IAAFダイヤモンドリーグ第3戦のユージーン大会『プレフォンテイン・クラシック』が27日(日本時間28日早朝)に行われました。
大会名となっているプレフォンテインとは、1970年代に地元オレゴン大学のヒーローとして一世を風靡したスティーヴ・プレフォンテインから採られています。彼は1972年のミュンヘン・オリンピック5000mで4位と健闘したもののメダリストではなく、10000との2種目で優勝したラッセ・ヴィレン(FIN)やマラソン金メダルのフランク・ショーター(USA)に比べれば世界的にはさほど名のある選手ではありませんでしたが、常にフロントランナーとしてぐいぐいレースを引っ張るスタイルで、国内では大変な人気を博しました。ミュンヘンの3年後に交通事故のため24歳で夭折し、その名はこの大会の冠となって、世界最高峰のワールドツアーの一つに残されているのです。
この大会の名物種目となっている「バウアーマン・マイル・レース」(ロナルド・ケモイが優勝)に名を残しているビル・バウアーマンは、プレフォンテインを育てた陸上競技のヘッドコーチであり、ナイキの創業者の一人として知られる人物です。
さらに、バウアーマンの恩師であるビル・ヘイワードは、この大会の会場であるオレゴン大学グラウンドに「ヘイワード・フィールド」という名を残しています。
いわば、3代にわたる師弟関係の物語が、この大会を由緒あるものに仕立て上げているわけですね。
2021年には、この場所で世界選手権が開催される予定です。現在最大で20000人程度を収容できるに過ぎない、日本の大学のグラウンドと同じような空の開けたスタジアムが、どのように変貌していくのかが興味深いところです。
また、この大会で特徴的なものが、選手が装着しているビブスです。
通常ビブス(ナンバーカード)は、固めの化繊布や防水コーティングした紙製のもので、安全ピンもしくはボタンクリップでランニングウェアに装着します。ところがこの大会に限っては、少し小さめのカード(番号はなくPREの3文字とナイキのシンボルロゴ、個人名のみ)が、まるであらかじめ選手のユニフォームにプリントされているかのように、ピタッと貼り付いているのです。
トラックの出場者でも、走高跳の選手のように前面だけの装着。したがって、この大会では選手のIDナンバーはありません。(腰ナンバーのみ)
考えてみれば、ナイキのお膝元ですから、そうした「大会ロゴと個人名をあらかじめプリントしたウエア」を契約選手全員に配布するくらいのことは簡単にできるでしょうが、少数派とはいえ他社契約選手やナショナル・ユニフォームでの参加選手には、そういうわけにもいきません。
テレビの画面越しによくよく見れば、どうやらウエアと同調する程度に柔軟な素材の布製で、ぴったりと貼り付けられているらしいことが伺えます。というか、そう解釈するほかありません。
それにしても、今どきの材質のウエアにあれほど密着して貼り付くとはどんな接着剤を使っているのか、またどの選手も綺麗に身体の真ん中に曲がることなく装着しているのはいかなるわけか、とても不思議です。
まあ。そうした大会にまつわる付加的なあれこれに思いを巡らせながらTV中継を視ているうちに、ふと気付くと随分な割合で大番狂わせが起こっていました。
オープニング・レースの女子400mHでは、昨年全米予選からリオ・オリンピックまで見事なシンデレラ・ストーリーを築いたダリラ・ムハマドが中盤からガタッとペースダウンし、5着に敗退。優勝は五輪3位のアシュリー・スペンサー(USA)。2着には前半飛ばしたシャミーア・リトルが粘りました。リトルはトレードマークのオヤジ眼鏡とおバカ・リボンをマイナーチェンジして、少し雰囲気が落ち着きましたね。ムハマドもロングヘアを束ねて、大人の雰囲気にイメチェンです。
ケニ・ハリソン、ブライアナ・ローリンズの2大女王が不在の女子100mHは、昨年鳴かず飛ばずだったジャスミン・ストワーズ(USA)が12秒59(+0.8)で快勝。キャスリン、アリの両メダリストは6着・7着に沈みました。
主役を200mの方に持って行かれながらもキャンベル‐ブラウン、アウレ、アイー、フェイシー、バートレッタといいメンバーの揃った女子100m(ポイント対象外)は、モロレイク・オカイノサン(USA)が大穴の優勝。記録は+2.1で10秒94。
そして男子100mでは、アメリカの23歳ロニー・ベイカーが9秒86(+2.4)で優勝。川崎で日本勢の後塵を拝したスー・ビンチャン(CHN)が9秒92で続き、公認の風速ならばPBを更新していたでしょう。
アンドレ・デグラス(CAN)は4着、第1戦ドーハで惨敗していたジャスティン・ガトリンはまたもや5着といいところなし。例年、DLでは絶対的な強さを見せつけながら本番の世界選手権やオリンピックでボルトの壁に敗れ続けてきたガトリンが、今季はスロー調整で8月のロンドンに合わせている過程なのか、それとも年齢的な衰えか、一過性の不調か、まだ判断はつきません。
さらに、この日のメインイベントと言ってもよい豪華メンバーによる女子200m。昨年のユージーンでもトンプソン、スキッパーズの2強をまとめてぶっ倒したトリ・ボウイが、今度は21秒77(+1.5)のPBで文句なしの快勝。400mチャンピオンの“ダイビング・フィニッシュ”ショーナ・ミラー‐ウイボが大外から2着に突っ込んで、「2強」は3着・4着と形無しでした。
女子200mの1・2着はAdidas勢。
フィールドでも、女子走高跳はオリンピック・チャンピオンのルース・ベイティア(ESP)が4位に敗れ、2m03というハイレベルなレコードで勝ったのはマリア・ラジツケネ(旧姓クチナ。現在IAAFに承認されていないロシアのため国名はANAと表記。何の略号なのかは分かりません)。北京世界選手権の優勝者ですから番狂わせでもないんですが、今年のロンドンには出場可能なんでしょうか?
とどめは最終種目のバウアーマン・マイル(DL1500mカテゴリ)でアスベル・キプロプ(KEN)がなんと完走選手中最下位に撃沈。リオでの惨敗から、立ち直りの兆候は見えません。
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中継はありませんでしたがユージーン大会は前日26日も一部種目が行われており、女子3000mSC(対象外)では世界記録保持者のルース・ジェベト(BRN)が3着と沈み、セリフィン・チェプティーク・チェスポル(KEN)が歴代2位の8分58秒78で優勝。ジェベトは昨年19歳でオリンピックと世界記録の頂点に立ちましたが、こちらはなんとまだ18歳。ジェベトも9分03秒で走っていますから決して不調だったわけでもなく、この種目が新たな局面に突入しっつあることを伺わせます。
また同じく26日に行われた女子5000mでは、ゲンゼベ・ディババが14分25秒22で圧勝。どうやら、今季は彼女の元気な走り、世界記録へのチャレンジが見られそうな予感です。
アプセット続きのトラックで無敵王者ぶりを発揮したのは、男子5000mのモー・ファラーと女子800mのキャスター・セメンヤ。ともに寸分の隙なし。
男子三段跳ではクリスチャン・テイラーが自己記録に迫る18m11(+0.8)のビッグジャンプで圧倒したかに見えながら、同門のウィル・クレイも18m05(+2.4)で追いすがり、リオに続く冷や汗ものの勝利となりました。
次回DLは6月9日のローマ大会。
桐生祥秀の次戦を「日本学生個人選手権か?」なんて書いてましたが、このDL第4戦にエントリーしているようです。楽しみですね。