豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

展望記事

今夜、DL第2戦チューリッヒ大会



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2020年の『WANDAダイヤモンドリーグ』第2戦チューリッヒ大会「インスピレーション・ゲームズ」が、日本時間の10日午前3時から行われます。
大会HPがドイツ語版だったりするのでなかなか正確に読解できないのですが、どうも今大会は世界の7会場を結んでのリモート・コンペティションとして行われるもののようです。男女4種目ずつがすべて「チーム・ワールド」「チーム北米」「チーム欧州」の3チームによる対抗戦形式で競われます。まずは、エントリー・リストをご覧ください。

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※女子300mHのD.ムハンマドは最新のリストでG.モリーンに変更

右端の欄が、その選手が競技する会場です。各チームの“代表”はいずれも錚々たる世界のスーパースターで、そうした選手たちの元気な近況が垣間見れるだけでも意義深い大会となりそうです。
特殊種目が多い中、男女の棒高跳と男子200m・三段跳は、トップ選手たちによるガチ対決?…長いブランク明けではあっても、トッププロたちの競技力がナマっていないことは前回のオスロ大会でも実証済みですから、記録的にも楽しみなものがあります。アリソン・フェリックスとショーナ・ミラー=ウィボの久々の対決や、エカテリナ・ステファニディとサンディ・モリス、クリスチャン・テイラーとペドロ・パブロ・ピチャルドの勝負など、ワクワクしますね。

リモート・コンペティションがどんな雰囲気のものになるのか、できればLIVE配信をチェックしたいところなんですが、時間が時間なだけに、視聴できますかどうか…。昨年までのG+の中継があれば、留守録でチェックできるんですけどね。

ドーハ世界選手権のミカタ ①(序盤の見どころ)


いよいよ2年に1度のお祭り、『第17回IAAF世界陸上競技選手権』が開幕します。
前回ロンドン大会の展望記事を読み返してみますと、「全体的に混戦模様」としながらも6人の“絶対王者”、ほか数名の有力候補の名前を挙げていたことが思い出されました。
今年はどうでしょう?
混戦ぶりは、2年前の比ではありません。どの種目も、優勝者を予測することが極めて困難で、誰に本命印を打ってよいものやらサッパリ…。
私がある程度自信をもって◎印を付けられるのは、男子では200mのノア・ライルズ(USA)くらいのものでしょう。
女子では、走高跳のマリア・ラシツケネ(ANA)だけでしょうか。それも、前回ほどの圧倒的存在、単勝100円元返し、というほどではありません。
女子ではもう1人、200mのショーナ・ミラー-ウィボ(BAH)が大本命と思っていましたが、意外なことにミラーは本来の専門種目である400mに専念、200にはエントリーしませんでした。“本業”の方ではサルワ・イード・ナセル(BRN)の成長が目覚ましく、アミナトウ・セイニ(NIG)という新星も現れて、ミラーと言えども安泰ではないのですが…。
その他の種目に関しては、「2強」「3強」といった図式も一部あるものの、多くが混沌としています。それも、決して記録的に低調というわけではない混戦種目も多く、つまり今回の世界選手権は、まことにスリリングな好勝負が満載、という楽しみな大会となりそうなのです。
今回の記事では、大会序盤の注目種目を中心に、見どころをご紹介していきたいと思います。

◇男女100mは復活のベテランが「台風の目」
ボルトがいなくなってから初めての世界大会となる今回、男子100mでお騒がせの中心となったクリスチャン・コールマン(USA)が無事出場できることになり、本調子であれば頭一つ抜けた存在となることは間違いありません。
最大の強敵と目されたノア・ライルズ(USA)が200m1本に絞り、“分業体制”が確立したところで、ヨハン・ブレイク(JAM)、アンドレ・ドグラス(CAN)、ディヴァイン・オドゥドゥル(NGR)といったポスト・ボルト候補生たちも意外に上がって来ない。むしろ、スー・ビンチャン、シェ・チェンイエの中国勢や我がサニブラウン・ハキーム以下の日本勢に追い立てられる趨勢では、コールマン大本命は揺るぎそうもありません。
ただ不気味なのが、もはや“老境”に差し掛かったかと見えていたジャスティン・ガトリン(USA)のローザンヌおよびモナコでの復活劇。その後故障を発症したとの情報もありますが、軽度であれば前回大会同様、あっと言わせる逆転劇があるかもしれません。
コールマン自身が騒動の影響で調整を狂わせているという事態も十分考えられるだけに、果たしてネクスト・ボルトの座は誰が射止めるのか、予断を許さない状況ですね。
なお、アメリカはライルズが200mに専念するとともに、そのライルズに昨年来
200mで唯一土を付けたマイケル・ノーマンは400mに集中。着実に短距離完全制覇を目論んでいます。

