豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

サンディ・モリス

“世界”を展望する…新世代「対決」が楽しみだ


オリンピックの翌年シーズンというのは、どの競技でも「新旧交代」が話題になるものです。
リオでの栄光や挫折そのものを機にシューズを壁に吊るす選手もいれば、もう1シーズンを花道に選び引退や転身を決めている選手も。前者の代表と言えば十種競技のアシュトン・イートン(USA)であり、後者は言わずと知れたウサイン・ボルト(JAM)やトラック撤退を明言しているモー・ファラー(GBR)が好例。
また、ビッグネームの中では“産休”を宣言している100m銅のシェリー‐アン・フレイザー‐プライス(JAM)、抜き打ちドーピング検査のための所在報告義務を怠ったために1年間資格停止となってしまった100mH金のブライアナ・ローリンズ(USA)、また五輪後の抜き打ち検査で違反が発覚したマラソン金のジェミマ・スムゴング(KEN…五輪成績には影響なし)など、引退こそしていないものの今季は活躍が見られない、というアスリートもいます。

そもそもリオ五輪の陸上競技には、大会3連覇の資格を有していた選手が5人(6種目)もおり、2種目でこれを達成したボルトを筆頭に、5人全員が出場して入賞を果たす(男子砲丸投のマイエフスキー以外の4人はメダル獲得)という、あまり記事にならなかったトピックがありました。3連覇を目指すというのは少なくとも8年以上世界の第一線で戦い続けているということで、これらの選手もまだまだ引退を表明したわけではないにしても、そろそろ一時代の変わり目を象徴する存在になりつつあることは、確かです。

一方で、昨年来急速に力をつけ、世界の陸上界でニューリーダーの役割を感じさせる選手たちがいます。私の情報収集力では、現時点でまったく無名の“超新星”を紹介するということは無理ですので、今回はこうした「ここ1年前後での上昇株」を何人かピックアップして、今季の世界選手権やDLでの活躍を展望してみましょう。

◆実現するのか、ハードル女王対決?
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昨シーズン最も輝いた陸上アスリートは、100mHのケンドラ・ハリソン(USA)。長距離のアルマズ・アヤナ(ETH)も甲乙つけがたい実績ながら、リオ・オリンピック出場を逃した悲劇の直後に劇的な世界新記録を達成したドラマ性がひときわ光っていたと思います。


5月28日のDL第4戦ユージーン大会『プレフォンテイン・クラシック』で行われた女子100mHのDL初戦。ズラリと顔を揃えたアメリカ勢の中で、この時点でDL未勝利、身長163㎝の小柄なK.ハリソンは決して目立つ存在ではありませんでした。それが、2着以下に大差をつける圧巻のハードリングで
初優勝。タイムは世界歴代2位の12秒24(+0.7)。4月にシーズンに入ってから12秒36、12秒56、12秒42と好記録を連発していたK.ハリソンが、ここしばらく混戦模様が続いていたこの種目のリーダーに躍り出た瞬間でした。

続く第6戦バーミンガム、第9戦ストックホルムでも圧勝を続けたK.ハリソンは、3枚の切符を巡る激戦が予想された全米選考会に“大本命”として乗り込みますが、快記録を出した同じオレゴンのトラックでまさかの6着敗退。しかしすぐに失意から立ち直ると目標を「DL総合優勝」に切り替え、その2週間後、ロンドンで行われた第10戦で12秒20(+0.3)をマーク、1988年以来28年間難攻不落を続けていたヨルダンカ・ドンコワ(BUL)の記録を破りました。

オリンピックに出場できなかった世界記録保持者として、結局DLではオスロ大会を欠場した以外は予選・ポイント対象外レースを含めて8戦全勝のツアー・チャンピオン。どのレースでも正確無比なハードリングで2着以下に大差をつけ、オリンピック・チャンピオンのブライアナ・ローリンズにも3タテを浴びせました。
リオでは表彰台を独占してのけたアメリカ勢の中にあっても、その強さと安定感は図抜けていました。たった一度の失敗レース(全米選考会決勝)を除けば、です。


K.ハリソンはDL制覇によってすでに今年の世界選手権ワイルドカードを手中にしており、今度こそ「大本命」としての力を如何なく発揮しての金メダルが期待されますが、もう一つの興味として、前例のない「400mHとの2冠への挑戦」が果たして試みられるのかどうか、ということがあります。
2015年にはシーズン5位となる54秒09というタイムを出しており、その後の100mHでの成長度を考えると、優に53秒台前半では行ける力があるものと思われます。
もしそれが実現したとして、その前に立ち塞がるのが、オリンピックを53秒13で制したダリラ・ムハマド(USA)です。
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ムハマド自身も、昨年の全米選考会で突如52秒台に突入して混戦の種目を抜け出した急成長株。前年までのPBが55秒76、400mのPBが昨年4月の52秒64というのですから、その急成長ぶりが伺えます。細身の体形と長い黒髪をなびかせて疾走する姿は、アリソン・フェリックスに代わるスター性も十分です。
今季は5月27日のDL第3戦・ユージーン大会に登場。早くもZ.ヘイノヴァ(CZE)、S.ペターセン(DEN)、A.スペンサーといった強豪とぶつかる予定になっています。
いっぽうのK.ハリソンは、5月20日にジャマイカで行われるワールド・チャレンジ・ミーティングに出場予定。今年もすでに室内レースで順調なところを見せており、アウトドアでの世界記録更新にも十分期待が持てそうです。
K.ハリソンとムハマドの400mH対決…ぜひとも実現してもらいたいものですね。

