豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

論評

2018シーズン“世界”のまとめ ①~男子トラック


またまた長~い投稿サボリ期間を経過するうちに、『IAAFダイヤモンドリーグ・ファイナル』さらに『IAAFコンティネンタル・カップ』をもって、海外ではおおむねトラック&フィールド・シーズンが終了してしまいました。
開設以来、これらビッグゲームの結果速報やTV観戦記に注力してきた本ブログといたしましては、更新ままならぬ昨今の事情は無念の一言…せめて今シーズンの「総括」くらいはしっかりと記録しておきたいところです。
今年はオリンピックも世界選手権もないということで、陸上界の注目イベントはDLとコンティネンタル杯、そしてアジア大会やコモンウェルズ・ゲームズなどの地域大会に分散しました。
特にDLの場合、選手個々のさまざまな事情があって、世界大会のように有力選手が全員一堂に会するというところまではいかないものの、シーズンを通しての「世界」の勢力図を評定するには最も拠り所となる大会と言ってよいでしょう。
ということで、ここでは『DLファイナル』(8月30日チューリヒ大会・31日ブリュッセル大会)の結果をもとに、男女各種目の2018シーズンを振り返ってみたいと思います。

<男子・短距離> ※(Z)はチューリッヒ大会、(B)はブリュッセル大会での実施
◇100m(B) -0.3
① 9"79 クリスチャン・コールマン(USA)
② 9"93 ロニー・ベイカー(USA)
③ 9"94 ヨハン・ブレイク(JAM)

◇200m(Z) -0.2
① 19"67 ノア・ライルズ(USA)
② 19"98 ラミル・グリエフ(TUR)
③ 20"04 ジェリーム・リチャーズ(TTO)

◇400m(Z)
① 44"80 フレッド・カーリー(USA)
② 44"93 ネイサン・ストローザー(USA)
③ 44"95 マシュー・ハドソン‐スミス(GBR)

3種目とも、アメリカ勢の完全勝利という結果になりました。

「ネクスト・ボルト」争いが注目された100mでは、シーズン中盤までのWLを9秒88で分け合っていたライルズとベイカー、2人の新進気鋭が中心でしたが、それまで鳴りを潜めていた昨年の世界選手権銀メダリスト・コールマンがDL第13戦のバーミンガム大会で突如復活。ライルズを破り、ファイナルでは歴代7位タイとなる9秒79を叩き出してベイカー以下に大差をつけ圧勝してみせました。
結果的に、100mで今季9秒7~8台で走ったのは、コールマン、ベイカー、ライルズ、マイケル・ロジャーズのアメリカ勢4人だけ。ボルトをはじめとしたジャマイカ勢に対し劣勢が続いていた状況を、完全に覆した感があります。

一方の雄・ライルズは100mでの“決戦”を見送り、「こちらが専門」と主張するかのように200m一本でのファイナル出場、今季4度目となる19秒6台での圧勝となりました。7月のモナコ大会で記録した19秒65(+0.9)は非常にハイレベル。しかしこの種目では3月に19秒69(-0.5)をマークしたクラレンス・ムニャイ(RSA)が一度もDLに出場しなかったために勝負付けが済んでおらず、早くも来季世界選手権での対決が待たれます。
昨年の世界王者・グリエフは、ライルズにこそぶっちぎられましたが、各大会で実力者ぶりを如何なく発揮していたのが印象的でした。

400mはランキングのトップ6がファイナル不出場またはDNF(スティーヴン・ガーディナー=BAH)となり、7番手のカーリーにツアー・チャンピオンの座が転がり込んだというところです。
この種目のWLは、43秒61のマイケル・ノーマン(USA)で、19秒84(-0.6)でパリ大会を制した200mともども、「ロング・スプリントは俺に任せろ」といった勢いが感じられます。今季音沙汰のなかったウェイド・ヴァンニーケルク(RSA)への第一挑戦者と言っていいでしょう。ガーディナーはファイナルで途中リタイアしてしまいましたが、画面から伺える限りでは軽症の様子で、こちらも来季の活躍が期待されます。
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<男子・中長距離>
◇800m(B)
① 1'44"72 エマニュエル・コリル(KEN)
② 1'45"21 マルシン・レヴァンドウスキ(POL)
③ 1'45"28 ファーガソン・ロティッチ(KEN)

◇1500m(Z)
① 3'30"27 ティモシー・チェルイヨト(KEN)
② 3'31"16 エライジャ・マナンゴイ(KEN)
③ 3'31"24 アヤンレー・ソレイマン(DJI)

◇5000m(B)
① 12'43"02 セレモン・バレガ(ETH)
② 12'45"82 ハゴス・ゲブリウェト(ETH)
③ 12'46"79 ヨミフ・ケジェルチャ(ETH)

◇3000mSC(Z)
① 8'10"15 コンセスラス・キプルト(KEN)
② 8'10"19 ソフィアン・エルバカリ(MAR)
③ 8'13"22 エヴァン・ジャガー(USA)

全般的に、中距離はケニア、長距離はエチオピアと、勢力図がくっきりとしてきたのが2018シーズンの様相です。
王者デヴィッド・ルディシャ(KEN)がセミ・リタイア状態となっている現在、800mでは今季DLで負けなしのWL=コリルが一歩抜け出したようです。DLはケニア勢が大挙して出場するためなかなか他国の付け入る隙がありませんが、記録的にはナイジェル・アモス(BOT)、クレイトン・マーフィー(USA)などがランキング上位に頑張り、またこの種目を得意とするポーランド勢などの活躍もあって、まだまだ混戦状態のカテゴリと言えそうです。

1500mもDL5戦全勝となったチェルイヨトが、記録的にも3分28秒41となかなかのタイムでトップにあって、昨年の世界選手権ではマナンゴイに僅かに及ばなかった位置関係を完全に逆転しました。
アフリカ勢以外では、フィリップとヤコブのインゲブリクトセン兄弟(NOR=次男・三男)の健闘が光っています。
ともに1995年生まれのコリルとチェルイヨトが、中距離界の新たなリーダーに躍り出た1年となりました。

5000mでは絶対王者のモハメド・ファラー(GBR)が去って、そのファラーに最後の世界大会で土をつけたムクタル・エドリス(ETH)の天下になるかと思われましたが、今季のエドリスは終盤のペースアップについて行けないというレースが多く、代わって頂上に上り詰めたのが弱冠18歳のバレガでした。ファイナルで記録したタイムは歴代4位で、ケネニサ・ベケレの世界記録まで僅か5秒少々。早くも“新皇帝”の誕生を予想する声が高まっています。
バレガの台頭にあおりを食ったのが、ポスト・ファラーの座を秘かに狙っていたケジェルチャです。ローザンヌ大会では傍らを追い抜こうとするバレガと接触し、思わず相手のパンツを掴んで引き留めようとする(?)醜態をさらし(妨害行為でDQ)、雪辱を期したファイナルでも完全に力負け。長距離界随一のノッポ選手に、今後巻き返しの余地はあるでしょうか?

