豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

ジャスティン・ガトリン

リオ五輪直前展望・Day2(8/13)



オリンピックも今日で競技4日目。陸上競技の開始まであと4日と迫ってまいりました。
ここまで見てきた中で、もちろん競泳の男子400m個人メドレー、ハムスケとダイヤのダブル表彰台には大喝采でしたが、私が個人的に超熱狂したのは自転車の男女個人ロードレース。美しい海岸風景の平坦コースと選手を苦悶させる登り坂、そしてモータースポーツさながらのクラッシュ・シーンが頻発する魔の下り坂、ゴール前数㎞の平坦コースを必死に逃げるクライマーと追走集団の鬼ごっこ…テレビでは放送できない長丁場(男子6時間超、女子4時間)のレースは見どころ満載で、NHKのネット放送に齧りついていましたですよ!
やっぱり、陸上おたくはレースものが大好き。自転車競技には、陸上関係者が学ぶべき要素もたくさんあります。見逃した方は、ぜひNHKの特設ページを見てみてください。(男子は実況なしですが、女子はなんと、あの刈屋富士雄アナのプレミアム実況つき!)

◆Day2のプログラム

―Morning Session—
 (  9:30)男子100m予備予選/女子TJ予選/女子3000mSC予選/
 (10:50)男子円盤投決勝/女子400m予選/七種競技・LJ/男子100m予選

―Evening Session—
 (  8:00)七種競技・JT/男子PV予選/男子400m準決勝/男子走幅跳決勝/
 (  9:00)女子100m準決勝/七種競技・JT/男子800m準決勝
 (  9:55)男子10000m決勝
 (10:35)女子100m決勝/七種競技・800m


◇男子100m

  15WC 9”79U.ボルト(JAM) ②9”80J.ガトリン(USA) ③9”92A.デグラス(CAN)・T.ブロメル(USA
  15DL  20p./4 ガトリン ②7p./4 J.ヴィコー(FRA) ③5p./4 M.ロジャーズ(USA
  16DL  20p./2 ガトリン ②13p./3 ロジャーズ ③10p./1 デグラス・J.A.ハーヴェイ(TUR)・ヴィコー
  16WL  9”80 ガトリン ②9”84 ブロメル ③9”86 ヴィコー ⑲10”01 桐生祥秀(東洋大)

  ※WC=世界選手権 
    DL=ダイヤモンドリーグ「総計ポイント/試合数」(15年と16年とではポイント設定が異なる)

    WL=シーズン・ランキング(五輪欠場が判明している選手、1か国4人目以降の選手は除外) 


故障がちなコンディションとレース数の少なさからボルトに黄信号が囁かれる一方で、ガトリンが順調にステップを刻んできている、というシーズン前半の状況は、去年と同じ。去年に比べればガトリンのタイム的な勢いが物足りないところもあり、むしろDLロンドン大会(200m)で「不安なし」をアピールしたボルトの上昇度は、去年を上回るかもしれません。
ただし、去年との大きな違いはここにボルト最大の難敵にして同僚のヨハン・ブレイクが加わること。
まだジャマイカ選手権の走りぶりくらいしか参考にするものがないとはいえ、もともと潜在能力はボルト級と言われるだけに、「まとめてやっつける」光景もあり得なくはありません。
いずれにしても、「21世紀のザ・グレーテスト」にとって、2年続けての「キンシャサの奇跡」が必要な状況は、間違いないでしょう。


優勝争いから離れたところでは、直前のDLでも故障再発したかに見えるキム・コリンズ(SKN)が無事に出てくるかどうか、歴史に残る41歳のパフォーマンスを見せられるかどうか、日本選手を含めて36年ぶりに黒人以外の決勝進出者が出るかどうか、といった話題があります。
日本勢は、あまり気持ちで「9秒台」にこだわらず(風次第ですしね)、肩の力を抜いてファースト・ラウンドに臨んでもらいたいものだと思います。

