豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

サンディ・モリス

アリソン2種目制覇、ライルズ幻の18秒90~DL第2戦チューリッヒ大会



WANDAダイヤモンドリーグ第2戦のチューリッヒ大会が、世界7会場を結ぶリモート大会として、ワールド・北米・ヨーロッパの3地域対抗戦形式で開催されました。
以下、ワールドアスレティックス(旧IAAF)のHPから、拙い和訳で結果をご紹介します。誤訳の節は重々お詫び申し上げます。(特にモリーンのくだりが自信ありません)

9日・木曜日、チューリッヒ・ダイヤモンドリーグ主催者が2大陸にまたがる7会場に集結させた30人のアスリートで競うという、痛快にしてコロナウィルス禍への画期的な解答案ともなる大会、『インスピレーション・ゲームズ』が行われ、アリソン・フェリックスが2つの印象的な勝利を挙げて脚光を浴びた。

◇アリソン・フェリックス、輝く
カリフォルニア州ロサンゼルスの近郊・ウォルナットの競技場で参加したフェリックスは、150mレースを快勝して今大会の口火を切り、3×100mリレーのアンカーとして大会を締め括った。
伝説的なキャリアを誇る彼女でも初めての経験に発した第一声は、というと?
「何だかとてもおかしな気分ね」
満面の笑みで、そう言った。
「チームメイトもなしで練習するみたいな、そうでないような」
単独走を走り終えての感想は、
「自分自身にチャレンジするというのは、大変なことね。でも私は陸上が大好きだから、機会を与えられたら飛び付くわ。私には陸上が全てなのよ」

トラック競技の幕開けは、女子150m。地元スイスのスター選手ムジンガ・カンブンジはチューリッヒで、400mのオリンピックチャンピオン、ショーナ・ミラー=ウィボは距離にして8000㎞、時差にして6時間離れたフロリダ州ブレイデントンで、そしてフェリックスはさらに4000㎞も離れた場所での参戦である。
トラックの位置とカメラアングルをほぼズレがないように合わせて映像を同調させてはいても、誰がリードしているかを見て取るのは、3人がフィニッシュラインに近付くまでは難しい。フェリックスが真っ先にゴールに飛び込んだ。タイムは16秒81。ミラーの17秒15、カンブンジの17秒28を余裕で上回った。
奇遇なことに、アメリカの遠く離れた両サイドでレースをしていながら、フェリックスは向い風2.6m、ミラーは向い風2.5mと、ほとんど同じ条件だった。

フェリックスは、キャンディス・ヒル、ティアナ・バートレッタと組んで大会最終種目の3×100mリレーに2つ目の圧倒的勝利を挙げるために、トラックに戻って来た。3人のタイムは32秒25で、チューリッヒのスイス・チーム32秒50、パーペンダールのオランダ軍団32秒94を上回った。
「楽しかったわ」と、フェリックスは言う。
「お客さんのいる中で競技できる日が、待ちきれないわ」

対照的に、男子100ヤードは今大会で唯一、同一会場での直接対戦となり、フランスのジミー・ヴィコー、カナダのアンドレ・ド・グラス、110mHのオリンピック王者オマー・マクレオドがブレイデントンのトラックに集結した。向い風3.4m。前半は3者ほぼ互角に見えたが、中央レーンのド・グラスとインレーンのヴィコーが抜け出した。ド・グラスが0.04秒の僅差でヴィコーに先着し、9秒68。マクレオドは9秒87で離れた3着に終わった。

◇モリーン、復活の勝利
女子300mHでは、ジョーゲイン・モリーンが今までにない遅い時間のコールを受けたことで、それがむしろ、39秒08のタイムで感動的な勝ち星を挙げるのに幸いしたのかもしれない。
「自分に言い聞かせたの。私にはもう後がないし、こんな機会はもうないんだって。当然よね」
と、モリーンは言う。脚の故障で1年半もの間、競技から遠ざかっていたのだ。号砲が鳴るや、彼女がその言葉を自身に言い聞かせ続けているのは明らかだった。
最初のハードルで波に乗り、次からの3台をゆったりと乗り越えると、そこからゴールまでは一気呵成だった。
「練習と同じようにレースに行く、それを心掛けただけ。でも、すごく不安だった」
そう彼女は認めた。2012年ロンドン・オリンピック5位入賞のモリーンは、現世界チャンピオンにして世界記録保持者のダリラ・ムハンマドに代わって、今週初めに出場が決まったばかりだった。
チューリッヒのスタジアムを走ったレア・シュプルンゲルが39秒25で第2位、雨天・低温に見舞われたオランダのパーペンダールで走ったチェコのズザナ・ヘイノヴァは40秒97に終わった。


