豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

ウサイン・ボルト

ロンドン世界選手権観戦記 ② ~それからの100m


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素直に感動した…というのが真っ当な感想なのだと思います。
ですが早朝の男子100m決勝を観終わった私は、複雑な思いが渦巻いて気持ちを整理することがなかなかできません。

偉大なるボルトは、個人レースの最後に、2008年以降メジャーな大会で獲ったことのない銅色のメダルを手にすることになりました。
これもある意味、有終の美であったと言えるかもしれません。
そして、勝ったのが他の誰でもないジャスティン・ガトリンであったことが、本当に本当に嬉しかった。
一種の風評被害とさえ言える激しいブーイングを浴びながら、王座を失った12年間を耐え続けた苦悩を払拭した、“心優しい猛獣”。
空前絶後のスプリンターに挑み続け、敗れ続け、最後に引導を渡す役目を果たしたのが、その1代前のオリンピック・チャンピオンであったということが、ここ数年間の男子100m戦線をこの上なく重厚で色鮮やかな史実に仕立て上げてきたのだという気がしています。

このあと、男子100mはどうなっていくのでしょうか?
オリンピックや世界選手権の決勝が9秒9台で決着したのは、2011年テグ大会、あのボルトがフォールス・スタートで失格しヨハン・ブレイクが優勝した時の9秒92以来です。ただし、この時は向い風1.4mでした。
その前となると、2003年パリ大会の10秒07(w0.0)で、勝ったのはあのキム・コリンズ(SKN)。つまり、ボルトもガトリンもいない状況だった時代以来、と強引に位置づけられなくもありません。
もちろん、現在でも9秒8台のタイムを出す選手はいますし、来年になればまた、新たな顔ぶれが次々と名乗りを挙げるでしょう。
しかしながら、ボルト、ガトリン、あるいはタイソン・ゲイやアサファ・パウエル、ヨハン・ブレイクらの実力の衰え、そして引退(ガトリンはもちろんそう表明はしていませんしDL等々には出てくることが考えらえますが、事実上の花道と言っていいでしょう)とともに、100m競走全体のレベルは大きく後退した、という印象は拭えません。
そのことが逆に、ボルトにとっては有終の金メダルを獲得する絶好のチャンスではあったのですが…。
09



そして、空前の盛り上がりを見せる日本スプリント界にとっても、千載一遇のチャンスがぶら下がっていたのが、今大会でした。
「9秒台を出さなくては」と言われ続けてきた100m決勝進出ラインが、なんと10秒10(スー・ビンチャン)。現在の日本代表クラスであれば誰でも十分に到達可能なレベルであり、日本選手権の予選から4レース続けて10秒05~06で走っていたサニブラウン・ハキームにとってはまさに指呼の間に捉えていたタイムだったのです。
2大会続けて決勝に進出(前回は決勝進出者が9名いてその最下位だったため、今回が初入賞)したスー・ビンチャンには大いに敬意を表するとして、なぜ日本選手がそこに届かなかったのか、これは個々の選手にとっての重大な研究課題です。
9秒台と決勝進出、2つの夢はまた持ち越しとなりました。陸上の神様は、「夢は夢として、長く持ち続ける方が幸せだよ」とでも仰るのでしょうか?

それにしても、予選でブレイクを翻弄したサニブラウンの速さ、中盤までボルトの前を走った多田修平のスタートダッシュと、数年前までは考えも及ばなかった「異次元との勝負」を実現しつつあるのが、今の日本スプリント界ではあります。
「いつか」は必ずやって来る。そう信じて、次のレース、次の世界選手権を待つことにしましょう。

ロンドン世界選手権展望 ② ~絶対王者の動向に注目


DLモナコ大会でのウサイン・ボルトを、皆さんどう見られたでしょうか?
私の見立ては、前回の記事を書いた時の状況と変わりなし、というものです。
つまり、今回世界選手権のラスト・レースに臨むボルトは男子100mの中心にはいるものの、絶対的な本命とするほどの高みにいるわけではなく、近年では比較的レベルが低い100mレースの中にあって優勝候補の一人に過ぎない、という状況です。
勝ったとはいっても、日本選手と互角の実力と目されるスー・ビンチャンあたりに「あれ、ひょっとして俺、ボルトに勝っちゃうかも?」と思わせるようなレースであったことは否めません。
もちろん、残りの約2週間できっちりと仕上げてくる可能性は高いでしょうし、それが偉大なるボルトの最大の武器でもあるのですが、それはガトリンやブレイクなど他の選手にも言えることです。結局、その時点で最もいいフィジカル・コンディションを作り上げた選手が勝つ、ということになるでしょう。

ボルトのことはひとまず措いて、今大会で間違いなく「主役」の重責を担い、そしてまず間違いなくその大任を果たすだろう、と思われる選手たちについて、今回はまとめてみたいと思います。

◆こちらも“ラスト・ラン”、地元の英雄モー・ファラー
モハメド・ファラーが世界選手権に初登場したのは、2007年の大阪大会。5000m6位というのがデビュー戦の成績でした。
翌年の北京五輪は予選落ち、続く09年ベルリン大会は7位と振るいませんでしたが、11年テグ大会で5000m優勝、それに先立ち10000mではゴール寸前まで単独トップを快走しながらイブラヒム・ジェイラン(ETH=この年、Hondaに所属)の猛烈な追い込みに屈して2位。翌12年以降は、2度のオリンピック、2度の世界選手権で全て5000・10000の2冠を制し続けています。
そのファラーは昨年のリオ五輪で史上2人目となる「長距離2種目2連覇」を易々と達成した後、34歳となる今年をトラック・レースのラスト・シーズンとすること、以後はマラソンをはじめとするロード戦線に専念すると宣言しています。

