豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

一山麻緒

一山、「世界2位」を奪取!~ホクレンDC第3戦続々報


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『ホクレン・ディスタンスチャレンジ2020』第3戦網走大会のダブル・メインイベントは、女子5000mAに続いて女子10000m。
1週間前の深川では、1戦消化した後の前田穂南(天満屋)の前に、実力差を見せつけられるかのような苦杯を喫した一山麻緒(ワコール)が、今度はローズメリー・ワンジル・モニカ(スターツ)の高速ペースに乗っかり、しぶとく粘った末に、PBとともに前田の記録をも10秒以上更新。30分38秒18でワールドリーダーとなったモニカに続いて31分23秒30、今季世界第2位の快走を見せました。
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スタートしてから一度もペースメーカー(日立のオマレ・ドルフィン)が先頭に立てない…モニカの高速ペースは終始3分03~04秒/㎞で押し通したのですが、一山は迷うことなくPMを追い抜いてこれを追いかけ、4000mまで食い下がります。離れた後もガックリと落ちることなく中盤を3分12秒/㎞前後でガマン。序盤で一山とともにモニカを追った松田瑞生がズルズルと下がったのとは対照的に、8000mを過ぎて再度ペースアップを図ると最後の1000を3分03秒でまとめ、マラソン日本代表として実力のほどを見せつけました。

この大会、試合の機会を奪われ、トレーニングでも制限を受けた中での過ごし方やモチベーションの持ち方が問われるものでしたが、「なるほど」と言いますか、すでに五輪代表が決まっている選手、そこにごく近いところにいる選手の走りが、男子も含め一様に、一味違うという印象があります。女子マラソン代表の前田・一山両選手は、その典型でしょうね。どちらも見ていてうっとりしてしまうような美しい走りが、研ぎ澄まされてきていますよ。一山の好タイムは、好コンディション(放送席の観測では気温15度程度、弱風)に恵まれた結果という要素もあり、直接対決で圧倒した前田が一歩リードの感がありますが。
田中希実フィーバーとは一度も交わることなく、もう一つの極上連続ドラマを見せてもらっているようなこちらのシリーズは、最終戦・千歳大会、5000mAに再び前田、一山、そして安藤友香らが干戈を交えてフィナーレを迎えます。
『ホクレン・ディスタンスチャレンジ』は、夏場の好条件下での記録会という気安さで多くの中長距離選手が活用している大会ですが、年末年始にオーストリア・ドイツで行われるスキージャンプの『4ヒルズ・トーナメント』のようにシリーズ優勝を競う大会になると、もっと盛り上がるかもしれませんね。そこまで行かなくても、「MVR(最高殊勲ランナー)」や「優秀選手賞」「敢闘賞」「新人賞」などを顕彰することを考えてみては、いかがでしょうか?
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前田穂南快走!~続報・ホクレンDC第2戦


今回も、女子のことしか書きません。悪しからず。
女子3000m・田中希実選手の快挙については既報のとおりですが、その他の女子3種目に於いても、好記録・好レースが続出しています。
LIVE配信は前回に引き続き河野匡・大塚製薬監督による実況、場内MCをその他の関係者が交代で務めています。女性の声は、ダイハツの山中美和子監督のようです。河野監督のコメントはよりこなれて滑らかになり、チャットに寄せられたコメントにも時々反応していただけるなど、聴きやすさ・親しみやすさ倍増。ただ、マイク周辺の雑音はほとんど拾わなくなって、ちょっと寂しい。ハード上のトラブルも前回より少なかったみたいです。

◇3000mSC

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今季初となるこの種目のレース。参加は5名と少ないながらも、吉村玲美、石澤ゆかり、藪田裕衣と昨年の日本選手権上位3名、元日本選手権覇者の森智香子が参戦。ただ昨年の趨勢としては世界選手権にまで駒を進めた吉村が、現状の実力、将来性ともに群を抜く感があります。
果たして、序盤から日本記録ペースで主導権をとった吉村が一人、また一人とライバルを振り落として、後半はもはや独擅場。1000mを過ぎてからペースが思うように上がらなかったようですが、最後をまとめて8分53秒50は、気象条件を考えればまずまずのところでしょう。(気温が23度くらいありました)

