豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

アリソン・フェリックス

DLファイナルに野澤啓佑参戦!~第14戦・チューリッヒ大会



世界は慌ただしい。休む暇もなく、明後日1日深夜(2日未明)には、ダイヤモンドリーグ第14戦・チューリッヒ大会が行われます。ダイヤモンドレース32種目のうち、半数の16種目で年間チャンピオンが決まる最終戦が行われます。

プログラム(時間は日本時間)と主なエントリー選手は次のとおり。選手の順番はDLポイント順で、太字の選手は年間王者が確定済です。(最終戦は1位20点、2位12点、3位8点、以下6点・4点・2点。年間王者となるには最終戦出場が条件となります)

 1:45 男子棒高跳 R.ラヴィレニ、ケンドリクス、バーバー、ティアゴ・ブラズ・ダ-シルバ
 2:05 女子走幅跳 I.スパノヴィッチ、ウゲン、リース、バートレッタ、モケナラ、クリシナ
 2:35 女子円盤投 S.ペルコヴィッチ、カバジェロ、ミュラー、ロベールミション
 2:45 女子走高跳 R.ベイティア、スペンサー、トロスト、リキンコ、デミレワ、ユンクフライシュ
― ここから生中継開始 ―
 3:05 女子400mH ※ポイント対象外 ペテルセン、ドイル、リトル
 3:05 男子砲丸投 T.ウォルシュ、コヴァックス、クラウザー、マイエフスキー、シュトール
 3:13 男子5000m M.エドリス、ケジェルチャ、ゲブリウェト、ロンゴシワ、タヌイ、ラガト
 3:34 女子200m D.スキッパーズ、フェイシー、アシャー-スミス、トンプソン、フェリックス
 3:41 女子1500m F.キピエゴン、ミュアー、バータ、ハッサン、セヤウム、シンプソン
 3:50 男子三段跳 C.テイラー、コペイヨ、カーター、ベナード、エヴォラ
 3:53 男子400m L.メリット、マクワラ、タプリン、ガーディナー
 4:00 男子やり投 T.レーラー、ヴァドレイヒ、ウォルコット、ヴェーバー、ピトカマキ
 4:02 女子800m C.セメンヤ、ニヨンサバ、サム、シャープ、ビショップ
 4:12 女子100mH K.ハリソン、ハーパー-ネルソン、ストワーズ、オフィリ、ロールダー
 4:20 男子100m B.Y.メイテ、パウエル、ロジャーズ、マルティナ、コリンズ、マクレオド
 4:28 男子400mH K.クレメント、クルソン、ベット、トゥムティ、マギ、野澤啓佑
 4:36 女子3000mSC R.ジェベト、キエン、アセファ、チェプコエチ、コバーン

放送開始前から始まるフィールド各種目では、すでに年間優勝が確定している種目が並びますが、いずれもトップランカー勢ぞろいという感じで目移りがします。特に注目は、男子棒高跳に、オリンピック・チャンピオンのティアゴ・ブラズ・ダ-シルバが最終戦にして初参戦すること。王者ラヴィレニにとっては千載一遇のリヴェンジのチャンスが、向こうからやって来てくれました。
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トラック種目では、女子200m、100mHを除いて年間優勝争いは大混戦。
最初の男子5000mは、モー・ファラーが1試合にしか出場しなかったことでエチオピアの若手勢にチャンスが生まれました。エドリスとゲブリウェトが22歳、ケジェルチャが19歳…顔を見ただけじゃ分かんないもんです。

女子200mは、すでに年間優勝を決めているスキッパーズとトンプソンの女王対決が実現しそうです。ローザンヌとパリでの走りを見た限りでは、トンプソンが引き続き波に乗っている感じがします。さらにはアリソン・フェリックスやヴェロニカ・キャンベル-ブラウンなどの参戦も、白熱のレースに華を添えてくれます。

女子1500mはフェイス・キピエゴンの独走気配でしたが、パリで鮮やかな逃走劇を決めたローラ・ミュアーが「待った!」をかけました。今度はキピエゴンも楽には逃がさないでしょうし、展開ひとつでどう転ぶか分かりません。

男子三段跳は、意外にもまだクリスチャン・テイラーの優勝が確定していませんが、4位以内なら自力確定ということで問題ないでしょう。今年のテイラーは同僚のウィル・クレイにはたびたび冷や汗をかかされたものの、18mを跳ばないと勝てないというほどのライヴァルには恵まれませんでした。

男子400mはウェイド・ヴァンニーケルクとキラニ・ジェームズが回避したためラショーン・メリットの独擅場になりそうです。


男子やり投は、イハブ・アブデルラーマン(ドーピング)とジュリアス・イェゴ(オリンピックで負傷)が脱落してしまいましたが、今季最も好況を呈した種目の一つでした。タレントが多彩で、一発の面白さもあり、またそこに日本の新井涼平が加わるといっそう興味深い試合が繰り広げられたものです。今回、その新井の参戦がないのは残念ですが、テロ・ピトカマキが久々に登場します。


