豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

エレイン・トンプソン

2017DLがスタート!


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時系列的にはこっちを先に展望すべきでした。
いよいよ今季のIAAFダイヤモンドリーグ全15戦が、カタール~ドーハのスハイム・ビン・ハマド・スタジアムで開幕します。
まあ展望と言いましても、4月23日の投稿で結構なところまで書いちゃってますんで、あとは見てのお楽しみ、ということで、いつものように実施スケジュールと主な出場選手をご紹介しておきます。

(スケジュールは日本時間で紹介。太字はリオ五輪優勝者)

24:00 女子砲丸投(M.カーター,A.マールトン,Y.レオンチュク)

24:15 女子棒高跳(E.ステファニディ,S.モリス,Y.シルバ,N.ビュヒラー)

24:45 男子走高跳(M.E.バルシム,A.プロツェンコ,R.グラバーツ,D.トーマス)

25:03 男子400m(L.メリット,T.マッケイ,S.ガーディナー,K.シバンダ)

25:05 男子やり投(T.レーラー,J.イェゴ,J.ヴァドレイヒ,新井涼平)

25:14 男子1500m(E.マナンゴイ,S.キプラガト,R.ビウォット,B.ブランケンシップ)

25:25 女子800m(C.セメンヤ,E.J.スム,M.N.ワンブイ,G.ディババ)

25:35 女子200m(E.トンプソン,D.スキッパーズ,B.オカグバレ,V.キャンベル-ブラウン)

25:45 男子三段跳(C.テイラー,A.コペイヨ,ドン・ビン)

25:50 女子100mH(K.ハリソン,N.アリ,S.ネルヴィス,S.オフィリ)

26:05 女子3000mSC(R.ジェベト,H.キエン,E.コバーン,H.グリビ)

26:25 男子100m(J.ガトリン,A.デグラス,A.パウエル,K.コリンズ)

26:35 男子400mH※nonDL(K.クレメント,N.ベット,LJ.ヴァンジル)

26:45 男子3000m(Y.ケジェルチャ,M.エドリス,T.ロンゴシワ,C.キプルト



まずは女子棒高跳。ステファニディ(GRE)とモリス(USA)の頂上決戦が早くも見られます。モリスぐぁんばれ!

同じく頂上決戦は女子200m。トンプソン(JAM)とスキッパーズ(NED)のライバル関係は北京世界選手権がスキッパーズ、リオ五輪がトンプソン。今年はどっちに傾くでしょうか??

男子やり投には新井涼平が参戦。昨年日本人最多ポイント獲得者です。こちらの種目も、五輪王者レーラー(GER)に銀の剛腕イェゴ(KEN)、DL覇者のヴェドレイヒと揃いました。リストは最大4名にしようと思ったので書き切れませんでしたが、テロ・ピトカマキ(FIN)やヨハネス・フェテル(GER)もエントリー。新井はぜひともトップ4を!

驚いたのは、ゲンゼベ・ディババ(ETH)の800m参戦です。IAAFの情報では公式記録を持っていませんので、この種目は初レースということなのでしょう。日本ではあり得ないような短い距離への転身ですけど、むかし、モロッコの名ランナー、サイド・アウィタが5000mから800mにシフトしていったケースを思い出します。今年は1500mを中心とした参戦になるということでしょうか?セメンヤには勝てないまでも、最後の直線まで勝負出来たら凄いですよ。

同じように、いつもは障害物つきで走っている3000mのフラット・レースにエントリーしているのがコンセスラス・キプルト(KEN)。こちらは、本業がプログラムにないのでこっちでいいやという感じですかね。

ボルトの最終章となる今季の男子100mは、新興勢力の筆頭アンドレ・デグラス(CAN)にとってのチャンスです。さすがに上がり目の期待できないガトリン、パウエルを相手の試金石がこのレースとなるでしょう。

あとはケンドラ・ハリソン!今季はまだ12秒56がSBとゆったりめの立ち上がりですが、ここで流れに乗れるか?

