豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

展望記事

半年ぶりブログ~世紀の一戦『MSG』を直前大予想


多忙にかこつけて休載状態にしてたら、あっという間に半年が経ってしまいました。
東京五輪前年の今季、日本の陸上界はなかなかに活況を呈しています。記事にしなかったのが今となってはもったいない気がしますけど、諸般の事情により、ということで…。陸上競技を伝えるメディアには相変わらず細かく目を通していますんで、浦島太郎状態ではありません。その点はご心配なく。

さて、いよいよMGC=マラソン・グランド・チャンピオンシップ本番です。
このプロジェクトが世に伝えられた当初は、当ブログでも対案を提示したりするなど、そのプロセスには幾ばくかの疑問も抱いていたのですが、まずまず盛り上がって、何よりも当事者の選手およびその周辺関係者が一様に納得してこの方式を受け容れていることが、最大のメリットだったと思います。
久々のブログは、「ハズレてもともと」のつもりで、このMSG大予想と参りたいと思います。ほんと、直前も超直前で済みません。結果が出てから読んだ人、大笑いしてくださいな…。
IMG_74380_(1)_-_コピー
 ※日本陸上競技連盟HPより
【ファイテンオフィシャルストア】公式通販サイト

◇女子
MSGの経緯で一つ残念だったのは、女子の有資格者があまりにも少なかったことでしょう。といって、他に誰が資格者になっていて欲しかったかと言えば、そうそう顔が思い浮かびません。清田真央、田中智美、田中華絵、堀江美里、竹地志帆…といったところでしょうかね。上位争いまではちと難しいが、レースのスケールアップにはなったことでしょう。
それと、新しい人が意外に出てこなかった。資格獲得第1号が前田穂南というフレッシュな名前だっただけに、続々と新規デビュー組の勝ち名乗りに期待したんですが、続いたのは松田瑞生と上原美幸、関根花観(欠場)、一山麻緒くらいで、大森菜月は惜しくも間に合わず。
どうせ復活するんなら、新谷仁美にチャレンジして欲しかったですけどね。

さて、その女子。もともと少ない有資格者から3人がドーハ世界選手権代表に回り、さらに残念なことに、ともに穴馬的存在だった関根花観(JP日本郵政G.)と前田彩里(ダイハツ)が故障欠場。たった10人でのフルマラソンという、かつてアジア大会でも見たことのない少人数のレースとなってしまいました。
ここ数日、放送担当局のNHKではしきりに松田瑞生(ダイハツ)・鈴木亜由子(JP日本郵政G.)・福士加代子(ワコール)の3人を取り上げ、あたかも「3強」の様相であるかのように事前告知を煽っていますけど、いやいやそんなに単純じゃあないですよ。だいたい、その絞り込みにはおそらく、珍しくNHKのコメンテーターに起用された増田明美さんの思惑が絡んでいることでしょうから、全然アテにはできません。
(増田さん本人が以前に言っていることですが、「NHKでは技術や戦術の解説を求められるのでお呼びではなく、日テレでは自分以上にアナウンサーらが細かい選手取材をするので声がかからない」んだそうです)
昨今のトラックを含めた長距離戦線の実績、福士の場合は20年近くに及ぶ業績の数々から、「強い!」というイメージが定着しているのがこの3人と言えます。その一方で、松田は5月の日本選手権10000mで好調を伝えられながら惨敗したトラウマがあり、鈴木にはマラソンランナーとしての経験不足、福士には年齢的な衰えという、それぞれに不安を抱えた3人でもあります。
当然、歴代4位のタイムを持つ安藤友香(ワコール)や、マラソンの経験値では一番と言える岩出玲亜(アンダーアーマー)、リオ選考会では代表まで1秒差と大魚を逃した小原怜(天満屋)など、後に控えるのは遜色のない実力者ばかりです。

いずれにしろ、頭数は少なくても予想をするのは非常に難しい中、私は敢えて!と言いますか、ここへ来ての成長度という意味で最も期待するのが、前田穂南(天満屋)です。
MGC切符を獲得した2017北海道マラソンでの鮮烈な初優勝ぶりはともかく、次戦の大阪国際女子マラソンでは高校の先輩である松田を激しく揺さぶり、結果的に優勝は譲ったものの「ホンモノ!」の感を強くしました。大阪薫英女学院高時代は駅伝エースの松田に対して万年補欠という立場だった彼女が、天満屋ならではの“武富マジック”によって見事な成長を遂げていたのです。
その後の駅伝やトラックレースなどでも安定して好位置をキープしており、完全に天満屋のエースとしての地位を不動のものにしつつあります。1年前のベルリンでは再び松田に及ばず、今年の東京では寒さの故か失速しているので評価はイマイチというところでしょうが、マラソンにおける潜在能力は相当のものがある、と私は睨んでいます。