3000mSCの王者・キプルトは、今季なかなか調子が上がらない様子で、惨敗するレースもしばしば見られたものの、さすがにファイナルへ向けて仕上げてきました。
ところがこのレースでは、序盤でシューズが片方脱げるという大アクシデント発生!ハードルを跳び越え水濠に着水するレースを片足ハダシで走り切るというのはそれだけでも想像を絶する苦境ですが、大本命のピンチを察した他の選手が優勝を意識して牽制状態になったせいか、さほどペースが上がらなかったことがキプルトに幸いしました。今季好調のエルバカリが「もらった!」とばかりに放ったスパートを、鬼の形相で追い込みフィニッシュ寸前でうっちゃってみせたキプルトの勝負根性は、見事でした。さすがにレース後は、裸足の片足を痛そうに引きずっていましたが。
今季この種目で8分を切ったのはエルバカリ一人のみ(DLモナコ大会・7分58秒15)で、キプルトの、またファイナル3位となったジャガーの悲願である7分台突入は、またもや「おあずけ」となったようです。

<男子・ハードル>
2018-09-13 12.05.39

◇110mH(B)-0.1
① 12"97 セルゲイ・シュベンコフ(ANA)
② 13"10 オーランド・オルテガ(ESP)
③ 13"35 ハンスル・パーチメント(JAM)

◇400mH(Z)
① 48"08 カイロン・マクマスター(IVB)
② 48"10 カルステン・ワルホルム(NOR)
③ 48"73 ヤスマニ・コペリョ(TUR)

リオ五輪、ロンドン世界選手権と世界をリードしてきたオマー・マクレオド(JAM)が今季も序盤は好調を続けてきましたが、ローザンヌで5着と大敗してから歯車が狂ったのか、ファイナルには姿を見せませんでした。
代わってツアー・チャンピオンに輝いたのは、ロシアのシュベンコフ。ファイナルでのタイムと圧勝ぶりも見事でしたし、ランキングでも12秒92(+0.6)で2位のオルテガに0.16秒もの大差をつけています。マクレオドが健在でも、このレースには勝てなかったように思われます。
ただ、ここ数年華やかな話題に少々欠けるのがこの種目。上位の顔ぶれに変化がないことや、3年続けて12秒台が一人だけという状況が、それを物語っています。若手の台頭や少なくとも数人が12秒台で競うシーンを見たいと願う一方、今なら進境著しい日本勢にもチャンスの芽があると言えそうです。

400mHは、何と言ってもアブデルラーマン・サンバ(QAT)。男子全種目を通じて、今季最も輝いたアスリートと言ってよいでしょう。
400mHを始めたのはいつからか不明、公式記録は昨年からのものしかありません。それでいきなりロンドン世界選手権で7位というのも今思えば見事、しかも終盤まで優勝争いを繰り広げながら、最終ハードルにつまづいて転倒しかかっての順位です。それでも、この時点では無名に近い存在だったのは確かなこと。今季の大飛躍を誰が予測し得たでしょうか。
4月に南アフリカの大会で47秒90をマークしたのを皮切りに、以後DL6戦全勝、アジア大会、コンティネンタル杯と制して今季は通算9戦負け知らず。しかも史上2人目となる46秒台突入(46秒98=DLパリ大会)、一番悪い記録が緒戦の47秒90というのですから、この種目ではエドウィン・モーゼス以来の絶対王者ぶりだったと思います。
そのサンバ、アジア大会のスケジュールを優先して何とDLファイナルは不出場。同日にジャカルタで4×400mリレーに出場し、金メダル獲得の立役者となりました。その後サンバは9日後のコンティネンタル杯でも47秒36の大会新で2位に1秒以上の大差をつけ、連戦にもビクともしないタフネスさを見せつけて鮮烈なシーズンをまとめました。

サンバのいないファイナルにいきり立ったのが、ワルホルム。何せ今季は常に前にサンバがいて、しかもゴール前に引き離されるという屈辱の連続で、2017年世界チャンピオンのプライドをズタズタにされてきています。鬼の居ぬ間に、ではないでしょうが、とうぜんここはツアー・チャンピオンのことしか念頭になかったはず。
しかし、ファイナルのワルホルムは見た感じ、どうやら調子が下降気味だったか、終盤の競り合いに勝つことができませんでした。結果的にはマクマスターがV2達成、下馬評に上らなかった前年チャンピオンが最後の最後に意地を見せました。ワルホルムはコンティネンタル杯でも3着に敗れ、屈辱のままシーズンを終えることとなりましたが、彼自身、今季PBを大きく伸ばしているのは、サンバという目標が出現したからこそでしょう。
2年前のオリンピック・チャンピオン、カーロン・クレメント(USA)はファイナルに現れず、かつてのハードル王国・アメリカが両種目ともに精彩を欠いているのは一抹の寂しさを覚えます。

(つづく)

MGCシーズン1の総括


国内のマラソン/ロードレース・シーズンが終り、2020東京オリンピックへ向けた「MGC」も立ち上がりのシリーズを消化しました。
低迷が続いたマラソン界へのカンフル剤として期待されたMGCシリーズの効果が間違いなく認められる証左として、男子の日本記録更新を含む歴代10傑入りが3人、過去44人だった“サブ9”突入が新たに6人。高岡寿成の前日本記録樹立が2002年、2004年以降・昨シーズンまでの13年間に10傑入りしたランナーが佐藤敦之・藤原新・今井正人の3人しかいなかったことを思えば、日本男子マラソン界はようやくその重い腰を上げかけた状況、と言ってよいでしょう。


◇「日本新記録」の意味するところ
設楽悠太(Honda)による日本新記録は見事であり、その達成の瞬間の感動は言うに尽くせないものがありました。けれども私は、そこまで瞠目すべき記録だとも、設楽悠が日本最強のマラソン・ランナーだとも思っていません。
何と言っても、その2カ月前に福岡で、非アフリカ系ランナーとして最速となる2時間5分48秒というタイムが、ノルウェーのソンドレ・ノールスタット・モーエンによって叩き出されています。日本男子“躍進”の先陣を切った形の大迫傑(NIKE.O.P.)を1分半も上回り、力の違いを感じさせるレースを見せつけられているのです。日本の男子マラソン界は、まずはこの記録を超え、アフリカ系ランナー群に対するトップ・コンテンダーの地位を奪回しないことには、とても「復活」を謳えるものではないという気がします。