女子の方はというと、リオ以降「2強」を形成するかと思われたエレイン・トンプソン(JAM)とダフネ・スキッパーズ(NED)が揃ってスランプに陥り、ここしばらくは女王不在の様相が続いたところへ、ようやく一歩抜け出したかに見えていたのがディーナ・アッシャー-スミス(GBR)の台頭。
ところがそのアッシャー-スミスも、今季産休からの復活を遂げたシェリー-アン・フレイザー-プライス
(JAM)の前には手もなくヒネられ、改めてこの偉大な女王の実力を思い知らされました。
現状、本命を打つとするならこのフレイザー。対抗は今季WLの10秒73を記録するなどようやく復調途上に乗って来たトンプソン。新旧ジャマイカ女王対決です。昨年この種目をリードしたマリージョゼ・タルー(CIV)や、前回覇者のトリ・ボウイ(USA)らが今季の勢いでは少々足りないか、というところでしょう。
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◇名勝負を期待、男子400mH

昨シーズン、圧倒的な強さでDLポイント・レースを全勝し、しかもアジア大会出場のためにファイナルを放棄したアブデルラーマン・サンバ(QAT)が、今季はどういうわけか控え目です。
代わって、そのサンバに世界王者のプライドをズタズタにされたカルステン・ワルホルム(NOR)が絶好調。その走りは「打倒サンバ」の一念に燃える激しいトレーニングの成果を感じさせる素晴らしいもので、DLファイナルではとうとう、記録の上ではサンバを追い越してみせました。
その時のワルホルムに食らいつき、同時に2人が46秒台を記録する史上初めてのレースを繰り広げたライ・ベンジャミン(USA)も、レース数は少ないながらも実力はホンモノ。
2人が追い求める存在のサンバは、今季はせっせと400のフラットレースに精を出し、決してどこか体調が悪いとかではないようなのですが、この種目に関しては様子見を続けています。何と言っても地元開催のこの大会では別格の英雄でしょうから、万全を期してのプランであることは確かでしょう。
サンバかワルホルムか、ベンジャミンか…今大会、最高のビッグ・レースに、日本勢が出場する予選からテンション全開で注目しましょう。

◇出るか夢の9メートル?
突然、「跳躍ニッポン」の話題が花盛りとなった今シーズン。世界ランキング1位に君臨する戸邉直人やDLファイナルを戦った山本聖途などに負けじと名乗りを上げた「走幅跳・花の日本新トリオ」城山正太郎、橋岡優輝、津波響樹。(津波は2センチ足りませんが、オマケで…本番で破ってください)
俄かにメダルも射程内に入ってきたと賑やかな話題の男子走幅跳ですが、本当の注目はこの人、ファン・ミゲル・エチェヴァリア(CUB)でしょう。
2年前から絶対王者の座を築くかに見えたルボ・マニョンガ(RSA)からあっさりと主役の座を奪い取った、異次元のスカイハイ・ロングジャンパー。技術も助走も粗削りで、絶対的な本命に推すことは躊躇われます。それだけにドンピシャに嵌った時の空中遊泳は、他の追随を許さないものがあります。
かつてメキシコシティでボブ・ビーモン(USA)が見せた衝撃を、またルイスとパウエルが9mラインで繰り広げた東京の死闘を、長い時を経てまた見てみたいものです。