吉村選手は平地のスピードも一段上ですが、それ以上に障害で着地してからのスピードの乗せ方が、日本のトップクラスの中では上手ですね。石澤選手などは長身で飛越の仕方もスムーズに見えますが、着地してからの1歩、2歩でスッと吉村選手の方が前に出ます。特に水濠障害でその差が顕著に出ます。吉村にとっては大学の大先輩にあたる森選手は、(今回は走りそのものがまったく不調でしたが)相変わらず“垂直落下式”の着地で、障害のたびに止まってしまいます。女子の場合、無理に飛び越そうとしないで軽く足をかける式の飛越にした方が、着地でスピードを乗せられる場合もあるようです。この種目に本腰を入れるのならば、その辺をもっともっと研究していただきたいものです。

◇5000m
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注目は、士別大会の3000mを快勝した佐藤早也伽。ところがローズマリー・ワンジル・モニカが猛然と飛び出し、ペースメーカーのジェロティチ・ウィニー(九電工)のはるか前をスイスイと飛ばしていきます。1000mを2分57秒という、“14分台ペース”で通過すると、あとは1周72秒のラップを着々と刻んで独走態勢。
佐藤は、ターゲットタイムに即した75秒ペースをきっちり刻むPMの背後をピタリ追走して、その後に清水真帆、田村紀薫、大西ひかり、川口桃佳、薮下明音らが差なく追いかける展開。かつての実力者・西原加純は真っ先に集団からこぼれ、調子の上がらない堀優花と最下位争いです。
快調に独走するモニカの優勝は確定的となり、フィニッシュタイムの15分03秒49は彼女のPB。日本勢1番手の座を巡っては75秒ペースにしっかりハマった佐藤と川口の一騎討ち状態から、定評のある佐藤の切り替えが功を奏して、15分26秒66で2着フィニッシュ。士別の3000に続いて日本人のワンツーとなった佐藤、川口ともに、PBです。

佐藤は東洋大1年の頃から、そのベビーフェイスで一部マニアックな向きから人気を得ていた選手ですが、大学時代は鳴かず飛ばず。社会人となって2年目あたりから急速に成長を見せ、今年は初マラソンで2時間23分台と、一躍日本のホープとして注目を集めています。ひょっとすると、オリンピック戦線にまで絡んでくるダークホースとなるやもしれません。
上位陣がまずまず、実力どおりの着順となった一方で、西原・堀に代表されるヤマダ電機勢、パナソニック勢の、特に主力選手の不振ぶりが気がかりです。


◇10000m

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福士加代子(ワコール)こそDNSでしたが、前田穂南・一山麻緒・安藤友香のマラソン3人娘がさながら「3強」の様相。マータ・モカヤ(キヤノンAC九州)とジョアン・キプケモイ(九電工)のダブルPMが作るペースは3分10秒/㎞、76秒/周で、ターゲットタイムは31分40秒。3人にとっては格好の標的です。ただし、暮色に包まれてもなお20度を超える気温と、小雨もパラつく高い湿度が敵となります。
3000mを過ぎて早くも先頭はPMキプケモイと3強の4人に絞られ、ペースは設定どおりから若干アップ気味に推移して、5000mは15分49秒と期待に違わぬ展開に。カメラがしばらく下位グループを追っている間に安藤が遅れ始めて勝負は前田か、一山か?…そして今度は追走する安藤を写したりラップを記入したボードを見せたりしてるうちに、一山が脱落。(カメラワークまったく戦況を読まず)
PMが仕事を終えた8000mからは文字通り一人旅となった前田は、特にビルドアップを図るでもなく、ラストで切り替えるでもなく、まるでマラソンの最初の10㎞地点を通過するような雰囲気のまま、美しい安定したフォームでゴールを駆け抜けました。タイムはPBを39秒も更新するもので、これはまあ、従来のPBが遅すぎたというところでしょうけど、他の選手の出来具合と比較すると、好条件の下であれば31分そこそこが聞かれてもおかしくはないパフォーマンスだったと思われます。