◆直接対決も、世界記録先陣争いも
「新世代どうしの対決」という図式で楽しみな種目は、他にもあります。
一つはA.アヤナとゲンゼベ・ディババ(ともにETH)による5000m、3000mの世界記録争い。
2015年はゲンゼベが1500mで22年ぶりに世界新記録を出し、5000mでもあと4秒少々のところへ迫りましたが、世界選手権ではアヤナがDLパリ大会の雪辱を果たして金メダル、記録ランキングでも僅かにゲンゼベを上回りました。
昨年はゲンゼベが故障でオリンピック間際での復帰となったこともあって、5000mのレースには1回も出場せず、逆にアヤナはリオの10000mで驚異的な世界新記録を叩き出し、5000でもDLローマ大会で世界記録まであと1秒44と迫りました。
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一昨年のDLチューリッヒ大会3000m以来、両者の直接対決はありませんが、ともに順調ならば嫌でもロンドン世界選手権では相まみえることになるでしょう。現状ではアヤナの勢いが一歩リードしている感があるとはいえ、ともにラスト勝負よりはロングスパートで決着をつけたい同タイプどうし。10000m29分17秒を誇るアヤナのスタミナが勝るか、1500を3分50秒で走るゲンゼベのスピードが勝つか、5000mはその時のコンディションによって勝敗が決しそうです。
同時に、DLで5000m種目の一つとして数回行われる3000mでも、レコードブックに唯一残った中国「マー軍団」の記録、1993年にワン・ジュンシャが出した8分06秒11への2人のチャレンジを期待したいところです。
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◆華やか艶やか“空中決戦”
もう一つの注目種目は、女子棒高跳です。
かつてエレーナ・イシンバエワ(RUS)が華やかに彩ったこの種目も、世代交代を象徴する2人の選手、オリンピック&DLチャンピオンのエカテリニ・ステファニディ(GRE)とランキング1位の5m00を跳んだサンディ・モリス(USA)の“対決”が注目を集めます。

ステファニディは昨年のシーズンイン時点では、同国の2015年DLチャンピオン、ニコレッタ・キリアポウロウの陰に隠れた無名の存在でした。インドアで4m90を跳んで躍進の予兆は見せていましたが、アウトドアでは4m71がPBだったのです。この種目では1月に室内で5m03を跳び3月の世界室内を4m90で制したジェニファー・サー(USA)がまだまだ健在で、世界室内前哨戦で4m95を跳び本番でも2位に食い下がったモリスがこれに続いていました。
DL第1戦のドーハはモリスが4m83で勝ち、ステファニディは3位。しかし4m73は2年ぶりの屋外PBで、ここから彼女の快進撃が始まります。
ドーハ以降はDLに姿を見せなかったモリスと対照的に、オリンピックまでのDL5大会で4勝、記録も4m75から75、77、81、80と、無類の安定感で着実に伸ばし、自国選手権でPBを4m86にまで引き上げました。その勢いのまま、リオでは4m85の同記録でモリスを振り切り金メダル。DLも最終戦を待たずにツアー優勝を確定させ、その飛躍ぶりはまさに2016年の新人賞ものでした。

モリスはDL初戦の後に負傷して全米選考会にギリギリ間に合わせ、ここでもサーに次ぐ2位でオリンピック出場権を獲得。本番で早々に姿を消したサーに代わって、ステファニディとの一騎討ちに惜敗すると、DL最終戦では逆にステファニディを圧倒、史上3人目の5mヴォルターとなりました。
元来、非常に多くの試合に出場するタイプで、今年はすでに室内4戦に出場。うち1回はステファニディとのリマッチとなり、今度はステファニディが4m82で雪辱しています。
ともに順調ならば、DLでも頻繁にマッチアップが見られそうな両者の対決。“安定感”のステファニディ(27)か、“一発5m”のモリス(24)か、はたまた“旧勢力”サー(35)やキリアポウロウ(31)、ヤリスレイ・シルヴァ(CUB=29)らの巻き返しか、もともと予断を許さない種目だけに楽しみ…もちろん、私はモリスの応援です!
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https://www.iaaf.org/news/preview/iaaf-world-indoor-tour-dusseldorf-preview

またまた女子の話題ばっかりですみませんね。他にも注目の「対決」はいろいろとあるんですけど、記録レベルが高い選手どうしの決戦が昨年までは見られそうでなかなか見られなかった、今年は見られるかな?…という意味で今回この3種目を取り上げた次第です。

間もなく『ワールド・リレーズ』が始まりますね。
国内では『ぎふ清流ハーフマラソン』に『兵庫RC』『出雲陸上』、それから混成競技後半。今日の日曜日は忙しくなりそうです。


 

サンディ・モリスが5m征服~DL最終戦ブリュッセル大会



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IAAFダイヤモンドリーク2016の最終戦が、ベルギーのブリュッセルで行われました。
ツアー・チャンピオンを確定的にして、あとは記録を狙うだけということで世界新記録の期待が高まった女子5000mのアルマズ・アヤナ、男子3000mSCのコンセスラス・キプルトは、いずれもペースメーカーに恵まれず彼らとしてみれば平凡な記録に終わったのに対して、女子棒高跳でリオ銀メダリストのサンディ・モリスが5メートルの大台を征服。ツアーチャンピオンこそ安定無比のエカテリニ・ステファニディに譲ったものの、一気にこの種目のリーダーの地位に躍り出て、大会の話題を独占する形となりました。