◇ライルス、スタートラインの間違いに泣く

一方で、ノア・ライルズは200mレースで圧倒的と見える走りを見せ、タイマーが幻の世界記録18秒90で止まったのもむべなるかな、と思わせたのだが、それはやがて大きな落胆に変わった。
後になって判明したところでは、ライルズは誤ったレーンでスタートに就き、走った距離は185メートル・ジャストだったのだ。この不幸なトラブルで彼は1位から3位に降格となり、勝利の栄光と賞金の1万USドルは、チューリッヒで20秒65を記録したクリストフ・ルメートルに渡ることになった。パーペンダールで20秒81だったチュランディ・マルティナが2位となった。

◇ピチャルド、三段跳対決を制す
三段跳では、リスボンのピットに立ったペドロ・パブロ・ピチャルドが2回目に跳んだ17m40(+2.3)で制した。世界選手権とオリンピックのチャンピオン、クリスチャン・テイラーはブレイデントンで序盤伸び悩み、6回目にようやく17m27(+4.2)を跳び逆転の2位、3位になったのはウォルナットで2回目17m04を跳んだオマー・クラドックだった。

男子棒高跳は、サム・ケンドリクスが5m81を1回でクリアして快勝した。2度の世界王座に君臨したケンドリクスの戦地はブレイデントン。この日は好調で、5m36、46、56、66といずれも一発クリア。次の5m76では、風の状態が変わったのが災いして、3回目での成功だった。
スウェーデンのカールスタッドに登場したピョートル・リゼクが5m66で2位。ヴァレンティン・ラヴィレニはNM。

女子棒高跳は、やはりブレイデントンで試技を行ったサンディ・モリスが、4m66で制した。スウェーデンのアンジェリカ・ベングトソンがカールスタッドで4m46を跳び2位。ウォルナットに登場したカテリナ・ステファニディは、男子のV.ラヴィレニと同様記録なしに終わった。

(ボブ・ラムザック:記)

開幕から好記録連発!~DLドーハ大会


2018年のIAAFダイヤモンドリーグ(DL)がいよいよ開幕、オリンピックも世界選手権もない中間年に世界の陸上界はどう動くか、注目のシリーズがスタートしました。

まず、女子円盤投の女帝、サンドラ・ペルコヴィッチ(CRO)がPBにあと3㎝と迫る71m38の大投擲で相変わらずの無敵ぶりを発揮すると、男子やり投では昨年来しのぎを削るトマス・レーラーとヨハネス・フェテル、さらにはアンドレアス・ホフマンを加えたドイツ勢3人で90mスローの競演。
ここ2年間、クリスチャン・テイラー(USA)の独擅場が続いてきた男子三段跳では、ペドロ・ピチャルド(CUB)が 久々に18mラインを脅かす大ジャンプを繰り出し、すぐさまテイラーもこれに迫って3年前の開幕戦を思い出させるハイレベルなマッチレースを展開。

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 400mHのリーダーに躍り出た22歳のサンバ

トラックでは、400mHの新星アブデルラーマン・サンバ(QAT)が47秒57のカタール新記録でカーロン・クレメントやバーショーン・ジャクソン(ともにUSA)らの旧勢力をぶっちぎり、地元の大喝采を浴びました。

女子100mには、リオ2冠のエレイン・トンプソン(JAM)に世界選手権200m連覇のダフネ・スキッパーズ(NDL)、今季室内シーズンから好調のマリー・ジョゼ・タルーにミリエル・アウレ(ともにCIV)、LJとの二刀流ブレッシング・オカグバレ(NGR)と役者が揃いました。レースはタルーが中盤から抜け出し、10秒85(+1.5)はこれまたPBにして今季世界最高。トンプソンは3着ながら10秒93とまずまずながら、スキッパーズはいいところなく、今季この種目は今回不参加のアメリカ勢を絡めて、大混戦となりそうです。


「ポスト・ボルト」が注目された男子200mでは、2年前のU-20世界選手権100mチャンピオンのノア・ライルズ(USA)が19秒83(+1.3)のPBで快勝、調子の上がらないラミル・グリエフ(TUR)やアンドレ・ドグラス(CAN)を置き去りにしました。