私は、今年東京オリンピックが行われたとしても、前田選手は有力な金メダル候補だったと思っています。(もちろん、高温のレースに滅法強いという得手も考慮に入れて)ですが、MGC以降のロードシーズン、さらにこのホクレン・シリーズを見る限り、その進化ぶりはさらに続いているように見えてなりません。機会にさえ恵まれれば、世界最強の女子マラソンランナーと評価を得る日も、夢ではないのではないでしょうか。
なお、前田の優勝記録31分34秒94は、10000mのレースがまだほとんど行われていない中ではありますが、今季の世界最高記録です!
ちなみに今季第2位は、ノルディックスキー選手のテレーセ・ヨハウグ(NOR)です。(オスロDLの記事参照)
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さて次戦は7月15日の網走大会。いよいよ真打登場ということで、新谷仁美(積水化学)が同僚にして日本チャンピオンの卜部蘭とともに、1500mに出場予定!…あれ、5000に出る田中希実との対決を避けましたかね?そうだとしても、新谷の1500mというのはこれはこれで楽しみ。
他に、3000mには鍋島莉奈(JP日本郵政G.)、5000mには好調の萩谷、10000mにはワコール・トリオに加えて佐藤早也伽、川口桃佳、松田瑞生(ダイハツ)、萩原歩美(豊田自動織機)などが参戦予定です。


半年ぶりブログ~世紀の一戦『MSG』を直前大予想


多忙にかこつけて休載状態にしてたら、あっという間に半年が経ってしまいました。
東京五輪前年の今季、日本の陸上界はなかなかに活況を呈しています。記事にしなかったのが今となってはもったいない気がしますけど、諸般の事情により、ということで…。陸上競技を伝えるメディアには相変わらず細かく目を通していますんで、浦島太郎状態ではありません。その点はご心配なく。

さて、いよいよMGC=マラソン・グランド・チャンピオンシップ本番です。
このプロジェクトが世に伝えられた当初は、当ブログでも対案を提示したりするなど、そのプロセスには幾ばくかの疑問も抱いていたのですが、まずまず盛り上がって、何よりも当事者の選手およびその周辺関係者が一様に納得してこの方式を受け容れていることが、最大のメリットだったと思います。
久々のブログは、「ハズレてもともと」のつもりで、このMSG大予想と参りたいと思います。ほんと、直前も超直前で済みません。結果が出てから読んだ人、大笑いしてくださいな…。
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 ※日本陸上競技連盟HPより
【ファイテンオフィシャルストア】公式通販サイト

◇女子
MSGの経緯で一つ残念だったのは、女子の有資格者があまりにも少なかったことでしょう。といって、他に誰が資格者になっていて欲しかったかと言えば、そうそう顔が思い浮かびません。清田真央、田中智美、田中華絵、堀江美里、竹地志帆…といったところでしょうかね。上位争いまではちと難しいが、レースのスケールアップにはなったことでしょう。
それと、新しい人が意外に出てこなかった。資格獲得第1号が前田穂南というフレッシュな名前だっただけに、続々と新規デビュー組の勝ち名乗りに期待したんですが、続いたのは松田瑞生と上原美幸、関根花観(欠場)、一山麻緒くらいで、大森菜月は惜しくも間に合わず。
どうせ復活するんなら、新谷仁美にチャレンジして欲しかったですけどね。

さて、その女子。もともと少ない有資格者から3人がドーハ世界選手権代表に回り、さらに残念なことに、ともに穴馬的存在だった関根花観(JP日本郵政G.)と前田彩里(ダイハツ)が故障欠場。たった10人でのフルマラソンという、かつてアジア大会でも見たことのない少人数のレースとなってしまいました。
ここ数日、放送担当局のNHKではしきりに松田瑞生(ダイハツ)・鈴木亜由子(JP日本郵政G.)・福士加代子(ワコール)の3人を取り上げ、あたかも「3強」の様相であるかのように事前告知を煽っていますけど、いやいやそんなに単純じゃあないですよ。だいたい、その絞り込みにはおそらく、珍しくNHKのコメンテーターに起用された増田明美さんの思惑が絡んでいることでしょうから、全然アテにはできません。
(増田さん本人が以前に言っていることですが、「NHKでは技術や戦術の解説を求められるのでお呼びではなく、日テレでは自分以上にアナウンサーらが細かい選手取材をするので声がかからない」んだそうです)
昨今のトラックを含めた長距離戦線の実績、福士の場合は20年近くに及ぶ業績の数々から、「強い!」というイメージが定着しているのがこの3人と言えます。その一方で、松田は5月の日本選手権10000mで好調を伝えられながら惨敗したトラウマがあり、鈴木にはマラソンランナーとしての経験不足、福士には年齢的な衰えという、それぞれに不安を抱えた3人でもあります。
当然、歴代4位のタイムを持つ安藤友香(ワコール)や、マラソンの経験値では一番と言える岩出玲亜(アンダーアーマー)、リオ選考会では代表まで1秒差と大魚を逃した小原怜(天満屋)など、後に控えるのは遜色のない実力者ばかりです。

