IAAFダイヤモンドリーグ第12戦・ローザンヌ大会が、昨日(日本時間今日未明)、オリンピックによる中断を経て約1カ月ぶりの大会として開催されました。
ここの競技場は変なトラックで、普通はホームストレッチの直線終点に設けられているフィニッシュラインが、第1コーナーが始まって数メートル先に、曲走路とは別れる形で設けられているのです。つまり、周回の中の直線部分が短い、その分曲走路が長く半径が大きいトラック、ということになります。
選手にとっては走りやすいんでしょうか、にくいんでしょうか??

さて、今回一番のお楽しみは、DLポイント対象外レースながら、全米予選4着以下オールスターズが勢ぞろいした女子100mH。もちろんお目当ては、オリンピックに出られなかった世界記録保持者ケンドラ・ハリソンです。
今季ここまでDLでは4戦負けなし、しかもすべてブッチギリの圧勝で、ユージーンで出した12秒24、ロンドンでの12秒20(世界新)は間違いなくオリンピック以外での今季陸上界ベスト・パフォーマンス。
1カ月ぶりにTV越しにお目にかかったハリソンはヘア・スタイルを変えてイメチェン。豊かなセミロングの髪を揺らしながら今回もスイスイと一人旅、2位のドーン・ハーパー-ネルソンに0.29秒の差をつける12秒42で5連勝を飾りました。
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 ケンドラ・ハリソン(USA)

長い髪をなびかせて、とくれば、今やアリソン・フェリックスに代わってアメリカ女子のスターの座に近づきつつあるのが、400mHの新女王ダリラ・ムハマドです。
2013年モスクワWCの銀メダリストではあるものの、昨年SBは55秒76、400mフラットのPBが52秒64に過ぎなかった26歳が、今年の全米で突如“覚醒”したかのように52秒88のWLで走り、そのままの勢いでリオ五輪を制してしまったことはご承知のとおり。この日もオリンピックのメダリストが全員集合する中で圧倒的な強さを発揮、今や完全にこの種目の支配者となり、ビジュアル的にもスターの素質は十分です。
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 ダリラ・ムハマド(USA)

その400mHムハマドに、来年は100mHのハリソンが挑戦するかもしれない、というのが解説・石塚浩さんの耳より情報。
もともとハリソンは、二足のワラジと言いますか、それともひと頃100mHに伸び悩みを感じていたか、400mHも手掛けて、あいや足掛けておりまして、昨年6月には54秒09というなかなかのタイムを出して年間5位にランクされています。つまり、昨年に限って言えばムハマドよりずっと上にいたのです。
今季、100mHで「ハードリングの極意」みたいな感覚を会得したかに見えるハリソンが、ロンドン世界選手権では400mHでも金メダルと世界新を狙う…実現すれば史上例を見ない快挙です。そうはさせじ、とダリラが立ちはだかる…もう堪りませんね、来シーズンの目玉になりますよ、これ。
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今回は7人の金メダリストが登場するということで前景気が盛り上がり、中でも最大の注目は女子短距離2冠のエレイン・トンプソン。女子100mに出場です。
ところがこのレース、思わぬアクシデントが!
スタートの号砲から一瞬間をおいて、「やり直し」を告げるリコール音が鳴ったのですが、ほとんどの選手は気付かないまま100mを全力疾走。すぐに気付いてやめたのが3レーンのアメリカ白人スプリンター、ジェンナ・プランディーニ、しばらく走ってから「あれ?」という感じで流しにかかったのがトンプソン。あとの6人は、ほぼ全力で走ってマリー・ジョゼ・タルーが「1着」。
プランディーニに僅かな動きがあった(スローヴィデオでも判りませんでした)ということで、イエローカード。5分ほどの「休憩時間」を置いてのリスタートとなりました。
「再レース」ではトンプソンが、オリンピック7レースの激務を感じさせない10秒78(+0.8)で圧勝。思わぬ100m×2回のレペティションを課せられた6人は後半まったくスピードが上がらず、序盤明らかに遅れていたプランディーニがあれよあれよという間に2着に上がりました。(11秒11)
特に1本目で頑張っちゃったタルーは11秒25と散々な結果で、何とも気の毒なレース進行になりました。
(だいたい、OMEGAの信号音は音が小さいですよね。やっぱりSEIKOでないと…)

女子3000m(DLでは5000mのポイント対象)には、「復活」ゲンゼベ・ディババが登場。アヤナもチェルイヨトもいない中ではありましたが、リオ5000m2位のヘレン・オビリを寄せ付けず、大会新記録8分31秒84で快勝。まだ世界記録を狙うところまでは回復していませんが、これで最終戦、もしくは来シーズンにかけて、再びアヤナと世界記録争いを繰り広げる楽しみがつながりました。ゲンゼベとしてはぜひとも5000の世界記録はディババ家に保管したいところですが、現状では次回にでもアヤナが破ってしまいそうな勢いです。
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 ゲンゼベ・ディババ(ETH)

女子の話題ばかりになってしまいましたけど、正直言って男子は今一つ、冴えませんでした。
G+的には110mHをプッシュしていたようですが、私はどうも、現状のこの種目は好きになれません。オリンピックを終えていちおうマクレオド、オルテガの「2強」の図式が定着しつつあり、今回もそのとおりの結果(オルテガ13秒11、マクレオド13秒12)となりました。でも何かこう、パッとしないんですよね…。
「兄弟金メダリスト対決」が注目された円盤投は、弟のクリストフ・ハルティングが回避して、シャツ破りの兄貴も4位と精彩なく、優勝はフィリップ・ミラノフ(BEL)の65m61。安定王者のマラホフスキーも大逆転負けのオリンピックで気落ちしたか、6位と惨敗でした。結果を承けてか、ほとんど放送でも扱われませんでした。

全般に、オリンピック直後だけに記録の停滞は予想されたところですが、おおむね皆さん「出るからには下手なところは見せられない」という気概が伝わってきた今大会。今季のDLも残り3戦となって、年間チャンピオン争いも白熱してきました。
次回は中1日で明日26時45分(28日2時45分)から、パリ大会の生中継があります!