豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

ゲンゼベ・ディババ

ロンドン世界選手権観戦記 ④ ~今大会のベストレース候補!


女子1500m決勝は、その顔ぶれといいスリリングなレース内容といい、大会前半を通じてのベスト・レースとも言える素晴らしいものでした。

世界記録保持者&ディフェンディング・チャンピオンのゲンゼベ・ディババ(ETH)。
オリンピック・チャンピオンのフェイス・キピエゴン(KEN)。
2016DLツアー・チャンピオンにして地元のヒロイン、ローラ・ミュアー(GBR)。
今季無敗のWL、シファン・ハッサン(TUR)。

女子1500mは、2015年からの2年間で、ここに挙げた順に主役の座が入れ替わってきている種目なんですね。
2015年7月、主戦場としていた5000mから突然矛先を向けたDLモナコ大会で、ゲンゼベは22年間難攻不落を誇ったチュ・ユンシャ(CHN)の世界記録を更新、その勢いのままに北京世界選手権も征服。
しかしオリンピック・シーズンになるとゲンゼベは故障で出遅れ、ほぼぶっつけに近い形で臨んだリオの決勝では残り2周でロングスパートの奇襲を試みるも、冷静に距離を測っていたキピエゴンの末脚に屈します。
2016年のDL戦線は、ゲンゼベのいない間に着々と勝利を重ねたキピエゴンが優位に立ち、最終戦でポイントを上げさえすればツアー優勝という状況にありながら、その最終戦は伸びてくるはずの直線でずるずると後退しノーポイント。代わって、このレースで2着に入ったミュアーが大逆転でツアー・チャンピオンを獲得しました。
室内シーズンもミュアーの好調は続いていたのですが、シーズンインしてみると無敵ぶりを発揮したのがハッサンです。ゲンゼベとミュアーはやや調整不足と見える中、パリでキピエゴンとの直接対決も制したハッサンが、今回の中心選手の位置に躍り出てきました。

加えて、
800mの絶対女王、キャスター・セメンヤ(RSA)。
全米チャンピオンで2011年テグ大会優勝、リオ銅メダリストのジェニー・シンプソン(USA)。
セメンヤの1500は未知数ながら、ペースメーカーのいない世界選手権のレースならば、終盤での猛スピードを存分に生かせる展開となることが予想され、脅威の存在です。
また、レース巧者としては随一の強みを持つシンプソンは、テグの再現を図るには相手が強くなっており、こちらもハイペースの展開には少々苦しいものの、4分前後の勝負ならば自在に動いてくる勝負強さは侮れません。

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レースは、この「6強」が鐘の音を聞くとともに猛烈なデッドヒートを展開…いや、一人セメンヤだけは直線勝負を決め込んでいるのか、後方を不気味に追いかけます。
実は有力どころの中には、ゲンゼベ、ミュアー、ハッサンと、いずれもロングスパートを武器とするタイプが多いんですね。それも、それぞれタイプの違うロングスパートです。
ミュアーとゲンゼベは、スタートから速いペースで押し切りたいタイプで、特にゴール前の切れ味がないミュアーとしては、主導権をとって早めに他を引き離しにかかりたいところ。
ゲンゼベは、好調ならばスタートから他を寄せ付けない、またどこからでもスパートできる絶対的脚力がありますが、自身のコメント(状態は70%)のとおり、準決勝で本来の出来でないことを示してしまいました。
ハッサンは、序盤は後方待機で脚を温存して、ラスト1周にかかるところで一気に先頭を奪うタイプ。
言うなれば、「逃げ」「先行」「まくり」という三者三様ぶりです。
他の3人は言うなれば「差し」「追込」というタイプ。
キピエゴンもロングスパートできる柔軟なスピードを持ってはいますが、昨年のDL最終戦でミュアーのロングスパートを抑え込みにかかって失速した苦い経験がありますから、今回は直線勝負に賭けるはず。
シンプソンは、競輪で言うところの「マーク屋」ですね。「こいつだ!」という選手の背後にピッタリ貼り付いて、直線で逆転を図ります。その標的の見極めが常に秀逸。
セメンヤは、後方から爆発的なラストスパートを炸裂させたい追い込み作戦でしょう。

