豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

ノア・ライルズ

アリソン2種目制覇、ライルズ幻の18秒90~DL第2戦チューリッヒ大会



WANDAダイヤモンドリーグ第2戦のチューリッヒ大会が、世界7会場を結ぶリモート大会として、ワールド・北米・ヨーロッパの3地域対抗戦形式で開催されました。
以下、ワールドアスレティックス(旧IAAF)のHPから、拙い和訳で結果をご紹介します。誤訳の節は重々お詫び申し上げます。(特にモリーンのくだりが自信ありません)

9日・木曜日、チューリッヒ・ダイヤモンドリーグ主催者が2大陸にまたがる7会場に集結させた30人のアスリートで競うという、痛快にしてコロナウィルス禍への画期的な解答案ともなる大会、『インスピレーション・ゲームズ』が行われ、アリソン・フェリックスが2つの印象的な勝利を挙げて脚光を浴びた。

◇アリソン・フェリックス、輝く
カリフォルニア州ロサンゼルスの近郊・ウォルナットの競技場で参加したフェリックスは、150mレースを快勝して今大会の口火を切り、3×100mリレーのアンカーとして大会を締め括った。
伝説的なキャリアを誇る彼女でも初めての経験に発した第一声は、というと?
「何だかとてもおかしな気分ね」
満面の笑みで、そう言った。
「チームメイトもなしで練習するみたいな、そうでないような」
単独走を走り終えての感想は、
「自分自身にチャレンジするというのは、大変なことね。でも私は陸上が大好きだから、機会を与えられたら飛び付くわ。私には陸上が全てなのよ」

トラック競技の幕開けは、女子150m。地元スイスのスター選手ムジンガ・カンブンジはチューリッヒで、400mのオリンピックチャンピオン、ショーナ・ミラー=ウィボは距離にして8000㎞、時差にして6時間離れたフロリダ州ブレイデントンで、そしてフェリックスはさらに4000㎞も離れた場所での参戦である。
トラックの位置とカメラアングルをほぼズレがないように合わせて映像を同調させてはいても、誰がリードしているかを見て取るのは、3人がフィニッシュラインに近付くまでは難しい。フェリックスが真っ先にゴールに飛び込んだ。タイムは16秒81。ミラーの17秒15、カンブンジの17秒28を余裕で上回った。
奇遇なことに、アメリカの遠く離れた両サイドでレースをしていながら、フェリックスは向い風2.6m、ミラーは向い風2.5mと、ほとんど同じ条件だった。

フェリックスは、キャンディス・ヒル、ティアナ・バートレッタと組んで大会最終種目の3×100mリレーに2つ目の圧倒的勝利を挙げるために、トラックに戻って来た。3人のタイムは32秒25で、チューリッヒのスイス・チーム32秒50、パーペンダールのオランダ軍団32秒94を上回った。
「楽しかったわ」と、フェリックスは言う。
「お客さんのいる中で競技できる日が、待ちきれないわ」

対照的に、男子100ヤードは今大会で唯一、同一会場での直接対戦となり、フランスのジミー・ヴィコー、カナダのアンドレ・ド・グラス、110mHのオリンピック王者オマー・マクレオドがブレイデントンのトラックに集結した。向い風3.4m。前半は3者ほぼ互角に見えたが、中央レーンのド・グラスとインレーンのヴィコーが抜け出した。ド・グラスが0.04秒の僅差でヴィコーに先着し、9秒68。マクレオドは9秒87で離れた3着に終わった。