好記録にはなりませんでしたがレースとして面白かったのは女子の100mHです。

一昨年の世界新記録と無敵状態から昨年は今一つパッとしなかったケニ・ハリソンをはじめ、アメリカのハードル・スターがズラリと勢ぞろい。中でも注目は、ドーピングに関する規則違反で昨シーズン出場停止を食らっていたリオ女王のブライアナ・マクニール(旧姓:ローリンズ)。復帰するや否や12秒43のWLを叩き出していましたが、終盤ハードリングを乱してハリソンに差されてしまいました。
それにしても、WRホルダーと五輪女王の、ハードリング・フォームも好対照な二人の対決は、さらには世界女王サリー・ピアソン(AUS)も交えて何度も見たいものです。

さて、DLがCS放送で全戦生中継されるようになって数年、毎年チーム(スポーツ・メーカー)のユニフォームがどう変わるのかを見るのが、開幕戦のお楽しみです。
圧倒的な選手数を誇るNIKE軍団は、今季は渋い深緑系。昨年のロンドン世界選手権チャンピオンだけは、ロゴ以外は純白で、ひときわ目立ちます。
そんなチャンピオン・ユニの選手たちの中で、浮かない表情が何度も画面に映し出されたのが女子棒高跳のカテリナ・ステファニディ(GRE)。
昨季無敗で19連勝を続けてきた堅実無比のボウルターが、どうも助走を狂わせている様子で、身体が上がらない跳躍が続きました。3月の室内世界選手権に続いてライバルのサンディ・モリス(USA)と競ることもなく完敗、久々に復活してきた同国の先輩にして2015年のDLチャンピオン、ニコレッタ・キリアポウロウにも上回られ、5位に終ったのは少々深刻です。
ま、私的にはヒイキのモリスが勝って、万々歳なんですけどね…。
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PBとなる5m01に失敗して余裕の苦笑いのモリスと、片隅で黄昏るステファニディ

漸13種目中種目で今季世界最高記録が誕生した今大会のクライマックスを演じたのは、地元のスーパースター、ムタズ・エッサ・バルシム(QAT)。
例によって駆け引きなしに、バーがかけられて順番が回ってくるからにはパスすることなく次々とクリアしていく、その段階から一人異次元の高さを空中遊泳する圧巻のパフォーマンスです。最後は食い下がったエディン・ガザル(SYR)を振り切ると一気に2m40に上げ、これを一発でクリアすると、マットに直立しながらビブを引きちぎるお得意のガッツポーズを決めて見せました。
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昨年まで5年連続で達成してきた2m40超えを第1戦で早くも達成、かつてのライバルたちが次々と凋落していく中で、今季はバルシムの一人劇場となりそうな雰囲気です。

なお、今季DLは昨季同様、第13戦までの順位ポイントの累計で、上位8名(種目により12名)が第14戦・15戦に振り分けられる各種目ファイナルへの出場権を獲得、そこでの勝者がシリーズ・チャンピオンとなる方式で行われます。
以下に、ドーハ大会の3位までのリザルト(DL対象種目のみ)を掲載しておきます。

<男子>
◇200m(+1.3)
 ① 19"83 ノア・ライルズ USA ※MR/PB
 ② 19"99 ジェリーム・リチャーズ TTO
 ③ 20"11 ラミル・グリエフ TUR

◇400m
 ① 43"87 スティーヴン・ガーディナー BAH ※WL/MR/NR
 ② 44"50 アブダレル・ハロウン QAT
 ③ 44"92 アイザック・マクワラ BOT

◇800m
 ① 1'45"21 エマニュエル・コリル KEN
 ② 1'45"60 エリジャ・マナンゴイ KEN
 ③ 1'46"51 ニコラス・キプコエチ KEN

◇400mH
 ① 47"57 アブデルラーマン・サンバ QAT ※WL/DLR/MR/NR
 ② 49"08 バーショーン・ジャクソン USA
 ③ 49"46 カイロン・マクマスター IVB

◇走高跳
 ① 2m40 ムタズ・エッサ・バルシム QAT ※WL
 ② 2m33 メイド・エディン・ガザル SYR
 ③ 2m30 ドナルド・トーマス BAH

◇三段跳
 ① 17m95 ペドロ・パブロ・ピチャルド CUB ※WL
 ② 17m81 クリスチャン・テイラー USA
 ③ 17m21 アレクシス・コペリョ AZE

◇やり投
 ① 91m78 トマス・レーラー GER
 ② 91m56 ヨハネス・フェテル GER
 ③ 90m08 アンドレアス・ホフマン GER

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<女子>

◇100m(+1.5)
 ① 10"85 マリー・ジョゼ・タルー CIV ※WL/PB
 ② 10"90 ブレッシング・オカグバレ NGR
 ③ 10"93 エレイン・トンプソン JAM

