豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

ヴィヴィアン・チェルイヨト

ファラー&チェルイヨトが“グレート・ノース・ラン”制す



9月11日(日)、イギリスのニューキャッスルで行われたIAAFゴールドレーベル・ロードレースの『Great North Run』(ハーフマラソン)で、男子はモハメド・ファラー、女子はヴィヴィアン・チェルイヨトというリオの金メダリストがそれぞれ優勝を飾りました。

IAAFでは世界各地で開催されるロードレースのうち、2016年度は46大会を「ゴールドレーベル」に指定しており、日本の大会では「東京マラソン」「びわ湖毎日マラソン」「名古屋ウィメンズマラソン」「福岡国際マラソン」の4大会がこの中に含まれています。(「シルバーレーベル」は17大会/日本4大会、「ブロンズレーベル」は27大会/日本1大会)
レーベルレースの多くは男女混走のフルマラソン大会ですが、ハーフマラソンや10kmのロードレースなどもあって、この『グレート・ノース・ラン』はハーフの大会。地元のスーパーヒーロー・ファラーは2014年から3連覇で、本格的にロード参戦を開始した2013年は2位。この時の優勝はケネニサ・ベケレ(ETH)でした。


それではIAAFの記事をそのまま、久々に拙い和訳文でお伝えしましょう。(私の英語力は高校生時代から進歩しておりませんので、誤訳がありましたらご容赦ください)


Mo Farah
https://www.iaaf.org/competitions/iaaf-label-road-races/news/farah-cheruiyot-win-2016-great-north-run

日曜日(11日)に行われたIAAFゴールドレーベル・ロードレースの第36回グレート・ノース・ランで、モー・ファラーとヴィヴィアン・チェルイヨトが順当に勝利を飾った。
ファラーは海岸沿いのフィニッシュまで1マイル少々のところでデイザン・リッツェンハインを引き離すとそのまま突っ走り、1時間00分04秒で、ニューキャッスルからサウス・シールズのコースでの3連覇を達成した。
女子の部では、リオの5000m金メダル・10000m銀メダルのチェルイヨトが、同じケニアのプリスカ・ジェプトゥーを最後の200mで突き放し、初出場のハーフマラソンを1時間7分54秒で制して33歳のバースデイに花を添えた。

ファラーの優勝は、リオデジャネイロで5000m・10000mの王座をともに守り、オリンピック2種目2連覇という歴史的大偉業を達成してから僅か22日後でのことだった。
「正直に言うよ。もうヘトヘトなんだ」と、ファラーはBBCスポーツのインタヴューで語った。
「目いっぱい走らないといけないってことは分かってたよ。デイザンは元は僕のトレーニング・パートナーで、強いランナーだから。僕がどれだけ速いかを知ってるから、頑張って前に出ようとしてたね」
これは、ファラーがオリンピックの5000mに優勝した8月20日以来、最初のレースだった。
「いい気分で今シーズンを終えることができて良かった。素晴らしい1年だったよ」

レースは始まっていくらもしないうちに、ファラー、アメリカのリッツェンハイン、そして4マイル過ぎに上がって来たケニアのエマニュエル・ベットによる三つ巴の様相となった。ベットとファラーが10km地点を並ぶようにして28分32秒で通過し、いっぽう序盤は先頭を引っ張ったリッツェンハインは、5マイルから6マイルにかけての下り坂を過ぎたあたりから懸命に食らいついている様子に見えた。しかし彼はまたすぐに、2人に追いつき先頭に出た。
11月のニューヨーク・シティ・マラソンに向けてトレーニング中のリッツェンハインは、そのまま先頭で快調なペースを続け、15㎞を少し過ぎたあたりでベットが脱落した。
ファラーが勝負に出たのは、残り2kmを切った急激な下り坂に差し掛かった時だった。ファラーのギアチェンジは鮮やかかつ決定的なもので、あっという間にかつてのトレーニング・パートナーに挽回不可能な8秒の差をつけてゴールへと突き進んだ。
リッツェンハインにとって、1時間00分12秒のタイムはセカンド・ベストだった。ベストは、2009年にマークした1時間00分00秒である。
大きく遅れはしたものの、ベットが1時間01分22秒で3位の座を確保し、ベルギーのバシル・アブディが1時間02分03秒で4位、ケニアのダンカン・マイヨが1時間02分06秒で5位に続いた。



