豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

前田穂南

一山、「世界2位」を奪取!~ホクレンDC第3戦続々報


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『ホクレン・ディスタンスチャレンジ2020』第3戦網走大会のダブル・メインイベントは、女子5000mAに続いて女子10000m。
1週間前の深川では、1戦消化した後の前田穂南(天満屋)の前に、実力差を見せつけられるかのような苦杯を喫した一山麻緒(ワコール)が、今度はローズメリー・ワンジル・モニカ(スターツ)の高速ペースに乗っかり、しぶとく粘った末に、PBとともに前田の記録をも10秒以上更新。30分38秒18でワールドリーダーとなったモニカに続いて31分23秒30、今季世界第2位の快走を見せました。
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スタートしてから一度もペースメーカー(日立のオマレ・ドルフィン)が先頭に立てない…モニカの高速ペースは終始3分03~04秒/㎞で押し通したのですが、一山は迷うことなくPMを追い抜いてこれを追いかけ、4000mまで食い下がります。離れた後もガックリと落ちることなく中盤を3分12秒/㎞前後でガマン。序盤で一山とともにモニカを追った松田瑞生がズルズルと下がったのとは対照的に、8000mを過ぎて再度ペースアップを図ると最後の1000を3分03秒でまとめ、マラソン日本代表として実力のほどを見せつけました。

この大会、試合の機会を奪われ、トレーニングでも制限を受けた中での過ごし方やモチベーションの持ち方が問われるものでしたが、「なるほど」と言いますか、すでに五輪代表が決まっている選手、そこにごく近いところにいる選手の走りが、男子も含め一様に、一味違うという印象があります。女子マラソン代表の前田・一山両選手は、その典型でしょうね。どちらも見ていてうっとりしてしまうような美しい走りが、研ぎ澄まされてきていますよ。一山の好タイムは、好コンディション(放送席の観測では気温15度程度、弱風)に恵まれた結果という要素もあり、直接対決で圧倒した前田が一歩リードの感がありますが。
田中希実フィーバーとは一度も交わることなく、もう一つの極上連続ドラマを見せてもらっているようなこちらのシリーズは、最終戦・千歳大会、5000mAに再び前田、一山、そして安藤友香らが干戈を交えてフィナーレを迎えます。
『ホクレン・ディスタンスチャレンジ』は、夏場の好条件下での記録会という気安さで多くの中長距離選手が活用している大会ですが、年末年始にオーストリア・ドイツで行われるスキージャンプの『4ヒルズ・トーナメント』のようにシリーズ優勝を競う大会になると、もっと盛り上がるかもしれませんね。そこまで行かなくても、「MVR(最高殊勲ランナー)」や「優秀選手賞」「敢闘賞」「新人賞」などを顕彰することを考えてみては、いかがでしょうか?
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前田穂南快走!~続報・ホクレンDC第2戦


今回も、女子のことしか書きません。悪しからず。
女子3000m・田中希実選手の快挙については既報のとおりですが、その他の女子3種目に於いても、好記録・好レースが続出しています。
LIVE配信は前回に引き続き河野匡・大塚製薬監督による実況、場内MCをその他の関係者が交代で務めています。女性の声は、ダイハツの山中美和子監督のようです。河野監督のコメントはよりこなれて滑らかになり、チャットに寄せられたコメントにも時々反応していただけるなど、聴きやすさ・親しみやすさ倍増。ただ、マイク周辺の雑音はほとんど拾わなくなって、ちょっと寂しい。ハード上のトラブルも前回より少なかったみたいです。

◇3000mSC

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今季初となるこの種目のレース。参加は5名と少ないながらも、吉村玲美、石澤ゆかり、藪田裕衣と昨年の日本選手権上位3名、元日本選手権覇者の森智香子が参戦。ただ昨年の趨勢としては世界選手権にまで駒を進めた吉村が、現状の実力、将来性ともに群を抜く感があります。
果たして、序盤から日本記録ペースで主導権をとった吉村が一人、また一人とライバルを振り落として、後半はもはや独擅場。1000mを過ぎてからペースが思うように上がらなかったようですが、最後をまとめて8分53秒50は、気象条件を考えればまずまずのところでしょう。(気温が23度くらいありました)