女子800mは、キャスター・セメンヤの独り舞台でしょうね。今季は出場したすべてのレースで、まったく負ける姿を想像させない強さを見せ続けました。2番手にニヨンサバ、というのも定着してきたパターンです。

女子のMVP候補筆頭のケンドラ・ハリソンが、最終戦をどんな記録で締めくくるか?圧倒的な選手層を見せつけたアメリカ・チームから、オリンピックのメダル・トリオの参加がないのは少しガッカリです。その分ハリソンのぶっちぎりぶりを楽しみたいと思います。

男子100mはボルトはじめ、年間チャンピオンが有望だったガトリン、あるいはデグラスといったメダリストの名前がなく、ファイナリストもシンビネとメイテの2人のみ。元世界記録保持者のパウエルには失礼ながら、DL最終戦にしてはB級メンバーといった中で、面白いのは110mHのチャンピオン、マクレオドの参戦。9秒台の実力がどんなものか、楽しみはここですね。

そして男子400mH、野澤啓佑の勇気あるチャレンジに大喝采!…これです、これが日本の選手にどんどんやって欲しいことなんですよ。オリンピック前までは世界ランキング上位だった野澤も、気が付けばこのメンバーではシーズン7位、PBでは最下位。ですが、こうした経験を積み上げることで、世界と戦える実力を培ってほしいと思います。(ほとんどの選手が契約メーカーのユニフォームを着て出てくるDLには、所属のミズノとしても「もっとアピールせにゃならん!」と思ってるんでしょうね。何せ半分以上がブラック・ストライプのウェアに黄色/ピンクのシューズ履いて出てきますから)

最終戦・前半の締めくくりは、女子3000mSC。よもや中5日で世界記録更新を狙ってくるとは思えませんが、ルース・ジェベト、ハイヴィン・キエン、エマ・コバーンらの走りを堪能しましょう。

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リオ五輪陸上競技TV観戦記・Day4



Day4は好記録に沸いたMorning Sessionと、雨でドッチラケ半分、でも面白い半分のEvening Session、好対照な1日となりました。結果的には、好コンディションの午前中に決勝2種目を行ったスケジュールは大正解だったかもしれません。

◇女子200m予選(9組2着+6)
やはり、100mの新女王エレイン・トンプソン(JAM)とこの種目の世界女王ダフネ・スキッパーズ(NED)、100m2位のトリ・ボウイ(USA)が強いですねえ。タイム的には22秒31のPBで走ったマリー・ジョゼ・タルー(CIV)が1位でしたが、順当にいけば決勝は「3強」の争いになりそうです。
我らが福島千里は、脚に不安があった割には23秒21は悪くない出来だったと思いますが、本人としてはマネージメントが思うようにいかないままに本番を迎えてしまい、「終わっちゃったなあ」というコメントが全てを物語っていたようです。「この後」を問われたときに少し口ごもる(彼女はいつでも口ごもるんですけど)感じで言葉を濁したのが、もしかしたら「引退」を仄めかしたのかな、という印象で、少々気になります。

◇女子ハンマー投決勝
RIO018

Day3の「観戦記」をアップした後に、「世界新記録の期待はむしろこっちじゃないか?」という思いが脳裏をかすめたんですが、まあいいやとそのまま訂正せずにおきました。しかしっ…
出ちゃいました!女子3000mSCのレース中に飛び込んできた大歓声と「ウォールド・レコォ~~~ド!!」の場内アナウンス。アニータ・ヴォダルチク(POL)、2位に5メートル半もの大差をつけての圧勝で、もはやどこにも敵はいませんでした。
思えば2009年のベルリン世界選手権で、当時の世界新記録で優勝しながら嬉しさのあまりはしゃぎ過ぎて足首をグネってしまい、しばしのブランクと不振が続いた彼女、オリンピック初制覇というのが意外な感じすらします。
2位のチャン・ウェンシウ(CHN)は、4年前のロンドンで、競技終了時点で「3位」となり国旗を掲げて大喜びしたのが、ベティ・ハイドラー(GER)の取り消されていた(これじたいが実に不可解な判定でした)一投が“復権”して4位に下がるという、何とも理不尽な辛い思いを味わいました。ようやく4年越しに掴んだ、オリンピック・メダルです。
そのハイドラーを逆転して、ソニー・ヒチョン(GBR)が3位。またまた「6回目の大逆転」です。

◇女子3000mSC決勝
「展望」でルース・ジェベト(BRN)とハイヴィン・キエン・ジェプケモイ(KEN)の実力は互角、てなことを書きましたが、あのユージーンのレースから3カ月、ジェベトは更に実力をアップさせていたようです。序盤のスローペースがたたって世界新はなりませんでしたが、8分59秒75のみごとなPBでぶっちぎりの優勝。途中で飛び出した決断が、功を奏した感があります。
3位のエマ・コバーン(USA)も9分7秒63の北米新記録で、単独4位からじっくりと前のケニア2選手を追い詰めていった勝負強さは、さすがでした。

