待が寄せられてしかるべきものでしょう。

特に野澤が5月に記録したPB48秒67は今季世界ランク2位。今年の世界のヨンパーはいつになく低調で、王国アメリカは相変わらずマイケル・ティンズレー、バーション・ジャクソン、カーロン・クレメントらのオールドタイマー頼り、昨年世界選手権であっと言わせたニコラス・ベット(KEN)やクルソン(PUR)、バンジル(RSA)といったあたりもパッとしません。ダイヤモンドリーグでも、日本の国内大会とさして変わらないレベルでのレースが続き、48秒台なら確実にトップ3入り、しかも毎回上位の順位が入れ替わるという有様です。すでに3回48秒台で走っている野澤の安定感が、際立ちます。
もちろん全米選手権では47秒台~48秒前半のタイムが続出してくることが予想されますし、オリンピックまでには大きく勢力図が変わってくることでしょう。しかしながら、野澤のこの安定ぶりは本番でその域に近づくことさえ期待できるもので、日本ヨンパー陣の悲願であるオリンピックでの決勝進出は、大いに可能性を感じさせます。
あとは、怪我をしないよう、本番までの1か月半を順調に過ごしてほしいと願うばかりです。

↓ http://www.iaaf.org/news/report/japan-champs-arai-nozawa
JAC38
(IAAFホームページより)


 

このみん登場!女子10000mスタート!



 JAC13

女子走幅跳、注目の甲斐“このみん”が登場してきました!
しかしこのストリーミング配信、トラック競技に関しては問題ないんですけど、フィールドの試合経過がまったく分からない。棒高跳や走高跳はまだ、跳んだか落としたかで少しは状況が分かりますが、走幅跳は映してるだけでまったく記録を教えてくれない。せっかくいいカメラワークで撮ってるのに、なんだよ!て感じです。
どうせNHKの映像使ってるんだと思うんですが、だったらレコード・バーくらい表示したらいいのに。

男子400mHは軒並み予選よりも記録が悪くなりました。
1組は松下祐樹(ミズノ)が直線ごぼう抜きで接戦を制して1着。ただ、少し脚を痛めたみたいで心配です。
2組は野澤の圧勝。決勝での代表内定は、ほぼ間違いないところです。(派遣設定を破っているので入賞なら「内定」ですが、万一決勝で「失格」すると内定条件を満たさないので、まだ「内定」ではありません) 

男子ハンマー投も始まりました。室伏広治(ミズノ)の1投目は、70mに遠く届かず65mライン。
JAC18


さあ!いよいよ女子10000m!・・・と思ったら、スタートしてすぐに、記録のわからない女子走幅跳を延々と映してる。ここのディレクター、ちょっとおかしいよ!
あとはTVでね。
 

跳躍ニッポン復活なるか?~第100回日本陸上競技選手権のミカタ ⑧




これまでに男女の短距離・長距離およびすでに「派遣設定記録」到達者のいる有望種目について、私なりの展望を掲載してまいりました。

今回は、その他の”準有望”種目、注目種目についてまとめてみたいと思います。

◆男子400m~マイルの栄光は遠く彼方に
かつては高野進、ここ10年ほどは金丸祐三(大塚製薬)という切り札を軸に、単独種目と4×400mリレーで世界大会に挑み続けているロングスプリント、ひと時はリレーでメダルにあと一歩、といった状況にまで迫ったこともありましたが、最近はどうもいけません。

ただ今回の日本選手権では、この種目では前人未到の11連覇を継続中の金丸(45秒22)を、ウォルシュ・ジュリアン(東洋大=45秒64)以下の若手が止めるかどうか、という楽しみがあり、レースは白熱しそうです。
打倒・金丸に名乗りを上げそうな若手としては、ほかに北川貴理(順大=45秒52)、佐藤拳太郎(城西大=45秒58)、堀井浩介(城西大=45秒85)、小林直己(東海大=45秒91)、油井快晴(順大=46秒36)、加藤修也(早大=46秒41)と、 関東インカレ決勝のメンバーがズラリと挙がります。昨年3位の田村朋也(住友電工=46秒07)もいます。
ちょっと驚きましたが、今季ランキング1位(45秒44)に藤原武(ユメオミライ)という見慣れない名前があります。
エルサルバドル出身、アテネ・オリンピックや大阪世界選手権に出場経験がある30歳の選手で、2013年に日本国籍を取得したのだとか。 所属先は東京都下にある主に子供を対象にしたスポーツクラブの運営会社で、北京五輪などでマイルリレー・メンバーだった堀籠佳宏さんが社長を務めています。資格記録は今年のコスタリカ選手権で出した、参加標準記録に0.04秒と迫るものですが、高地での記録。果たしてその実力のほどは?