…とまあ、そんなことはレースの前に書けよ、という声が聞こえてきそうですが、すんません。そんなふうに予想しましたよ、ということではなくて、レースを見て振り返ってみると、そういうことだったな、という意味で書いてます。
で、そういう展開になりまして、ミュアーが逃げ、ハッサンがまくり、キピエゴンが差し、シンプソンがなだれ込み、セメンヤが追い込んだ、と。絶不調のゲンゼベも、勝負どころで先団を射程距離に捉える見せ場は作ってくれました。

まさに「名勝負」!舞台が整い役者が揃うと、素晴らしいアンサンブルが堪能できるという見本のような好レースでした。
意外なことに、この種目でケニアが金メダルを獲得したのは、初めてのことなんですね。

 
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JTレーラーがビッグスロー!~DL第1戦ドーハ


IAAFダイヤモンドリーグ開幕戦・ドーハ大会が行われ、リオ五輪の金メダリスト9人を含むトップ・アスリートが4カ月間にわたるツアー・シリーズのオープニングを彩りました。
今季はツアー方式が大きく変更になりました。従来各ゲームの順位ポイントの累計でチャンピオンが決まっていたのが、第12戦までの累計ポイント上位者(トラック8名、フィールド12名)が最終戦(第13戦と14戦に分けて実施)に進出し、そこでの勝者がツアー・チャンピオンになる、というものです。
(昨日、「全15戦」と書きましたが、今季は例年2日間開催で2戦扱いだったロンドンが1日のみとなったため、「全14戦」となります。開催地は昨季と変わらず)
また付与されるポイントも、1位の8点から8位の1点まで1点刻みとなり、昨季はトップ4で行っていたフィールド種目の6回試技が、通常の大会同様トップ8になりました。
主に参加選手の契約メーカーで色分けされるユニフォームもガラリと変わり、また記録などの画面表示方式も工夫されて、新鮮な気分で中継を眺めることができました。

好況を呈したのは男子やり投。
ドイツ三羽ガラスの一人、ヨハネス・フェテルが3投目に89m68の大投擲。PBを11㎝更新して、普通なら「今日は決まり!」の局面です。
ところが昨季のツアー・チャンピオン、ヤクブ・ヴァドレイヒ(CZE)が4投目に87m91で「このまま終わると思うなよ」とニラミを効かせた直後、今度は金メダリスト、トマス・レーラーが渾身の一発。投げた瞬間に解説の石塚浩さんが「あっ、行った!」とつぶやいたほどの会心のやりは、計測員の頭上も90mラインも遥かに超えて、正面映像を撮影するカメラの直前で地面に突き刺さりました。(カメラマン、微動だにせず)
世界歴代2位の93m90!…真夜中なのに思わず「ウォッ!」と声をあげてしまいました。
昨年に続いてDL参戦の新井涼平(スズキ浜松AC)は、3回とも75mを越せない残念な投擲で、トップ8にも残れず10人中9位。ノーポイントに終わりました。めげずにまたチャレンジしてください!
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女子800mにサプライズ・エントリーしたゲンゼベ・ディババ(ETH)でしたが、さすがに見せ場を作ることもできず5着。勝ったセメンヤ(RSA)、2着のマーガレット・ワンブイ(KEN)がともに“巨漢”女性なだけに比べるのは気の毒ですが、この種目の中に入ると線の細さが目立ってしまいます。それでも集団の軋轢を避けて前に出て行った序盤のスピード、そして2分を切ったタイムは、5000mを走る上では自信になるのではないでしょうか?

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女子200mの「オンナの熱きバトル」を制したのは、エレイン・トンプソン(JAM)。-2.3mで22秒19は、シーズン初めとしては好仕上がりと言っていいでしょう。対するダフネ・スキッパーズ(NED)はせっかくスタートが良かったのに肝心のコーナー出口でもたつき、本領の差し脚も不発。石塚さんも言ってましたが、少しぽちゃっとした感じだったので、仕上げはまだまだこれから、ということならいいんですが。

それにしても、いくらお下げに結っているとはいえスタートの構えで地面に着いちゃうほどに髪を長く伸ばしたトンプソンといい、100mHでスタートに失敗しつつ平凡な記録ながら他を寄せ付けなかったケンドラ・ハリソンのキノコ頭といい、どう見ても走るのに邪魔だろうという気がするんですけど、いかがなもんなんでしょうね?
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男子100mは、アカニ・シンビネ(RSA)が9秒99(-1.2)で優勝。南半球の国だけにすでに自国のトップシーズンを経てきているとはいえ、相当強いです。
ここ数年、抜群の安定感を誇っていたジャスティン・ガトリンは珍しく4位と大敗。好調時に見せる「檻開き」のアクションがなかったので、不調を自覚していたのでしょう。アンドレ・ドグラス(CAN)もいいところなく5着。この両者は『ワールド・リレーズ』にも出ていたので、特に調整が不順ということはないと思いますが。

