豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

ウェイド・ヴァンニーケルク

ロンドン世界選手権展望 ② ~絶対王者の動向に注目


DLモナコ大会でのウサイン・ボルトを、皆さんどう見られたでしょうか?
私の見立ては、前回の記事を書いた時の状況と変わりなし、というものです。
つまり、今回世界選手権のラスト・レースに臨むボルトは男子100mの中心にはいるものの、絶対的な本命とするほどの高みにいるわけではなく、近年では比較的レベルが低い100mレースの中にあって優勝候補の一人に過ぎない、という状況です。
勝ったとはいっても、日本選手と互角の実力と目されるスー・ビンチャンあたりに「あれ、ひょっとして俺、ボルトに勝っちゃうかも?」と思わせるようなレースであったことは否めません。
もちろん、残りの約2週間できっちりと仕上げてくる可能性は高いでしょうし、それが偉大なるボルトの最大の武器でもあるのですが、それはガトリンやブレイクなど他の選手にも言えることです。結局、その時点で最もいいフィジカル・コンディションを作り上げた選手が勝つ、ということになるでしょう。

ボルトのことはひとまず措いて、今大会で間違いなく「主役」の重責を担い、そしてまず間違いなくその大任を果たすだろう、と思われる選手たちについて、今回はまとめてみたいと思います。

◆こちらも“ラスト・ラン”、地元の英雄モー・ファラー
モハメド・ファラーが世界選手権に初登場したのは、2007年の大阪大会。5000m6位というのがデビュー戦の成績でした。
翌年の北京五輪は予選落ち、続く09年ベルリン大会は7位と振るいませんでしたが、11年テグ大会で5000m優勝、それに先立ち10000mではゴール寸前まで単独トップを快走しながらイブラヒム・ジェイラン(ETH=この年、Hondaに所属)の猛烈な追い込みに屈して2位。翌12年以降は、2度のオリンピック、2度の世界選手権で全て5000・10000の2冠を制し続けています。
そのファラーは昨年のリオ五輪で史上2人目となる「長距離2種目2連覇」を易々と達成した後、34歳となる今年をトラック・レースのラスト・シーズンとすること、以後はマラソンをはじめとするロード戦線に専念すると宣言しています。

その強さ、その鉄板ぶりを支えているのは、どんなペースや展開になっても今のところは100%の確率で繰り出されている、ラスト1周53~54秒(時に52秒台)という強烈なラストスパートです。長距離種目をお家芸とするケニア、エチオピア等が複数のランナーで包囲し、自転車レースさながらのチーム戦術でファラーの勝ちパターンを封じ込めようとしても、一向に動ずることなく最後の1周で勝負を決めてしまいます。
昨年のリオでは、10000mの序盤で転倒しながらも何事もなかったかのように優勝。今年も、DLユージーン大会5000mで、ヨミフ・ケジェルチャ(ETH)、ジョフリー・カムウォロル(KEN)以下に、差は僅かですが測り知れないほどの実力差を見せつけて快勝。調整にも、年齢的な瞬発力の変化にも問題はなさそうです。

このファラーが、2012年以降のレースで途中のペース変化に消耗して失速したり、終盤のデッドヒートに競り負けたりといった光景を、私は見たことがありません。せいぜい、1500mのレースに出てさすがにトップのスピードに追走するのが精一杯だった、ということがあったくらいです。(とはいえ、1500でも3分28秒台!のPBを持っているのです)
まず、負ける場面を想像しがたいというのが正直なところなのですが、勝負に絶対はあり得ません。打倒の候補としては、5000mでは今季WLの12分55秒23を見事なラストの斬れとともに叩き出したムクタル・エドリス(ETH)か、猛暑の全米選手権を13分08秒台で圧勝したポール・チェリモか、といったあたりでしょう。
初日に行われる10000mのほうは、いよいよ盤石です。せいぜい、日本人選手がいないぶん、ポール・タヌイ(九電工)やビダン・カロキ(DeNA)の善戦を期待しましょう。