いずれにしろ、頭数は少なくても予想をするのは非常に難しい中、私は敢えて!と言いますか、ここへ来ての成長度という意味で最も期待するのが、前田穂南(天満屋)です。
MGC切符を獲得した2017北海道マラソンでの鮮烈な初優勝ぶりはともかく、次戦の大阪国際女子マラソンでは高校の先輩である松田を激しく揺さぶり、結果的に優勝は譲ったものの「ホンモノ!」の感を強くしました。大阪薫英女学院高時代は駅伝エースの松田に対して万年補欠という立場だった彼女が、天満屋ならではの“武富マジック”によって見事な成長を遂げていたのです。
その後の駅伝やトラックレースなどでも安定して好位置をキープしており、完全に天満屋のエースとしての地位を不動のものにしつつあります。1年前のベルリンでは再び松田に及ばず、今年の東京では寒さの故か失速しているので評価はイマイチというところでしょうが、マラソンにおける潜在能力は相当のものがある、と私は睨んでいます。

レース展開は、10人という少人数であること、数日前までの猛暑は免れたとはいえ20度を大きく超える暑さの中の戦いであることを考えれば、誰かが飛び出す展開になることはちょっと考えにくい。先頭を買って出る選手がいるとすれば鈴木だと思いますが、それも自重を決め込むと、2004年のアテネ五輪選考会だった大阪の時のように、極端なスローペースに陥ることだって考えられます。
天満屋の坂本直子が優勝したあのレースは、実にスリリングな名勝負でした。そのレースに、私は同じピンクのユニフォームを重ね合わせて想像してしまうのです。そういえば坂本も、千葉真子に2度苦杯をなめさせられた後の3度目の正直で、見事に千葉を破って代表の座を勝ち得たものでした。
いずれにしろ、展開のカギを握るのは鈴木でしょう。スピードランナーと言ってもラスト勝負になるとスプリントが利かないタイプなので、スローでの集団走が続けば勝機は遠のくばかりでなく、あの時の渋井陽子のように走りを狂わされます。中盤にしろ終盤の登り坂にしろ、彼女が仕掛ける場面が必ず訪れる筈です。鈴木がロングスパートを仕掛けた時、誰がそこに付いているか、あるいは誰も付いていけなくなるか…。
終盤までもつれれば、ラストが強いのは松田と安藤。松田の粘り強さはやはりピカイチですし、駅伝1区のスペシャリストだった安藤は、勝負どころの見極めが実に上手い。あとは、ダークホースで一山麻緒(ワコール)の瞬発力も侮れません。残っていられれば、の話ですけどね。
もう一人、レースをメイクする可能性が高いのは、言うまでもなく福士おばさん。ただ、どうなんでしょう。私はもしかしたら、彼女が安藤や一山のサポート役に回ろうと考えるような心境の変化がレース中に訪れる可能性があるんじゃないか、という気がしています。
心情的には小原を応援したい気持ちもあるんですが、決して順調に来ているという雰囲気ではないので、強くは推せません。岩出、上原にも一発の可能性は十分にあります。野上さん、ゴメンナサイ!