その強さ、その鉄板ぶりを支えているのは、どんなペースや展開になっても今のところは100%の確率で繰り出されている、ラスト1周53~54秒(時に52秒台)という強烈なラストスパートです。長距離種目をお家芸とするケニア、エチオピア等が複数のランナーで包囲し、自転車レースさながらのチーム戦術でファラーの勝ちパターンを封じ込めようとしても、一向に動ずることなく最後の1周で勝負を決めてしまいます。
昨年のリオでは、10000mの序盤で転倒しながらも何事もなかったかのように優勝。今年も、DLユージーン大会5000mで、ヨミフ・ケジェルチャ(ETH)、ジョフリー・カムウォロル(KEN)以下に、差は僅かですが測り知れないほどの実力差を見せつけて快勝。調整にも、年齢的な瞬発力の変化にも問題はなさそうです。

このファラーが、2012年以降のレースで途中のペース変化に消耗して失速したり、終盤のデッドヒートに競り負けたりといった光景を、私は見たことがありません。せいぜい、1500mのレースに出てさすがにトップのスピードに追走するのが精一杯だった、ということがあったくらいです。(とはいえ、1500でも3分28秒台!のPBを持っているのです)
まず、負ける場面を想像しがたいというのが正直なところなのですが、勝負に絶対はあり得ません。打倒の候補としては、5000mでは今季WLの12分55秒23を見事なラストの斬れとともに叩き出したムクタル・エドリス(ETH)か、猛暑の全米選手権を13分08秒台で圧勝したポール・チェリモか、といったあたりでしょう。
初日に行われる10000mのほうは、いよいよ盤石です。せいぜい、日本人選手がいないぶん、ポール・タヌイ(九電工)やビダン・カロキ(DeNA)の善戦を期待しましょう。

Mo Farah
オリンピック・チャンピオン・ユニを着てDLレースを走るファラー
(https://www.iaaf.org/news/news/farah-birmingham-iaaf-diamond-league)

◆スプリント新女王トンプソン
前回北京大会まで、女子スプリント、とりわけ100mの絶対女王に君臨していたのは、シェリー‐アン・フレイザー‐プライス(JAM)でした。自身で経営する美容院仕込みのド派手なヘアスタイルが毎回楽しみでしたが、前回は特に、緑色のドレッド・ヘアにヒマワリの花が5つ並んだ髪飾りという艶姿で、あっと驚かせてくれました。
そのシェリーアンの“子分”よろしく、同じヒマワリの髪飾り(ただし花は4つ)をつけて登場し、200mで日の出の勢いのダフネ・スキッパーズ(NED)に肉薄したのが、エレイン・トンプソンの世界デビューでした。
翌年のリオで、あれよあれよという間に100、200を制覇。100m3連覇を狙っていたシェリーアンの正統的後継者と、スキッパーズが手にしかけていたスプリント・スターの座を、いっぺんに手に入れてしまいました。リオで200のレースが終わった時には、トンプソンを祝福した後に鬼のような形相に一変しスパイクを地面に叩きつけて悔しがったスキッパーズでしたが、それ以降も、そのリベンジをトンプソンはことごとく返り討ちにしています。

今季はDLユージーン大会の200mで、21秒77(+1.5)の激走を見せたトリ・ボウイ(USA)の前に一敗地にまみれたとはいえ、DL100mでは4戦全勝。決して大差で勝っているというわけでもありませんが、隙の無さを感じさせる勝ちっぷりで、自身とシェリーアンが共有している10秒70のジャマイカ記録の更新も、十分に期待できそうです。
ロンドンでは、ボルトと同様に200を回避して100mと400mリレーに専念。100mのジャマイカ勢は、シェリーアンが産休に入ったのをはじめ完全に新旧交代の時を迎えており、マリー‐ジョゼ・タルー、ミリエル・アウレ(ともにCIV)、ブレッシング・オカグバレ(NGR)、ミシェリー・アイー(TTO)といった常連組もやや役者不足。女王奪還を目論むアメリカ勢の調子如何にもよるでしょうが、トンプソンが100mの大本命であることは間違いありません。
Elaine Thompson
(https://www.iaaf.org/news/report/thompson-miller-uibo-rabat-diamond-league)



◆強過ぎる!女子800mは「連単」なら1点買い?
キャスター・セメンヤ(RSA)の強さは、もうどうしようもありません。モナコでは1分55秒27のWL(南アフリカ記録)を余裕で叩き出して、30年以上破られていない世界記録すら、視野に入ってきています。
積み上げた連勝記録は現在18。これは女子のこの種目では、驚異的と言っていいでしょう。そのほとんどで2着を占めているのがフランシーヌ・ニヨンサバ(BDI)で、連勝単式ならば1点買いしか考えられないという趨勢です。モナコではセメンヤに0.20秒差と善戦したとはいえ、余裕度が違いました。さらに、3着マーガレット・ワンブイ(KEN)で「三連単」も鉄板、と言いたいところでしたが、こちらはモナコで最下位に沈んでちょっとミソつけちゃいましたね。
ドーピング禍で沈黙しているロシア勢あたりが復活してこないと、セメンヤの快進撃はそうそうストップできないのではないか、という気がしています。