放送は明日の深夜24時45分から日テレG+で、25時頃から現地映像の生中継に入るはずです。



DL最終戦ブリュッセル大会の注目



2016IAAFダイヤモンドリーグのグランドファイナル、第15戦ブリュッセル大会が、9日(日本時間10日未明)に開催されます。
今年はオリンピックがあったため、選手によっては終盤の大会出場を見合わせるケースも目立ち、また一部の短距離種目などはシーズン全般を通じて、例年以上に有力選手の回避が目立つものがありました。
それでも、ファイナルとなるチューリッヒ、ブリュッセルの終盤2戦の雰囲気は格別。むしろ、DL戦線とオリンピック路線の性格の違いが実感されます。
今回も大会直前のエントリー・リストから、見どころをピックアップしてみましょう。

◆プログラムと主なエントリー(太字は得点順にシリーズ・チャンピオン有資格者)
8日17:00 女子砲丸投(アダムズ、カーター、マートン)

9日17:30 女子やり投(パラメイカ、ミッチェル、シュポタコヴァ)
 18:50 男子円盤投(マラホフスキー、ウルバネク、ミラノフ、シュトール、カンテル)
 19:08 女子三段跳(イバルゲン、リパコワ、パパクリストウ)
 19:38 女子棒高跳(ステファニディ、モリス、ブヒュラー)
 19:45 男子走高跳(ボンダレンコ,キナード,バルシム,グラバーツ,戸邉直人)
― ここから生中継 ―
 20:04 女子400mH(ドイル、テート、ヘイノヴァ、スペンサー)
 20:13 女子100m(トンプソン、スキッパーズ、ウィリアムズ、フェイシー)
 20:15 女子走高跳 ※対象外(ティアム、スペンサー、レフチェンコ)
 20:22 女子400m(マクファーソン、ヘイスティングス、オコロ)
 20:33 男子110mH(オルテガ、バスク、マルティノ-ラガルド)
 20:40 女子5000m(アヤナ、オビリ、キビウォト、ナウォヴナ、ロウベリー)
 20:45 男子走幅跳(ガオ・シュンロン、ラピエール、フォーベス、ローソン)
 21:05 女子100mH ※対象外(ロールダー、ストワーズ、ジョージ)
 21:12 男子1500m(キプロプ、マナンゴイ、マクルフィー、イギデル)
 21:23 男子200m(エドワード、ルメートル、マルティナ、ジェミリ、グリエフ)
 21:30 男子3000mSC(C.キプルト、B.キプルト、ジャガー、コエチ、メキシ-ベナバド)
 21:45 男子800m(ロティッチ、ボッセ、 キプケテル、クシュチョト、マーフィー)
 21:55 男子400m ※対象外(ボルリー3兄弟)

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今季はDLで2種目、オリンピックで3種目、合計5種目で世界新記録が誕生しました。年間に5つというのは、なかなか見ることのできないWRラッシュのシーズンと言ってよいでしょう。
ラストに「もういっちょう!」が期待されるのが、女子5000mのアルマズ・アヤナです。
リオ五輪では初日の10000mで超人的な世界新記録を独走で叩き出したことで、さすがのアヤナも相当なダメージを抱えたまま5000mに臨むことになり、結果信じがたいような終盤の失速を演じてしまいました。
今回は休養も十分、気候もそろそろ秋の気配(だといいんですが)、ということで、「6個目」への期待は高まります。ただ、5000mの世界記録はこれまでアヤナとゲンゼベ・ディババが再三挑んでは寸前のところで跳ね返されており、攻略は容易ではありません。適格なペースメイクと、アヤナ本人の体調がカギとなるでしょう。

注目選手が「世界新宣言」をしている種目がもう一つあります。男子3000mSCのコンセスラス・キプルトです。
今季5戦全勝でチャンピオン確定、オリンピック金メダルと無敵の状況にあるキプルトが狙うのは、サイフ・サーイード・シャヒーン(QAT)の持つ7分53秒63。いまだ8分を切っていない(PB=8分00秒12)キプルトとしては大胆な公言ともとれますが、実績から言ってそれだけの潜在能力は十分ということでしょう。
これに乗っかっていきたいのが、やはり悲願の8分切りを目指すエヴァン・ジャガーということになります。

多くの種目で年間チャンピオンが確定、もしくは趨勢が見えていますが、最後まで分からないのが男子走高跳です。今や「3強」となったうちのオリンピック&世界チャンピオン=デレク・ドルーイン(CAN)の出場はありませんが、DL王者の可能性を持つ4人が出場。ハイレベルの戦いを期待したいものです。
日本から唯一、戸邉直人(安藤財団)が出場。日本のDLパイオニアとして、オリンピック落選の憂さを晴らすべく、一度くらいは画面に映って欲しいところ。

