豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

ウサイン・ボルト

リオ五輪陸上競技TV観戦記・Day3



日本では日曜・夜のまあまあ早い時間からの女子マラソン観戦、皆さんお楽しみいただけましたか?
「日本人がいなくなったから、チャンネル変えちゃったよ」
という方はこの記事の読者にはいらっしゃらないかと思いますが、終盤の接戦にあの曲がりくねった狭い道、なかなかスリリングなレースだったと思いません?
ああいうコース設計だと、競り合っている場合は主導権を握っている方が断然有利な感じがします。付いて行ったり追いかけて行く場合、コーナーを曲がるたびにダメージが重なっていく様子が見えますものね。

私の「展望」どおり、終盤はマレ・ディババとユニス・ジェプキルイ・キルワの一騎討ちか?…と思いきや、いったん遅れかけたケニアのエース、ジェミマ・スムゴングがラスト勝負を嫌ってロング・スパート。「スプリントに自信がない場合は早めに仕掛けなければいけない」とよく言われますが、それが実際にできる、というあたりが実力です。みごとな勝利でした。
エチオピアは、ディババ以外の2人の代表を入れ替えてたんですね。(元の代表はアセレフェチ・メルギアと東京にも来たアベル・ケベデ)チームとして、どこか順調ではなかったのかもしれません。

ところで、朝方のオリンピック番組でNHKの素人っぽいお姉ちゃんキャスター(なんでこの子を抜擢したんだろう?と不思議なくらい地味で下手くそな女性)が
「3位のディババ選手は、ロンドン・オリンピックの10000m金メダリストです」
だって…もちろん出された原稿をそのまま読んだだけですが、書いた奴、蹴飛ばしてやりたくなりました。

日本勢は、いずれも本調子ではなかったとしか思えません。多くのランナーの夢を踏み台にして代表に選ばれた選手が「本調子でない」というのは許されないことだと思うのですが、少なくとも1桁順位に2人は入る、そんなメンバーとレース展開だったと思うのです。
そのような調子にしか仕上げられなかったことも実力のうちということで、強化体制と選考方法がもう一度練り直されることを期待します。懸命に走り切った3選手は、お疲れ様でした。

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さあ、月曜朝の極上ブレックファストは、男子100m準決勝と決勝。
日本の両選手、実力は発揮しましたが今一つブレイクするところまでは行きませんでした。
「9秒台でなければ決勝へ行けない」という観測の中、決勝ラインが10秒01だったことはある意味大きなチャンスを感じさせる準決勝だったわけですが、「23人中19人が9秒台ランナー」という状況では、仕方のない結果だったでしょう。トータルで11位タイの記録だった山縣選手などは、もし1組に入っていたら案外順位もタイムもいいところへ行っていたように見える奮戦ぶりでした。

いよいよ決勝!…の前に、男子400m決勝で出ましたワールドレコード!
南アフリカの旗手を務めた、昨年世界選手権チャンピオンのウェイド・ヴァンニーケルク。
誰の動きも気にしない8レーンをスイスイ走って、昨年前半までずっと「400mの2強」と言われてきたキラニ・ジェームズとラショーン・メリットを置き去りに、あのマイケル・ジョンソンの偉大な記録を一気に0.15秒も上書きしてしまいました。(私はゴール直前、一瞬「42秒台??」と思いましたよ)
そして、オリンピックの金メダルにも驚異の世界新記録にも、ニコリともしない仏頂面。ジェームズらの祝福にはしっかり応えていたり「神に感謝」のポーズはしていましたから、すごく嬉しかったのは間違いないんですが、あのポーカーフェイスは何としたことでしょう!
陸上競技での南アフリカの金メダルは、ちょっと意外な気もしますが、1996年アトランタ大会のジョサイア・チュグワネ以来のことだそうです。
Wayde van Niekerk02

そして、締めくくりは「21世紀のザ・グレーテスト伝説」、ウサイン・ボルトの独り舞台。
終わってみれば、今回は「ボルトvsガトリンvsブレイク」の構図ではなく、最初からボルトの独走だったという結果になりました。

ガトリンは、大会前の「舌戦」の影響で見事なまでに悪役に仕立て上げられ、紹介のたびに強烈なブーイングを浴びていたのは気の毒でした。
あの「舌戦報道」、どこか(古い話ですが)ソウル大会マラソン代表選考の際の「瀬古vs中山」の状況に酷似していたように思えます。選考会の福岡を欠場した瀬古利彦に対して中山竹通が「這ってでも出て来い!」と言い放ったというあのエピソードです。
後年、中山氏はこのことに触れられるたびに、「いや、ボクはそんなこと言ってないですよ」と語るそうです。「瀬古さんは立派な実績のあるランナーだから、陸連の救済措置が受けられる。仮にボクだったら、福岡には這ってでも出なきゃいけない、そういう意味のことを言った」のだと。それを、食いついたマスコミが意図的にニュアンスの異なる大見出しにしたのが世に広まった、というのが真相です。
私の印象では、ガトリンはボルトに対して敬意と相応のライヴァル意識は持っていても、悪意を込めたコメントを発するようなタイプの人には見えません。ただ「アメリカでは代表選考で救済措置はあり得ない」という意味の発言をしたところ、「ガトリンがボルトに喧嘩を売った!」とマスコミに捻じ曲げられて世界中に報道された、というのが本当のところではないでしょうか?
「売られた喧嘩」に応じたボルトのほうも、何か大人げない印象があるのは、意図された「舌戦」だったからでしょうか?…にしても、ガトリン一人がブーイングを浴びるというのは、どうもねえ。