全体的にはやや盛り上がりを欠いた感があり、16種目中10種目でポイント・リーダーが敗れるという結果になりました。うち8種目ではリーダーが辛うじて逃げ切り、残り2種目(男子走高跳と女子400mH)は逆転劇となったのですが、男子HJなど記録的には極めて低調なものでした。
特記事項としては、女子400mでスポット参戦して優勝をさらったセメンヤでしょうか。
前回の放送で解説の石塚さんが「次の大会の要注目選手」の一人に「800mのセメンヤ」を挙げていたので、あらら、800mはもう終わってセメンヤはちゃんと優勝してるのに、石塚さん、どうかしちゃったかな?…と思わされたのですが、なるほど、400に出る、ということだったんですね。(そうは言ってなかったんで、相方の赤平アナもキョトンとしてましたが)
とはいえ私、今回のエントリー・リストからはセメンヤの名を完全に見落としておりました!これを含めて、「展望」の「主なエントリー選手」のリストに載っていない選手が4人も優勝してしまいまして、まことに紅顔の至り。

<ダイヤモンドレース・チャンピオン>
 (ファイナル優勝者が別の選手だった場合※に表記)
 ◇男子200m アロンソ・エドワード(PAN) ※ジュリアン・フォルテ(JAM)
 ◇男子800m ファーガソン・ロティッチ(KEN) ※アダム・クシュチョト(POL)
 ◇男子1500m アズベル・キプロプ(KEN) ※ティモシー・チェルイヨト(KEN)
 ◇男子110mH オーランド・オルテガ(ESP)
 ◇男子3000mSC コンセスラス・キプルト(KEN)
 ◇男子走高跳 エリック・キナード(USA)
 ◇男子走幅跳 ファビリス・ラピエール(AUS) ※ルーヴォ・マニョンガ(RSA)
 ◇男子円盤投 ピヨトル・マラホフスキー(POL) ※ダニエル・ストール(SWE)
 ◇女子100m エレイン・トンプソン(JAM)
 ◇女子400m ステファニー・アン・マクファーソン(USA) ※キャスター・セメンヤ(RSA)
 ◇女子5000m アルマズ・アヤナ(ETH)
 ◇女子400mH カサンドラ・テート(USA)
 ◇女子棒高跳 エカテリニ・ステファニディ(GRE) ※サンディ・モリス(USA)
 ◇女子三段跳 カテリーネ・イバルゲン(COL)
 ◇女子砲丸投 ヴァレリー・アダムズ(NZL) ※ミッシェル・カーター(USA)
 ◇女子やり投 マデイラ・パラメイカ(LAT)

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さて、今回はもう、モリスの話題だけでいいでしょう!
とにかくこの人、美人でセクシーでかっこイイ。「女性で筋肉モリモリはどうも…」という向きには強いてご推奨はしませんが、なんとなく、「ワンダーウーマン」とかのスーパーヒロインもの映画に出させたいくらい、凄い存在感があります。
私はオリンピック以前からファンでしたが、今や大ファンとなりましたっ!

それにしても「展望」に書いたとおり、ステファニディとモリスの一騎討ち、それも、ステファニディは4m80前後を確実に跳んでくるけど、5mを跳ぶ爆発力はモリス、という予想がバッチリ当たりましたね。
本日のシリーズ・マークは次のとおり。
 4.52 ×○ 4.58 ○ 4.64 ○ 4.70 ×○ 4.76 ×- 4.82 ○ 4.88 ○ 4.94(DLR、WL) ○
 5.00 ×○ 5.07(WR)×××
4m76はステファニディに先を越されてしまったので2回目をパスして4m82を一発クリア。以後、4m94までノーミスでステファニディを競り落とすと、夢の5mへ。
4m82から、ずっと左太腿のポッコリ膨れた筋肉にバーがかすってるんですよね。5m00の時なんかは、太腿、お腹、胸とすべてかすってバーは大きく揺れましたが、「お願い、落ちないで!」のポーズに何とか踏みとどまってくれました。
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毎回同じところを同じようにかするということは、それだけ跳躍の踏切とタイミングが極めて安定していたということでしょう。惜しむらくは、もう少し高い記録から開始していれば、13本目の跳躍で5m07の世界新記録に挑む、ということにはならなかったかもしれません。次の機会からは、とうぜん彼女は5m07を意識して高さを決めてくることになるでしょうね。 
いっぽう、ツアーチャンピオンを確定させながらも主役の座をすっかり奪われた形の、ステファニディの心境やいかに?…この先の2人の対決が、またまた楽しみになりました。

他の競技は先にも書いたとおり概ね低調でしたが、しいて挙げるとすれば、ポイント対象外のB級メンバーながら地元の大声援を受けて優勝した、女子走高跳のティアムでしょう。
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今回は、男子と女子の走高跳が2つ並んだピットで同時進行するという、非常に珍しい競技運営でした。ちょうど、大試合の予選がA・B2つのピットで行われるような感じです。
女子の優勝記録は1m93で、ティアム自身のPB(七種競技中の種目別世界最高記録)には5センチ及びませんでしたが、しなやかなフォームは助走・踏切さえ安定すれば2mオーバーを十分に予感させるものです。ぜひ、来シーズンはこちらも「専門種目」として、取り組んでほしいところです。