◇日本男子3人目の金メダリスト誕生なるか?
過去16回の世界選手権で、金メダルに輝いた日本人選手はマラソンの谷口浩美(91年東京)とハンマー投の室伏広治(11年テグ)の2人だけ。「3人目」の期待が集まるのが、男子50㎞と20㎞の強力な競歩チームです。
大会2日目の深夜(日本時間5時30分)に男女同時スタートする50㎞は、今や日本にメダルをもたらすドル箱種目。今回最大のホープは、20㎞の世界記録保持者にして長い故障から復帰を遂げた鈴木雄介です。これまでのメダリストたちを抑えてともに代表の座を勝ちとった勝木隼人、野田明宏にも期待がかかります。
なにしろ50㎞。調子に乗れば圧倒的に速いヨハン・ディニ(FRA)や勝負に強いマティ・トス(SBK)、誰が誰やらよう分からん中国勢(向こうも日本勢をそう思ってるでしょうが)など、ひしめき合う強敵の中で、誰がトップ・コンディションでレースに臨むのか、誰が勝つレースに一番ハマるのかで、勝負の帰趨はまったく変わってくるでしょう。その中で、「どの選手が暑さに強いかは分からないから、あくまでも自分のペースで行くのみ」と不動の姿勢を吐露する鈴木の事前コメントが何とも頼もしく感じます。
今回はMGCの影響もあり、女子マラソンは何となく盛り上がりませんが、早朝の興奮は、ぜひとも競歩で味わいたいものだと思っています。

半年ぶりブログ~世紀の一戦『MSG』を直前大予想


多忙にかこつけて休載状態にしてたら、あっという間に半年が経ってしまいました。
東京五輪前年の今季、日本の陸上界はなかなかに活況を呈しています。記事にしなかったのが今となってはもったいない気がしますけど、諸般の事情により、ということで…。陸上競技を伝えるメディアには相変わらず細かく目を通していますんで、浦島太郎状態ではありません。その点はご心配なく。

さて、いよいよMGC=マラソン・グランド・チャンピオンシップ本番です。
このプロジェクトが世に伝えられた当初は、当ブログでも対案を提示したりするなど、そのプロセスには幾ばくかの疑問も抱いていたのですが、まずまず盛り上がって、何よりも当事者の選手およびその周辺関係者が一様に納得してこの方式を受け容れていることが、最大のメリットだったと思います。
久々のブログは、「ハズレてもともと」のつもりで、このMSG大予想と参りたいと思います。ほんと、直前も超直前で済みません。結果が出てから読んだ人、大笑いしてくださいな…。
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 ※日本陸上競技連盟HPより
【ファイテンオフィシャルストア】公式通販サイト

◇女子
MSGの経緯で一つ残念だったのは、女子の有資格者があまりにも少なかったことでしょう。といって、他に誰が資格者になっていて欲しかったかと言えば、そうそう顔が思い浮かびません。清田真央、田中智美、田中華絵、堀江美里、竹地志帆…といったところでしょうかね。上位争いまではちと難しいが、レースのスケールアップにはなったことでしょう。
それと、新しい人が意外に出てこなかった。資格獲得第1号が前田穂南というフレッシュな名前だっただけに、続々と新規デビュー組の勝ち名乗りに期待したんですが、続いたのは松田瑞生と上原美幸、関根花観(欠場)、一山麻緒くらいで、大森菜月は惜しくも間に合わず。
どうせ復活するんなら、新谷仁美にチャレンジして欲しかったですけどね。

さて、その女子。もともと少ない有資格者から3人がドーハ世界選手権代表に回り、さらに残念なことに、ともに穴馬的存在だった関根花観(JP日本郵政G.)と前田彩里(ダイハツ)が故障欠場。たった10人でのフルマラソンという、かつてアジア大会でも見たことのない少人数のレースとなってしまいました。
ここ数日、放送担当局のNHKではしきりに松田瑞生(ダイハツ)・鈴木亜由子(JP日本郵政G.)・福士加代子(ワコール)の3人を取り上げ、あたかも「3強」の様相であるかのように事前告知を煽っていますけど、いやいやそんなに単純じゃあないですよ。だいたい、その絞り込みにはおそらく、珍しくNHKのコメンテーターに起用された増田明美さんの思惑が絡んでいることでしょうから、全然アテにはできません。
(増田さん本人が以前に言っていることですが、「NHKでは技術や戦術の解説を求められるのでお呼びではなく、日テレでは自分以上にアナウンサーらが細かい選手取材をするので声がかからない」んだそうです)
昨今のトラックを含めた長距離戦線の実績、福士の場合は20年近くに及ぶ業績の数々から、「強い!」というイメージが定着しているのがこの3人と言えます。その一方で、松田は5月の日本選手権10000mで好調を伝えられながら惨敗したトラウマがあり、鈴木にはマラソンランナーとしての経験不足、福士には年齢的な衰えという、それぞれに不安を抱えた3人でもあります。
当然、歴代4位のタイムを持つ安藤友香(ワコール)や、マラソンの経験値では一番と言える岩出玲亜(アンダーアーマー)、リオ選考会では代表まで1秒差と大魚を逃した小原怜(天満屋)など、後に控えるのは遜色のない実力者ばかりです。