ということで、私の大予想は
◎前田穂南
〇松田瑞生
▲安藤友香



◇男子

名門旭化成勢の全滅という意外さはあったものの、現有のビッグネームはほぼほぼ揃ってまずは賑やかな顔ぶれとなりました。
大迫傑(NIKE O.P.)、設楽悠太(Honda)、井上大仁(MHPS)、服部勇馬(トヨタ自動車)が「4強」と言われています。1年前に日本記録を更新した大迫、前記録保持者で安定感抜群の設楽、猛暑のジャカルタ・アジア大会を制した井上、9年ぶりに国内3大大会の優勝者となった服部と、それぞれにそう呼ばれるだけの立派な肩書があり、持ちタイムでもトップ4です。

こちらも、スローな滑り出しが予想されるところですが、30人もいれば、走り易いイージー・ペースに持って行こうという動きが自然に発生することが考えられ、巷間伝えられるように設楽が序盤からレースメイクをするようなことでもなければ、3分5秒/㎞程度の安定したペースになるんではないでしょうか?(スタート直後は下り坂が続くので、数字上は速いタイムになると思いますが)
大迫は早大時代に箱根駅伝1区で2年続けてロケットスタートを決めて後続をぶっちぎっていますが、強豪が揃った4年時にはそれも通用せず、もうその手は使わないでしょう。先頭を引くことのデメリットを無視して設楽が引っ張ってくれると、非常に面白くなるところではありますが、果たしてそこまで、往年の中山竹通みたいな大胆不敵さがありますかね?
「自信満々のコメントを発する時の設楽はコケる」というイメージが、私にはあります。こちらもラスト勝負になれば大迫に一日の長があることを知っていますから、早めの仕掛けがあるのは間違いないとして、どうしても早く仕掛けた方が不利になるのが、このレースの悩ましいところだと思えます。

淡々としたペースで進んだ場合、途轍もなく恐ろしい力を秘めているのが佐藤悠基(日清食品G.)ではないでしょうか。
佐久長聖高校時代には「天才」、東海大時代には「化け物」と呼ばれ、社会人となって日本選手権10000mを4連覇した必殺のスプリントは、大迫が3度挑んで返り討ちにあったほどの威力がありました。その佐藤もいつの間にか33歳、「黄金世代」と呼ばれた竹澤健介や木原真佐人、メクボ・モグスらが大成することなく、佐藤自身もマラソンでは苦戦続き、この世代の代表格は川内優輝ということになっています。稀有な素質の開花を阻んできたものは、大学時代から見えていた痙攣などの脚部不安、いわゆる“ガラスの脚”であったかもしれません。夏場のレースは、彼にとって有利な材料となる要素を孕んでいます。
マラソンランナーとしては平凡な実績しかなく、いつも30㎞を待たずに先頭集団から消えていく佐藤が、ここで遂に本領を発揮するのではないか、という期待に胸が躍ります。ただし、佐藤が好走するような展開になった場合に、やはり今の大迫には勝てないんではないかな、とも思います。

オールドファンの私から見て、最もマラソンランナーらしい選手だなと思えるのが井上。コツコツと走り込んで蓄えたスタミナと精神力には自信を持っていることでしょうし、過去の経緯から設楽を徹底マークする戦術が確固としているのも強みです。
他に、やたらと威勢のいいコメントが聞こえてくるのが神野大地(セルソース)です。終盤の登り坂までもつれ込めばしめたものかもしれませんが、果たしてそこまで我慢できるかどうか。むしろ、中団でじっくり構えた時の今井正人(トヨタ自動車九州)の方が、荒れたレースになった時は不気味さを感じます。

で、私の結論は
◎大迫傑
〇井上大仁
▲佐藤悠基
△設楽悠太
△今井正人

男子の方は、さらに予想困難。個人的には、強いと言われる選手が胸を張って先頭を引っ張るレースが見たいですし、3人出しをするトヨタやMHPS、富士通勢のチーム戦略にも興味津々です。

なにぶんにも久々のブログですんで、予想はご愛敬ということでお察しくださいませ。

第101回日本選手権の見どころ ⑤ ~女子中長距離


このカテゴリーは、私にとってのメインイベントです。
特に女子10000mは、創成期の松野明美と朝比奈美代子の大逆転レース、鈴木博美・千葉真子・川上優子らをラスト1周62秒の猛スパートで一網打尽にした弘山晴美、無敵の6連覇で時代を創った福士加代子、北京代表を争った福士・赤羽有紀子・渋井陽子の鍔迫り合い、2位以下を全員周回遅れにした新谷仁美の圧巻の独走など、いくつもの名勝負・名場面が思い浮かびます。昨年の雨中の激闘も素晴らしいレースでしたが、放送の演出にこだわって大部分を見せなかったNHKのボーンヘッドにはやきもきしました。
今年も、タレントは豊富です。秘かに自分が注目する選手がどんな走りをしてどのポジションに入ってくるか、期待に胸躍るここ数日です。
2016日本選手権10000