そうした経緯が影響したのかどうか、今回のガトリンにはどこか覇気がなく、恒例の「檻をこじ開けるポーズ」も見せないままにスタートに就き、あっさりと敗れ去りました。9秒89というタイムは去年のガトリンであれば考えられないほどの「低記録」で、つまりは自滅の結果ボルトの「独走」を許した、というふうに見えました。
もう一人の強豪ヨハン・ブレイクは、予選から余裕たっぷりの動きが不気味さを感じさせましたが、4年前に比べると一回り「太った」印象で、決勝ではキレがなかった感じですね。

それにしても、トラック種目で史上初の同一種目3連覇は「偉業」の一言。今大会、すでにティルネッシュ・ディババとシェリー-アン・フレイザー-プライスが挑んでいずれも銅メダルに終わっていただけに、その偉大さが際立ちます。
競泳のマイケル・フェルプス同様、21世紀のオリンピックを牽引してきたボルトが、フェルプスと同じ「2種目3連覇」に挑む200mは、明日からのクランクイン。日本の3選手の動向と併せて、目が離せません。

大会3日目にして早くも世界新記録が2つ。アルマズ・アヤナは、よほど疲労の蓄積とかがない限り、5000mでも9割がた出してくると思います。
今日も期待が持てますよ。女子3000mSC決勝。ルース・ジェベトとハイヴィン・キエン・ジェプケモイの調子は、いいみたいです。

 

リオ五輪陸上競技TV観戦記・Day2



Day2のハイライトは、日本選手応援団としては正午からの男子100m予選、そして「世界ウォッチング」としては夜の男子10000mと女子100m決勝、ということになるでしょう。

まずは男子100m。仕上がり度合いが注目されたウサイン・ボルト(JAM)は、伸びやかな走りで10秒07(-0.4)と「不安なし」をアピール、3強を形成するジャスティン・ガトリン(10秒01/+0.8)もヨハン・ブレイク(10秒11/-0.8)も、いずれも好調な立ち上がりです。
ボルトと一緒に走った桐生祥秀は、対照的に硬さが感じられて4着に終わり、タイム通過に0.03秒及ばず敗退。
いっぽう、ケンブリッジ飛鳥はジミー・ヴィコー、スー・ビンチャン、チュランディ・マルティナといった9秒台の猛者たちを後半次々と抜き去って4組2着、山縣亮太は鋭いスタート(RT 0.111秒)からのダッシュが冴えて8組2着と、ともに勝負に強いところを見せて準決勝へと進みました。

準決勝は明日の朝9時から。スタートリストは以下のとおりです。
<1組>
 2.ハッサン・タフィアン (IRI)   (PB)10"04   (Heat)10"17
 3.ジミー・ヴィコー  (FRA)  9"86 10”19
 4、ニッケル・アシュミード (JAM)  9"90 10"13
 5.アカニ・シンビネ (RSA)  9"89 10"14
 6.シェ・チェンイェ (CHN) 10"08 10"08
 7.ベン-ユセフ・メイテ (CIV)  9"99 10"03
 8.マーヴィン・ブレイシー (USA)  9"93 10"16
 9.ヤカリ・ハーヴェイ (TUR)  9"92 10"14

<2組>
 2.ケジャエ・グリーン (ANT) 10"01 10"20
 3.キム・コリンズ (SKN)  9"93 10"18
 4.アンドリュー・フィッシャー(BRN)  9"94 10"12
 5.アンドレ・デグラス (CAN)  9"92 10"04
 6.ウサイン・ボルト (JAM)  9"58 10"07
 7.チジンドゥ・ウジャ (GBR)  9"96 10"19
 8.山縣亮太 (JPN) 10"06 10"20
 9.トレイボン・ブロメル (USA)  9"84 10"13

<3組>
 2.ジェームズ・ダサオル (GBR)  9"91 10"18
 3.スー・ビンチャン (CHN)  9"99 10"17
 4.ヨハン・ブレイク (JAM)  9"69 10"11
 5.ケマーリー・ブラウン (BRN)  9"93 10"13
 6.ジャスティン・ガトリン (USA)  9"74 10"01
 7.ケンブリッジ飛鳥 (JPN) 10"10 10"13
 8.ダニエル・ベイリー (ANT)  9"91 10"20
 9.クリストフ・ルメートル (FRA)  9"92 10"16

あいやー、もはや周りはほぼ全員、9秒台の人ばかりですね。
つまり、ケンブリッジも山縣も、その力があるはずだということ…かな?
いかに自分の走りを貫徹できるか、でしょうね。
RIO015