レース展開は、10人という少人数であること、数日前までの猛暑は免れたとはいえ20度を大きく超える暑さの中の戦いであることを考えれば、誰かが飛び出す展開になることはちょっと考えにくい。先頭を買って出る選手がいるとすれば鈴木だと思いますが、それも自重を決め込むと、2004年のアテネ五輪選考会だった大阪の時のように、極端なスローペースに陥ることだって考えられます。
天満屋の坂本直子が優勝したあのレースは、実にスリリングな名勝負でした。そのレースに、私は同じピンクのユニフォームを重ね合わせて想像してしまうのです。そういえば坂本も、千葉真子に2度苦杯をなめさせられた後の3度目の正直で、見事に千葉を破って代表の座を勝ち得たものでした。
いずれにしろ、展開のカギを握るのは鈴木でしょう。スピードランナーと言ってもラスト勝負になるとスプリントが利かないタイプなので、スローでの集団走が続けば勝機は遠のくばかりでなく、あの時の渋井陽子のように走りを狂わされます。中盤にしろ終盤の登り坂にしろ、彼女が仕掛ける場面が必ず訪れる筈です。鈴木がロングスパートを仕掛けた時、誰がそこに付いているか、あるいは誰も付いていけなくなるか…。
終盤までもつれれば、ラストが強いのは松田と安藤。松田の粘り強さはやはりピカイチですし、駅伝1区のスペシャリストだった安藤は、勝負どころの見極めが実に上手い。あとは、ダークホースで一山麻緒(ワコール)の瞬発力も侮れません。残っていられれば、の話ですけどね。
もう一人、レースをメイクする可能性が高いのは、言うまでもなく福士おばさん。ただ、どうなんでしょう。私はもしかしたら、彼女が安藤や一山のサポート役に回ろうと考えるような心境の変化がレース中に訪れる可能性があるんじゃないか、という気がしています。
心情的には小原を応援したい気持ちもあるんですが、決して順調に来ているという雰囲気ではないので、強くは推せません。岩出、上原にも一発の可能性は十分にあります。野上さん、ゴメンナサイ!

ということで、私の大予想は
◎前田穂南
〇松田瑞生
▲安藤友香



◇男子

名門旭化成勢の全滅という意外さはあったものの、現有のビッグネームはほぼほぼ揃ってまずは賑やかな顔ぶれとなりました。
大迫傑(NIKE O.P.)、設楽悠太(Honda)、井上大仁(MHPS)、服部勇馬(トヨタ自動車)が「4強」と言われています。1年前に日本記録を更新した大迫、前記録保持者で安定感抜群の設楽、猛暑のジャカルタ・アジア大会を制した井上、9年ぶりに国内3大大会の優勝者となった服部と、それぞれにそう呼ばれるだけの立派な肩書があり、持ちタイムでもトップ4です。

こちらも、スローな滑り出しが予想されるところですが、30人もいれば、走り易いイージー・ペースに持って行こうという動きが自然に発生することが考えられ、巷間伝えられるように設楽が序盤からレースメイクをするようなことでもなければ、3分5秒/㎞程度の安定したペースになるんではないでしょうか?(スタート直後は下り坂が続くので、数字上は速いタイムになると思いますが)
大迫は早大時代に箱根駅伝1区で2年続けてロケットスタートを決めて後続をぶっちぎっていますが、強豪が揃った4年時にはそれも通用せず、もうその手は使わないでしょう。先頭を引くことのデメリットを無視して設楽が引っ張ってくれると、非常に面白くなるところではありますが、果たしてそこまで、往年の中山竹通みたいな大胆不敵さがありますかね?
「自信満々のコメントを発する時の設楽はコケる」というイメージが、私にはあります。こちらもラスト勝負になれば大迫に一日の長があることを知っていますから、早めの仕掛けがあるのは間違いないとして、どうしても早く仕掛けた方が不利になるのが、このレースの悩ましいところだと思えます。

淡々としたペースで進んだ場合、途轍もなく恐ろしい力を秘めているのが佐藤悠基(日清食品G.)ではないでしょうか。
佐久長聖高校時代には「天才」、東海大時代には「化け物」と呼ばれ、社会人となって日本選手権10000mを4連覇した必殺のスプリントは、大迫が3度挑んで返り討ちにあったほどの威力がありました。その佐藤もいつの間にか33歳、「黄金世代」と呼ばれた竹澤健介や木原真佐人、メクボ・モグスらが大成することなく、佐藤自身もマラソンでは苦戦続き、この世代の代表格は川内優輝ということになっています。稀有な素質の開花を阻んできたものは、大学時代から見えていた痙攣などの脚部不安、いわゆる“ガラスの脚”であったかもしれません。夏場のレースは、彼にとって有利な材料となる要素を孕んでいます。
マラソンランナーとしては平凡な実績しかなく、いつも30㎞を待たずに先頭集団から消えていく佐藤が、ここで遂に本領を発揮するのではないか、という期待に胸が躍ります。ただし、佐藤が好走するような展開になった場合に、やはり今の大迫には勝てないんではないかな、とも思います。

オールドファンの私から見て、最もマラソンランナーらしい選手だなと思えるのが井上。コツコツと走り込んで蓄えたスタミナと精神力には自信を持っていることでしょうし、過去の経緯から設楽を徹底マークする戦術が確固としているのも強みです。
他に、やたらと威勢のいいコメントが聞こえてくるのが神野大地(セルソース)です。終盤の登り坂までもつれ込めばしめたものかもしれませんが、果たしてそこまで我慢できるかどうか。むしろ、中団でじっくり構えた時の今井正人(トヨタ自動車九州)の方が、荒れたレースになった時は不気味さを感じます。

