少し遅くなりましたが、全米選手権(リオ選考会)レポート・第3弾です。
http://www.iaaf.org/news/report/us-olympic-trials-2016-grace-montano-murphy より、ヒイヒイ言いながら和訳。英語力に自信なし。


全米オリンピック代表選考会としては格別に盛りだくさんという1日ではなかったかもしれないが、月曜のイヴニング・セッションは、2つのエキサイティングな800mレースのおかげで、これまでの全米選手権の中でもなかなかの劇的なひと時になった。

女子800mは、男子800mに輪をかけて劇的だった。

予選と準決勝を終えて、注目はモリー・ラドロー、6度の全米女王に輝いているアリシア・モンタノ、2013年の世界選手権銅メダルのブレンダ・マルチネスに集まっていた。

まずモンタノが、時々こういうレースをする選手だが、最初の1周を57秒46というハイペースでリードした。ラスト200mになると、ウィルソンとマルチネスがモンタノを交わし、展開は団子状態になる。そこで、前に出たマルティネスの走りが乱れ、それが邪魔する形となって後続のモンタノが転倒してしまった。

マルティネスは辛うじて転倒を免れたものの、リズムを狂わせてレースを離脱。一方で、ラドローは倒れたモンタノを跳び越えなければならず、そこで開いた前との差を懸命に挽回しようと、力を振り絞った。

イェール大学出身の27歳、ケイト・グレイスが、自分の前方で起きたトラブルをうまく回避して、1分59秒10で真っ先にゴールに駆け込んだ。ウィルソンがシーズンベストの1分59秒51で、2着に粘った。800mを始めて2年のクリシュナ・ウィリアムズが、自己ベストの1分59秒59で3番目のオリンピック代表に名乗りを挙げた。モリー・ラドローが僅か0.04秒の差で続き、4年前と同じ4位で涙を呑んだ。

抗議が提出されたが、オフィシャルは故意ではない接触だったと裁定し、そのままの順位で結果が確定した。

「嘘みたいだわ」と、グレイスは言った。「作戦としては、残り150メートルのカーブで外に出て内側を締めて、勝機を探すつもりだったの。激突があったことには気が付いたけど、とにかくゴールまで全力で走り切ることに集中していたわ。走れ、勝ち取れ、行けっ、てね」

モンタノは、レースから弾き出されたことに取り乱していた。

「あそこで位置取りを変えて、完璧に自分のレースをしてたのよ」と彼女は言う。「みんな殺気立ってきてるのは分かってたし、2レーンよりも外に出たまま、残り150メートルでスパートをかけるはずだったの。何度も何度もそういう練習をしてたのよ。他の誰かのせいであんなことになるなんて、思いもしないでしょう?ブレンダに何があったのかは分からないわ。とにかく彼女が足をもつれさせて、気が付いたら彼女と絡んで飛び跳ねたところへ後ろから誰かが私を蹴飛ばしたのよ。そんな時、どうしたらいいのよ?私は誰にも接触したわけじゃないのに」



クレイトン・マーフィーは走る時に帽子を被るわけではないし、オリンピックの金メダルも持っていない。だがこの21歳の若者は、同じオハイオ出身のデイヴ・ウォトル(帽子姿がトレードマークだったかつての800mオリンピック・チャンピオン=訳者註)の足跡を追っている。


マーフィーは、男子800mで室内世界選手権優勝のボリス・ブリアンを最後の10メートルで交わすと、1分44秒76の自己ベストで勝った。ブリアンは1分44秒92で2着だった。

マーフィーは400mで最後方、600mでは6番手からの追い上げだったが、前半を51秒53、後半を53秒23という比較的イーヴンなペースで走り、帽子のランナー・ウォトルが1972年のオリンピックで後方から追い込んで勝った有名なレースを彷彿とさせた。

似通っていたのはそれだけではない。

マーフィーのコーチであるリー・ラバディは、大学時代にウォトルのライバルだった。また、マーフィーもウォトルも、ともに最初自分では1500mランナーだと考えていた。

「ウォトルみたいになりたかったんだよ」マーフィーは言う。「今日は、初めて彼に近付けたような気がする」

マーフィーは今年1月の室内レース以来、一度も決勝レースで負けていない。4月にはデモインでブリアンにも勝っている。それでも、この結果には驚かされた。

月曜日の決勝レースは、2013年の銀メダリスト、ニック・シモンズが故障で欠場、2012年オリンピック4位のドゥエイン・ソロモンは予選で姿を消し、北米ジュニア記録の1分43秒55でNCAA王者となった19歳のドノヴァン・ブレイジャーも、勝ち残れなかった。

「ランキングがどうとか、何の意味もないってことが今日のレースで分かっただろう」と、パンアメリカン王者のマーフィーは語った。「いかにこの日に仕上げるか、うまく走れるか、それが全てだよ。予選からラウンドを重ねるごとに、調子が上がっていると感じてた。次の目標は、リオの決勝だ」

アメリカ独立記念日のこの日、陸軍予備役のサム・ケンドリクスが選考会記録の5m91で、棒高跳を制した。空軍のケイル・シモンズが5m65で2位。しかしこの記録は参加標準には達しなかったため、代表には到達者の上位2人、ローガン・カニンガムとマーク・ホリスが入った。

今シーズンの屋外記録でケンドリクスの自己ベスト5m92を上回っているのは、ルノー・ラヴィレニの5m95だけである。フランス人は、室内世界選手権を6m02の大会新記録で勝ち、ケンドリクスは5m80で2位に続いた。

「ルノーは長いこと棒高跳を続けているし、チャンピオンシップの経験はものすごく豊富だ」と、ケンドリクス。「もし彼が絶好調の時は、銀メダル争いに終始しなけりゃならないこともあるけど、彼だっていつもいつも絶好調ってわけでもない」

「ダイヤモンドリーグやその他いくつかの大会で、ルノーが明らかに調子を落としている時、僕は何回か勝っているだけだ。でも、本番までにはまだ時間があるから、何が起きるか分からないよ」

その他の種目では、サイラス・ホステラーが5投目で4位から逆転し、83m24でオリンピック代表チームの一員に食い込んだ。サム・クラウザーとショーン・フューリーはそれぞれ4位、11位だったが、他に標準記録に到達しているスロワーがいないため、代表入りすることになるだろう。