これで、今季のダイヤモンドリーク15戦がすべて終了しました。13日にはフランスで「デカネーション」が行われるなど、ローカル大会はまだ残っているでしょうし、日本国内では全日本実業団、国体などを残しているとはいえ、世界のトラック&フィールドはいちおう2016年シーズンの閉幕を告げようとしています。
ここ数日は真夏のような蒸し暑さが続いていますが、もういくらもしないうちに、「駅伝・マラソン」の季節がやって来ます。
 

DL最終戦ブリュッセル大会の注目



2016IAAFダイヤモンドリーグのグランドファイナル、第15戦ブリュッセル大会が、9日(日本時間10日未明)に開催されます。
今年はオリンピックがあったため、選手によっては終盤の大会出場を見合わせるケースも目立ち、また一部の短距離種目などはシーズン全般を通じて、例年以上に有力選手の回避が目立つものがありました。
それでも、ファイナルとなるチューリッヒ、ブリュッセルの終盤2戦の雰囲気は格別。むしろ、DL戦線とオリンピック路線の性格の違いが実感されます。
今回も大会直前のエントリー・リストから、見どころをピックアップしてみましょう。

◆プログラムと主なエントリー(太字は得点順にシリーズ・チャンピオン有資格者)
8日17:00 女子砲丸投(アダムズ、カーター、マートン)

9日17:30 女子やり投(パラメイカ、ミッチェル、シュポタコヴァ)
 18:50 男子円盤投(マラホフスキー、ウルバネク、ミラノフ、シュトール、カンテル)
 19:08 女子三段跳(イバルゲン、リパコワ、パパクリストウ)
 19:38 女子棒高跳(ステファニディ、モリス、ブヒュラー)
 19:45 男子走高跳(ボンダレンコ,キナード,バルシム,グラバーツ,戸邉直人)
― ここから生中継 ―
 20:04 女子400mH(ドイル、テート、ヘイノヴァ、スペンサー)
 20:13 女子100m(トンプソン、スキッパーズ、ウィリアムズ、フェイシー)
 20:15 女子走高跳 ※対象外(ティアム、スペンサー、レフチェンコ)
 20:22 女子400m(マクファーソン、ヘイスティングス、オコロ)
 20:33 男子110mH(オルテガ、バスク、マルティノ-ラガルド)
 20:40 女子5000m(アヤナ、オビリ、キビウォト、ナウォヴナ、ロウベリー)
 20:45 男子走幅跳(ガオ・シュンロン、ラピエール、フォーベス、ローソン)
 21:05 女子100mH ※対象外(ロールダー、ストワーズ、ジョージ)
 21:12 男子1500m(キプロプ、マナンゴイ、マクルフィー、イギデル)
 21:23 男子200m(エドワード、ルメートル、マルティナ、ジェミリ、グリエフ)
 21:30 男子3000mSC(C.キプルト、B.キプルト、ジャガー、コエチ、メキシ-ベナバド)
 21:45 男子800m(ロティッチ、ボッセ、 キプケテル、クシュチョト、マーフィー)
 21:55 男子400m ※対象外(ボルリー3兄弟)

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今季はDLで2種目、オリンピックで3種目、合計5種目で世界新記録が誕生しました。年間に5つというのは、なかなか見ることのできないWRラッシュのシーズンと言ってよいでしょう。
ラストに「もういっちょう!」が期待されるのが、女子5000mのアルマズ・アヤナです。
リオ五輪では初日の10000mで超人的な世界新記録を独走で叩き出したことで、さすがのアヤナも相当なダメージを抱えたまま5000mに臨むことになり、結果信じがたいような終盤の失速を演じてしまいました。
今回は休養も十分、気候もそろそろ秋の気配(だといいんですが)、ということで、「6個目」への期待は高まります。ただ、5000mの世界記録はこれまでアヤナとゲンゼベ・ディババが再三挑んでは寸前のところで跳ね返されており、攻略は容易ではありません。適格なペースメイクと、アヤナ本人の体調がカギとなるでしょう。

注目選手が「世界新宣言」をしている種目がもう一つあります。男子3000mSCのコンセスラス・キプルトです。
今季5戦全勝でチャンピオン確定、オリンピック金メダルと無敵の状況にあるキプルトが狙うのは、サイフ・サーイード・シャヒーン(QAT)の持つ7分53秒63。いまだ8分を切っていない(PB=8分00秒12)キプルトとしては大胆な公言ともとれますが、実績から言ってそれだけの潜在能力は十分ということでしょう。
これに乗っかっていきたいのが、やはり悲願の8分切りを目指すエヴァン・ジャガーということになります。

多くの種目で年間チャンピオンが確定、もしくは趨勢が見えていますが、最後まで分からないのが男子走高跳です。今や「3強」となったうちのオリンピック&世界チャンピオン=デレク・ドルーイン(CAN)の出場はありませんが、DL王者の可能性を持つ4人が出場。ハイレベルの戦いを期待したいものです。
日本から唯一、戸邉直人(安藤財団)が出場。日本のDLパイオニアとして、オリンピック落選の憂さを晴らすべく、一度くらいは画面に映って欲しいところ。