100mに先立って行われた男子円盤投決勝は、クリストフ・ハルティング(GER)が最終6投目に王者ピヨトル・マラホフスキー(POL)を逆転、みごとロベルトに続く珍しい記録「兄弟連覇」を果たしました。
「展望」で「クリストフは一発屋」などと書いた私は赤っ恥もいいところです。こうなったらハルティング家の伝統芸(?かどうかは知りません)「勝利のシャツ破り」を見せてもらいたいもんだと思ったんですけど、やってくれませんでしたね。やっぱりお兄さんの専売特許なんでしょうか?(笑)

夜に入って、日本期待の棒高跳予選。
棒高跳のフルエントリーは、たぶん1964年の東京大会以来でしょうね。ほとんどの大会で代表を送ってきている種目ではありますが、これだけハイレヴェルな3人が揃うのは初めてでしょう。
しかしながら、山本聖途はあえなく最初の高さを失敗してただ一人のNM。荻田大樹も楽勝のはずの5m60で消えて、頼みは大御所・澤野大地ただ一人。その澤野も5m70を失敗しましたが、5m60の一発クリアが利いて決勝に滑り込みました。集大成の決勝、ぜひとも入賞を果たしてほしいものです。
ラヴィレニ、バーバー、ケンドリクスといった優勝候補は、順調に5m70をクリアしています。

男子10000mは、前半で仲間のゲーレン・ラップ(USA)と接触して転倒したモー・ファラー(GBR)が、何事もなかったように涼しい顔で連覇達成。「転んでも金メダル」は、1972年ミュンヘン大会のラッセ・ヴィレン(FIN)以来でしょうか?
できれば最後まで競り合ったポール・タヌイ(KEN/九電工)に勝ってもらって、日本語のインタヴューが聞きたかったところですが、余裕度が全然違いました。

大迫傑は、タフな展開に中盤までよく対応したものの、本人が言うように世界が相手だとまだまだ力不足。せめて第2集団で粘るくらいのところは見せてほしかったのですが…。

男子走幅跳では安定感ナンバーワンと推したグレッグ・ラザフォードが、予選で3回目にようやく10位に入る冷や汗通過で、ますます混戦模様。結局、フィールド種目3回連続での「6回目の大逆転」で、アメリカのジェフ・ヘンダーソンが優勝をさらい、全米での「LJ好景気」をそのまま発揮する結果となりました。ラザフォードも6回目に3位に上がるジャンプで、まずは面目躍如といったところ。

6回目はそれまでトップにいたルポ・マニョンガ(RSA)が、ラスト3人の大ジャンプ連発でヒヤヒヤの連続だったでしょうが、何とか銀メダルは確保。
最終跳躍者だったジャリオン・ローソン(USA)も金メダルラインの付近に着地して場内は騒然となりましたが、記録が出てみると7m78。これにはローソン憤然と抗議し、見ているほうとしても「計測器の間違いでは?」と思いましたが、スロー映像にはローソンの左手が砂場を掃いているところがはっきりと映し出されていて、一件落着。しかし当人にとっては、諦めきれない幻のメダルだったでしょう。



そして、本日のメインディッシュは女子100m。

トラック種目史上初の3連覇を狙ったシェリー-アン・フレイザー-プライスが好スタートを切ったのも束の間、中盤から軽やかに抜け出したエレイン・トンプソンが10秒71で圧勝、シェリーアンから女王の座を継承するレースとなりました。
その1時間半ほど前に行われた準決勝で、2組1着となったシェリーアンをスキッパーズら他の選手が嬉しそうに祝福し、それに彼女が感極まったような表情を浮かべたのが、とても印象的でした。それほど、今季前半の彼女の不調は深刻で、表舞台で笑顔を絶やさない人気者の陰での苦しみを、周りの選手も気遣っていたのだなと推察されました。
みごと本番に間に合わせて全盛時に近いスタートを取り戻したシェリーアンでしたが、若い力の前に屈し、それでもレース後の彼女の表情はとても晴れやかでした。
RIO016

七種競技は、前日走高跳での快記録の流れをそのままに、やり投で大本命のジェシカ・エニス-ヒル(GBR)に7m以上の大差をつけたナフィサトゥ・ティアム(BEL)が、最後の800mで先頭を走るエニスヒルには大きく離されたものの35点差で粘り切り、優勝しました。
記録は、100mH13"56-HJ1m98-SP14m91-200m25"10-LJ6m58-JT53m13-800m2'16"54 で総合6810p.のNR、
対するエニス-ヒルは、12"84-1m89-13m86-23"49-6m34-46m06-2'09"07の6775p.
3位は夫婦金メダルを目指していたブリアン・テイセン-イートン(CAN)でした。
混成競技の最終種目は、レースでありながらまったく自分自身との戦いとなります。最後に待ち受ける最も過酷な種目を終えて、7種目を“完走”した選手たちの笑顔には、いつも感動というよりは、羨望を感じてしまいます。
RIO017

さあ、間もなく女子マラソンがスタートですよ!