◆「ネクスト・ボルト」はヴァンニーケルク?
ネクスト・ボルト、と言えばいっときヨハン・ブレイク(JAM)の代名詞になっていましたが、現状でこの名にいちばん近いところにいるのが、400mの世界記録保持者ウェイド・ヴァンニーケルク(RSA)でしょう。
リオで記録した43秒03というタイムの物凄さは、ゴールしてまるで表情を変えない静かな佇まいによって、いっそう凄味を増した感があります。その点、テレビ映りを常に意識しつつファンサービスに余念のないボルトとは好対照ですが、その記録が42秒台に突入、ということにでもなれば、いよいよ陸上界の主役は彼のものとなるでしょう。
今季はその足固めをするかのように、100mで9秒94(+0.9)、200mで19秒84(+1.2)と次々にPBを更新。(100で9秒台、200で19秒台、400で43秒台の記録を持っているのは史上ただ一人です)特殊種目の300mでも世界最高記録の30秒81を出しています。本業の400mでは、DLに2回登場していずれも軽~く43秒台で優勝。
今回は400だけでなく200mでも、ボルト4連覇の後を承けてマイケル・ジョンソン以来の二冠を狙ってくる計画のようです。

ただ、記録的に見ると200mではアイザック・マクワラ(BOT)が19秒77(0.0)と一歩リードしており、DLモナコの400mでも先行したヴァンニーケルクをマクワラが直線入り口でいったん追い越すという意外な接戦を展開しています。それを冷静に差し返したヴァンニーケルクの強さが印象的ではありましたが、警戒心は相当に抱いたことでしょう。
それでも、400mに関する限り、42秒台を見据えたヴァンニーケルクの勝利は不動ではないでしょうか。400の準決勝と決勝の間の日に予選が行われる200mのほうは、「勝てれば儲けもの」の心境でいけば、2冠は意外に簡単に転がり込んでくるような気もします。ただし、こちらにはマクワラのほか、100との掛け持ちになるブレイク、アンドレ・ドグラス(CAN)、クリスチャン・コールマン(USA)といった強敵も、手ぐすねを引いているはずです。

いずれ、ヴァンニーケルクが100mにもエントリー、なんてことになったら凄いですね。ちなみに、100m、200m、400mのスプリント3種目すべてで金メダルというのは、1956年のメルボルン五輪(100・200)と64年東京五輪(400)の2大会にまたがって女子のベティ・カスバート(AUS)が達成しているのみです。

◆ラシツケネとヴォダルチク…鉄板中の鉄板はこの二人
と、最後は雑になってしまいますが、強過ぎるぶん、但し書きが少なくなってしまうもので。
女子走高跳のマリア・ラシツケネ(ANA=旧姓・クチナ)と同ハンマー投のアニタ・ヴォダルチク(POL)です。
※ANAは「Authorized Neutral Athlete」…ナショナルチームに所属せず出場権を認められた選手。ドーピング問題で資格停止中のロシア陸連とは無関係に、IAAFの大会に出場を認められているロシア国籍のラシツケネ、セルゲイ・シュベンコフ(男子110mH)、ダリア・クリシナ(女子走幅跳)などの選手たちについての“国名表示”で、国旗は白無地で表現されます。

前回北京大会で先輩のアンナ・チチェロワを下して世界一の座を獲得しながら、ロシアのドーピング問題でオリンピック・イヤーを棒に振らされたラシツケネは、今季解き放たれたかのように5月27日(DLユージーン大会)以降毎週のように試合に出場、14戦全勝、2m06を筆頭に11試合で2m以上をクリアしています。ラシツケネ以外で、今季2mをクリアした選手はまだいません。
オリンピック・チャンピオンのルース・ベイティア(ESP)が38歳となった今季まったく振るわず、銀メダルのミレラ・デミレヴァ(BUL)も低空飛行、となるともはやライバル不在の独擅場となるでしょう。ローザンヌでチャレンジした2m10の世界新記録の高さに、ロンドンで再びバーを上げられるかが興味の焦点です。滅多に見せない美しい笑顔を、ぜひ見たいものです。
あとの興味は2位争い。全米で1m99を跳んだヴァシュティ・カニンガム(USA)、モナコで97まで伸ばしてきたユリア・レフチェンコ(UKR)の19歳コンビ、もしダブルエントリーしてくるならですが、七種競技の優勝候補筆頭ナフィサトゥ・ティアム(BEL)といった新興勢力に期待です。

女子ハンマー投も、非DL種目のためTV等では伝わってきませんが同じような状況で、ヴォダルチクが8戦全勝。79m73をSBとして、すべての試合で75m以上を投げ、ただ今38連勝継続中。
ランキング2位のグウェン・ベイリー(USA)とは3m弱の大差がついており、あとは中国のワン・チェンが73~76m台を安定して投げているくらい。チャン・ウェンシウは72m台と低迷中で、おなじみのベティ・ハイドラー(GER)は音沙汰なし。
どうやら、ヴォダルチク一人が毎年着々と記録を伸ばしているのに対して、対抗格の選手たちが脱落して、ますます格差社会になりつつあるのがこの種目のようです。興味は、ヴォダルチクの4年連続世界新記録なるかどうか、その1点のみでしょう。

今回ご紹介した「鉄板大本命」の選手たちに共通しているのは、その地力もさることながら、大試合できっちりと最高のパフォーマンスを出してくる調整能力の高さです。単にハイレベルな記録を狙うだけでなく、この点を日本人選手たちには真剣に研究してもらいたいものだと思います。