吉村選手は平地のスピードも一段上ですが、それ以上に障害で着地してからのスピードの乗せ方が、日本のトップクラスの中では上手ですね。石澤選手などは長身で飛越の仕方もスムーズに見えますが、着地してからの1歩、2歩でスッと吉村選手の方が前に出ます。特に水濠障害でその差が顕著に出ます。吉村にとっては大学の大先輩にあたる森選手は、(今回は走りそのものがまったく不調でしたが)相変わらず“垂直落下式”の着地で、障害のたびに止まってしまいます。女子の場合、無理に飛び越そうとしないで軽く足をかける式の飛越にした方が、着地でスピードを乗せられる場合もあるようです。この種目に本腰を入れるのならば、その辺をもっともっと研究していただきたいものです。

◇5000m
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注目は、士別大会の3000mを快勝した佐藤早也伽。ところがローズマリー・ワンジル・モニカが猛然と飛び出し、ペースメーカーのジェロティチ・ウィニー(九電工)のはるか前をスイスイと飛ばしていきます。1000mを2分57秒という、“14分台ペース”で通過すると、あとは1周72秒のラップを着々と刻んで独走態勢。
佐藤は、ターゲットタイムに即した75秒ペースをきっちり刻むPMの背後をピタリ追走して、その後に清水真帆、田村紀薫、大西ひかり、川口桃佳、薮下明音らが差なく追いかける展開。かつての実力者・西原加純は真っ先に集団からこぼれ、調子の上がらない堀優花と最下位争いです。
快調に独走するモニカの優勝は確定的となり、フィニッシュタイムの15分03秒49は彼女のPB。日本勢1番手の座を巡っては75秒ペースにしっかりハマった佐藤と川口の一騎討ち状態から、定評のある佐藤の切り替えが功を奏して、15分26秒66で2着フィニッシュ。士別の3000に続いて日本人のワンツーとなった佐藤、川口ともに、PBです。

佐藤は東洋大1年の頃から、そのベビーフェイスで一部マニアックな向きから人気を得ていた選手ですが、大学時代は鳴かず飛ばず。社会人となって2年目あたりから急速に成長を見せ、今年は初マラソンで2時間23分台と、一躍日本のホープとして注目を集めています。ひょっとすると、オリンピック戦線にまで絡んでくるダークホースとなるやもしれません。
上位陣がまずまず、実力どおりの着順となった一方で、西原・堀に代表されるヤマダ電機勢、パナソニック勢の、特に主力選手の不振ぶりが気がかりです。


◇10000m

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福士加代子(ワコール)こそDNSでしたが、前田穂南・一山麻緒・安藤友香のマラソン3人娘がさながら「3強」の様相。マータ・モカヤ(キヤノンAC九州)とジョアン・キプケモイ(九電工)のダブルPMが作るペースは3分10秒/㎞、76秒/周で、ターゲットタイムは31分40秒。3人にとっては格好の標的です。ただし、暮色に包まれてもなお20度を超える気温と、小雨もパラつく高い湿度が敵となります。
3000mを過ぎて早くも先頭はPMキプケモイと3強の4人に絞られ、ペースは設定どおりから若干アップ気味に推移して、5000mは15分49秒と期待に違わぬ展開に。カメラがしばらく下位グループを追っている間に安藤が遅れ始めて勝負は前田か、一山か?…そして今度は追走する安藤を写したりラップを記入したボードを見せたりしてるうちに、一山が脱落。(カメラワークまったく戦況を読まず)
PMが仕事を終えた8000mからは文字通り一人旅となった前田は、特にビルドアップを図るでもなく、ラストで切り替えるでもなく、まるでマラソンの最初の10㎞地点を通過するような雰囲気のまま、美しい安定したフォームでゴールを駆け抜けました。タイムはPBを39秒も更新するもので、これはまあ、従来のPBが遅すぎたというところでしょうけど、他の選手の出来具合と比較すると、好条件の下であれば31分そこそこが聞かれてもおかしくはないパフォーマンスだったと思われます。

