豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

モハメド・ファラー

DLチューリッヒ、5000mの死闘


遅くなってしまいましたが、24日(日本時間25日未明)に行われたDL第13戦・チューリッヒ大会の結果、 ファイナルを制してツアー・チャンピオンに輝いた選手16人を列挙しておきます。

男子100m チジンドゥ・ウジャ(GBR)
男子400m アイザック・マクワラ(BOT)
男子1500m ティモシー・チェルイヨト(KEN)
男子5000m モハメド・ファラー(GBR)
男子400mH カイロン・マクマスター(IVB)
男子走高跳 ムタズ・エッサ・バルシム(QAT)
男子棒高跳 サム・ケンドリクス(USA)
男子走幅跳 ルヴォ・マニョンガ(RSA)
男子やり投 ヤクブ・ヴァドレイヒ(CZE)

女子200m ショーナ・ミラー‐ウィボ(BAH)
女子800m キャスター・セメンヤ(RSA)
女子3000mSC ルース・ジェベト(BRN)
女子100mH サリー・ピアソン(AUS)
女子400mH ズザナ・ヘイノヴァ(CZE)
女子三段跳 オルガ・リパコワ(KAZ)
女子砲丸投 ゴン・リージャオ(CHN)
女子やり投 バルボラ・シュポタコヴァ(CZE)

今季のDLは12戦までのポイント上位者によるファイナル一発勝負ということで、世界選手権などの決勝と同じような緊迫感で各種目が争われました。
特に、事前に「注目種目」として挙げた女子3000mSC、男子5000mでは、期待に違わぬ好レースが展開され、世界記録保持者のジェベト、おそらくトラック最終レースとなるモー・ファラーが、それぞれ世界選手権の雪辱を果たしました。

◇女子3000mSC
①ルース・ジェベト(BRN) 8’55”29(WL)
②ベアトリス・チェプコエチ(KEN) 8’59”84(PB)
③ノラ・ジェルト・タヌイ(KEN) 9’05”31(PB)
④エマ・コバーン(USA) 9’14”81
⑤ハイヴィン・キエン(KEN) 9’14”93
⑧セリフィン・チェスポル(KEN) 9’17”56

今季は昨年のような圧倒的な走力差で後続をぶっちぎるレースがなかなかできずにいたジェベトが、最終戦でようやく本来のロングスパートを爆発させました。中盤ですでにペースメーカーを追い抜くと、追走できたのはロンドンでお騒がせのチェプコエチただ一人。そのチェプコエチもラスト1周で徐々に水を空けられて、ジェベトの独り舞台になりました。タイムは自身の世界記録に次ぐセカンド・ベスト。今のところ、このタイムで走られては誰もジェベトには敵いません。
チェプコエチは未だ無冠ながら、この日のレースで「ちゃんと走れば」ハードリングの上手さといい、安定した走力といい、来季の本命に挙げてもよさそうな資質を見せています。タイムは、史上4人目となる8分台突入の立派なものでした。
「5強」の間に割って入ってきたタヌイも、来季要注意です。この種目をますます面白くしてくれる存在になるでしょうか?
ロンドン優勝のコバーンは、調整レースとして出場した前回バーミンガム大会の3000mでも上位のスピードに付いて行けない状態で、明らかに調子は下降気味。この日も優勝争いに絡む位置には付くことができず、それでも持ち前の粘りで4位にまで押し上げてきたのはさすがでした。

◇男子5000m
①モハメド・ファラー(GBR) 13’06”05
②ムクタル・エドリス(ETH) 13’06”09
③ヨミフ・ケジェルチャ(ETH) 13’06”19
④セレモン・バレガ(ETH) 13’07”35
⑤モハンメド・アーメド(CAN) 13’10”26
-ポール・チェリモ(USA) DQ
42

ロンドン世界選手権の上位6人が、再び大激闘。ただこの日のファラーは、「包囲網」を避けるかのように終盤は前、前でレースを進め、極力プレッシャーのない位置をキープし続けたことが、勝因になったようです。
それでもPMが外れてペースダウンした末のラスト1周は誰が勝つか予断を許さない高速の大混戦。第3コーナーでケジェルチャが逃げるファラーを捕まえにかかる、ファラーが抜かせない、という局面の時、さらに外側を伺ったエドリスとケジェルチャが接触。力づくでケジェルチャの頭を抑えたファラーにはかなりのダメージが残ったと見えただけに、この僚友どうしの接触は結果的に痛恨となりました。
ファラーか、エドリスか、というその狭い間をスルスルと上がってきたチェリモが掻き分けるようにして、さらに大外を巻き返したケジェルチャも重なって、4人がもつれ合うようにゴール。まさに、死闘でしたね。
ファラーとダイビング・フィニッシュの形となったエドリスの差は僅かに100分の3秒。エドリスと同タイムでいったん2位と表示されたチェリモは、後に両手でファラーとエドリスの腕を文字どおり「掻き分けた」インターフェアを取られて失格となりました。