で、私の結論は
◎大迫傑
〇井上大仁
▲佐藤悠基
△設楽悠太
△今井正人

男子の方は、さらに予想困難。個人的には、強いと言われる選手が胸を張って先頭を引っ張るレースが見たいですし、3人出しをするトヨタやMHPS、富士通勢のチーム戦略にも興味津々です。

なにぶんにも久々のブログですんで、予想はご愛敬ということでお察しくださいませ。

2018シーズンのここまで~国内編


◇ご無沙汰の言い訳
たいへんたいへんご無沙汰いたしました。
4月からの仕事環境の変化で、ブログに費やす時間がほとんどなくなってる状況です。
陸上関連のTV放送などはキーワード留守録でほぼ録り逃しはありません(時々『ダーウィンが来た~陸上生活に進化した〇〇」とか「陸上自衛隊の中東派遣云々」なんてのが録画されてたりします)けど、つい先日も『関東インカレ最終日』のフル中継を視終わるのに何日もかかったりしています。
こんなスチャラカ・ブログでも、いろいろと調べものをするのに結構な時間がかかったりするんですよ。更新の停滞については、どうかご理解くださいまし。

さて、今季の陸上トラック&フィールド・シーズン、国内では日本選手権前の、グランプリ・シリーズを軸とする一連の大会が概ね終了し、今週末から始まる『アジア・ジュニア選手権』、翌週の『日本学生個人選手権』、『日本選手権混成競技』などを経て22(金)~24(日)の『第102回日本陸上競技選手権』へと続きます。
今年はオリンピックも世界選手権もない中間年、いつものように「参加標準記録を突破して日本選手権優勝」みたいな緊迫感はありませんが、ジャカルタ・アジア大会に1種目あたり最大2名までの代表入りを目指す戦いが繰り広げられることになります。

◇“それぞれ順調”の短距離が今年も熱い
ここ数年、空前の盛り上がりを見せているのが男子スプリントのカテゴリー。記念すべき「9秒元年」の翌年とあって、その注目度はますます高まりますが、現状ではランキング1位が山縣亮太(セイコー)とケンブリッジ飛鳥(NIKE)の10秒12(ともに布施スプリント)と、10秒0台がひしめいていた昨年同時期からは少々出遅れムードです。
しかし、今季はその両者をはじめ桐生祥秀(日本生命)、多田修平(関西学院大4)、飯塚翔太(ミズノ)、藤光謙司(ゼンリン)…といったヨンケイ候補のトップ・スプリンターがいずれも順調に試合をこなして調子を上げつつあるのが頼もしいところ。僅かに、サニブラウン・ハキーム(フロリダ大)だけが故障を発生して全米学生選手権への道を断念したのが残念ですが、日本選手権ではまた、ハイレベルかつスリリングな代表争いが見られそうな予感です。

そして、『ゴールデングランプリ大阪』でリオ銀メダルメンバーが見せた、37秒85の圧倒的なリレーのパフォーマンス!
この大会ではどちらかというと、各種目で中国、韓国、台湾といったアジア大会のライバル勢に押され気味だったり、また100mではGG大阪には不出場(リレーのみ出場)だったもののその直前のDL上海大会で桐生に圧勝したスー・ビンチャン(CHN)がインドア・シーズンから引き続いて絶好調を伺わせているということもあり、少々不安な視線を送っていたのですが、ことリレーに関しては盤石の信頼感を新たにすることができました。

◇アジア大会の注目種目は「ヨンパー」
全種目を通じて、今季国内で最も注目度の高い仕上がりを見せているのが400mHの安部孝駿(デサント)でしょう。
『静岡国際』で出した48秒68のPBは現在世界ランク7位。この種目では今季、彗星のごとく現れたアブデルラーマン・サンバ(QAT)が47秒48(DLローマ大会)と世界のリーダーとなり、アジア大会でも絶対的な金メダル候補に躍り出ていますが、安部にはぜひとも、このサンバに真っ向勝負を挑んでほしいところです。ジュニアの頃から恵まれた体躯とスター性あふれる容姿で期待されていた選手が
昨年来ようやく本格化してきた、というところですから、向こう数年は不動のエースとしての活躍を祈ります。

◇女子で面白いのがこの種目
昨季から、盛況が期待されていたのが女子800mという種目です。
2分00秒92というビッグ・レコードを土産に今春大学を卒業した北村夢(エディオン)に夢の1分台なるかという注目が集まる中、GPプレミアの『静岡国際』を制したのは大学1年の川田朱夏(東大阪大)。タイムの2分02秒71もなかなかのもので、同学年のライバル・塩見綾乃(立命館大)を含めた3人が、非常に拮抗したレベルで2分切りの先陣争いを繰り広げています。
4つ年下の川田に敗れた北村も、この日は故障上がりだったようで、日本選手権での巻き返しに期待してよさそうです。

私的に昨シーズンの最注目種目だった女子やり投は、第一人者の海老原有希が引退した後の今季も、次なる女王争いが見ものです。
すでにGG大阪で60mオーバーを果たした大ベテラン・宮下梨沙(大体大TC)が一歩リードの感ですが、海老原の直径後輩・斉藤真理菜(スズキ浜松AC)をはじめ、北口榛花(日大3)、山下実花子(九州共立大3)らも順調、ここ1、2年は調子の上がらなかった久世生宝(コンドーテック)も久々に好調を伺わせています。
大阪で中国勢が圧倒したこの種目で、どうにか一泡吹かせるだけの期待をさせてくれるような、日本選手権での激投を見たいものです。