私は、今年東京オリンピックが行われたとしても、前田選手は有力な金メダル候補だったと思っています。(もちろん、高温のレースに滅法強いという得手も考慮に入れて)ですが、MGC以降のロードシーズン、さらにこのホクレン・シリーズを見る限り、その進化ぶりはさらに続いているように見えてなりません。機会にさえ恵まれれば、世界最強の女子マラソンランナーと評価を得る日も、夢ではないのではないでしょうか。
なお、前田の優勝記録31分34秒94は、10000mのレースがまだほとんど行われていない中ではありますが、今季の世界最高記録です!
ちなみに今季第2位は、ノルディックスキー選手のテレーセ・ヨハウグ(NOR)です。(オスロDLの記事参照)
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さて次戦は7月15日の網走大会。いよいよ真打登場ということで、新谷仁美(積水化学)が同僚にして日本チャンピオンの卜部蘭とともに、1500mに出場予定!…あれ、5000に出る田中希実との対決を避けましたかね?そうだとしても、新谷の1500mというのはこれはこれで楽しみ。
他に、3000mには鍋島莉奈(JP日本郵政G.)、5000mには好調の萩谷、10000mにはワコール・トリオに加えて佐藤早也伽、川口桃佳、松田瑞生(ダイハツ)、萩原歩美(豊田自動織機)などが参戦予定です。


田中希実ノースパイクで歴代2位!~ホクレンディスタンス第1戦


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全国の陸上競技ファンが待ちに待った、今季長距離トラック開幕戦とも言える『ホクレン・ディスタンスチャレンジ2020』第1戦の士別大会が、4日行われました。
まずは、無観客大会とはいえ、厳重なCOVID-19対策のもと開催に漕ぎつけていただいた主催者および関係者の皆様に、心から感謝を申し上げたいと思います。
また逆境にあっても日々のトレーニングを積み重ね、見事にこの場でその成果を発揮してくれた選手の皆様、敬意を捧げずにはいられません。
LIVE配信をご覧になった方も多かったと思いますが、従来の映像垂れ流し的な配信から一歩進んで、画面でのタイマー表示、タイムスケジュールの表示、そして河野匡・大塚製薬監督による的確な実況と、大変分かりやすいものになっており、有難かったです。実況マイクは周辺の雑談を拾い放題、というのがご愛敬ではありましたけれども、それもまた関係者の生の声が聴ける楽しみで、結構でした。時折機材の不具合か回線の問題か、映像がフリーズしたり乱れたりという点を修正していただくとともに、今後さらに、素人配信ならではの工夫で、いい映像を届けていただけることを期待します。

さて、本ブログでは「女子中長距離」がメインの話題ということで、今回男子では目ぼしい記録的話題もなかったということもあり、女子2種目に限ってレース結果を振り返ってまいります。

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スタートからイーブンのハイペースで飛び出した田中希実とヘレン・エカラレの一騎討ち。
ラップ表を見ると800以降はエカラレが取っていますが、むしろレースの過半は田中が主導権をとっており、国内外国人ランナーの中でも最強の部類に入るエカラレが意地にかけても前に出ようとするところ、終始そのイニシアティヴを渡さなかった田中が、ラスト1周の激烈な抜きつ抜かれつを制し切る、という見事な内容でした。
小林祐梨子が14年前に作った日本記録まで、あと僅か0.81秒。
「田中さんはスパイクを履いていませんでした。マラソンシューズで走っております」
という河野監督のコメントが衝撃的でした。

もう一人、期待された廣中璃梨佳は、陣内綾子・菊地梨紅とともに3位グループでの追走となり、終盤の伸びなく、さらに後方から軽快な走りで追い上げた石澤ゆかりにも差されて5位に留まりました。1月の『全国女子駅伝』では、田中を含む名だたる1区スペシャリストの面々を相手に圧倒的な力の違いを見せつけ、歴史的な区間新記録を出した廣中は、現時点ではまだ調子が上がっていない様子です。



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スタート時の気温は19℃、強めだった風も収まりつつあり、コンディションは良好です。ジェロティッチ・ウィニーが当初は15分45秒(3分09秒/km)を想定したペースメーカーを務めました。
スタートしてすぐに好位置につけた前田穂南の走りが軽やかで、自然とPMの背中をつつくような流れになり、想定よりも速いペース。早くもソーシャルディスタンスの縦長に、選手の間隔が切れていきます。
PMウィニーの背後は同僚九電工勢の中でも“最下級生”、20歳になったばかりの宮田梨奈、その後ろに前田という隊列はそのままずっと続き、しばらく追走していた3人の九電工先輩や平井、棚池といったあたりは3000mまでには振り落とされてしまいます。
3番手を耽々と、ジョギングを楽しむかのように走る前田は、もう惚れ惚れしてしまう美しい走りです。これは優勝間違いなしと見ていましたが、残り2周でPMが外れるとともにスパートするも、意外や宮田が離れず、勝負はラストの直線まで持ち越されました。スパートしたとは言ってもこの1周で75秒を要した前田は必死に相手を振り切ろうというものではなく、マラソン女王にふさわしい余裕のまとめ方だったと言えるでしょう。
“大金星”を挙げた宮田のタイムは15分52秒23のPBを約18秒も上回り、前田も約3秒、PBを更新する実りあるレースとなりました。意外ではありましたが、また新たな力の台頭が見られてよかったと思います。