◇1500m
 ① 3'59"92 キャスター・セメンヤ RSA ※WL/NR
 ② 4'00"99 ネリ・ジェプコスゲイ KEN ※PB
 ③ 4'01"41 ハビタム・アレム ETH

◇3000m(5000mカテゴリ)
 ① 8'29"05 カロリン・キプキルイ KEN ※WL/PB
 ② 8'29"09 アグネス・ティロップ KEN ※PB
 ③ 8'30"51 ハイヴィン・キエン KEN ※PB

◇100mH(+0.5)
 ① 12"53 ケンドラ・ハリソン USA
 ② 12"58 ブライアナ・マクニール USA
 ③ 12"75 シャリカ・ネルビス USA

◇棒高跳
 ① 4m84 サンディ・モリス USA ※MR
 ② 4m64 ホーリー・ブラッドショー GBR
 ③ 4m64 ケイティ・ナジョッテ USA

◇円盤投
 ① 71m38 サンドラ・ペルコヴィッチ CRO ※WL/DLR/MR
 ② 66m82 ヤイメ・ペレス CUB
 ③ 63n80 デニア・カバジェロ CUB

ロンドン世界選手権展望 ④ ~頂上決戦を制するのは?


このシリーズを書くにあたり、定期購読している陸上雑誌なども参考にしているのですが、専門誌は毎月14日発売のため情報がせいぜい7月初旬止まりで、少し現状からずれている展望があるようです。その分、IAAFのHPなどからできるだけ最新の情報を取り込んでお送りしようと思っています。
さて今回は、2強あるいは3強と呼ばれるライバルによるハイレベルな優勝争いが期待される、勝負・記録ともに楽しみな種目についてご紹介しましょう。

◆ショーナvsアリソン/リオの再戦は執念の戦い
RIO022

「ダイビング・フォア・ゴールド」による決着が記憶に新しい、リオ五輪の女子400m。1着ショーナ・ミラー(現姓ミラー‐ウィボ=BAH)49秒44、2着アリソン・フェリックス(USA)49秒51。
この種目の第一人者としての地位を着々と築きつつあった新鋭ミラーが唯一人、前年の北京世界選手権決勝、リオの準決勝と先着を許していたのが、フェリックスでした。戦前の予想では日の出の勢いのミラーに分があるという見方が優勢だったにも関わらず、当人とすれば女子スプリント界に長く君臨するレジェンドの存在は、底知れぬ脅威となっていたに違いありません。現実に途中までは圧勝かと思われたレースの最後に忍び寄ってきたレジェンドの影に、追い詰められた末の乾坤一擲が、あのダイビング・フィニッシュでした。

私は、年齢(1985年11月生まれ)的なことや繰り返される故障との闘いなどから、アリソンはリオのあの400m、そして波乱と歓喜に彩られたリレー2種目を花道にするのではないか、と勝手に想像していました。けれども、そうはなっていません。
全米選手権では100m決勝最下位、200m決勝DNSといいところがありませんでしたが、北京大会の優勝によって出場権を持つ、今や「本業」となった400mでは、今季2レース目となったDLロンドンで49秒67と、あっさり今季ランク1位に躍り出ました。

一方のミラー‐ウィボは、5月から7月にかけて3戦して49秒77、86、80とまったく波のない順調なプロセス。またDLユージーンでは200mに出場して21秒91(+1.5)。このレースはトリ・ボウイ(USA)が21秒77のWLで優勝し、女王エレイン・トンプソン(JAM)が3着(21秒98)と敗れたもので、今季ベスト3を独占する好レースの一角を占めたわけです。
この一戦で200mでも優勝候補の一人に挙がってきたミラー‐ウィボはしかし、日程の問題(男子同様400mシリーズの途中に200m予選が組まれている)から400一本に賭けてくる公算大です。

アリソンよりも8歳半年下(1994年4月生まれ)のミラー‐ウィボには勢いと十分な伸びしろがあり、アリソンにはレジェンドと形容するにふさわしい、測り知れない底力がある。
いつかはミラー‐ウィボが凌駕することになるとはいえ、リオでの0.07秒差、というかダイビングで稼ぎ出したトルソー半分の差は、まだまだ決定的な二人の実力差とは考えられません。
今度こそ、目の上のタンコブたるアリソンを明確に破りたいショーナ・ミラー‐ウィボ。対して史上最多9個の金メダルに飽き足らず「まだまだやるわよ」の闘志漲るアリソン・フェリックス。今回、勝利への執念はどちらが優るのか?…
割って入るとすれば、全米を49秒72で制したクォネラ・ヘイズでしょうが、ショーナとアリソンにはサーニャ・リチャーズ・ロス(USA)が2009年に記録して以来絶えて久しい48秒台でのスーパー・バトルを期待しています。