ラスト1周であの位置ならば、ファラーの勝利はもはや既定事実となるような展開。それがあれほどの混戦となったのは、ファラーの力の衰えというよりも、こと5000mに関する限りはライバルたちの追い上げがそこまで来ていた、ということのように思えます。世界選手権でのエドリスの勝利は、まったく実力勝ちだったと言えるでしょう。ファラーにすれば、絶好のタイミングでラスト・レースを見事に締めくくった、ということになると思います。

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その他の種目では、ロンドンに続く頂上決戦が期待された女子三段跳でちょっとした波乱。
「2強」のカテリン・イバルグエン(COL)とユリマール・ロハス(VEN)が揃って14m中盤の低調な記録に喘ぐ隙を衝いて、2012年オリンピックと同年のDL以来のビッグタイトルとなるリパコワが漁夫の利を攫ってしまいました。
またケニ・ハリソン不在の女子100mHはロンドンに続いてサリー・ピアソンが勝ち、400mHでは全米以降パッとしないダリラ・ムハマド(USA)を抑えてズザナ・ヘイノヴァが優勝。ベテラン女子勢が気を吐いた大会となりました。
波乱といえば、男子やり投のドイツ90mコンビをまとめて破ったのがヤクブ・ヴァドレイヒ。とはいえ昨年も最終戦で大逆転優勝を飾っていますから、狙っていたV2でしょう。
女子200mでは大本命のエレイン・トンプソン(JAM)、世界選手権連覇のダフネ・スキッパーズ(NED)、絶好調マリー‐ジョゼ・タルー(CIV)を制してショーナ・ミラー‐ウィボが21秒88の好タイムで快勝。DLでは珍しい「2種目制覇」に王手をかけました。

残りの16種目は、9月1日(日本時間2日未明)に行われるブリュッセル大会でファイナル・ゲームが行われます。三段跳クリスチャン・テイラーや5000mアルマズ・アヤナの世界記録挑戦、女子1500mや走幅跳での世界選手権リマッチ、チューリッヒでも非DL種目で接戦を演じた女子棒高跳の頂上決戦などに期待しています。

ファラー国内有終?に大歓声~DL第12戦バーミンガム大会

22

2017DLの予選シリーズ最終戦となる、第12戦『ミュラー・バーミンガムGP』が行なわれました。
獲得ポイントの累計で年間ツアー・チャンピオンを争った昨季までとは異なり、今季はこの第12戦までの合計ポイント上位者(種目により8名または12名)が第13・14戦に振り分けられた各種目の「ファイナル」へと進出し、ファイナルの勝者が年間王者となります。
世界選手権直後の大会とあって、ニュー・ワールド・チャンピオンを軸としたリマッチとしての期待が集まりましたが、たった1~2週間経過しただけで(良くも悪くも)別人のようになってしまった選手もいたりして、予定調和のない陸上競技の面白さを再認識させてもらいました。

◇女子100m決勝(-1.2)
 ① 10"93 E.トンプソン(JAM)
 ② 10"97 M.J.タルー(CIV)
 ③ 11"08 J.レヴィ(JAM)
50
見た目がすっかり変わったS.ミラー‐ウィボの祝福を受けるトンプソン

ロンドンからは良い方に変わったのが、エレイン・トンプソン。「鉄板」と推した世界選手権では故障を発したわけでもないのに5着に敗れ、本人も「何が起こったのかわからない」と茫然としていたのがちょうど2週間前。そのロンドンでダブル銀メダルを獲得し絶好調のタルーを相手に、堂々の横綱相撲でした。決して圧勝とは言えませんが、今季のトンプソンはずっと、こうした「どこまで追いかけて行っても追い抜けない」という勝ち方をしてきたのです。本当に、ロンドンでは何が起こったのでしょう?…リレーに出てこなかったところを見ると、やはりどこかに体調の異変があったのではないか、と推察されますが。
予選2組で行われた今回の100mには、ダフネ・スキッパーズ(NED)、ディナ・アッシャー‐スミス(GBR)、ブレッシン・オカグバレ(NGR)らに加えて400mのショーナ・ミラー‐ウィボ(BAH)、100mHのサリー・ピアソン(AUS)といった賑やかなメンバーが登場、新チャンピオンのトリ・ボウイ(USA)は不在ながら、華やかな顔ぶれが揃いました。

◇女子400m

 ① 50"59 S.E.ナセル(BRN)
 ② 50"63 A.フェリックス(USA)
 ③ 50"66 C.オコロ(USA)
40
19歳ナセルがアリソンに競り勝つ

この種目はロンドンの上位3人によるリマッチ。ただしゴール20m前まで金を確信させる走りをしていたミラー・ウィボが100mに回ってしまったので、画竜点睛を欠く感はありました。
ミラー、アリソンの失速でタナボタめいた銀メダルに食い込んだ19歳のサルワ・エイド・ナセルが、今度は文句なしにデッドヒートの末にアリソンをねじ伏せて優勝。いよいよ、この種目の後継者としての地位を確かなものにしました。
とはいえ、選手紹介の後に判定機器の不具合でかなりの待ち時間が生じたため、選手たちのコンディションにも影響があったと思われます。そのせいかどうか、ロンドン優勝のフィリス・フランシス(USA)はロンドンと同じようにアリソンの1つ外側のレーンを引き当てながら、今回はいいところなく4着に敗退しました。

◇男子走高跳
 ① 2m40 M.E.バルシム(QAT)
 ② 2m31 M.E,ガザル(SYR)
 ③ 2m24 T.ゲイル(GBR)
07
久々の大台クリアに歓喜のバルシム、記念にバーをお持ち帰り?