<連載>100m競走を語ろう ⑭~9秒台変遷史



◆連載再開!?
リオ五輪のことをいろいろ書かせていただいている間、<連載>がストップしてしまいました。本当のところはリオ五輪の100mレースをウォッチするに際して、少しでも多くの方に予備知識を吹き込んでおきたいなというつもりで書き始めた<連載>なので、いったんその目的が(一部間に合わずに)終わってしまった、という残念な気持ちもあります。
ですが、100m競走について語りたいことは、まだまだ尽きません。
今後は、何かテーマがまとまるごとに、不定期に継続していこうかと思っています。

リオ五輪ではウサイン・ボルトのトラック種目史上初の3連覇達成という大きなトピックがありました。
この大会は、3連覇に挑む選手が非常に多くいて、トラックだけでもボルトの2種目の他に、女子100mのシェリー-アン・フレイザー-プライス(3位)、同10000mのティルネッシュ・ディババ(3位)、またフィールドでは男女砲丸投のトマス・マイエフスキー(6位)とヴァレリー・アダムズ(2位)、女子やり投のバルボラ・シュポタコヴァ(3位)と、5人も挑んでいながら誰も達成できなかったことで、その困難さがよく分かるというものです。(むしろ、この6人全員が無事3連覇の舞台に駒を進め、全員入賞、1人を除く5人がメダルを獲得していることのほうが、驚くべきことかもしれません)

もう一つの話題は、100mという種目からは外れますが、400mリレーでの日本チームの大偉業でしたね。
本道の100mでも、予選を余裕で突破した山縣・ケンブリッジ両選手の走りは、陸上チームの明るい話題の一つでした。
その中であまり触れられませんでしたが、山縣選手が2つのレースで記録した0.111秒、0.109秒という驚異的なリアクションタイムは、知られざるところで大問題を投げかけたのではないか、という気がしています。

このことについては私自身、この<連載>⑧の「余談」で問題提起しているのですが、国際陸連が科学的知見に基づき「人間に可能なRTはせいぜい0.12秒程度」と判断し、若干の余裕をとって「0.1秒」という不正スタートの基準を決めているところへ、常人離れした反応時間を持つ人間もいるのだということを山縣が示してしまったことになります。私の見るところ、ドーピングによって研ぎ澄まされたベン・ジョンソン以来、「0.1秒の壁を破る」可能性を持ったスプリンターが現実に現れてしまったのです。
このことには、山縣自身いくらか懸念を持ったのかもしれず、万が一にもフライングをとられてはならないリレーの2レースではともに0.144秒という「控えめ」なスタートに徹しています。実は山縣は、6月の日本選手権でも予選から順に0.140秒、0.139秒、0.139秒と実に安定した好スタートを決めており、これだけをとっても「スタートの名手」と言って間違いない技量を確立している選手で、加えて極度の集中力を発揮した時に0.11秒前後のスタートを切る能力を示したことになります。
この事実が、IAAFのルールを司る部門にどんな衝撃を与え、どんな議論が戦わされていくのか、とても興味があります。

とはいえ、日本スプリント界の悲願である「10秒の壁突破」は、またもや見果てぬ夢に終わってしまいました。
いつ出てもおかしくないと言われて数年、それはたとえばこの秋の国体あたりかもしれず、引き続きお楽しみは続きますが、早く複数の選手が雪崩を打って9秒台に突入してもらいたいものです。
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◆「初の9秒台」いろいろ
 *手動公式計時初 1964/10/15  9秒9 ボブ・ヘイズ(USA) ※W+5.28mで非公認

 *手動公認初 1968/6/20  9秒9 ジム・ハインズ(USA)ほか
 ※電動計時(参考記録)では10秒03。この大会では他に2人の選手が9秒9を記録(誰が一番先だったのかは、手元の資料では不明)し後年「手動計時による世界記録」として公認されたが、3選手がともに全天候型トラック用に規定よりもピンの多いスパイクシューズを使用していたことが問題とされた。

 *電子計時初 1968/10/14 9秒95(A) ジム・ハインズ(USA)
 ※高地(メキシコシティ)記録


 *平地で初 1983/5/24 9秒97 カール・ルイス(USA)

 *ヨーロッパ初 1988/9/24 9秒97 リンフォード・クリスティ(GBR)

 *1980年代までに突破したのはリロイ・バレルまでの8名(ベン・ジョンソンは除外)

 *初の9秒8台 1991/8/25 9秒86 カール・ルイス(USA) ※東京世界選手権

 *アフリカ初   1991/8/25  9秒95 フランキー・フレデリクス(NAM)


 *幻の日本人初  1998/12/13 10秒00 伊東浩司(富士通) ※速報で「9.99」と表示

 *初の9秒7台
1999/6/16 9秒79 モーリス・グリーン(USA)

 *20世紀中の突破者はフランシス・オビクウェルまでの33名

 *非黒人選手初 2003/5/5 9秒93 パトリック・ジョンソン(AUS)
 ※白人/アボリジニの混血。同時にオセアニア初。


 *アジア初 2007/7/26 9秒99 サミュエル・フランシス(QAT)

 *初の9秒6台 2008/8/16 9秒69 ウサイン・ボルト(JAM)

 *初の9秒5台 2009/8/16 9秒58 ウサイン・ボルト(JAM)

 *白人選手初 2010/7/9 9秒98 クリストフ・ルメートル(FRA)

 *黄色人種初 2015/5/30 9秒99 スー・ビンチャン(CHN)

 *100人目の9秒台 2015/6/7 9秒97 アダム・ジェミリ(GBR)

 *初の「トリプル・サブ」 2016/3/12 9秒98(A)ウェイド・ヴァンニーケルク(RSA)
 ※100m9秒台・200m19秒台・400m43秒台

 *初の「ダブル・サブ」 2016/4/23 9秒99 オマー・マクレオド(JAM)
 ※100m9秒台・110mH12秒台

 *40代初 2016/5/29 9秒93 キム・コリンズ(SKN) ※40歳+54日

 *現在突破者=総計116名

 *日本人初 201X/?/? 9秒XX  ???

