豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

ルース・ジェベト

DLチューリッヒ、5000mの死闘


遅くなってしまいましたが、24日(日本時間25日未明)に行われたDL第13戦・チューリッヒ大会の結果、 ファイナルを制してツアー・チャンピオンに輝いた選手16人を列挙しておきます。

男子100m チジンドゥ・ウジャ(GBR)
男子400m アイザック・マクワラ(BOT)
男子1500m ティモシー・チェルイヨト(KEN)
男子5000m モハメド・ファラー(GBR)
男子400mH カイロン・マクマスター(IVB)
男子走高跳 ムタズ・エッサ・バルシム(QAT)
男子棒高跳 サム・ケンドリクス(USA)
男子走幅跳 ルヴォ・マニョンガ(RSA)
男子やり投 ヤクブ・ヴァドレイヒ(CZE)

女子200m ショーナ・ミラー‐ウィボ(BAH)
女子800m キャスター・セメンヤ(RSA)
女子3000mSC ルース・ジェベト(BRN)
女子100mH サリー・ピアソン(AUS)
女子400mH ズザナ・ヘイノヴァ(CZE)
女子三段跳 オルガ・リパコワ(KAZ)
女子砲丸投 ゴン・リージャオ(CHN)
女子やり投 バルボラ・シュポタコヴァ(CZE)

今季のDLは12戦までのポイント上位者によるファイナル一発勝負ということで、世界選手権などの決勝と同じような緊迫感で各種目が争われました。
特に、事前に「注目種目」として挙げた女子3000mSC、男子5000mでは、期待に違わぬ好レースが展開され、世界記録保持者のジェベト、おそらくトラック最終レースとなるモー・ファラーが、それぞれ世界選手権の雪辱を果たしました。

◇女子3000mSC
①ルース・ジェベト(BRN) 8’55”29(WL)
②ベアトリス・チェプコエチ(KEN) 8’59”84(PB)
③ノラ・ジェルト・タヌイ(KEN) 9’05”31(PB)
④エマ・コバーン(USA) 9’14”81
⑤ハイヴィン・キエン(KEN) 9’14”93
⑧セリフィン・チェスポル(KEN) 9’17”56

今季は昨年のような圧倒的な走力差で後続をぶっちぎるレースがなかなかできずにいたジェベトが、最終戦でようやく本来のロングスパートを爆発させました。中盤ですでにペースメーカーを追い抜くと、追走できたのはロンドンでお騒がせのチェプコエチただ一人。そのチェプコエチもラスト1周で徐々に水を空けられて、ジェベトの独り舞台になりました。タイムは自身の世界記録に次ぐセカンド・ベスト。今のところ、このタイムで走られては誰もジェベトには敵いません。
チェプコエチは未だ無冠ながら、この日のレースで「ちゃんと走れば」ハードリングの上手さといい、安定した走力といい、来季の本命に挙げてもよさそうな資質を見せています。タイムは、史上4人目となる8分台突入の立派なものでした。
「5強」の間に割って入ってきたタヌイも、来季要注意です。この種目をますます面白くしてくれる存在になるでしょうか?
ロンドン優勝のコバーンは、調整レースとして出場した前回バーミンガム大会の3000mでも上位のスピードに付いて行けない状態で、明らかに調子は下降気味。この日も優勝争いに絡む位置には付くことができず、それでも持ち前の粘りで4位にまで押し上げてきたのはさすがでした。

◇男子5000m
①モハメド・ファラー(GBR) 13’06”05
②ムクタル・エドリス(ETH) 13’06”09
③ヨミフ・ケジェルチャ(ETH) 13’06”19
④セレモン・バレガ(ETH) 13’07”35
⑤モハンメド・アーメド(CAN) 13’10”26
-ポール・チェリモ(USA) DQ
42

ロンドン世界選手権の上位6人が、再び大激闘。ただこの日のファラーは、「包囲網」を避けるかのように終盤は前、前でレースを進め、極力プレッシャーのない位置をキープし続けたことが、勝因になったようです。
それでもPMが外れてペースダウンした末のラスト1周は誰が勝つか予断を許さない高速の大混戦。第3コーナーでケジェルチャが逃げるファラーを捕まえにかかる、ファラーが抜かせない、という局面の時、さらに外側を伺ったエドリスとケジェルチャが接触。力づくでケジェルチャの頭を抑えたファラーにはかなりのダメージが残ったと見えただけに、この僚友どうしの接触は結果的に痛恨となりました。
ファラーか、エドリスか、というその狭い間をスルスルと上がってきたチェリモが掻き分けるようにして、さらに大外を巻き返したケジェルチャも重なって、4人がもつれ合うようにゴール。まさに、死闘でしたね。
ファラーとダイビング・フィニッシュの形となったエドリスの差は僅かに100分の3秒。エドリスと同タイムでいったん2位と表示されたチェリモは、後に両手でファラーとエドリスの腕を文字どおり「掻き分けた」インターフェアを取られて失格となりました。

