豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

箱根駅伝

2017『箱根』を振り返る




毎年、箱根駅伝・復路のレースが横浜駅前あたりに差し掛かってくると、
「ああ、正月ももう終わっちゃうなあ…」
という何とも言えない脱力感に襲われます。日本人にとって年末年始はそれほどに非日常的な特別な数日間であり、そこにこれだけ駅伝なるものが浸み込んでいるというのは、根っからの陸上ファンとしては
感慨深いものがあります。
私にとって至福の駅伝漬けの日々は、今年もあっという間に終わってしまいました。まだまだロード&マラソン・シーズンは続きますから「何とかロス症候群」てなことにはなりませんが、こうして一つ一つ記憶の積み重ねと引き換えに齢をとっていくのだな、という寂しさみたいなものはありますね。

◆青学の天下は続くのか?
誰がどう予想しても、青学の優勝。その通りの結果になりました。
ゲームチェンジャー的存在が2枚や3枚抜けても、少々体調不安なランナーがいても、圧倒的な戦力はどうしようもなく、大物高校生をこぞって入部させているわけでもないのにどうして青学だけがこんなに強いのか、原晋監督の手腕についての議論や研究が、今後も至る所で巻き起こりそうです。
たとえば、TVで解説を務めた住友電工・渡辺康幸監督は原監督について、
「経営者目線での気配り」
という鋭い(たぶん)指摘をしました。
どういうことか、を深く考えるのはまた後々のことにしたいと思いますが、独自のトレーニング理論や技術論に留まらない、原監督の奥深いところを衝いている言葉のような気がして、そこに気が付くんだったら渡辺さんももうちょっと頑張ってよ、という気もしつつ、フムフムと感じ入っておりました。

来季以降も、青学の快進撃は続くんでしょうか?
『箱根』に関して言えば、「三冠&3連覇」という千載一遇の機会をしっかりとモノにしたことで、次回以降はぐっとプレッシャーから解き放たれる、ということが考えられます。つまり、連覇はいつか途切れるんだから、それが来年であっても構わない、という意識にチームがなれると思うのです。そうすると、今回のように復路にカードを余らせるような守りの(言ってみれば臆病な)戦略をとる必要はなくなり、先行逃げ切り型の“攻め”のオーダー、あるいは将来を見据えて実力未知数な下級生を躊躇なく投入するアグレッシブな作戦、というように、戦略の幅が大きく広がることになる…それが原監督流の考え方だと思います。
実戦面では、今回のメンバーからは4年生4人が抜けるものの、それは各校とも事情は同じ。インカレなどの個人戦でも活躍が期待される田村和希・下田裕太をはじめ、多くの有力選手が残ります。
各校の補強がどのように整うのかはまだ情報が十分に集まってきていませんが、総体的に青学の“一強”体制を崩す要素はなかなか出てこないように思われます。

◆先手必勝を成功させた唯一のチーム
ところで、今回の『箱根』では、青学の進撃を少しでも食い止めようと、「先手必勝」「往路重視」のオーダーを組むチームが目立ちました。序盤で出鼻をくじくことができれば、あとは区間ごとの細かい戦術次第で互角に持ち込めるかもしれない、という考え方です。
これは打倒青学を目指す上位候補だけでなく、シード権争いを優位に戦うために少しでも先行したい、という予選会上がりのチームなどにも等しく見られた傾向でした。
そうした中で、序盤にエース2枚を投入することで見事に波に乗り、「先手必勝」を成功させたのが神奈川大学でした。

神大の1区・山藤篤司(2年)は、10000mのタイムが28分29秒43とチーム1位。愛知高3年だった2年前、『都道府県対抗駅伝』の1区中継所手前でフラフラになって倒れ込み、最後はリレーゾーンにタスキを放り投げたために愛知県チームが失格になってしまったという、あの選手です。大きな失敗にくさることなく、大学で実力をさらに伸ばしてきたのは大したものです。
2区の鈴木健吾(3年)は今年の予選会で、全体3位・日本人1位。58分43秒のタイムは予選会日本人歴代3位という立派なもので、一躍2区の区間賞候補としてクローズアップされました。そうは言っても彼が一色恭志や服部弾馬ほどに注目されていなかったのは、「弱小」と見られたチームゆえの情報の偏りに起因しているのかもしれません。

