日本では日曜・夜のまあまあ早い時間からの女子マラソン観戦、皆さんお楽しみいただけましたか?
「日本人がいなくなったから、チャンネル変えちゃったよ」
という方はこの記事の読者にはいらっしゃらないかと思いますが、終盤の接戦にあの曲がりくねった狭い道、なかなかスリリングなレースだったと思いません?
ああいうコース設計だと、競り合っている場合は主導権を握っている方が断然有利な感じがします。付いて行ったり追いかけて行く場合、コーナーを曲がるたびにダメージが重なっていく様子が見えますものね。

私の「展望」どおり、終盤はマレ・ディババとユニス・ジェプキルイ・キルワの一騎討ちか?…と思いきや、いったん遅れかけたケニアのエース、ジェミマ・スムゴングがラスト勝負を嫌ってロング・スパート。「スプリントに自信がない場合は早めに仕掛けなければいけない」とよく言われますが、それが実際にできる、というあたりが実力です。みごとな勝利でした。
エチオピアは、ディババ以外の2人の代表を入れ替えてたんですね。(元の代表はアセレフェチ・メルギアと東京にも来たアベル・ケベデ)チームとして、どこか順調ではなかったのかもしれません。

ところで、朝方のオリンピック番組でNHKの素人っぽいお姉ちゃんキャスター(なんでこの子を抜擢したんだろう?と不思議なくらい地味で下手くそな女性)が
「3位のディババ選手は、ロンドン・オリンピックの10000m金メダリストです」
だって…もちろん出された原稿をそのまま読んだだけですが、書いた奴、蹴飛ばしてやりたくなりました。

日本勢は、いずれも本調子ではなかったとしか思えません。多くのランナーの夢を踏み台にして代表に選ばれた選手が「本調子でない」というのは許されないことだと思うのですが、少なくとも1桁順位に2人は入る、そんなメンバーとレース展開だったと思うのです。
そのような調子にしか仕上げられなかったことも実力のうちということで、強化体制と選考方法がもう一度練り直されることを期待します。懸命に走り切った3選手は、お疲れ様でした。

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さあ、月曜朝の極上ブレックファストは、男子100m準決勝と決勝。
日本の両選手、実力は発揮しましたが今一つブレイクするところまでは行きませんでした。
「9秒台でなければ決勝へ行けない」という観測の中、決勝ラインが10秒01だったことはある意味大きなチャンスを感じさせる準決勝だったわけですが、「23人中19人が9秒台ランナー」という状況では、仕方のない結果だったでしょう。トータルで11位タイの記録だった山縣選手などは、もし1組に入っていたら案外順位もタイムもいいところへ行っていたように見える奮戦ぶりでした。

いよいよ決勝!…の前に、男子400m決勝で出ましたワールドレコード!
南アフリカの旗手を務めた、昨年世界選手権チャンピオンのウェイド・ヴァンニーケルク。
誰の動きも気にしない8レーンをスイスイ走って、昨年前半までずっと「400mの2強」と言われてきたキラニ・ジェームズとラショーン・メリットを置き去りに、あのマイケル・ジョンソンの偉大な記録を一気に0.15秒も上書きしてしまいました。(私はゴール直前、一瞬「42秒台??」と思いましたよ)
そして、オリンピックの金メダルにも驚異の世界新記録にも、ニコリともしない仏頂面。ジェームズらの祝福にはしっかり応えていたり「神に感謝」のポーズはしていましたから、すごく嬉しかったのは間違いないんですが、あのポーカーフェイスは何としたことでしょう!
陸上競技での南アフリカの金メダルは、ちょっと意外な気もしますが、1996年アトランタ大会のジョサイア・チュグワネ以来のことだそうです。
Wayde van Niekerk02

そして、締めくくりは「21世紀のザ・グレーテスト伝説」、ウサイン・ボルトの独り舞台。
終わってみれば、今回は「ボルトvsガトリンvsブレイク」の構図ではなく、最初からボルトの独走だったという結果になりました。

ガトリンは、大会前の「舌戦」の影響で見事なまでに悪役に仕立て上げられ、紹介のたびに強烈なブーイングを浴びていたのは気の毒でした。
あの「舌戦報道」、どこか(古い話ですが)ソウル大会マラソン代表選考の際の「瀬古vs中山」の状況に酷似していたように思えます。選考会の福岡を欠場した瀬古利彦に対して中山竹通が「這ってでも出て来い!」と言い放ったというあのエピソードです。
後年、中山氏はこのことに触れられるたびに、「いや、ボクはそんなこと言ってないですよ」と語るそうです。「瀬古さんは立派な実績のあるランナーだから、陸連の救済措置が受けられる。仮にボクだったら、福岡には這ってでも出なきゃいけない、そういう意味のことを言った」のだと。それを、食いついたマスコミが意図的にニュアンスの異なる大見出しにしたのが世に広まった、というのが真相です。
私の印象では、ガトリンはボルトに対して敬意と相応のライヴァル意識は持っていても、悪意を込めたコメントを発するようなタイプの人には見えません。ただ「アメリカでは代表選考で救済措置はあり得ない」という意味の発言をしたところ、「ガトリンがボルトに喧嘩を売った!」とマスコミに捻じ曲げられて世界中に報道された、というのが本当のところではないでしょうか?
「売られた喧嘩」に応じたボルトのほうも、何か大人げない印象があるのは、意図された「舌戦」だったからでしょうか?…にしても、ガトリン一人がブーイングを浴びるというのは、どうもねえ。

そうした経緯が影響したのかどうか、今回のガトリンにはどこか覇気がなく、恒例の「檻をこじ開けるポーズ」も見せないままにスタートに就き、あっさりと敗れ去りました。9秒89というタイムは去年のガトリンであれば考えられないほどの「低記録」で、つまりは自滅の結果ボルトの「独走」を許した、というふうに見えました。
もう一人の強豪ヨハン・ブレイクは、予選から余裕たっぷりの動きが不気味さを感じさせましたが、4年前に比べると一回り「太った」印象で、決勝ではキレがなかった感じですね。

それにしても、トラック種目で史上初の同一種目3連覇は「偉業」の一言。今大会、すでにティルネッシュ・ディババとシェリー-アン・フレイザー-プライスが挑んでいずれも銅メダルに終わっていただけに、その偉大さが際立ちます。
競泳のマイケル・フェルプス同様、21世紀のオリンピックを牽引してきたボルトが、フェルプスと同じ「2種目3連覇」に挑む200mは、明日からのクランクイン。日本の3選手の動向と併せて、目が離せません。

大会3日目にして早くも世界新記録が2つ。アルマズ・アヤナは、よほど疲労の蓄積とかがない限り、5000mでも9割がた出してくると思います。
今日も期待が持てますよ。女子3000mSC決勝。ルース・ジェベトとハイヴィン・キエン・ジェプケモイの調子は、いいみたいです。