女子長距離では、どうやら主役の顔ぶれが2、3年前からは一新されてきたようです。
5000mでは、『織田記念』で山ノ内みなみ(京セラ)が15分21秒31、『ペイトン・ジョーダン招待』で福田有以(豊田自動織機)が15分20秒08、『DLユージーン大会』で鍋島莉奈(日本郵政G.)が15分10秒91と次々に今季最高が更新され、これに木村友香(ユニバーサル)や鈴木亜由子(日本郵政G.)らをまじえた日本女王争いはまったく予断を許さない状況。福士加代子(ワコール)以外に誰もなしえていない、14分台突入の夢も膨らみます。
10000mはまだほとんどの選手が『PJ招待』か『兵庫リレーカーニバル』のいずれかを走ったのみで、一山麻緒(ワコール)一人が31分台という状況。当然ながら女王奪回を狙う鈴木亜由子を中心に、関根花観(日本郵政G.)、高島由香(資生堂)と阿部有香里(しまむら)のソックリさんコンビ、さらにはマラソン組から松田瑞生(ダイハツ)、安藤友香(スズキ浜松AC)などが絡んでくることになるでしょう。個人的には、学生レベルから一歩抜け出した感のある関谷夏希(大東文化大3)に注目しています。

あとは、女子の短距離。本調子を取り戻しつつある福島千里(セイコー)と昨年女王の市川華菜(ミズノ)の戦いは、『布施スプリント』で市川の強烈な逆襲があって、混沌としてきました。アジア大会のリレーを考える上でも、ここにもう一枚、齋藤愛美(大阪成蹊大1)あたりの再浮上を望みたいですね。

もう一つ、“本編”の1週前倒しで行われる混成競技では、今季ブレイクしつつある美女アスリート・宇都宮絵莉(長谷川体育施設)と女王・ヘンプヒル恵(中央大4)の戦いに注目です。
『TOKYO COMBINED』で宇都宮・山崎有紀(スズキ浜松AC)に敗れたヘンプヒルは大怪我からの復帰途上で、その1か月後には関東インカレを4連覇して上昇気流に乗ってきています。息の抜けない勝負になるのは必至で、競り合いからの6000オーバーを期待しましょう。
そして、宇都宮には400mHとの日本選手権ダブル・タイトルの期待もかかります。



◇“新生”日本GPシリーズに物申~す!

最後に、今季新たに生まれ変わった「日本グランプリ・シリーズ」について。
「GPプレミア」と呼ばれる4大会と「GP」7大会を終えた(残り「GP」2大会)時点で、全種目を通じ最もポイントの高い選手に与えられる年間GPのポイント・リーダーは誰かといいますと…
合計2365.0ポイントで、大林督享(400mH/石丸製麺)!
誰、それ?
私もほとんど知らない選手です。
以下、ベスト10までを順に紹介しますと、
②山ノ内みなみ(5000m/京セラ)
③井上 駆(400mH/順天堂大)
④宇都宮絵莉(400mH/長谷川体育施設)
⑤清山ちさと(100mH/いちご)
⑥若林康太(400m/駿河台大)
⑦川島鶴槙(LJ/順天堂大)
⑧大六野秀畝(10000m/旭化成)
⑨柴村仁美(100mH/東邦銀行)
⑩増野元太(110mH/ヤマダ電機)

えーと、新生・日本GPシリーズのコンテスト方法はマラソンのMGC以上に複雑で分かりにくい、てなことを以前に書いたんですけど、まったくその通りで、結果(途中経過ではありますが)も摩訶不思議なものになっている、という状況です。
上位にいる選手は全員、GPプレミアとGP、2回の試合を消化して、そこそこの成績を残す、という条件をクリアしています。

トップの大林選手は、GPプレミアの『静岡国際』で49秒93の4位(1133+40pt.)、GPの『木南記念』で49秒75の2位(1142+25+25pt.)で、合計2365pt.。この種目のリーダー安部孝駿はGPプレミアのみの出場で、タイム・ポイント1196、順位ポイント60、ミーティングチャンピオン・ポイント25の合計1281pt.で、GPランキングでは135位。ちなみに、GPプレミア『織田記念』100m優勝の山縣亮太は1233pt.の136位です。
ただし、このランキングにはまだ、今週行われた『布施スプリント』『田島記念』の結果が反映されていないため、男子100mに10秒12で優勝した山縣はタイム・ポイント1165、順位点と優勝点30+25の計1220pt.を加えて、2戦合計2453pt.で断トツの首位に躍り出てくることになります。
安部がもし『南部記念』に出てくるとすれば、さらにこれを上回る得点になる可能性が大いにあります。

それにしてもなんか、釈然としないですねえ。種目によって記録の評価がまちまちなのも問題アリなんですが、そもそも「全種目を通じて」という発想がおかしい上に、「一種目の中でさえ」客観的な評価とは異なる結果が出かねない、という課題がありありと浮き彫りになっています。
ま、この先どのように変わっていくのか、陸連の頭脳にお任せするしかないですね。