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◇女子3000mSC

 15WC ①9'19"11H.K.ジェプケモイ(KEN) ②9'19"24H.グリビ(TUN) ③9'19"25G.F.クラウゼ(GER)
 15WL ①15p/5V.ニャンブラ(KEN) ②13p/5ジェプケモイ ③12p/2グリビ
 16DL ①26p/3R.ジェベト(BRN)、ジェプケモイ ③15p/4S.アセファ(ETH)
 16WL ①8'59"97 ジェベト ②9'00"01 ジェプケモイ ③9'10"76 E.コバーン(USA)
50.9'44"22 高見澤安珠

DLユージーン大会でジェベトとジェプケモイ(放送では「キエン」と呼称)が繰り広げた9分の壁を挟んでの攻防を見る限り、この両者の圧倒的優位を感じさせる今シーズン。上海ではジェプケモイが勝ち、あとはオスロとストックホルムで1勝ずつ。ユージーンのレースも途中独走になりかけたジェベトがゴール前ヨレヨレになったところをジェプケモイが激しく追い上げたもので、力関係はほぼ互角でしょうか。
9分を破るというのは途轍もないことなのですが、2人ともレース運びやハードリングに大きな不安を残すことも確かです。そこを研究し尽くしているとすれば、レース巧者のグリビやコバーンにも勝機が生まれます。
世界大会初挑戦の高見澤としては、序盤のスローペースに惑わされず、自分のペースに徹して粘り切ることに尽きるでしょう。

◇男子円盤投

 15WC ①67m40P.マラホフスキー(POL) ②66m90P.ミラノフ(BEL) ③65m18R.ウルバネク(POL)
 15DL ①21p/6マラホフスキー ②19p/6ウルバネク ③6p/2ミラノフ
 16DL ①41p/5マラホフスキー ②23p/4ウルバネク ③14p/4D.ストール(SWE)
 16WL ①68m15マラホフスキー ②68m06C.ハルティング(GER) ③68m04R.ハルティング(GER)


昨年来、ピョートル・マラホフスキーの天下となっている種目ですが、ファンが気にかけていたのは鳴りを潜め続けていたロベルト・ハルティング(GER)の状況です。このロンドン王者がとうとう6月になって復活を果たし、ローマで3位、バーミンガムで2位と調子を上げると、その後きっちりとSBを投げて完全復調をアピールしています。
兄弟で表彰台を、といきたいところながら、クリストフの方はまだまだ一発屋の域を抜け出せず、ウルバネクやミラノフの安定感が光っています。

◇男子走幅跳

 15WC ①8m41G.ラザフォード(GBR) ②8m24F.ラピエール(AUS) ③8m18ワン・チャナン(CHN)
 15DL ①21p/5ラザフォード ②10p/3M.デンディ(USA) ③8p/3M.ハートフィールド(USA)
 16DL ①24p/3ガオ・ジンロン(CHN) ②24p/5ラピエール ③22p/4R.サマーイ(RSA)
 16WL ①8m58J.ローソン(USA) ②8m44M.トルネウス(SWE) ③8m42デンディ


大混戦。ロンドン王者のグレッグ・ラザフォードが要所で勝負強いところを見せてはいるものの、記録的に突き抜けているわけではありません。8m30-50を跳べば誰にでも優勝のチャンスがあるということで、その候補者を挙げれば片手では足りなくなります。
去年から今年にかけて勢力図を大いに伸ばしているのが中国勢で、世界選手権では3人が3位から5位を占め、今年もガオ・ジンロンが3戦2勝でDLトップ、シ・ユウハオが8m30でランキング9位と人材が豊富です。
と思っていたら、7月になって突如記録ラッシュに沸いたのが全米予選。ジェフ・ヘンダーソンの8m59wを筆頭に、6位まで8m30オーバーという盛況ぶりで、せっかく3位になったウィル・クレイが公認で参加標準記録を跳んでいないために代表になれない、という珍事まで起きました。
予選から通して、波乱連続の試合になるのではないでしょうか。となると、修羅場経験の豊富なラザフォード、ラピエールに分があるような気がします。