第2戦の深川大会は8日(水)開催。男女5000m、10000mのほか、女子は3000m、3000mSCも行われます。前田穂南は一山麻緒・安藤友香・福士加代子のワコールトリオらとともに10000mにエントリー。田中、廣中、宮田は3000mに、士別の3000mを制した佐藤早也伽(積水化学)は5000mに登場する予定です。

“世紀の一戦”MGCを振り返る


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日本国内のマラソン・シーンがここまで世間の注目を集めたのは、いったいいつ以来だったでしょうかね?まさに国民的行事となった『MGS』、素晴らしいイベントでありプロジェクトでした。
何より、男女の有力選手が全員、一堂に会するというのは史上初めてのことです。
男子だけで言えば、たとえば1979年および83年の福岡国際マラソンのように、オリンピック代表候補が全員集合して、結果的に“一発選考”で代表が決まったケースがありました。ただし、当時は国内ビッグレースの三者鼎立という状況にはなっていなかったので、福岡を事実上の代表決定レースとすることは陸連の胸先一つで可能だったのです。今は、そうではありません。その“大人の事情”に雁字搦めになった状況に風穴を開けた陸連の努力と工夫に、拍手を送りたいと思います。

先にスタートした男子は、まさかそこまではという疑念をあっさりと覆す設楽悠太のロケットスタート。「本当に中山竹通を再現するのか?」という展開にワクワクしました。私は9時10分以降はほとんど女子だけを視ていたので、中間の展開はよく分かっていませんが(まだビデオ検証をしてないのです)、次に戦況を見た時にはすでに35㎞過ぎ…疲れ切った表情の設楽に、後続の集団が間近に迫ってきているところでした。
ちょっと思ったんですが、設楽一人ではなくて、設楽と大迫傑が申し合わせるようにして並んで飛び出していたとしたら(それも付いていくには躊躇われるほどのペースで)、どうなっていたでしょうかね?やはり無理でも付いていかざるを得ないからと、服部勇馬以下の有力選手は、縦長の形状で何とか食らいつく集団を形成しますね。先頭の二人は「俺たちにいつまでも付いて来られる筈がない」とばかりにスピードを緩めない、結果的に前の方は後半暑さに全員撃沈して、最初から諦め半分にマイペースを決め込んだ後方の大穴ランナーが(例えては悪いですが、女子の野上恵子選手のように)上位を攫う、というようなことが起きたかもしれません。

それはそうと、中村匠吾(富士通)の優勝、まことに見事でした。終盤にきつい登り坂があるあのコースは、箱根の2区戸塚中継所前を思い起こさせますね。あるいは、中村と大迫の鍔競り合いは、2014年の1区の激闘を思い出させました。この時の東洋大は服部が2区で、1区は田口雅也。区間賞は日体大の山中秀仁で、中村は僅差の2位、田口が3位。大迫は中村に競り潰される形で区間賞争いから脱落し、5位でした。
箱根路を沸かせたスター選手たちがこうした激戦を再現してくれたことに、感慨を覚えます。大迫にとっては、走ったことのない2区の終盤や中村との競り合いの記憶など、気持ちの上でちょっとした不利が重なったかもしれません。
私は、中村が駒大3年生だったその年度、東京・味の素スタジアムで行われた日本選手権の10000mを現地観戦した際に、宇賀地強や深津卓也、窪田忍といった先輩・OBに交じって奮闘する彼の走りに強い印象を受け、「今年の箱根で注目は中村だ!」と周囲に語っていたのを思い出します。彼の3,4年時には、駒大は『箱根』優勝候補筆頭とも言うべき陣容を誇っていたのですが、それが叶わず、卒業後もどちらかというと停滞しているように見受けられました。