Mo Farah
オリンピック・チャンピオン・ユニを着てDLレースを走るファラー
(https://www.iaaf.org/news/news/farah-birmingham-iaaf-diamond-league)

◆スプリント新女王トンプソン
前回北京大会まで、女子スプリント、とりわけ100mの絶対女王に君臨していたのは、シェリー‐アン・フレイザー‐プライス(JAM)でした。自身で経営する美容院仕込みのド派手なヘアスタイルが毎回楽しみでしたが、前回は特に、緑色のドレッド・ヘアにヒマワリの花が5つ並んだ髪飾りという艶姿で、あっと驚かせてくれました。
そのシェリーアンの“子分”よろしく、同じヒマワリの髪飾り(ただし花は4つ)をつけて登場し、200mで日の出の勢いのダフネ・スキッパーズ(NED)に肉薄したのが、エレイン・トンプソンの世界デビューでした。
翌年のリオで、あれよあれよという間に100、200を制覇。100m3連覇を狙っていたシェリーアンの正統的後継者と、スキッパーズが手にしかけていたスプリント・スターの座を、いっぺんに手に入れてしまいました。リオで200のレースが終わった時には、トンプソンを祝福した後に鬼のような形相に一変しスパイクを地面に叩きつけて悔しがったスキッパーズでしたが、それ以降も、そのリベンジをトンプソンはことごとく返り討ちにしています。

今季はDLユージーン大会の200mで、21秒77(+1.5)の激走を見せたトリ・ボウイ(USA)の前に一敗地にまみれたとはいえ、DL100mでは4戦全勝。決して大差で勝っているというわけでもありませんが、隙の無さを感じさせる勝ちっぷりで、自身とシェリーアンが共有している10秒70のジャマイカ記録の更新も、十分に期待できそうです。
ロンドンでは、ボルトと同様に200を回避して100mと400mリレーに専念。100mのジャマイカ勢は、シェリーアンが産休に入ったのをはじめ完全に新旧交代の時を迎えており、マリー‐ジョゼ・タルー、ミリエル・アウレ(ともにCIV)、ブレッシング・オカグバレ(NGR)、ミシェリー・アイー(TTO)といった常連組もやや役者不足。女王奪還を目論むアメリカ勢の調子如何にもよるでしょうが、トンプソンが100mの大本命であることは間違いありません。
Elaine Thompson
(https://www.iaaf.org/news/report/thompson-miller-uibo-rabat-diamond-league)



◆強過ぎる!女子800mは「連単」なら1点買い?
キャスター・セメンヤ(RSA)の強さは、もうどうしようもありません。モナコでは1分55秒27のWL(南アフリカ記録)を余裕で叩き出して、30年以上破られていない世界記録すら、視野に入ってきています。
積み上げた連勝記録は現在18。これは女子のこの種目では、驚異的と言っていいでしょう。そのほとんどで2着を占めているのがフランシーヌ・ニヨンサバ(BDI)で、連勝単式ならば1点買いしか考えられないという趨勢です。モナコではセメンヤに0.20秒差と善戦したとはいえ、余裕度が違いました。さらに、3着マーガレット・ワンブイ(KEN)で「三連単」も鉄板、と言いたいところでしたが、こちらはモナコで最下位に沈んでちょっとミソつけちゃいましたね。
ドーピング禍で沈黙しているロシア勢あたりが復活してこないと、セメンヤの快進撃はそうそうストップできないのではないか、という気がしています。

◆「ネクスト・ボルト」はヴァンニーケルク?
ネクスト・ボルト、と言えばいっときヨハン・ブレイク(JAM)の代名詞になっていましたが、現状でこの名にいちばん近いところにいるのが、400mの世界記録保持者ウェイド・ヴァンニーケルク(RSA)でしょう。
リオで記録した43秒03というタイムの物凄さは、ゴールしてまるで表情を変えない静かな佇まいによって、いっそう凄味を増した感があります。その点、テレビ映りを常に意識しつつファンサービスに余念のないボルトとは好対照ですが、その記録が42秒台に突入、ということにでもなれば、いよいよ陸上界の主役は彼のものとなるでしょう。
今季はその足固めをするかのように、100mで9秒94(+0.9)、200mで19秒84(+1.2)と次々にPBを更新。(100で9秒台、200で19秒台、400で43秒台の記録を持っているのは史上ただ一人です)特殊種目の300mでも世界最高記録の30秒81を出しています。本業の400mでは、DLに2回登場していずれも軽~く43秒台で優勝。
今回は400だけでなく200mでも、ボルト4連覇の後を承けてマイケル・ジョンソン以来の二冠を狙ってくる計画のようです。