「オリンピックの再戦」となるデッドヒートが期待されるのが、女子棒高跳。イシンバエワやサーらの時代を継承する新興勢力、カテリナ・ステファニディとサンディ・モリスの熱い一騎討ちが注目です。
無類の安定感を誇るステファニディは、今季PBを4m71から15センチ伸ばし、出場するどの大会でも確実にPB前後の記録を跳ぶ堅実性と勝負強さを発揮してきました。一方で、ステファニディにはいまだ感じられない5mジャンプへの可能性を持つ爆発力があるのが、美人ヴォルターとして人気急上昇中のモリスです。
文字通りの「頂上決戦」を期待しましょう。
Sandi Morris 02
https://www.iaaf.org/competitions/iaaf-diamond-league/news/sandi-morris-brussels

女子100mは、「新女王」エレイン・トンプソンの、輝かしい1年の締めくくりとなるでしょうか。100mでは分が悪いダフネ・スキッパーズも、来季以降ライヴァルとして渡り合っていくためには、勝てないまでも存在感をアピールするレースにしなくてはなりません。

ダイヤモンドレースの合間に、ポイント対象外の「サービス・レース」がありますが、地元選手のお披露目枠といった趣で、少々寂しいメンバー構成。最終レースでの「ボルリー兄弟そろい踏み」はご愛敬?
その中で、一つ注目したいのが女子走高跳のナフィサト・ティアム です。
リオ五輪では七種競技に優勝したベルギーのニュー・ヒロイン。七種の走高跳でカタリナ・ジョンソン-トンプソンとともに1m98という種目別世界最高記録をクリアしてみせました。もし走高跳に出場していれば(エントリーはしていました)、ルース・ベイティアとの優勝争いが十分に期待できたパフォーマンスです。伸びやかな四肢はまさにHJ専門選手のもので、かつてのハイデ・ローゼンダールやジャッキー・ジョイナー-カーシーのように、「混成と専門」の二刀流での活躍が期待されます。

放送は10日(土)2:45(9日26:45)からCS日テレG+で、3;00頃から現地映像が生中継される予定です。

 

DLファイナルに野澤啓佑参戦!~第14戦・チューリッヒ大会



世界は慌ただしい。休む暇もなく、明後日1日深夜(2日未明)には、ダイヤモンドリーグ第14戦・チューリッヒ大会が行われます。ダイヤモンドレース32種目のうち、半数の16種目で年間チャンピオンが決まる最終戦が行われます。

プログラム(時間は日本時間)と主なエントリー選手は次のとおり。選手の順番はDLポイント順で、太字の選手は年間王者が確定済です。(最終戦は1位20点、2位12点、3位8点、以下6点・4点・2点。年間王者となるには最終戦出場が条件となります)

 1:45 男子棒高跳 R.ラヴィレニ、ケンドリクス、バーバー、ティアゴ・ブラズ・ダ-シルバ
 2:05 女子走幅跳 I.スパノヴィッチ、ウゲン、リース、バートレッタ、モケナラ、クリシナ
 2:35 女子円盤投 S.ペルコヴィッチ、カバジェロ、ミュラー、ロベールミション
 2:45 女子走高跳 R.ベイティア、スペンサー、トロスト、リキンコ、デミレワ、ユンクフライシュ
― ここから生中継開始 ―
 3:05 女子400mH ※ポイント対象外 ペテルセン、ドイル、リトル
 3:05 男子砲丸投 T.ウォルシュ、コヴァックス、クラウザー、マイエフスキー、シュトール
 3:13 男子5000m M.エドリス、ケジェルチャ、ゲブリウェト、ロンゴシワ、タヌイ、ラガト
 3:34 女子200m D.スキッパーズ、フェイシー、アシャー-スミス、トンプソン、フェリックス
 3:41 女子1500m F.キピエゴン、ミュアー、バータ、ハッサン、セヤウム、シンプソン
 3:50 男子三段跳 C.テイラー、コペイヨ、カーター、ベナード、エヴォラ
 3:53 男子400m L.メリット、マクワラ、タプリン、ガーディナー
 4:00 男子やり投 T.レーラー、ヴァドレイヒ、ウォルコット、ヴェーバー、ピトカマキ
 4:02 女子800m C.セメンヤ、ニヨンサバ、サム、シャープ、ビショップ
 4:12 女子100mH K.ハリソン、ハーパー-ネルソン、ストワーズ、オフィリ、ロールダー
 4:20 男子100m B.Y.メイテ、パウエル、ロジャーズ、マルティナ、コリンズ、マクレオド
 4:28 男子400mH K.クレメント、クルソン、ベット、トゥムティ、マギ、野澤啓佑
 4:36 女子3000mSC R.ジェベト、キエン、アセファ、チェプコエチ、コバーン