予選会では山藤も10位(日本人5位)と健闘し、神大ではこの2人の傑出した成績がモノを言って総合5位となり、本戦に進出してきました。その他の選手はすべて50位以下で、予選会回避組では大塚倭(3年)がハーフマラソンで鈴木健と同等のタイム(63分12秒)を持っているのが目に付く程度。いかに2枚看板が頑張ったとしても、順当ならばシード権ギリギリのあたりを上下する展開がせいぜい予想されるところでした。

ところが、2区鈴木健が一色恭志を振り切る殊勲の区間賞で戸塚中継所のトップを奪うや、3区以降の選手が必死に貯金の目減りを食い止め、5位で往路を終えると復路は9区まで区間ひとケタ順位と波に乗って、上位を安泰のものにしてしまいました。
駅伝の展開の妙と言うべきか、それとも予選会以降2人のエースランナーに追従しようと他の選手も気合を入れ直した成果なのか、総合5位は目標以上の嬉しい誤算というべき結果だったことでしょう。
1区序盤の極端なスローペースに「先手必勝」の目論見を大きく崩されたチームが多かった中で、我慢のレースで上位(5秒差5位)を確保した山藤、それに応えて一色、塩尻、ワンブイ、デレセといった並み居るエースたちに勝った鈴木健と、ただ1チーム、見事にロケットスタートを成功させた頼もしいダブルエースは、来年もチームをより高い目標へと引っ張っていきます。

【2,017円以上購入で100円OFFクーポン配布12/30 10:00〜1/4 9:59】[ミズノ 陸上シューズ]ウエーブエキデン10/WAVE EKIDEN 10/ユニセックス(U1GD1520)
【2,017円以上購入で100円OFFクーポン配布12/30 10:00〜1/4 9:59】[ミズノ 陸上シューズ]ウエーブエキデン10/WAVE EKIDEN 10/ユニセックス(U1GD1520)

◆今年の『箱根』は低レベル?
今季の大学駅伝シリーズは、出雲、全日本と、いずれも全体のレベルが低かったという苦言が、『月刊陸上競技』の別冊観戦ガイドで語られています。そして『箱根』を終えてみると、それは今シーズンの学生長距離界を通しての傾向であったことが見えてきます。
2012年から昨年までの最近5年間、『箱根』の10区間総合優勝タイムは、日体大が優勝した2013年以外はすべて、10時間50分前後で決着しています。一つ前の2011年でも、11時間を切っています。2013年は特に往路が強烈な向い風に苛まれながらのレースで致し方ないコンディションとも言えましたが、率直に言って日体大の優勝はまったくの予想外であり、それを許した有力校(東洋・駒澤・早稲田)の不甲斐なさが大きく関係していました。
今年の優勝タイムはその2013年以来11時間を超えました。天気が良すぎて気温が上昇するという要因はありましたが、それにしても遅過ぎるし、7分以上離された2位以下はかなり低いレベルで団子状態に固まっていた、と言わざるを得ません。中で復路の落ち込みが心配された東洋が2位に上がってきたのも、周囲の低レベルに救われた、とさえ見ることができます。

「駅伝はタイムじゃないよ」って?…確かにそれも然りですが、その内容に目を移せば、昨日指摘したように5区山登りの走りを見ても、ここ数年に比べてのレベルダウンは見た目で感じられます。
近年箱根路を賑わした設楽兄弟、村山兄弟、大迫傑、中村匠吾、山中秀仁、神野大地、久保田和真、服部勇馬、ダニエル・ムイバ・キトニーといったスター選手たちに比較して、今年の目玉だった一色恭志、服部弾馬あたりのレベルはなかなか「超」の字をつけにくいものではないでしょうか?厳しい言い方をすれば、一色は強い青学のエース、服部は強い勇馬の弟と、それぞれの肩書にイメージを押し上げられたところが多分にあるように思います。(あくまでも箱根での実績をもとに言えば、です。彼らが長距離界期待の星であることに異論はありません)
前述の鈴木健吾、6区区間新記録の秋山清仁(日体大)、8区区間賞の下田裕太が結果的に今回の「ベスト3パフォーマー」だったと思いますが、それ以外はこれと言って瞠目するほどのパフォーマンスがなかった、すなわち全体にレベルが低かった、ということが言えそうです。