つまりその、ずっと気にかかっていた選手の一人ではあったんです。
予想大外しの言い訳です。しかしながら、印をつけた5人中4人が掠りもせずに、3位・14位・23位・25位・27位(ビリ)という体たらくでは、言い訳にもなりゃしませんな。



女子の前田穂南、という本命印は、実はかなり前から決めていました。
結果的には、2位に付けた差が3分47秒、つまりは圧倒的な力の差をもって優勝したわけです。レース展開的にどうのではなく、自力でレースを作ってのその結果ですから、現状で少なくとも夏場のレースでは実力が図抜けていることは明らかで、陸上ファンとしてそこを見抜けないでどうする、というところです。当たったから言うんですけどね。
当ブログで開陳する予想記事には、多分にヒイキ目が混じってくることは間違いありません。私にとって、松田・鈴木・福士というNHKの推す「3強」よりも、前田や安藤に対するヒイキ目が大きかった、その末の予想であったことは確かです。もしも前田彩里が万全の体調で出てきていたら、これもヒイキしてたことでしょう。
予想なんて、そんなもんです。勝負を左右する各個のコンディションや精神状態なんて、私ら外野席には全く伝わってきませんしね。

もう一人、心密かに(でもないか)ヒイキしてた小原怜選手。
4年前が1秒差、今度が4秒差。カワイソ過ぎる。
ファイナルチャレンジのターゲットタイムを見る時、男子の2時間5分49秒はなかなかに高い壁ですが、女子の2時間22分22秒はそうでもありません。現実に、これを上回るPBを持っているのが安藤と福士。松田にしても、PBを1秒でも更新すればOKなのです。
むろん、3つのレース(さいたま・大阪・名古屋)のどれかで出さなければならないとなると、本人の体調、当日の気象条件、レース展開とすべてのお膳立てが整うかどうかは神のみぞ知るところ。狙って出せるものではないでしょうが、それでも今回敗れた7人、出られなかった5人、計12人(むろん小原本人が加われば13人)の誰かがどこかのレースで出す可能性は、少なからずあります。

いやですね。毎年楽しみにしてるこれらのレースを、「記録よ、出るな出るな」と念じながら見つめなければならないなんて。
MGCの、唯一つ罪作りな処が、そこになりました。

半年ぶりブログ~世紀の一戦『MSG』を直前大予想


多忙にかこつけて休載状態にしてたら、あっという間に半年が経ってしまいました。
東京五輪前年の今季、日本の陸上界はなかなかに活況を呈しています。記事にしなかったのが今となってはもったいない気がしますけど、諸般の事情により、ということで…。陸上競技を伝えるメディアには相変わらず細かく目を通していますんで、浦島太郎状態ではありません。その点はご心配なく。

さて、いよいよMGC=マラソン・グランド・チャンピオンシップ本番です。
このプロジェクトが世に伝えられた当初は、当ブログでも対案を提示したりするなど、そのプロセスには幾ばくかの疑問も抱いていたのですが、まずまず盛り上がって、何よりも当事者の選手およびその周辺関係者が一様に納得してこの方式を受け容れていることが、最大のメリットだったと思います。
久々のブログは、「ハズレてもともと」のつもりで、このMSG大予想と参りたいと思います。ほんと、直前も超直前で済みません。結果が出てから読んだ人、大笑いしてくださいな…。
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 ※日本陸上競技連盟HPより
【ファイテンオフィシャルストア】公式通販サイト

◇女子
MSGの経緯で一つ残念だったのは、女子の有資格者があまりにも少なかったことでしょう。といって、他に誰が資格者になっていて欲しかったかと言えば、そうそう顔が思い浮かびません。清田真央、田中智美、田中華絵、堀江美里、竹地志帆…といったところでしょうかね。上位争いまではちと難しいが、レースのスケールアップにはなったことでしょう。
それと、新しい人が意外に出てこなかった。資格獲得第1号が前田穂南というフレッシュな名前だっただけに、続々と新規デビュー組の勝ち名乗りに期待したんですが、続いたのは松田瑞生と上原美幸、関根花観(欠場)、一山麻緒くらいで、大森菜月は惜しくも間に合わず。
どうせ復活するんなら、新谷仁美にチャレンジして欲しかったですけどね。