ラスト1周であの位置ならば、ファラーの勝利はもはや既定事実となるような展開。それがあれほどの混戦となったのは、ファラーの力の衰えというよりも、こと5000mに関する限りはライバルたちの追い上げがそこまで来ていた、ということのように思えます。世界選手権でのエドリスの勝利は、まったく実力勝ちだったと言えるでしょう。ファラーにすれば、絶好のタイミングでラスト・レースを見事に締めくくった、ということになると思います。

7月発売入荷!2017年AWモデル【アシックス】日本代表応援Tシャツ [A17B11] JPブラック×サンライズレッド 世界陸上2017レプリカ取扱店 陸上日本代表 記者発表 ニュース【レターパック】【WCSRE17】
7月発売入荷!2017年AWモデル【アシックス】日本代表応援Tシャツ [A17B11] JPブラック×サンライズレッド 世界陸上2017レプリカ取扱店 陸上日本代表 記者発表 ニュース【レターパック】【WCSRE17】

その他の種目では、ロンドンに続く頂上決戦が期待された女子三段跳でちょっとした波乱。
「2強」のカテリン・イバルグエン(COL)とユリマール・ロハス(VEN)が揃って14m中盤の低調な記録に喘ぐ隙を衝いて、2012年オリンピックと同年のDL以来のビッグタイトルとなるリパコワが漁夫の利を攫ってしまいました。
またケニ・ハリソン不在の女子100mHはロンドンに続いてサリー・ピアソンが勝ち、400mHでは全米以降パッとしないダリラ・ムハマド(USA)を抑えてズザナ・ヘイノヴァが優勝。ベテラン女子勢が気を吐いた大会となりました。
波乱といえば、男子やり投のドイツ90mコンビをまとめて破ったのがヤクブ・ヴァドレイヒ。とはいえ昨年も最終戦で大逆転優勝を飾っていますから、狙っていたV2でしょう。
女子200mでは大本命のエレイン・トンプソン(JAM)、世界選手権連覇のダフネ・スキッパーズ(NED)、絶好調マリー‐ジョゼ・タルー(CIV)を制してショーナ・ミラー‐ウィボが21秒88の好タイムで快勝。DLでは珍しい「2種目制覇」に王手をかけました。

残りの16種目は、9月1日(日本時間2日未明)に行われるブリュッセル大会でファイナル・ゲームが行われます。三段跳クリスチャン・テイラーや5000mアルマズ・アヤナの世界記録挑戦、女子1500mや走幅跳での世界選手権リマッチ、チューリッヒでも非DL種目で接戦を演じた女子棒高跳の頂上決戦などに期待しています。

ロンドン世界選手権観戦記 ⑨ ~結局これがベストレースか?


大会期間中には当ブログにもたくさんのご訪問をいただき、ありがとうございました。
長文記事を投稿するに際しての宿命といいますか、「見るだけで精一杯」の状況が終盤に押し寄せまして、書く方が間に合わなくなってしまうということになりました。ほとんど触れずに終わってしまう種目も多々ある中で、これだけは書き残しておきたい、というものが一つ残っていましたので、今さらながらではありますが追記しておきたいと思います。(実はほとんど書き終わっていたんですが、細部を推敲しているうちに日が過ぎてしまっていたのです)

終盤8日目の最もエキサイティングだったレースが、女子3000mSC決勝です。
「展望」の⑤で書いたように、この種目は今季世界記録保持者のルース・ジェベト(BRN)とケニア勢3人による熾烈でハイレベルな大混戦、そこにアメリカの実力者エマ・コバーンが割って入るか、という展開が予想されていました。

まずは、ケニア勢の一角ベアトリス・チェプコエチの“独演会”でレースは序盤から大混乱。
第3コーナーからフィールド内に切れ込む水濠障害の1回目、余裕たっぷりに先頭を走っていたチェプコエチは何を勘違いしたか、内側に切れ込まずに通常のトラックを走り、水濠の外側を通り過ぎてしまいました。慌ててコースに戻り水濠を跳び越えた時には、集団の最後尾から30メートルほども遅れてしまっています。
TV実況では、水濠がトラックの外側にあるものと勘違いしたかのようなことを叫んでいましたが、そんな“特殊な”形状のスタジアムは日本にくらいしかありません。明らかに、水濠の存在を忘れて通常のトラックのカーブに沿って進んでしまったものです。ぼーっとしていたのか、逆に金哲彦さんの言うように走りに集中し過ぎて曲がるところを見失ってしまったものか…?
20

