“本業”の陸上競技のほうでは、『全日本実業団ハーフマラソン』『延岡西日本マラソン』なんてのが行われた日曜日でしたが、どうも結果はパッとせず、ハーフで日本人1位になった村山紘太(旭化成)も何となく煮え切らないレースに終りました。
先週から今週にかけてエリート・レースが集中した九州、中国四国地方は風花舞うお寒い気候で、ちょっとランナーたちの気勢が削がれたような感もあります。
女子の10㎞になかなか面白いメンバーが揃っていたんですが、結果は福田有以(豊田自動織機)が木村友香(ユニバーサル)に28秒差をつけてのブッチギリでした。
さて、すっかり始まってしまっているピョンチャン・オリンピックは第4日目に突入。
ここでご紹介したスピードスケート、ジャンプ、クロスカントリーもひととおり緒戦が行われて、我が日本選手はまだこれといった成果を挙げていないという状況。(髙木美帆の3000m5位入賞、小林陵侑のノーマルヒル7位、石田正子のスキーアスロン14位、いずれもまずまずの結果だとは思いますがね)
「陸上競技ファンが見るべき冬の競技」という視点で私なりの「ミカタ」を語ってきたわけですが、「氷上のトラック競技」=スピードスケート、「雪上の跳躍種目=スキージャンプ」「雪上のロードレース」=クロスカントリー・スキー…とくれば、残るは一つ。
「雪上の混成競技」=ノルディック複合ですね。
◇「雪の混成競技」勝者は“King of Ski”
冬のスポーツには「バイアスロン」という混成競技もありますが、こちらはスキーと射撃というまるで異なる畑のものをいっぺんにやっちゃおうということで、趣旨としては「近代五種競技」に近い。どちらも、戦士の技量比べというところから発祥しているものだと思われます。
デカスロンやヘプタスロンがあくまでも陸上競技の中の競走種目・跳躍種目・投擲種目の混成競技であるように、ノルディック複合もまたノルディック競技の中の、「走る」スキーと「飛ぶ」スキーの組み合わせです。(「アルペン複合」という種目もありますが、こちらはダウンヒルレースの形態を変えた2種目を組み合わせただけで、これまたノルディック複合やデカスロンなどの趣旨とはちと違う)
以前は
「瞬発力を競うジャンプと持久力を競うクロスカントリー、2つの相反する種目を組み合わせた究極の冬季スポーツ。これを制する者こそ“King of Ski”に相応しい」
なーんて言われたもんですが、現在のノルディック複合はジャンプは1回しか飛ばないし、クロスカントリーも10㎞という短い距離(団体では5㎞)で集団走からのスプリント勝負が普通。つまり、速筋派が絶対的に有利な瞬発系スポーツと言えます。
え、昔はそうじゃなかったのかって?
昔はですね、ジャンプが「3飛躍2採用」、つまり1人が3本飛んで、ポイントのいい2本を持ち点にしました。団体も同じです。クロカンは15㎞、団体は1人10㎞×3人です。
とても1日では消化しきれないので、1種目を2日に分けてやっていました。
しかも、ジャンプの得点をクロカンのタイム差に換算する方式が今とは違い、ジャンプで大きな差がつきやすかったんですね。どうかすると、後半のクロカンでどんなに頑張っても到底逆転不能というような大差ができました。
で、日本が団体で2連覇を飾った1994年リレハンメル大会の後に、団体の方式が変わり(3人制から4人制へ)、さらに得点換算方式が変わりました。
「日本があまりにも強過ぎるので、ヨーロッパ勢に有利になるようルールが換えられた」
などと被害妄想意識の強い意見がおバカ・スポーツマスコミを賑わしましたけど、それはどうでしょうかね?