ただ、記録的に見ると200mではアイザック・マクワラ(BOT)が19秒77(0.0)と一歩リードしており、DLモナコの400mでも先行したヴァンニーケルクをマクワラが直線入り口でいったん追い越すという意外な接戦を展開しています。それを冷静に差し返したヴァンニーケルクの強さが印象的ではありましたが、警戒心は相当に抱いたことでしょう。
それでも、400mに関する限り、42秒台を見据えたヴァンニーケルクの勝利は不動ではないでしょうか。400の準決勝と決勝の間の日に予選が行われる200mのほうは、「勝てれば儲けもの」の心境でいけば、2冠は意外に簡単に転がり込んでくるような気もします。ただし、こちらにはマクワラのほか、100との掛け持ちになるブレイク、アンドレ・ドグラス(CAN)、クリスチャン・コールマン(USA)といった強敵も、手ぐすねを引いているはずです。

いずれ、ヴァンニーケルクが100mにもエントリー、なんてことになったら凄いですね。ちなみに、100m、200m、400mのスプリント3種目すべてで金メダルというのは、1956年のメルボルン五輪(100・200)と64年東京五輪(400)の2大会にまたがって女子のベティ・カスバート(AUS)が達成しているのみです。

◆ラシツケネとヴォダルチク…鉄板中の鉄板はこの二人
と、最後は雑になってしまいますが、強過ぎるぶん、但し書きが少なくなってしまうもので。
女子走高跳のマリア・ラシツケネ(ANA=旧姓・クチナ)と同ハンマー投のアニタ・ヴォダルチク(POL)です。
※ANAは「Authorized Neutral Athlete」…ナショナルチームに所属せず出場権を認められた選手。ドーピング問題で資格停止中のロシア陸連とは無関係に、IAAFの大会に出場を認められているロシア国籍のラシツケネ、セルゲイ・シュベンコフ(男子110mH)、ダリア・クリシナ(女子走幅跳)などの選手たちについての“国名表示”で、国旗は白無地で表現されます。

前回北京大会で先輩のアンナ・チチェロワを下して世界一の座を獲得しながら、ロシアのドーピング問題でオリンピック・イヤーを棒に振らされたラシツケネは、今季解き放たれたかのように5月27日(DLユージーン大会)以降毎週のように試合に出場、14戦全勝、2m06を筆頭に11試合で2m以上をクリアしています。ラシツケネ以外で、今季2mをクリアした選手はまだいません。
オリンピック・チャンピオンのルース・ベイティア(ESP)が38歳となった今季まったく振るわず、銀メダルのミレラ・デミレヴァ(BUL)も低空飛行、となるともはやライバル不在の独擅場となるでしょう。ローザンヌでチャレンジした2m10の世界新記録の高さに、ロンドンで再びバーを上げられるかが興味の焦点です。滅多に見せない美しい笑顔を、ぜひ見たいものです。
あとの興味は2位争い。全米で1m99を跳んだヴァシュティ・カニンガム(USA)、モナコで97まで伸ばしてきたユリア・レフチェンコ(UKR)の19歳コンビ、もしダブルエントリーしてくるならですが、七種競技の優勝候補筆頭ナフィサトゥ・ティアム(BEL)といった新興勢力に期待です。