男子400mH(ポイント対象外)を圧勝した地元カタールの21歳、アブデルラーマン・サンバも強力な新興勢力です。48秒31のWLが伊達ではないことを証明する48秒44。2位クレメントが49秒40ですから他の選手が軒並み不甲斐なさすぎたとも言えますが、バックストレートでの加速力は圧巻でした。昨季全般的にやや精彩を欠いたこの種目では、女子のダリラ・ムハマドのようにいきなり頭一つ抜け出す存在となるかもしれません。

女子棒高跳はエカテリニ・ステファニディ(GRE)が相変わらず定位置の4m80を綺麗にクリアして優勝。私の“I LOVE”サンディ・モリス(USA)は、金髪にピンクのメッシュを入れてますますビューティフル…成功時にはかなり高い所を跳んでいますがまだ助走にムラがあって、4m80、85で3回失敗。この高さの勝負になるとやっぱりステファニディですね。今季は着実に、自己記録を数センチ伸ばしてくるような気がします。
がっ!5mの勝負になれば、モリスのもんだぜ!
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2017DLがスタート!


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時系列的にはこっちを先に展望すべきでした。
いよいよ今季のIAAFダイヤモンドリーグ全15戦が、カタール~ドーハのスハイム・ビン・ハマド・スタジアムで開幕します。
まあ展望と言いましても、4月23日の投稿で結構なところまで書いちゃってますんで、あとは見てのお楽しみ、ということで、いつものように実施スケジュールと主な出場選手をご紹介しておきます。

(スケジュールは日本時間で紹介。太字はリオ五輪優勝者)

24:00 女子砲丸投(M.カーター,A.マールトン,Y.レオンチュク)

24:15 女子棒高跳(E.ステファニディ,S.モリス,Y.シルバ,N.ビュヒラー)

24:45 男子走高跳(M.E.バルシム,A.プロツェンコ,R.グラバーツ,D.トーマス)

25:03 男子400m(L.メリット,T.マッケイ,S.ガーディナー,K.シバンダ)

25:05 男子やり投(T.レーラー,J.イェゴ,J.ヴァドレイヒ,新井涼平)

25:14 男子1500m(E.マナンゴイ,S.キプラガト,R.ビウォット,B.ブランケンシップ)

25:25 女子800m(C.セメンヤ,E.J.スム,M.N.ワンブイ,G.ディババ)

25:35 女子200m(E.トンプソン,D.スキッパーズ,B.オカグバレ,V.キャンベル-ブラウン)

25:45 男子三段跳(C.テイラー,A.コペイヨ,ドン・ビン)

25:50 女子100mH(K.ハリソン,N.アリ,S.ネルヴィス,S.オフィリ)

26:05 女子3000mSC(R.ジェベト,H.キエン,E.コバーン,H.グリビ)

26:25 男子100m(J.ガトリン,A.デグラス,A.パウエル,K.コリンズ)

26:35 男子400mH※nonDL(K.クレメント,N.ベット,LJ.ヴァンジル)

26:45 男子3000m(Y.ケジェルチャ,M.エドリス,T.ロンゴシワ,C.キプルト



まずは女子棒高跳。ステファニディ(GRE)とモリス(USA)の頂上決戦が早くも見られます。モリスぐぁんばれ!

同じく頂上決戦は女子200m。トンプソン(JAM)とスキッパーズ(NED)のライバル関係は北京世界選手権がスキッパーズ、リオ五輪がトンプソン。今年はどっちに傾くでしょうか??

男子やり投には新井涼平が参戦。昨年日本人最多ポイント獲得者です。こちらの種目も、五輪王者レーラー(GER)に銀の剛腕イェゴ(KEN)、DL覇者のヴェドレイヒと揃いました。リストは最大4名にしようと思ったので書き切れませんでしたが、テロ・ピトカマキ(FIN)やヨハネス・フェテル(GER)もエントリー。新井はぜひともトップ4を!