◇モリーン、復活の勝利
女子300mHでは、ジョーゲイン・モリーンが今までにない遅い時間のコールを受けたことで、それがむしろ、39秒08のタイムで感動的な勝ち星を挙げるのに幸いしたのかもしれない。
「自分に言い聞かせたの。私にはもう後がないし、こんな機会はもうないんだって。当然よね」
と、モリーンは言う。脚の故障で1年半もの間、競技から遠ざかっていたのだ。号砲が鳴るや、彼女がその言葉を自身に言い聞かせ続けているのは明らかだった。
最初のハードルで波に乗り、次からの3台をゆったりと乗り越えると、そこからゴールまでは一気呵成だった。
「練習と同じようにレースに行く、それを心掛けただけ。でも、すごく不安だった」
そう彼女は認めた。2012年ロンドン・オリンピック5位入賞のモリーンは、現世界チャンピオンにして世界記録保持者のダリラ・ムハンマドに代わって、今週初めに出場が決まったばかりだった。
チューリッヒのスタジアムを走ったレア・シュプルンゲルが39秒25で第2位、雨天・低温に見舞われたオランダのパーペンダールで走ったチェコのズザナ・ヘイノヴァは40秒97に終わった。


◇ライルス、スタートラインの間違いに泣く

一方で、ノア・ライルズは200mレースで圧倒的と見える走りを見せ、タイマーが幻の世界記録18秒90で止まったのもむべなるかな、と思わせたのだが、それはやがて大きな落胆に変わった。
後になって判明したところでは、ライルズは誤ったレーンでスタートに就き、走った距離は185メートル・ジャストだったのだ。この不幸なトラブルで彼は1位から3位に降格となり、勝利の栄光と賞金の1万USドルは、チューリッヒで20秒65を記録したクリストフ・ルメートルに渡ることになった。パーペンダールで20秒81だったチュランディ・マルティナが2位となった。

◇ピチャルド、三段跳対決を制す
三段跳では、リスボンのピットに立ったペドロ・パブロ・ピチャルドが2回目に跳んだ17m40(+2.3)で制した。世界選手権とオリンピックのチャンピオン、クリスチャン・テイラーはブレイデントンで序盤伸び悩み、6回目にようやく17m27(+4.2)を跳び逆転の2位、3位になったのはウォルナットで2回目17m04を跳んだオマー・クラドックだった。

男子棒高跳は、サム・ケンドリクスが5m81を1回でクリアして快勝した。2度の世界王座に君臨したケンドリクスの戦地はブレイデントン。この日は好調で、5m36、46、56、66といずれも一発クリア。次の5m76では、風の状態が変わったのが災いして、3回目での成功だった。
スウェーデンのカールスタッドに登場したピョートル・リゼクが5m66で2位。ヴァレンティン・ラヴィレニはNM。

女子棒高跳は、やはりブレイデントンで試技を行ったサンディ・モリスが、4m66で制した。スウェーデンのアンジェリカ・ベングトソンがカールスタッドで4m46を跳び2位。ウォルナットに登場したカテリナ・ステファニディは、男子のV.ラヴィレニと同様記録なしに終わった。

(ボブ・ラムザック:記)

2018シーズンのここまで~国際編


更新をサボってる間にすっかり夏になりました。(今日は台風の影響で肌寒い一日ですけど)
そうこうするうちに日本選手権も、同時期に全米ほか世界各国で開催されていた国内選手権も終わり、いつもなら詳細なレポートを書いているのにと忸怩たる思いです。第1戦・網走大会が行われた『ホクレン・ディスタンスチャレンジ2018』の模様なども書きたいところですが…。
『IAAFダイヤモンドリーグ』も、折り返しを過ぎて第8戦のローザンヌ大会までが終ったところです。今回は、そのDLの話題を中心に、今年の陸上界・国際情勢について簡単にまとめてお茶を濁したいと思います。

◇驚異のニューカマー:男子400mH・A.サンバ
まず、今季最も陸上界を席巻している存在として、男子400mHのアブデルラーマン・サンバ(QAT)を挙げておきましょう。
DL第1戦のドーハ大会を47秒57のPBで勝った時には「地元の利か」程度に受け止めていたのですが、その後の快進撃についてはご承知のとおりです。6月30日のパリ大会では、とうとう世界で2人目となる46秒台の世界へと突入してしまいました。
今年はDLの前半戦にこの種目が連続して組み込まれており、昨日のローザンヌ大会までに6戦を消化してあとはファイナルを残すのみとなっています。全戦に出場したサンバは、全勝で48ポイントを獲得。
※今季のDLは昨年と同様、各種目4~6戦の合計ポイント上位8名または12名がチューリッヒまたはブリュッセルで行われる「ファイナル」に進出し、そこでの優勝者が年間ツアー・チャンピオンとなります。