2017-18シーズンにおける設楽悠の強さは、本人が「ここんとこ日本人には負けていない」と言うように、マラソンから駅伝、トラックに至るまで圧巻のパフォーマンスと言えます。
ただ、ひところを振り返ってみれば、学生時代に相拮抗していた大迫や村山兄弟に明確に実力差をつけられたと思われる時期もあったのは確かで、つまるところ猫の目のように変わる男子長距離勢力図で、今のところの暫定1位という存在だ、と思っています。
ことマラソンに関して言うなら、設楽悠が「希望の星」となったというよりも、マラソン界全体の凍り付いた状況が打破された、ということです。その象徴的な存在が、同じく6分台を出しながら苦虫を噛みつぶしたような表情を貫いていた井上大仁(MHPS)でしょう。彼のように、「次は自分が」とモチベーションを高めたランナーは少なくないはずです。1億円云々は別として…。

日本新記録は一つの通過点に過ぎません。実現させたことで“見えない壁”を取り払ったという点に大きな意義があり、2時間06分11秒は、複数の選手が乗り越えていく、目に見える格好の目標になったという印象を強く持ちました。


◇MGCの“光”~みんながマラソンを走り始めた

同じように、「MGC」の企画趣旨には、多くのランナーにとって解りやすく、またある程度長期的な計画で取り組める目標を呈示したところに、最大の効果がありました。
もちろん、2020年8月の本番という動かざる目標が大前提にあるのですが、そこへ行くまでの予選会の1本化に成功したこと、そこまでの目標が基本的にタイムという目に見える形になったことが、非常に評価できる点だと思います。
その結果、「今から始めなければ間に合わない」「今なら間に合う」という気運が高まり、ここしばらく停滞していた若年層からのフルマラソン参入を大いに促進するという次第になりました。

<男子>
 村澤 明伸(日清食品G.:東海大卒・26歳:マラソン経験3回)
 大迫 傑(NIKE.O.P.:早稲田大卒・26歳:2回)
 上門 大祐(大塚製薬:京都産業大卒・24歳:3回)
 竹ノ内 佳樹(NTT西日本:日本大卒・25歳:3回)
 園田 隼(黒崎播磨:上武大卒・28歳:12回)
 設楽 悠太(Honda:東洋大卒・26歳:3回)
 井上 大仁(MHPS:山梨学院大卒・25歳:4回)
 木滑 良(MHPS:瓊浦高卒・27歳:4回)
 宮脇 千博(トヨタ自動車:中京高卒・26歳:4回)
 山本 憲二(マツダ:東洋大卒・28歳:3回)
 佐藤 悠基(日清食品G.:東海大卒・31歳:6回)
 中村 匠吾(富士通:駒澤大卒・25歳:1回)
 川内 優輝(埼玉県庁:学習院大卒・31歳:80回!)

<女子>
 前田 穂南(天満屋:薫英女学院高卒・21歳:3回)
 松田 瑞生(ダイハツ:薫英女学院高卒・22歳:1回)
 安藤 友香(スズキ浜松AC:豊川高卒・24歳:3回)
 関根 花観(JP日本郵政G.:豊川高卒・22歳:1回)
 岩出 玲亜(ドーム:豊川高卒・23歳:6回)
 野上 恵子(十八銀行:須磨学園高卒・32歳:5回)
 
これは、現時点での「MGC」参加資格保有者です。
顕著な傾向として、男子では大卒ならば社会人4年目前後となる20代半ば、女子では21~23歳(高卒3~5年目)という、いわゆる「若手」が中軸を担っていることが一目瞭然です。その多くはまた、フルマラソン出場が1回目から3回目という、「新規参入組」でもあります。

これまで日本の長距離界には、特に高校・大学時代から期待を集めたエリート・ランナーにおいて、トラックや駅伝で十分にスピードを養ってから満を持してマラソン進出、というロードマップを描く傾向が強くありました。これは日本人らしく一見理に適った長期戦略である反面、ひとたびマラソン進出の機を失うとその後の時間があまり残されていない、というジレンマに直面するものでした。あるいは、過度のスピード練習によって成長を妨げるような故障に見舞われることも、少なくありませんでした。
ケネニサ・ベケレ(ETH)やモー・ファラー(GBR)のように、トラックで栄華を極めた後にさらなる荒野を目指しての転向というならともかく、もしも最初からマラソンを目標としていたのであれば、高岡寿成や弘山晴美、福士加代子らの歩んだキャリアは、結果的に「失敗」とまでは言わずとも、「惜しむらくは」の但し書きが付きまといます。

MGC資格到達者に限らず、社会人3~5年目くらいの層が中軸を担い始めたということは、平均的には社会人1~3年目、早い者では在学中に、マラソン初体験を迎えていることになります。最近では、下田裕太(青山学院大)や鈴木健吾(神奈川大)などが、明確に2020東京を見据えての早期参戦を果たしています。卒業2年目の神野大地(コニカミノルタ)にしても、あれほど在学時代に勇名を馳せた超エリートとしては、早い段階での参戦と言えるでしょう。
女子のほうでは男子よりも一足早く、20歳そこそこで初マラソンに挑む選手が増えてきています。MGC到達者6人のうち松田と関根が初マラソン、安藤や岩出も、初マラソンでは大きな話題を集める好結果を残したランナーです。
若くしてのフルマラソン挑戦…これは、非常に良い傾向だと思います。

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近年アスリート寿命の“高齢化”ということもあり、どうかするとマラソンの円熟期は30歳過ぎと見られがちで、実際にリオ五輪の代表は3名とも30オーバーだったりしました。高岡寿成の「進出」も30歳を過ぎてからです。
それほどに、マラソンは「経験」が必要な競技と考えられます。42.195㎞のレースを思い描く通りに走り切ること、そのためのトレーニングを積み上げることは短期間で何度も繰り返すことはできず、試行錯誤をするにはあまりにも長い年月が必要になってくるのですから、「30過ぎてようやく一人前」ということになってくるのはある意味、必然かもしれません。(そのあたりの“常識”に一石を投じる存在が川内優輝であり最近の設楽悠太であるわけですが、今回はそこには詳しく触れません)