驚いたのは、ゲンゼベ・ディババ(ETH)の800m参戦です。IAAFの情報では公式記録を持っていませんので、この種目は初レースということなのでしょう。日本ではあり得ないような短い距離への転身ですけど、むかし、モロッコの名ランナー、サイド・アウィタが5000mから800mにシフトしていったケースを思い出します。今年は1500mを中心とした参戦になるということでしょうか?セメンヤには勝てないまでも、最後の直線まで勝負出来たら凄いですよ。

同じように、いつもは障害物つきで走っている3000mのフラット・レースにエントリーしているのがコンセスラス・キプルト(KEN)。こちらは、本業がプログラムにないのでこっちでいいやという感じですかね。

ボルトの最終章となる今季の男子100mは、新興勢力の筆頭アンドレ・デグラス(CAN)にとってのチャンスです。さすがに上がり目の期待できないガトリン、パウエルを相手の試金石がこのレースとなるでしょう。

あとはケンドラ・ハリソン!今季はまだ12秒56がSBとゆったりめの立ち上がりですが、ここで流れに乗れるか?

放送は明日の深夜24時45分から日テレG+で、25時頃から現地映像の生中継に入るはずです。



“世界”を展望する…新世代「対決」が楽しみだ


オリンピックの翌年シーズンというのは、どの競技でも「新旧交代」が話題になるものです。
リオでの栄光や挫折そのものを機にシューズを壁に吊るす選手もいれば、もう1シーズンを花道に選び引退や転身を決めている選手も。前者の代表と言えば十種競技のアシュトン・イートン(USA)であり、後者は言わずと知れたウサイン・ボルト(JAM)やトラック撤退を明言しているモー・ファラー(GBR)が好例。
また、ビッグネームの中では“産休”を宣言している100m銅のシェリー‐アン・フレイザー‐プライス(JAM)、抜き打ちドーピング検査のための所在報告義務を怠ったために1年間資格停止となってしまった100mH金のブライアナ・ローリンズ(USA)、また五輪後の抜き打ち検査で違反が発覚したマラソン金のジェミマ・スムゴング(KEN…五輪成績には影響なし)など、引退こそしていないものの今季は活躍が見られない、というアスリートもいます。

そもそもリオ五輪の陸上競技には、大会3連覇の資格を有していた選手が5人(6種目)もおり、2種目でこれを達成したボルトを筆頭に、5人全員が出場して入賞を果たす(男子砲丸投のマイエフスキー以外の4人はメダル獲得)という、あまり記事にならなかったトピックがありました。3連覇を目指すというのは少なくとも8年以上世界の第一線で戦い続けているということで、これらの選手もまだまだ引退を表明したわけではないにしても、そろそろ一時代の変わり目を象徴する存在になりつつあることは、確かです。

一方で、昨年来急速に力をつけ、世界の陸上界でニューリーダーの役割を感じさせる選手たちがいます。私の情報収集力では、現時点でまったく無名の“超新星”を紹介するということは無理ですので、今回はこうした「ここ1年前後での上昇株」を何人かピックアップして、今季の世界選手権やDLでの活躍を展望してみましょう。

◆実現するのか、ハードル女王対決?
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昨シーズン最も輝いた陸上アスリートは、100mHのケンドラ・ハリソン(USA)。長距離のアルマズ・アヤナ(ETH)も甲乙つけがたい実績ながら、リオ・オリンピック出場を逃した悲劇の直後に劇的な世界新記録を達成したドラマ性がひときわ光っていたと思います。


5月28日のDL第4戦ユージーン大会『プレフォンテイン・クラシック』で行われた女子100mHのDL初戦。ズラリと顔を揃えたアメリカ勢の中で、この時点でDL未勝利、身長163㎝の小柄なK.ハリソンは決して目立つ存在ではありませんでした。それが、2着以下に大差をつける圧巻のハードリングで
初優勝。タイムは世界歴代2位の12秒24(+0.7)。4月にシーズンに入ってから12秒36、12秒56、12秒42と好記録を連発していたK.ハリソンが、ここしばらく混戦模様が続いていたこの種目のリーダーに躍り出た瞬間でした。

続く第6戦バーミンガム、第9戦ストックホルムでも圧勝を続けたK.ハリソンは、3枚の切符を巡る激戦が予想された全米選考会に“大本命”として乗り込みますが、快記録を出した同じオレゴンのトラックでまさかの6着敗退。しかしすぐに失意から立ち直ると目標を「DL総合優勝」に切り替え、その2週間後、ロンドンで行われた第10戦で12秒20(+0.3)をマーク、1988年以来28年間難攻不落を続けていたヨルダンカ・ドンコワ(BUL)の記録を破りました。