いずれにしろ、頭数は少なくても予想をするのは非常に難しい中、私は敢えて!と言いますか、ここへ来ての成長度という意味で最も期待するのが、前田穂南(天満屋)です。
MGC切符を獲得した2017北海道マラソンでの鮮烈な初優勝ぶりはともかく、次戦の大阪国際女子マラソンでは高校の先輩である松田を激しく揺さぶり、結果的に優勝は譲ったものの「ホンモノ!」の感を強くしました。大阪薫英女学院高時代は駅伝エースの松田に対して万年補欠という立場だった彼女が、天満屋ならではの“武富マジック”によって見事な成長を遂げていたのです。
その後の駅伝やトラックレースなどでも安定して好位置をキープしており、完全に天満屋のエースとしての地位を不動のものにしつつあります。1年前のベルリンでは再び松田に及ばず、今年の東京では寒さの故か失速しているので評価はイマイチというところでしょうが、マラソンにおける潜在能力は相当のものがある、と私は睨んでいます。

レース展開は、10人という少人数であること、数日前までの猛暑は免れたとはいえ20度を大きく超える暑さの中の戦いであることを考えれば、誰かが飛び出す展開になることはちょっと考えにくい。先頭を買って出る選手がいるとすれば鈴木だと思いますが、それも自重を決め込むと、2004年のアテネ五輪選考会だった大阪の時のように、極端なスローペースに陥ることだって考えられます。
天満屋の坂本直子が優勝したあのレースは、実にスリリングな名勝負でした。そのレースに、私は同じピンクのユニフォームを重ね合わせて想像してしまうのです。そういえば坂本も、千葉真子に2度苦杯をなめさせられた後の3度目の正直で、見事に千葉を破って代表の座を勝ち得たものでした。
いずれにしろ、展開のカギを握るのは鈴木でしょう。スピードランナーと言ってもラスト勝負になるとスプリントが利かないタイプなので、スローでの集団走が続けば勝機は遠のくばかりでなく、あの時の渋井陽子のように走りを狂わされます。中盤にしろ終盤の登り坂にしろ、彼女が仕掛ける場面が必ず訪れる筈です。鈴木がロングスパートを仕掛けた時、誰がそこに付いているか、あるいは誰も付いていけなくなるか…。
終盤までもつれれば、ラストが強いのは松田と安藤。松田の粘り強さはやはりピカイチですし、駅伝1区のスペシャリストだった安藤は、勝負どころの見極めが実に上手い。あとは、ダークホースで一山麻緒(ワコール)の瞬発力も侮れません。残っていられれば、の話ですけどね。
もう一人、レースをメイクする可能性が高いのは、言うまでもなく福士おばさん。ただ、どうなんでしょう。私はもしかしたら、彼女が安藤や一山のサポート役に回ろうと考えるような心境の変化がレース中に訪れる可能性があるんじゃないか、という気がしています。
心情的には小原を応援したい気持ちもあるんですが、決して順調に来ているという雰囲気ではないので、強くは推せません。岩出、上原にも一発の可能性は十分にあります。野上さん、ゴメンナサイ!

ということで、私の大予想は
◎前田穂南
〇松田瑞生
▲安藤友香



◇男子

名門旭化成勢の全滅という意外さはあったものの、現有のビッグネームはほぼほぼ揃ってまずは賑やかな顔ぶれとなりました。
大迫傑(NIKE O.P.)、設楽悠太(Honda)、井上大仁(MHPS)、服部勇馬(トヨタ自動車)が「4強」と言われています。1年前に日本記録を更新した大迫、前記録保持者で安定感抜群の設楽、猛暑のジャカルタ・アジア大会を制した井上、9年ぶりに国内3大大会の優勝者となった服部と、それぞれにそう呼ばれるだけの立派な肩書があり、持ちタイムでもトップ4です。