しかしながら、近代マラソンに不可欠なスピード持続力およびそれを培うトレーニング耐性のピークはどうしても20代に迎えてしまうもので、マラソンの走り方をひととおり覚えかけた頃には体力が低下傾向にある、ということも少なくありません。現代でもなお、個人差はあれ20代後半からせいぜい30歳、というのが一般的なマラソン・ランナーとしての最盛期だろうというのが、私の考えです。30歳を過ぎて成績を伸ばすケースは、体力の低下を補って余りある、経験に裏付けられた総合的な技術やモチベーションの高揚によるものだと思うのです。
だとすれば、マラソンはできるだけ若年のうちから取り組みを開始するに越したことはありません。トラックなどでのスピード養成をおざなりにするということではなく、あくまでもマラソンの距離に軸足を置いたトレーニングと実戦経験は、早く始めるほど良いと思います。
私には専門的なトレーニング手法などのことは説明できませんが、若いうちから故障をしないマラソンの土台作り、無理をしない範囲でのレース経験というのは、どんどんやるべきだと考えます。
何よりも、「マラソン・レースは年に1回か2回が限度」という考え方が、旧弊すぎます。川内選手ほどではなくても、これほど大小のレースが毎週行われている環境を利用して、気軽に実戦経験を積む機会はもっと増やしてよいはずです。その意味で、設楽悠の今後のレース・プランとその成果には大いに注目すべきでしょうし、それに触発される選手や指導者が次々に出てくることを期待します。

「若年からのマラソン挑戦はリスクが大きい」という考え方は、根強くあると思います。
特に女子では、過去に初マラソンなど経験の浅い段階でオリンピック代表にまでなってしまったシンデレラ・ガールが、その後鳴かず飛ばずに終わったケースが何回もあって、ことのほか慎重論が幅を利かせていた時期があったように見受けられます。
早い時期からマラソン経験を、というのは無理をさせろということではありません。その逆です。「MGC」が呈示したロードマップのように、ある程度長期の、しかし明確に期限を設定したスケジュールの中での取り組み方が、大切だと思うのです。

◇MGCの“影”~大会格差がいよいよ明確に
MGCシリーズに組み込まれた国内主要マラソン大会、中でも男女それぞれの「3大マラソン」と位置付けられる大会で、資格到達者の輩出に大きなバラつきが見られました。
私が1年前の記事で懸念を表明したように、11月の『さいたま国際』(女子)は開催3年目にしてメジャー・レースとしては有名無実の存在が確定した感があり、3月の『びわ湖』(男子)は高温というリスクに付きまとわれることが露呈されました。(それにしては、1週後の『名古屋』は例年好コンディションに恵まれていますが)
こうなってきますと、MGC資格を得るうえで明確な目標である「タイム」を狙って出走レースを選択するに際して、第2シーズンとなる2018-19年には、大会ごとに出場選手の偏りが顕著になってくると思われます。
特に、すでに1回走ってそこそこの持ちタイムをゲットした選手は、大会ごとに設定された「順位+タイム」よりもワイルドカード狙いでプランを立てるようになると予測されます。
とすれば、気象条件が安定しコースもフラットな『大阪』『東京』あたりに有力選手が集中してくることになるでしょう。男子の場合は二段構えが可能な『福岡』も人気を集めそうですし、女子では記録の出やすい『東京』を敢えて狙うケースも増えてくると思われます。

さらに、『MGCファイナル』の実施が予定されている来年9月の後、3人目の代表選考の場となる各3大レースでは、9月からのレース間隔を考慮して、『さいたま』や『福岡』に出てくる選手はほぼいないと考えられます。
第1シーズンを見る限り、「代表選考会」から「MGC予選シリーズ」へと一段“格下げ”になった各メジャーレースの影響はあまり感じられませんでしたが、来季、さらにその次と進むにつれて、巨大資本の絡むビッグ・イベントとしての大会に、微妙な影が忍び寄ることになりそうです。
いろいろと好結果を生みだしている「MGCシリーズ」のプランの中で、私が当初から懸念している「選考レース1本化の後始末」、つまりは3大レースの身の振らせ方…これは日本マラソン界にとっての大きな問題点です。
もっと大きな問題点は、来年の世界選手権に出場しようという日本人選手がいるのかどうか、ということ。もしいるとすれば、世界代表にふさわしい実力者でありながら資格基準をクリアできなかった選手ということになるでしょうが、いずれにせよ「MGCファイナル出場」とは全く両立不可能となるわけで、いくら東京オリンピックが大事だといっても本末転倒ではないかという気もします。

「MGC」が2020東京に特化したプランではなく、それ以降の世界選手権を含めた選考方式としてより進化させるアイディアの捻出が、喫緊の課題だと言えるでしょう。


陸連発表「MGC方式」に思う



本ブログでもかなり詳細に論評をしておりました「2020年東京オリンピック・男女マラソン代表選考方式」が、一昨日、日本陸連より正式に発表されました。

とりあえず、公式リリースをそのまま貼っておきます。新聞などによっては読者に解りやすく砕いた記述にした結果、内容が正確に読み取れなくなっている記事も見受けられますので、興味のある方は原文でしっかりと確認されることをお薦めします。

選考方針1
選考方針2
選考方針3
選考方針4

http://www.jaaf.or.jp/files/article/document/10127-0.pdf
日本陸連HPより


◆補足説明
さて、ややこしい。

まず、「MGC(マラソングランドチャンピオン)レース」と「MGCシリーズ」、さらに「MGCファイナルチャレンジ」という3つの単語を混同しないように注意しながら読まないといけません。

「MGCレース」とは、2019年9月以降(おそらく9月中旬から遅くとも10月上旬が想定されているでしょう)に開催される、東京オリンピックの「メイン選考会」です。

「MGCシリーズ」というのは、この「MGCレース」に出場するための資格を付与する対象となる、2か年間のいわゆる「3大レース」を中心とした男子10レース、女子8レースのことを指します。第1弾は今年8月に行われる『北海道マラソン2017』(男女)、最終は例年どおりならば2019年3月の『第74回びわ湖毎日マラソン』(男子)、『名古屋ウィメンズマラソン2019』(女子)、ということになります。

これら一連の「MGCシリーズ」で、「7.MGCレースの出場資格」の一覧にあるような順位およびタイム(どちらか一方ではダメ)をクリアするか、「ワイルドカード」として、IAAF公認競技会で標準記録(2段階設定)を突破する、今年のロンドン世界選手権8位以内、2018年ジャカルタ・アジア大会3位以内、また「MGCシリーズ」対象レースで資格者が一人も出なかった場合の陸連推薦、いずれかの実績によって、「MGCレース」への出場権を得られることになる、というわけです。