次の日曜日は『全国男子駅伝』


15-01-18_002

このシーン、覚えていますか?
3年前の『第20回都道府県対抗全国男子駅伝』第1中継所での衝撃的なシーンです。過日『全国駅伝』のPR番組(NHK)でも取り上げていたので、思い出す人もいるでしょう。

愛知県の第1走者・山藤篤司(当時愛知高3年)が脱水症状を起こして中継所前でフラフラになり、タスキリレー・ゾーンまで約1mのところで倒れ込んだまま、一歩も動けない状態になりました。「早くタスキを渡さなければならない」という意識はあるものの、どうしても脚を動かすことができません。見かねた審判員が近寄り励ましの言葉をかけるのに応えるかのように、山藤はゾーン内で待ち構える中学生ランナーの足元に向かって、タスキを放り投げたのです。
ゾーン内にフワリと落ちたタスキを拾って、中学生が一目散に駆け出します。一瞬「あっ!」という表情を浮かべた審判員はしかし、すぐに山藤の方に向き直り、そのままレースは進行しました。
とうぜん、ほどなくして愛知県チームの「失格」が裁定されました。

解説者の宗茂氏は、「厳しすぎる」というようなコメントをしていましたが、裁定に議論の余地はありません。「タスキリレー・ゾーン(20m)の内側でタスキを手渡しする」というのが、駅伝競走の基本的なルールですから。
駅伝チームが途中棄権以外の事情で失格の対象になるのは珍しく、過去には『全日本実業団女子駅伝』の中部日本予選会で、スズキ自動車(現・スズキ浜松AC…当時は実業団に加盟)の前走者がゾーンの手前に落としてしまったタスキを次走者が拾い上げて走り去ったケース、また最近では一昨年の『全日本実業団女子駅伝』(本戦)で、豊田自動織機がいわゆる「オーバーゾーン」で失格になったケースが思い出される程度です。(中継違反以外では、『東日本女子駅伝』で折り返し点を間違えてショートカットしてしまったケースがありました)
この時の場合は、身体が動かず意識ももうろうとした状態の山藤選手は、タスキを渡す唯一の手段として思わず放り投げてしまったものと考えられますし、正確なルールを知らなかったということも考えられます。第2走者の中学生にしても、ルールを認識していなかった可能性が高いと思われます。
近くで見守っていた審判員は、明らかに「違反」を認識したはず(そのためにいる審判ですから)ですが、脱兎のごとく駆け去った中学生を呼び戻すよりは、山藤の救護を優先した、というところでしょう。
誰が悪いわけでもなく、いわんや「ゴールまであと僅かであっても、山藤選手の健康のために速やかに棄権を促すべきだった」などという意見も、現実離れしています。いわば、不可抗力の「失格」だったのです。
チーム全員にとって無念以外の何物でもなかったでしょうが、私は「当事者」となってしまった山藤選手のその後が心配でした。あるところで、こんなことを書いています。

錚々たる顔ぶれのアンカー区間で(中略)ニューヒーロー神野大地(青山学院大)が、失格に意気消沈する愛知のメンバーを勇気づけたはずだ。同じ7区を、あの馬場翔太(駒澤大)も立派に岡山県のアンカーを務めあげていた。どのチームだって、誰かのせいで負けるのだ。それが自分だったというだけの話なんだから、気持ちを大らかに、次のレースを頑張ろう!>


周知のように、山藤選手はこの駅伝の2カ月半後に神奈川大に進学。2年生だった昨季には、全日本の予選で大ブレーキとなってチームが本戦出場を逃すという苦難をも経験しました。
チーム戦での度重なる失敗にも挫けることなく、同じシーズンの箱根では鈴木健吾とのダブルエースを形成。神奈川大・躍進の中核としてみごとな成長ぶりを見せました。
13位に終った今年の『箱根』の後、主将の座を鈴木から引き継ぎ、来季の全日本連覇、箱根のシード復帰への旗頭となる山藤選手は、21日(日)の『全国男子駅伝』にも、この「失格」以来出場の予定です。強豪チームの一角である愛知県で、高校卒業後に山藤選手が走る機会はもうないのではないか、と思っていたのですが、彼の成長と立ち直りは、私の想像を超えていました。
走るのを辞めないで、本当によかったと思います。今年の神奈川大も、注目しています!

箱根駅伝のミカタ ⑤~豪快なダウンヒルがカギ握る


いやっははは、2018年は初っ端から赤っ恥続きです。
展望の片隅にも触れなかった東洋大が往路優勝、そーっとイチオシの順天堂大は主砲コンビがズッコケて8位折り返し。
いやね、1~3区の顔ぶれを見たら、東洋は挙げておくべきでしたね。昨年も往路が終った段階で「復路はシード権争いに汲々としそう」だなんて書いたのに総合2位。今回の往路1位もそうですが、どこか地味~で華のなさを感じさせる、それでいてスキを作らない全員駅伝がいちばん強いってことなんですよね。それを実践した4・5区の1年生が想定以上でした。
まあ、駅伝の予想と結果なんて、こんなもんでしょう。(と開き直る)
神奈川が15位、東海が9位だなんて、誰が予想できますか?