◆ステファニディvsモリス/精密機械と一発屋の争い
女子棒高跳は、昨シーズンから勢力図が一変してしまいました。
長く続いたエレーナ・イシンバエワ(RUS)の支配が事実上終焉し、その好敵手を務め続けたジェニファー・サー(USA)にもかつての力強さはありません。
昨シーズン、前年年間女王となった同国のニコレッタ・キリアポウロウに代わってDL戦線を独走したのが、エカテリニ・ステファニディ(GRE)でした。シーズン序盤から試合ごとに僅かずつの自己新記録を積み重ね、リオ五輪前にそれは4m86にまで到達。驚くべきは、ほぼすべての試合で4m70以上、シーズン中盤からは4m80は外さないという、無類の安定感でした。

五輪直前、すでに室内記録4m95を持っていたサンディ・モリス(USA)が屋外でも4m93を跳んで、俄かにサーに代わるアメリカのエースとしてリオに乗り込むと、ステファニディと激しくマッチアップ。4m85の同記録ながらやはり「安定感」のステファニディに一日の長があって、無効試技数の差で1位ステファニディ、2位モリスという結果になりました。
ところがDL最終戦のブリュッセル大会、すでに年間女王を決め有終の美を飾ろうとしていたステファニディの目の前で、モリスは女子・屋外ではイシンバエワしか到達していなかった5mヴォールターの高みを征服、さらにバーを“禁断”の5m07(成功なら世界新記録)にまで上げ、それが決して不可能なトライではないところを見せたのです。

今季もステファニディの安定感は抜群で、DLはランキングトップでこそありませんが3戦3勝。対するモリスは2位、6位、4位と低迷。ステファニディには室内を含め4連敗です。
正確無比な安定性を誇るステファニディは、「本番」でも確実に4m80から85、あるいは自己記録を僅かに更新して4m90あたりを跳んでくるかもしれません。ただし、ローマで5m07にトライした跳躍を見る限り、まだ5m以上を跳ぶ準備はまったく整っていないと思われます。
もちろん、翳りが見えるとはいっても、サーやDLトップのヤニスレイ・シルバ(CUB)らの旧世代も侮りがたい実力は残していますし、最近不調ながらリオ銅メダルの実績を持つエリザ・マッカートニー(NZL)などの新興勢力も控えていますが、ステファニディの牙城を崩すには4m90以上を跳ぶ必要があります。
その可能性を濃厚に持っているのが、モリスです。5mを跳ぶ力は証明済みながら、4m60、70あたりのバーを落とす可能性も大いにあり、金もあれば表彰台を逃す可能性も少なくない、そこが彼女の魅力とも言えます。ブリュッセルの時のように勢いに乗ってしまえば、誰にも止められないでしょう。
正確無比か、一発の魅力か、どちらを応援しますか?私はもちろんモリスです。なぜなら…美人だから!
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(https://www.iaaf.org/news/preview/iaaf-world-indoor-tour-dusseldorf-preview)

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◆リース・バートレッタ・スパノヴィッチ/女子LJは三つ巴
女子走幅跳でも、リオ五輪で繰り広げられた激闘の再現が見られそうです。
3度の世界王座とロンドン五輪を制したブリトニー・リース(USA)、前回北京でその座を奪いリオでも守り切ったティアナ・バートレッタ(USA)、そして世界大会の金メダルは持っていないものの常にハイレベルで安定した成績を残し続けるイヴァナ・スパノヴィッチ(SRB)。

昨季は世界記録に迫る7m31(+1.7)、今季も7m13(+2.0)と、強烈な爆発力を誇るのがリース。ただ大試合ではしばしば取りこぼしもあって、前回大会はなんと予選敗退の憂き目に遭っています。
これに対してここ2年、本番での勝負強さを発揮してきたのが、バートレッタ。100mとのダブル出場は叶いませんでしたが、今回も400mリレーのメンバーには入ってくるであろう、そのスピードが最大の武器です。
スパノヴィッチは棒高跳のステファニディ同様、正確無比な助走で測ったように6m80~90台の安定した記録を出してくる精密機械タイプ。とはいえリオでは前2者のせめぎ合い(7m17と7m15)には及ばなかったものの、自身初の7m超えとなる7m08(+0.6)を記録。五輪後にはさらに7m10(+0.3)と伸ばし、今年は室内で7m24と、ビッグジャンプの潜在能力も十分にあることを証明して見せました。