放送開始前から始まるフィールド各種目では、すでに年間優勝が確定している種目が並びますが、いずれもトップランカー勢ぞろいという感じで目移りがします。特に注目は、男子棒高跳に、オリンピック・チャンピオンのティアゴ・ブラズ・ダ-シルバが最終戦にして初参戦すること。王者ラヴィレニにとっては千載一遇のリヴェンジのチャンスが、向こうからやって来てくれました。
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トラック種目では、女子200m、100mHを除いて年間優勝争いは大混戦。
最初の男子5000mは、モー・ファラーが1試合にしか出場しなかったことでエチオピアの若手勢にチャンスが生まれました。エドリスとゲブリウェトが22歳、ケジェルチャが19歳…顔を見ただけじゃ分かんないもんです。

女子200mは、すでに年間優勝を決めているスキッパーズとトンプソンの女王対決が実現しそうです。ローザンヌとパリでの走りを見た限りでは、トンプソンが引き続き波に乗っている感じがします。さらにはアリソン・フェリックスやヴェロニカ・キャンベル-ブラウンなどの参戦も、白熱のレースに華を添えてくれます。

女子1500mはフェイス・キピエゴンの独走気配でしたが、パリで鮮やかな逃走劇を決めたローラ・ミュアーが「待った!」をかけました。今度はキピエゴンも楽には逃がさないでしょうし、展開ひとつでどう転ぶか分かりません。

男子三段跳は、意外にもまだクリスチャン・テイラーの優勝が確定していませんが、4位以内なら自力確定ということで問題ないでしょう。今年のテイラーは同僚のウィル・クレイにはたびたび冷や汗をかかされたものの、18mを跳ばないと勝てないというほどのライヴァルには恵まれませんでした。

男子400mはウェイド・ヴァンニーケルクとキラニ・ジェームズが回避したためラショーン・メリットの独擅場になりそうです。


男子やり投は、イハブ・アブデルラーマン(ドーピング)とジュリアス・イェゴ(オリンピックで負傷)が脱落してしまいましたが、今季最も好況を呈した種目の一つでした。タレントが多彩で、一発の面白さもあり、またそこに日本の新井涼平が加わるといっそう興味深い試合が繰り広げられたものです。今回、その新井の参戦がないのは残念ですが、テロ・ピトカマキが久々に登場します。


女子800mは、キャスター・セメンヤの独り舞台でしょうね。今季は出場したすべてのレースで、まったく負ける姿を想像させない強さを見せ続けました。2番手にニヨンサバ、というのも定着してきたパターンです。

女子のMVP候補筆頭のケンドラ・ハリソンが、最終戦をどんな記録で締めくくるか?圧倒的な選手層を見せつけたアメリカ・チームから、オリンピックのメダル・トリオの参加がないのは少しガッカリです。その分ハリソンのぶっちぎりぶりを楽しみたいと思います。

男子100mはボルトはじめ、年間チャンピオンが有望だったガトリン、あるいはデグラスといったメダリストの名前がなく、ファイナリストもシンビネとメイテの2人のみ。元世界記録保持者のパウエルには失礼ながら、DL最終戦にしてはB級メンバーといった中で、面白いのは110mHのチャンピオン、マクレオドの参戦。9秒台の実力がどんなものか、楽しみはここですね。

