豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

大森菜月

「薫女OG」に見る女子長距離界の展望


遅ればせながら…ですが。
『第37回大阪国際女子マラソン』、松田瑞生(ダイハツ)の見事な初陣でした。
私がそれ以上に驚いたのは、『北海道マラソン』優勝がホンモノであったことを証明した前田穂南(天満屋)の走りっぷり。さすが天満屋・武富監督は、マラソンに特化した逸材をきちんと見極め、作ってきますよねえ。
昨年『名古屋ウィメンズ』で衝撃のデビューを飾った安藤友香(スズキ浜松AC)に続いて、ワールドクラスの若手有望選手が今後も次々と現れてくる、そんな楽しい期待を感じてしまう、「大阪薫英女学院OG」二人の活躍だったと思います。

松田選手が全国レベルで名を挙げた最初のレースは、おそらく2015年の『都道府県対抗全国女子駅伝』だったでしょう。
アンカー区間の10㎞のうち5㎞以上を、京都の奥野有紀子とビッシリ肩を並べてトップ争いを繰り広げ、トラック勝負最後の直線で鮮やかに抜け出して大阪を初優勝に導いたレースです。
この大会は、大阪と京都が鍔迫り合いをする間に後方から兵庫(林田みさき)と愛知(鈴木亜由子)がヒタヒタと追い上げ、結果的には4チームが1秒おきにゴールするという史上最高の大激戦でした。


そんな中で優勝をさらった大阪府は、9区間のうち8区間が薫英女学院(中学・高校)の現役またはそのOGという、まさに“オール薫女”チーム。大森菜月(立命館大2→ダイハツ)・嵯峨山佳菜未(高1→第一生命G.)・高松智美ムセンビ(中3→高校3在学中)・高松望ムセンビ(高2→東京陸協)・加賀山実里(高3→立命館大3)・前田梨乃(高2→豊田自動織機)・加賀山恵奈(高3→立命館大3)そして前年に卒業して唯一の実業団ランナーとなっていた松田…当時大学2年の大森が最年長という顔ぶれです。高校生だった5人は、全員が前月の『全国高校駅伝』で初優勝した時のメンバーでした。
ちなみに、松田は1年時から3年連続で『高校駅伝』に出場しており、2年時には2区で区間賞を獲得、トップで次走者(加賀山実里)にタスキを渡しています。
松田の1年後輩になる前田穂南は、『高校駅伝』初優勝時は3年生で補欠。それどころか実に高校3年間、すべて補欠登録されていた日陰の実力者でした。

松田は実業団3年目の2016年に、『全日本実業団選手権』10000mで優勝と初の32分切りを達成してトップランカーへと成長し、昨年の日本選手権優勝、世界選手権出場という大活躍を経て、今回の華々しいマラソン・デビューへと繋げました。まさしく順風満帆な躍進ぶりと言えます。
高校時代に表舞台に立つことのなかった前田(穂)は、天満屋で駅伝レギュラーの地位は確保していますが、北海道で脚光を浴びるまでの2年半は、高校時代同様にこれといった実績はありませんでした。


薫英女学院が高校駅伝界の「強豪」にのし上がってきたのはここ数年のことで、『全国』には2006年以来連続出場、2012年以降は6年連続入賞、そして2014年と16年に優勝を飾っています。初入賞の2012年は大森菜月(当時3年)と松田(2年)が1・2区を2位~1位で快走し最終5位、2014年は前述の5選手で立命館宇治とのマッチレースを制した年でした。
薫英躍進の旗頭であり、卒業後は学生長距離界のヒロインとまで言われた大森菜月は、大学1・2年時の活躍ぶりからするとその後ややスローダウン、実業団ルーキーイヤーの今年度も故障がちで、パッとした成績は残せていません。
2度の優勝の中心メンバーだった嵯峨山佳菜未は、実業団ルーキーの今季は『実業団駅伝』の1区でまずまずの走りを見せたものの、期待ほどの成長ぶりは見られていません。
中学時代からその類まれな素質を嘱望されていた高松ムセンビ姉妹も、ここへ来てやや伸び悩みの気配を伺わせています。


消長が激しい女子の勢力図は、今後どのように変化していくのでしょうか?…これを「薫女」の面々だけにスポットを当てて見ていっても、なかなか面白い相関図を描いていけそうです。