「オリンピックの再戦」となるデッドヒートが期待されるのが、女子棒高跳。イシンバエワやサーらの時代を継承する新興勢力、カテリナ・ステファニディとサンディ・モリスの熱い一騎討ちが注目です。
無類の安定感を誇るステファニディは、今季PBを4m71から15センチ伸ばし、出場するどの大会でも確実にPB前後の記録を跳ぶ堅実性と勝負強さを発揮してきました。一方で、ステファニディにはいまだ感じられない5mジャンプへの可能性を持つ爆発力があるのが、美人ヴォルターとして人気急上昇中のモリスです。
文字通りの「頂上決戦」を期待しましょう。
Sandi Morris 02
https://www.iaaf.org/competitions/iaaf-diamond-league/news/sandi-morris-brussels

女子100mは、「新女王」エレイン・トンプソンの、輝かしい1年の締めくくりとなるでしょうか。100mでは分が悪いダフネ・スキッパーズも、来季以降ライヴァルとして渡り合っていくためには、勝てないまでも存在感をアピールするレースにしなくてはなりません。

ダイヤモンドレースの合間に、ポイント対象外の「サービス・レース」がありますが、地元選手のお披露目枠といった趣で、少々寂しいメンバー構成。最終レースでの「ボルリー兄弟そろい踏み」はご愛敬?
その中で、一つ注目したいのが女子走高跳のナフィサト・ティアム です。
リオ五輪では七種競技に優勝したベルギーのニュー・ヒロイン。七種の走高跳でカタリナ・ジョンソン-トンプソンとともに1m98という種目別世界最高記録をクリアしてみせました。もし走高跳に出場していれば(エントリーはしていました)、ルース・ベイティアとの優勝争いが十分に期待できたパフォーマンスです。伸びやかな四肢はまさにHJ専門選手のもので、かつてのハイデ・ローゼンダールやジャッキー・ジョイナー-カーシーのように、「混成と専門」の二刀流での活躍が期待されます。

放送は10日(土)2:45(9日26:45)からCS日テレG+で、3;00頃から現地映像が生中継される予定です。

 

リオ五輪陸上競技TV観戦記・Day8



昨夜から今朝にかけては、もうお祭り騒ぎ。遂にオリンピック報道の中で、陸上競技が主役になった1日でした。
このブログ始めて、よかったなとつくづく思います。


◇男子50km競歩
荒井広宙選手―レースそのものが、ものすごくスリリングだったし、4時間テレビに釘付けにさせてくれた上に、競歩界初の大偉業。しかも終わってからのスッタモンダがまたスリリング。表彰式での笑顔を見るまで、気の抜けない丸々半日のドラマでした。

実は私、あの接触があった瞬間から、「あ、これはもしかして…?」と、気が気でなかったんです。というのも、前日に女子400mリレーでアメリカ・チームのクレーム~単独再レースという珍事を見せられていますから、なんでもかんでもとりあえずクレーム付けとけの風潮が甚だしい昨今のこととて、これは少なくとも何らかのアクションはあるだろうなと。
で、ゴール後の特にミックスゾーン付近の様子を注視してたんですが、特に何事も見つけられないままに中継は終了。各ネットニュースにも「荒井、銅メダル!」の見出しが踊り、一件落着かと…その後の数時間、あんなことになってたわけです。

冷静にヴィデオを見直してみました。
まず、競歩に限らず陸上のレースで、肩や腕が接触するなんてことは日常茶飯事のことで、いちいち文句を言う筋合いのものではありません。
ところがこのケース、荒井選手を追い抜いたエヴァン・ダンフィー(CAN)が、その勢いの割には実のところ疲労困憊の極みにあって、ちょっとした衝撃にも耐えられないほどに張り詰めた状態で歩いていたところへ、抜かれた荒井が再度左側から抜き返そうとする際に、チョコンと肩と肩が当たったわけです。ダンフィーが一瞬よろけそうになりますが、それほど大きな衝撃ではなく、10歩ほど何事もなかったように進みます。と、そこで僅かなバランスの崩れが響いたのか、それとも抜き返されたことに心が折れたのか、ヨロヨロっと膝が崩れて決定的な遅れを作ってしまったのでした。
問題は、①荒井選手の能動性による接触事故は確かにあったが、②ダンフィーの失速は接触が直接的原因か?というあたりですね。①については疑いようがなく、それによってダンフィーが軽い衝撃を受けたのも確かです。しかし、それはレース中には「よくあること」。そこで②が問われるのですが、①が何がしかのきっかけになったかもしれないとは推測できても、ダンフィーのよろめきは自身の疲れによるもの、という見方ができそうです。
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 問題のシーン

ここで、現地の陸連スタッフはすぐに日本の放送局からヴィデオを取り寄せて、文書での経過説明を交えて荒井の「無罪」を説明する資料を提出し、いったん競技委員長が下した「失格」の裁定への提訴をIAAF理事会に申し立てたのだそうです。
この政治的アクション、大事ですね。2000年シドニー大会・柔道での篠原信一選手の「世紀の大誤審」の時は、これが決定的に欠落してたんです。あの時の全柔連の対応は、まさに「無能」でした。

とにかく、荒井選手にとってハッピーエンドで本当によかった。
「失格」の一報を聞いた時には、当事者のダンフィー選手に対して
「抜き返されたらもうダメだということは、君自身がよく分かっていたはずだ。そんな形でメダリストになって、満足なのか?あそこまでの君の素晴らしいレースが、台無しにならないか?」
などと心中問いかけたりしておりましたが、聞くところでは当のダンフィー選手にクレームの意思はなく、周囲のスタッフが起こしたアクションだったようです。どこの国でも、メダルってそんなに大事なものなんでしょうかね?(日本側の再クレームは、荒井の名誉がかかっていますから当然です)