サンバの強烈な台頭の影響をモロに被ったのが、昨年躍進して世界王者にまで上り詰めたK.ワルホルム(NOR)。全6戦中、5回まで直接対決してそのたびに直線でサンバに水を空けられるという屈辱の連続で、自身もPBを47秒41にまで上げながら、今のところまったく歯が立ちません。
この他ではY.コペリョ(TUR)が3位の常連ながら記録は48秒台と、サンバ・ワルホルムにはちょっと差を付けられています。パリ大会でワルホルムに先着したK.マクマスター(IVB)は次のローザンヌで故障発生でした。K.クレメント、B.ジャクソン(ともにUSA)といった過去のスターたちは、外側のレーンに追いやられる存在となってしまっています。

さて、サンバ一色に塗り潰されているかのように見える男子ヨンパーですが、実は今季の世界ランク2位にいるのがライ・ベンジャミン(ANT)という選手。6月8日にマークしたタイムは何と47秒02!サンバとは0.04秒の差しかありません。
南カリフォルニア大学の学生ベンジャミンは、パリ大会で初めてDLに参戦しましたがこの時の種目は200m、しかもポイント対象外レース。ここで19秒99といきなりPBを大幅に破り、続くローザンヌでも4位に食い込んで初ポイントをゲット、只者ではない存在感を示しました。
いまだ400mHでのDL出場はなく、したがってファイナルの出場権もありませんので、サンバとの直接対決は来年まで見られそうにありません。今年は世界大会がないのが、何とも残念!せいぜい、来月のアジア大会でサンバの雄姿を堪能しようと思います。
来年の世界選手権では、この22歳と20歳(現在)の超新星どうしの、“世紀の対決”が見られることを楽しみにしましょう。もちろん、サンバと同じ22歳のワルホルムの巻き返しにも期待です。

◇“ネクスト・ボルト”は誰だ??
昨年引退したウサイン・ボルト(JAM)に代わる男子スプリント界のニュー・ヒーローとして、その候補者が続々と名乗りを挙げています。
その筆頭は、2年前のU-20世界選手権100m優勝のノア・ライルズ(USA)。200mで2度にわたり19秒69、100mでも全米選手権で9秒88と、いずれもWLタイ記録です。
対抗するのが、100mではDL2戦2勝のロニー・ベイカー(USA)。パリ大会ではライルズに並ぶWLの9秒88で走り、対象外レースのユージーン大会では追風参考(+2.4)で9秒78。
200mでは先に紹介したベンジャミンの同僚、マイケル・ノーマン(USA)、こちらは2016年U-20の200m優勝者ですが、パリ大会(対象外)に19秒84(-0.6)のPBで鮮烈なDLデビューを果たしました。
ただ、ベイカーは全米で、ノーマンはDLローザンヌでライルズの後塵を拝しており、今のところ“ネクスト・ボルト争い”はライルズが一歩リードの感ありです。

スプリント界で特筆すべきは、日本短距離界最大のライバル、中国勢の大躍進です。
スー・ビンチャンが2度にわたって9秒91のアジア・タイ記録を叩き出しただけでなく、シェ・チェンイェも9秒97、200mではGG大阪で20秒16を出して日本勢を圧倒しました。
スーはもはや、「9秒台」に浮かれる日本スプリント界を差し置いて一段上のステージに上がってしまった感じですし、シェの200mでの強さはリレーを考えた場合の脅威です。アジア大会の両種目では大きな壁となって立ちはだかるだけでなく、もう2枚、駒が揃ってくると400mリレーも安泰とは言えなくなってくるかもしれません。


◇女子短距離は戦国時代か?