そして、「MGCレース」の結果、優勝者は即時代表決定。
2位または3位の場合、対象者のいずれかが「MGCレース派遣設定記録」(男子2:05:30/女子2:21:00)を指定期間内(2017年8月~2019年4月)に到達していればその選手、両者とも到達していた場合・両者とも到達していない場合は、2位の選手を即時代表決定とする。(MGCレースそのもので到達した場合は含まれないようです)
つまり、いずれにせよ「MGCレース」終了時点で、「代表枠2つが決定する」ということになります。

残り1枠はどうなるか?
「MGCレース」の後に行われるいわゆる「3大レース」(実施順に『さいたま』『福岡』『大阪』『東京※男子のみ』『びわ湖』『名古屋』)を「MGCファイナルチャレンジ」と称し、そこでのタイムだけ(具体的には未発表の「MGCファイナルチャレンジ派遣設定記録」を突破する最上位者のみ)を基準として男女各1枠を獲得するチャンスを残す、とのことです。
「ファイナルチャレンジ」の資格を見ると、「MGCレース」出場資格を有しながら故障などの理由で出場できなかった選手や、「MGCシリーズ」に出場したが参加資格を得られなかった選手も対象になることが分かります。逆に言えば、今年の安藤友香選手のように初マラソンで派遣設定記録を破っても、代表選出の対象にはならない、ということになります。
一人も派遣設定記録到達者が現れなかった場合は、「MGCレース」で選に漏れた2位または3位の選手がそのまま代表に決定します。

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◆「大人の事情」はどうなるか?

日刊スポーツには、こんな記述があります。

<複数選考会は露出を増やす一方で選考を混乱させた。ある強化担当経験者は「最初から複数選考会ありき、だった。その中でどんな選考をするか、が我々のミッションだった」。複数選考会の存続は現場が手を出せない“聖域”だった。
新方針で、これまでの選考会は「予選会」に格下げ。五輪前年の19年世界選手権ドーハ大会は五輪内定の特典が消滅した。これで有力選手は一切出場しない。
一方でGCレースの2枠決定後、19年冬からの3大レースに1枠をあてて選考会の「看板」を残した。「大人の理由」(瀬古リーダー)で放送局などの顔を立てた形。実質は複数選考と一発選考の「折衷案」といえるが、08年北京以降の惨敗を東京で繰り返せない危機感が“聖域”を切り崩す追い風になった。>(19日紙面より)


「聖域」「大人の理由」とは何なのか、本ブログを読んでくださっている方には、今さら説明の必要はないと思います。
選考会の一本化を阻んできたのは、男女「3大レース」に絡む商業利益を守るためであり、「強化と普及のため」という建前のもとに、複数の大会を共存させる絶対的な事情があったのです。
私は本業がイベント屋(企画・制作業者)ですから、こうした事情は痛いほど身に染みて理解できます。

テレビや新聞などのマスメディアで、「大人の理由」が明確に語られることは、まずありません。なぜなら、それらマスメディアの生殺与奪権を握っているのもまた、マラソン大会開催に寄与するところの大きい資本グループ(広告主および広告代理店)であり、それを直接非難したり批判したりはもとより、世間に好ましくないイメージを与えるようなコメントは絶対的なタブーだからです。
(横道に逸れますが、放送業界では「携帯電話関連のバッドイメージにつながる話題は最大のタブー」とされていて、したがって昨今かなり深刻な社会問題となっている「歩きスマホ」「ながらスマホ」が大々的にクローズアップされることはまずなく、社会的良識啓蒙の発信が行われていないという困った事例があります。自動車を運転しながらのスマホなど一発免停でもいいくらいだと思うのですが、推測ながら経済界との癒着が根深いのが政治の世界ですから、きちんとした法整備もなかなか難しいのではないでしょうか)
こんにちの日本でのマラソン隆盛は、そうしたコマーシャリズムがあってこそのもの。そして、それが代表選考の混乱の元凶ともなっている、だからこそ陸連は永年にわたるジレンマに悩まされ続けてきたのです。

「資本グループ」と「選考会に対する関係者・世間の声」との板挟みに立った陸連が、もしも一本化を強行するのであれば、それら形骸化しかねないビッグレースの立ち行きを考慮してやらねばならない、というのは必須です。
その方策を模索した結果が、今シーズンからの「MGCシリーズ」であり、オリンピック直前シーズンでの「ファイナルチャレンジ・レース」というわけです。
その結果、2019年のドーハ世界選手権は放棄された形となって、おそらく直前の3大レースには「世界選手権代表選考会」という謳い文句はつけられず、2019年春にMGCレースの参加資格者が出揃ったところで、それ以外の“予備軍”から代表が決まるのではないでしょうか。これはこれで、少々ガッカリな気がします。せめて、MGCレース出場までもう一歩の実績を残した有望な若い選手が選ばれることを願います。

「MGCレース」終了後に行われる「3大レース」も、こうしてビッグイベント「ファイナルチャレンジ・レース」としての肩書を与えられることになるわけですが、私が前の投稿で懸念したことがどうしても現実になってしまいそうです。
それは、「MGCレース」から最も短い期間の日程で開催される『さいたま国際』(女子)と『福岡国際』(男子)には、「MGC」から続けて出場しようという選手がほとんどいなくなるだろう、ということです。特に、コースが変化に乏しい上に細かいアップダウンが多い『さいたま』は開催2回にして既に「記録が出ない」というイメージが出来上がっているため、たとえ「MGC」を欠場した選手であっても回避することになるでしょう。まさに有名無実の指定レースです。

そうならないようにするには、この「GC方式」を翌年以降もレギュラー化し、2021年世界選手権(ユージーン)のための「MGCシリーズ」を兼ねる、というオマケ付きにする必要があります。そうすれば、むしろ「強豪選手の参加が少ないから順位が獲りやすいレース」として、穴場的な魅力をアピールすることができるかもしれません。
これは「大人の事情」を上手に処理するためにも、陸連には真剣に検討してもらいたいところです。もし「無理だよ、しょうがない」と言うのであれば、早々に『さいたま』は指定レースの看板を外し、首都圏有数の大規模市民レースへと方向転換するべきだと思います。(まあ、参加料が高過ぎる、コースが面白くないと市民ランナーからも悪評ふんぷんですから、いずれ消滅しちゃいますかね…)