現時点でトップを独走するのは言うまでもなく松田です。ただ、大阪のレースは彼女のポテンシャルを十二分に引き出させる条件に恵まれていたことは、注意しておく必要があります。
何と言っても、『大阪』の陰の功労者は、ハーフまでペースメーカーを務めたイロイズ・ウェリングス(AUS)でした。大阪や名古屋ではお馴染みとなっている、ペースメイクの職人です。
ほぼすべての1㎞ラップを3分25秒の安定したペースで先頭を引っ張り続けたこと、さらにはその直後を任されたケニアのペースメーカーがバテてしまいペースダウンしかかったところで前田がスピードアップしたことが、特に初マラソンの松田にとっては絶妙の展開となった事実は見逃せません。

そこへ行くと、松田や、本来ならもっと速いペースが望むところながら今回は調整不十分でちょうどいいペースにハマっていた安藤友香らを相手に、「このままでは勝てない」と自らレースを動かしに行った前田穂南の状況判断は見事でした。惜しむらくは、その戦術を支える地力がまだ今一つ足りなかったということでしょう。
在学時代は日陰者だった前田穂南のさらなるジャンプアップには、私は大いに期待します。トラックレースの実績も5000m15分51秒83、10000m32分43秒42とまだまだですが、北海道・大阪ともに、マラソンの距離をトータルに捉えて戦術につなげるクレバーさを発揮していたように思えます。(インタビューを聞いてると、とてもクレバーには見えませんがね…福島千里以上の話下手)
今後、スピードに磨きをかけていくことにより、変幻自在のレース巧者へと成長していく可能性を持っていますね。
従来、トラックの実績はなくともマラソンでトップランナーの地位を築いた山口衛里や松尾和美、坂本直子、森本友、重友梨佐などのランナーを育て上げた天満屋の選手だという点が、この期待をさらに膨らませます。


次に待ち望むのは、「薫女OG」のリーダー格・大森の巻き返しです。リーダーと言ったって、まだ今年で24歳。ここ3シーズンばかりの不振が故障に起因するのだとすれば、潜在能力と「駅伝1区のスペシャリスト」の名にふさわしい勝負師ぶりはピカイチですから、何とか早く立て直して欲しいものだと思います。“ダイハツ再生工場”に期待ですね。(久馬姉妹のようになかなか再生しない選手もいますけど)
そして高松ムセンビ姉妹。妹・智美はゴールデンアスリートの名に賭けても、名城大への進学が噂される今季は大きな勝負の年としなければなりません。NIKEオレゴンプロジェクトへのテスト参加に挫折した姉・望は、実業団チームに加入しての巻き返しが、あるのでしょうか?
実業団2年目となる嵯峨山にも、立命館大の新たな主軸となる加賀山姉妹にも、また「強い方の前田」と言われた前田梨乃にも、奮起を願ってやみません。

もちろん、女子長距離界は「薫女」だけの世界ではありません。今回は不発に終わった安藤友香の「豊川OG」という最大勢力がありますし、有森裕子さんや高橋尚子さんのように無名校の無名ランナーから立身出世を遂げるケースも少なくなく、そのバックグラウンドは多種多様。
しかし今回のように、同じ学校の先輩・後輩が揃って活躍するようなことがあると、ついつい在学当時の、まだ顔の区別もついていない頃の記録や映像を引っ張り出してきて「ふむふむ」と独り得心する…陸上競技ヲタクには、こんな楽しみ方もあるのですよ。

もうすぐ春ですね♪~実業団女子の新勢力図やいかに?



春は出会いとともに別れの季節…陸上界では、トラック&フィールドの場合はシーズン終了が晩秋になるため少し事情は異なりますが、冬のロードレース・シーズンを一区切りとする長距離ブロックでは、先週国内の主要レースが終了し、再来週には各チームの新戦力が公式に始動する、というのがこの時期ですね。
私がエコヒイキする女子の長距離界でも、去る人・来る人の話題がちらほらと聞こえてくる、寂しさ半分・期待感半分の微妙な時期。特に「引退」の情報はよほどの大物ランナーでない限りはなかなか表だって報道されるようなこともないので、ふとした記事やコメントからそれと知れると、何とも言えない寂しさを感じてしまいます。

情報的には少し古くなってしまいますが、今季、女子長距離選手の「引退」で最も衝撃があったのは、那須川瑞穂選手(ユニバーサルエンターテインメント)と森唯我選手(ヤマダ電機)。