 

リオ五輪陸上競技TV観戦記・Day7&展望



どこかでやるんじゃないか、とほとんど寝ないでTV放送を注視していましたが、やっぱりDay7のMorning Sessionはまとまった録画放送もしてくれませんでした。僅かに男子400mリレー予選の2レースを見せてくれたのみ。いまだに男子400mH決勝は、ネット以外では見ていません。
レスリングなんて、日本選手が出てくる場面以外を延々と放送してくれてますよね。それはそれで、レスリングも大好きな私としては嬉しいことなんですけど、どっかで陸上に切り替えてくれてもよさそうなもんなのに…なんでゴルフなんか長時間やってるのよ…ブツブツ。

それにしてもっ!…とここで400mリレー日本チームの快挙について語りたいところですが、その前に。
バドミントン女子ダブルスのタカマツペア、最後に16-19の劣勢から5連続ポイントでの素晴らしい大逆転優勝。
振り返れば今回の日本チーム、対戦競技でのメダルマッチの勝率が非常に高いです。「決勝に勝って金メダル」はこれで柔道3、レスリング4、そしてバドミントンで、通算8勝4敗。「勝って終わる銅メダル」は、奥原希望のバドミントンを含めると12勝3敗。で、日本人は大いに溜飲を下げてるわけですね。
すべての事例に当てはまるかどうかは分かりませんが、少なくともタカマツペアの、あるいは体操・内村航平のあの土壇場における集中力や修正能力、抽斗の豊富さ、あれこそが、世界で戦い続けることによって培ってきた「競技力」というものです。

陸上の日本選手たちに決定的に欠けているものは、これだと思います。たかだか2度や3度のオリンピック・世界選手権の出場経験で、どうにかなるものではない「何か」です。
国内競技会を優先しなければならない諸事情や、もちろん経済的・環境的な課題もあるのだとは察しますが、普段から国際試合で揉まれることを繰り返していかないと、いつまでも「日本選手は実力を発揮できず予選敗退」の光景が繰り返されていくに違いありません。陸連のエライさんたちは、根本を見つめ直して強化に反映させていってもらいたいものです。

◇男子400mリレー予選(2組3着+2)
レース模様はおおむね既報のとおりで、付け加えることは大してありません。
アメリカはマイク・ロジャーズ-クリスチャン・コールマン-タイソン・ゲイ-ジャリオン・ローソンのオーダーで37秒65。決勝ではもちろん、ガトリンとブロメルを入れてくるでしょう。
ジャマイカはジェヴォーン・ミンジー-アサファ・パウエル-ニッケル・アシュミード-ケマー・ベイリーコールで37秒94。こちらはボルトとブレイクが入って、1秒近く戦力アップしそうです。
中国はタン・シンクィアン-シエ・チェンイ-スー・ビンチャン-チャン・ペイメンで37秒82。日本との戦力差を単純比較すると、ともに100m準決勝に進んだ山縣とケンブリッジ、スーとシエは合わせてほぼ互角。3番手の比較では10秒00を持つチャンの調子が上がらず、桐生がやや上。アンカー同時スタートなら、ケンブリッジが競り負けることはないでしょう。スターターのタンという選手の情報がほとんどありませんが、100mのベストは10秒30で200mが強いわけでもなく、もしかしたら決勝では昨年の世界選手権と同じメンバーにしてくるかもしれません。

中国は、14年のアジア大会で突然37秒台に突入して以来、バトンワークの乱れというものがほとんどありません。これは相当にチーム練習を重ねてきていると見るべきでしょう。ただ、気にかかるのは100mの走力アップばかりにこだわって、200mに出場するほどのランナーを養成していない点です。話すと長くなりますので別の機会にと思いますが、過去の日本チームの例を見るまでもなく、ヨンケイではロングスプリンターの役割が非常に大きい比重を占めるのです。そのことにまだ中国が気付いていないとすれば、ここに弱点が見出せます。

逆に日本の4人は(決勝も同じオーダーだと思います)、バトンワークもさることながら、全員が200mを20秒5以内で走れることが大きな強みです。(ケンブリッジのPBは20秒62ですが、もともと200mランナーでもあり、現在の走力は優に20秒3前後と考えられます)その意味でも、今回のチームは「史上最強」と言えるのです。
そして天下無敵のアンダーハンドパス。予選を見る限りはほぼ完璧、ということは小さなミスが大きなマイナス材料になるということですから、やはりそこが、同じくバトンワークの安定している中国との勝負を分けるポイントになってくるはずです。
あとは、イギリス。とうぜん決勝ではメンバーを替えてくるでしょうし、もう少し上手くバトンをつなぐはずです。日本のメダル獲得は、この中国・イギリスの難敵2チームに勝つことが、まず重要です。
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◇女子400mリレー