◇男子10000m(DL非実施)

  15WC 27’01”13 M.ファラー ②27’01”76 G.カムウォロル(KEN) ③27’02”83 P.タヌイ(KEN
  16WL  26’51”11 Y.デメラシュ(ETH) ②26’53”71 ファラー ③26’57”33T.トーラ(ETH

   27’29”69 村山紘太(旭化成)※村山の記録は昨年のものを適用 

ロンドン2冠王のファラーに付け入る隙が見出せず、連覇が濃厚と思われます。当然のことながら、ケニア・エチオピア勢の強烈な包囲網をかいくぐり、ラスト53秒の爆発力を温存するレースパターンには神経を砕くでしょうが、問題はないでしょう。
そのエチオピア代表が誰になったのか、ケニアも4人登録されている10000代表(タヌイ、ムネリア、カムウォロル、カロキ)のうちの誰なのか、今一つ情報が伝わってきませんが、まあ誰が来てもファラーの定位置以外の椅子はほぼ占めてしまうでしょう。
27分台前半の走力があれば、アフリカ勢の激しい揺さぶりにも何とか対応可能、というところを信じて、大迫傑と村山謙太の戦いぶりに注目していきたいと思います。


 

ガトリン今季世界最高!~全米選考会3日目



昨日に続き、全米トライアル(ユージーン)の詳報を、IAAF記事からお伝えします。(引き続き、誤訳は平にご容赦!)
http://www.iaaf.org/news/report/us-olympic-trials-2016-felix-gatlin-henderson

◆6種目でWL!

アメリカの人はいつも、7月4日の独立記念日は花火をあげてお祝いをするもの。日曜日のユージーンには、1日早く花火が打ちあがった。

日曜日の全米オリンピック代表選考会は、男子400m・ラショーン・メリットの43秒97や、ここ9大会で最も若いオリンピック代表となったヴァシュティ・カニンガムなどの話題が霞んでしまうほど、百花繚乱だった。7種目のうち6種目で今シーズンの世界最高記録が生まれたのである。

アリソン・フェリックスは、一度は足首の故障で危ぶまれた、リオでの200・400のダブルタイトルを狙える位置に踏みとどまった。30歳のフェリックスは、コーナーを出たところでは4番手だったが、最後の直線で爆発、49秒68で400mを制した。昨年の北京世界選手権を49秒26で制して以来の好タイムだった。

フィリス・フランシスが、自身のベストを0.5秒も縮める49秒94で2着。ワールド・リーダー(49秒71)として選考会に登場したコートニー・オコロは、50秒39で6位に終わった。3着と6着のタイム差としては、選考会史上最も僅差だった。

「今年はきつかった、でも報われたわ」と、フェリックスは言う。「2カ月前に何とか歩けるだけだったところから、それはもう何でもかんでも、とにかく練習したのよ」

ジェフ・ヘンダーソンは、史上まれに見る激戦の末に男子走幅跳を制した。2位のジャリオン・ローソンとの差は1センチ、全米選考会では最も僅差による勝利だった。

ヘンダーソンの8m59(+2.9)は追風参考記録だが、ローソンの8m58(+1.8)は公認記録である。風の助けが結果を左右したことは確かだろうが、それよりも特筆すべきは、これまで走幅跳の試合でいっぺんに5人以上が8m30を超えるジャンプをしたことなど一度もなかったのに、なんとこの日は6人が8m30オーバーを記録してみせたということだ。彼ら全員が、グレッグ・ラザフォードによる2012年オリンピックの優勝記録8m31を上回ったのである。