◇男子400mH予選(6組3着+6)
RIO019

「異常事態」だったこの種目もオリンピックともなると、48秒台がゾロゾロと出てきたのはまあ予想の範疇でしたが、そんな中で野澤啓佑が4組で独走1着、タイムも全体で6番目と期待通りの、超痛快な走りを見せてくれました。
今日(日本時間あす朝・9時35分)行われる準決勝(3組2着+2)での対戦相手は、次のとおりです。
<1組>
 1.セルジオ・フェルナンデス ESP   PB49”02   Q49"31
 2.ジャヒール・ハイド JAM 48"81 49"24
 3.野澤啓佑 JPN 48"67 48"62
 4.ジャック・グリーン GBR 48"60 48"96
 5.アブデルマリク・ラフールー ARG 48"67 48"62
 6.ボニフィス・トゥムリ KEN 48"29 48"91
 7.エリック・クレイ PHI 48"98 49"05
 8.カーロン・クレメント USA 47"24 49"17

どーです、何となく2着もありそうなメンツじゃあないですか?クレメントの実績が図抜けてますけど、彼は大ポカやらかしますからね、チャンス大ありです。
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◇男子110mH予選(5組4着+4)
雨で2組終わったところで長時間の中断。1組に出た矢澤航は13秒89の6位でタイム通過もならずガックリ、としていたところ、全組終了後に「1、2組のコンディションが悪すぎた」という理由で、両組の5着以下の選手を対象に「再レース」を行うということに。陸上競技でこんな裁定、見たことありません。2組はともかく、矢澤の出た1組はさほど深刻な大降りでもなかったように思いましたけど…とにかくラッキー!で2度目の予選レースに登場した矢澤は、13秒88とタイムを伸ばせずやっぱり不通過。
なお、元世界記録保持者のダイロン・ロブレス(CUB)は結局、最終エントリーはしてきませんでした。

◇男子800m決勝
不調が心配されたデーヴィッド・ルディシャ(KEN)でしたが、終わってみれば文句なしの圧勝。好ペースで逃げた同僚アルフレッド・キプケテルにピタリと貼りつかなかったあたりには、ロンドンの時ほどの自信がなかったが故でしょうけど、これを捕まえにいってからの走りは王者の風格でした。
全米予選で「デーヴィッド・ウォトル(1972年ミュンヘン大会優勝者)の再来」と言われたクレイトン・マーフィーが、ウォトルさながらの後方からの追い込みを決めて3着に食い込みましたが、王者には遠く及びませんでした。

◇女子400m決勝
4レーン:アリソン・フェリックス(USA)か、7レーン:ショーナ・ミラー(BAH)か?…2強の対決が注目されたこのレースは、大きくリードしたミラーが直線でイッパイになり、あわやゴール寸前アリソンの逆転??と思わされた刹那に繰り出した必殺「ダイヴィング・フィニッシュ」で、ミラーが殊勲の勝利を挙げました。まさに勝利への執念、魂のダイヴィングでした。
実は、このレースの前に行われた110mH予選の3組で、ブラジルの選手が鮮やかな「ヘッドスライディング」を決めて、通過ギリギリの4位をもぎ取ったレースがありました。豪雨の直後で走路が水たまり状態になっていたのを見越しての計画的な作戦と見えましたが、トルソーは地面に着く前に、フィニッシュラインを超えています。
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私は「連載・100m競走を語ろう」の中で、大昔の一時期に流行した「フライング・フィニッシュ」や、野球でよく見られる「一塁へのヘッド・スライディング」について、その非合理性を指摘しましたが、この「ダイヴィング・フィニッシュ」はアリですね。突き詰めれば、正当な技術である「トルソー倒し」の究極形で、体を倒したところにフィニッシュ・ラインがあれば、より速いフィニッシュとなり得るものだからです。(もちろん、スライディング状態でフィニッシュラインに到達するのは論外です。野球の場合でも、「倒れて手を伸ばしたところが一塁ベース」ならば、OKということになります)言うまでもなく、この「技」は激しい擦過傷などの危険をはらみますから、いつでもやっていいというものではなく、ここぞ!という場面では今後検討する選手も出てくるのではないでしょうか。

光電管計時による速報タイムは49秒51、これはおそらくアリソンの胸がビームを遮った時間で、その下をかいくぐったミラーの正式タイムは49秒44。面白いレースでした。

◇男子棒高跳決勝
豪雨で長時間中断(それまでに跳躍した3選手の失敗記録はキャンセル)、バー昇降機の故障でまたまた長時間お休み。こうなると、さすがにシラけます。
そんな中で、5m50を一発クリアした澤野大地が、5m65で姿を消したにも関わらず優勝候補ショーン・バーバー(CAN)らの失敗に助けられた格好で7位タイと、35歳にしてオリンピック初入賞を果たしました。
それにしても5m65を6人(5m75からスタートのラヴィレニ含む)しか越えないとはなんと低レヴェルな…と思っていたら、TV放送が終わった後にとんでもないドラマが待っていました!
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断然の優勝候補、ルノー・ラヴィレニ(FRA)が自身のオリンピック記録を破る5m98を一発で跳んで盤石かと思われましたが、5m93に成功した後この高さをパスした地元ブラジルのティアゴ・ブラズ-ダ-シルバが6m03に成功(オリンピック史上初の6m超え)、大観衆の熱狂の中でラヴィレニ(6m03を2回失敗)は6m08を落とし、開催国に3つ目の金メダルをもたらしたのです。
ダ・シルバは室内で5m93、屋外でも5m92のPBがありましたが2012年の世界ジュニア優勝以外にこれといった実績がなく、事前の下馬評ではほぼノーマークの存在。地元の大会で6mヴォルターの仲間入りとは、その精神力に恐れ入ります。