今年の青山学院を打倒するには、217.1kmを11時間以下で走破するチームを組み立てればよかったのです。カンタンに言って申し訳ありませんが、要はそういうことです。それができなかったのは、どのチームもそういうレベルに達することができなかったから、ということなのです。
現実には、2位以下は7分以上青学に及びませんでした。その差を考えること以前に、チームの総合力を、もっとタイムを目標意識して底上げしていくことが、打倒青学に、ひいては学生長距離界全体のレベル向上に向けての指標となっていくのではないでしょうか?


青学三冠&3連覇にリーチ!



『第93回箱根駅伝』往路は、大方の予想どおり青山学院大が優勝。しかしながらその内容は圧勝ではなく、
2位早稲田との差は僅か33秒、16位の山梨学院大までが復路時差スタートに収まるという稀にみるダンゴ状態での折り返しとなりました。

◆王者の総帥の胸の内は?
今年の青学はすでに出雲と全日本を制し、相変わらず分厚い選手層を誇る割には、原晋監督のコメントがいつになく強気一辺倒ではないところが、少し気に掛かっていました。それは、少々苦戦を強いられた局面でも戦況を何とか立て直してくれるゲームチェンジャー(さっそく流行語を使ってみます)が少ないことへの不安、と見て取れました。

大エースの一色恭志は2区起用が既定の事実で、これは他校のエースと渡り合う役割ですからゲームチェンジャーとはなりにくい。前回の場合は山の専門家である神野大地がいて、加えて久保田和真、小椋裕介という複数のエースを自在に配置することができました。いずれも、他校に対して1区間で数十秒から2~3分のアドバンテージを計算できる存在です。
今回の場合は、山下りの専門家として実績を積んだ小野田勇次と、ゲームチェンジャーとして期待するのは下田裕太と田村和希。いずれも前回十分な働きをしている選手ですから、神野ら3人が抜けた穴を補充する、という意味にはならないわけです。
むろん、他の選手たちの成長分や、一昨年、昨年と関東インカレ2部ハーフを制した池田生成などの存在もありますが、 「切り札の不足」が原監督の悩みのタネになっていたのでは、と推察する次第です。
ま、他校からすれば、贅沢過ぎるほどの悩みではありますけどね。

ただ、今日の結果を見れば、原監督の危惧は半分現実になった、と言えなくもありません。
5区・貞永隆佑の山登り適性が未知数だったことを考えれば、4区までに2位以下にどれだけ差を付けられるか…5区の結果がどうなろうとも(仮に逆転を許したとしても)、青学にとってはそこが重要だったはずです。 第4中継所での早稲田との1分29秒差というのは、原監督にとって満足できる数字ではなかったのではないでしょうか?それとも、箱根路初見や故障明けで不安定要素のある戦力を敢えて往路に並べた結果がこれであれば、十分OKと考えているでしょうか?
全5区間とも、区間タイムが早稲田と1分以内の差で推移した結果が僅か33秒のリード。王者青学にとっては、何となくスカッとしない結果だったように思えます。

そうは言うても、青学は往路に際して下田、田村、あるいは安藤悠哉主将、茂木亮太、鈴木塁人といった控えカードを1枚も使っていません。入れ替えは最大4名ですから、余っちゃってる状態なのです。いくら駅伝の予想は難しいとは言っても、これで青学の首位陥落があるとすれば、何らかのアクシデントが必要になるでしょう。
私は今大会のナンバーワン選手は田村和希だと思っているのですが、唯一の不安は暑さに弱いことなので、まず7区での起用が確実。6区・小野田、8区・鈴木、9区・下田、10区・安藤or茂木、というところでしょうかね?あるいは8区・下田で9区はそのまま池田?あとは個々の選手の調子次第でしょう。

【ポイント最大15倍!SALE開催中!】【〜1/4 9:59まで】【ミズノ】mizuno WAVE EKIDEN11 【ウエーブエキデン11】[u1gd162010]メンズ ランニング 16AW 【dl】STEPSPORTS
【ポイント最大15倍!SALE開催中!】【〜1/4 9:59まで】【ミズノ】mizuno WAVE EKIDEN11 【ウエーブエキデン11】[u1gd162010]メンズ ランニング 16AW 【dl】STEPSPORTS
 