そして男子400mH、野澤啓佑の勇気あるチャレンジに大喝采!…これです、これが日本の選手にどんどんやって欲しいことなんですよ。オリンピック前までは世界ランキング上位だった野澤も、気が付けばこのメンバーではシーズン7位、PBでは最下位。ですが、こうした経験を積み上げることで、世界と戦える実力を培ってほしいと思います。(ほとんどの選手が契約メーカーのユニフォームを着て出てくるDLには、所属のミズノとしても「もっとアピールせにゃならん!」と思ってるんでしょうね。何せ半分以上がブラック・ストライプのウェアに黄色/ピンクのシューズ履いて出てきますから)

最終戦・前半の締めくくりは、女子3000mSC。よもや中5日で世界記録更新を狙ってくるとは思えませんが、ルース・ジェベト、ハイヴィン・キエン、エマ・コバーンらの走りを堪能しましょう。

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ハリソンvs.ムハマドが来季実現?~DLローザンヌ大会



IAAFダイヤモンドリーグ第12戦・ローザンヌ大会が、昨日(日本時間今日未明)、オリンピックによる中断を経て約1カ月ぶりの大会として開催されました。
ここの競技場は変なトラックで、普通はホームストレッチの直線終点に設けられているフィニッシュラインが、第1コーナーが始まって数メートル先に、曲走路とは別れる形で設けられているのです。つまり、周回の中の直線部分が短い、その分曲走路が長く半径が大きいトラック、ということになります。
選手にとっては走りやすいんでしょうか、にくいんでしょうか??

さて、今回一番のお楽しみは、DLポイント対象外レースながら、全米予選4着以下オールスターズが勢ぞろいした女子100mH。もちろんお目当ては、オリンピックに出られなかった世界記録保持者ケンドラ・ハリソンです。
今季ここまでDLでは4戦負けなし、しかもすべてブッチギリの圧勝で、ユージーンで出した12秒24、ロンドンでの12秒20(世界新)は間違いなくオリンピック以外での今季陸上界ベスト・パフォーマンス。
1カ月ぶりにTV越しにお目にかかったハリソンはヘア・スタイルを変えてイメチェン。豊かなセミロングの髪を揺らしながら今回もスイスイと一人旅、2位のドーン・ハーパー-ネルソンに0.29秒の差をつける12秒42で5連勝を飾りました。
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 ケンドラ・ハリソン(USA)

長い髪をなびかせて、とくれば、今やアリソン・フェリックスに代わってアメリカ女子のスターの座に近づきつつあるのが、400mHの新女王ダリラ・ムハマドです。
2013年モスクワWCの銀メダリストではあるものの、昨年SBは55秒76、400mフラットのPBが52秒64に過ぎなかった26歳が、今年の全米で突如“覚醒”したかのように52秒88のWLで走り、そのままの勢いでリオ五輪を制してしまったことはご承知のとおり。この日もオリンピックのメダリストが全員集合する中で圧倒的な強さを発揮、今や完全にこの種目の支配者となり、ビジュアル的にもスターの素質は十分です。
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 ダリラ・ムハマド(USA)

その400mHムハマドに、来年は100mHのハリソンが挑戦するかもしれない、というのが解説・石塚浩さんの耳より情報。
もともとハリソンは、二足のワラジと言いますか、それともひと頃100mHに伸び悩みを感じていたか、400mHも手掛けて、あいや足掛けておりまして、昨年6月には54秒09というなかなかのタイムを出して年間5位にランクされています。つまり、昨年に限って言えばムハマドよりずっと上にいたのです。
今季、100mHで「ハードリングの極意」みたいな感覚を会得したかに見えるハリソンが、ロンドン世界選手権では400mHでも金メダルと世界新を狙う…実現すれば史上例を見ない快挙です。そうはさせじ、とダリラが立ちはだかる…もう堪りませんね、来シーズンの目玉になりますよ、これ。
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今回は7人の金メダリストが登場するということで前景気が盛り上がり、中でも最大の注目は女子短距離2冠のエレイン・トンプソン。女子100mに出場です。
ところがこのレース、思わぬアクシデントが!
スタートの号砲から一瞬間をおいて、「やり直し」を告げるリコール音が鳴ったのですが、ほとんどの選手は気付かないまま100mを全力疾走。すぐに気付いてやめたのが3レーンのアメリカ白人スプリンター、ジェンナ・プランディーニ、しばらく走ってから「あれ?」という感じで流しにかかったのがトンプソン。あとの6人は、ほぼ全力で走ってマリー・ジョゼ・タルーが「1着」。
プランディーニに僅かな動きがあった(スローヴィデオでも判りませんでした)ということで、イエローカード。5分ほどの「休憩時間」を置いてのリスタートとなりました。
「再レース」ではトンプソンが、オリンピック7レースの激務を感じさせない10秒78(+0.8)で圧勝。思わぬ100m×2回のレペティションを課せられた6人は後半まったくスピードが上がらず、序盤明らかに遅れていたプランディーニがあれよあれよという間に2着に上がりました。(11秒11)
特に1本目で頑張っちゃったタルーは11秒25と散々な結果で、何とも気の毒なレース進行になりました。
(だいたい、OMEGAの信号音は音が小さいですよね。やっぱりSEIKOでないと…)