オリンピックに出場できなかった世界記録保持者として、結局DLではオスロ大会を欠場した以外は予選・ポイント対象外レースを含めて8戦全勝のツアー・チャンピオン。どのレースでも正確無比なハードリングで2着以下に大差をつけ、オリンピック・チャンピオンのブライアナ・ローリンズにも3タテを浴びせました。
リオでは表彰台を独占してのけたアメリカ勢の中にあっても、その強さと安定感は図抜けていました。たった一度の失敗レース(全米選考会決勝)を除けば、です。


K.ハリソンはDL制覇によってすでに今年の世界選手権ワイルドカードを手中にしており、今度こそ「大本命」としての力を如何なく発揮しての金メダルが期待されますが、もう一つの興味として、前例のない「400mHとの2冠への挑戦」が果たして試みられるのかどうか、ということがあります。
2015年にはシーズン5位となる54秒09というタイムを出しており、その後の100mHでの成長度を考えると、優に53秒台前半では行ける力があるものと思われます。
もしそれが実現したとして、その前に立ち塞がるのが、オリンピックを53秒13で制したダリラ・ムハマド(USA)です。
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ムハマド自身も、昨年の全米選考会で突如52秒台に突入して混戦の種目を抜け出した急成長株。前年までのPBが55秒76、400mのPBが昨年4月の52秒64というのですから、その急成長ぶりが伺えます。細身の体形と長い黒髪をなびかせて疾走する姿は、アリソン・フェリックスに代わるスター性も十分です。
今季は5月27日のDL第3戦・ユージーン大会に登場。早くもZ.ヘイノヴァ(CZE)、S.ペターセン(DEN)、A.スペンサーといった強豪とぶつかる予定になっています。
いっぽうのK.ハリソンは、5月20日にジャマイカで行われるワールド・チャレンジ・ミーティングに出場予定。今年もすでに室内レースで順調なところを見せており、アウトドアでの世界記録更新にも十分期待が持てそうです。
K.ハリソンとムハマドの400mH対決…ぜひとも実現してもらいたいものですね。

◆直接対決も、世界記録先陣争いも
「新世代どうしの対決」という図式で楽しみな種目は、他にもあります。
一つはA.アヤナとゲンゼベ・ディババ(ともにETH)による5000m、3000mの世界記録争い。
2015年はゲンゼベが1500mで22年ぶりに世界新記録を出し、5000mでもあと4秒少々のところへ迫りましたが、世界選手権ではアヤナがDLパリ大会の雪辱を果たして金メダル、記録ランキングでも僅かにゲンゼベを上回りました。
昨年はゲンゼベが故障でオリンピック間際での復帰となったこともあって、5000mのレースには1回も出場せず、逆にアヤナはリオの10000mで驚異的な世界新記録を叩き出し、5000でもDLローマ大会で世界記録まであと1秒44と迫りました。
RIO012

一昨年のDLチューリッヒ大会3000m以来、両者の直接対決はありませんが、ともに順調ならば嫌でもロンドン世界選手権では相まみえることになるでしょう。現状ではアヤナの勢いが一歩リードしている感があるとはいえ、ともにラスト勝負よりはロングスパートで決着をつけたい同タイプどうし。10000m29分17秒を誇るアヤナのスタミナが勝るか、1500を3分50秒で走るゲンゼベのスピードが勝つか、5000mはその時のコンディションによって勝敗が決しそうです。
同時に、DLで5000m種目の一つとして数回行われる3000mでも、レコードブックに唯一残った中国「マー軍団」の記録、1993年にワン・ジュンシャが出した8分06秒11への2人のチャレンジを期待したいところです。
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◆華やか艶やか“空中決戦”
もう一つの注目種目は、女子棒高跳です。
かつてエレーナ・イシンバエワ(RUS)が華やかに彩ったこの種目も、世代交代を象徴する2人の選手、オリンピック&DLチャンピオンのエカテリニ・ステファニディ(GRE)とランキング1位の5m00を跳んだサンディ・モリス(USA)の“対決”が注目を集めます。