那須川選手は昨年11月の『さいたま国際マラソン』で日本人1位とはなりましたが記録は2時間33分台と低調で、「世界と戦えるためのトレーニングができなくなった」ことを理由に同月中にチームを退部、年内をもって退社したとのことです。
見るからに人柄の良さが伺える明るい笑顔の美人ランナーとして、世間一般の知名度はともかく陸上長距離ファンの間では絶大な人気を誇っていた那須川選手。女子ではそろそろ“レジェンド”なんて呼ばれ始めている渋井陽子選手(三井住友海上)の1学年下で、その渋井選手と同様、いつまでも元気な姿を見せてくれていそうな気がしていただけに、この「気が付いたら引退していた」という状況は、何とも残念でした。

佛教大時代から「カリスマ・キャプテン」の異名をとった森唯我選手も、今年1月に同じく佛教大出身の森知奈美選手とともに、引退が発表されました。むろん、一般のメディアで話題となることはなく、チームのHPに告知が出ただけです。
ヤマダ電機をいったん退職して母校のコーチに就きながら、思い断ちがたく2012年に現役復帰。2013年、14年と連続して『全日本実業団女子駅伝』の1区で鮮烈なラストスパートを決め、区間賞を獲得しました。後輩たちに「背中を見せ続ける」ことで佛教大やヤマダ電機を強豪チームにまで引き上げた、女子には珍しいタイプの名リーダーだったと言えるでしょう。
そういえば、那須川選手も『実業団駅伝』ではしばしば1区を務め、岐阜で行われた最後の大会で区間賞を獲ったのではなかったでしょうか?

森選手と同期で大学時代は宿命のライバル関係にあった立命館のキャプテン、小島一恵選手(豊田自動織機)も、1月の『大阪ハーフマラソン』がラスト・ランとなりました。
こちらの方は、実業団入りしてからは故障続きで駅伝の出場もルーキー・イヤーのみ。7年間の実業団生活は苦悩ばかりの日々だったかと察します。最後にハーフを元気に走り切ることができたのは、何よりでした。 

森選手や小島選手の場合は、チームのHPに控え目ながらも告知が掲載されたのですが、どうも傾向としては、何のお報せもなくプロフィールページから姿を消してしまう、ということが多いみたいです。私みたいに選手個々と同様にチームの戦いとして『実業団駅伝』などを注視している人間にとっては、何ともやり切れない気持ちがします。
たとえばダイハツの岡小百合選手や樋口智美選手。地味めな存在でしたが伝統チームの中堅で活躍、特に岡選手は長い故障がようやく癒えてこれから、というところだったように見えていましたが…。
『実業団駅伝』で思いもかけぬ「失格」劇を演じてしまった豊田自動織機の島田美穂選手、『予選会』でユタカ技研躍進の一翼を担った高野智声選手は、ともに期待の高卒ルーキー。いったい、何があったんでしょうか?
若くして選手生活を断念するような故障に見舞われたのか、島田選手はよもや失格騒動が原因で、ってことはないでしょうけど…あるいは環境を変えての再出発ということもあるかもしれませんが、このあたりの情報不足がプロ野球やサッカーなどと違って、もどかしいところですね。
まだチームHPには残っていますが、清水裕子選手(積水化学)や松見早希子選手(第一生命G.)のように、レース実況の中で「ラストラン」が伝えられている選手もいます。お疲れさまでした。

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さて、去る人がいれば来る人もいる、ということで、各チームの補強状況を分かっている限り見てみますと。
前述のダイハツは、前年の坂井田歩キャプテンに続いて中軸2人が抜けて、現有戦力は僅か7名。その顔ぶれは木﨑良子を筆頭に前田彩里、松田瑞生、吉本ひかり、久馬姉妹とビッグネームがズラリ、ではありますが、松田以外は故障との付き合いが長い選手ばかり。現在のメンバー紹介ページを見る限りは、チーム編成にすら苦労しそうです。
ここに「救世主」のごとく加入するのが、大学長距離界のヒロイン・大森菜月(立命館大)。大森自身もここ2年間は故障との戦いでしたが、何とか名門チームを立て直す力になってほしいものです。また大森の同級生・池本愛と高校生2人(下田平渚、柴田佑希)も加わって、どうやら駅伝メンバーが組めないという事態は免れそうです。