女子3000m(DLでは5000mのポイント対象)には、「復活」ゲンゼベ・ディババが登場。アヤナもチェルイヨトもいない中ではありましたが、リオ5000m2位のヘレン・オビリを寄せ付けず、大会新記録8分31秒84で快勝。まだ世界記録を狙うところまでは回復していませんが、これで最終戦、もしくは来シーズンにかけて、再びアヤナと世界記録争いを繰り広げる楽しみがつながりました。ゲンゼベとしてはぜひとも5000の世界記録はディババ家に保管したいところですが、現状では次回にでもアヤナが破ってしまいそうな勢いです。
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 ゲンゼベ・ディババ(ETH)

女子の話題ばかりになってしまいましたけど、正直言って男子は今一つ、冴えませんでした。
G+的には110mHをプッシュしていたようですが、私はどうも、現状のこの種目は好きになれません。オリンピックを終えていちおうマクレオド、オルテガの「2強」の図式が定着しつつあり、今回もそのとおりの結果(オルテガ13秒11、マクレオド13秒12)となりました。でも何かこう、パッとしないんですよね…。
「兄弟金メダリスト対決」が注目された円盤投は、弟のクリストフ・ハルティングが回避して、シャツ破りの兄貴も4位と精彩なく、優勝はフィリップ・ミラノフ(BEL)の65m61。安定王者のマラホフスキーも大逆転負けのオリンピックで気落ちしたか、6位と惨敗でした。結果を承けてか、ほとんど放送でも扱われませんでした。

全般に、オリンピック直後だけに記録の停滞は予想されたところですが、おおむね皆さん「出るからには下手なところは見せられない」という気概が伝わってきた今大会。今季のDLも残り3戦となって、年間チャンピオン争いも白熱してきました。
次回は中1日で明日26時45分(28日2時45分)から、パリ大会の生中継があります!

 

リオ五輪陸上競技TV観戦記・Day6&展望



女子レスリングの大逆転金メダル3連発に沸いた大会第13日でしたが、今日14日目は、我が陸上競技(Day7)にとって「異常事態」発生です。
大事な大事な400mリレー予選や、野澤啓佑がもしかしたら進出していたかもしれない男子400mH決勝などがあるこの日のMorning Sessionが、どこを探してもTV放送予定がない!
そりゃ、伊調馨に続く吉田沙保里の4連覇がかかるレスリングや、バドミントンの準決勝・決勝は大事でしょうけど、それからテコンドーやトライアスロンなんかもありますけど、こんだけテレビのチャンネルがうじゃうじゃあるのに、まとまった録画放送の予定すらありません。まあ、リレーで決勝進出、てなことになればどこかの空き時間にやってくれるんでしょうけど、ヒドイ編成もあったもんですね。
日本人は誰も彼も、「メダル」と「女子」しか見たがらないという、スポーツ心のないテレビ関係者の思い上がった考え方が、露骨に出てしまった編成です。
しかたない、心ある陸上ファンは、せめてうるさくて下手くそな実況のないネット配信で、今夜の競技を楽しむことにしましょう。
RIO033
 日本陸連HPより http://www.jaaf.or.jp/taikai/1397/tvtimetable.pdf