これもアメリカ・チームのお粗末ぶりは既報しましたが、その後インターフェアへの抗議が通って、昨日の夕方、アメリカ1チームだけでの再レースが認められました。ここで慎重にバトンをつなぎながらも41秒77のトップタイムをマークしたアメリカが決勝進出、暫定8位だった中国が予選通過を取り消されるという、前代未聞の成り行きとなりました。(9レーンの競技場でないことが中国には不運でした)
思えば、落としたバトンを改めてきちんとつなぎ直してフィニッシュまで走り切った(66秒71)のは、クレームを通すうえで非常に重要だったはずで、この時のアメリカチームのとっさの判断力は殊勲賞ものです。
相変わらず不安定極まりないアメリカのバトンワークは、前回ロンドンでは鮮やかすぎるほどに決まって40秒82の世界記録に結びつきましたが、いつ再び破綻するとも知れません。
男子も女子も、不思議と失敗しないジャマイカが、どうしても優勝候補筆頭ということになるでしょう。決勝ではアメリカにトリ・ボウイ、ジャマイカにエレイン・トンプソンという、それぞれの切り札が投入されてくると思われます。
RIO037
 最後は破れかぶれにバトンを投げたアリソン・フェリックス

◇男子400mH決勝
優勝候補の一角だったハビエル・クルソン(PUR)が、明らかなフライングで失格。泣きながらトラックを去った後にリスタートしたレースで、最初から攻めていったカーロン・クレメントが直線入り口では一人大きく抜け出し、またまた出てきました、という感じのケニア勢ボニフィス・トゥムティの猛追を振り切って47秒73で優勝。
クレメントは2005年ヘルシンキ世界選手権に19歳でデビューして以来、07年大阪、09年ベルリンと連覇する絶頂期を経て、最近はすっかり「決勝の常連」程度の地位に甘んじてきました。とうとう北京(銀)、ロンドン(8位)で果たせなかった悲願のオリンピック・チャンピオンの座に就いたわけで、その喜びようは傍目にも微笑ましいものに感じられました。
クレメントの大会直前からの勢いが、今季全体的に低調を極めたこの種目ではひときわ目立っていたように思います。終わってみれば4位までが47秒台を記録し、ようやく世界のヨンパーに活気が戻ってきました。

◇男子200m決勝
ウサイン・ボルトの完勝…ながら、19秒78(-0.5)というタイムには失望というよりは自身への怒りを覚えたらしく、今までにないくらいに渋い、ゴール直後の表情でしたね。2種目3連覇の締めくくりにしては、「画竜点睛を欠く」といった気分になったのでしょう。
それにしても、ミックスゾーンで待ち受ける何十というメディアからのインタヴューに、小一時間かけて一つ一つ丁寧な受け答えをしていく真摯な姿には、毎度感服してしまいます。大迫傑や甲斐好美に、少し説教してやってほしいもんです。

◇その他
ワンデイ・トーナメントで行われた男子砲丸投は、全米で史上23人目の「22mクラブ」に仲間入りしたばかりのライアン・クラウザーが、その時の記録を41センチ上回る22m52をプット、王者ジョー・コヴァックス(USA)を再度破るとともに、オリンピック記録を28年ぶりに書き替えました。

女子400mHは予想どおり、ダリラ・ムハマド(USA)の圧勝。世界女王ヘイノヴァは復調今一歩で、メダルに届きませんでした。

女子800m準決勝では今季無敵のキャスター・セメンヤ(RSA)の強さが際立ち、金メダルは堅そうな気配です。対抗格と目されていたユニス・ジェプコエチ・サム(KEN)、フランシス・ニヨンサバ(BDI)が消えたことで、これを脅かす存在は見つけにくくなりました。中長距離好調のアメリカはこの種目でもケイト・グレースが上位で決勝進出、リンジー・シャープ(GBR)やメリッサ・ビショップ(CAN)などメダル争いは白人女性の戦いとなりそうです。

男子1500m準決勝では、アズベル・キプロプ(KEN)がこちらも盤石の態勢。2番手筆頭の位置にあったエリジャ・マナンゴイ(KEN)がDNSで、ディフェンディング・チャンピオンのタウフィク・マクルフィー(ALG)とロナルド・ケモイ(KEN)、マシュー・セントロヴィッツ(USA)、アヤンレ・スレイマン(DJI)らの包囲網をキプルトがいかに凌ぐか、ロンドン五輪や今年のモナコDLの時のようなポカをやらかさないか、注目です。
Melissa Bishop
 女子800、やっぱりビショップに頑張ってもらいたい!

◇その他Day8展望
同じ日に男女の競歩が行われるというワケ分からないスケジュール。日本陸上チーム最大の期待、男子50km競歩は8時のスタートになります。
昨年世界選手権を独歩で制したマテイ・トト(SVK)の力が抜きんでているように思われます。今年は50kmレースから遠ざかっているらしいですが、本命は動かしがたいところ。
2位だったジャレド・タレント(AUS)は20kmを捨ててここ一本にかけてきており、中国勢も不気味。日本トリオにとって上位の壁はかなり高いようですが、ロシアのいない今回は大チャンス。ぜひとも、3人がほぼ同等の力を有するチームの利を活かして、メダルは運次第としても、全員入賞を果たしてもらいたいところです。

今日の注目種目の一つは、女子棒高跳決勝です。
今季インドアながら唯一5mを跳んでいるジェニファー・サー(USA)に、後輩のサンディ・モリスと今季無類の安定性を誇るDLリーダーのエカテリニ・ステファニディ(GRE)、さらには世界女王ヤリスレイ・シルバ(CUB)が絡んで、優勝争いはなかなか混沌。記録レヴェルも4m90から5mラインが勝負どころと思われ、仮にエレーナ・イシンバエワが出ていても予測しがたいほどの好勝負が見られそうです。
地元期待のファビアナ・ムーレルの予選落ちは残念でしたが、日本選手のいない種目ながら、TVでもぜひきちんと見せてもらいたいですね。

さらに、女子5000mのアルマズ・アヤナ(ETH)には、再び世界新記録を期待してよさそうです!