こちらも、スローな滑り出しが予想されるところですが、30人もいれば、走り易いイージー・ペースに持って行こうという動きが自然に発生することが考えられ、巷間伝えられるように設楽が序盤からレースメイクをするようなことでもなければ、3分5秒/㎞程度の安定したペースになるんではないでしょうか?(スタート直後は下り坂が続くので、数字上は速いタイムになると思いますが)
大迫は早大時代に箱根駅伝1区で2年続けてロケットスタートを決めて後続をぶっちぎっていますが、強豪が揃った4年時にはそれも通用せず、もうその手は使わないでしょう。先頭を引くことのデメリットを無視して設楽が引っ張ってくれると、非常に面白くなるところではありますが、果たしてそこまで、往年の中山竹通みたいな大胆不敵さがありますかね?
「自信満々のコメントを発する時の設楽はコケる」というイメージが、私にはあります。こちらもラスト勝負になれば大迫に一日の長があることを知っていますから、早めの仕掛けがあるのは間違いないとして、どうしても早く仕掛けた方が不利になるのが、このレースの悩ましいところだと思えます。

淡々としたペースで進んだ場合、途轍もなく恐ろしい力を秘めているのが佐藤悠基(日清食品G.)ではないでしょうか。
佐久長聖高校時代には「天才」、東海大時代には「化け物」と呼ばれ、社会人となって日本選手権10000mを4連覇した必殺のスプリントは、大迫が3度挑んで返り討ちにあったほどの威力がありました。その佐藤もいつの間にか33歳、「黄金世代」と呼ばれた竹澤健介や木原真佐人、メクボ・モグスらが大成することなく、佐藤自身もマラソンでは苦戦続き、この世代の代表格は川内優輝ということになっています。稀有な素質の開花を阻んできたものは、大学時代から見えていた痙攣などの脚部不安、いわゆる“ガラスの脚”であったかもしれません。夏場のレースは、彼にとって有利な材料となる要素を孕んでいます。
マラソンランナーとしては平凡な実績しかなく、いつも30㎞を待たずに先頭集団から消えていく佐藤が、ここで遂に本領を発揮するのではないか、という期待に胸が躍ります。ただし、佐藤が好走するような展開になった場合に、やはり今の大迫には勝てないんではないかな、とも思います。

オールドファンの私から見て、最もマラソンランナーらしい選手だなと思えるのが井上。コツコツと走り込んで蓄えたスタミナと精神力には自信を持っていることでしょうし、過去の経緯から設楽を徹底マークする戦術が確固としているのも強みです。
他に、やたらと威勢のいいコメントが聞こえてくるのが神野大地(セルソース)です。終盤の登り坂までもつれ込めばしめたものかもしれませんが、果たしてそこまで我慢できるかどうか。むしろ、中団でじっくり構えた時の今井正人(トヨタ自動車九州)の方が、荒れたレースになった時は不気味さを感じます。

で、私の結論は
◎大迫傑
〇井上大仁
▲佐藤悠基
△設楽悠太
△今井正人

男子の方は、さらに予想困難。個人的には、強いと言われる選手が胸を張って先頭を引っ張るレースが見たいですし、3人出しをするトヨタやMHPS、富士通勢のチーム戦略にも興味津々です。

なにぶんにも久々のブログですんで、予想はご愛敬ということでお察しくださいませ。

2018シーズンのここまで~国内編


◇ご無沙汰の言い訳
たいへんたいへんご無沙汰いたしました。
4月からの仕事環境の変化で、ブログに費やす時間がほとんどなくなってる状況です。
陸上関連のTV放送などはキーワード留守録でほぼ録り逃しはありません(時々『ダーウィンが来た~陸上生活に進化した〇〇」とか「陸上自衛隊の中東派遣云々」なんてのが録画されてたりします)けど、つい先日も『関東インカレ最終日』のフル中継を視終わるのに何日もかかったりしています。
こんなスチャラカ・ブログでも、いろいろと調べものをするのに結構な時間がかかったりするんですよ。更新の停滞については、どうかご理解くださいまし。

さて、今季の陸上トラック&フィールド・シーズン、国内では日本選手権前の、グランプリ・シリーズを軸とする一連の大会が概ね終了し、今週末から始まる『アジア・ジュニア選手権』、翌週の『日本学生個人選手権』、『日本選手権混成競技』などを経て22(金)~24(日)の『第102回日本陸上競技選手権』へと続きます。
今年はオリンピックも世界選手権もない中間年、いつものように「参加標準記録を突破して日本選手権優勝」みたいな緊迫感はありませんが、ジャカルタ・アジア大会に1種目あたり最大2名までの代表入りを目指す戦いが繰り広げられることになります。