ロンドンで自国に初のメダルをもたらしたガザルがブレイク。2m31を一発クリアして一時はトップに立つなど、今季やや低調なこの種目で異彩を放ち始めています。一方、ロンドンで格の違いを見せつけたバルシムは、今回どことなく眠そうな表情でテンション低め。31を2回落として窮地に陥るも、3回目にようやく“お目覚め”すると、33、35を一発クリアして勝負に片を付けました。
バーは大会新記録の2m39へ。これを2回落としたところで、何を思ったかバルシムはバーを2m40に上げ、これを鮮やかにクリアしてのけました。
2014年には2m40オーバーが5人も現れて、世界記録更新の機運が高まったこの種目も、ここ3年間の40オーバーはバルシムただ一人、それも年に1回ずつです。特にこの日はグラバーツ、タンベリ、トーマスといった猛者たちが軒並み2m20の低空飛行に終り、コンディションが良くなかったことを伺わせる中、一人バルシムの2m31以降の跳躍は圧巻の一言に尽きました。そのバルシムも、先日のロンドンが悲願の世界初タイトル。あとは、2m46の高みに掛かったバーをクリアすることだけが大目標となり、その可能性を十分に感じさせる大ジャンプでした。


◇男子3000m
 ① 7'38"64 M.ファラー(GBR)
 ② 7'40"34 A.メチャール(ESP)
 ③ 7'40"63 D.キプラガト(KEN)

DLポイント対象外ながら、英雄モー・ファラーのイギリスでの(おそらく)最後のトラック・レースということで、メイン・イベントとして行われました。
ふだんのDLレースならば、ナイキの広告塔でもあるファラーはオリンピック・チャンピオン・ユニ(紺とピンクのグラデーション)を着ているはずなのに、今回はイギリスのナショナル・ユニフォーム。もっとも、今回の地元イギリス選手のうち世界選手権代表組のほとんどがナショナル・ユニを着ていましたから、単に合わせただけかもしれませんが、ゴール後にゆっくりとそれを脱ぎ去った姿には、何となく象徴的な意味もあったのかな、という気がしました。
レースの方は、これといった強敵も参加していない状況では、ラスト100mをちょっと頑張っただけの余裕のモボット・フィニッシュ。このレースに関しては、予定調和な結果でした。なおファラーは、DL5000mファイナルにも出場してくる模様です。
通算オリンピックで4つ、世界選手権で6つの金メダル。短距離のウサイン・ボルトにまったく遜色のない偉大なスーパースターのロードでの今後が楽しみであると同時に、ハイレ・ゲブレセラシエ、ケネニサ・ベケレ、ファラーと続いた長距離絶対王者の時代を、次に引き継ぐ者が現れるのかどうか、興味は尽きません。

その他の種目の結果をまとめて。(DLポイント対象種目のみ)

◇男子200m(-0.1)
 ①20"19 R.グリエフ(TUR)
 ②20"26 A.ウェブ(GBR)
 ③20"30 A.ブラウン(CAN)

◇男子800m
 ①1'44"50 N.アモス(BOT)
 ②1'45"28 A.クチョット(POL)
 ③1'45"33 M.レヴァンドフスキ(POL)

◇男子110mH(-0.6)
 ①13"29 A.メリット(USA)
 ②13"31 S.シュベンコフ(ANA)
 ③13"40 D.アレン(USA)

◇男子走幅跳
 ①8m19(+0.3)J.ローソン(USA)
 ②8m03(+0.9)A.サマーイ(RSA)
 ③8m02(+0.4)M.ハートフィールド(USA)

◇男子砲丸投
 ①21m83 T.ウォルシュ(NZL)
 ②21m55 R.クラウザー(USA)
 ③21m16 T.スタネク(CZE)
 ⑦20m52 J.コヴァックス(USA)

◇女子1500m
 ①4'01"36 D.セヤウム(ETH)
 ②4'02"24 W,チェベト(KEN)
 ③4'02"95 R.アラフィ(MAR)
 ⑦4'03"71 J.シンプソン(USA)

◇女子3000m(5000mカテゴリ)
 ①8'28"90 S.ハッサン(NED)
 ②8"29"89 K.クロシュテルハルフェン(GER)
 ③8'30"11 M.キプケンボイ(KEN)
 ⑨ S.ロウベリー(USA) ⑩ M.ハドル(USA) ⑪ E.コバーン(USA)

◇女子400mH
 ①54"18 Z.ヘイノヴァ(CZE)
 ②54"20 D.ムハマド(USA)
 ③54"67 J.ラッセル(JAM)

◇女子棒高跳
 ①4m75 E.ステファニディ(GRE)
 ②4m61 H.ブラッドショー(GBR)
 ③4m61 M.メリエル(SWE)
 ④4m61 S.モリス(USA)