女子ハンマー投も、非DL種目のためTV等では伝わってきませんが同じような状況で、ヴォダルチクが8戦全勝。79m73をSBとして、すべての試合で75m以上を投げ、ただ今38連勝継続中。
ランキング2位のグウェン・ベイリー(USA)とは3m弱の大差がついており、あとは中国のワン・チェンが73~76m台を安定して投げているくらい。チャン・ウェンシウは72m台と低迷中で、おなじみのベティ・ハイドラー(GER)は音沙汰なし。
どうやら、ヴォダルチク一人が毎年着々と記録を伸ばしているのに対して、対抗格の選手たちが脱落して、ますます格差社会になりつつあるのがこの種目のようです。興味は、ヴォダルチクの4年連続世界新記録なるかどうか、その1点のみでしょう。

今回ご紹介した「鉄板大本命」の選手たちに共通しているのは、その地力もさることながら、大試合できっちりと最高のパフォーマンスを出してくる調整能力の高さです。単にハイレベルな記録を狙うだけでなく、この点を日本人選手たちには真剣に研究してもらいたいものだと思います。

リオ五輪陸上競技TV観戦記・Day3



日本では日曜・夜のまあまあ早い時間からの女子マラソン観戦、皆さんお楽しみいただけましたか?
「日本人がいなくなったから、チャンネル変えちゃったよ」
という方はこの記事の読者にはいらっしゃらないかと思いますが、終盤の接戦にあの曲がりくねった狭い道、なかなかスリリングなレースだったと思いません?
ああいうコース設計だと、競り合っている場合は主導権を握っている方が断然有利な感じがします。付いて行ったり追いかけて行く場合、コーナーを曲がるたびにダメージが重なっていく様子が見えますものね。

私の「展望」どおり、終盤はマレ・ディババとユニス・ジェプキルイ・キルワの一騎討ちか?…と思いきや、いったん遅れかけたケニアのエース、ジェミマ・スムゴングがラスト勝負を嫌ってロング・スパート。「スプリントに自信がない場合は早めに仕掛けなければいけない」とよく言われますが、それが実際にできる、というあたりが実力です。みごとな勝利でした。
エチオピアは、ディババ以外の2人の代表を入れ替えてたんですね。(元の代表はアセレフェチ・メルギアと東京にも来たアベル・ケベデ)チームとして、どこか順調ではなかったのかもしれません。

ところで、朝方のオリンピック番組でNHKの素人っぽいお姉ちゃんキャスター(なんでこの子を抜擢したんだろう?と不思議なくらい地味で下手くそな女性)が
「3位のディババ選手は、ロンドン・オリンピックの10000m金メダリストです」
だって…もちろん出された原稿をそのまま読んだだけですが、書いた奴、蹴飛ばしてやりたくなりました。

日本勢は、いずれも本調子ではなかったとしか思えません。多くのランナーの夢を踏み台にして代表に選ばれた選手が「本調子でない」というのは許されないことだと思うのですが、少なくとも1桁順位に2人は入る、そんなメンバーとレース展開だったと思うのです。
そのような調子にしか仕上げられなかったことも実力のうちということで、強化体制と選考方法がもう一度練り直されることを期待します。懸命に走り切った3選手は、お疲れ様でした。

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さあ、月曜朝の極上ブレックファストは、男子100m準決勝と決勝。
日本の両選手、実力は発揮しましたが今一つブレイクするところまでは行きませんでした。
「9秒台でなければ決勝へ行けない」という観測の中、決勝ラインが10秒01だったことはある意味大きなチャンスを感じさせる準決勝だったわけですが、「23人中19人が9秒台ランナー」という状況では、仕方のない結果だったでしょう。トータルで11位タイの記録だった山縣選手などは、もし1組に入っていたら案外順位もタイムもいいところへ行っていたように見える奮戦ぶりでした。