日本選手の出場場面ばかりを取り上げて、こういうシーンを放送しないテレビって、本当にバカですね。

 

リオ五輪直前展望・Day4(8/15)



あちゃー!
悲報が飛び込んできました。
「女子100m福島千里、10000m鈴木亜由子が欠場」
どうにも致し方ありませんが、残念で残念でなりません。
どうか養生に努めて、次のチャンスに捲土重来を。
その福島、回復が早ければ今回展望するDay4には200の出番が巡ってきます。

◆Day4のプログラム

―Morning Session—
 (  9:30) 男子三段跳予選/女子200m予選/男子3000mSC予選
 (10:40) 女子ハンマー投決勝
 (11:15) 女子3000mSC決勝
 (11:30) 男子400mH予選

―Evening Session—
 (  8:30) 女子円盤投予選/男子棒高跳決勝/男子110mH予選/女子400mH予選
 (10:25) 男子800m決勝/女子400m決勝


◇男子三段跳
 15WC ①18m21C.テイラー(USA) ②17m73P.P.ピチャルド(CUB) ③17m52N.エヴォラ(POR)
 15DL ①22p/5 テイラー ②20p/6 ピチャルド ③3p/3 O.クラドック(USA)
 16DL ①40p/4 テイラー ②20p/5 A.コペイヨ(CUB) ③12p/3 ドン・ビン(CHN)
 16WL ①17m78テイラー ②17m65W.クレイ ③17m30R.マヘスウォリ(IND)
25)16m88長谷川大悟
 ※WC=世界選手権
  DL=ダイヤモンドリーグ…「総ポイント数/試合数」(2015年と16年とではポイント設定が異なる)
  WL=シーズン・ランキング…1国4人目以降および欠場が明らかな選手を除外

Christian Taylor & Pedro Pablo Pichardo
 https://www.iaaf.org/news/feature/triple-jump-taylor-pichardo-2015

夢の60フィートジャンプ=世界記録を射程に入れた昨年北京での大ジャンプから1年、クリスチャン・テイラーの王座に揺るぎはありません。
今年は18m超えの好敵手ペドロ・ピチャルドの姿がなく、テイラー自身も記録的には停滞気味。17m50以上を跳んでいるのはテイラーのほか同僚のウィル・クレイだけで、そのクレイに全米で不覚をとるなど現状では唯一のライヴァルと言うべき存在ですが、大一番となればなるほど強いメンタルを発揮するテイラーに死角はないでしょう。
メダル候補には、エヴォラ、コペイヨなどのベテラン勢も狙ってくるでしょうが、跳躍全般に躍進著しい中国勢も要注意です。
日本代表の2人は、とにかく久々の17m超えを目指してもらいたいものです。全般的に記録が低調なので、17mならば入賞が見えてくると思われます。

◇女子200m

 15WC ①21"63D.スキッパーズ(NED) ②21"66E.トンプソン(JAM) ③21"97V.キャンベル-ブラウン(JAM)
 15DL ①14p/4A.フェリックス(USA) ②12p/3スキッパーズ ③9p/3J.ターモー(USA)
 16DL ①26p/3スキッパーズ ②10pトンプソン・M.アウレ(CIV)・D.アッシャースミス(GBR)・T.ボウイ(USA)
 16WL ①21"93スキッパーズ ②21"99ボウイ ③22"05S.ミラー(BAH) 34)22"88福島千里

 
Dafne Schippers
 https://www.iaaf.org/athletes/netherlands/dafne-schippers-250353

シーズン開幕当初に100と200でボウイに連敗したスキッパーズでしたが、ジワジワと調子を上げて「女王」の風格を漂わせる強さを発揮してきています。アリソン・フェリックス(USA)は全米予選で敗退しましたが、代表になったとしてももはやスキッパーズには敵わないでしょう。

そのスキッパーズを一撃で倒しそうな勢いがあるのが、世界選手権で僅差の2位に敗れたエレイン・トンプソンです。ジャマイカ選手権100mを10秒70で制した一方で、今年は200のレースが少ない(選手権も決勝DNS)のがむしろ不気味で、21秒中盤をサラッと出してくる可能性を感じます。
福島選手には、なんとか故障を回復させて元気な姿を見せてもらいたいものです。



◇男子3000mSC

 15WC ①8'11"28E.ケンボイ(KEN) ②8'12"38C.キプルト(KEN) ③8'12"54B.キプルト(KEN)
 15DL ①20p/6J.K.ビレチ(KEN) ②12p/4P.K.コエチ(KEN) ③C.キプルト
 16DL ①50p/5C.キプルト ②20p/4ビレチ・コエチ
 16WL ①8'00"12C.キプルト ②8'03"90ビレチ ③8'08"32コエチ 46)8'31"89塩尻和也