◆逆転諦めないWとマルサ
早稲田とすれば、三冠を達成した2010年、東洋との31秒差を6区で逆転したスリリングな優勝劇の再現がチラつくでしょうが、青学の6区・小野田は区間新記録も狙える下り屋ぶりをすでに証明している選手ですから、ここでの逆転は難しそう。ただ、下りに関してはその優勝時の高野寛基や一昨年区間賞の三浦雅裕など、実績とノウハウがないわけではないので、いかに耐え忍んで食い下がるか、で戦況は変わってきます。
復路に多く駒を残した青学に対し、早稲田は主力の4年生トリオを往路に使い、残るカードは昨年9区区間賞の井戸浩貴と世羅高校からのルーキー新迫志希、3年エースの光延誠といったあたりがどこまで調子を上げているか?…彼らの中から「ゲームチェンジャー」が出てこないことには、青学との差は拡がるばかりとなります。

伝統の「マルサ」こと順天堂大が、久々に総合優勝に色気が出るほどの好位置で往路を終えました。
実は私は中学生時代から、順大のファン。陸上界の"ドン”澤木啓祐氏が世界と渡り合うトップランナーだった頃から、小山隆治、宮下(木内)敏夫、上田誠仁、仲村明、本川一美、三代直樹、今井正人…と、歴代多くのスター・ランナーたちの雄姿を目に焼き付けてきたものです。7年前に半世紀以上続いた本戦連続出場が途絶える無念を味わって以来、なかなか上位を伺うほどの駒が揃わない状況にやきもきしていましたが、オリンピアン塩尻和也と栃木渡の2枚看板に5区・山田攻の好走がうまく嚙み合っての3位です。
かつては「逆転の順大」の名を馳せた後半勝負型の伝統で、長門監督は「復路にも駒はある」と上位への自信を覗かせています。楽しみ楽しみ。
総合優勝を狙えるとすれば、ここまでの3校、ということで間違いないでしょう。

◆シード争いは激烈
圧倒的な戦力を誇る青学への唯一の対抗策として、往路に主力を投入し尽くした感の強い上位候補校が多く、特に往路4位の東洋、5位駒澤などは、厳しい戦いを強いられそう。予想以上の健闘を見せた神奈川大、創価大、上武大、近年シードの常連となりつつある中央学院大あたりも、3位くらいまでの可能性は十分に残していそうです。

青学の対抗格にも挙げられていた山梨学院大、東海大は、頼みとするランナーがことごとく不発に終わってシード権すら危うい大ピンチ。
いっぽうで予選会をギリギリの10位で通過した日大が、1区・2区のダブルエースが大コケしたにも関わらずシード圏内で往路を終えたのは少々意外でした。もしも石川颯真、パトリック・ワンブイが実力を発揮してさえいれば?…かえって後続の選手の意識が堅くなって、結果同じような順位になっていたような気もします(ここ数年、いつもの日大のように)。このあたり、駅伝というレースの不思議なところですが。
シード争いは、東洋・駒澤すらも巻き込んでの大混戦となりそうな、僅差での復路スタートとなります。山梨
東海のほかに日体大、帝京大、拓殖大といった実力校も、タイム的には十分狙えるところにいます。

それにしても、今年の5区を見ていると、「神」と呼ばれたほどのクライマーたちの走りがいかに凄かったか、よく分かりますね。
2005年以前とは第4中継点の場所が微妙に変わり、函嶺洞門のバイパスによる40mほどの距離延長はあるものの、区間賞の大塚祥平(駒沢大)ですらその2005年に今井が記録した69分12秒という記録から約3分半。見るからに走りが違います。
それでも、この5区だけで大きな順位・タイム差変動がたくさんあったのは例年と変わらず、今後も「山登り」は各チームの大きな課題となって、箱根駅伝の象徴となり続けていくことでしょう。
 
 
ギャラリー
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#10~1996/第80回日本選手権
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#9~1991/第10回大阪国際女子マラソン
  • 連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#9~1991/第10回大阪国際女子マラソン
楽天市場
タグ絞り込み検索
  • ライブドアブログ