いよいよ決勝!…の前に、男子400m決勝で出ましたワールドレコード!
南アフリカの旗手を務めた、昨年世界選手権チャンピオンのウェイド・ヴァンニーケルク。
誰の動きも気にしない8レーンをスイスイ走って、昨年前半までずっと「400mの2強」と言われてきたキラニ・ジェームズとラショーン・メリットを置き去りに、あのマイケル・ジョンソンの偉大な記録を一気に0.15秒も上書きしてしまいました。(私はゴール直前、一瞬「42秒台??」と思いましたよ)
そして、オリンピックの金メダルにも驚異の世界新記録にも、ニコリともしない仏頂面。ジェームズらの祝福にはしっかり応えていたり「神に感謝」のポーズはしていましたから、すごく嬉しかったのは間違いないんですが、あのポーカーフェイスは何としたことでしょう!
陸上競技での南アフリカの金メダルは、ちょっと意外な気もしますが、1996年アトランタ大会のジョサイア・チュグワネ以来のことだそうです。
Wayde van Niekerk02

そして、締めくくりは「21世紀のザ・グレーテスト伝説」、ウサイン・ボルトの独り舞台。
終わってみれば、今回は「ボルトvsガトリンvsブレイク」の構図ではなく、最初からボルトの独走だったという結果になりました。

ガトリンは、大会前の「舌戦」の影響で見事なまでに悪役に仕立て上げられ、紹介のたびに強烈なブーイングを浴びていたのは気の毒でした。
あの「舌戦報道」、どこか(古い話ですが)ソウル大会マラソン代表選考の際の「瀬古vs中山」の状況に酷似していたように思えます。選考会の福岡を欠場した瀬古利彦に対して中山竹通が「這ってでも出て来い!」と言い放ったというあのエピソードです。
後年、中山氏はこのことに触れられるたびに、「いや、ボクはそんなこと言ってないですよ」と語るそうです。「瀬古さんは立派な実績のあるランナーだから、陸連の救済措置が受けられる。仮にボクだったら、福岡には這ってでも出なきゃいけない、そういう意味のことを言った」のだと。それを、食いついたマスコミが意図的にニュアンスの異なる大見出しにしたのが世に広まった、というのが真相です。
私の印象では、ガトリンはボルトに対して敬意と相応のライヴァル意識は持っていても、悪意を込めたコメントを発するようなタイプの人には見えません。ただ「アメリカでは代表選考で救済措置はあり得ない」という意味の発言をしたところ、「ガトリンがボルトに喧嘩を売った!」とマスコミに捻じ曲げられて世界中に報道された、というのが本当のところではないでしょうか?
「売られた喧嘩」に応じたボルトのほうも、何か大人げない印象があるのは、意図された「舌戦」だったからでしょうか?…にしても、ガトリン一人がブーイングを浴びるというのは、どうもねえ。

そうした経緯が影響したのかどうか、今回のガトリンにはどこか覇気がなく、恒例の「檻をこじ開けるポーズ」も見せないままにスタートに就き、あっさりと敗れ去りました。9秒89というタイムは去年のガトリンであれば考えられないほどの「低記録」で、つまりは自滅の結果ボルトの「独走」を許した、というふうに見えました。
もう一人の強豪ヨハン・ブレイクは、予選から余裕たっぷりの動きが不気味さを感じさせましたが、4年前に比べると一回り「太った」印象で、決勝ではキレがなかった感じですね。

それにしても、トラック種目で史上初の同一種目3連覇は「偉業」の一言。今大会、すでにティルネッシュ・ディババとシェリー-アン・フレイザー-プライスが挑んでいずれも銅メダルに終わっていただけに、その偉大さが際立ちます。
競泳のマイケル・フェルプス同様、21世紀のオリンピックを牽引してきたボルトが、フェルプスと同じ「2種目3連覇」に挑む200mは、明日からのクランクイン。日本の3選手の動向と併せて、目が離せません。

大会3日目にして早くも世界新記録が2つ。アルマズ・アヤナは、よほど疲労の蓄積とかがない限り、5000mでも9割がた出してくると思います。
今日も期待が持てますよ。女子3000mSC決勝。ルース・ジェベトとハイヴィン・キエン・ジェプケモイの調子は、いいみたいです。

 

リオ五輪直前展望・Day1(8/12)



さて、1本1本がけっこう手間のかかる「連載」を2つも進行させていながらナンですが、そろそろリオの予想記事を書き始めないと、間に合わない。大会そのものは、もうサッカーから始まっちゃってますから。
陸上競技の開幕は、いよいよ1週間後…8月12日(金)の夜10時が、初日の放送開始時刻です。