まだペースが遅かったことにも助けられて、チェプコエチは半周で早々に集団に追いつくと、先頭に近い位置を目指して猛然とスピードを上げたのですが、今度は第2コーナー過ぎの障害で足を引っ掻け転倒。数人を巻き込んだだけでなく、後方の騒ぎを察知した先頭集団がペースを上げたために、14選手の位置取りは3周目にしてバラバラになってしまいました。
この間、チェプコエチは単純なタイムロスだけでも10数秒、それでも走力にものを言わせて先頭集団に追いつくと、ラスト1周では再びトップに立つなどしてレースを大いに盛り上げます。結果的には最後の優勝争いからは脱落してしまいますが、走りの安定感やケニアらしからぬ端正なハードリングはジェベトを含む「ケニア4強」の中でも一番好調と見えていただけに、自ら大波乱の立役者となってしまった感があります。

ケニア3人、バーレーン・アメリカ各2人で形成された先頭集団は、まずウィンフレッド・ヤヴィ(BRN)が脱落。残り1周で先頭に立ったチェプコエチのペースに堪りかねて、注目の18歳・チェスポルが後退。第3コーナー手前の障害で世界記録保持者・ジェベトが、最後の水濠手前ではチェプコエチが落ちていき、と障害を迎えるたびに速くなるスピードに優勝候補が次々と音を上げていきます。
残ったのは、ハイヴィン・キエン、コバーン、コートニー・フレリクス(USA)の3人。最後の水濠のテクニック差で一気にトップに立ったコバーンがそのまま押し切り、予想だにしなかったアメリカ勢のワンツー決着となりました。
※ハイヴィン・キエン・ジェプケモイは放送では「ジェプケモイ」と紹介されていましたが、DLなどでは「キエン」で定着しているのでこちらを採用。とはいえケニア人もまた、呼称がややこしいです。ビブスに表記されている名前からして大会ごとに異なるのは、本人もしくはチームがそのように登録しているわけで、何を考えているんでしょう?男子のビダン・カロキ・ムチリなども然り
55

「展望」で、コバーンの勝機はケニア勢4人による消耗戦になった場合だけ、と予想しましたが、序盤の失策で熱くなったチェプコエチの独り相撲が、どうやらそうした展開を作り出してしまったようです。とはいえ、これまでケニア勢のハイペースに付いていけず、追走集団で我慢するレースを続けていたコバーンが、ここへ来て9分02秒58(大会新)の大幅自己ベストで走った上に、ただ一人冷静にレースを進めていたキエンをねじ伏せたわけですから、今回は文句なしの実力勝ちと言えるでしょう。
まして、全米2位のフレリクスはPBを20秒も縮める快走、これには「アメリカ中長距離勢躍進の不思議」を感じないわけにはいきません。

日本代表応援Tシャツ アシックス asics 2017 世界陸上 ロンドン メンズ レディース マラソン 陸上競技 男女兼用 A17B11
日本代表応援Tシャツ アシックス asics 2017 世界陸上 ロンドン メンズ レディース マラソン 陸上競技 男女兼用 A17B11

リオ五輪では男女中長距離種目のほとんどで決勝進出を果たし、1500m金のマシュー・セントロウィッツをはじめクレイトン・マーフィー、ポール・チェリモ、エヴァン・ジャガー、ゲーレン・ラップ、ジェニー・シンプソン、コバーンと数多くのメダリストを輩出したアメリカは、今大会でもケニア・エチオピア・ウガンダのアフリカ3強と遜色のない長距離王国ぶりを示しました。ケニア出身のチェリモはともかく、多くが白人選手による活躍です。
アメリカ中長距離チームの特徴は、アフリカ勢のようにペースの乱高下を演出したり最後の直線に猛烈なダッシュ力を武器にするというのとは一線を画し、激しいレースの流れを集団の前方でじっと我慢しつつ食い下がった上で、なおゴール前の最終局面に脚を残しているというしたたかさにあります。
長距離ニッポンが奔放なアフリカ勢の長距離戦術に対抗するにはこういうレースをしなければならない、しかしそれを実現するには今に倍する走力の養成が必要…それを実現しつつあるのが、現在のアメリカ長距離軍団だと言えるでしょう。
なぜ、そういうことができるようになったのか、アメリカ長距離界のおそらくは構造や育成法に起因するこれらの躍進の理由には、とても興味があります。