レースは、素晴らしいものでした。中盤以降、目まぐるしく変わるトップ争いに追走グループの主導権争い。終盤のまったく予測がつかないデッドヒート。序盤から飛び出した世界記録保持者のヨハン・ディニズ(FRA)が、途中潰れながらもレースを捨てずに8位入賞にこぎつけた姿。メダル争いを繰り広げる選手たちの傍らで、1周・2周とラップされた下位の選手たちが、普通の散歩のようなゆったりしたウォーキングを続けている姿が、レースの過酷さを雄弁に物語っていました。

◇男子400mリレー
もう、震えちゃいましたね。もちろん号泣ですよ。ああ、陸上が好きで良かった!ってね。
一人の9秒台もいない。一人のファイナリストもいない。全員が昨年世界選手権に出ていない。
そんな、目に眩しいサンライズ・レッドのサムライたちが、外国の陸上関係者やファンの間には、どのように映ったのでしょうか?…
「彼らがどうしてあれほど速く走れたのか?」ということは、それら海外の人々やふだんあまり陸上を見ない方々にとってはとても不思議なことに違いありません。
「奴ら、ニンジュツを使ったんじゃないか?」とかね。
このことについては、稿を改めてじっくりと書いてみたいと思います。

1位ジャマイカとの差は、0.32秒。ボルトが一線から身を退き、パウエルも…となった暁には、日本は本当にガチでジャマイカに勝てるかもしれません。事実、ボルト・ブレイク抜きのメンバーには完勝してるんですから。
アメリカも、ガトリン、ゲイ、ロジャーズあたりはそろそろ潮時でしょうが、また誰か出てくることでしょう。ブロメルは脚を痛めたみたいですね。それでもあそこまでケンブリッジを追い込んだのは、さすが恐るべし!
今後はいよいよ日本のリレーでの強さの秘訣を、各国が真剣に研究してきます。日本のように年間を通してチーム練習に時間を割くことや、バトンワークの科学的精査が争うようにして行われるはずです。『ワールドリレーズ』という大会ができた(来年は4月22・23日)ことも、そうした動きに拍車をかけるでしょう。
日本チームに求められるのは、個人の競技力のいっそうの向上、ということになります。
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◇その他

女子5000mでは、アルマズ・アヤナがまさかの3着敗退。
ぶっちぎりの独走態勢に持ち込むいつものレース模様にも諦めなかったヴィヴィアン・チェルイヨトとヘレン・オビリのケニア勢は見事な戦いぶりだった一方で、アヤナはさすがに10000mの大記録が想像以上に堪えていたのかもしれません。

女子棒高跳は、私の目論見どおり(そう予想はしませんでしたが願っておりました)ステファニディとモリスの一騎討ち。ただ、どちらも4m90を跳べなかったのが、記録的には物足りなかったです。
どんな時でも4m80前後を外さないステファニディの今季の安定感は、ちょっと驚異的です。昨年のDLでは、同国のキリアポウロウ(予選DNS)が年間タイトルを制していて、今季初めのステファニディは「ギリシャの新人」みたいな扱いだったのに、とうとうここまで来たか、という感じです。

男子ハンマー投。解説の小山裕三さんが嘆息するように、「30年前に戻ってしまった」(実際には1986年はセディフ、リトビノフのソ連2強によって85m前後がポンポン投げられていた時代なんですが、彼らが出場しなかった84年ロサンゼルス大会以来の優勝記録70m台という意味では、そのとおり)記録の低調さは、いったいどうしたことでしょう?
優勝候補筆頭のファイデク(POL)が予選落ちしてしまったこともありますが、この種目自体がダイヤモンドリーグから外されているなど、競技としての低迷には根深い要因がありそうです。室伏広治も、もう少し早く本腰入れて復帰していたら、というか去年休まなければ、いいところまで行ってたかもしれません。

◇Day9展望
あっという間でしたね。トラック&フィールドは最終日です。
ロードとトラックで相次いでメダル獲得の日本陸上、ここはもういっちょう今度はフィールドで、新井涼平におまかせ!という期待のかかるDay9です。
何が起きるか分からないやり投。女子でも、まったく予測不能の結果でしたし、今季の男子はそれなりにハイレヴェルながら、誰が最もリオの夜空を切り裂くかは、誰にも予想できないでしょう。いちおう、ドイツ勢3人の誰か、とだけ私なりの予想をしときましょう。
新井は、予選と同様とにかく1投目から全開で。ぜひとも、6回私たちをワクワクさせてもらいたいです。

その他の各種目については前の投稿で展望してますので、あとは男子5000mですか…ファラーでしょう!
で、最後は“お祭り”の女子・男子4×400mリレーを、日本チームが出ない気楽さで、せいぜい楽しみましょう。
女子は、アリソンの有終の走り(だと思います)に、男子は予選で振るわなかったボツワナの巻き返しに、それぞれ注目しています。

 