Day1のプログラムは、次のとおり。


― MORNING SESSION ―
 *(9:30)男子円盤投・予選 *女子七種競技・100mH/HJ *女子砲丸投・予選 *男子800m・予選
 *(11:10)女子10000m・決勝 *女子100m予備予選 

 *(14:30)男子20kmW・決勝

― EVENING SESSION ―
 *(20:30)女子1500m・予選 *女子七種競技・SP/200m *女子ハンマー投・予選 *男子400m・予選
 *男子走幅跳・予選 *女子砲丸投・決勝 *(22:40)女子100m・予選


何ちうイレギュラーなプログラムでしょうか!
最初の決勝種目、女子10000が午前中って…!?
14時半スタートのロード種目ってのも、あまり見たことない。
で、夜のメインは女子100m予選?しかも7組終わる頃はほとんど真夜中…なんじゃこりゃ?

ソウル大会の陸上や北京大会の競泳が、アメリカのテレビ視聴の都合で決勝を午前中にやった、ってなお話を連載の中でしましたが、どうもそういうのとは違う事情なのでしょうね。(アメリカは時差少ないはずだし)
まあ、普段やり慣れない時間帯が競技に及ぼす影響とか考えても素人には分かりっこないので、気にせず展望を進めていくことにします。

◇女子七種競技

 15WC ①6669p J.エニス-ヒル(GBR) ②6554p B.テイセン-イートン(CAN)
③6516p L.イカウニーツェ・アドミディーニャ(LAT)
 16WL ①6745p テイセン-イートン ②6733p エニス-ヒル ③6626p アヌーク・フェテル(NED)
 ※WC=世界選手権 WL=シーズン・ランキング
  七種は該当しませんが、他に2015・16年のダイヤモンドリーグ順位を参考データとして掲載。
  日本選手が出場する場合は、ランキング最上位のみ掲載。(1か国4人目以降はランクより除外)

七種の100mHがトラックのオープニング・レースになるところは、レギュラーなプログラムなんですけどね。
イギリスのスーパーヒロイン、ジェシカ・エニス-ヒルの2連覇か、あるいはブリアン・テイセン-イートンがザトペック夫妻に次ぐ史上2組目の「夫婦金メダル」に王手をかけるか?

長丁場の混成競技にはどんなアクシデントが待ち構えるか、誰にも予測はできませんが、順当ならばこの「2強」のどちらかで堅そうですし、エニスの試合巧者ぶりに利がありそうです。今年度ランキングでのエニスの得点は、最初の100mHで13秒13もかかってのものですので、ここをロンドンの12秒54とまではいかなくても、そこそこにまとめておけば、かなり有利な展開となるでしょう。
楽しみな存在は、昨年世界選手権で得意の走幅跳を失敗して脱落したカタリナ・ジョンソン-トンプソン(GBR)。七種のランキングは14位ですが、DLロンドン大会では、HJでPB(1m95)、LJでも6m84を跳んでおり好調です。

Katarina Johnson-Thompson
https://www.iaaf.org/news/report/british-indoor-championships-johnson-thompson
※写真は各種目、私の個人的趣味を交えて選んどります。


◇男子800m

 15WC ① 1’45”85 D.ルディシャ(KEN) ② 1’46”08 A.クシュチョト(POL) ③ 1’46”30 A.トゥカ(BIH
 15DL   ① 16p./5 N.アモス(BOT) ② 10p./2 クシュチョト ③ 6p./2 トゥカ
 16DL   ① 30p./4 F.C.ロティッチ(KEN) ② 26p./3 P.A.ボス(FRA) ③ 10p./1 B.ビリアン(USA
 16WL  ① 1’43”35 ルディシャ ② 1’43”55 D.ブレイジャー(USA) ③ 1’43”73 A.キプケテル(KEN
    44 1’45”97 川元奬(スズキ浜松AC
 ※DL成績は「総計ポイント/試合数」で表記。15年と16年ではポイントの配分方式が異なります。 