リレハンメルの時など、日本が2位以下にジャンプで7分もの大差をつけてしまったために、後半のクロスカントリー・リレーの中継では、延々と2時間以上にわたり、独走する日本選手と、はるか後方で見えない前を追うノルウェー選手の姿ばかりが映し出されていたんですよ。日本人以外が見たら、面白くも何ともなかったでしょう。FIS(国際スキー連盟)としたら「どげんかせんといかん!」と思うのは至極当然だと思うのですよ。
会場で見るほうとしたって、1つのレースが2日がかりで行われるのでは通して見るわけにいかない観客もいるでしょうし、選手にとっても負担です。
「1日で、それも2~3時間くらいで完結するようにしましょうや」
「そうすると、ジャンプは1本、クロカンは10㎞でいいですな」
てな具合に、今の形が出来上がってきたんだと思います。全員がジャンプを跳び終えるのに1時間弱。少し休憩と準備時間をとって、クロカンが全員ゴールするまで30~40分。トータル2時間半もあれば、1回のトーナメントは終了です。これなら、選手は連戦・転戦にも余裕で耐えていけます。
ポイント換算も、現行ではジャンプの1ポイントがクロカンで4秒のスタート時差。1本のジャンプで2位に10点差をつけたら大したもんですが、それでもリードは40秒に過ぎません。団体戦になるとさらに1ポイントあたりの時差換算が少なくなり、50点差をつけてようやく1分少々ということになります。クロカンの走力は結構個々に差があるので、1分差くらいならあっさりと逆転も起こり得ます。
多くの場合、ジャンプで上位を占めた10人前後がすぐに集団になって、そこからは駆け引きを伴うスリリングなスプリント合戦への準備が開始されます。
むしろ、ジャンプの強弱はあんまり関係ないじゃないか、と思わされることもあるのですが、そこはスタート時差は選手の戦略を微妙に揺らがせるといったこともあって、なかなか面白い影響を及ぼすのですよ。
一つ言えるのは、今のノルディック複合は、スプリントが強くないと勝てないということ。ジャンプで後手を踏まない瞬発力、ゴール前の叩き合いに負けないスパート力、その2つがKing of Skiの絶対条件です。
◇“複合ニッポン”再興の旗手・渡部暁斗
かつて日本には荻原健司というKing of Skiがいて、世界選手権優勝2回、W杯総合3連覇、オリンピックでは個人のメダルこそ逃したものの団体連覇のエースとして君臨していました。
脇を固める存在にも、阿部雅司、河野孝典、三ケ田礼一、荻原次晴とワールドクラスの選手を豊富に揃え、1990年代は日本コンバインド界の黄金時代でした。
2000年代に入って一時期凋落の一途をたどった日本が、世界選手権で久々に団体金メダルを獲得したのが2009年。この時のエースはクロスカントリーに絶対の強さを誇った小林範仁で、メンバーの中にはやはりクロカンに強い、若き渡部暁斗の顔がありました。
その渡部暁がソチ・オリンピックでは個人NHで銀メダルを獲得。オリンピックの個人メダルは、リレハンメルでの河野に続き2人目の快挙となりました。
W杯では2011-12シーズンから6シーズン続けて総合2位または3位を続け、今季はピョンチャン前の前半戦ですでに4連勝を含む5勝をあげ、トップに立っています。
この種目ではここ数年、ドイツが圧倒的な強さを示し、主要大会で全種目制覇、表彰台独占といった縦横無尽ぶりを発揮してきました。
ところが今季はエリック・フレンツェル、ヨハネス・リュゼク、ファビアン・リーズルといった主力が今一つ精彩を欠き、相変わらず層の厚さは誇っていますが独走状態にはなっていません。
もう一つの複合王国・ノルウェーは、クロカンに絶対的な強さを持つマグヌス・モーアン、ミコ・コクスリエンといったあたりが全盛期を過ぎた感があり、これもベテランのヤン・シュミド、若手のヨルゲン・グラーバク、エスペン・アンデルセンらが渡部を追っています。
あとは、ビッグゲームに力を発揮してくるオーストリア勢とフランス勢。かつて絶対エースのハンヌ・マンニネン(昨シーズンから現役復帰しています)を擁し強国の一画にいたフィンランドはここ数年の低迷からようやく上昇気配を見せ始めたところで、個人・団体ともに、優勝争いは日本を含めた5か国の戦いと見られています。
ノルウェー勢は全般にクロカンの強い選手が多いのですが、どちらかというと持久系の強さで、ジャンプで出遅れた選手が後方から一気にまくってくる走力は迫力満点ですが、スプリント合戦になると少々決め手を欠く部分があります。その点、現代の複合競技にマッチしたスプリント力に秀でたドイツ勢が、ジャンプでもクロカンでも隙のない強さを発揮してきたところがあります。
今季に限って言えば、この点で最も隙がないのが日本の渡部。
大いに期待が持てそうです。
夏冬通じてあらゆるオリンピック競技の中で、唯一男子だけで行われているのがノルディック複合、まさに「オトコの競技」です。今回は、個人2種目(NHとLH)、団体の3種目が行われます。団体はツブが揃いきれていない日本にとってはやや苦しいかもしれませんが、個人での渡部暁斗は大注目。
かつて隆盛を誇った競技が一旦どん底状態にまで凋落し、再び復活した例としては、競泳や男子体操が思い出されます。
「日はまた昇りました!」こんなフレーズを、ぜひともアナウンサーさんに叫んでもらいたいところですね。