ご存知ケニアのお家芸。1968年メキシコシティで水壕を跳び越す驚異の走りでワンツーを占めて以来、不参加の76年・80年を除くすべての大会で優勝、しかも銀または銅メダルを逃したのは1回だけという圧倒的な“国力”は、今回もビクともしなさそうです。
あれだけ強い選手がウジャウジャいると、誰が誰やら区別がつかず、誰が出てきても勝てそうな気がしてきますが、そこはきちんと序列があって、今回の代表3人は現段階で不動のトリオ…アテネ・ロンドンの覇者で世界選手権4連覇中のエゼキエル・ケンボイ、今季DL5戦全勝のコンセスラス・キプルト、北京五輪と大阪世界選手権の覇者ブリミン・キプルトです。(昨年世界選手権と同じ)
昨年来DLで好成績を残しているジャイラス・キプチョゲ・ビレチあたりでもいざとなると歯が立たないようで、ケニアの国内選考会では3人が他を大きく引き離し、最後はスピードを緩めて手をつながんばかりにしてゴールしたというのですから、推して知るべし。他の国で最近これに迫る走りを見せたのは、唯一昨年のパリDLで8分00秒45の米国記録をマークした(7分台目前だったが最終障害で転倒)エヴァン・ジェイガー(USA)くらいです。
残る興味は、それぞれ3度目、2度目の五輪制覇を目論むケンボイ、B.キプルトを、21歳のC.キプルトがいかにしてねじ伏せるか、というところでしょうか。

なおこの種目では、標準記録到達者が少なかった(というかケニアとエチオピアとアメリカばっかしだった)ため、大会直前に未到達者の上位選手として塩尻和也(順大)がIAAFよりインヴィテーションを受け、急遽代表に追加となりました。日本選手権と同じく、若さに任せた積極的な走りを期待したいものです。 

◇女子ハンマー投

 15WC ①80m85A.ヴォダルチク(POL) ②76m33チャン・ウェンシウ(CHN) ③74m02A.タヴェルニエ(FRA)
 16WL ①80m26ヴォダルチク ②75m77B.ハイドラー(GER) ③75m58チャン
 ※DL非実施種目


ロンドンを制したタチアナ・リセンコ(RUS)が去って(いても今回は出られませんが)、その時の2~4位がそのまま「3強」を形成しているのが昨今の現状。特にヴォダルチクの充実ぶりは完全にリセンコから歴代世界一の称号を奪い、女性唯一の80mスロワーとして他を圧倒します。
2位争いは、波の大きいハイドラーよりも安定して75m前後を投げてくるチャン(PBは77m33)、これに劣らぬ力量を持つワン・ジェン(同77m68)の中国勢に分があると見ています。

◇男子400mH

 15WC ①47"79N.ベット(KEN) ②48"05D.クドリャフツェフ(RUS) ③48"17J.ギブソン(BAH)
 15DL ①18p/5B.ジャクソン(USA) ②9p/3J.ダッチ(USA)・9p/2ギブソン
 16DL ①25p/4K.クレメント(USA) ②24p/3M.ティンズレー(USA) ③22p/3J.クルソン(PUR)
 16WL ①48"40クレメント ②48"42Y.コペイリョ(TUR) ③48"63クルソン ⑤48"67野澤啓佑


この種目は、「異常事態」と言ってよいかもしれません。
昨年の世界選手権、DLで活躍した選手のうち、クドリャフツェフはロシアゆえエントリー不可、バーション・ジャクソンと今季WLのジョニー・ダッチは米国代表漏れ、ニコラス・ベットはDLでまるでいいところなし。
47秒台はおろか、48秒台前半で走ったのはダッチを含め3人だけ。48秒台を3回以上出したのはコペイリョ、ティンズレーと野澤の3人だけ。
オープニング・レースに選ばれることの多いDLでは、どの試合でも49秒前後の低調なレースが続いています。
オリンピック本番ともなれば、ガラリと様相が変わるだろうという声もありますが、ベットやギブソン、クルソンあたりがよほど上げてこない限りは47秒台まで行かないレヴェルなのではないか、と私は思います。
そこで、野澤にオリンピックでは初となる「決勝進出」を期待してしまうのです。
ただ、こうした状況にあることは皆が承知の上ですから、49秒前後のレヴェルにいる選手たちが目の色を変えて狙ってくることは間違いないでしょう。混戦の中で準決勝の「2着+2」を拾うことは容易ではないはずで、それは実績ある上位選手たちにも等しく言えることです。

◇女子400m

 15WC ①49"26A.フェリックス(USA) ②49"67S.ミラー(BAH) ③49"99S.ジャクソン(JAM)
 15DL ①20p/5F.マッコロリー(USA) ②14p/3ミラー ③12p/6S.A.マクファーソン(JAM)
 16DL ①30p/3ミラー ②25p/4マクファーソン ③18p/4N.ヘイスティングス(USA)
 16WL ①49"55ミラー ②49"68フェリックス ③49"94P.フランシス(USA)