◇女子三段跳
 ①14m51(0.0) C.イバルグエン(COL)
 ②14m44(+0.1) K.ウィリアムズ(JAM)
 ③14m29(+0.4) O.リパコワ(KAZ)
 ⑦13m94(+0.2) Y.ロハス(VEN)

◇女子円盤投
 ①67m51 S.ペルコヴィッチ(CRO)
 ②65m24 D.カバリェロ(CUB)
 ③65m11 Y.ペレス(CUB)

全般的に、気温が低く記録は停滞気味、そしてアメリカ勢の調子が著しく下降気味ですね。それとも、最終戦に備えての調整試合と割り切っているのか…?
ファイナル第1日のチューリヒ大会は、24日(日本時間25日未明)に行われます。


ロンドン世界選手権観戦記 ① ~“鉄板”揺るぎなし



今年の『ツール・ド・フランス』は、稀にみる接戦の総合優勝争いとなり、結局大本命のクリストファー・フルーム(チームSKY=GBR)が3年連続4回目のマイヨジョーヌを獲得しました。
自転車レースの総合成績というのは、よく事情を解っていないと理解できないカラクリがありまして、そこが大変に複雑で面白いところなんですが、まあ要は「個人の力だけでは絶対に勝てない」ということに尽きるでしょう。
ツール・ド・フランスは9人1組のチームごとの参加となる大会で、それぞれのチームが1人のエース選手を勝たせるために、時によってはライバルチームのエースを「潰す」ために、総力を挙げて臨みます。今回のフルームの場合も、21日間の長丁場の中で何度も訪れたピンチを、イギリスが誇る最強のプロ集団・チームSKYのチーム力で切り抜けた結果であり、今回ほどチーム力の優劣や方針の違いが個人の成績に反映された「ツール」もなかったと思いました。

いきなり関係のない話ですいませんね。
実は男子10000mを見ていて、ついつい先日終わったばかりの『ツール・ド・フランス』を思い出さずにはいられませんでした。
モー・ファラーという1人の大本命を倒すという、他の有力選手の一致したテーマのもとに進められた、珍しいタイプのレース展開。実況でもそのようなコメントがありましたけど、そこには自転車レースではごく日常的にみられる「チーム戦」の様相が垣間見えました。一方の大本命は、長年連れ添った相棒(ゲーレン・ラップ)を今回は欠いて、“一人ぼっち”の孤独な戦いを強いられていたのです。
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ただ決定的に違う点は、自転車レースでは1人の選手を勝たせるために、チームメイトは己を犠牲にしてエースをサポートすることに全力をあげるのですが、陸上競技ではあくまでも「最後は自分が勝つ」ことを前提として連携を図る、というところです。
たとえば今年の「ツール」のチームSKYでは、2014年のロードレース世界チャンピオンであるミハウ・クフィアトコフスキー(POL)という、他のチームにいれば間違いなくフルームの強敵となるほどの選手が、長いレースの大半を集団の先頭でペースを作り、時には飛び出した他チームのライバルを牽制するために一人追走してマークし、また勝負どころで自転車が故障したフルームの大ピンチに自分の自転車のパーツを譲り渡して追走させるなど、文字どおり献身的なサポートでフルーム優勝の最大の功労者となりました。こうした「アシスト」と呼ばれる選手たちは、状況によってはステージ優勝(単日のレースでの1着)を目指す場合もあるとはいえ、自身の個人総合成績は完全に捨てることを求められます。
もし陸上競技で、そのようなあからさまなサポートを他の選手に行なえば、反則行為と見なされます。とはいえそれも程度問題で、「このくらいなら」と見過ごされるケースも多々ありますから、陸上レースでもある程度のチーム戦術は十分に成立し得ます。
「陸上競技はあくまでも個人の戦い」という固定観念があると、こうした考え方には強い違和感を覚えることでしょう。しかし、たとえば今では日本の国内レースでも定番化しているペースメーカーという存在も、自転車レースの盛んなヨーロッパ圏では早くから容認されていた、ということを思えば、将来の長距離・ロードレースでは当たり前に見られることなのかもしれないですよ。


アシックス(asics) 世界陸上 2017 日本代表 ウインドジャケット (M)