史上最強とまで呼ばれた世界記録(1分40秒91)保持者デーヴィッド・ルディシャ(KEN)に今シーズン精彩がなく、DLではズルズルと下位に沈んでいく姿をさらし、ケニア選考会も辛うじて通過といったところ。かと言って誰が本命か、まったく予断を許さない混戦の様相です。まずは予選で、先月ようやくWLをマークするところまで来たルディシャの復調具合を確かめることにしましょう。
川元は正直なところ、準決勝進出は非常に厳しいですが、タイム的には自己記録あたりが予選通過ラインになると思われますので、自分のレースに徹するほかはありません。

◇女子10000m

 15WC ① 31’41”31 V.J.チェルイヨト ② 31’41”77 G.ブルカ(ETH) ③ 31’43”49 E.インフェルド(USA
 16WL  ① 30’07”00 A.アヤナ ② 30'26"94 A.A.ナウォヴナ(KEN) ③ 30’28”47 ブルカ
④ 30’28”53 T.ディババ(ETH) ⑧ 31'18"16 鈴木亜由子

5000の女王アルマズ・アヤナが10000とのダブル・タイトルを狙って国内予選を圧勝。差をつけられたとはいえゲレテ・ブルカ、テイルネッシュ・ディババも含めたエチオピアの「表彰台独占体制」は盤石のようです。言うまでもなく抵抗勢力となりそうなのは、アフリカ選手権を勝ったアリス・アプロット・ナウォヴナと世界女王のヴィヴィアン・チェルイヨトを擁するケニア勢。
日本の鈴木はランキングでは8位、関根花観も10位につけていますが、10000mはレース数が少ないためランク外からも予期せぬ選手が上位に飛び込んでくる可能性が大いにあります。それでも昨年から今年にかけての上昇度合いからすると、日本郵政ガールズに日本選手権以上の走りを期待してもよいかもしれません。
実力的に日本選手のライヴァルとなりそうなのがモリー・ハドルやエミリー・インフェルドらのアメリカ勢。この2人が出ていなかったパロ・アルトでアメリカ選手にことごとく勝っている鈴木にとっては、昨年銅のインフェルドあたりは与しやすい相手かもしれません。 

JAC39
 日本代表トリオに期待。


◇男子20kmW

 15WC ①1:19'14" M.A.ロペス(ESP) ②1:19'29" ワン・チン(CHN) ③1:19'57" B.ソーン(CAN)
 16WL ①1:18'26" 高橋英輝 ②1:18'45" 藤澤 勇 ③1:18'53" 松永大介

とうとう最後まで、日本代表トリオがランキング上位3人を独占するという前代未聞の状況で、本番を迎えることになってしまいました。この上にさらに、世界記録保持者の鈴木雄介がいるんですから、大したもんです。
とはいえ、5月にローマで行われた「世界競歩チーム選手権」では高橋が12位、藤澤は69位と惨敗しており、ワンツーと団体を中国勢に奪われたほか、カナダ、オーストラリア、スペイン、エクアドルといった「常連国」の選手たちに上位を占められています。日本男子は団体8位でした。
あくまでも、持ちタイムは高速レースになった場合の自信の拠り所、という程度に捉え、腰を落ち着けたチーム戦術で、「男子入賞第1号」を目指すレースに専念してもらいたいところです。

◇男子400m

 15WC 43”48 W.ヴァンニーケルク(RSA) ②43”65 メリット ③43”78 K.ジェームズ(GRN
 15DL  14p./4 ジェームズ ②11p./3 メリット ③10p./3 ヴァンニーケルク
 16DL  20p./2 メリット・ヴァンニーケルク ③17p./5 I.マクワラ(BOT) ⑥10p./1 ジェームズ
 16WL  43”97 メリット ②44”08 ジェームズ ③44”18 ヴァンニーケルク
32 45”35ウォルシュ・ジュリアン
ここ数年はキラニ・ジェームズとラショーン・メリットの「2強時代」が続き、ダイヤモンドリーグでも出場機会の多いこの両者が勝ったり負けたりを繰り返す、といった状況でしたが、そこへ昨年から割って入ってきたのが南アフリカのウェイド・ヴァンニーケルク。今年も400mでは負け知らず、そして100m9秒台・200m19秒台・400m43秒台を達成した史上唯一のスプリンターとして、名を馳せることになりました。