 

リオ五輪直前展望・Day5(8/16)



いよいよです。いよいよ今夜の9時30分から、リオデジャネイロ・オリンピックの陸上競技がスタートします。
Day1の記事を上げたのが1週間ほど前なので、その後エントリーリストが発表されたり、状況が変わったところもあるのですが、前回までの記事は特に訂正しないでおきます。

陸上競技は、オリンピックの花形種目。日本では柔道、体操、競泳といった前半の有望種目で盛り上がり、後半の陸上でガッカリする、というパターンになりがちですが、それこそ最もワールドワイドな競技が陸上。もし日本選手が入賞ということになれば、それは他の競技ならメダルに匹敵する快挙ですからね、こちらも頑張って応援しますよ。それよりも何よりも、世界最高峰の戦いが、本当に楽しみですね!

◆Day5のプログラム

―Morning Session—
 ( 9:30)女子5000m予選/女子棒高跳予選
 ( 9:50)男子三段跳決勝/男子1500m予選/女子100mH予選
 (11:20)女子円盤投決勝
 (11:50)男子200m予選

―Evening Session—
 ( 8:30)男子走高跳決勝/女子やり投予選/男子110mH準決勝
 ( 9:05)女子走幅跳予選/女子400mH準決勝
 ( 9:35)男子400mH準決勝/女子200m準決勝
 (10:30)女子1500m決勝/男子110mH決勝


前日までが何となくスカスカの印象だったのが、この日から急に盛りだくさんな感じになってきます。
日本選手も続々と登場、注目種目の男子200mがスタートします。


◇女子5000m
 15WC ①14'26"83A.アヤナ(ETH) ②14'44"07S.テフェリ(ETH) ③14'44"14G.ディババ(ETH)
 15DL ①16p/4G.ディババ ②14p/3アヤナ ③5p/2M.チェロノ(KEN)
 16DL ①30p/3アヤナ ②24p/4チェロノ ③13p/2V.J.チェルイヨト(KEN)
 PB ①14'11"15T.ディババ ②14'12"59アヤナ ③14'20"87チェルイヨト ⑲15'08"29鈴木亜由子
 エントリー37名(ただしエチオピアが4人エントリーしており最終出場者は不明)
 ※WC=世界選手権
  DL=ダイヤモンドリーグ…「総ポイント/試合数」(2015年と16年とではポイント設定が異なる)
  PB…5000mの場合SBのみでは比較しにくいため、PBによるエントリー選手ランキングとした。


ゲンゼベ・ディババはギリギリ復帰が間に合いましたが同日に決勝のある1500mに絞っての出場。代わって姉の世界記録保持者ティルネッシュ・ディババが出てきますが、現時点で「世界最強」がアルマズ・アヤナであることは誰の目にも明らかで、ラスト勝負にまで持ち込まれない限り、アヤナのレースとなるでしょう。
その勝ちパターンになれば、残り2周あたりから離れた2番手争いを演じることになるのがT.ディババとヴィヴィアン・チェルイヨトの両ヴェテラン、そしてその他のケニア・エチオピア勢ということになりそうです。14分台のPBは13名いますが、やはりE・Kの6名の力が抜けているようです。

一縷の望みをかけてエントリーはしてきた鈴木亜由子選手ですが、長距離の場合数日で故障がどうにかなるということは考えにくいので、ほぼ欠場と見るべきかと思います。尾西美咲は昨年世界選手権での決勝進出の実績があり、速くも遅くもないペースを自ら作っていく展開に持ち込めれば、その再現も期待できるでしょうが、オリンピックは世界選手権以上に予選が速い展開になりがちで、苦戦は免れないところ。

◇女子円盤投

 15WC ①69m28D.カバレロ(CUB) ②67m39S.ペルコヴィッチ(CRO) ③65m53N.ミュラー(GER)
 15DL ①30p/7ペルコヴィッチ ②7p/3Y.ペレス(CUB) ③5p/2カバレロ
 16DL ①50p/5ペルコヴィッチ ②14p/3ミュラー ③12p/3カバレロ・12p/2D.サミュエルズ(AUS)
 16SB ①70m88ペルコヴィッチ ②68m86ペレス ③68m49J.フィッシャー(GER)
 エントリー35名
Sandra Perkovic
 https://www.iaaf.org/news/preview/rio-2016-womens-discus

今季DL5戦5勝、現役唯一の70mスロワー、サンドラ・ペルコヴィッチの独擅場。5000mのアヤナともども、全種目を通じても最も堅い優勝候補の一人ではないでしょうか。
投擲種目でこれだけの圧倒的優位を築くのは珍しいと思いますが、力量・メンタルともに絶頂期にある今の彼女(26歳)には、何物も通用しそうにありません。ただ、昨年の世界選手権のような波乱が起きる可能性もないわけではなく、その本人・カバレロとペレスのキューバ勢、フィッシャー、ミュラーのドイツ勢に、「金」を狙う意欲は十分にあります。

◇男子200m

 15WC ①19"55U.ボルト(JAM) ②19"74J.ガトリン(USA) ③19"87A.ジョボドワナ(RSA)
 15DL ①16p/3A.エドワード(PAN) ②11p/6ジョボドワナ ③4p/1R.ドワイヤー(JAM)
 16DL ①36p/5エドワード ②22p/3A.ウエブ(USA) ③10p/1A.デ-グラス(CAN)
 16SB ①19"74L.メリット(USA) ②19”75ガトリン ③19"85ウエブ ⑬20"11飯塚翔太
 エントリー81名(ジャマイカ・ブラジルは4名)