男子の短距離は新旧交代真っ最中の混沌状態ですが、一方の女子はというと、去年までの“女王”に精彩がなく、下剋上の戦乱模様といった様相です。
本来「2強」的存在だったエレイン・トンプソン(JAM)、ダフネ・スキッパーズ(NDL)ともに元気なく、代わってシーズン序盤の主導権を握ったのがマリー・ジョゼ・タルーとミュリエル・アウレのコートジボアール・コンビでした。特に昨年まで4、5番手の位置にいたタルーは100、200ともに安定したパフォーマンスで勝利を重ね、今季の“女王”と呼べる存在に近づきつつあります。
ただ、ここへ来てディナ・アッシャー-スミス(GBR)が調子を上げてストックホルムではDL初勝利を挙げ、タイムも10秒92でランキング5位と、トップを伺う勢い。またDL未参戦ながら全米を制したアライア・ホッブス(USA)が10秒90を筆頭に10秒台を7回もマーク、これも不調のトリ・ボウイに代わるアメリカのエースとして台頭してきています。

全般的に、今季の女子短距離は主役不在の戦国時代に入っているようです。

ロング・スプリントの方では、これまた主役を演じるはずのショーナ・ミラー-ウィボ(BAH)が200、400ともに1回ずつしかDL出場がなく(いずれも優勝)、400mではそのミラーがゴール前に急失速して波乱となったロンドン世界選手権で2位に飛び込んできたサルワ・エイド・ナセル(BRN)がDLで連戦連勝。ロンドンで金メダルに輝いたフィリス・フランシス(USA)をまったく寄せ付けない強さを発揮しています。
男子400mHのサンバとともに、アジア勢としては今季最も注目されている新星ということになります。

◇男子LJにも超新星現る!
昨年の世界選手権で男子走幅跳チャンピオンに躍り出たルヴォ・マニョンガ(RSA)。今季も8m56、8m58とハイレベルな記録でDLを連勝し、いよいよマニョンガ時代の到来かと思わせていた矢先、ローマ大会でそのマニョンガに5㎝差に迫ったファン・ミゲル・エチェヴァリア(CUB)が、ストックホルム大会で+2.1mの追風参考ながら8m83の大記録でマニョンガを破って優勝、一気に主役の座を奪ってしまいました。
さらにエチェバリアは、ストックホルムの3日後にはチェコで8m60(+1.0)、30日にはドイツで8m68(+1.7)と相次いでPBを更新。1か月後にようやく20歳となる若者が、かつて1990年代に世界記録を脅かし続けたイヴァン・ペドロソ(CUB)の再来と言われるまでの存在になりました。
遂に、積年の夢であった「9m」への扉が開かれる時が近いのか…久しく低レベルな優勝争いが続いてきた男子走幅跳ですが、今やまったく目が離せない大注目種目です。

(つづく)



ーー2018IAAFダイヤモンドリーグ日程ーー

 5/4 ドーハ大会「ドーハ・ダイヤモンドリーグ」 (QAT)
 5/12 上海大会 (CHN)
 5/25-26 ユージーン大会「プレフォンテイン・クラシック」 (USA)
 5/31 ローマ大会「ゴールデン・ガラ ピエトロ・メンネア記念」(ITA)
 6/7 オスロ大会「ビスレット・ゲームズ」 (NOR)
 6/10 ストックホルム大会「バウハウス・ガラン」 (SWE)
 6/30 パリ大会「ミーティング・ド・パリ」 (FRA)
 7/5 ローザンヌ大会「アスレティシマ」 (SUI)
 7/13 ラバト大会「モハメド4世記念陸上」 (MAR)
 7/19 モナコ大会「ヘラクレス」 (MON)
 7/21-22 ロンドン大会「ミュラー・アニバーサリー」 (GBR)
 8/18 バーミンガム大会「ミュラー・グランプリ」 (GBR)
 8/29 チューリッヒ大会「ヴェルトクラッセ・チューリッヒ」 (SUI)
 8/30 ブリュッセル大会「AGヴァン-ダム記念」 (BEL)

ギャラリー
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#9~1991/第10回大阪国際女子マラソン
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#9~1991/第10回大阪国際女子マラソン
楽天市場
タグ絞り込み検索
  • ライブドアブログ