ステファニディは昨年のシーズンイン時点では、同国の2015年DLチャンピオン、ニコレッタ・キリアポウロウの陰に隠れた無名の存在でした。インドアで4m90を跳んで躍進の予兆は見せていましたが、アウトドアでは4m71がPBだったのです。この種目では1月に室内で5m03を跳び3月の世界室内を4m90で制したジェニファー・サー(USA)がまだまだ健在で、世界室内前哨戦で4m95を跳び本番でも2位に食い下がったモリスがこれに続いていました。
DL第1戦のドーハはモリスが4m83で勝ち、ステファニディは3位。しかし4m73は2年ぶりの屋外PBで、ここから彼女の快進撃が始まります。
ドーハ以降はDLに姿を見せなかったモリスと対照的に、オリンピックまでのDL5大会で4勝、記録も4m75から75、77、81、80と、無類の安定感で着実に伸ばし、自国選手権でPBを4m86にまで引き上げました。その勢いのまま、リオでは4m85の同記録でモリスを振り切り金メダル。DLも最終戦を待たずにツアー優勝を確定させ、その飛躍ぶりはまさに2016年の新人賞ものでした。

モリスはDL初戦の後に負傷して全米選考会にギリギリ間に合わせ、ここでもサーに次ぐ2位でオリンピック出場権を獲得。本番で早々に姿を消したサーに代わって、ステファニディとの一騎討ちに惜敗すると、DL最終戦では逆にステファニディを圧倒、史上3人目の5mヴォルターとなりました。
元来、非常に多くの試合に出場するタイプで、今年はすでに室内4戦に出場。うち1回はステファニディとのリマッチとなり、今度はステファニディが4m82で雪辱しています。
ともに順調ならば、DLでも頻繁にマッチアップが見られそうな両者の対決。“安定感”のステファニディ(27)か、“一発5m”のモリス(24)か、はたまた“旧勢力”サー(35)やキリアポウロウ(31)、ヤリスレイ・シルヴァ(CUB=29)らの巻き返しか、もともと予断を許さない種目だけに楽しみ…もちろん、私はモリスの応援です!
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https://www.iaaf.org/news/preview/iaaf-world-indoor-tour-dusseldorf-preview

またまた女子の話題ばっかりですみませんね。他にも注目の「対決」はいろいろとあるんですけど、記録レベルが高い選手どうしの決戦が昨年までは見られそうでなかなか見られなかった、今年は見られるかな?…という意味で今回この3種目を取り上げた次第です。

間もなく『ワールド・リレーズ』が始まりますね。
国内では『ぎふ清流ハーフマラソン』に『兵庫RC』『出雲陸上』、それから混成競技後半。今日の日曜日は忙しくなりそうです。


 

ハリソンvs.ムハマドが来季実現?~DLローザンヌ大会



IAAFダイヤモンドリーグ第12戦・ローザンヌ大会が、昨日(日本時間今日未明)、オリンピックによる中断を経て約1カ月ぶりの大会として開催されました。
ここの競技場は変なトラックで、普通はホームストレッチの直線終点に設けられているフィニッシュラインが、第1コーナーが始まって数メートル先に、曲走路とは別れる形で設けられているのです。つまり、周回の中の直線部分が短い、その分曲走路が長く半径が大きいトラック、ということになります。
選手にとっては走りやすいんでしょうか、にくいんでしょうか??

さて、今回一番のお楽しみは、DLポイント対象外レースながら、全米予選4着以下オールスターズが勢ぞろいした女子100mH。もちろんお目当ては、オリンピックに出られなかった世界記録保持者ケンドラ・ハリソンです。
今季ここまでDLでは4戦負けなし、しかもすべてブッチギリの圧勝で、ユージーンで出した12秒24、ロンドンでの12秒20(世界新)は間違いなくオリンピック以外での今季陸上界ベスト・パフォーマンス。
1カ月ぶりにTV越しにお目にかかったハリソンはヘア・スタイルを変えてイメチェン。豊かなセミロングの髪を揺らしながら今回もスイスイと一人旅、2位のドーン・ハーパー-ネルソンに0.29秒の差をつける12秒42で5連勝を飾りました。
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 ケンドラ・ハリソン(USA)

長い髪をなびかせて、とくれば、今やアリソン・フェリックスに代わってアメリカ女子のスターの座に近づきつつあるのが、400mHの新女王ダリラ・ムハマドです。
2013年モスクワWCの銀メダリストではあるものの、昨年SBは55秒76、400mフラットのPBが52秒64に過ぎなかった26歳が、今年の全米で突如“覚醒”したかのように52秒88のWLで走り、そのままの勢いでリオ五輪を制してしまったことはご承知のとおり。この日もオリンピックのメダリストが全員集合する中で圧倒的な強さを発揮、今や完全にこの種目の支配者となり、ビジュアル的にもスターの素質は十分です。
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 ダリラ・ムハマド(USA)