また、こと3000mSCに関して言えば、コバーンにしろ男子のジャガーにしろ、そのハードリングの技術には見るべきものがあります。
日本選手の場合、ハードルを無理してノータッチで跳び越すよりは、むしろいったん足を掛けたほうがスピードを殺さずにいいと思われるケースが目立つのですが、アメリカ勢のハードリングは見た目にも美しく、その上に着実に相手よりもタイムを稼ぐ、優れたものに見受けられます。
水濠障害では、ノータッチで跳び越すケニア勢のハードリングを「すごい!」と讃嘆する向きがあります。私は、そんな跳び方で水濠の深みに着水するよりも、ワンタッチで浅場に降りる方が絶対にいいと思っています。どの障害でも、一つ越すたびにアフリカ勢との差を詰め、あるいは拡げていくアメリカ選手を見習うべきだと思うのです。

一方のケニアにとっては、「国技」とも言える男女の3000mSCで、今大会は「王国崩壊」の危機に瀕する結果となりました。
幸い男子では、現在の絶対王者コンセスラス・キプルトが懸念された脚の故障の影響もなく快勝しましたが、彼がもし3週間前のDLモナコの状態ならば、ケニア男子は「メダルなし」の惨敗に終わっているところでした。1991年東京大会以来、自国出身のサイフ・サイド・シャヒーン(QAT)以外に譲ったことのない王座は、今やキプルト1人が支えている状態です。
女子は意外なことに2013年モスクワ大会のミルカ・チェモス・チェイワが初優勝で15年北京大会のキエンに続き、今大会でようやく国技としての威容を発揮できるかというところでしたが、この種目における想像を上回るレベルアップの前に目論見が崩れた感があります。

昨シーズンはジェベトとキエンによる単調なレースが続いた女子3000mSCは、今季に入ってチェスポルの台頭、チェプコエチの成長で俄然、面白さが倍増してきたところへ、アメリカ勢の強烈な殴り込みです。
24日に行われるDL最終戦チューリッヒ大会では、ポイントのないフレリクスを除いた「5強」による年間ツアー・チャンピオン争いが期待されます。(現状コバーンはポイント9位で、この種目の最終戦出場者が8名なのか12名なのか不明なため、出否は微妙なところですが)
これは必見です!

ロンドン世界選手権展望 ⑤ ~注目の新鋭・奮起するベテラン


少々更新をサボっているうちに、開幕2日前となってしまいました。
まだ展望の及んでいない種目も結構残っていますが、それらは誰が勝ってもおかしくない混戦模様の種目とお考えいただくとして、今回は優勝争いに絡むかどうかは別として、世界の陸上界で今後注目に値する新星―日本で言うなら「ゴールデンアスリート」 にスポットを当ててみようと思います。

◆一番手は17歳のPV超新星
今季、最も話題を集めているニューカマーは、男子棒高跳のアーマンド(モンドー)・デュプランティス(SWE)でしょう。
15歳だった一昨年のU-17世界選手権(当時の呼称は「世界ユース選手権」)を5m30で制し、昨年はPBを5m51に伸ばして、それだけでも「天才ヴォールター」と呼ばれるにふさわしい躍進ぶりのところ、今季は室内で5m82、4月には屋外で5m90のU-20世界新をクリアして、シニアの一角を脅かす存在にまで頭角を顕してきました。何せこの記録は今季世界ランク3位。“帝王”ルノー・ラヴィレニも、五輪王者ティアゴ・ブラズも、世界王者ショーン・バーバーも、今季は届いていない高さなのです。

アメリカ人の父親が元棒高跳選手、スウェーデン人の母親が元七種競技選手という、いわゆるサラブレッドで、アメリカで生まれ育ちながらもスウェーデン代表として虎視眈々とワールド・チャンピオンのタイトルに照準を合わせています。
5月は5m71、6月は5m73、7月に入って5m70と、記録的にはやや停滞気味とはいえ、先々週にイタリアで行われたU-20ヨーロッパ選手権を5m65の大会新で圧勝してジュニアでは敵なしの存在。
1999年11月10日生まれの17歳。まだ来年のU-20世界選手権に出場する資格も有している超新星は、驚くべきことに身長170㎝(4月現在)という小柄な天才少年です。父親のグレッグ氏も、身長168㎝で5m80を跳んだと言いますから、技術力の継承ぶりが伺えます。
優勝候補筆頭のサム・ケンドリクス(USA)にとっても侮れない、堂々たるライバルと言ってよさそう。ちょっと気は早いですが、3年後の東京オリンピックで大本命となるかもしれないデュプランティスに、結果はともかく注目してみましょう。