100mとともに、ウサイン・ボルトにトラック史上前例のない3連覇の偉業がかかります。
ロンドンでの19秒89で不安を一掃したとされる今季のボルトですが、爆弾を抱えていることに変わりはなく、また十分なトレーニングが積めているかどうか、特に200mを走り切るスタミナに不安は残ります。ジャスティン・ガトリン、ラショーン・メリットのアメリカ2枚看板に19秒5あたりまで見込める能力があり、また19秒26を持つヨハン・ブレイク(JAM)も来ています。
すべては、100mを走ってボルトの調子がどうなのか、にかかってくると思われます。
この種目はDLにトップ選手が揃うことが少なく、その中でコツコツとポイントを稼いでいるアロンゾ・エドワード(PAN)のSBは20秒04に過ぎず、世界選手権では4位と健闘しているもののメダル争いまでは荷が重いか?またゲツリク情報によれば、ミゲル・フランシス(ANT)という選手がWLの19秒67を7月10日に出したとなっていますが、IAAFのリストにその情報はありません。
さて、どうなるでしょう?

日本勢にとっても期待の種目です。記録的には予選通過は楽勝、20秒0台を出せば決勝まで、と皮算用は成り立ちますが、とにかく日本選手には予選から準決勝にかけて記録を落とす傾向があるので、そこを何とか頑張ってもらいたいものです。飯塚翔太はその点、大舞台の経験が豊富で心得ているでしょうが、今季の20秒11は条件に恵まれた中でのものですので、やはり準決勝突破にはよほどの好調が条件となるでしょう。
高瀬、藤光は昨年の調子を取り戻せれば、飯塚と同様の期待が持てます。100mと200mはヨンケイの代表選考会の意味合いもあると思われますので、各選手の奮闘が楽しみです。



◇男子110mH

 15WC ①12"98S.シュベンコフ(RUS) ②13"03H.パーチメント(JAM) ③13"04A.メリット(USA)
 15DL ①16p/6D.オリヴァー(USA) ②12p/4O.オルテガ(CUB) ③11p/3シュベンコフ
 16DL ①30p/4オルテガ(ESP※国籍変更) ②20p/2O.マクレオド(JAM) ③15p/3オリヴァー
 16SB ①12"98マクレオド ②13"03D.アレン(USA) ③13"04オルテガ 30)13"47矢澤航
 エントリー41名


ここ数年、記録的に停滞が続き、またこれといった中心選手がなかなか定まらない種目です。昨年世界覇者のシュベンコフも出場叶わず、世界記録保持者アリエス・メリットやデーヴィッド・オリヴァーも全米予選で姿を消しました。いちおう、DL開幕2戦を連勝したオマー・マクレオドと中盤で2勝のオルランド・オルテガの2人が軸になるでしょうが、優勝の行方は混沌としています。
面白いのは、キューバからかつての世界記録保持者ダイロン・ロブレスがエントリーしてきていることです。大きな大会ではいつも脚のケガを我慢しながら走っていたような印象のあるロブレス、まだ29歳と老け込む年齢ではありません。予選から注目してみたいと思います。
日本の矢澤航は、標準記録ギリギリのタイムですから、ほとんど全員が格上の選手ということで、気負わず日本新記録を目指してほしいところです。

◇女子走幅跳

 15WC ①7m14T.バートレッタ(USA) ②7m07S.プロクター(GBR) ③7m01I.シュパノヴィッチ(SRB)
 15DL ①20p/6バートレッタ ②12p/2シュパノヴィッチ ③9p/5プロクター
 16DL ①36p/4シュパノヴィッチ ②16p/2B.リース ③15p/4C.ネッティー(CAN)
 16SB ①7m31リース ②7m16S.モゲナラ(GER) ③7m05B.ストラットン(AUS)
 エントリー39名


良くも悪くも数年来主役を演じ続けているブリトニー・リース。2009年から世界大会4連覇を飾るも、12年ロンドンでは予選を9位、13年モスクワではギリギリの12位で通過という冷や汗の末の勝利で、次の15年北京ではとうとう予選落ち。これでリースの時代は終わったかと思ったら、今年の全米予選で歴代8位タイの7m31という大ジャンプでまたもや主演女優の座を掴みました。100mとの二刀流に挑み続けるティアナ・バートレッタとともに、アメリカの2強を中心としたゲームになりそうです。
ランク2位のゾスティーン・モゲナラと3位のブルック・ストラットンはともに大舞台での実績に乏しく、むしろ安定しているのは4位(6m95)のイヴァナ・シュパノヴィッチ(セルビア)。もしまたリースの乱調があったり、雨のような厳しいコンディションでのゲームになると、持ち味の堅実性が彼女をトップに押し上げるかもしれません。
日本の甲斐好美は、昨年来6m70以上を4回跳んでいる力があります。小柄ながら武器は助走のスピードで、同時に難点は踏切の不安定。気温の高い中での実施は大歓迎ということなので、一発ドンピシャリのジャンプを期待します。