こうした群雄割拠の様相を呈してくると、すぐに44秒台とはいかずとも45秒台前半あたりの選手が揃ってくることが期待されます。現在のマイルリレーでは、もはや「3分切り」が決勝進出の条件になりつつありますので、そのくらいのレベルに達しないと、たとえ出場資格を得たとしても 結果の知れたチーム編成、ということになってしまうでしょう。個人種目でフルエントリーできるくらいの盛況を期待します。

◆男子三段跳~好記録はレジェンドとともに
昨年は男子走高跳で、久々に世界選手権にフルエントリーする(標準到達は4名)という活況がありましたが、今回はその走高跳の参加標準が1センチ高くなったことで到達者は戸邉直人(安藤財団=2m29)一人になってしまい、その戸邉も故障で今季は音なし。一転して苦しい状況となっています。
とって代わるように盛り上がりを見せているのが、この三段跳です。

この種目の大先達を記念した織田記念で、26歳の長谷川大悟(日立ICT)が16m88(+0.2)という実に久々の標準突破を果たすと、歴代3位の16m98を持つ大ベテラン石川和義(長野吉田AC)も同じ大会で16m77(+1.4)と、標準にあと一歩のところまで迫りました。 
すると5月には、関東インカレの激戦の果てに、日本記録保持者・山下訓史さんの長男・ 航平(筑波大)が試合前のPBを79センチも破りピタリ標準に到達する16m85(-1.1)を跳んで優勝。6回目に大逆転を許した2位の山本凌雅(順大)も、16m68(+1.1)の好記録で続きました。

奇しくも、織田幹雄さんの名を冠したしかも50回目の記念大会で生まれたビッグジャンプと、ちょうど30年前の日本選手権で出されたまま破られることのない日本記録保持者の息子による快記録。 かつて「お家芸」と呼ばれた種目のレジェンドとともに、その因縁の決着が楽しみです。



◆男子ハンマー投~室伏の五輪出場はあるか?

日本選手権の連覇を昨年「20」で自ら途切れさせた室伏広治(ミズノ)が、資格記録がないながら陸連の特別推薦を受けて2年ぶりに登場、父・重信氏を超える41歳でのオリンピック出場を賭けた一発勝負に臨みます。
昨年、21年ぶりに室伏広治以外の名を日本チャンピオンのリストに加えた野口裕史は競輪に転向し、来年デビュー予定の第111回生として修行中です。(ちなみに、かつて女子走幅跳や400mリレーメンバーとして活躍した佐藤友香選手も、ガールズケイリン5期生として間もなくデビュー予定) 
したがって室伏以外でのランキング1位は保坂雄志郎(群馬綜合ガードシステム)の70m46となり、土井宏昭(流経大クラブ=67m64)にも以前のパワーはなく、どうやら相変わらず室伏の敵はいなさそうな形勢です。

ただ、まるまる2年間試合をしていないので何とも言えませんが、参加標準記録の77m00は、今の室伏にとってはあまりにも高い壁、というのが正直な見方です。70mを越せずに保坂に敗れる、という結末すらなくはありません。
オリンピック云々とは別に、もし優勝すれば、重信氏の同種目12回、由佳さんのハンマー投5回・円盤投12回を合わせ、「室伏一家」として50回目の日本タイトルという、とんでもない金字塔となります。

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◆その他の種目は?
以上展望してきた以外で、すでに標準記録が突破されているのは男子110mHの矢澤航(デサント=13秒47)と女子400mHの久保倉里美(新潟アルビレックスRC=56秒14)。ともに近況から絶対優位とは言えませんが、優勝しての代表内定を勝ち取りたいところでしょう。(逆に優勝しないと、代表入りは非常に厳しくなります)

その他、日本選手権本番で初めて標準到達の可能性がある程度以上ある種目としては、男子800m(標準記録=1分46秒00)、3000mSC(8分30秒00)、走幅跳(8m15)、女子100mH(13秒00)、棒高跳(4m50)、といったところです。こちらの場合は、本番で到達・優勝ならば即内定ということになります。

この中では、条件次第のところがありますが男子走幅跳でのビッグジャンプに期待します。
標準記録有効期間の僅か12日前に8m18(+1.3)を跳んだ菅井洋平(ミズノ)は故障明けで苦戦が予想されていますが、下野伸一郎(九電工=8m11/+1.6)、高政知也(順大=8m03/+1,9)、関東インカレで追風ながら7m96(+2.5)を跳んだ毛呂泰紘(順大=7m77/+0.7)など、一発引っ掛かれば、という存在はゴロゴロいます。
女子もそうですが、この種目は何となくいつの大会でも標準記録のレベルが他に比べて高いように思われ、もしオリンピックで8m10前後を跳べれば十分に決勝進出・入賞の可能性があります。ぜひとも狙って一発引っ掛けてほしいところです。
美人選手揃いの女子100mHも頑張ってほしい種目ですね。長らく金沢イボンヌの壁が立ちはだかっていますが、世界的にはたいへん活況を呈している種目の一つなので、日本選手にも参戦を期待します。

また、福島選手以外の個人派遣は難しいと思われますが、出場資格のボーダーライン上にいる女子の各リレー種目については、誰がメンバーに名乗りを挙げてくるかに注目です。
100mでは福島選手以外に4選手、400mでは上位4選手(5人目は久保倉選手として)の候補者選出ということになるかと思いますが、なかなか熾烈な順位争いが見られそうな期待があります。


以上で、「第100回日本陸上競技選手権のミカタ」はひと段落といたします。
いずれにしてもオリンピック本番では苦戦が予想される日本陸上チームですが、それはさておいて、誰が代表の座を射止めるか、サプライズになるようなパフォーマンスは飛び出すのか、実に緊迫した楽しみなオリンピック・イヤーの日本タイトル争いが繰り広げられるでしょう。

また直前情報などが加わりましたら、随時コメントしていきたいと思っていますが、ここまで長々とお付き合いありがとうございました。
 

 
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