もしも、今回の10000mレースで後半までファラーを“包囲”した10名ほどのライバルたちが、事前に示し合わせて(たとえばSNSのグループになって事細かに作戦を練り合うとかして)チーム戦を仕掛けていれば、さしものファラーといえども抗しきれなかったかもしれません。
しかしながら実際には、「速いペースでファラーを消耗させよう」という思惑が一致していただけで、それほどのチーム戦術はとられていなかったでしょう。あったとすれば、国は違えど同じチームのジョシュア・チェプテゲイ(UGA)とジョフリー・カムウォロル(KEN)、また同じ日本実業団連合から参戦のポール・タヌイ(九電工=KEN)とビダン・カロキ・ムチリ(DeNA=KEN)、あるいはエチオピア勢3人、といった小規模の合同作戦程度だったことでしょう。
たとえば5000m付近で飛び出したカロキによる強烈な揺さぶりが、自身は途中壊滅覚悟のロングスパートでタヌイをサポートしたものだったとすれば、ファラーに大きなダメージを負わせることができたかもしれません。大逃げを放置するにはカロキ自身が実力者であり過ぎるため、ファラーとしても追わないわけにはいかなくなり、それをじっくりとマークすることでタヌイに大きなチャンスが生まれるからです。
ですがカロキには己を犠牲にするという意図はなく、これはあくまでも自分の勝機を見出すための仕掛けということでしかありませんでした。チェプテゲイとカムウォロルの間で頻繁に繰り返された「先頭交代」も同様で、どちらかがアシスト役ということではなかったようです。
最終的な目標は、ファラーを負けさせることではなくて、自分自身が勝つこと。陸上競技なんですから当たり前ですね。そこの微妙な匙加減やジレンマが、とても面白かったです。
そして、長距離界の絶対王者は些細なチーム戦術には小動もせず、圧倒的な力の差を見せつけて最後の10000mレースを締めくくりました。

他のレース競技を見ることは、陸上競技を観戦する上で非常に参考になることがたくさんあります。中でも自転車競技は、常に「風圧」への対策ということが戦術の大前提にあり、チーム戦術、共同戦線といった発想の原点になっています。オリンピックなどのロードレースでは、普段のチームではなく同じ国どうしで新たなチームを組み、そこにまた他国ながら普段のチームどうしの連携も生まれるなど、なかなか面白いことが起こったりします。
見たことがない人は、ぜひ一度ご覧になってみてください。ただし1回のレースが5,6時間の長丁場、「ツール」はそれが21日間続きます。ちなみに私は生中継の放送局には加入していないので、日々のダイジェスト版でしか見てませんけどね。

ロンドン世界選手権展望 ② ~絶対王者の動向に注目


DLモナコ大会でのウサイン・ボルトを、皆さんどう見られたでしょうか?
私の見立ては、前回の記事を書いた時の状況と変わりなし、というものです。
つまり、今回世界選手権のラスト・レースに臨むボルトは男子100mの中心にはいるものの、絶対的な本命とするほどの高みにいるわけではなく、近年では比較的レベルが低い100mレースの中にあって優勝候補の一人に過ぎない、という状況です。
勝ったとはいっても、日本選手と互角の実力と目されるスー・ビンチャンあたりに「あれ、ひょっとして俺、ボルトに勝っちゃうかも?」と思わせるようなレースであったことは否めません。
もちろん、残りの約2週間できっちりと仕上げてくる可能性は高いでしょうし、それが偉大なるボルトの最大の武器でもあるのですが、それはガトリンやブレイクなど他の選手にも言えることです。結局、その時点で最もいいフィジカル・コンディションを作り上げた選手が勝つ、ということになるでしょう。

ボルトのことはひとまず措いて、今大会で間違いなく「主役」の重責を担い、そしてまず間違いなくその大任を果たすだろう、と思われる選手たちについて、今回はまとめてみたいと思います。

◆こちらも“ラスト・ラン”、地元の英雄モー・ファラー
モハメド・ファラーが世界選手権に初登場したのは、2007年の大阪大会。5000m6位というのがデビュー戦の成績でした。
翌年の北京五輪は予選落ち、続く09年ベルリン大会は7位と振るいませんでしたが、11年テグ大会で5000m優勝、それに先立ち10000mではゴール寸前まで単独トップを快走しながらイブラヒム・ジェイラン(ETH=この年、Hondaに所属)の猛烈な追い込みに屈して2位。翌12年以降は、2度のオリンピック、2度の世界選手権で全て5000・10000の2冠を制し続けています。
そのファラーは昨年のリオ五輪で史上2人目となる「長距離2種目2連覇」を易々と達成した後、34歳となる今年をトラック・レースのラスト・シーズンとすること、以後はマラソンをはじめとするロード戦線に専念すると宣言しています。

その強さ、その鉄板ぶりを支えているのは、どんなペースや展開になっても今のところは100%の確率で繰り出されている、ラスト1周53~54秒(時に52秒台)という強烈なラストスパートです。長距離種目をお家芸とするケニア、エチオピア等が複数のランナーで包囲し、自転車レースさながらのチーム戦術でファラーの勝ちパターンを封じ込めようとしても、一向に動ずることなく最後の1周で勝負を決めてしまいます。
昨年のリオでは、10000mの序盤で転倒しながらも何事もなかったかのように優勝。今年も、DLユージーン大会5000mで、ヨミフ・ケジェルチャ(ETH)、ジョフリー・カムウォロル(KEN)以下に、差は僅かですが測り知れないほどの実力差を見せつけて快勝。調整にも、年齢的な瞬発力の変化にも問題はなさそうです。