Shaunae Miller
https://spikes.iaaf.org/post/shaunae-millers-words-of-wisdom?utm_source=iaaf.org&utm_medium=gridclick

予測の難しい種目の一つですが、現状では昨年の世界選手権チャンピオン、アリソン・フェリックスと今季DL3戦全勝のショーナ・ミラーの一騎討ちが濃厚でしょう。

ロングスプリント界のアイドル的存在だったフェリックスも30歳になり、全米予選で200m4着に敗れたことは明らかにスプリント力の衰えを感じさせる、という見方と、深刻な故障から癒えたばかりのコンディションではあの結果もやむなし、とする声とが交錯します。日程的に一部重複する200mに出なくて済む、と前向きに考えればよいかと思いますが、ゴール前の接戦となった時にかつての爆発的なゴール前の瞬発力があるかというと、少し不安が残るのは確かでしょう。
一方のミラーは上り調子の22歳で、おそらく49秒切りを狙って仕上げてくると思われます。私は、こちらにやや分がある、と感じています。
2人以外で49秒台はフランシスのみで、3着争いもまた混戦模様です。

 
 

全米・ユーロ最終日の熱戦



◆アリソン200は敗退!男子400H低調で野澤に期待高まる!
いやあ、全米の戦況って、動画配信こそないんですけど、ほぼリアルタイムでHPに出てくるんですね。リザルトだけでなく、中長距離走はラップごとに全員の通過順位・タイムが表示されるし、フィールド競技は1試技ごとに結果が勝手にどんどん表示される。あとは、想像力でなんとかできます。最終日に気が付きました。(笑)
というわけで、どこよりも早い(たぶん)日本語版速報です!

で、そうやって見ていた女子PVは女王・サーが3人が残った4m70を2回落としてピンチに陥りますが、次の75を一発クリアして逆転勝ち。2位のモリスも3月の室内世界選手権では4m95で銀メダル。本番ではシルバ(CUB)、ムレル(BRA)、ステファニディ(GRE)らとの大激戦になりそうです。

女子5000mは、14分42秒のPBを持つエース・ハドルが最初から引っ張り、1000mを3分12秒のスローペースで通過した後はラップタイムを72秒前後に上げますが、3000mで13人の大集団、ラスト1周でもハドルに5人がぴったりと食い下がる混戦となりました。ハドルはラストも63秒でまとめて実力者ぶりを発揮。ずっと2番手にマークしていたエミリー・インフェルドはラストが利かず4位に落ちました。

注目の男子400mHは、とうぜん48秒台前半から47秒台で決着かと思いきや、48秒50のクレメントがトップ。DLストックホルムで状態が懸念されたティンズリーは何とか3位を死守しましたが、ワールドリーダーのダッチは5位、ベテランB.ジャクソンは最下位に沈みました。
この結果、日本の野澤啓佑のランキングは1つ落ちて5位となりましたが、まだ底を見せていない感じと48秒台3回の安定感は群を抜いており、オリンピックでの決勝進出・上位入賞が現実味を帯びてきました。

一方の女子は、優勝したムハマドのタイムは久々に見る52秒台。この種目のリーダーであるヘイノヴァ(TCE)の動向が今一つ伝わってこないだけに、一躍金メダル候補に躍り出た感があります。そして、オリンピック中に17歳の誕生日を迎えるというマクローリンが、3位で史上最年少のアメリカ陸上代表となりました。

女子200mでは、400mとのダブルを狙ったアリソン・フェリックスが4着敗退の波乱。トリ・ボウイが打倒スキッパーズの一番手に名乗りを挙げています。今季DLでは分がいいだけに、こちらも楽しみ。


<男子>
◇走高跳 ① 2m29  エリック・キナード
② 2m26  カイル・ランドン
③ 2m21  ブラッドリー・アドキンス

◇400mH ① 48"50  カーロン・クレメント
② 48"79  バイロン・ロビンソン
③ 48"82  マイケル・ティンズリー
⑤ 48"92  ジョニー・ダッチ
⑧ 49"96  バーショーン・ジャクソン

◇1500m ① 3’34”09  マシュー・セントロウィッツ
② 3'34"88  ロビー・アンドリューズ
③ 3'36"18  ベン・ブランケンシップ
④ 3'36"62  レオネル・マンザーノ

<女子>
◇400mH ① 52"88  ダリラ・ムハマド
② 54"02  アシュリー・スペンサー
③ 54"15  シドニー・マクローリン

◇七種競技 ① 6494P  バーバラ・ヌワバ
② 6423P  ヘザー・ミラー=コッチ
③ 6402P  ケンデル・ウィリアムズ

◇棒高跳 ① 4m80  ジェニファー・サー
② 4m75  サンディ・モリス
③ 4m70  アレクシス・ウィークス

◇5000m ① 15'05"01  モリー・ハドル
② 15'06"14  シェルビー・ヒューリハン
③ 15'10"62  キム・コンリー

◇1500m ① 4'04"74  ジェニー・シンプソン
② 4'05"39  シャノン・ロウベリー
③ 4'06"16  ブレンダ・マルティネス

◇200m(-0.6) ① 22”25  トリ・ボウイ
② 22"30  ディージャ・スティーヴンス
③ 22"53  ジェンナ・プランディーニ
④ 22"54  アリソン・フェリックス