Vivian Cheruiyot
https://www.iaaf.org/competitions/iaaf-label-road-races/news/farah-cheruiyot-win-2016-great-north-run

女子のレースは序盤のゆったりとした展開の後、先頭集団は5マイルを過ぎて一気に5人にまで絞られた。チェルイヨト、ジェプトゥー、ジョイス・チェプキルイ、ティルネッシュ・ディババ、オーストラリアのエロイーズ・ウェリングスである。5マイルから6マイルにかけての4分57秒というペースはウェリングスにはあまりにも重荷に過ぎて、あとの4人の集団からみるみる取り残されることになった。
レースが始まって54分が経過したところで、先頭にはチェルイヨトとジェプトゥーだけが肩を並べるようにして残り、その約10m後方を、2012年の優勝者ティルネッシュ・ディババが懸命に追っていた。エチオピアの女王は死力を振り絞ったものの力尽き、あと約800mという地点で完全に遅れた。

ジェプトゥーがここぞというところでピッチを上げたが、その仕掛けは少々早すぎて、ラスト200mでチェルイヨトの逆襲を許す結果となった。
ジェプトゥーは1秒遅れの1時間07分55秒でゴールに入った。自身4度目のオリンピックとなったリオの10000mで銅メダルを獲得してから初のレースだったディババは、1時間08分04秒で3着となった。

IAAFのセバスチャン・コー会長が、オリンピック800m連覇のデーヴィッド・ルディシャと一緒にレースのスターターを務めた。ルディシャは、前日にグレート・ノース市民レースとして行われた500mで優勝していた。コー氏はまた、メダルのプレゼンターも務めた。

(ボブ・ラムザック)


 

リオ五輪陸上競技TV観戦記・Day1



いんやー!…(石塚浩さんふう)
凄かったですね、女子10000m。

 ① 29'17"45 WR アルマズ・アヤナ(ETH) ※エチオピア選手権1位
 ② 29'32"53 NR ヴィヴィアン・チェルイヨト(KEN) ※'15世界選手権1位
 ③ 29'42"56 PB ティルネッシュ・ディババ(ETH) ※オリンピック2連覇中
 ④ 29'53"51 PB アリス・アプロット・ナウォウナ(KEN) ※アフリカ選手権1位
 ⑤ 30'07"78 PB ベッツィ・サイナ(KEN) ※ケニア選考会2位
 ⑥ 30'13"17 AR モリー・ハドル(USA) ※全米選手権1位
 ⑦ 30'26"41 PB ヤセミン・ジャン(TUR) ※ヨーロッパ選手権1位
 ⑧ 30'26"66 PB ゲレテ・ブルカ(ETH) ※'15世界選手権2位


遂に、23年間破られることのなかったワン・ジュンシャ(=王軍霞/CHN)のワールドレコードが、10000m2回目のアルマズ・アヤナによって大幅に書き換えられました。
常に疑惑の渦中にあった1990年代における中国・マー軍団の遺した記録は、昨年のゲンゼベ・ディババによる1500mに続いて、レコードブックから姿を消すことになったのです。(まだ3000mのワンの記録が残っていますが、近い将来にDLなどでアヤナかG.ディババのターゲットになるでしょう)
それにしても、66秒台の中間スパートから69秒台のラップタイムをどこまでも重ねて、チェルイヨトもナウォウナも音を上げさせてしまったアヤナの強かったこと!