三つ巴の優勝争いながら、ずばり、本命はヴァンニーケルクでしょう。これに、ツェベ、マクワラの新旧ボツワナ・コンビやサウジアラビアのマスラヒなどがしのぎを削る決勝ラインに近づくことは、日の出の勢いのウォルシュ・ジュリアンと言えども容易なことではありません。
金丸祐三にはリレーにつながる走りの復活を期待したいと思いますが、調子が上がっていないとメンバーから弾かれてしまいかねないので、予選が正念場となります。
Wayde van Niekerk
https://www.iaaf.org/news/series/wayde-van-niekerk-400m-south-africa1

◇女子砲丸投

 15WC ①20m37 C.シュヴァニツ(GER) ②20m30 ゴン・リジャオ(CHN) ③19m76 M.カーター(USA)
 15DL ①26p./6 シュヴァニツ ②13p./5 カーター ③3p./2 A.マールトン(HUN)
 16DL ①36p./4 V.アダムズ(NZL) ②25p./4 T.ブルックス(USA) ③23p./5 マールトン
 16WL ①20m43 ゴン・リジャオ ②20m19 アダムズ ③20m17 シュヴァニツ

大会3連覇に挑むヴァレリー・アダムズは、産休明けの昨シーズンは18m台がベストとパッとしなかったものの、今年は着々と調子を上げて、先月には20m台に“復帰”してきました。ただ、ひと頃見せていたような圧倒的な力量差というものはなく、ややスリムになった外観は「普通の選手」といった印象でさえあります。
20m後半にまで伸ばせれば当面敵はいないでしょうが、3投目までそれ以下のところでもたつくようだと、誰が勝ってもおかしくない混戦模様となっていきます。
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◇女子100m

 15WC 10”76 S.A.フレイザー=プライス(JAM) ②10”81 D.スキッパーズ ③10”86 T.ボウイ(USA
 15DL  20p./4 フレイザープライス ②12p./4 B.オカグバレ(NGR) ③7p./4 ボウイ
 16DL  22p./3 スキッパーズ ②20p./2 E.トンプソン(JAM) ③16p./2 E.ガードナー(USA
 16WL  10”70 トンプソン ②10”74 ガ-ドナー ③10”78 M.アウレ(CIV)・T.バートレッタ(USA)・ボウイ

こちらも、トラックでは誰も成し遂げていないオリンピック3連覇に向けて、シェリー-アン・フレイザー-プライスが発進します。ただ、今季のシェリーアンは少々深刻な絶不調で、対するジャマイカの若手エレイン・トンプソンやアメリカのトリオなどがハイ・レヴェルなランキングを形成し、ダフネ・スキッパーズも虎視眈々と後半勝負を狙っているだけに、うかうかしていると決勝進出さえ取りこぼす可能性があります。
自ら経営する美容院仕込みのヘア・スタイルが世界選手権のように華やかならば上昇気配の証と見られますが、地味~な感じだとやや危険信号かも?ですね。
我らがヒロイン・福島千里は100mのSBが良くない(11秒38)のでランキングには載せませんでした(全選手中160位)が、出場選手のランキングからすると、ベスト24が11秒15あたりですので、世界選手権同様に日本記録(11秒21)の前後ならば十分予選突破は可能でしょう。決勝へ行くには10秒台が必要でしょうが…。
 Shelly-Ann Fraser-PRYCE
 これくらい“お花畑”してれば、心身ともに上昇気配と言えるでしょうが…
 (2015年世界選手権より)


Ivet Lalova-Collio
https://spikes.iaaf.org/post/did-you-know-ivet-lalova-collio?utm_source=iaaf.org&utm_medium=gridclick
 私の趣味ですいません。イヴェット・ラロワ-コリオ選手(BUL)です。


 
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