昨夜と今朝のDay6では、まず男子やり投での新井涼平の見事な予選通過という嬉しい結果がありました。
少々順番を変えて、この話題からいきましょう。

◇男子やり投げ予選(通過記録83m00)
 15WC ①92m72J.イェゴ(KEN) ②88m99I.アブデルラーマン(EGY) ③87m64T.ピトカマキ(FIN)
 15DL ①17p/4 ピトカマキ ②15p/6 V.ヴェセリ(CZE) ③8p/4 K.ウォルコット(TTO)
 16DL ①30p/4 T.レーラー(GER) ②25p/4 アブデルラーマン ③20p/4 J.ヴァドレイヒ(CZE)
 16SB ①91m28 レーラー ②88m23 J.フェテル(GER)・A.ルースカネン(FIN)

RIO034

A組の1位が84m46(J.ヴェーバー=GER)、通過記録到達が4人と伸び悩んだのを受けて、B組1番手で登場した日本フィールド陣のエース・新井涼平。ラインぎりぎりで踏みとどまる気合の一投でイエローラインを大きく超え、84m16の一発通過を決めて見せました。
すぐ後の投順だったケショーン・ウォルコットが、トラックのスタートでしばし待たされながらも88m68SBの大投擲で続き、6番目のヨハネス・フェテル(GER)も85m96で新井を上回って、いやこの組はレヴェルが高いぞ、と思いましたが、その後は続かず。
結局3回目までの通過記録到達は2人増えただけで、12位81m96までが決勝進出ラインということになりました。
ビッグネームではイハブ・アブデルラーマン(EGY)が大会直前にドーピングで消え、昨シーズン復調気配を見せていたテロ・ピトカマキ、また新井の好敵手的位置にいたスチュアート・ファルクハー(NZL)、ホアン・シフェン(TPE)などが予選で姿を消しましたが、おおむね実力者が勝ち残りました。決勝は昨年の世界選手権同様、83mを投げてもトップ8に行けるかどうかという、質の高い戦いになりそうです。
今季好調なのは、トマス・レーラーを筆頭にランキング4位までに3人入っているドイツ勢で、これに予選でビッグスローを見せたウォルコット、世界選手権覇者のジュリアス・イェゴ、ヴィテズラフ・ヴェセリー以下のチェコ勢3人、王国フィンランドからただ一人残ったアンティ・ルースカネンと、油断のならない面々が絡みます。
優勝、新井の順位ともに、まったく予測がつきません。4年前だって、ウォルコットが優勝するなんて誰一人思ってなかったでしょうしね。

◇男子3000mSC決勝
ケニアの内戦(?)、大御所エゼキエル・ケンボイと新世代のエース、コンセスラス・キプルトの対決は実にみどころ満載でしたが、ケンボイのスプリント力を知悉したキプルトが早めに勝負に出て快勝。ゴール前レースを捨ててしまったケンボイは3着で入線しましたが、後になって走路違反(水壕直後のコーナーを一瞬ショートカット)が発覚してDQとなってしまいました。1968年以降、ケニアが参加したオリンピックのこの種目で金メダル1人しか表彰台に送れないのは、これが2度目です。ケンボイはDQ裁定の下る前に、引退を表明しています。
キプルトの強さは別格として、ケンボイとのマッチレースに終盤まで絡んでいったエヴァン・ジャガー(USA)の底力もなかなかのもの。今後はぜひ、去年のDLパリ大会で最終障害で転倒して惜しくも逃した「7分台」を達成させてあげたいものです。
それにしても、中長距離各種目でのアメリカ勢の活躍はすごいですね。
 男子800m クレイトン・マーフィー3着
 男子5000m 2人決勝進出
 男子10000m ゲーレン・ラップ5着
 女子1500m ジェニファー・シンプソン3着、シャノン・ロウベリー4着
 女子5000m 2人決勝進出
 女子10000m モリー・ハドル6着
 女子3000mSC エマ・コバーン3着
 女子マラソン シャレーン・フラナガン6着、デジリー・リンデン7着
これ、もしケニアとエチオピアがいなければ空前のメダル・ラッシュってことになってますね。日本選手も大いに学ぶべきでしょう。