◆「女王」待望の800m
400mと並んで、ここのところ上位の顔ぶれが猫の目のように変わる女子800m。2011年の岸川朱里(長谷川体育施設)以降、連覇した選手がいません。昨年高校生で制覇した福田翔子(松江北高→島根大学)も今季はまったく音沙汰なしで、競技を辞めてしまったのでしょうか、エントリーリストにも名前がありません。記録的にも、停滞が続きます。
その中ではインカレの関東・個人を連覇した北村夢(日本体育大4)が2分4秒台で安定した力を発揮、一歩リードの感があります。これに福田の好敵手・池崎愛里(順天堂大1)や卜部蘭(東京学芸大4)といった学生勢、大森郁香(ロッテ)や山田はな(わらべや)といった優勝経験者がどう絡むか。400とのダブルエントリーとなる川田朱夏(東大阪大敬愛高3)、塩見綾乃(京都文教高3)、後藤夢(西脇工業高3)らの高校勢はどうか…・
これだけ大勢の名前を挙げなければならないということは、主役不在ということです。個人的には、2011年の400m優勝者、新宮美歩(東邦銀行)にももう一花咲かせてもらいたいものですが。

◆1500mはニューカマーに期待
昨年何度目かのブレイクを果たした木村友香(ユニバーサル)が、今回は代表権にリーチをかけている5000mをメインで狙ってくると思われますので、この種目も混戦模様です。
優勝経験のある陣内綾子(九電工)や須永千尋(資生堂)、森川千明(ユニクロ)、飯野摩耶(第一生命G.)といったベテランもまだまだやる気の一方で、エントリーリストには高校中長距離界の一線級や高卒ルーキー・2年目の名前がズラリと並びます。
髙橋ひな(NIKE TOKYO)・田中希実・後藤の「西脇工3人娘」やインターハイ戦線での主役が期待される高松智美ムセンビ(薫英女学院高3)、リンズィーヘレナ芽衣(市立金沢高3)、林英麻(健大高崎高3)らにも食指が動きますが、イチオシは昨季の駅伝での快走ぶりが印象深い和田有菜(長野東高3)でしょうか。
かつて小林祐梨子、小林美香(ともに須磨学園高)といった高校生が優勝をさらってあっと言わせたこの種目、今年もその再現が見られるかもしれません。

◆オリンピアン高見澤の安定政権?
3000mSCは、予想外のリオ五輪出場を勝ちとった高見澤安珠(松山大4)の長期安定政権が続きそうな気配です。対抗格の森智香子(積水化学)も故障のない順調ぶりで追随しますが、とにかくあのお粗末なハードリングを改善しないことには、ラスト勝負に持ち込んでも勝ち目はありません。3番手も三郷実沙希(スズキ浜松AC)で安定状態。新勢力、たとえば向井智香(名城大2)あたりに一波乱を期待したいところでしたが、エントリーは1500だけでした。
もちろん(?)、早狩実紀(京都陸協)も出場します。レジェンドです。

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◆百花繚乱の5000、10000
長距離2種目は、セットで語る必要があります。男子も同様ですが、先に行われる10000mの結果を承けて、5000mの動向が変わってくるところがあるからです。
現在、女子の「標準」到達者は全種目を通じて5000mの3名、10000mの16名、これだけです。世界選手権代表が長距離オンリーになってしまう危惧を孕んでいる状況ですが、中で10000の到達者数が突出しているのも珍現象です。(10000mは標準記録の有効期間が昨年1月1日からと長いことと、世界的にレース数が少ない、あるいは強豪国が偏っているためレベルが引き下げられていることが原因)

10000m到達者16人のうち、すでにマラソン代表を決めている安藤友香・清田真央(ともにスズキ浜松AC)と5000mに専念する松﨑璃子(積水化学)を除いた13人が、全員エントリーしています。
リオ代表の鈴木亜由子、関根花観(ともに日本郵政G.)、高島由香(資生堂)はいずれも5月のペイトン・ジョーダン招待を走って順調の模様。この3人が今のところ実力上位である状況は、昨年とそう変わりありません。食い下がる存在としては、5000代表の上原美幸(第一生命G.)、実業団覇者の松田瑞生(ダイハツ)、進境著しい一山麻緒(ワコール)あたりでしょうか。石井寿美(ヤマダ電機)はマラソンにチャレンジした影響が懸念されますし、私が大好きな中村萌乃(ユニバーサル)では今一つ実力不足か?…。