◆「その先」を大切に…
私が本ブログで提案してきた「改革案」とは少し違いましたが、陸連が知恵を絞ってマラソン代表選考を完全にシステム化したことは、大きく評価されるべきだろうと思います。
これで「選考過程が不透明」と当事者がクレームをつけることも、無関係な第三者にやいのやいのと言われることもなくなるということになり、また一連の「MGCシリーズ」「MGCレース」には、これまで私たちが感じたことのない緊迫感・高揚感が生まれて、新鮮な興味をもってマラソンレースを眺めることができるでしょう。陸連とすれば、「選考会の実績ではA選手だが、本当は実力のあるB選手のほうを選びたい」という思惑がいっさい排除されることになるということはありますが、当事者も納得できることとして割り切れば済むことです。
余計な気苦労の少なくなった分、陸連には本来の仕事である選手の強化という点において、本腰を入れて取り組んでもらいたいものです。

「MGC方式」を前回のリオ五輪に当てはめると、「MGCレース」の有資格者は10数名、という出場人数になるそうです。少数精鋭とはいえ、これでは国民が注視する大舞台にしては、いかにも寂しい…選手側の意識の変化に期待するのと同時に、陸連としても手を打っていただきたい。せめて、50人程度の有資格者が出揃うレースになって欲しいものです。
たとえば「MGCレース出場資格を獲得した選手は、その時点からナショナルチームとして強化費支給と練習環境確保」というようなことにでもすれば、選手の目の色は変わってくるでしょうし、レース日程の早い『さいたま』や『福岡』への追風にもなります。
「2020東京」以降も、こうした路線の継続が必要なことは言うまでもありません。もうちょっと一般ファンにとってシステムも名称も分かりやすく、ということであれば、私の「マラソン日本選手権」「グレード制・ポイント制」などの提案も、ぜひ検討してみていただきたいものです。


 

日本マラソン界への提案(3)



前回の続きです。
私なりに「とりあえず」まとめてみた、ロードレース・シーズンの新しいスケジュール案は、
①『マラソン日本選手権』を独立したレースとして新設し、当該シーズンの日本王者決定戦とするとともに、オリンピックなど重要国際大会の最終にして唯一の代表選考会として位置付ける。(=欠場者は選考対象としない)
②上記の実施日程を3月中旬と仮定し、それに伴って既存大会の開催時期を変更・調整する。
③上記変更に際して、実業団連および学連の主催する主要駅伝大会の日程は、原則として変更しない。 
という主旨のもとに設計しています。
国内3大レースと呼ばれる男女6大会の日程を単純にずらすだけでも大変な調整作業が必要な上に、一部は国民的行事ともなっている駅伝大会の日程には実業団連や学連の思惑が色濃く反映されていることでもあり、これを動かすことはさらに難しい。また、選手が3大レースのいずれかに臨むにあたって、そうした駅伝大会やハーフ・30km等のロードレースを“トライアル”として効果的に利用できる流れも重要視したいと考えました。
その結果、特に男子の『びわ湖』や女子の『大阪』『名古屋』などは開催時期が大きく動くことになり、また『香川丸亀』や『青梅』といった現状2月に開催されているレースを秋口に、4月に行われている『長野』を『北海道』と並ぶ夏のレースにと、3大レース以外のところでも大きな時期変更を提案させていただいています。

もちろん、これがベスト!などと言うつもりはありませんし、公表された「陸連案」(『選考会』を秋に開催)であれば、より小さな変更で済むというメリットもありそうです。(ただし、「陸連案」では3大レースの開催意義がまったく違うものになり、記録の出にくいレースは敬遠されるという結果が目に見えています。『選考会』自体もぶっつけ本番的なスケジュールとならざるを得ません)
ですが、ひとまずこのスケジュール案を踏まえたところで、私の提案をもう少しご紹介したいと思います。

◆「グレード」と「ポイント」という考え方
さて、前回ご提案したレース・スケジュールの中で、個人のロードレースにはそれぞれ【 】でGなにがしという記号をつけてあります。
競馬などがお好きな方はお察しかと思いますが、これはマラソン界にも「グレード制」を導入してはどうか、という提案です。
すでに国際的には、主要ロードレスに「ゴールド」「シルバー」「ブロンズ」というレーベル制が施行されているのはご承知のとおりです。IAAFによるこのランク分けは、大会の規模や実施体制などを勘案した世界中の主要レースの格付けであるのに対し、私が提案するのは国内大会における、あくまでも「代表選考」を軸としたレースの重要性を基準にするものです。
なぜグレード制を設けるかと言いますと、『日本選手権』出場資格や代表選考の判断材料となる「ポイント制」を施行してはどうか、という考えからです。
 
GP(グランプリ)…日本選手権
G1 … (男子)福岡国際、びわ湖毎日、東京 
(女子)さいたま国際、大阪国際女子、名古屋ウィメンズ
G2 … (男子)北海道、別府大分、香川丸亀国際ハーフ
(女子)北海道、東京、香川丸亀国際ハーフ
G3 … (男子)長野、防府讀賣、延岡西日本、全日本実業団ハーフ、全日本学生ハーフ他
(女子)長野、全日本実業団ハーフ、全日本学生ハーフほか

「ポイント」は、各グレード・レースの着順、およびタイムなどによるボーナスポイントを設定し、2年間を有効期限として累積することで、マラソン・ランナーそれぞれの現有する実力をタイム以外の指標で、ある程度数字化するという試みと思ってください。
数字の設定には細かい分析や検討が必要になりますが、たとえば次のように仮定してみます。

GP … 1位:500pt. 2位:300pt. 3位:200pt. 4位:150pt. 5位:125pt. 6位:100pt. 7位:75pt 8位:50pt.
G1 … 1位:200pt. 2位:120pt. 3位:80pt. 4位:60pt. 以下、50・40・30・20
G2 … 1位:100pt. 2位:60pt. 3位:40pt. 4位30pt. 以下、25・20・15・10
G3 … 1位:50pt. 2位:30pt. 3位:20pt.  以下なし

G1~G3については日本人選手のみを対象にした順位とし、外国人選手を含めた総合順位の1~3位には相応のボーナス・ポイントを加算します。
このほか、「オリンピック/世界選手権」については総合順位のみを対象として、
GSⅠ … 1位:1000pt. 2位:800pt. 3位:400pt. 4位:300pt. 以下、250・200・150・100
「アジア大会」や「海外ゴールドレーベル・フルマラソン大会」については
GSⅡ … GPと同等前後のポイント設定
とします。