それぞれに個性の異なる3選手による、7mオーバーの空中戦が見られるのが楽しみ。ちょっと心配なのは、スパノヴィッチの屋外シーズンインが7月に入ってからと遅れ、2戦目のDLロンドン(6m88で2位)で少し脚を気にする仕草を見せていたことです。棒高跳とは違って、私はこの種目では“精密機械”を応援しています。

◆イバルゲンvsロハス/絶対女王の牙城崩壊か?
ここ数年、女子三段跳はカテリン・イバルゲン(COL)の独り舞台が続いてきました。30以上積み重ねた連勝記録はいったんベテランのオルガ・リパコワ(KAZ)にストップされたものの、リオでは前評判どおりの圧勝。1年前は間違いなく「鉄板」のジャンルに位置付けられる存在でした。
そのリオ直前に突然15mオーバーを果たし、本番でも銀メダルに食い込んできたのが20歳(当時)の新鋭ユリマール・ロハス(VEN)。今季も6月初旬に14m96(-0.3)でWLに躍り出ると、DLローマでは常勝イバルゲンに土をつけ、続くモナコでも2センチ差に食い下がる戦いを繰り広げました。

なんといってもロハスの強みは、192㎝という長身を躍らせる雄大なジャンプ。粗削りながら、イバルゲンにとっての見果てぬ夢である世界記録すら視野に入る、途轍もなく豊かな素質です。
片やイバルゲンは、モナコでの大逆転を見ても、歴戦の勝利で積み重ねてきた勝負強さに衰えはありません。ただ、今季はそのモナコの14m86(-0.5)がSBで、それまでは14m中盤の記録がほとんど。パフォーマンス・レベルが幾分下降気味なのは否めないところです。
典型的な「新旧対決」はまた、コロンビアとヴェネズエラという陸上界ではあまりお馴染みでない南米の小国を代表する戦いでもあります。興味深く見守りたいと思います。

◆レーラーvsフェテル/90超えのドイツ勢決戦
ここまで女子、特に跳躍種目に偏りがちだった「注目の対決」ですが、男子で一つ挙げるとするならば、やり投ということになります。
リオ五輪覇者のトーマス・レーラーが93m90の大投擲でいきなり度肝を抜いたのが、DL緒戦のドーハ大会。以後どの試合でも90mラインを見据えた高止まりの成績を続け、この紛れの多い種目も今年はレーラーで決まりかな、と思われてきた矢先、7月に入って同じドイツのヨハネス・フェテルが94m44を投げ、レーラーから歴代2位の座を奪取しました。
今季両者の対戦成績はレーラーの5勝3敗。ともに85mを下回ったゲームはありません。
フェテルの90mスローは7月11日ルツェルンの1回だけですが、この日フェテルはなんと4回も90mラインの向こう側にやりを届かせており、レーラーの89m45を圧倒しました。
とはいうものの、他の対戦と同様に、「一発」の威力はフェテルでも、安定したハイ・パフォーマンスはレーラーという図式。順当ならばレーラー、ひっくり返るとすればフェテルの出来次第、ということになるでしょうが、そこはこの種目ならではのどんでん返しがいつ起こるか、分かりません。

やり投のイメージといえば、フィンランドなど北欧諸国を中心に、侮れない力の東欧諸国、そして近年ではケニア、トリニダードトバコ、エジプト、インドといった「えっ?」という国からの猛者の出現、そこに日本勢も何とか食い込みたいというような勢力図でしたが、ここへ来てドイツ勢が完全に支配権を握った感じです。ドイツの3番手には誰が出るのか分かりませんが、ラルス・ハーマン、ユリアン・ヴェーバー、ベルナルド・ザイフェルトなど、まだまだ実力者が続きます。
食い込むとすれば、DL覇者のヤクブ・ヴァドレイヒ(CZE)、ランク3位と復調気配のテロ・ピトカマキ(FIN)、5年前のロンドンであっと言わせたケショーン・ウォルコット(TTO)まででしょうか。
日本勢不在が残念ですが、楽しみな空中戦です。


あっ!本記事をアップした直後に入った情報です。
新井涼平選手(スズキ浜松AC)の追加出場が決まりました。私が予想したとおり、女子の斉藤真理菜選手(国士舘大)ともども繰り上がりによるインヴィテーションです。
女子100mHの木村文子(エディオン)、柴村仁美(東邦銀行)両美人選手も!こちらは予想外。
しっかり頑張ってもらいましょう。