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◇女子走幅跳決勝

昨年の世界選手権ではブリトニー・リース(USA)の予選落ちによるタナボタ的な優勝のイメージがあったティアナ・バートレッタ(USA)が、今度はその世界選手権を3センチ上回る7m17のPBを跳んで、正真正銘の実力でリースをねじ伏せました。
私めが贔屓するイヴァナ・スパノヴィッチ(SRB)は、どんな時でも6m80-90は外さない安定感はさすがの一言ながら、7m10を超える優勝争いになってしまうと分が悪かったですね。それでも、1回目6m95でリードし、5回目NRになる7m08でいったん2位に浮上したのは、素晴らしい戦いぶりでした。
ロシアからただ一人、それも予選の前日になってようやく出場を認められた(IAAFはプンプンだそうです)ダリア・クリシナは、美人選手としても世界的な人気がありますが、PB(7m05)に遠く及ばない記録で9位に終わり、お騒がせしたピットを3回跳んだだけで後にしました。

◇男子200m準決勝(3組2着+2)
3組でジャスティン・ガトリンとヨハン・ブレイクがマクラを並べて討ち死に。これで決勝が断然ラクになったウサイン・ボルト、自身のレースはその一つ前で、意外や100m3位のアンドレ・デグラス(CAN)に食い下がられ、「およ?お前さんなかなかやるなあ」といった表情で和やかに談笑(?)しながらゴールを駆け抜けたのが、印象的でした。前にも、練習仲間のリチャード・トンプソン(TTO)やZ.ヒューズ(GBR)との並走では、こんな光景を見たことがありましたね。
デグラスの躍進は目覚ましいものがありますが、決勝はボルトの独り舞台になりそうな予感です。
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◇女子200m決勝
「頂上決戦」は、エレイン・トンプソンの勝利。
1メートルほどの差をつけた完勝だったにも関わらず、リザルトを確認するまで信じられないといった表情のトンプソンは、カメラマン席の前で晴れやかなポーズをとることができないほどに疲労困憊の様子。そして自信満々だったのでしょう、脱いだスパイクを地面に叩きつけて悔しがったダフネ・スキッパーズ、それぞれの姿がレースの激しさを物語っていました。
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◇女子100mH決勝
主役不在のまま決勝まで大きな波乱もなく推移したこの種目、決勝も順当に、シーズンランキングのトップ3を占めるアメリカ勢が表彰台を独占し、一歩抜け出た感じでブライアナ・ローリンズが念願の金メダルを手中にしました。つくづくケンドラ・ハリソンのシャープな走りを見たかったとは思いますが、それはDL終盤戦でのお楽しみということで。
ところで、ティファニー・ポーターとシンディ・オフィリの美人姉妹が揃って決勝レースに進んだことは、放送席的には結構な話題になっていいことだと思ったんですけど、もしかして実況の富坂アナ氏、姉妹であることを知らなかったんでしょうかね?…どうも今大会のNHKアナはこと陸上競技に関する限り、ビブを見ないとかなりな有名選手でも名前が伝えられないなど、勉強不足が甚だしいです。
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◇Day7の展望
十種競技の後半・110mHは9時30分の開始。男子400mリレーは11時40分のスタートです。パソコンに齧りつきましょう!

400mリレー予選(2組3着+2)の日本チームは第2組、内から順にイギリス、オランダ、ジャマイカ、ドイツ、キューバ、日本、トリニダードトバゴ、ブラジル…なかなかタフな組になっちゃいましたね。
ジャマイカ、イギリスの2チームはしょうがないとして、今回これといった大ゴマのいないトリニダードトバゴとブラジルには何とか勝ちたいですね。ドイツやオランダに負けるようだと、危うし!です。走順は山縣-飯塚-桐生-ケンブリッジ、もしくは山縣-飯塚-高瀬-桐生というのが有力だと言われています。どちらにしても近年の日本チームとしては最高のメンバーですから、頑張ってほしい!

女子走高跳予選があります。ロシア不参加によってアンナ・チチェロワ、マリア・クチナという2強が消え、最も大きな影響を受けた種目になりました。代わって優勝のチャンスが舞い込んできたのが、今季WL(2m01)のショーンテ・ロウ(USA)、大ヴェテランのルース・ベイティア(ESP)、そしてお馴染みブランカ・ヴラシッチ(CRO)。七種を制して日の出の勢いのナフィサトウ・ティアム(BEL)も絡んでくると、相当な混戦模様のゲームとなりそうです。

夜の部は男子砲丸投、女子やり投、女子400mH、男子200mの各決勝と十種競技の決着。こちらは、何とか放送がありますのでお楽しみに。

 
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