このファラーが、2012年以降のレースで途中のペース変化に消耗して失速したり、終盤のデッドヒートに競り負けたりといった光景を、私は見たことがありません。せいぜい、1500mのレースに出てさすがにトップのスピードに追走するのが精一杯だった、ということがあったくらいです。(とはいえ、1500でも3分28秒台!のPBを持っているのです)
まず、負ける場面を想像しがたいというのが正直なところなのですが、勝負に絶対はあり得ません。打倒の候補としては、5000mでは今季WLの12分55秒23を見事なラストの斬れとともに叩き出したムクタル・エドリス(ETH)か、猛暑の全米選手権を13分08秒台で圧勝したポール・チェリモか、といったあたりでしょう。
初日に行われる10000mのほうは、いよいよ盤石です。せいぜい、日本人選手がいないぶん、ポール・タヌイ(九電工)やビダン・カロキ(DeNA)の善戦を期待しましょう。

Mo Farah
オリンピック・チャンピオン・ユニを着てDLレースを走るファラー
(https://www.iaaf.org/news/news/farah-birmingham-iaaf-diamond-league)

◆スプリント新女王トンプソン
前回北京大会まで、女子スプリント、とりわけ100mの絶対女王に君臨していたのは、シェリー‐アン・フレイザー‐プライス(JAM)でした。自身で経営する美容院仕込みのド派手なヘアスタイルが毎回楽しみでしたが、前回は特に、緑色のドレッド・ヘアにヒマワリの花が5つ並んだ髪飾りという艶姿で、あっと驚かせてくれました。
そのシェリーアンの“子分”よろしく、同じヒマワリの髪飾り(ただし花は4つ)をつけて登場し、200mで日の出の勢いのダフネ・スキッパーズ(NED)に肉薄したのが、エレイン・トンプソンの世界デビューでした。
翌年のリオで、あれよあれよという間に100、200を制覇。100m3連覇を狙っていたシェリーアンの正統的後継者と、スキッパーズが手にしかけていたスプリント・スターの座を、いっぺんに手に入れてしまいました。リオで200のレースが終わった時には、トンプソンを祝福した後に鬼のような形相に一変しスパイクを地面に叩きつけて悔しがったスキッパーズでしたが、それ以降も、そのリベンジをトンプソンはことごとく返り討ちにしています。

今季はDLユージーン大会の200mで、21秒77(+1.5)の激走を見せたトリ・ボウイ(USA)の前に一敗地にまみれたとはいえ、DL100mでは4戦全勝。決して大差で勝っているというわけでもありませんが、隙の無さを感じさせる勝ちっぷりで、自身とシェリーアンが共有している10秒70のジャマイカ記録の更新も、十分に期待できそうです。
ロンドンでは、ボルトと同様に200を回避して100mと400mリレーに専念。100mのジャマイカ勢は、シェリーアンが産休に入ったのをはじめ完全に新旧交代の時を迎えており、マリー‐ジョゼ・タルー、ミリエル・アウレ(ともにCIV)、ブレッシング・オカグバレ(NGR)、ミシェリー・アイー(TTO)といった常連組もやや役者不足。女王奪還を目論むアメリカ勢の調子如何にもよるでしょうが、トンプソンが100mの大本命であることは間違いありません。
Elaine Thompson
(https://www.iaaf.org/news/report/thompson-miller-uibo-rabat-diamond-league)



◆強過ぎる!女子800mは「連単」なら1点買い?
キャスター・セメンヤ(RSA)の強さは、もうどうしようもありません。モナコでは1分55秒27のWL(南アフリカ記録)を余裕で叩き出して、30年以上破られていない世界記録すら、視野に入ってきています。
積み上げた連勝記録は現在18。これは女子のこの種目では、驚異的と言っていいでしょう。そのほとんどで2着を占めているのがフランシーヌ・ニヨンサバ(BDI)で、連勝単式ならば1点買いしか考えられないという趨勢です。モナコではセメンヤに0.20秒差と善戦したとはいえ、余裕度が違いました。さらに、3着マーガレット・ワンブイ(KEN)で「三連単」も鉄板、と言いたいところでしたが、こちらはモナコで最下位に沈んでちょっとミソつけちゃいましたね。
ドーピング禍で沈黙しているロシア勢あたりが復活してこないと、セメンヤの快進撃はそうそうストップできないのではないか、という気がしています。

◆「ネクスト・ボルト」はヴァンニーケルク?
ネクスト・ボルト、と言えばいっときヨハン・ブレイク(JAM)の代名詞になっていましたが、現状でこの名にいちばん近いところにいるのが、400mの世界記録保持者ウェイド・ヴァンニーケルク(RSA)でしょう。
リオで記録した43秒03というタイムの物凄さは、ゴールしてまるで表情を変えない静かな佇まいによって、いっそう凄味を増した感があります。その点、テレビ映りを常に意識しつつファンサービスに余念のないボルトとは好対照ですが、その記録が42秒台に突入、ということにでもなれば、いよいよ陸上界の主役は彼のものとなるでしょう。
今季はその足固めをするかのように、100mで9秒94(+0.9)、200mで19秒84(+1.2)と次々にPBを更新。(100で9秒台、200で19秒台、400で43秒台の記録を持っているのは史上ただ一人です)特殊種目の300mでも世界最高記録の30秒81を出しています。本業の400mでは、DLに2回登場していずれも軽~く43秒台で優勝。
今回は400だけでなく200mでも、ボルト4連覇の後を承けてマイケル・ジョンソン以来の二冠を狙ってくる計画のようです。