Ivana Spanovic
 https://www.iaaf.org/news/series/first-impressions-ivana-spanovic

◇女子1500m
 15WC ①4'08"09G.ディババ(ETH) ②4'08"96F.キピエゴン(KEN) ③4'09"34S.ハッサン(NED)
 15DL ①18p/6ハッサン ②12p/3キピエゴン ③6p/3D.セヤウム(ETH)
 16DL ①30p/3キピエゴン ②18p/3L.ミュアー(GBR) ③14p/3M.バータ(SWE)
 16SB ①3'56"41キピエゴン ②3'57"49ミュアー ③3'58"10セヤウム
 エントリー42名


昨年衝撃の世界新記録を出したディババ3姉妹の末妹ゲンゼベが、今年はまったく音沙汰がなく心配していましたが、7月にようやく姿を現し、早々にサブ4を記録して復活をアピールしました。本来の専門種目である5000mとの日程的な兼ね合いがどうかというところ、今回は強敵のアヤナ、姉のティルネッシュがいる5000は回避し、1500一本で勝負をかけます。
ディババ不在中に強さを見せているのが、北京では敗れていたフェイス・キピエゴン。ディババのブランクを考慮すれば、こちらが本命と言ってもよいでしょうが、直線のスピード勝負になると予測がつきません。他にメダル候補として、実力者のシファン・ハッサン、今季急速に力をつけてきたローラ・ミュアー、レース巧者のジェニファー・シンプソン(USA)らの名前を挙げておきましょう。


 

リオ五輪直前展望・Day2(8/13)



オリンピックも今日で競技4日目。陸上競技の開始まであと4日と迫ってまいりました。
ここまで見てきた中で、もちろん競泳の男子400m個人メドレー、ハムスケとダイヤのダブル表彰台には大喝采でしたが、私が個人的に超熱狂したのは自転車の男女個人ロードレース。美しい海岸風景の平坦コースと選手を苦悶させる登り坂、そしてモータースポーツさながらのクラッシュ・シーンが頻発する魔の下り坂、ゴール前数㎞の平坦コースを必死に逃げるクライマーと追走集団の鬼ごっこ…テレビでは放送できない長丁場(男子6時間超、女子4時間)のレースは見どころ満載で、NHKのネット放送に齧りついていましたですよ!
やっぱり、陸上おたくはレースものが大好き。自転車競技には、陸上関係者が学ぶべき要素もたくさんあります。見逃した方は、ぜひNHKの特設ページを見てみてください。(男子は実況なしですが、女子はなんと、あの刈屋富士雄アナのプレミアム実況つき!)

◆Day2のプログラム

―Morning Session—
 (  9:30)男子100m予備予選/女子TJ予選/女子3000mSC予選/
 (10:50)男子円盤投決勝/女子400m予選/七種競技・LJ/男子100m予選

―Evening Session—
 (  8:00)七種競技・JT/男子PV予選/男子400m準決勝/男子走幅跳決勝/
 (  9:00)女子100m準決勝/七種競技・JT/男子800m準決勝
 (  9:55)男子10000m決勝
 (10:35)女子100m決勝/七種競技・800m


◇男子100m

  15WC 9”79U.ボルト(JAM) ②9”80J.ガトリン(USA) ③9”92A.デグラス(CAN)・T.ブロメル(USA
  15DL  20p./4 ガトリン ②7p./4 J.ヴィコー(FRA) ③5p./4 M.ロジャーズ(USA
  16DL  20p./2 ガトリン ②13p./3 ロジャーズ ③10p./1 デグラス・J.A.ハーヴェイ(TUR)・ヴィコー
  16WL  9”80 ガトリン ②9”84 ブロメル ③9”86 ヴィコー ⑲10”01 桐生祥秀(東洋大)

  ※WC=世界選手権 
    DL=ダイヤモンドリーグ「総計ポイント/試合数」(15年と16年とではポイント設定が異なる)

    WL=シーズン・ランキング(五輪欠場が判明している選手、1か国4人目以降の選手は除外) 


故障がちなコンディションとレース数の少なさからボルトに黄信号が囁かれる一方で、ガトリンが順調にステップを刻んできている、というシーズン前半の状況は、去年と同じ。去年に比べればガトリンのタイム的な勢いが物足りないところもあり、むしろDLロンドン大会(200m)で「不安なし」をアピールしたボルトの上昇度は、去年を上回るかもしれません。
ただし、去年との大きな違いはここにボルト最大の難敵にして同僚のヨハン・ブレイクが加わること。
まだジャマイカ選手権の走りぶりくらいしか参考にするものがないとはいえ、もともと潜在能力はボルト級と言われるだけに、「まとめてやっつける」光景もあり得なくはありません。
いずれにしても、「21世紀のザ・グレーテスト」にとって、2年続けての「キンシャサの奇跡」が必要な状況は、間違いないでしょう。