その400mHムハマドに、来年は100mHのハリソンが挑戦するかもしれない、というのが解説・石塚浩さんの耳より情報。
もともとハリソンは、二足のワラジと言いますか、それともひと頃100mHに伸び悩みを感じていたか、400mHも手掛けて、あいや足掛けておりまして、昨年6月には54秒09というなかなかのタイムを出して年間5位にランクされています。つまり、昨年に限って言えばムハマドよりずっと上にいたのです。
今季、100mHで「ハードリングの極意」みたいな感覚を会得したかに見えるハリソンが、ロンドン世界選手権では400mHでも金メダルと世界新を狙う…実現すれば史上例を見ない快挙です。そうはさせじ、とダリラが立ちはだかる…もう堪りませんね、来シーズンの目玉になりますよ、これ。
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今回は7人の金メダリストが登場するということで前景気が盛り上がり、中でも最大の注目は女子短距離2冠のエレイン・トンプソン。女子100mに出場です。
ところがこのレース、思わぬアクシデントが!
スタートの号砲から一瞬間をおいて、「やり直し」を告げるリコール音が鳴ったのですが、ほとんどの選手は気付かないまま100mを全力疾走。すぐに気付いてやめたのが3レーンのアメリカ白人スプリンター、ジェンナ・プランディーニ、しばらく走ってから「あれ?」という感じで流しにかかったのがトンプソン。あとの6人は、ほぼ全力で走ってマリー・ジョゼ・タルーが「1着」。
プランディーニに僅かな動きがあった(スローヴィデオでも判りませんでした)ということで、イエローカード。5分ほどの「休憩時間」を置いてのリスタートとなりました。
「再レース」ではトンプソンが、オリンピック7レースの激務を感じさせない10秒78(+0.8)で圧勝。思わぬ100m×2回のレペティションを課せられた6人は後半まったくスピードが上がらず、序盤明らかに遅れていたプランディーニがあれよあれよという間に2着に上がりました。(11秒11)
特に1本目で頑張っちゃったタルーは11秒25と散々な結果で、何とも気の毒なレース進行になりました。
(だいたい、OMEGAの信号音は音が小さいですよね。やっぱりSEIKOでないと…)

女子3000m(DLでは5000mのポイント対象)には、「復活」ゲンゼベ・ディババが登場。アヤナもチェルイヨトもいない中ではありましたが、リオ5000m2位のヘレン・オビリを寄せ付けず、大会新記録8分31秒84で快勝。まだ世界記録を狙うところまでは回復していませんが、これで最終戦、もしくは来シーズンにかけて、再びアヤナと世界記録争いを繰り広げる楽しみがつながりました。ゲンゼベとしてはぜひとも5000の世界記録はディババ家に保管したいところですが、現状では次回にでもアヤナが破ってしまいそうな勢いです。
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 ゲンゼベ・ディババ(ETH)

女子の話題ばかりになってしまいましたけど、正直言って男子は今一つ、冴えませんでした。
G+的には110mHをプッシュしていたようですが、私はどうも、現状のこの種目は好きになれません。オリンピックを終えていちおうマクレオド、オルテガの「2強」の図式が定着しつつあり、今回もそのとおりの結果(オルテガ13秒11、マクレオド13秒12)となりました。でも何かこう、パッとしないんですよね…。
「兄弟金メダリスト対決」が注目された円盤投は、弟のクリストフ・ハルティングが回避して、シャツ破りの兄貴も4位と精彩なく、優勝はフィリップ・ミラノフ(BEL)の65m61。安定王者のマラホフスキーも大逆転負けのオリンピックで気落ちしたか、6位と惨敗でした。結果を承けてか、ほとんど放送でも扱われませんでした。

全般に、オリンピック直後だけに記録の停滞は予想されたところですが、おおむね皆さん「出るからには下手なところは見せられない」という気概が伝わってきた今大会。今季のDLも残り3戦となって、年間チャンピオン争いも白熱してきました。
次回は中1日で明日26時45分(28日2時45分)から、パリ大会の生中継があります!

 
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  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
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  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#9~1991/第10回大阪国際女子マラソン
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