Sandi Morris
 私はサンディ・モリスを応援!
 https://www.iaaf.org/news/report/sandi-morris-pole-vault-american-record-houst

 

リオ五輪陸上競技TV観戦記・Day6&展望



女子レスリングの大逆転金メダル3連発に沸いた大会第13日でしたが、今日14日目は、我が陸上競技(Day7)にとって「異常事態」発生です。
大事な大事な400mリレー予選や、野澤啓佑がもしかしたら進出していたかもしれない男子400mH決勝などがあるこの日のMorning Sessionが、どこを探してもTV放送予定がない!
そりゃ、伊調馨に続く吉田沙保里の4連覇がかかるレスリングや、バドミントンの準決勝・決勝は大事でしょうけど、それからテコンドーやトライアスロンなんかもありますけど、こんだけテレビのチャンネルがうじゃうじゃあるのに、まとまった録画放送の予定すらありません。まあ、リレーで決勝進出、てなことになればどこかの空き時間にやってくれるんでしょうけど、ヒドイ編成もあったもんですね。
日本人は誰も彼も、「メダル」と「女子」しか見たがらないという、スポーツ心のないテレビ関係者の思い上がった考え方が、露骨に出てしまった編成です。
しかたない、心ある陸上ファンは、せめてうるさくて下手くそな実況のないネット配信で、今夜の競技を楽しむことにしましょう。
RIO033
 日本陸連HPより http://www.jaaf.or.jp/taikai/1397/tvtimetable.pdf

昨夜と今朝のDay6では、まず男子やり投での新井涼平の見事な予選通過という嬉しい結果がありました。
少々順番を変えて、この話題からいきましょう。

◇男子やり投げ予選(通過記録83m00)
 15WC ①92m72J.イェゴ(KEN) ②88m99I.アブデルラーマン(EGY) ③87m64T.ピトカマキ(FIN)
 15DL ①17p/4 ピトカマキ ②15p/6 V.ヴェセリ(CZE) ③8p/4 K.ウォルコット(TTO)
 16DL ①30p/4 T.レーラー(GER) ②25p/4 アブデルラーマン ③20p/4 J.ヴァドレイヒ(CZE)
 16SB ①91m28 レーラー ②88m23 J.フェテル(GER)・A.ルースカネン(FIN)

RIO034

A組の1位が84m46(J.ヴェーバー=GER)、通過記録到達が4人と伸び悩んだのを受けて、B組1番手で登場した日本フィールド陣のエース・新井涼平。ラインぎりぎりで踏みとどまる気合の一投でイエローラインを大きく超え、84m16の一発通過を決めて見せました。
すぐ後の投順だったケショーン・ウォルコットが、トラックのスタートでしばし待たされながらも88m68SBの大投擲で続き、6番目のヨハネス・フェテル(GER)も85m96で新井を上回って、いやこの組はレヴェルが高いぞ、と思いましたが、その後は続かず。
結局3回目までの通過記録到達は2人増えただけで、12位81m96までが決勝進出ラインということになりました。
ビッグネームではイハブ・アブデルラーマン(EGY)が大会直前にドーピングで消え、昨シーズン復調気配を見せていたテロ・ピトカマキ、また新井の好敵手的位置にいたスチュアート・ファルクハー(NZL)、ホアン・シフェン(TPE)などが予選で姿を消しましたが、おおむね実力者が勝ち残りました。決勝は昨年の世界選手権同様、83mを投げてもトップ8に行けるかどうかという、質の高い戦いになりそうです。
今季好調なのは、トマス・レーラーを筆頭にランキング4位までに3人入っているドイツ勢で、これに予選でビッグスローを見せたウォルコット、世界選手権覇者のジュリアス・イェゴ、ヴィテズラフ・ヴェセリー以下のチェコ勢3人、王国フィンランドからただ一人残ったアンティ・ルースカネンと、油断のならない面々が絡みます。
優勝、新井の順位ともに、まったく予測がつきません。4年前だって、ウォルコットが優勝するなんて誰一人思ってなかったでしょうしね。