Mondo Duplantis
(https://www.iaaf.org/news/series/armand-duplantis-sweden-pole-vault)

◆こちらも“良血”V.カニンガム
女子走高跳については、「鉄板中の鉄板、マリア・ラシツケネ」という項目ですでに展望しています。今季無敗のラシツケネの2連覇は固いと思われる中で、2位争いを展開するであろう一人に挙げられているのが、19歳のヴァシュティ・カニンガム(USA)です。
かつてNFLで1990年のMVPを獲得するなど巨漢の名QBとして名を馳せたランドール・カニンガム氏の愛娘であり、186㎝の長身と針金のように細い体形は、まさに生まれながらのハイジャンパーです。

1998年1月18日生まれ。17歳で1m96、18歳の昨年はインドアで1m99を跳ぶとその翌週、世界室内選手権を1m96で女子史上最年少優勝。7月の全米選手権も1m97で2位に食い込みリオ五輪に出場を果たしました。(13位)
今季は全米を屋外PBの1m99で制し、DLでも3位、2位、3位と安定した成績を残しています。すでに述べたように、今回の女子HJはラシツケネの独擅場となる公算大ですが、では誰が2mの大台に到達してそのチャレンジャーに名乗りを挙げるのか、その急先鋒と言えるでしょう。

52a4ec2f-51f2-4a16-b369-cd08ab21bd42
(https://www.iaaf.org/news/report/will-claye-1791m-us-championships)

◆3000SCの新女王に“もっと若い”ライバル出現
女子3000mSCは、昨年彗星のごとく現れた19歳(当時)のルース・ジェベト(BRN)が、あれよあれよと言う間にオリンピック・タイトルに続いて8分52秒78の世界新記録を樹立し、この種目の絶対的女王としての地位を確固たるものにしたかに見えました。
ところが今季、この種目はDL開幕戦から大変な様相を呈してきています。

まずドーハ大会では、昨年来ジェベトを唯一追い詰めるライバルとして自身も8分台を目前にしているハイヴィン・キエン(KEN)が、PBに0.11秒と迫る9分00秒12で優勝。ベアトリス・チェプコエチ(KEN)がPBを約10秒短縮する9分01秒57で続き、ジェベトはそこから0.42秒差の3着と敗れました。
続く上海大会ではジェベトが勝ってキエンが2位と昨年同様のワンツーとなったものの、第3戦のユージーン大会は、ジェベトよりも更に年下(1999年3月23日生まれ)のセリフィン・チェスポル(KEN)が、史上3人目となる8分台突入(8分58秒78)を果たして優勝。チェプコエチが9分00秒70の大PBで2位に続き、ジェベトはまたしても3位に敗退しました。
このレースはDLポイント対象外でしかも2日間開催の初日に行われたためTV中継で見ることはできなかったのですが、チェスポルは残り1周半の水濠でバランスを崩し、靴が脱げかけたアクシデントから立て直してこの記録を出したのだそうです。ドーハで4位、上海で3位とケニアのジュニア選手にありがちな勢いを感じさせる存在ではありましたが、まさかキエンがどうしても突破できない9分のカベをあっさり突き抜けるとは、と驚かされたものです。
ジェベト、キエン、チェスポル、チェプコエチによって形成された「4強」は7月のパリ大会にも“結集”しました。今度はチェプコエチが9分01秒69で勝利、2位キエン、3位チェスポルと続き、最終水濠を跳んだところで力尽きたかのように転倒したジェベトは4位に終わっています。

この「4強」、さらにはエマ・コバーン(USA)を加えた「5強」による熾烈な争いは、今大会の目玉の一つになると思われます。ただしコバーンの勝機は、前半で「4強」がせめぎ合いをし過ぎた消耗戦になった場合のみでしょう。
ジェベトが万全の状態であれば、有無を言わせぬ世界新ペースでの独走態勢に持ち込むことで優位に立てるかもしれません。しかしながら、最後まで混戦となった状況では、スプリントが利かない上にハードリングが稚拙な弱点が、目下のところ3人のケニア勢に対していかにも分が悪いようです。中盤でいかに大きく抜け出すか、がカギでしょう。
DL戦線のように、9分00秒前後の争いになった場合は、ケニア勢3人のラスト勝負になるのではないでしょうか。その中で唯一8分台を持っているチェスポルが、18歳にして世界を制することになるかもしれません。