さて、その女子。もともと少ない有資格者から3人がドーハ世界選手権代表に回り、さらに残念なことに、ともに穴馬的存在だった関根花観(JP日本郵政G.)と前田彩里(ダイハツ)が故障欠場。たった10人でのフルマラソンという、かつてアジア大会でも見たことのない少人数のレースとなってしまいました。
ここ数日、放送担当局のNHKではしきりに松田瑞生(ダイハツ)・鈴木亜由子(JP日本郵政G.)・福士加代子(ワコール)の3人を取り上げ、あたかも「3強」の様相であるかのように事前告知を煽っていますけど、いやいやそんなに単純じゃあないですよ。だいたい、その絞り込みにはおそらく、珍しくNHKのコメンテーターに起用された増田明美さんの思惑が絡んでいることでしょうから、全然アテにはできません。
(増田さん本人が以前に言っていることですが、「NHKでは技術や戦術の解説を求められるのでお呼びではなく、日テレでは自分以上にアナウンサーらが細かい選手取材をするので声がかからない」んだそうです)
昨今のトラックを含めた長距離戦線の実績、福士の場合は20年近くに及ぶ業績の数々から、「強い!」というイメージが定着しているのがこの3人と言えます。その一方で、松田は5月の日本選手権10000mで好調を伝えられながら惨敗したトラウマがあり、鈴木にはマラソンランナーとしての経験不足、福士には年齢的な衰えという、それぞれに不安を抱えた3人でもあります。
当然、歴代4位のタイムを持つ安藤友香(ワコール)や、マラソンの経験値では一番と言える岩出玲亜(アンダーアーマー)、リオ選考会では代表まで1秒差と大魚を逃した小原怜(天満屋)など、後に控えるのは遜色のない実力者ばかりです。

いずれにしろ、頭数は少なくても予想をするのは非常に難しい中、私は敢えて!と言いますか、ここへ来ての成長度という意味で最も期待するのが、前田穂南(天満屋)です。
MGC切符を獲得した2017北海道マラソンでの鮮烈な初優勝ぶりはともかく、次戦の大阪国際女子マラソンでは高校の先輩である松田を激しく揺さぶり、結果的に優勝は譲ったものの「ホンモノ!」の感を強くしました。大阪薫英女学院高時代は駅伝エースの松田に対して万年補欠という立場だった彼女が、天満屋ならではの“武富マジック”によって見事な成長を遂げていたのです。
その後の駅伝やトラックレースなどでも安定して好位置をキープしており、完全に天満屋のエースとしての地位を不動のものにしつつあります。1年前のベルリンでは再び松田に及ばず、今年の東京では寒さの故か失速しているので評価はイマイチというところでしょうが、マラソンにおける潜在能力は相当のものがある、と私は睨んでいます。

レース展開は、10人という少人数であること、数日前までの猛暑は免れたとはいえ20度を大きく超える暑さの中の戦いであることを考えれば、誰かが飛び出す展開になることはちょっと考えにくい。先頭を買って出る選手がいるとすれば鈴木だと思いますが、それも自重を決め込むと、2004年のアテネ五輪選考会だった大阪の時のように、極端なスローペースに陥ることだって考えられます。
天満屋の坂本直子が優勝したあのレースは、実にスリリングな名勝負でした。そのレースに、私は同じピンクのユニフォームを重ね合わせて想像してしまうのです。そういえば坂本も、千葉真子に2度苦杯をなめさせられた後の3度目の正直で、見事に千葉を破って代表の座を勝ち得たものでした。
いずれにしろ、展開のカギを握るのは鈴木でしょう。スピードランナーと言ってもラスト勝負になるとスプリントが利かないタイプなので、スローでの集団走が続けば勝機は遠のくばかりでなく、あの時の渋井陽子のように走りを狂わされます。中盤にしろ終盤の登り坂にしろ、彼女が仕掛ける場面が必ず訪れる筈です。鈴木がロングスパートを仕掛けた時、誰がそこに付いているか、あるいは誰も付いていけなくなるか…。
終盤までもつれれば、ラストが強いのは松田と安藤。松田の粘り強さはやはりピカイチですし、駅伝1区のスペシャリストだった安藤は、勝負どころの見極めが実に上手い。あとは、ダークホースで一山麻緒(ワコール)の瞬発力も侮れません。残っていられれば、の話ですけどね。
もう一人、レースをメイクする可能性が高いのは、言うまでもなく福士おばさん。ただ、どうなんでしょう。私はもしかしたら、彼女が安藤や一山のサポート役に回ろうと考えるような心境の変化がレース中に訪れる可能性があるんじゃないか、という気がしています。
心情的には小原を応援したい気持ちもあるんですが、決して順調に来ているという雰囲気ではないので、強くは推せません。岩出、上原にも一発の可能性は十分にあります。野上さん、ゴメンナサイ!