大森世代が無類の強さを誇った立命館では、結局その代で最後まで続けたのは7名だけだったようです。
キャプテン菅野七虹は、豊田自動織機。昨年「失格」がなければ優勝争いを繰り広げていたはずの駅伝チームにとっては、3000m9分15秒の川口桃佳(岡崎学園)、移籍加入の萩原歩美(前ユニクロ)とともに強力な補強となりそうです。また、引退した小島一恵から沼田未知、藪下明音に続く「リッツのキャプテン」の系譜は、良くも悪くもこのチームのカラーを形成していくことになるのかもしれません。(小出門下時代には考えられなかったようなチームカラーです)
京美人の池内綾乃は、デンソー。駅伝3連覇の後に戦力が急降下してしまったこのチームは、今年は予選会からの立て直しとなります。
園田聖子は九電工、廣田麻衣は積水化学。青木奈波は…すいません、不明です。

大学女子のライバルに急成長した松山大学では、キャプテンの中原海鈴が昨年予選会1位のTOTO、『富士山』アンカーの松田杏奈が同3位の京セラと、実業団でも下剋上ねらい?…いっぽう上原明悠美は日本郵政G.、三島美咲はユニバーサルと、強豪チームでレギュラーを目指します。
名城大エースの湯澤ほのかは積水化学、大東大の木村芙有加は日本郵政G.、小枝理奈は第一生命G.、瀬川帆夏はシスメックス。今年に入って精力的にマラソン、ロードレースに挑んでいる新井沙紀枝(大阪学院大)は肥後銀行。

高卒組はどうかと言いますと、昨年の女子中長距離は高1・高2の当たり年で、各種目ランキング上位のかなりの部分を占めており、卒業生はやや押され気味。そんな中で注目度の高かった選手では、加世田梨花(成田高→名城大)、樺沢和佳奈(常盤高→慶應義塾大)、高橋ひな(西脇工業→早稲田大)など、多くは大学進学。
実業団入りの動向で目を惹くのは、第一生命G.の嵯峨山佳菜未(大阪薫英女学院)と向井優香(世羅高)、そしてユニバーサル入りの猿見田裕香(豊川高)。それから忘れちゃいけない大物、モニカ・マーガレット(青森山田高)が三井住友海上。このチームで外国人ランナーは初めてかな?

まだ動向の不明な選手もいて、実業団各チームのホームページの更新精度にもバラつきがあるので年度が変わってからしばらくしないと確定情報は掴めないかもしれませんが、実業団女子長距離各チーム「2017年度戦力」のおおよそのところは、朧げに見えてきました。
昨年アッと驚く日本一の座に駆け上がった日本郵政グループは、新興チームなだけに主力選手が引退するということもなく、去年の戦力はそのままに、いま判っているだけでも4名の新人を加入させ、部員17名という名実ともに最大勢力になります。さすが、金持ってるとこは違いますねぇ。
昨年はじめまで15名の最大チームだったユニバーサルは、後藤奈津子(宮崎銀行)、永尾薫(Team AOYAMA)、那須川と主力が相次いで抜け、補強は三島、猿見田のほか秋山桃子(筑波大)で分厚い選手層はキープ。
豊田自動織機は前述のとおりで、島田が抜けたのは痛いがそれを上回る戦力アップの様相。何と言ってもユニクロから移籍の萩原の復調次第で、どんなチーム編成になるか、楽しみです。
ヤマダ電機は大きな補強はないものの、新リーダーとなる西原加純の勢いが、そのままチームの勢いとなるような気がします。
昨年躍進した京セラは、松田のほか鹿屋体育大から盛山鈴奈と藤田理恵、関西外語大からマラソン経験もある床呂沙紀と即戦力が大量加入して、今年の台風の目になるかもしれません。

いやあ、11月の『全日本実業団女子駅伝』がどうなるか、楽しみですねえ…その前にいろいろあるだろう!、って、まあそのとおりなんですけど。
え、男子はどうなんだって?…あんまり詳しく調べてないんで、まだよく分かりません!