ガトリンまた惨敗~DLユージーンは波乱続出


IAAFダイヤモンドリーグ第3戦のユージーン大会『プレフォンテイン・クラシック』が27日(日本時間28日早朝)に行われました。

大会名となっているプレフォンテインとは、1970年代に地元オレゴン大学のヒーローとして一世を風靡したスティーヴ・プレフォンテインから採られています。彼は1972年のミュンヘン・オリンピック5000mで4位と健闘したもののメダリストではなく、10000との2種目で優勝したラッセ・ヴィレン(FIN)やマラソン金メダルのフランク・ショーター(USA)に比べれば世界的にはさほど名のある選手ではありませんでしたが、常にフロントランナーとしてぐいぐいレースを引っ張るスタイルで、国内では大変な人気を博しました。ミュンヘンの3年後に交通事故のため24歳で夭折し、その名はこの大会の冠となって、世界最高峰のワールドツアーの一つに残されているのです。

この大会の名物種目となっている「バウアーマン・マイル・レース」(ロナルド・ケモイが優勝)に名を残しているビル・バウアーマンは、プレフォンテインを育てた陸上競技のヘッドコーチであり、ナイキの創業者の一人として知られる人物です。
さらに、バウアーマンの恩師であるビル・ヘイワードは、この大会の会場であるオレゴン大学グラウンドに「ヘイワード・フィールド」という名を残しています。
いわば、3代にわたる師弟関係の物語が、この大会を由緒あるものに仕立て上げているわけですね。
2021年には、この場所で世界選手権が開催される予定です。現在最大で20000人程度を収容できるに過ぎない、日本の大学のグラウンドと同じような空の開けたスタジアムが、どのように変貌していくのかが興味深いところです。

また、この大会で特徴的なものが、選手が装着しているビブスです。
通常ビブス(ナンバーカード)は、固めの化繊布や防水コーティングした紙製のもので、安全ピンもしくはボタンクリップでランニングウェアに装着します。ところがこの大会に限っては、少し小さめのカード(番号はなくPREの3文字とナイキのシンボルロゴ、個人名のみ)が、まるであらかじめ選手のユニフォームにプリントされているかのように、ピタッと貼り付いているのです。
トラックの出場者でも、走高跳の選手のように前面だけの装着。したがって、この大会では選手のIDナンバーはありません。(腰ナンバーのみ)
考えてみれば、ナイキのお膝元ですから、そうした「大会ロゴと個人名をあらかじめプリントしたウエア」を契約選手全員に配布するくらいのことは簡単にできるでしょうが、少数派とはいえ他社契約選手やナショナル・ユニフォームでの参加選手には、そういうわけにもいきません。
テレビの画面越しによくよく見れば、どうやらウエアと同調する程度に柔軟な素材の布製で、ぴったりと貼り付けられているらしいことが伺えます。というか、そう解釈するほかありません。
それにしても、今どきの材質のウエアにあれほど密着して貼り付くとはどんな接着剤を使っているのか、またどの選手も綺麗に身体の真ん中に曲がることなく装着しているのはいかなるわけか、とても不思議です。

まあ。そうした大会にまつわる付加的なあれこれに思いを巡らせながらTV中継を視ているうちに、ふと気付くと随分な割合で大番狂わせが起こっていました。


オープニング・レースの女子400mHでは、昨年全米予選からリオ・オリンピックまで見事なシンデレラ・ストーリーを築いたダリラ・ムハマドが中盤からガタッとペースダウンし、5着に敗退。優勝は五輪3位のアシュリー・スペンサー(USA)。2着には前半飛ばしたシャミーア・リトルが粘りました。リトルはトレードマークのオヤジ眼鏡とおバカ・リボンをマイナーチェンジして、少し雰囲気が落ち着きましたね。ムハマドもロングヘアを束ねて、大人の雰囲気にイメチェンです。


ケニ・ハリソン、ブライアナ・ローリンズの2大女王が不在の女子100mHは、昨年鳴かず飛ばずだったジャスミン・ストワーズ(USA)が12秒59(+0.8)で快勝。キャスリン、アリの両メダリストは6着・7着に沈みました。

主役を200mの方に持って行かれながらもキャンベル‐ブラウン、アウレ、アイー、フェイシー、バートレッタといいメンバーの揃った女子100m(ポイント対象外)は、モロレイク・オカイノサン(USA)が大穴の優勝。記録は+2.1で10秒94。