JTレーラーがビッグスロー!~DL第1戦ドーハ


IAAFダイヤモンドリーグ開幕戦・ドーハ大会が行われ、リオ五輪の金メダリスト9人を含むトップ・アスリートが4カ月間にわたるツアー・シリーズのオープニングを彩りました。
今季はツアー方式が大きく変更になりました。従来各ゲームの順位ポイントの累計でチャンピオンが決まっていたのが、第12戦までの累計ポイント上位者(トラック8名、フィールド12名)が最終戦(第13戦と14戦に分けて実施)に進出し、そこでの勝者がツアー・チャンピオンになる、というものです。
(昨日、「全15戦」と書きましたが、今季は例年2日間開催で2戦扱いだったロンドンが1日のみとなったため、「全14戦」となります。開催地は昨季と変わらず)
また付与されるポイントも、1位の8点から8位の1点まで1点刻みとなり、昨季はトップ4で行っていたフィールド種目の6回試技が、通常の大会同様トップ8になりました。
主に参加選手の契約メーカーで色分けされるユニフォームもガラリと変わり、また記録などの画面表示方式も工夫されて、新鮮な気分で中継を眺めることができました。

好況を呈したのは男子やり投。
ドイツ三羽ガラスの一人、ヨハネス・フェテルが3投目に89m68の大投擲。PBを11㎝更新して、普通なら「今日は決まり!」の局面です。
ところが昨季のツアー・チャンピオン、ヤクブ・ヴァドレイヒ(CZE)が4投目に87m91で「このまま終わると思うなよ」とニラミを効かせた直後、今度は金メダリスト、トマス・レーラーが渾身の一発。投げた瞬間に解説の石塚浩さんが「あっ、行った!」とつぶやいたほどの会心のやりは、計測員の頭上も90mラインも遥かに超えて、正面映像を撮影するカメラの直前で地面に突き刺さりました。(カメラマン、微動だにせず)
世界歴代2位の93m90!…真夜中なのに思わず「ウォッ!」と声をあげてしまいました。
昨年に続いてDL参戦の新井涼平(スズキ浜松AC)は、3回とも75mを越せない残念な投擲で、トップ8にも残れず10人中9位。ノーポイントに終わりました。めげずにまたチャレンジしてください!
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女子800mにサプライズ・エントリーしたゲンゼベ・ディババ(ETH)でしたが、さすがに見せ場を作ることもできず5着。勝ったセメンヤ(RSA)、2着のマーガレット・ワンブイ(KEN)がともに“巨漢”女性なだけに比べるのは気の毒ですが、この種目の中に入ると線の細さが目立ってしまいます。それでも集団の軋轢を避けて前に出て行った序盤のスピード、そして2分を切ったタイムは、5000mを走る上では自信になるのではないでしょうか?

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女子200mの「オンナの熱きバトル」を制したのは、エレイン・トンプソン(JAM)。-2.3mで22秒19は、シーズン初めとしては好仕上がりと言っていいでしょう。対するダフネ・スキッパーズ(NED)はせっかくスタートが良かったのに肝心のコーナー出口でもたつき、本領の差し脚も不発。石塚さんも言ってましたが、少しぽちゃっとした感じだったので、仕上げはまだまだこれから、ということならいいんですが。

それにしても、いくらお下げに結っているとはいえスタートの構えで地面に着いちゃうほどに髪を長く伸ばしたトンプソンといい、100mHでスタートに失敗しつつ平凡な記録ながら他を寄せ付けなかったケンドラ・ハリソンのキノコ頭といい、どう見ても走るのに邪魔だろうという気がするんですけど、いかがなもんなんでしょうね?
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男子100mは、アカニ・シンビネ(RSA)が9秒99(-1.2)で優勝。南半球の国だけにすでに自国のトップシーズンを経てきているとはいえ、相当強いです。
ここ数年、抜群の安定感を誇っていたジャスティン・ガトリンは珍しく4位と大敗。好調時に見せる「檻開き」のアクションがなかったので、不調を自覚していたのでしょう。アンドレ・ドグラス(CAN)もいいところなく5着。この両者は『ワールド・リレーズ』にも出ていたので、特に調整が不順ということはないと思いますが。

男子400mH(ポイント対象外)を圧勝した地元カタールの21歳、アブデルラーマン・サンバも強力な新興勢力です。48秒31のWLが伊達ではないことを証明する48秒44。2位クレメントが49秒40ですから他の選手が軒並み不甲斐なさすぎたとも言えますが、バックストレートでの加速力は圧巻でした。昨季全般的にやや精彩を欠いたこの種目では、女子のダリラ・ムハマドのようにいきなり頭一つ抜け出す存在となるかもしれません。