大学女子駅伝は戦国時代へ




「駅伝漬けの日々」もいよいよクライマックス寸前、正月駅伝に向けて気分を盛り上げる年末行事、『2016全日本大学女子選抜駅伝競走(富士山女子駅伝)』が、昨日行われました。

◆創設4年目…「年末の風物詩」になってきた
雨後のタケノコのごとく次々と現れる新興の大会としては、最近最も成功しつつあるものではないでしょうかね。
かつて我が地元近くのつくばで開催されながら、諸般の事情で廃止に追い込まれた「全日本女子選抜大会」を復活させた大義名分的な意味合いが一つ。
正月の「箱根」と同様に、富士の裾野の景観を眺めながらのTV観戦は、年末気分にしっくりと馴染みます。
特に、男子の「箱根」の対極に位置付けるかのように富士の「山登り」をアピールするコース設定は、なかなかスリリングな気分を醸し出してくれています。
そして、この大会の定着によって、「ゆく年」を惜しむ高校駅伝と富士山駅伝、「くる年」を迎えるニューイヤー駅伝と箱根駅伝という、駅伝ファンにとって年末年始の至福の日々が、しっかりと形作られました。
ついでにビジネス的なことまで言うと、スズキ、ヤマザキ、サッポロという各大会の冠スポンサーにとっては、これ以上ない共存共栄ではないかと察せられます。今回、選手のナンバーカードには区間ごとにスズキ自動車の異なる車種名が記載され、「軽自動車の仮想駅伝」といった趣の遊び心を楽しませてもらえました。(これまでも同様のことはやっていたのですが、全区間異なる車種名を記載したのは初めてかと思います)

大会の権威という意味では10月の『選手権(杜の都駅伝)』のほうが上位なのは間違いありませんが、時期的に後から行われることや距離・区間数ともに『選手権』を上回るということもあって、むしろ注目度はこちらのほうが高くなりつつある、とさえ感じられます。伝統はあれども権威としては『全日本』や『出雲』の風下、関東学連のローカル大会に過ぎない『箱根』が、いまや日本一の駅伝イベントとして不動の地位を築いているように、です。
いずれにせよ、女子学生ランナーたちの目標としてロードシーズンにビッグレースが2つ控えているという状況は、たいへん結構なことだと思います。

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◆「王者の駅伝」でリベンジ達成
結果は、『杜の都』で女王のプライドを粉砕された立命館が、万全とは言えない陣容の中で練りに練ったオーダーを組み、各選手が持てる力を必死に振り絞った結果、みごとに雪辱を果たすレースとなりました。
『杜の都』で大森菜月をアンカーに起用したことを「受け身の作戦」と評した当方の声が聞こえたわけでもないでしょうが、今回のリッツは駅伝の鉄則である前半勝負に立ち返り、他校ならコマ不足に悩む終盤も豊富な選手層に任せて押し切る、という王者らしい攻めの流れを企図したように見えました。

それでも、1区・佐藤成葉、2区・菅野七虹という、現有戦力ではある意味“切り札”の2人がともに新女王・松山大学に区間賞をさらわれて少々重苦しいスタートではありました。ただ、ここで決定的なアドバンテージを与えることなく秒差に踏みとどまった粘りと、ベストコンディションからは程遠い状態ながら「大エース」の底力で“奪首”を果たした大森の走りで3区までを互角に渡り合ったところが、さすがです。
そして高校(立命館宇治)1年の時の『都道府県対抗駅伝』以来の区間賞で定位置を確立した池内綾乃は、苦難の連続だった学生生活を締めくくるMVP級の活躍だったと言えるでしょう。
見るからにおっとりした京美人の雰囲気を漂わせる池内は、その高1時代から、私にとって気にかかる存在の選手でした。宇治高4人衆(菅野、廣田麻衣、青木奈波)の一人として鳴り物入りでリッツに加入しながらその年の杜の都には唯一人メンバーから漏れ、今年ようやくメンバー入りを果たした苦労人の遅咲きが、とても嬉しく感じられたのです。

トップを確かなものにしたところで、5区・和田優香里、6区・園田聖子はともに、地味ながら安心して現状維持を任せられる、これも駅伝にはなくてはならないキャラクター、ここの配置が実に絶妙でした。
そして、チームメイトもその起用に驚いたというアンカー・松本彩花。大学駅伝は初見参、薫英女学院時代の記憶もほとんどないリッツの“秘密兵器”です。パッと見で目が行くのは、競輪選手のように発達した太腿の逞しさ。かつて男子で綽名が「フトモモ」と言われた堺晃一選手(駒澤大→富士通→昨年引退)をつい思い出してしまった、それほどの見事に鍛え上げられたおみ足です。「こういう(堺選手のような)フトモモは、登りが強いんですよ」という、瀬古さんの解説も同時に思い出します。
その期待に違わず、タフな坂道を飄々と駆け抜けた松本は、区間賞(細田あい=日体大)から3秒差の区間2位で、結果的にはいつもの立命館同様の「圧勝」でゴールテープに飛び込んだのでした。