そして男子100mでは、アメリカの23歳ロニー・ベイカーが9秒86(+2.4)で優勝。川崎で日本勢の後塵を拝したスー・ビンチャン(CHN)が9秒92で続き、公認の風速ならばPBを更新していたでしょう。
アンドレ・デグラス(CAN)は4着、第1戦ドーハで惨敗していたジャスティン・ガトリンはまたもや5着といいところなし。例年、DLでは絶対的な強さを見せつけながら本番の世界選手権やオリンピックでボルトの壁に敗れ続けてきたガトリンが、今季はスロー調整で8月のロンドンに合わせている過程なのか、それとも年齢的な衰えか、一過性の不調か、まだ判断はつきません。

さらに、この日のメインイベントと言ってもよい豪華メンバーによる女子200m。昨年のユージーンでもトンプソン、スキッパーズの2強をまとめてぶっ倒したトリ・ボウイが、今度は21秒77(+1.5)のPBで文句なしの快勝。400mチャンピオンの“ダイビング・フィニッシュ”ショーナ・ミラー‐ウイボが大外から2着に突っ込んで、「2強」は3着・4着と形無しでした。

41
 女子200mの1・2着はAdidas勢。

フィールドでも、女子走高跳はオリンピック・チャンピオンのルース・ベイティア(ESP)が4位に敗れ、2m03というハイレベルなレコードで勝ったのはマリア・ラジツケネ(旧姓クチナ。現在IAAFに承認されていないロシアのため国名はANAと表記。何の略号なのかは分かりません)。北京世界選手権の優勝者ですから番狂わせでもないんですが、今年のロンドンには出場可能なんでしょうか?

とどめは最終種目のバウアーマン・マイル(DL1500mカテゴリ)でアスベル・キプロプ(KEN)がなんと完走選手中最下位に撃沈。リオでの惨敗から、立ち直りの兆候は見えません。

ナイキ ランニングウェア レディース セット 4点( 半袖 Tシャツ ランニングパンツ タイツ ソックス ) 上下 女性 ウィメンズ おしゃれ かわいい NIKE ジョギング ウォーキング スポーツ フルマラソン 完走 初心者 福袋 春 夏
ナイキ ランニングウェア レディース セット 4点( 半袖 Tシャツ ランニングパンツ タイツ ソックス ) 上下 女性 ウィメンズ おしゃれ かわいい NIKE ジョギング ウォーキング スポーツ フルマラソン 完走 初心者 福袋 春 夏


中継はありませんでしたがユージーン大会は前日26日も一部種目が行われており、女子3000mSC(対象外)では世界記録保持者のルース・ジェベト(BRN)が3着と沈み、セリフィン・チェプティーク・チェスポル(KEN)が歴代2位の8分58秒78で優勝。ジェベトは昨年19歳でオリンピックと世界記録の頂点に立ちましたが、こちらはなんとまだ18歳。ジェベトも9分03秒で走っていますから決して不調だったわけでもなく、この種目が新たな局面に突入しっつあることを伺わせます。

また同じく26日に行われた女子5000mでは、ゲンゼベ・ディババが14分25秒22で圧勝。どうやら、今季は彼女の元気な走り、世界記録へのチャレンジが見られそうな予感です。

アプセット続きのトラックで無敵王者ぶりを発揮したのは、男子5000mのモー・ファラーと女子800mのキャスター・セメンヤ。ともに寸分の隙なし。
男子三段跳ではクリスチャン・テイラーが自己記録に迫る18m11(+0.8)のビッグジャンプで圧倒したかに見えながら、同門のウィル・クレイも18m05(+2.4)で追いすがり、リオに続く冷や汗ものの勝利となりました。

次回DLは6月9日のローマ大会。
桐生祥秀の次戦を「日本学生個人選手権か?」なんて書いてましたが、このDL第4戦にエントリーしているようです。楽しみですね。


ジェベトついに世界新~DL第13戦・パリ大会



21

ひょっとしたらオリンピックで出るかな、と期待していた女子3000mSCの世界新記録が、1試合遅れて誕生しました。しかもそれは、従来の記録を6秒も縮める途轍もない大記録。出したのはもちろん、19歳のルース・ジェベト(BRN)です。
最初からジェベトとハイヴィン・キエン・ジェプケモイ(KEN)のマッチレースの様相だったこのレース、しばしカメラがフィールドの展開を映して戻ってきたとき、放送席では
「おや、予定よりも早くペースメーカーが離脱している…」
と困惑気味のコメントでしたがそれもそのはず、2人のペースメーカーはこの時ジェベトとキエンのはるか後方に置き去りにされていたのです。
で、これまでと同様、2000m付近からキエンをグイグイ離し始めたジェベトが、ユージーンの時のようにラストでタレることもなく駆け抜け、日本選手なら障害がなくても敵わないようなタイムで走り切ってしまいました。
これには9分1秒台の好タイムで2位に入ったキエンも脱帽するしかなく、ジェベトを笑顔で祝福。今季のこの種目で完全決着を見た、ゴール後のシーンとなりました。