まあ、青山学院大に関して言えば、往路の結果はいろいろな想定のちょうど真ん中あたりに来たなという感じがします。4連覇は、見通しが立ったんじゃないでしょうか?
何と言っても、復路の口火となる山下りに、最高のスペシャリスト・小野田勇次がいますからね。

◇新春のスペクタクル・6区の面白さ
標高差800m以上を一気に駆け下る…陸上ロードレースで、こんなダウンヒル・ゲームは他に類を見ません。山登りレースというのは稀にありますから、その意味では5区以上に特殊なコースが6区の山下りということになります。
下りの走りというのは一見ラクそうですが、普通の人が普通に走ると重心を後ろにして踏み出す脚を突っ張るような姿勢になり、知らず知らずのうちにブレーキをかけながら走ることになります。これを長い距離続けると、脚の筋肉といい、膝などの関節といい、さらに足裏の皮膚といい、ことごとく重大なダメージを被ってしまいます。
私のような素人ランナーの場合、「坂をボールが転がり落ちるように、力を使わずに走る」という意識を持つことくらいしかできませんが、プロの走り屋たちはさらに細かいフォームや適切なストライドとピッチに気を配り、「転がり落ちる」走りを具現化していきます。
それでも、上手な人とそうでない人とではスピードも下りの持久力も大きな差が生じやすく、上りの5区ほどではないにしろ、意外なほどのタイム差になりがちです。区間上位でゴールした選手であっても、ひとたび控えテントに入ってみると足裏の皮がベロリと剝けている、なんていう様子が時折後日談的に紹介されたりします。

【あす楽】【箱根駅伝MAP付き】サッポロ 黒ラベル 箱根駅伝 デザイン缶 350ml×1ケース/24本《024》

価格:4,880円
(2018/1/3 00:53時点)
感想(1件)


◇濃霧を突き破った仲村明(前順大監督)
「山下り名人」についてまとめてみようか…と考えていたら、年末の日テレG+でちょうど同じような企画で過去の大会ダイジェストを再放送してまして、「山の神」と称された3人のクライマーとともに、「下りの名人」として仲村明(第64回大会・順天堂大)、川島伸次(第65回・日本体育大)、金子宣隆(第77回・大東文化大)といったダウンヒラーが区間賞を獲得した大会が放映されていました。

私が当時強烈な印象で記憶していたのが、1988年第64回大会の仲村明(一昨年までの順大監督)です。
この時の箱根は、すっぽりと厚い雲の中に閉ざされたような天候で、スタートから恵明学園付近あたりまで、選手は視界のほとんど利かない濃霧の中を次々と駆け降りていきます。霧の中に監督が乗るジープのヘッドライトが黄色くぼうっと浮かび上がり、その光に照らされた選手の姿が辛うじて見えるという状態がしばらく続きました。中でも2位に6分以上の大差をつけてスタートした小柄な仲村が、ただ一人で、まさにコロコロと転がり落ちるように、脚をもの凄いスピードで回転させながら走る姿が非常に印象的でした。
当時は往路・復路とも、芦ノ湖と元箱根を結ぶ経路が現在とは異なるものの距離は大差なく、仲村は第62回大会で若干のコース変更があってから初めての60分切りとなる59分26秒の区間新記録で駆け抜け、2位との差をさらに1分42秒も拡げました。
途中、箱根登山鉄道の踏切では、仲村の通過時にちょうど遮断機が降りるというアクシデントが発生し、仲村だけが素早くこれをかいくぐったものの中継車、先導の白バイなどが立ち往生するということが起こりました。このため、テレビの映像には先行する仲村を白バイが猛スピードで追いかけ、これをさらに追走する中継車が前向きに走者を捉えるという珍しい光景が映し出されました。

私がテレビを通じて見た中では最も印象深い山下り名人が、この時の仲村でした。同時に、この時以来6区という区間が大好きになりました。
ただ、6区で「史上最強のダウンヒラー」と言えば、第57回から3年連続で区間賞を獲得し、59回には57分47秒という驚異的なレコードで駆け降りた谷口浩美(日本体育大)ということになります。
(詳細は不明ですが、6区のスタート地点または小田原中継点、もしくは道路の形状に微細な変更があったようで、62回大会から新たな区間記録が認定されました)
後年、男子マラソンでは日本人選手唯一の世界チャンピオン(91年・東京大会)となる谷口のダウンヒラーぶりは、日テレによるTV中継がない時代のことで、何かのダイジェスト映像でちらりと見た記憶があるだけですが、回転するというよりは「地を這う」ような、猛烈なピッチ走法が印象に残っています。


◇死闘制した高野寛基のガッツ
仲村と同じくG+で取り上げられた金子宣隆が、コース変更のあった第75回以降の区間記録を塗り替えたのが第77回(2001年)。この時の58分21秒は千葉健太(駒澤大)が破るまで、10年という時間を要しました。
その2011年・第87回大会の熾烈なダウンヒル・バトルもまた、強烈な印象を残しています。それは、区間賞の千葉の遥か前方で、総合3連覇を狙う東洋大・市川孝徳(現・日立物流)と千載一遇の3冠のチャンスをものにしようとする早稲田・高野寛基の間で繰り広げられました。