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◆さて来年は?
リッツ最大のライバルとなった松山大は、5区の大エース・中原海鈴のブレーキによって自滅した感が強い一方で、オーダー表を見渡しても、「普通にやれば勝てる」という油断があったようにも感じられます。何が起こるか分からない駅伝で、まさか大黒柱が大コケするとは思ってもみなかったでしょうが、そこまで想定して準備を万端整えていたのかどうか…このあたりは「女王」と呼ばれるチームとの経験の差ではなかったでしょうか。
立命館・松山ともに、強い4年生世代が去った後の顔ぶれを見ても、来季新入生の実力のほどは未知数ながら、現有戦力的に松山がやや上回っている感は否めません。来年以降も、立命館が最も恐れるべき相手は、松山ということに変わりはなさそうです。

数年前の「立命館vs.佛教」時代の再来を思わせる今年の大学女子駅伝勢力図と見える一方で、名城大、大阪学院大、日体大、京都産業大、大東文化大と、上位各校のチーム力は明らかに「2強」の時代を許さないほどに接近してきています。
今回は、立命館では太田琴菜(3年)や関紅葉(2年)、松山では『杜の都』の殊勲者だった緒方美咲(2年)、また名城でもエースの湯澤ほのか(4年)や向井智香(1年)といった主力どころを欠いていたがゆえの実力拮抗という見方もできるでしょうが、4位以下の各校にもそれぞれ核になる実力派たちが来年以降への巻き返しを手ぐすね引いているところがあり、今年の4年生世代が卒業した後は、混沌とした状況が予想されてくるのです。

タレント揃いの4年生たちの実業団での飛躍を期待するとともに、来年もまた、大学女子駅伝が「女王・立命館」を軸として熱く盛り上がることを、大いに楽しみとしましょう。

 

木村友香が5000mランク1位を奪取!



1週間遅れの記事になってしまいましたが、12月4日(日)に横浜市青葉区の日本体育大学健志台陸上競技場で行われた『第255回日本体育大学長距離競技会』女子5000mで、好記録が続出しました。
『全日本実業団女子駅伝』から僅か1週間後のレースながら、この10月1日から有効期間となったロンドン世界選手権の参加標準記録に挑む貴重なチャンスということもあって、実業団・大学・高校の多くのトップランナーが集まる記録会となりました。

<女子5000m第6組成績>

255日体大記録会1-20
255日体大記録会21-41

「日本体育大学長距離競技会」HPより(http://www.nittai-ld.com/result/pc/C201616/main.html)

高校留学生ランナーのエカラレに次いで2着に入った木村友香(ユニバーサルエンターテインメント)のタイムは、7月に横江里沙が『ホクレンディスタンスチャレンジ網走大会』で記録した15分18秒11を僅か0.03秒上回り、堂々2016年の日本ランキング・トップに躍り出ました。
木村は日本選手権を初制覇した1500mでは記録ランキング3位に甘んじていましたが、9月の『デカネーション』で2000mに日本新記録、先週の『実業団駅伝』では初の2区区間賞と続いた充実の1年を締めくくる、見事なレースをしてみせました。これまでの「中距離ランナー」としての活躍から、さらに一皮むけた長距離界のニュー・リーダーへと、着実な成長を続けています。
なお、木村と3着・森田香織(パナソニック)は、ロンドンの標準記録(15分22秒00)を突破。横江や今季2位だった尾西美咲(積水化学)のタイムは有効期間以前に出されたものなので、この2人が来年の代表レースの先陣を切ったことになります。

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4位以降も好記録が続出した中で、特筆すべきは7位・矢田、9位・小笠原、10位・森林と、3人の高校生が出して見せた快記録です。
U-20世界選手権にも出場した矢田の15分25秒87は、藤永佳子(諫早高)の高校記録15分22秒68に次ぐ高校歴代2位。絹川愛、新谷仁美、小林祐梨子、上原美幸といった後の日本代表の高校時代の記録を抜き去ってしまいました。小笠原と森林のタイムもそれぞれ、高校歴代5位・6位にランクされるものです。
エカラレ、矢田、森林は2年生、小笠原に至ってはまだ1年生です。矢田のルーテル学院は残念ながら今年の都大路で見ることはできませんが、高校女子長距離界もしばらくの間、逸材たちの動向がいっそう楽しみになりました。