◆欧州ではポーランド勢が躍進
アムステルダムで行われた“陸上ユーロ”の最終日は、決勝種目盛りだくさん。中長距離種目はいずれも牽制~スプリント合戦の様相(男子5000は3着まで同タイム!)で、格別に記録的な話題はありませんでしたが、長距離種目でトルコ勢、各種目平均的にポーランド勢の躍進が目立ったような気がします。
女子長距離3冠を目指してハーフマラソンに出場してきたジャン(TUR)は、連戦の疲れからか最下位に終わりました。

<男子>
◇ハーフマラソン ① 1:02'03"  タデッセ・アブラハム(SUI)
② 1:02'27"  カーン・キゲン・オズビレン(TUR)
③ 1:02'38"  ダニエレ・メウッチ(ITA)

◇走高跳 ① 2m32  ジャンマルコ・タンベリ(ITA)
② 2m29  ロビー・グラバーツ(GBR)
③ 2m29  クリス・ベイカー(GBR)
③ 2m29  アイク・オンネン(GER)

◇ハンマー投 ① 80m93  パヴェル・ファイデク(POL)
② 78m84  イヴァン・ティホン(BLR)
③ 77m53  ヴォイシェフ・ノヴィツキ(POL)

◇砲丸投 ① 21m31  ダヴィド・シュトール(GER)
② 21m19  ミハル・ハラチュク(POL)
③ 20m59  ツァンコ・アルナウドフ(POR)

◇400mR ① 38"17  イギリス
② 38"38  フランス
③ 38"47  ドイツ

◇5000m ① 13'40"85  イリアス・フィーファ(ESP)
② 13'40"85  アデル・メチャール(ESP)
③ 13'40"85  リヒャルド・リンガー(GER)

◇800m ① 1'45"18  アダム・クシュチョット(POL)
② 1'45"54  マルキン・レヴァンドフスキ(POL)
③ 1'45"54  エリオット・ジャイルズ(GBR)

◇1600mR ① 3'01"10  ベルギー
② 3'01"08  ポーランド
③ 3'01"44  イギリス

<女子>
◇ハーフマラソン ① 1:10'19"  サラ・モレイラ(POR)
② 1:10'35"  ヴェロニカ・イングレセ(ITA)
③ 1:10'55"  ジェシカ・アウグスト(POR)
81 1:23'25"  ヤセミン・ジャン(TUR)

◇400mH ① 55"12  サラ・スロット・ペテルセン(SUI)
② 55"33  ジョアンナ・リンケヴィッチ(POL)
③ 55"41  レア・シュプルンガー(SUI)

◇3000mSC ① 9'18"85  ゲザ・フェリシタス・クラウゼ(GER)
② 9'28"52  ルイザ・ゲガ(ALB)
③ 9'35"05  オツレム・カヤ(TUR)

◇三段跳 ① 14m58(+0.8)  パトリシア・マモナ(POR)
② 14m51(+2.9)  ハナ・ミネンコ(ISR)
③ 14m47(-1.0)  パラスケヴィ・パパフリストウ(GRE)

◇400mR ① 42"04 オランダ
② 42"45  イギリス
③ 42"48  ドイツ

◇1500m ① 4'33"00  アンゲリカ・ツィホツカ(POL)
② 4'33"76  シファン・ハッサン(NED)
③ 4'33"78  シアラ・マギーアン(IRL)

◇1600mR ① 3'25"05  イギリス
② 3'25"96  フランス
③ 3'27"49  イタリア 

ガトリン今季世界最高!~全米選考会3日目



昨日に続き、全米トライアル(ユージーン)の詳報を、IAAF記事からお伝えします。(引き続き、誤訳は平にご容赦!)
http://www.iaaf.org/news/report/us-olympic-trials-2016-felix-gatlin-henderson

◆6種目でWL!

アメリカの人はいつも、7月4日の独立記念日は花火をあげてお祝いをするもの。日曜日のユージーンには、1日早く花火が打ちあがった。

日曜日の全米オリンピック代表選考会は、男子400m・ラショーン・メリットの43秒97や、ここ9大会で最も若いオリンピック代表となったヴァシュティ・カニンガムなどの話題が霞んでしまうほど、百花繚乱だった。7種目のうち6種目で今シーズンの世界最高記録が生まれたのである。

アリソン・フェリックスは、一度は足首の故障で危ぶまれた、リオでの200・400のダブルタイトルを狙える位置に踏みとどまった。30歳のフェリックスは、コーナーを出たところでは4番手だったが、最後の直線で爆発、49秒68で400mを制した。昨年の北京世界選手権を49秒26で制して以来の好タイムだった。

フィリス・フランシスが、自身のベストを0.5秒も縮める49秒94で2着。ワールド・リーダー(49秒71)として選考会に登場したコートニー・オコロは、50秒39で6位に終わった。3着と6着のタイム差としては、選考会史上最も僅差だった。