女子棒高跳はエカテリニ・ステファニディ(GRE)が相変わらず定位置の4m80を綺麗にクリアして優勝。私の“I LOVE”サンディ・モリス(USA)は、金髪にピンクのメッシュを入れてますますビューティフル…成功時にはかなり高い所を跳んでいますがまだ助走にムラがあって、4m80、85で3回失敗。この高さの勝負になるとやっぱりステファニディですね。今季は着実に、自己記録を数センチ伸ばしてくるような気がします。
がっ!5mの勝負になれば、モリスのもんだぜ!
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2017DLがスタート!


header2017-v2

時系列的にはこっちを先に展望すべきでした。
いよいよ今季のIAAFダイヤモンドリーグ全15戦が、カタール~ドーハのスハイム・ビン・ハマド・スタジアムで開幕します。
まあ展望と言いましても、4月23日の投稿で結構なところまで書いちゃってますんで、あとは見てのお楽しみ、ということで、いつものように実施スケジュールと主な出場選手をご紹介しておきます。

(スケジュールは日本時間で紹介。太字はリオ五輪優勝者)

24:00 女子砲丸投(M.カーター,A.マールトン,Y.レオンチュク)

24:15 女子棒高跳(E.ステファニディ,S.モリス,Y.シルバ,N.ビュヒラー)

24:45 男子走高跳(M.E.バルシム,A.プロツェンコ,R.グラバーツ,D.トーマス)

25:03 男子400m(L.メリット,T.マッケイ,S.ガーディナー,K.シバンダ)

25:05 男子やり投(T.レーラー,J.イェゴ,J.ヴァドレイヒ,新井涼平)

25:14 男子1500m(E.マナンゴイ,S.キプラガト,R.ビウォット,B.ブランケンシップ)

25:25 女子800m(C.セメンヤ,E.J.スム,M.N.ワンブイ,G.ディババ)

25:35 女子200m(E.トンプソン,D.スキッパーズ,B.オカグバレ,V.キャンベル-ブラウン)

25:45 男子三段跳(C.テイラー,A.コペイヨ,ドン・ビン)

25:50 女子100mH(K.ハリソン,N.アリ,S.ネルヴィス,S.オフィリ)

26:05 女子3000mSC(R.ジェベト,H.キエン,E.コバーン,H.グリビ)

26:25 男子100m(J.ガトリン,A.デグラス,A.パウエル,K.コリンズ)

26:35 男子400mH※nonDL(K.クレメント,N.ベット,LJ.ヴァンジル)

26:45 男子3000m(Y.ケジェルチャ,M.エドリス,T.ロンゴシワ,C.キプルト



まずは女子棒高跳。ステファニディ(GRE)とモリス(USA)の頂上決戦が早くも見られます。モリスぐぁんばれ!

同じく頂上決戦は女子200m。トンプソン(JAM)とスキッパーズ(NED)のライバル関係は北京世界選手権がスキッパーズ、リオ五輪がトンプソン。今年はどっちに傾くでしょうか??

男子やり投には新井涼平が参戦。昨年日本人最多ポイント獲得者です。こちらの種目も、五輪王者レーラー(GER)に銀の剛腕イェゴ(KEN)、DL覇者のヴェドレイヒと揃いました。リストは最大4名にしようと思ったので書き切れませんでしたが、テロ・ピトカマキ(FIN)やヨハネス・フェテル(GER)もエントリー。新井はぜひともトップ4を!

驚いたのは、ゲンゼベ・ディババ(ETH)の800m参戦です。IAAFの情報では公式記録を持っていませんので、この種目は初レースということなのでしょう。日本ではあり得ないような短い距離への転身ですけど、むかし、モロッコの名ランナー、サイド・アウィタが5000mから800mにシフトしていったケースを思い出します。今年は1500mを中心とした参戦になるということでしょうか?セメンヤには勝てないまでも、最後の直線まで勝負出来たら凄いですよ。

同じように、いつもは障害物つきで走っている3000mのフラット・レースにエントリーしているのがコンセスラス・キプルト(KEN)。こちらは、本業がプログラムにないのでこっちでいいやという感じですかね。

ボルトの最終章となる今季の男子100mは、新興勢力の筆頭アンドレ・デグラス(CAN)にとってのチャンスです。さすがに上がり目の期待できないガトリン、パウエルを相手の試金石がこのレースとなるでしょう。

あとはケンドラ・ハリソン!今季はまだ12秒56がSBとゆったりめの立ち上がりですが、ここで流れに乗れるか?

放送は明日の深夜24時45分から日テレG+で、25時頃から現地映像の生中継に入るはずです。



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