リオ五輪陸上競技TV観戦記・Day7&展望



どこかでやるんじゃないか、とほとんど寝ないでTV放送を注視していましたが、やっぱりDay7のMorning Sessionはまとまった録画放送もしてくれませんでした。僅かに男子400mリレー予選の2レースを見せてくれたのみ。いまだに男子400mH決勝は、ネット以外では見ていません。
レスリングなんて、日本選手が出てくる場面以外を延々と放送してくれてますよね。それはそれで、レスリングも大好きな私としては嬉しいことなんですけど、どっかで陸上に切り替えてくれてもよさそうなもんなのに…なんでゴルフなんか長時間やってるのよ…ブツブツ。

それにしてもっ!…とここで400mリレー日本チームの快挙について語りたいところですが、その前に。
バドミントン女子ダブルスのタカマツペア、最後に16-19の劣勢から5連続ポイントでの素晴らしい大逆転優勝。
振り返れば今回の日本チーム、対戦競技でのメダルマッチの勝率が非常に高いです。「決勝に勝って金メダル」はこれで柔道3、レスリング4、そしてバドミントンで、通算8勝4敗。「勝って終わる銅メダル」は、奥原希望のバドミントンを含めると12勝3敗。で、日本人は大いに溜飲を下げてるわけですね。
すべての事例に当てはまるかどうかは分かりませんが、少なくともタカマツペアの、あるいは体操・内村航平のあの土壇場における集中力や修正能力、抽斗の豊富さ、あれこそが、世界で戦い続けることによって培ってきた「競技力」というものです。

陸上の日本選手たちに決定的に欠けているものは、これだと思います。たかだか2度や3度のオリンピック・世界選手権の出場経験で、どうにかなるものではない「何か」です。
国内競技会を優先しなければならない諸事情や、もちろん経済的・環境的な課題もあるのだとは察しますが、普段から国際試合で揉まれることを繰り返していかないと、いつまでも「日本選手は実力を発揮できず予選敗退」の光景が繰り返されていくに違いありません。陸連のエライさんたちは、根本を見つめ直して強化に反映させていってもらいたいものです。

◇男子400mリレー予選(2組3着+2)
レース模様はおおむね既報のとおりで、付け加えることは大してありません。
アメリカはマイク・ロジャーズ-クリスチャン・コールマン-タイソン・ゲイ-ジャリオン・ローソンのオーダーで37秒65。決勝ではもちろん、ガトリンとブロメルを入れてくるでしょう。
ジャマイカはジェヴォーン・ミンジー-アサファ・パウエル-ニッケル・アシュミード-ケマー・ベイリーコールで37秒94。こちらはボルトとブレイクが入って、1秒近く戦力アップしそうです。
中国はタン・シンクィアン-シエ・チェンイ-スー・ビンチャン-チャン・ペイメンで37秒82。日本との戦力差を単純比較すると、ともに100m準決勝に進んだ山縣とケンブリッジ、スーとシエは合わせてほぼ互角。3番手の比較では10秒00を持つチャンの調子が上がらず、桐生がやや上。アンカー同時スタートなら、ケンブリッジが競り負けることはないでしょう。スターターのタンという選手の情報がほとんどありませんが、100mのベストは10秒30で200mが強いわけでもなく、もしかしたら決勝では昨年の世界選手権と同じメンバーにしてくるかもしれません。

中国は、14年のアジア大会で突然37秒台に突入して以来、バトンワークの乱れというものがほとんどありません。これは相当にチーム練習を重ねてきていると見るべきでしょう。ただ、気にかかるのは100mの走力アップばかりにこだわって、200mに出場するほどのランナーを養成していない点です。話すと長くなりますので別の機会にと思いますが、過去の日本チームの例を見るまでもなく、ヨンケイではロングスプリンターの役割が非常に大きい比重を占めるのです。そのことにまだ中国が気付いていないとすれば、ここに弱点が見出せます。

逆に日本の4人は(決勝も同じオーダーだと思います)、バトンワークもさることながら、全員が200mを20秒5以内で走れることが大きな強みです。(ケンブリッジのPBは20秒62ですが、もともと200mランナーでもあり、現在の走力は優に20秒3前後と考えられます)その意味でも、今回のチームは「史上最強」と言えるのです。
そして天下無敵のアンダーハンドパス。予選を見る限りはほぼ完璧、ということは小さなミスが大きなマイナス材料になるということですから、やはりそこが、同じくバトンワークの安定している中国との勝負を分けるポイントになってくるはずです。
あとは、イギリス。とうぜん決勝ではメンバーを替えてくるでしょうし、もう少し上手くバトンをつなぐはずです。日本のメダル獲得は、この中国・イギリスの難敵2チームに勝つことが、まず重要です。
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◇女子400mリレー

これもアメリカ・チームのお粗末ぶりは既報しましたが、その後インターフェアへの抗議が通って、昨日の夕方、アメリカ1チームだけでの再レースが認められました。ここで慎重にバトンをつなぎながらも41秒77のトップタイムをマークしたアメリカが決勝進出、暫定8位だった中国が予選通過を取り消されるという、前代未聞の成り行きとなりました。(9レーンの競技場でないことが中国には不運でした)
思えば、落としたバトンを改めてきちんとつなぎ直してフィニッシュまで走り切った(66秒71)のは、クレームを通すうえで非常に重要だったはずで、この時のアメリカチームのとっさの判断力は殊勲賞ものです。
相変わらず不安定極まりないアメリカのバトンワークは、前回ロンドンでは鮮やかすぎるほどに決まって40秒82の世界記録に結びつきましたが、いつ再び破綻するとも知れません。
男子も女子も、不思議と失敗しないジャマイカが、どうしても優勝候補筆頭ということになるでしょう。決勝ではアメリカにトリ・ボウイ、ジャマイカにエレイン・トンプソンという、それぞれの切り札が投入されてくると思われます。
RIO037
 最後は破れかぶれにバトンを投げたアリソン・フェリックス