◇“それぞれ順調”の短距離が今年も熱い
ここ数年、空前の盛り上がりを見せているのが男子スプリントのカテゴリー。記念すべき「9秒元年」の翌年とあって、その注目度はますます高まりますが、現状ではランキング1位が山縣亮太(セイコー)とケンブリッジ飛鳥(NIKE)の10秒12(ともに布施スプリント)と、10秒0台がひしめいていた昨年同時期からは少々出遅れムードです。
しかし、今季はその両者をはじめ桐生祥秀(日本生命)、多田修平(関西学院大4)、飯塚翔太(ミズノ)、藤光謙司(ゼンリン)…といったヨンケイ候補のトップ・スプリンターがいずれも順調に試合をこなして調子を上げつつあるのが頼もしいところ。僅かに、サニブラウン・ハキーム(フロリダ大)だけが故障を発生して全米学生選手権への道を断念したのが残念ですが、日本選手権ではまた、ハイレベルかつスリリングな代表争いが見られそうな予感です。

そして、『ゴールデングランプリ大阪』でリオ銀メダルメンバーが見せた、37秒85の圧倒的なリレーのパフォーマンス!
この大会ではどちらかというと、各種目で中国、韓国、台湾といったアジア大会のライバル勢に押され気味だったり、また100mではGG大阪には不出場(リレーのみ出場)だったもののその直前のDL上海大会で桐生に圧勝したスー・ビンチャン(CHN)がインドア・シーズンから引き続いて絶好調を伺わせているということもあり、少々不安な視線を送っていたのですが、ことリレーに関しては盤石の信頼感を新たにすることができました。

◇アジア大会の注目種目は「ヨンパー」
全種目を通じて、今季国内で最も注目度の高い仕上がりを見せているのが400mHの安部孝駿(デサント)でしょう。
『静岡国際』で出した48秒68のPBは現在世界ランク7位。この種目では今季、彗星のごとく現れたアブデルラーマン・サンバ(QAT)が47秒48(DLローマ大会)と世界のリーダーとなり、アジア大会でも絶対的な金メダル候補に躍り出ていますが、安部にはぜひとも、このサンバに真っ向勝負を挑んでほしいところです。ジュニアの頃から恵まれた体躯とスター性あふれる容姿で期待されていた選手が
昨年来ようやく本格化してきた、というところですから、向こう数年は不動のエースとしての活躍を祈ります。

◇女子で面白いのがこの種目
昨季から、盛況が期待されていたのが女子800mという種目です。
2分00秒92というビッグ・レコードを土産に今春大学を卒業した北村夢(エディオン)に夢の1分台なるかという注目が集まる中、GPプレミアの『静岡国際』を制したのは大学1年の川田朱夏(東大阪大)。タイムの2分02秒71もなかなかのもので、同学年のライバル・塩見綾乃(立命館大)を含めた3人が、非常に拮抗したレベルで2分切りの先陣争いを繰り広げています。
4つ年下の川田に敗れた北村も、この日は故障上がりだったようで、日本選手権での巻き返しに期待してよさそうです。

私的に昨シーズンの最注目種目だった女子やり投は、第一人者の海老原有希が引退した後の今季も、次なる女王争いが見ものです。
すでにGG大阪で60mオーバーを果たした大ベテラン・宮下梨沙(大体大TC)が一歩リードの感ですが、海老原の直径後輩・斉藤真理菜(スズキ浜松AC)をはじめ、北口榛花(日大3)、山下実花子(九州共立大3)らも順調、ここ1、2年は調子の上がらなかった久世生宝(コンドーテック)も久々に好調を伺わせています。
大阪で中国勢が圧倒したこの種目で、どうにか一泡吹かせるだけの期待をさせてくれるような、日本選手権での激投を見たいものです。