加えて、「タイム・ポイント」として、『日本選手権参加標準記録』をたとえば男子:2時間12分、女子:2時間30分と設定し、陸連公認コースまたは海外で行われるフルマラソン・レースでこのタイムをクリアした選手は最低でも10pt.、10秒上回るごとに10pt.を加算したポイントを獲得できます。(男子で2時間9分00秒で走れば180pt.獲得)

ポイントの有効期間は、当該の日本選手権から遡って2年前の成績までが対象。つまり、2020年の日本選手権に出場することになる選手は、2018-19年シーズンと2019-20年シーズンに獲得したポイントの累計が「持ち点」ということになります。
あとは、「スケジュール案」に記載した主要駅伝大会の長距離区間で区間賞を獲得した選手にボーナス・ポイントを付与するなども考えられますが、駅伝の場合は選手の属性によって参加できる、できないが強く出てしまいますので、少し不公平感を持たれるかもしれません。

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◆「ポイント」を、どう使う?
『日本選手権』の出場資格は、有効ポイントを10pt.以上持っていること、でよろしいかと思います。つまり、どの大会でもいいから「参加標準記録」を突破するか、G2以上の大会で日本人8位以内、もしくはG3大会で3位以内を1度でも記録すれば、参加資格を得ることになります。
これで想定出場有資格者数が何人くらいになるのか、ここ数年の記録や大会順位を精査してみないと何とも言えませんが、「数十名」という適切な人数に落ち着くのではないでしょうか。もし少ないようならば、標準記録を引き下げることで簡単に想定人数を調整できます。

さて、肝心の代表選考レギュレーションをどうするのか?
「日本選手権優勝」あるいは「前年の世界選手権またはオリンピック表彰台」であれば、その年のオリンピックまたは世界選手権、アジア大会の代表に「一発決定」でよろしいかと思いますが、残り1~2枠を選考するに際し、累計ポイントが重要な判断材料となります。
有効期間内にG1レースのどれかで日本人1位になった選手が2位に入ってくれば、累計500pt.。G1の成績が総合3位以内なら、さらに加点。
2年連続2位だったら、それだけで600pt.。前年3位でも500pt.。これも当然引っ掛かってきそうです。いずれにしても、ある程度実績(持ち点)のある選手が当該の日本選手権で2位ならば、選出されることは極めて有望、ということになります。
「前年の日本選手権優勝者」や「海外ゴールドレーベル優勝者」「G1レース1位で標準記録を5分上回った」であれば、少なくとも500pt.を持っているわけですから断然有利。当該年度が8位に終わったとしても、550pt.です。2位(800pt.)や3位(700pt.)なら文句なしに選出でしょう。まあ昨今、日本人選手のゴールドレーベル優勝なんていうのも夢みたいな話になってきていますから、それくらいのアドバンテージをあげても良さそうですね。
「G1レースで2勝(日本人トップ)」の有資格者ならば、400点以上を持っているわけですから、これも3位以内ならまず当確でしょうか。4位とか5位とかの場合に、ちょっと微妙なことになりそうですね。
逆のケースで言えば、日本選手権でいきなり2位や3位に飛び込んできたとしても、それまでの実績が乏しい(持ち点が少ない)場合は厳しいことになりかねない、と考えられます。

◆ポイント争いは面白いことになるかも?
ポイントやその運用レギュレーションの設定の仕方でいかようにも変わりますので、それが当事者や世間全般を納得させる材料になるのかどうかは何とも言えないところがあるものの、時間をかけて設計していけば、そこはクリアできるような気がします。
何よりも、これまでタイム・ランキングや過去のレース内容の印象度だけを頼りに、私のような陸上ヲタクではない一般の方々にはおぼろげにしか見えてこなかった「代表争いの渦中にいる選手たち」が、レースごとに変動するポイント・ランキングの力を借りて、くっきりと見えてくるのではないかと思います。
また、さまざまな競技で「ワールドカップ」「ワールドシリーズ」等の名称のもとに行われているグランプリ方式のポイント争いがそうであるように、マラソン界に新たな興味を喚起するに違いありません。とうぜん、年間(シーズン)のポイント上位者は、陸連により別途表彰されて然るべきでしょう。
で、日本選手権の順位が全てではない(優勝者は即決、欠場者は資格なしとしても)、累計ポイントが全てではない、というところに、日本陸連の「この選手を代表にしたい」という思惑が上手く反映される余地が生まれるとも考えられます。

もう一つのメリットは、選手がポイント獲得のためにレースを選択する判断材料が増える、ということです。特定して申し訳ありませんが、女子のG1レースとなる『さいたま国際マラソン』などは、現況のまま、あるいは「陸連案」のとおりにすれば、トップ選手は寄り付かない有名無実の大会となっていく可能性が高いと思います。(選考会の後に3大レースですと、レース間隔の最も少ない『さいたま』や『福岡』には、有力選手はまず出ないでしょう)
記録が出にくくても順位ポイントが獲りやすい「穴場」だということになれば、そうしたトップ選手の大会離れを防ぐことが可能になると思われるのです。
地方都市が主体となって営々と続けてきたG2、G3クラスの大会にも、思わぬ一流選手の参戦ということが頻繁になるかもしれません。
もちろん、最終的に「代表入り」を目指す選手たちは、すべてのレースに100%の心構えで挑む必要などありません。
「今回はポイントが〇点以上取れればよし」と、肩の力を抜いて、練習の一環くらいのつもりで走るレースをこなしていけばよいのです。シーズンに2度、3度とフルマラソンを走る選手も、増えてくるのではないでしょうか。

「マラソンに日本選手権を!」
「グレード制・ポイント制の導入を!」
なかなか面白そうな試みだとは、思いませんか?