ということで、私の大予想は
◎前田穂南
〇松田瑞生
▲安藤友香



◇男子

名門旭化成勢の全滅という意外さはあったものの、現有のビッグネームはほぼほぼ揃ってまずは賑やかな顔ぶれとなりました。
大迫傑(NIKE O.P.)、設楽悠太(Honda)、井上大仁(MHPS)、服部勇馬(トヨタ自動車)が「4強」と言われています。1年前に日本記録を更新した大迫、前記録保持者で安定感抜群の設楽、猛暑のジャカルタ・アジア大会を制した井上、9年ぶりに国内3大大会の優勝者となった服部と、それぞれにそう呼ばれるだけの立派な肩書があり、持ちタイムでもトップ4です。

こちらも、スローな滑り出しが予想されるところですが、30人もいれば、走り易いイージー・ペースに持って行こうという動きが自然に発生することが考えられ、巷間伝えられるように設楽が序盤からレースメイクをするようなことでもなければ、3分5秒/㎞程度の安定したペースになるんではないでしょうか?(スタート直後は下り坂が続くので、数字上は速いタイムになると思いますが)
大迫は早大時代に箱根駅伝1区で2年続けてロケットスタートを決めて後続をぶっちぎっていますが、強豪が揃った4年時にはそれも通用せず、もうその手は使わないでしょう。先頭を引くことのデメリットを無視して設楽が引っ張ってくれると、非常に面白くなるところではありますが、果たしてそこまで、往年の中山竹通みたいな大胆不敵さがありますかね?
「自信満々のコメントを発する時の設楽はコケる」というイメージが、私にはあります。こちらもラスト勝負になれば大迫に一日の長があることを知っていますから、早めの仕掛けがあるのは間違いないとして、どうしても早く仕掛けた方が不利になるのが、このレースの悩ましいところだと思えます。

淡々としたペースで進んだ場合、途轍もなく恐ろしい力を秘めているのが佐藤悠基(日清食品G.)ではないでしょうか。
佐久長聖高校時代には「天才」、東海大時代には「化け物」と呼ばれ、社会人となって日本選手権10000mを4連覇した必殺のスプリントは、大迫が3度挑んで返り討ちにあったほどの威力がありました。その佐藤もいつの間にか33歳、「黄金世代」と呼ばれた竹澤健介や木原真佐人、メクボ・モグスらが大成することなく、佐藤自身もマラソンでは苦戦続き、この世代の代表格は川内優輝ということになっています。稀有な素質の開花を阻んできたものは、大学時代から見えていた痙攣などの脚部不安、いわゆる“ガラスの脚”であったかもしれません。夏場のレースは、彼にとって有利な材料となる要素を孕んでいます。
マラソンランナーとしては平凡な実績しかなく、いつも30㎞を待たずに先頭集団から消えていく佐藤が、ここで遂に本領を発揮するのではないか、という期待に胸が躍ります。ただし、佐藤が好走するような展開になった場合に、やはり今の大迫には勝てないんではないかな、とも思います。

オールドファンの私から見て、最もマラソンランナーらしい選手だなと思えるのが井上。コツコツと走り込んで蓄えたスタミナと精神力には自信を持っていることでしょうし、過去の経緯から設楽を徹底マークする戦術が確固としているのも強みです。
他に、やたらと威勢のいいコメントが聞こえてくるのが神野大地(セルソース)です。終盤の登り坂までもつれ込めばしめたものかもしれませんが、果たしてそこまで我慢できるかどうか。むしろ、中団でじっくり構えた時の今井正人(トヨタ自動車九州)の方が、荒れたレースになった時は不気味さを感じます。

で、私の結論は
◎大迫傑
〇井上大仁
▲佐藤悠基
△設楽悠太
△今井正人

男子の方は、さらに予想困難。個人的には、強いと言われる選手が胸を張って先頭を引っ張るレースが見たいですし、3人出しをするトヨタやMHPS、富士通勢のチーム戦略にも興味津々です。

なにぶんにも久々のブログですんで、予想はご愛敬ということでお察しくださいませ。

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