女子長距離では、どうやら主役の顔ぶれが2、3年前からは一新されてきたようです。
5000mでは、『織田記念』で山ノ内みなみ(京セラ)が15分21秒31、『ペイトン・ジョーダン招待』で福田有以(豊田自動織機)が15分20秒08、『DLユージーン大会』で鍋島莉奈(日本郵政G.)が15分10秒91と次々に今季最高が更新され、これに木村友香(ユニバーサル)や鈴木亜由子(日本郵政G.)らをまじえた日本女王争いはまったく予断を許さない状況。福士加代子(ワコール)以外に誰もなしえていない、14分台突入の夢も膨らみます。
10000mはまだほとんどの選手が『PJ招待』か『兵庫リレーカーニバル』のいずれかを走ったのみで、一山麻緒(ワコール)一人が31分台という状況。当然ながら女王奪回を狙う鈴木亜由子を中心に、関根花観(日本郵政G.)、高島由香(資生堂)と阿部有香里(しまむら)のソックリさんコンビ、さらにはマラソン組から松田瑞生(ダイハツ)、安藤友香(スズキ浜松AC)などが絡んでくることになるでしょう。個人的には、学生レベルから一歩抜け出した感のある関谷夏希(大東文化大3)に注目しています。

あとは、女子の短距離。本調子を取り戻しつつある福島千里(セイコー)と昨年女王の市川華菜(ミズノ)の戦いは、『布施スプリント』で市川の強烈な逆襲があって、混沌としてきました。アジア大会のリレーを考える上でも、ここにもう一枚、齋藤愛美(大阪成蹊大1)あたりの再浮上を望みたいですね。

もう一つ、“本編”の1週前倒しで行われる混成競技では、今季ブレイクしつつある美女アスリート・宇都宮絵莉(長谷川体育施設)と女王・ヘンプヒル恵(中央大4)の戦いに注目です。
『TOKYO COMBINED』で宇都宮・山崎有紀(スズキ浜松AC)に敗れたヘンプヒルは大怪我からの復帰途上で、その1か月後には関東インカレを4連覇して上昇気流に乗ってきています。息の抜けない勝負になるのは必至で、競り合いからの6000オーバーを期待しましょう。
そして、宇都宮には400mHとの日本選手権ダブル・タイトルの期待もかかります。



◇“新生”日本GPシリーズに物申~す!

最後に、今季新たに生まれ変わった「日本グランプリ・シリーズ」について。
「GPプレミア」と呼ばれる4大会と「GP」7大会を終えた(残り「GP」2大会)時点で、全種目を通じ最もポイントの高い選手に与えられる年間GPのポイント・リーダーは誰かといいますと…
合計2365.0ポイントで、大林督享(400mH/石丸製麺)!
誰、それ?
私もほとんど知らない選手です。
以下、ベスト10までを順に紹介しますと、
②山ノ内みなみ(5000m/京セラ)
③井上 駆(400mH/順天堂大)
④宇都宮絵莉(400mH/長谷川体育施設)
⑤清山ちさと(100mH/いちご)
⑥若林康太(400m/駿河台大)
⑦川島鶴槙(LJ/順天堂大)
⑧大六野秀畝(10000m/旭化成)
⑨柴村仁美(100mH/東邦銀行)
⑩増野元太(110mH/ヤマダ電機)

えーと、新生・日本GPシリーズのコンテスト方法はマラソンのMGC以上に複雑で分かりにくい、てなことを以前に書いたんですけど、まったくその通りで、結果(途中経過ではありますが)も摩訶不思議なものになっている、という状況です。
上位にいる選手は全員、GPプレミアとGP、2回の試合を消化して、そこそこの成績を残す、という条件をクリアしています。

トップの大林選手は、GPプレミアの『静岡国際』で49秒93の4位(1133+40pt.)、GPの『木南記念』で49秒75の2位(1142+25+25pt.)で、合計2365pt.。この種目のリーダー安部孝駿はGPプレミアのみの出場で、タイム・ポイント1196、順位ポイント60、ミーティングチャンピオン・ポイント25の合計1281pt.で、GPランキングでは135位。ちなみに、GPプレミア『織田記念』100m優勝の山縣亮太は1233pt.の136位です。
ただし、このランキングにはまだ、今週行われた『布施スプリント』『田島記念』の結果が反映されていないため、男子100mに10秒12で優勝した山縣はタイム・ポイント1165、順位点と優勝点30+25の計1220pt.を加えて、2戦合計2453pt.で断トツの首位に躍り出てくることになります。
安部がもし『南部記念』に出てくるとすれば、さらにこれを上回る得点になる可能性が大いにあります。

それにしてもなんか、釈然としないですねえ。種目によって記録の評価がまちまちなのも問題アリなんですが、そもそも「全種目を通じて」という発想がおかしい上に、「一種目の中でさえ」客観的な評価とは異なる結果が出かねない、という課題がありありと浮き彫りになっています。
ま、この先どのように変わっていくのか、陸連の頭脳にお任せするしかないですね。