オリンピック銅メダリストのウィル・クレイが8m42で3位。公認の風で同記録を跳んだマークィス・デンディと並んだものの、セカンド記録で凌いだのだ。ところが、+5.0mという風のいたずらが、クレイのオリンピック出場資格を奪い去ってしまった。というのは、クレイは公認記録では参加標準記録に到達していないのである。有効期間内のベストは標準記録に1センチ足りない8m14。したがって、リオの3枚目の切符は、デンディが手にすることになりそうである。

さらに傷口に塩をすり込むようなことを言えば、クレイの5回の有効試技はすべて追風参考記録で、たった1回犯したファウルの時だけが+1.5mの公認条件。参加標準記録に到達する絶好のチャンスを逃してしまったわけだ。 なお、片やデンディは故障を騙し騙しの競技で、現在の体調については疑わしい。

4位から7位までの記録は、いずれもその順位の記録としては過去最高。ワールドリーダーとして参戦したマークィーズ・グッドウィンは、追風参考で8m25だった。彼は7位にとどまり、その結果、ブラジルへ赴く代わりにフットボールのプレシーズン・キャンプが待ちうけるバッファロービルズへと向かうことになる。

イングリッシュ・ガードナーが、3人が10秒8を切るという前代未聞のレースを制したのが、女子100m。ガードナーは世界歴代7位の10秒74で1着。ティアナ・バートレッタとトリ・ボウイがともに自己ベストとなる10秒78でこれに続いた。予選ラウンドでともに追風参考ながら10秒81、10秒86で走っていたジェンナ・プランディーニは、5着に終わった。

このレースだけが、今季世界最高には至らなかった唯一の決勝種目だった。(ジャマイカ選考会でエレイン・トンプソンが10秒70をマークしている)1988年のフローレンス・グリフィス・ジョイナーを除いては、全米選考会でワールドリーダーになった選手はいない。24歳のガードナーは、4年前のオリンピックでは7位。彼女はその時、自分の車にこもって泣いたという。



オリンピック・チャンピオンのアシュトン・イートンにとって、そのあまりにも偉大で長期にわたる覇権からすれば、今大会は楽勝だった。彼の目的といえば、チームの一員となって怪我なく会場を去ることだけで、事実彼は、そうしたのだ。8750点というスコアは、2009年以降、彼自身を除いては誰も届いていない記録である。

イートンは十種競技の2日目、最初の種目110mHを13秒60という、ベストに近いタイムでスタートした。円盤投の1投目を失敗して故意のファウルにしたのが、唯一のつまづきと言えるくらいで、その円盤も41m39とまずまずの記録でまとめた。その後、棒高跳では混成競技でのセカンドベストとなる5m25を跳ぶと、やり投を57m84、最後の1500mを4分25秒15でフィニッシュした。

ジェレミー・タイウォが、1500mでベストに近い走りを見せ、記録を自己最高の8425点に伸ばして4位から2位へと躍進した。ザッチ・ジーメクが8413点で3位、ギャレット・スキャントリングが8228点で4位に続いた。

ジャスティン・ガトリンが、昨年の北京世界選手権以降の世界最高記録となる9秒80で、男子100mを制した。20歳のトレイヴォン・ブロメルが9秒84で2位、22歳のマーヴィン・ブレイシーが9秒98で3位だった。ガトリンとブロメルは、世界選手権ではウサイン・ボルトに次ぐ銀・銅メダリストである。

女子走高跳のショーンテ・ロウは、ワールドリーダーに並ぶ2m01の選考会記録で、4度目のオリンピック代表に名乗りを挙げた。世界室内選手権優勝のヴァシュティ・カニンガムが1m97で2位。18歳の彼女は、1980年に当時16歳のキャロル・ルイスが代表になって以来の、最年少オリンピック陸上アメリカ代表となった。

「神様のおかげだよ、この“小さな”のっぽの女の子にとってはね」こう言うのは、かつてプロ・フットボールのQBだった父親のランドール・カニンガムさんだ。「落ち着いていたね。あの子は人の話をよく聞くし、貪欲なところはアリソン・フェリックスのごとしだよ」

 
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