3回目となった「山の神・柏原劇場」で往路優勝を遂げた東洋はしかし、早稲田の5区・猪俣英希の踏ん張りによって、アドバンテージは僅かに27秒。復路がスタートすると猛然と差を詰めた高野が追い付き、小涌園前から抜きつ抜かれつの激しいバトルが始まりました。
4年生ながら駅伝でも個人レースでも全くと言ってよいほど実績のなかった高野。しかし、4年連続6区を務めることになるスペシャリスト・市川の度重なるスパートをそのつど凌いでは逆襲に転じる、闘志をむき出しに走るその姿は、見る者の心を震わせるに十分なものでした。寒さに凍結した路面に足を滑らせ激しく横倒しに転倒した時も、素早く立ち上がるとすぐに先行する市川の前に出るという、鬼気迫るようなガッツに魅了されたものです。
397721_380763072015453_1774350883_n

結局高野は箱根湯本を過ぎた平坦部分で渾身のスパートを放って市川をねじ伏せ、逆に36秒のリードを奪って早稲田を再びトップに押し上げました。
最終的に21秒差で早稲田が東洋を振り切ったこのレース、直接的には1区・大迫傑の果敢なロケットスタートで築いた貯金が大きくモノを言った一方、勝敗を決めたMVPは山で奮闘した猪俣・高野の、ともにこれが引退レースとなった4年生コンビだったと言えるでしょう。
特に高野は、記録には残らない、しかし私の記憶の中では稀代の名ダウンヒラーとして残り続けます。

◇寝坊厳禁!6区の逆転劇を見逃すな
函嶺洞門バイパスができて距離が約40m長くなったのが3年前。一昨年、昨年と、2年続けて秋山清仁(日本体育大)によって区間記録は58分01秒にまで高められ、おそらく現行コースよりも距離が短かったであろう時代に唯一人、谷口だけが記録した57分台の世界も間近に見えてきました。
秋山が新時代のダウンヒラーとして名を馳せたここ2年で、いずれも区間2位の好走を見せているのが、青学復路の切り札・小野田勇次です。

小野田のダウンヒルは、高速回転のハイピッチ走法というよりは、脚の長さと柔軟さを活かしたソフトタッチのストライド走法です。1・2年時に見せたパフォーマンスからすれば、58分31秒という1年時のタイムをさらに大きく縮める可能性は、十分にありそうです。
受けて立つ東洋は2年生の今西駿介をエントリー。下りの実力は未知数ですが、東洋は市川の卒業以降、6区が一つの弱点となっているのが気がかりなところでしょう。
7年前の高野だけでなく、その前にいた加藤創太、現行コース最初の区間賞・三浦雅裕と、意外に6区に好選手を輩出しているのが近年の早稲田。ノウハウは持っています。
優勝候補から一転シード権獲りに奔走しなければならなくなった神奈川大は、前回6区4位の鈴木祐希を10区にエントリーしてしまったため、どういう人材を持ってくるか?
首位・東洋から2位・青学までは僅か36秒。3位・早稲田までは1分56秒。
スピード感あふれる逆転劇が見られそうな予感がします。
1区同様、復路の戦いもまた、寝坊は許されませんよ!

箱根駅伝のミカタ ④~混戦第94回は予測不能


◇その前に、『実業団』を振り返り…
『第62回全日本実業団対抗駅伝』は、大方の予想どおりに旭化成・Honda・トヨタ自動車のいわゆる「3強」による優勝争いとなり、充実したメンバーを揃えた旭化成が2年連続23回目の優勝を果たしました。

大物新人が大量加入した一昨年シーズン以来、戦力的には文句なしのナンバーワンと目されてきた旭化成が、今回は創部以来初の2区外国人選手の起用もプラス材料となり、その2区以降一度も首位を明け渡すことのない快勝ぶりとなりました。
逆に言えば、従来同様「純血主義」で臨んでいたとしたら、あるいは当のケニア人ランナー、アブラハム・キプヤティチが平凡な実力であったら2区での“急降下”は免れず、今回の連覇は危うかったかもしれません。近年の駅伝は各チームとも選手の力が拮抗しており、強力メンバーを揃えた旭化成といえども全員が100に近いパフォーマンスを示さなければ、また序盤の1区・2区で後手を踏まないようにしなければ、頂点に立つのは難しいということです。 これは、『箱根』にも通じることですね。

東日本では勝ててもなかなか本戦での栄冠に届かないHondaは、設楽悠太が期待どおりにゲームチェンジャーとしての仕事をやってのけましたが、勝負どころの6区に38歳の石川末廣を起用せざるを得なかった点に、「あと1枚」のコマ不足を印象付けました。

トヨタ自動車はメンバー構成としては万全と思われたにも関わらず、3区・田中、6区窪田の仕上がり具合が今一つだったのが響いたようです。

相変わらず予想よりは上位に来るのがトヨタ自動車九州。今井正人以外にビッグネームのいないチームが毎回この位置前後でゴールするのが、駅伝の不思議なところです。その今井、年齢的にもピークは過ぎていると思われるのに、闘将としての存在感は抜群。7区でコニカミノルタを入賞圏内に引き上げた神野大地にも言えることですが、これが「山の神」の真骨頂=ハートの強さではないかと思わされます。

日清食品グループの凋落ぶりは、村澤明伸をはじめとする中軸選手の区間成績が軒並みあの体たらくでは何とも言いようがありません。7区で区間3位と気を吐いた佐藤悠基には、ぜひとももう一花をと、期待してしまいます。