 

日本マラソン界への提案(2)



日本陸連が、2020年東京オリンピックのマラソン代表選考方式について、真剣に「大改革案」を検討していることが本日の新聞等で報道されました。
このテーマについては、当ブログではリオの男子マラソン直後だった8月25日の記事で私なりに「提案」し、その後もより具体的なロードマップを思い描いては“続編”の投稿を目論んでいたところ、図らずも今回、自分の考えに近い形で方向性が示されたことに、少なからず驚いています。

「陸連案」の骨子は、
「2019年秋以降の時期に『東京五輪マラソン代表選考会』を開催し、それ以前の主要レース(男女3大レース・北海道・別大・世界選手権・アジア大会)での成績上位者に出場資格を与える」
「『選考会』での上位2名を即時代表決定し、残り1名は選考会後の指定レースで設定記録を突破した最上位の選手、もしくは選考会3位の選手」
というものです。
私が提案した
「『マラソン日本選手権』を新設して選考会をこれに一本化、3大マラソンをはじめとする主要レースはその出場資格を得るための大会と位置付ける」
という考えと、ほぼ一致します。異なる点は、陸連の腹案が「2020東京」の選考に特化した方式と思われるのに対して私の考えは、当面の世界選手権代表選考を含めた改革案であること。そのため陸連案では2019年度(2019年~20年のシーズン)の初頭に「臨時大会」を設けて以後の国内主要レースに関しては特殊な位置づけをするといったニュアンスがあるのに比して、私は「新規大会の創設」を軸に、もう少し長期的・恒常的な選考ロードマップが必要と考えているあたりが違いでしょうか。
むろん、陸連案はこれまでにない“英断”であることは間違いありませんが、「選考会」ですべてを決めきれないことのジレンマ、解決策としての「3大レースで残り1枠をタイムで選考」というあたりに、少々強引さを感じてしまいます。ま、そのあたりは私も決定的な解決策を持っているわけではないんですけどね。


マラソン選考法
http://mainichi.jp/sportsspecial/articles/20170329/ddm/041/050/160000c
毎日新聞WEB記事より


◆日程の整備が急務
今回の陸連のコメントによれば、
「代表選考会の一本化は同じタイプの選手が揃いがちなことや文字どおり『一発屋』が選考されるリスクがあり、またマラソンが注目を集める機会が減ることで強化・普及につながらない」
ということのようですが、これには私の指摘したような、「国内主要大会にまつわる巨大資本との関わり合いを反故に出来ない」という“ホンネ”のところが隠されています。
3大マラソンのどれか一つで「一発選考」とするには、スポンサー‐広告代理店‐主催新聞社・TV局という形で成立する巨大資本グループのいずれかを犠牲にしなければならず、事実上それは不可能…だったら「3つのうちの一つを選ぶ」のではなく、それ以外により上位の大会を新設すればいい。あとは、“格下げ”される格好となる3大レースが有名無実化することのないよう、立ち行きを考えてやらねばならない…ここまでは、私と陸連の考え方はほぼ一致しています。
ただ、そのためには年中行事としてほぼ固定・踏襲されている現行のレース・スケジュールを大幅に見直し、資本や主催者の異なる各大会の間を調整し、また一つのシーズンが次のシーズンへとスムーズにつながるきめ細かいロードマップを作成していくという、気の遠くなるような作業が必要になるものと思われます。

当面の課題は、「新設される『代表選考会』をどの時期に行うか、そのために既存のレースをどう移行させるか」というスケジュール調整でしょう。これには、マラソンだけでなく、日本の陸上界にとっては選手および主催者、さらにファンの立場からも決してないがしろにできない駅伝その他のロードレースのスケジュールとの絡みもありますので、相当に難しい課題です。
陸連だけでないそれぞれの関係団体にとっては、「大学駅伝」や「実業団駅伝」のスケジュールを変更することはまず不可能、というところを大前提に、この課題について検討してみたいと思います。

私の提案では、そのシーズンの集大成的な位置付で開催する『マラソン日本選手権』を最終選考会とする、ということでしたので、これをシーズンの最後に持ってくる、ということが一つの前提になっていました。
陸連案では、『選考会』の後に追試的な意味合いでそのシーズンの3大レースを実施するということですから、ここに大きな違いがあるのですが、私は2020年以降も定着させるために、また東京オリンピック代表選考に先立って前年の世界選手権代表選考でも「予行演習」をできるようにするためにも、各方面の理解を得られることで定着しやすいと思われる「日本選手権案」を提唱していきたいと思います。

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感想(4件)


◆豊大先生流・新スケジュール案

7月上旬 長野マラソン【G3】【G3】
8月最終週 北海道マラソン【G2】【G2】
10月体育の日 大学選抜駅伝(出雲駅伝)
10月第3週 香川丸亀国際ハーフマラソン【G2】【G2】
10月最終週 全日本大学女子駅伝(杜の都駅伝)
全日本実業団女子駅伝予選会(プリンセス駅伝)
青梅マラソン(30km)【G3】【G3】
11月第1週 全日本大学駅伝(伊勢駅伝)
各地区実業団男子駅伝
11月第2週 さいたま国際マラソン【G1】
11月第3週 福岡国際マラソン【G1】
11月第4週 全日本実業団女子駅伝(クィーンズ駅伝)
12月第1週 全日本学生ハーフマラソン【G3】【G3】
12月第2週 大阪国際女子マラソン【G1】
12月第3週 びわ湖毎日マラソン【G1】
12月第4週 全国高校駅伝

防府讀賣マラソン【G3】
12月30日 大学女子選抜駅伝(富士山駅伝)
1月1日 全日本実業団駅伝(ニューイヤー駅伝)
1月2・3日 箱根駅伝
1月第2週 全国都道府県対抗駅伝(男女を同日または土日祝日実施)
1月第3週 別大毎日マラソン【G2】
1月第4週 名古屋ウィメンズマラソン【G1】
2月第1週 東京マラソン【G1】【G2】
2月第2週 全日本実業団ハーフマラソン【G3】【G3】
延岡西日本マラソン【G3】
2月第3週 クロスカントリー日本選手権
熊日30km【G3】【G3】
2月第4週 駅伝日本選手権(男女同日または土日実施)
3月中旬 マラソン日本選手権(男女同日または土日祝日実施。2019年に関しては東京五輪本番コース)【GP】【GP】


男女各3大マラソンについては、現在では同一シーズン中はいずれか1レースへの出場という
ことが常態化していることを考慮し、レース間隔を短くしてできるだけ早く“完了”させるこ
とを目指したスケジューリングとなっています。
これによって、『日本選手権』参加資格を得るための大会としては、事実上1月下旬から2月
上旬の『名古屋』『東京』がそれぞれ最終機会となり、「本番」の日本選手権までは約1か
月半の間隔が空くことになります。
極端なことを言えば、同じ日にもっと複数のレースを組み込むことも可能ですが、レースを
仕切る陸連の繁忙ぶりや観客・ファンの立場等を考えますと、それはできるだけ避けたいと
いうことになります。
なお『びわ湖』と『東京』は現行のスケジュールとは順番が入れ替わっていますが、師走に
東京でマラソンレースを実施することの影響を考慮して、このようにしてみました。
ところで、各レースにくっついている【 】の記号ですが、これは何でしょう?
これを含め、『日本選手権』出場権を得るまでのプロセスなどについては、次回の記事で、
ご説明させていただきます。


 
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