3人の高校生に挟まれる格好となった立命館大1年・佐藤成葉のタイムも、大森菜月の15分28秒32を上回る学内現役最高記録(もしかして立命記録?)となります。10月の『全日本大学女子駅伝』ではほろ苦い駅伝デビュー戦となった佐藤が、年末の『全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝)』で巻き返しを期す立命大の"秘密兵器”として、俄然注目を集めそうです。

年内にはあと1回、『第17回日本体育大学女子長距離競技会』が24日(土)に予定され、5000mと10000mのレースがプログラムされています。時期的に見て、ここにも多くのトップ選手たちが「標準突破」を目指して挑んでくるものと思われます。
クリスマスイヴの記録ラッシュを、楽しみにしましょう!

 

全日本大学女子駅伝・観戦記



ロード/駅伝シーズンの序盤戦、10月の締めくくりとして、『第34回全日本大学女子駅伝対校選手権』=通称「杜の都駅伝」が行われました。

オーダー表を一瞥した瞬間、「立命館、いよいよ危うし!」の思いを禁じ得ませんでした。
9月の日本インカレにおいて松山大学の圧倒的な走力と選手層を見せつけられていながら、万全のオーダーを組めていません。
本来なら1区をスペシャリストの大森菜月に任せ、僅かでもリードを奪って主導権を握り、最長5区の太田琴菜で決着をつけて盤石の信頼を得る菅野キャプテンにアンカーを託す、というのが理想的なV6のパターンだったのでしょうが、その3年生エース・太田の名前がありません。ならば終盤の接戦に備えて大森のラストスパートをアンカー勝負の切り札に、というのがすでに、「絶対女王」らしからぬ受け身に回った戦略発想に映りました。

いっぽうの松山大は、インカレ入賞者の松田杏奈(4年)、古谷奏(2年)、岡田佳子(1年)、三島美咲(4年)といった面々が入りきらないほどの恐るべき選手層。中でも、インカレ5000mチャンピオンの中原海鈴(4年)の充実ぶりは著しく、タカミサワから受けるタスキをタカミザワにトップで託すのは濃厚と思われ、立命館のこの区間がインカレ20位の関紅葉(2年)では、少し荷が重いと言わざるを得ません。

昨年まで無敵の5連覇を築いてきた立命館。それ以前からも、2003年に初優勝して以来、2位より下になったことが一度もないという強さは、まさに「絶対女王」の名に恥じるところがありません。
しかしながら、「盛者必衰」は世の理…とはいえ、連覇の終焉が「最強世代」と言われた菅野、大森らの最終学年の時にやって来たのは、皮肉なものです。

思えばこの学年の快進撃は、2011年の都道府県対抗全国女子駅伝の時に、すでにその予兆を見せていました。アンカー福士加代子の快走などで優勝した京都チームの5区・6区・7区を畳みかけるような3連続区間賞でつないだのが、当時立命館宇治高校1年生だった牧恵里奈、菅野七虹、池内綾乃の3人。立命館宇治は彼女らが3年生となった2012年の全国高校駅伝で念願の優勝を果たし、その主力メンバーだった菅野、池内、青木奈波、廣田麻衣らが、大阪薫英女学院の大森などとともに、そのまま即戦力として立命館大3連覇(2013年)の中核となっていったのです。