1区・遠藤日向の「殊勲賞」で波に乗り、目標を大きく上回る11位に来たのが渡辺康幸率いる住友電工。それにしても、インカレで外国人ランナーをも振り切った服部弾馬(トーエネック)のラストスパートに競り勝った遠藤の強さが見られたのは、今大会最大の収穫でした。

そして、私にとって新年最初の「大恥」は、日立物流の撃沈。日本人エース・浅岡満憲の故障欠場で前半の好位置を4区で失うことになり、田口・市川・設楽兄と並べた後半も音沙汰なしのままということになりました。

◇「予想」はしないけど、往路展望
そしていよいよ、『箱根』が間もなくスタートします。もう大手町では、観戦スペースの陣取り合戦が激しくなっている頃でしょう。
こちらの下馬評は、
「青学の4連覇なるか?阻むのは東海か神奈川か?…他にもいろいろいるぞ」
の「3強+6校」説。(6校は、東洋・早稲田・順天堂・中央学院・日体・駒澤)
その実態は、圧倒的な布陣で3連覇を飾った青学の戦力がやや低下し、各チームが拮抗した戦国模様です。

メンバー表だけ見れば、「黄金世代」が2年生となった東海大の層の厚さが群を抜いていますが、このチームは伝統的にスピード駅伝の出雲には強くても、箱根のタフさをクリアすることには疑問符が付きまといます。
もちろん、それぞれがハーフマラソンでも実績を残し、62~63分台をズラリと並べたオーダーは圧巻の趣があります。ですが、その走力が、前に指摘したような各区間の細かいタフさに通用するものなのかどうか、そこが問題なのです。独自のクロスカントリーコースを備え、また佐久長聖高での指導で実績のある両角監督に率いられるチームに、タフなコースへの対策は遺漏ないはずなのに、これまで何度も優勝候補に挙げられながら総合優勝の経験がないということが、どうしても引っ掛かります。
勝つとすれば11時間を切る圧勝、しかし…?というのが私の見立てです。

昨年大会で突如予想外のブレイクを果たした神奈川は、どうでしょう?昨年同様に1・2区の先手必勝作戦が決まれば、昨年以上に厚みを増した戦力でそのまま突っ走る可能性がありますが、どこか1区間でも想定が狂えばガラガラと崩壊する、そうしたギリギリの陣容だという気がします。
連覇を果たした1998年には、横浜高校が春秋の甲子園を連覇し、秋には横浜ベイスターズが日本一になった「横浜の年」。今回はといえば、横浜DeNAは野球で「準日本一」、ニューイヤー駅伝では激戦の入賞争いを制して6位、そして横浜F.マリノスも「準日本一」と、「今一歩」の成績が続いています。果たして『箱根』は…?

対抗格の2校にそれぞれ不安要素があるのに比べると、青学には選手層の厚さと田村・下田・小野田といった切り札の存在、加えてここ数年間で培った箱根を走る経験の強みがあります。往復総合で11時間前後の勝負になるとすれば、やはり「本命」はここではないでしょうか。
今や『箱根』の広報担当となった感のある原監督のコメントを総合すると、往路優勝はせずともよいと考えているような印象を受けます。3区の田村で傷を最小限に抑え、首位から1~2分差で折り返せば、6区・小野田で優勝戦線に復帰し、後半投入が予想される下田で一気に決着させる…やはり復路にコマを持っている強みが、こうした計算を可能にするわけです。


「打倒青学」の芽は、意外に「6校」の中から現れてくるかもしれません。比較的新興勢力と言える中央学院を除いては、いずれも『箱根』の戦い方・勝ち方を熟知する伝統校ばかりです。
中で、私が特別に「ヒイキ」するのは順天堂大。1区・栃木渡(当日エントリー変更で投入されると言われています)、2区・塩尻和也で目論むロケットスタートは、同じ作戦の神奈川の出鼻を挫く可能性を十分に感じさせ、それがハマったほうのチームが、一気に突っ走ることになるような気がします。5区に実績のある山田攻を擁しているのも強みで、ここまで青写真どおりに進めばあとは「復路の順大」の底力で押し切ることもあるのではないか、というのが私の初夢、というか初妄想。

まあとにかく、見ましょう!今年も箱根までのテレビでの旅を、存分に楽しみたいと思います。

『世界陸上応援グッズ』☆送料無料☆日本代表トラックジャケット【ASICS 417A00-JP29】

価格:15,000円
(2018/1/2 06:36時点)
感想(0件)

ギャラリー
  • 『第42回全日本実業団対抗女子駅伝』大胆展望
  • <再掲載>連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#3 ~1987年/第22回福岡国際マラソン
  • <再掲載>連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#3 ~1987年/第22回福岡国際マラソン
  • <再掲載>連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#3 ~1987年/第22回福岡国際マラソン
  • <再掲載>連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#3 ~1987年/第22回福岡国際マラソン
  • <再掲載>連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#3 ~1987年/第22回福岡国際マラソン
  • <再掲載>連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#3 ~1987年/第22回福岡国際マラソン
  • <再掲載>連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#3 ~1987年/第22回福岡国際マラソン
  • 『第105回日本陸上競技選手権』観戦記+α その⑤⑥
楽天市場
タグ絞り込み検索
  • ライブドアブログ