エチオピア・ケニアの6人の間に割って入ったのは、全米チャンピオンとヨーロッパ・チャンピオン。入賞者の全員がPBを更新し、勝負の帰趨は早々についてしまったとはいえ「強いランナーが実力をいかんなく発揮した」、素晴らしいレースでした。

この大記録のペースに、残り600mのところまで気が付かずにいた実況席はお粗末でしたね。
5000を14分46秒で通過した後にスパートしたアヤナがずっと70秒を切るペースで走っていたのだから、単純計算で29分10秒台の記録が出る可能性があることは7000~8000くらいで気が付くべきで、日頃からそういう解説しかできない(あとは選手の細かすぎる身辺情報)増田明美さんも、今回ばかりは迂闊でした。
RIO012

さて私が「直前展望」の中で懸念していた2人のスーパー・チャンピオン、男子800mのデーヴィッド・ルディシャ(KEN)と女子100mのシェリー-アン・フレイザー-プライス(JAM)、両者ともに予選を見る限りは心配ないようですね。ただし、どちらも「戦える土俵に立てた」という段階ですので、頂点まで行けるかどうかはまだ分かりません。特に女子100mの有力選手は、全員好調のようです。

女子砲丸投の大逆転劇も、記録は低調ながら好ゲームでした。
当面の敵と想定されたゴン・リーチャオ(CHN)、クリスティナ・シュヴァニツ(GER)の調子が上がらないところで目論見どおりに早い段階で20m中盤をプットしたアダムス(NZL)が、もう勝利を確信したかのように気の抜けた投擲を繰り返している間に、ミッシェル・カーター(USA)の出し抜けにしてやられてしまいました。やはり、圧倒的力量差を見せつけるには、もう少し時間が必要だったのでしょう。

日本選手は、20km競歩第3の男・松永大介が7位入賞。
ランキング・トップ3を独占して臨んだ日本勢としてはもう少し上を狙っていたでしょうが、この種目での入賞は初めてで、十分な快挙と言えます。
男子800m予選の川元は、惜しい4着。フィニッシュでちゃんと前傾しておけばよかったのにねえ。
男子400mの2人は、残念な大敗でした。足首を故障したというウォルシュ、惨敗した日本選手権からまるで変っていない金丸、いずれもリレーの出場すら危ぶまれます。
女子10000の両選手は、まずまず力を出し切ったと言えるでしょう。終盤、ヨレヨレになりかけた高嶋が、関根の追い上げに気付いてから気を入れ直して頑張りました。



テレビでは一片も取り上げませんでしたが、女子七種競技が熱いです。

100mHをまずまずのタイムで滑り出したジェシカ・エニス-ヒル(GBR)が4種目を終わってブリアン・テイセン-イートン(CAN)に大差をつけ、まず2連覇へ向けて盤石の初日でした。

NHKのネット配信で走高跳の模様をフルタイム見ることができる(今のうちだけ!)のですが、まさか七種のHJで2人の選手が2m超えにチャレンジするところを見られようとは!

私が注目選手に挙げたカタリナ・ジョンソン-トンプソンとベルギーのナフィサトウ・ティアムが、ともに1m98の大ベストを跳んじゃったのです。画面には「WB」という見慣れない記号が…たぶん「World Best」で「(混成競技の)種目別世界最高記録」という意味だと思います。
ジョンソン-トンプソンは200mでも1位になり、得意の走幅跳を残して楽しみな位置につけています。
一方のティアムは、1m95をクリアした跳躍は優に10センチ近く上を跳んでおり(腰から脚にかけてはギリギリでしたが)、走高跳にもエントリーしているのでロウ(USA)やベイティア(ESP)の強力なライヴァルになるかもしれません。
RIO013

ところで、陸上の初日を迎えて気になった点を2つ。
今回のトラック、直線部分は9レーンなんですが、曲走路は8レーンしかないんですね。そのためか、800mでは1レーンに2人の走者が入るという、オリンピックでは見たことのないシーンがありました。
オリンピックでこういうスタジアムというのは、久々に見た気がします。(世界選手権や、伝統的スタジアムで行われることの多いDLではよく見かけますが)それでも開催OKだったんですね。だったら、日本の国立霞ヶ丘競技場も、何も全面改築しなくたってよかったんじゃないか、という気がします。

もう一つは、選手の名前を記載したフロントビブの文字が小さい!
短距離やフィールド競技では選手が個別に大写しになりますから気になりませんが、中長距離や競歩ではほとんど判読不能でした。もう全部プリントアウトしちゃってるんでしょうけど、これは今からでも改善してほしいなあ。実況アナさんが困ってますよ。(ビブを見なくても誰だか分かるように勉強しておいてほしいもんですがね)

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