「今年はきつかった、でも報われたわ」と、フェリックスは言う。「2カ月前に何とか歩けるだけだったところから、それはもう何でもかんでも、とにかく練習したのよ」

ジェフ・ヘンダーソンは、史上まれに見る激戦の末に男子走幅跳を制した。2位のジャリオン・ローソンとの差は1センチ、全米選考会では最も僅差による勝利だった。

ヘンダーソンの8m59(+2.9)は追風参考記録だが、ローソンの8m58(+1.8)は公認記録である。風の助けが結果を左右したことは確かだろうが、それよりも特筆すべきは、これまで走幅跳の試合でいっぺんに5人以上が8m30を超えるジャンプをしたことなど一度もなかったのに、なんとこの日は6人が8m30オーバーを記録してみせたということだ。彼ら全員が、グレッグ・ラザフォードによる2012年オリンピックの優勝記録8m31を上回ったのである。

オリンピック銅メダリストのウィル・クレイが8m42で3位。公認の風で同記録を跳んだマークィス・デンディと並んだものの、セカンド記録で凌いだのだ。ところが、+5.0mという風のいたずらが、クレイのオリンピック出場資格を奪い去ってしまった。というのは、クレイは公認記録では参加標準記録に到達していないのである。有効期間内のベストは標準記録に1センチ足りない8m14。したがって、リオの3枚目の切符は、デンディが手にすることになりそうである。

さらに傷口に塩をすり込むようなことを言えば、クレイの5回の有効試技はすべて追風参考記録で、たった1回犯したファウルの時だけが+1.5mの公認条件。参加標準記録に到達する絶好のチャンスを逃してしまったわけだ。 なお、片やデンディは故障を騙し騙しの競技で、現在の体調については疑わしい。

4位から7位までの記録は、いずれもその順位の記録としては過去最高。ワールドリーダーとして参戦したマークィーズ・グッドウィンは、追風参考で8m25だった。彼は7位にとどまり、その結果、ブラジルへ赴く代わりにフットボールのプレシーズン・キャンプが待ちうけるバッファロービルズへと向かうことになる。

イングリッシュ・ガードナーが、3人が10秒8を切るという前代未聞のレースを制したのが、女子100m。ガードナーは世界歴代7位の10秒74で1着。ティアナ・バートレッタとトリ・ボウイがともに自己ベストとなる10秒78でこれに続いた。予選ラウンドでともに追風参考ながら10秒81、10秒86で走っていたジェンナ・プランディーニは、5着に終わった。

このレースだけが、今季世界最高には至らなかった唯一の決勝種目だった。(ジャマイカ選考会でエレイン・トンプソンが10秒70をマークしている)1988年のフローレンス・グリフィス・ジョイナーを除いては、全米選考会でワールドリーダーになった選手はいない。24歳のガードナーは、4年前のオリンピックでは7位。彼女はその時、自分の車にこもって泣いたという。



オリンピック・チャンピオンのアシュトン・イートンにとって、そのあまりにも偉大で長期にわたる覇権からすれば、今大会は楽勝だった。彼の目的といえば、チームの一員となって怪我なく会場を去ることだけで、事実彼は、そうしたのだ。8750点というスコアは、2009年以降、彼自身を除いては誰も届いていない記録である。

イートンは十種競技の2日目、最初の種目110mHを13秒60という、ベストに近いタイムでスタートした。円盤投の1投目を失敗して故意のファウルにしたのが、唯一のつまづきと言えるくらいで、その円盤も41m39とまずまずの記録でまとめた。その後、棒高跳では混成競技でのセカンドベストとなる5m25を跳ぶと、やり投を57m84、最後の1500mを4分25秒15でフィニッシュした。

ジェレミー・タイウォが、1500mでベストに近い走りを見せ、記録を自己最高の8425点に伸ばして4位から2位へと躍進した。ザッチ・ジーメクが8413点で3位、ギャレット・スキャントリングが8228点で4位に続いた。

ジャスティン・ガトリンが、昨年の北京世界選手権以降の世界最高記録となる9秒80で、男子100mを制した。20歳のトレイヴォン・ブロメルが9秒84で2位、22歳のマーヴィン・ブレイシーが9秒98で3位だった。ガトリンとブロメルは、世界選手権ではウサイン・ボルトに次ぐ銀・銅メダリストである。

女子走高跳のショーンテ・ロウは、ワールドリーダーに並ぶ2m01の選考会記録で、4度目のオリンピック代表に名乗りを挙げた。世界室内選手権優勝のヴァシュティ・カニンガムが1m97で2位。18歳の彼女は、1980年に当時16歳のキャロル・ルイスが代表になって以来の、最年少オリンピック陸上アメリカ代表となった。

「神様のおかげだよ、この“小さな”のっぽの女の子にとってはね」こう言うのは、かつてプロ・フットボールのQBだった父親のランドール・カニンガムさんだ。「落ち着いていたね。あの子は人の話をよく聞くし、貪欲なところはアリソン・フェリックスのごとしだよ」

 
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