◇男子400mH決勝
優勝候補の一角だったハビエル・クルソン(PUR)が、明らかなフライングで失格。泣きながらトラックを去った後にリスタートしたレースで、最初から攻めていったカーロン・クレメントが直線入り口では一人大きく抜け出し、またまた出てきました、という感じのケニア勢ボニフィス・トゥムティの猛追を振り切って47秒73で優勝。
クレメントは2005年ヘルシンキ世界選手権に19歳でデビューして以来、07年大阪、09年ベルリンと連覇する絶頂期を経て、最近はすっかり「決勝の常連」程度の地位に甘んじてきました。とうとう北京(銀)、ロンドン(8位)で果たせなかった悲願のオリンピック・チャンピオンの座に就いたわけで、その喜びようは傍目にも微笑ましいものに感じられました。
クレメントの大会直前からの勢いが、今季全体的に低調を極めたこの種目ではひときわ目立っていたように思います。終わってみれば4位までが47秒台を記録し、ようやく世界のヨンパーに活気が戻ってきました。

◇男子200m決勝
ウサイン・ボルトの完勝…ながら、19秒78(-0.5)というタイムには失望というよりは自身への怒りを覚えたらしく、今までにないくらいに渋い、ゴール直後の表情でしたね。2種目3連覇の締めくくりにしては、「画竜点睛を欠く」といった気分になったのでしょう。
それにしても、ミックスゾーンで待ち受ける何十というメディアからのインタヴューに、小一時間かけて一つ一つ丁寧な受け答えをしていく真摯な姿には、毎度感服してしまいます。大迫傑や甲斐好美に、少し説教してやってほしいもんです。

◇その他
ワンデイ・トーナメントで行われた男子砲丸投は、全米で史上23人目の「22mクラブ」に仲間入りしたばかりのライアン・クラウザーが、その時の記録を41センチ上回る22m52をプット、王者ジョー・コヴァックス(USA)を再度破るとともに、オリンピック記録を28年ぶりに書き替えました。

女子400mHは予想どおり、ダリラ・ムハマド(USA)の圧勝。世界女王ヘイノヴァは復調今一歩で、メダルに届きませんでした。

女子800m準決勝では今季無敵のキャスター・セメンヤ(RSA)の強さが際立ち、金メダルは堅そうな気配です。対抗格と目されていたユニス・ジェプコエチ・サム(KEN)、フランシス・ニヨンサバ(BDI)が消えたことで、これを脅かす存在は見つけにくくなりました。中長距離好調のアメリカはこの種目でもケイト・グレースが上位で決勝進出、リンジー・シャープ(GBR)やメリッサ・ビショップ(CAN)などメダル争いは白人女性の戦いとなりそうです。

男子1500m準決勝では、アズベル・キプロプ(KEN)がこちらも盤石の態勢。2番手筆頭の位置にあったエリジャ・マナンゴイ(KEN)がDNSで、ディフェンディング・チャンピオンのタウフィク・マクルフィー(ALG)とロナルド・ケモイ(KEN)、マシュー・セントロヴィッツ(USA)、アヤンレ・スレイマン(DJI)らの包囲網をキプルトがいかに凌ぐか、ロンドン五輪や今年のモナコDLの時のようなポカをやらかさないか、注目です。
Melissa Bishop
 女子800、やっぱりビショップに頑張ってもらいたい!

◇その他Day8展望
同じ日に男女の競歩が行われるというワケ分からないスケジュール。日本陸上チーム最大の期待、男子50km競歩は8時のスタートになります。
昨年世界選手権を独歩で制したマテイ・トト(SVK)の力が抜きんでているように思われます。今年は50kmレースから遠ざかっているらしいですが、本命は動かしがたいところ。
2位だったジャレド・タレント(AUS)は20kmを捨ててここ一本にかけてきており、中国勢も不気味。日本トリオにとって上位の壁はかなり高いようですが、ロシアのいない今回は大チャンス。ぜひとも、3人がほぼ同等の力を有するチームの利を活かして、メダルは運次第としても、全員入賞を果たしてもらいたいところです。

今日の注目種目の一つは、女子棒高跳決勝です。
今季インドアながら唯一5mを跳んでいるジェニファー・サー(USA)に、後輩のサンディ・モリスと今季無類の安定性を誇るDLリーダーのエカテリニ・ステファニディ(GRE)、さらには世界女王ヤリスレイ・シルバ(CUB)が絡んで、優勝争いはなかなか混沌。記録レヴェルも4m90から5mラインが勝負どころと思われ、仮にエレーナ・イシンバエワが出ていても予測しがたいほどの好勝負が見られそうです。
地元期待のファビアナ・ムーレルの予選落ちは残念でしたが、日本選手のいない種目ながら、TVでもぜひきちんと見せてもらいたいですね。

さらに、女子5000mのアルマズ・アヤナ(ETH)には、再び世界新記録を期待してよさそうです!

Sandi Morris
 私はサンディ・モリスを応援!
 https://www.iaaf.org/news/report/sandi-morris-pole-vault-american-record-houst

 
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