菅野らを擁して立命館宇治高が優勝した2012年の高校駅伝の1区を改めて見てみると、こんなメンバーが出ていたことが分かります。
 区間1位 由水沙季(筑紫女学園)→ユニバーサル
2位 大森菜月(大阪薫英女学院)→立命館大
3位 川内理江(興譲館)→大塚製薬
4位 西澤果穂(青森山田)→第一生命(引退?)
5位 岩出玲亜(豊川)→ノーリツ
6位 谷萩史歩(八王子)→大東文化大3年
7位 菅野七虹(立命館宇治)→立命館大
8位 中原海鈴(神村学園)→松山大
9位 伊坂菜生(茨城キリスト)→日立
・・・
14位 出水田眞紀(白鳳女)→立教大
15位 湯沢ほのか(長野東)→名城大
22位 木村芙有加(山形城北)→大東文化大
1区以外では、2区37位と沈んだ高見澤安珠(津商→松山大3年)、3区19位の上原明悠美(白鳳女→松山大)、無念の途中棄権をしてしまった盛山鈴奈(鳥取中央育英→鹿屋体育大)、藤田理恵(同)の名前も見え、今大会でキーになった選手たちの大部分が、すでに都大路で鎬を削っていたことが伺えます。
女子選手の消長ぶりはなかなか予測がしにくくて、たとえばこの世代の「最強」の一人だった小林美香(須磨学園・4区区間賞)などは、確か立命館に入ったはずですがどこ行っちゃったんだか?…な一方で、結構な人数がそのまま大学各校のキャプテン、エースとして生き残ってきているんですね。
ただその中でも、大学1年時にはおそらく世代のトップを走っていた大森や菅野が期待ほどに成長できず、中原や湯沢、新井沙紀枝(大阪学院大)らに追いつかれ、1学年下の高見澤や関根花観(豊川→日本郵政グループ)、上原美幸(鹿児島女→第一生命)にオリンピック出場を先んじられてしまっている状況があるのも現実です。

とまあ、今回の4年生世代には、私的にはかなりな思い入れがあって、今日の「杜の都」でじっくりと、政権交代の場面を感慨深く見守っていたというわけです。


レースは、「3強」と思われた立命館・松山・大東文化が1区で揃って大コケする波乱のスタート。とはいえ自信満々に先頭を引っ張った菅野の調子はさほど悪かったようには見えず、次々と首位を伺って出てくる他校の選手たちの頭を叩き続けているうちに、自身が疲れてしまった、といった印象です。
大穴の1区区間賞をさらった京産大・橋本奈津に引き離されてからはガス欠となって6位にまで後退したのは計算外とはいえ、それ以上に松山の上原明悠美と大東・瀬川帆夏の大ブレーキは、立命館にとってラッキーな展開と見えました。

2区では、1年生の「富士山駅伝」以来の出場となった池内が菅野と同じような失敗のレース運びで終盤失速し、11人抜きの区間賞で上がって来た松山・緒方美咲に逆転を許してしまった…結果的にはこれが重要な勝負の分かれ目でした。
後半の和田優香里、関、大森がそれなりに好走して2位の座は渡さなかったものの、そこで2つの区間新を含む3連続区間賞を積み上げた松山大の完勝ぶりに、遂に立命館黄金時代は幕引きの時を迎えたわけです。

今回の松山大・躍進の理由に、日本選手権のレース一発でオリンピック代表を射止めた高見澤安珠の存在を挙げる声が大きいようです。しかし、松山の萌芽は3年前に、上原・三島・松田・中原といった当時の1年生を並べたオーダーで3位に食い込んだ時にすでに芽生えており、彼女らの実力と結束力が大森・菅野・池内らの立命館同世代を追い越した結果、と見るのが順当でしょう。むろん、高見澤の存在が上級生の意識に火をつけた効果は、測り知れないものがあったとは思いますが。
いずれにしろ、松山大の強さは「ホンモノ」であり、今回は極めて順当な初優勝という結果だったと言えるでしょう。

敗れた立命館には、「使い捨てのリッツ」という有り難くない異名があります。大物ルーキーを次々と入学させる割には4年間でさほど成長しない、4年生まで活躍したとしてもその先伸び悩む。現在も実業団で故障やスランプに苦しむ小島一恵、藪下明音、津田真衣、池田睦美といったかつてのスター選手の存在が、同時代にしのぎを削った森唯我、西原加純、竹地志帆、前田彩里、桑原彩といった佛教大OGとは対照的で、その悪名を裏書きしています。
もちろん敢えて使い捨てるようなトレーニング方法をとっているとは思いませんが、そろそろそう言われてしまうことの原因を究明し、先の先を見据えた育成法に真剣に取り組んでいかないと、この悪名を雪ぐことはなかなか難しいのではないか、という気がします。
私的には、結果はイマイチながらも4年間ほとんど鳴りを潜めていた池内が今回出場枠に入ってきたことが、一つの光明に感じられました。皆が「大器」と期待する大森や菅野の来年以降の活躍、そして太田や和田、関などのいっそうの飛躍を心から願い、「強いリッツ」がまた戻ってきてくれることを祈っています。

ひとまずは、年末の「全日本大学女子選抜駅伝=富士山女子駅伝」での好レース再演を期待しつつ、今日のところはこのへんで。

 
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