次の日曜日は『全国男子駅伝』


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このシーン、覚えていますか?
3年前の『第20回都道府県対抗全国男子駅伝』第1中継所での衝撃的なシーンです。過日『全国駅伝』のPR番組(NHK)でも取り上げていたので、思い出す人もいるでしょう。

愛知県の第1走者・山藤篤司(当時愛知高3年)が脱水症状を起こして中継所前でフラフラになり、タスキリレー・ゾーンまで約1mのところで倒れ込んだまま、一歩も動けない状態になりました。「早くタスキを渡さなければならない」という意識はあるものの、どうしても脚を動かすことができません。見かねた審判員が近寄り励ましの言葉をかけるのに応えるかのように、山藤はゾーン内で待ち構える中学生ランナーの足元に向かって、タスキを放り投げたのです。
ゾーン内にフワリと落ちたタスキを拾って、中学生が一目散に駆け出します。一瞬「あっ!」という表情を浮かべた審判員はしかし、すぐに山藤の方に向き直り、そのままレースは進行しました。
とうぜん、ほどなくして愛知県チームの「失格」が裁定されました。

解説者の宗茂氏は、「厳しすぎる」というようなコメントをしていましたが、裁定に議論の余地はありません。「タスキリレー・ゾーン(20m)の内側でタスキを手渡しする」というのが、駅伝競走の基本的なルールですから。
駅伝チームが途中棄権以外の事情で失格の対象になるのは珍しく、過去には『全日本実業団女子駅伝』の中部日本予選会で、スズキ自動車(現・スズキ浜松AC…当時は実業団に加盟)の前走者がゾーンの手前に落としてしまったタスキを次走者が拾い上げて走り去ったケース、また最近では一昨年の『全日本実業団女子駅伝』(本戦)で、豊田自動織機がいわゆる「オーバーゾーン」で失格になったケースが思い出される程度です。(中継違反以外では、『東日本女子駅伝』で折り返し点を間違えてショートカットしてしまったケースがありました)
この時の場合は、身体が動かず意識ももうろうとした状態の山藤選手は、タスキを渡す唯一の手段として思わず放り投げてしまったものと考えられますし、正確なルールを知らなかったということも考えられます。第2走者の中学生にしても、ルールを認識していなかった可能性が高いと思われます。
近くで見守っていた審判員は、明らかに「違反」を認識したはず(そのためにいる審判ですから)ですが、脱兎のごとく駆け去った中学生を呼び戻すよりは、山藤の救護を優先した、というところでしょう。
誰が悪いわけでもなく、いわんや「ゴールまであと僅かであっても、山藤選手の健康のために速やかに棄権を促すべきだった」などという意見も、現実離れしています。いわば、不可抗力の「失格」だったのです。
チーム全員にとって無念以外の何物でもなかったでしょうが、私は「当事者」となってしまった山藤選手のその後が心配でした。あるところで、こんなことを書いています。

錚々たる顔ぶれのアンカー区間で(中略)ニューヒーロー神野大地(青山学院大)が、失格に意気消沈する愛知のメンバーを勇気づけたはずだ。同じ7区を、あの馬場翔太(駒澤大)も立派に岡山県のアンカーを務めあげていた。どのチームだって、誰かのせいで負けるのだ。それが自分だったというだけの話なんだから、気持ちを大らかに、次のレースを頑張ろう!>


周知のように、山藤選手はこの駅伝の2カ月半後に神奈川大に進学。2年生だった昨季には、全日本の予選で大ブレーキとなってチームが本戦出場を逃すという苦難をも経験しました。
チーム戦での度重なる失敗にも挫けることなく、同じシーズンの箱根では鈴木健吾とのダブルエースを形成。神奈川大・躍進の中核としてみごとな成長ぶりを見せました。
13位に終った今年の『箱根』の後、主将の座を鈴木から引き継ぎ、来季の全日本連覇、箱根のシード復帰への旗頭となる山藤選手は、21日(日)の『全国男子駅伝』にも、この「失格」以来出場の予定です。強豪チームの一角である愛知県で、高校卒業後に山藤選手が走る機会はもうないのではないか、と思っていたのですが、彼の成長と立ち直りは、私の想像を超えていました。
走るのを辞めないで、本当によかったと思います。今年の神奈川大も、注目しています!

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