◇男子3000mSC決勝
ケニアの内戦(?)、大御所エゼキエル・ケンボイと新世代のエース、コンセスラス・キプルトの対決は実にみどころ満載でしたが、ケンボイのスプリント力を知悉したキプルトが早めに勝負に出て快勝。ゴール前レースを捨ててしまったケンボイは3着で入線しましたが、後になって走路違反(水壕直後のコーナーを一瞬ショートカット)が発覚してDQとなってしまいました。1968年以降、ケニアが参加したオリンピックのこの種目で金メダル1人しか表彰台に送れないのは、これが2度目です。ケンボイはDQ裁定の下る前に、引退を表明しています。
キプルトの強さは別格として、ケンボイとのマッチレースに終盤まで絡んでいったエヴァン・ジャガー(USA)の底力もなかなかのもの。今後はぜひ、去年のDLパリ大会で最終障害で転倒して惜しくも逃した「7分台」を達成させてあげたいものです。
それにしても、中長距離各種目でのアメリカ勢の活躍はすごいですね。
 男子800m クレイトン・マーフィー3着
 男子5000m 2人決勝進出
 男子10000m ゲーレン・ラップ5着
 女子1500m ジェニファー・シンプソン3着、シャノン・ロウベリー4着
 女子5000m 2人決勝進出
 女子10000m モリー・ハドル6着
 女子3000mSC エマ・コバーン3着
 女子マラソン シャレーン・フラナガン6着、デジリー・リンデン7着
これ、もしケニアとエチオピアがいなければ空前のメダル・ラッシュってことになってますね。日本選手も大いに学ぶべきでしょう。

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◇女子走幅跳決勝

昨年の世界選手権ではブリトニー・リース(USA)の予選落ちによるタナボタ的な優勝のイメージがあったティアナ・バートレッタ(USA)が、今度はその世界選手権を3センチ上回る7m17のPBを跳んで、正真正銘の実力でリースをねじ伏せました。
私めが贔屓するイヴァナ・スパノヴィッチ(SRB)は、どんな時でも6m80-90は外さない安定感はさすがの一言ながら、7m10を超える優勝争いになってしまうと分が悪かったですね。それでも、1回目6m95でリードし、5回目NRになる7m08でいったん2位に浮上したのは、素晴らしい戦いぶりでした。
ロシアからただ一人、それも予選の前日になってようやく出場を認められた(IAAFはプンプンだそうです)ダリア・クリシナは、美人選手としても世界的な人気がありますが、PB(7m05)に遠く及ばない記録で9位に終わり、お騒がせしたピットを3回跳んだだけで後にしました。

◇男子200m準決勝(3組2着+2)
3組でジャスティン・ガトリンとヨハン・ブレイクがマクラを並べて討ち死に。これで決勝が断然ラクになったウサイン・ボルト、自身のレースはその一つ前で、意外や100m3位のアンドレ・デグラス(CAN)に食い下がられ、「およ?お前さんなかなかやるなあ」といった表情で和やかに談笑(?)しながらゴールを駆け抜けたのが、印象的でした。前にも、練習仲間のリチャード・トンプソン(TTO)やZ.ヒューズ(GBR)との並走では、こんな光景を見たことがありましたね。
デグラスの躍進は目覚ましいものがありますが、決勝はボルトの独り舞台になりそうな予感です。
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◇女子200m決勝
「頂上決戦」は、エレイン・トンプソンの勝利。
1メートルほどの差をつけた完勝だったにも関わらず、リザルトを確認するまで信じられないといった表情のトンプソンは、カメラマン席の前で晴れやかなポーズをとることができないほどに疲労困憊の様子。そして自信満々だったのでしょう、脱いだスパイクを地面に叩きつけて悔しがったダフネ・スキッパーズ、それぞれの姿がレースの激しさを物語っていました。
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◇女子100mH決勝
主役不在のまま決勝まで大きな波乱もなく推移したこの種目、決勝も順当に、シーズンランキングのトップ3を占めるアメリカ勢が表彰台を独占し、一歩抜け出た感じでブライアナ・ローリンズが念願の金メダルを手中にしました。つくづくケンドラ・ハリソンのシャープな走りを見たかったとは思いますが、それはDL終盤戦でのお楽しみということで。
ところで、ティファニー・ポーターとシンディ・オフィリの美人姉妹が揃って決勝レースに進んだことは、放送席的には結構な話題になっていいことだと思ったんですけど、もしかして実況の富坂アナ氏、姉妹であることを知らなかったんでしょうかね?…どうも今大会のNHKアナはこと陸上競技に関する限り、ビブを見ないとかなりな有名選手でも名前が伝えられないなど、勉強不足が甚だしいです。
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◇Day7の展望
十種競技の後半・110mHは9時30分の開始。男子400mリレーは11時40分のスタートです。パソコンに齧りつきましょう!

400mリレー予選(2組3着+2)の日本チームは第2組、内から順にイギリス、オランダ、ジャマイカ、ドイツ、キューバ、日本、トリニダードトバゴ、ブラジル…なかなかタフな組になっちゃいましたね。
ジャマイカ、イギリスの2チームはしょうがないとして、今回これといった大ゴマのいないトリニダードトバゴとブラジルには何とか勝ちたいですね。ドイツやオランダに負けるようだと、危うし!です。走順は山縣-飯塚-桐生-ケンブリッジ、もしくは山縣-飯塚-高瀬-桐生というのが有力だと言われています。どちらにしても近年の日本チームとしては最高のメンバーですから、頑張ってほしい!

女子走高跳予選があります。ロシア不参加によってアンナ・チチェロワ、マリア・クチナという2強が消え、最も大きな影響を受けた種目になりました。代わって優勝のチャンスが舞い込んできたのが、今季WL(2m01)のショーンテ・ロウ(USA)、大ヴェテランのルース・ベイティア(ESP)、そしてお馴染みブランカ・ヴラシッチ(CRO)。七種を制して日の出の勢いのナフィサトウ・ティアム(BEL)も絡んでくると、相当な混戦模様のゲームとなりそうです。

夜の部は男子砲丸投、女子やり投、女子400mH、男子200mの各決勝と十種競技の決着。こちらは、何とか放送がありますのでお楽しみに。

 
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