ただ、記録的に見ると200mではアイザック・マクワラ(BOT)が19秒77(0.0)と一歩リードしており、DLモナコの400mでも先行したヴァンニーケルクをマクワラが直線入り口でいったん追い越すという意外な接戦を展開しています。それを冷静に差し返したヴァンニーケルクの強さが印象的ではありましたが、警戒心は相当に抱いたことでしょう。
それでも、400mに関する限り、42秒台を見据えたヴァンニーケルクの勝利は不動ではないでしょうか。400の準決勝と決勝の間の日に予選が行われる200mのほうは、「勝てれば儲けもの」の心境でいけば、2冠は意外に簡単に転がり込んでくるような気もします。ただし、こちらにはマクワラのほか、100との掛け持ちになるブレイク、アンドレ・ドグラス(CAN)、クリスチャン・コールマン(USA)といった強敵も、手ぐすねを引いているはずです。

いずれ、ヴァンニーケルクが100mにもエントリー、なんてことになったら凄いですね。ちなみに、100m、200m、400mのスプリント3種目すべてで金メダルというのは、1956年のメルボルン五輪(100・200)と64年東京五輪(400)の2大会にまたがって女子のベティ・カスバート(AUS)が達成しているのみです。

◆ラシツケネとヴォダルチク…鉄板中の鉄板はこの二人
と、最後は雑になってしまいますが、強過ぎるぶん、但し書きが少なくなってしまうもので。
女子走高跳のマリア・ラシツケネ(ANA=旧姓・クチナ)と同ハンマー投のアニタ・ヴォダルチク(POL)です。
※ANAは「Authorized Neutral Athlete」…ナショナルチームに所属せず出場権を認められた選手。ドーピング問題で資格停止中のロシア陸連とは無関係に、IAAFの大会に出場を認められているロシア国籍のラシツケネ、セルゲイ・シュベンコフ(男子110mH)、ダリア・クリシナ(女子走幅跳)などの選手たちについての“国名表示”で、国旗は白無地で表現されます。

前回北京大会で先輩のアンナ・チチェロワを下して世界一の座を獲得しながら、ロシアのドーピング問題でオリンピック・イヤーを棒に振らされたラシツケネは、今季解き放たれたかのように5月27日(DLユージーン大会)以降毎週のように試合に出場、14戦全勝、2m06を筆頭に11試合で2m以上をクリアしています。ラシツケネ以外で、今季2mをクリアした選手はまだいません。
オリンピック・チャンピオンのルース・ベイティア(ESP)が38歳となった今季まったく振るわず、銀メダルのミレラ・デミレヴァ(BUL)も低空飛行、となるともはやライバル不在の独擅場となるでしょう。ローザンヌでチャレンジした2m10の世界新記録の高さに、ロンドンで再びバーを上げられるかが興味の焦点です。滅多に見せない美しい笑顔を、ぜひ見たいものです。
あとの興味は2位争い。全米で1m99を跳んだヴァシュティ・カニンガム(USA)、モナコで97まで伸ばしてきたユリア・レフチェンコ(UKR)の19歳コンビ、もしダブルエントリーしてくるならですが、七種競技の優勝候補筆頭ナフィサトゥ・ティアム(BEL)といった新興勢力に期待です。

女子ハンマー投も、非DL種目のためTV等では伝わってきませんが同じような状況で、ヴォダルチクが8戦全勝。79m73をSBとして、すべての試合で75m以上を投げ、ただ今38連勝継続中。
ランキング2位のグウェン・ベイリー(USA)とは3m弱の大差がついており、あとは中国のワン・チェンが73~76m台を安定して投げているくらい。チャン・ウェンシウは72m台と低迷中で、おなじみのベティ・ハイドラー(GER)は音沙汰なし。
どうやら、ヴォダルチク一人が毎年着々と記録を伸ばしているのに対して、対抗格の選手たちが脱落して、ますます格差社会になりつつあるのがこの種目のようです。興味は、ヴォダルチクの4年連続世界新記録なるかどうか、その1点のみでしょう。

今回ご紹介した「鉄板大本命」の選手たちに共通しているのは、その地力もさることながら、大試合できっちりと最高のパフォーマンスを出してくる調整能力の高さです。単にハイレベルな記録を狙うだけでなく、この点を日本人選手たちには真剣に研究してもらいたいものだと思います。

ファラー&チェルイヨトが“グレート・ノース・ラン”制す



9月11日(日)、イギリスのニューキャッスルで行われたIAAFゴールドレーベル・ロードレースの『Great North Run』(ハーフマラソン)で、男子はモハメド・ファラー、女子はヴィヴィアン・チェルイヨトというリオの金メダリストがそれぞれ優勝を飾りました。

IAAFでは世界各地で開催されるロードレースのうち、2016年度は46大会を「ゴールドレーベル」に指定しており、日本の大会では「東京マラソン」「びわ湖毎日マラソン」「名古屋ウィメンズマラソン」「福岡国際マラソン」の4大会がこの中に含まれています。(「シルバーレーベル」は17大会/日本4大会、「ブロンズレーベル」は27大会/日本1大会)
レーベルレースの多くは男女混走のフルマラソン大会ですが、ハーフマラソンや10kmのロードレースなどもあって、この『グレート・ノース・ラン』はハーフの大会。地元のスーパーヒーロー・ファラーは2014年から3連覇で、本格的にロード参戦を開始した2013年は2位。この時の優勝はケネニサ・ベケレ(ETH)でした。