女子1500mも好タイム。オリンピックではG.ディババの引っ掻き回し戦術に対応できず7位に沈んだ上に、日本の放送席からは「ムイー」という変な発音で名前を呼ばれ続けたローラ・ミュアー(GBR)がほぼ中間地点からのロングスパートで、今季オリンピックを含め全勝のフェイス・キピエゴン(KEN)以下に圧勝。3分55秒22はWLでもちろんPB、どころか英国新記録。見事なレースでした。オリンピック銅メダルのジェニー・シンプソン(USA)は6着。
38

女子200mは、四角い顔のダフネ・スキッパーズ(NED)が22秒13で楽勝したものの、後半の走りはどこかぎこちなさが感じられました。この調子では、エレイン・トンプソン(JAM)と顔を合わせたら間違いなく返り討ちに遭いそうです。
2着候補だったマリー-ジョゼ・タ-ルー(CIV)は第4コーナーで故障発生して立ち上がれず。可哀そうに、一昨日100mを5分間隔で2本走らされたツケがとうとう回ってきてしまいました。

そして100mHのケンドラ・ハリソン(USA)は、今宵も元気に独走V。ただスロー映像ではいつになくハードルに掠っている回数が多く、12秒44はやや不満の残る結果だったかもしれません。
これで今季DLは6戦中5戦全勝で、最終戦に出れば年間女王は決まり。となると、来年のロンドン世界選手権の出場権も獲得しますので、今季のような全米予選落ちの心配はなくなります。
ナイキ NIKE レディース 陸上/ランニング ランニングシューズ ナイキ ウィメンズ エア ズーム ペガサス 33 OC 846328999 2977 sports_brand
ナイキ NIKE レディース 陸上/ランニング ランニングシューズ ナイキ ウィメンズ エア ズーム ペガサス 33 OC 846328999 2977 sports_brand

また今回も、女子の話題ばかり先行してすみません。女子と書いて好きと読むもんで。

男子棒高跳は、ようやくラヴィレニが地元の大歓声と、競争相手サム・ケンドリクスの熱烈応援をバックに5m93で連敗脱出です。それにしても、怪しい関係なんじゃないかと疑うくらいに仲睦まじいラヴィレニとケンドリクス。全米の時のインタヴューでも語っていますけど、ラヴィレニはケンドリクスにとって最高のヒーローなんですね。
38
 まだ自身も競技中なのに対戦相手を至近で応援するとは、どんだけ仲がいいんでしょう?
 (それともフランスのファンへの過剰サービス?)


男子でもう一つ目を瞠ったのが、オープニング・レースの400mH。オリンピックもローザンヌも、シーズン前半のダイヤモンドレースでもまるでいいところのなかった世界チャンピオン、ニコラス・ベットが突然復活です。
「ここもイタダキ!」とばかりに直線で先頭に立ちかけたカーロン・クレメント(USA)に競りかけ、下手くそなハードリングで遅れかけながらも平地で踏ん張って48秒01のSBは、「起きるのがちょっと遅かったね」といった復活劇でした。

ところで、中継の日テレG+で実況を担当しているのはいずれも局アナではなくてフリーのスポーツアナさんたちなんですが、この日の担当の赤平大というアナさん。「陸上をよく見てるな」という感じの自信満々の語り口は結構なんですが、どうもここんとこ、画面情報を見逃したり視聴者が(つまり私が、ですが)とっくに気が付いていることを最後まで気付かずに終わる、ということが多いです。棒高跳の進行なども、IAAFのページにリアルタイム速報が出ているはずなのに、状況が説明できないというのは少し困ります。(手近にパソコン置いてないことはないと思いますが)
落ち着いた低音の語りなど、TBSの無理やりな絶叫中継よりもずっといいと思いますので、もう少しうまくやっていただけると嬉しいんですけどね。


ギャラリー
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#9~1991/第10回大阪国際女子マラソン
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#9~1991/第10回大阪国際女子マラソン
楽天市場
タグ絞り込み検索
  • ライブドアブログ