優勝争いから離れたところでは、直前のDLでも故障再発したかに見えるキム・コリンズ(SKN)が無事に出てくるかどうか、歴史に残る41歳のパフォーマンスを見せられるかどうか、日本選手を含めて36年ぶりに黒人以外の決勝進出者が出るかどうか、といった話題があります。
日本勢は、あまり気持ちで「9秒台」にこだわらず(風次第ですしね)、肩の力を抜いてファースト・ラウンドに臨んでもらいたいものだと思います。

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◇女子3000mSC

 15WC ①9'19"11H.K.ジェプケモイ(KEN) ②9'19"24H.グリビ(TUN) ③9'19"25G.F.クラウゼ(GER)
 15WL ①15p/5V.ニャンブラ(KEN) ②13p/5ジェプケモイ ③12p/2グリビ
 16DL ①26p/3R.ジェベト(BRN)、ジェプケモイ ③15p/4S.アセファ(ETH)
 16WL ①8'59"97 ジェベト ②9'00"01 ジェプケモイ ③9'10"76 E.コバーン(USA)
50.9'44"22 高見澤安珠

DLユージーン大会でジェベトとジェプケモイ(放送では「キエン」と呼称)が繰り広げた9分の壁を挟んでの攻防を見る限り、この両者の圧倒的優位を感じさせる今シーズン。上海ではジェプケモイが勝ち、あとはオスロとストックホルムで1勝ずつ。ユージーンのレースも途中独走になりかけたジェベトがゴール前ヨレヨレになったところをジェプケモイが激しく追い上げたもので、力関係はほぼ互角でしょうか。
9分を破るというのは途轍もないことなのですが、2人ともレース運びやハードリングに大きな不安を残すことも確かです。そこを研究し尽くしているとすれば、レース巧者のグリビやコバーンにも勝機が生まれます。
世界大会初挑戦の高見澤としては、序盤のスローペースに惑わされず、自分のペースに徹して粘り切ることに尽きるでしょう。

◇男子円盤投

 15WC ①67m40P.マラホフスキー(POL) ②66m90P.ミラノフ(BEL) ③65m18R.ウルバネク(POL)
 15DL ①21p/6マラホフスキー ②19p/6ウルバネク ③6p/2ミラノフ
 16DL ①41p/5マラホフスキー ②23p/4ウルバネク ③14p/4D.ストール(SWE)
 16WL ①68m15マラホフスキー ②68m06C.ハルティング(GER) ③68m04R.ハルティング(GER)


昨年来、ピョートル・マラホフスキーの天下となっている種目ですが、ファンが気にかけていたのは鳴りを潜め続けていたロベルト・ハルティング(GER)の状況です。このロンドン王者がとうとう6月になって復活を果たし、ローマで3位、バーミンガムで2位と調子を上げると、その後きっちりとSBを投げて完全復調をアピールしています。
兄弟で表彰台を、といきたいところながら、クリストフの方はまだまだ一発屋の域を抜け出せず、ウルバネクやミラノフの安定感が光っています。

◇男子走幅跳

 15WC ①8m41G.ラザフォード(GBR) ②8m24F.ラピエール(AUS) ③8m18ワン・チャナン(CHN)
 15DL ①21p/5ラザフォード ②10p/3M.デンディ(USA) ③8p/3M.ハートフィールド(USA)
 16DL ①24p/3ガオ・ジンロン(CHN) ②24p/5ラピエール ③22p/4R.サマーイ(RSA)
 16WL ①8m58J.ローソン(USA) ②8m44M.トルネウス(SWE) ③8m42デンディ


大混戦。ロンドン王者のグレッグ・ラザフォードが要所で勝負強いところを見せてはいるものの、記録的に突き抜けているわけではありません。8m30-50を跳べば誰にでも優勝のチャンスがあるということで、その候補者を挙げれば片手では足りなくなります。
去年から今年にかけて勢力図を大いに伸ばしているのが中国勢で、世界選手権では3人が3位から5位を占め、今年もガオ・ジンロンが3戦2勝でDLトップ、シ・ユウハオが8m30でランキング9位と人材が豊富です。
と思っていたら、7月になって突如記録ラッシュに沸いたのが全米予選。ジェフ・ヘンダーソンの8m59wを筆頭に、6位まで8m30オーバーという盛況ぶりで、せっかく3位になったウィル・クレイが公認で参加標準記録を跳んでいないために代表になれない、という珍事まで起きました。
予選から通して、波乱連続の試合になるのではないでしょうか。となると、修羅場経験の豊富なラザフォード、ラピエールに分があるような気がします。

◇男子10000m(DL非実施)

  15WC 27’01”13 M.ファラー ②27’01”76 G.カムウォロル(KEN) ③27’02”83 P.タヌイ(KEN
  16WL  26’51”11 Y.デメラシュ(ETH) ②26’53”71 ファラー ③26’57”33T.トーラ(ETH

   27’29”69 村山紘太(旭化成)※村山の記録は昨年のものを適用 

ロンドン2冠王のファラーに付け入る隙が見出せず、連覇が濃厚と思われます。当然のことながら、ケニア・エチオピア勢の強烈な包囲網をかいくぐり、ラスト53秒の爆発力を温存するレースパターンには神経を砕くでしょうが、問題はないでしょう。
そのエチオピア代表が誰になったのか、ケニアも4人登録されている10000代表(タヌイ、ムネリア、カムウォロル、カロキ)のうちの誰なのか、今一つ情報が伝わってきませんが、まあ誰が来てもファラーの定位置以外の椅子はほぼ占めてしまうでしょう。
27分台前半の走力があれば、アフリカ勢の激しい揺さぶりにも何とか対応可能、というところを信じて、大迫傑と村山謙太の戦いぶりに注目していきたいと思います。


 

出たぁっ!女子100mH世界新!!