それではIAAFの記事をそのまま、久々に拙い和訳文でお伝えしましょう。(私の英語力は高校生時代から進歩しておりませんので、誤訳がありましたらご容赦ください)


Mo Farah
https://www.iaaf.org/competitions/iaaf-label-road-races/news/farah-cheruiyot-win-2016-great-north-run

日曜日(11日)に行われたIAAFゴールドレーベル・ロードレースの第36回グレート・ノース・ランで、モー・ファラーとヴィヴィアン・チェルイヨトが順当に勝利を飾った。
ファラーは海岸沿いのフィニッシュまで1マイル少々のところでデイザン・リッツェンハインを引き離すとそのまま突っ走り、1時間00分04秒で、ニューキャッスルからサウス・シールズのコースでの3連覇を達成した。
女子の部では、リオの5000m金メダル・10000m銀メダルのチェルイヨトが、同じケニアのプリスカ・ジェプトゥーを最後の200mで突き放し、初出場のハーフマラソンを1時間7分54秒で制して33歳のバースデイに花を添えた。

ファラーの優勝は、リオデジャネイロで5000m・10000mの王座をともに守り、オリンピック2種目2連覇という歴史的大偉業を達成してから僅か22日後でのことだった。
「正直に言うよ。もうヘトヘトなんだ」と、ファラーはBBCスポーツのインタヴューで語った。
「目いっぱい走らないといけないってことは分かってたよ。デイザンは元は僕のトレーニング・パートナーで、強いランナーだから。僕がどれだけ速いかを知ってるから、頑張って前に出ようとしてたね」
これは、ファラーがオリンピックの5000mに優勝した8月20日以来、最初のレースだった。
「いい気分で今シーズンを終えることができて良かった。素晴らしい1年だったよ」

レースは始まっていくらもしないうちに、ファラー、アメリカのリッツェンハイン、そして4マイル過ぎに上がって来たケニアのエマニュエル・ベットによる三つ巴の様相となった。ベットとファラーが10km地点を並ぶようにして28分32秒で通過し、いっぽう序盤は先頭を引っ張ったリッツェンハインは、5マイルから6マイルにかけての下り坂を過ぎたあたりから懸命に食らいついている様子に見えた。しかし彼はまたすぐに、2人に追いつき先頭に出た。
11月のニューヨーク・シティ・マラソンに向けてトレーニング中のリッツェンハインは、そのまま先頭で快調なペースを続け、15㎞を少し過ぎたあたりでベットが脱落した。
ファラーが勝負に出たのは、残り2kmを切った急激な下り坂に差し掛かった時だった。ファラーのギアチェンジは鮮やかかつ決定的なもので、あっという間にかつてのトレーニング・パートナーに挽回不可能な8秒の差をつけてゴールへと突き進んだ。
リッツェンハインにとって、1時間00分12秒のタイムはセカンド・ベストだった。ベストは、2009年にマークした1時間00分00秒である。
大きく遅れはしたものの、ベットが1時間01分22秒で3位の座を確保し、ベルギーのバシル・アブディが1時間02分03秒で4位、ケニアのダンカン・マイヨが1時間02分06秒で5位に続いた。



Vivian Cheruiyot
https://www.iaaf.org/competitions/iaaf-label-road-races/news/farah-cheruiyot-win-2016-great-north-run

女子のレースは序盤のゆったりとした展開の後、先頭集団は5マイルを過ぎて一気に5人にまで絞られた。チェルイヨト、ジェプトゥー、ジョイス・チェプキルイ、ティルネッシュ・ディババ、オーストラリアのエロイーズ・ウェリングスである。5マイルから6マイルにかけての4分57秒というペースはウェリングスにはあまりにも重荷に過ぎて、あとの4人の集団からみるみる取り残されることになった。
レースが始まって54分が経過したところで、先頭にはチェルイヨトとジェプトゥーだけが肩を並べるようにして残り、その約10m後方を、2012年の優勝者ティルネッシュ・ディババが懸命に追っていた。エチオピアの女王は死力を振り絞ったものの力尽き、あと約800mという地点で完全に遅れた。

ジェプトゥーがここぞというところでピッチを上げたが、その仕掛けは少々早すぎて、ラスト200mでチェルイヨトの逆襲を許す結果となった。
ジェプトゥーは1秒遅れの1時間07分55秒でゴールに入った。自身4度目のオリンピックとなったリオの10000mで銅メダルを獲得してから初のレースだったディババは、1時間08分04秒で3着となった。

IAAFのセバスチャン・コー会長が、オリンピック800m連覇のデーヴィッド・ルディシャと一緒にレースのスターターを務めた。ルディシャは、前日にグレート・ノース市民レースとして行われた500mで優勝していた。コー氏はまた、メダルのプレゼンターも務めた。

(ボブ・ラムザック)


 
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