5000の到達者は木村友香、松﨑璃子、森田香織(パナソニック)の3人。ランキングトップの木村が真剣に代表を狙ってきますが、まだ5000mの経験が十分ではなく、一抹の不安を感じさせます。その意味では安定した実力を発揮している松﨑が、5連覇・3大会連続代表を目指す尾西美咲との連携を含めて優位な立場にいると見られます。
先に10000で代表権を確保した選手がどういうレースに持ち込もうとするかで、展開は大きく変わってくるところがあります。その中で、福田有以、横江里沙という有力選手2人を擁する豊田自動織機勢が、助っ人アン・カリンジを使って主導権を取りにくる展開が予想されます。特に春先から好調の福田はあと一歩のところで「標準」を逃すレースが続いており、盤石の仕上げで臨んでくるものと思われます。
男子と違ってまず間違いなく「標準」を見据えた速い展開になるだろうと思いますが、その中で「代表」云々をあまり意識せずに追随する、矢田みくに(ルーテル学院高3)、小笠原朱里(山梨学院高2)、森林未来(諫早高3)といった高校生ランナーの一発にも注目です。となると、佐藤成葉(立命館大2)、関谷夏希(大東文化大2)、岡本春美(三井住友海上)などの若手勢にも奮起を期待したいところ。言うまでもなく、“復活”が待ち望まれる鷲見梓沙(ユニバーサル)からも、目が離せません。

2017日本選手権5000
2017日本選手権10000

松﨑、一山が標準突破!~PJ招待陸上



『ペイトン・ジョーダン招待陸上』が日本時間の今朝9時(現地時間5日17時)から行われ、女子5000mで松﨑璃子(積水化学)、同10000mで一山麻緒(ワコール)が、新たにロンドン世界選手権参加標準記録を突破しました。
5000m1組に出場した松﨑は、昨年の世界室内1500m優勝者シファン・ハッサン(NED)らと先頭争いを繰り広げ、ラスト1周62秒というハッサンのスピードには屈したものの2位に食い込みました。松﨑はすでに10000mの標準は突破していますが、“本業”の5000では木村友香(ユニバーサル)、森田香織(パナソニック)に続く3人目の到達者となります。
また女子10000mでは、リオ長距離代表の4人と一山が参戦。有効期間が昨年1月1日までさかのぼる種目のため、代表の4選手はすでに標準突破を果たしている中、唯一人暮れの記録会で1秒弱及ばず突破を逃していた一山が、新たに16人目の到達者となりました。
この種目の優勝者はリオ五輪1500m6位のメラフ・バータ(SWE)で、PBを2分近く更新する31分13秒06でした。
日本人選手の結果は、以下のとおりです。

◇男子10000m(35人出場・標準記録:27'45"00)
㉗ 29'17"60 大石 港与(トヨタ自動車)

◇女子3000mSC(14人出場・9'42"00)
⑪ 10'12"65 森 智香子(積水化学)

◇女子5000m2組(18人出場・15'22"00)
⑦ 15'31"92 尾西 美咲(積水化学)

◇女子5000m1組(21人出場)
② 15'19"91 松崎 璃子(積水化学)
⑪ 15'27"62 阿部 有香里(しまむら)
⑫ 15'27"97 鍋島 莉奈 (日本郵政G.)
⑯ 15'44"78 森田 香織(パナソニック)

◇女子10000m(36人出場・32'15"00)
⑤ 31'33"33 高島 由香 (資生堂)
⑧ 31'41"74 鈴木 亜由子(日本郵政G.)
⑩ 31'49"01 一山 麻緒(ワコール)
⑬ 32'10"22 関根 花観(日本郵政G.)
㉖ 32'56"38 上原 美幸(第一生命G.)

ギャラリー
  • 『第42回全日本実業団対抗女子駅伝』大胆展望
  • <再掲載>連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#3 ~1987年/第22回福岡国際マラソン
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