IAAFダイヤモンドリーグ第10戦・ロンドン大会Ⅰで、女子100mHに待望の世界新記録が誕生しました。

DLレースでは珍しく2組の予選から行われ、決勝にはアメリカからDLトップのケンドラ・ハリソン、リオ代表の3人(ブレアナ・ローリンズ、クリスティ・キャストリン、ニア・アリ)に昨年前半のエースだったジャスミン・ストワーズ、地元イギリスからは第一人者のティファニー・ポーターと七種競技のスーパースター、ジェシカ・エニス・ヒルなど、名だたるメンバーが9人並びました。

序盤に少しもたついた感のあったハリソンですが、中盤からはいつものように独擅場。5~6台目あたりでは一人だけ1メートル以上抜け出す圧倒的な速さとその後も崩れない安定感で、全米女王のローリンズ以下をぶっちぎってゴールを駆け抜けました。

この時、ハプニングがありました。
世界中の注目を集める画面上のタイマーが、明らかにハリソンのゴールの瞬間から少し遅れて「12:58」という数字で停止したのです。
ということは、フィールド内に置かれた電光表示板にも同じ数字が表れているわけで、好記録の感触を体感していたであろうハリソンは、しばらく「あら?」という感じで少し浮かない表情をしていました。
数秒後、場内に大きなどよめきが起こり、先に正式タイムを知ったアリに教えられて、ハリソンの顔が歓喜のそれに一変しました。やがて画面に出た数字は「WR 12:20」!風は+0.3、世界新記録です。 
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今年の陸上界、これまで記録面での話題の中心はクリスチャン・テイラーでもアルマズ・アヤナでもなく、何といってもケンドラ・ハリソンでした。

5月28日にユージーンのDL第4戦で叩き出した12秒24は、1988年ソウル・オリンピックの直前に、そのオリンピックでも金メダリストとなるヨルダンカ・ドンコワ(BUL)が出した世界記録12秒21に0.03秒と迫るものでした。

女子100mHはここ数年、絶対女王と呼べる存在がなく、一時期その座に近づきかけたサリー・ピアソン(AUS)も故障で戦線を去って、次から次へと女王が移り変わる状況が続いてきました。その中で、今年に限ってはハリソンの速さと安定感は図抜けており、ダイヤモンドリーグでは出場全レースを圧倒的な大差で勝ってきています。
この先のDLレースで、あるいはリオ・オリンピックで、いよいよ28年間破られなかった大記録が破られるかもしれない…それは、あまり言いたくはないですが、当時の東欧選手によって打ち立てられたスプリント系・パワー系の種目の記録について回る「疑惑」を記録ごと洗い流してもらいたいという、陸上界の抱える悲願が一つ実現することへの期待感でした。

そのハリソンが、同じユージーンで行われた全米選手権でまさかまさかの6位に敗れてオリンピック出場権を失い、失意からの復帰戦として登場したのがこのロンドン大会。おそらく、このまま今年のDL戦線を独走状態で制することになるでしょう。
「実力ナンバーワンと衆人が認め、しかも世界記録を出したばかりの選手がオリンピックに出られない」
このことは、今後のアメリカの代表選考方式に論議の一石を投ずることになるかもしれません。「全米3着以外は問答無用」だったことが、将来もしかしたら変わることがあるかもしれない…それほどに大きな大きな出来事が、今日の世界新記録だったと言ってもよいでしょう。

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さて、今回のロンドン大会1日目の最大の注目は、ウサイン・ボルトの復帰レースとなる男子200mでした。
ジャマイカ選手権で100m決勝と200m予選をキャンセルし、こちらもハリソン同様本来なら「問答無用」に代表にはなれないはずのボルト。その実績により救済されたことは周知のとおりですが、今回のレースで万一故障再発、あるいは凡走に終わった場合にはその代表権を取り消される可能性もあるということ、そして何よりも本番での「2種目3連覇」へ向けて、状態はどうなのかを世界中が見守ったレースになったのです。

結果は19秒89で差をつけての優勝。
ゴール前は余裕というよりは、少し息の上がったようなところも感じられましたが、昨年の世界選手権と同様、どうやら本番のスタートラインには間に合うというところへたどり着いたようです。
もちろん、相変わらず猛獣ジャスティン・ガトリン(USA)が牙を研いで待ち構えていますし、今年は最大の難敵ともいえる同僚ヨハン・ブレイク(JAM)が戻ってきています。ボルトにとって、競技人生最大のピンチであることに変わりはなく、その答えの出るリオの100m決勝までは、あと3週間となっています。

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