豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

展望記事

次は2週間後!新谷・廣中・田中希実…



『第40回全日本実業団女子駅伝』は、大方の予想通りJP日本郵政グループの圧勝2連覇、巨砲新谷仁美を擁した積水化学が歴代最高順位の2位となり、2連単はガチガチの1番人気で決着となりました。
筆者が推した天満屋、資生堂はシードにすら入れないズッコケぶりとなり、見事な赤っ恥予想となりましたことは、ご覧のとおりであります。ま、駅伝の予想なんてのはこんなもんです。

積水の森智香子、さぞかし悄気てることでしょうね。相手が鈴木亜由子とはいえ、逆転のされ方が無抵抗過ぎて、かつて大東文化大を強豪校に引っ張り上げた闘将の面影はありませんでした。最近では爽やかな笑顔が彼女のトレードマークになっていますが、それもいい走りをしてこそ輝くというもの。もともと力のあるランナーだけに、今日の悔しさを糧にしてもらいたいと願います。それと、学生時代から“本業”にしている3000mSCには、見切りをつけた方がいいと思っています。着地で止まってしまうような障害飛越の仕方では、好成績は無理だと思うのです。
特別にファンというのではないけれども、ずっと気になっているランナー・森智香子。27歳は、まだまだもう一花もふた花も咲かせられる年齢です。新谷の存在が、いい刺激になってくれればと思います。

天満屋は、9月に故障したという三宅紗蘭のブレーキが計算外でしたね。マラソンランナーの谷本美月を2区に使ったのも、不安があったからなのでしょう。1・2区での立ち遅れは致命的でした。
資生堂は、予選会同様前半のルーキーが奮闘しながら、後半の実力者3人が全くの不発ではどうにもなりませんでした。メリッサ選手は昨年春、来日初戦の鮮やかな勝ちっぷりから大いに期待していたのですが、アンカーの木村友香ともども、重度のスランプというところです。

1区の廣中璃梨佳、3区の新谷仁美は、いずれも期待に違わぬ見事なパフォーマンスで、それぞれ5000m、10000mでは世界に最も近い位置にいることを改めてアピールしてくれました。
廣中の記録は区間距離が変わったための参考記録とはいえ、昨年までの中継所通過タイムは自身の区間記録よりも速く、不断の成長ぶりを示しています。これで、駅伝では何回連続の区間賞ということになるんですかね?中3から1度も負けていないというのが本当なら、歴史に残る記録になっている筈です。
そしてもう一つの赤っ恥。「新谷が鍋島より1分も速く走るとは考えられない」なんて書いちゃいましたが、走ってしまいましたねえ。だって、鍋島は去年の日本選手権10000mで、がっぷり四つの勝負で敗れている相手ですから、そう思うのが普通でしょ?その10000mで相手に合わせるようなレースをしてしまったことへの反省から、今度は自分の独走力を信じて立ち合いの一瞬に突き放す、そんな新谷の心意気を見た3区でした。
余談ながら、横田真人コーチによるTwitterの「#レース前の新谷」というシリーズ(?)が超トピカル。今回も、食事中にゴネたり、「キツくなったらコーンを蹴飛ばして外に出ちゃおうか」とかホザく新谷選手の表情が楽しめます。


さて、新谷、廣中、そして多くの有力ランナー(もちろん男子も)が勝負に出る冬のトラック決戦、『第104回日本選手権』の長距離種目が、12月4日(金)、大阪のヤンマースタジアム長居で開催されます。
オリンピック参加標準記録の有効期間に入ること、例年この時期に行われる『実業団女子長距離記録会』で、駅伝の直後にも関わらず好記録が出ていることなどを踏まえて、この日程が組まれました。通常日本選手権は6月開催で、長距離種目にとっては必ずしも好条件には恵まれませんが、今年は“異例”がいい結果を生み出すことに期待します。
各種目のエントリーは、次のとおり。
https://www.jaaf.or.jp/files/competition/document/1535-4.pdf

注目は、言うまでもなく既に13分10秒、31分25秒の標準を突破している5000mの廣中と田中希実、10000mの新谷。
この3名は優勝した時点で代表内定。他の選手が代表内定するためには、標準記録の突破を伴う優勝が条件となります。

5000mは、廣中が高速ペースを作り、田中・萩谷楓(エディオン)・出てくれば一山麻緒(たぶん10000mの方に出るのでは?)までが追走する展開になるでしょう。過去に優勝経験のある西原加純以下のメンバーでは現状力の差があり過ぎて、追走は難しそう。オープン参加の外国人も、カマウ・タビタジェリとナオミ・ムッソーニでは少々役者不足か。
中盤から終盤にかけては廣中と田中の一騎討ちが予想されます。ラスト勝負にまで持ち込めば田中のスピードに一日の長があるとはいえ、都大路の1区では常に廣中の圧勝に終わっている過去の対戦からすると、廣中が4000mまでに突き放す可能性の方が高いような気がします。昨日の激走が疲労を残すか逆に適度な刺激となるか、そこが明暗の分かれ道になりそうです。

10000mは、「同じ過ちは二度としない」と前回のレースで肝に銘じた新谷のぶっちぎりの独走劇、咋日の3区の再現が期待されます。10㎞を30分30秒で通過した昨日の走りをすれば、誰もついては行けません。
ただ、鍋島以下の選手たちは標準記録突破も大きな目標となるため、ある程度は速いペースに持っていきたいのは同じ。標準記録に届かない限り、優勝しようが2位になろうが代表を目指す選手にとっては何の意味もない結果となる以上、捨て身の追走を試みる選手が出てくる可能性はあります。鍋島はじめ佐藤早也伽、松田瑞生あたりはその候補者。マラソン強化の一環で出てくる一山も、ハイペースは望むところでしょう。
とはいえ、標準記録を狙うペースと日本記録を狙うペースでは、1周あたり2秒近くも違います。新谷が1周73秒の容赦ないペースで、他を寄せ付けないものと信じています。

男子では大迫傑が2種目にエントリーしており、昨年ホクレンで敢行したように1日に2種目出るつもりなのかどうか、ちょっと気になります。(インターバルは1時間半ほど)

なお、現時点でこの大会のTV中継予定はBS・CSを含めて発表されておらず、陸連による(例によって拙い)ライブ配信だけが頼りになりそうな気配です。TV局にとってもこんな美味しいコンテンツなのに、何ともったいない!

なるか、新谷仁美のV3 !?…全日本実業団女子駅伝


さあ、さあ、今年もやって参りました。
やって来ないかもしれないと薄々怯えつつも、ぎりぎりセーフ!…もし以前のような12月第2週開催であれば、ここ数日の状況からすると急遽中止のやむなきもあり得たかな、と思わされます。
陸上競技年間行事の中でも本ブログ最大の注目イベント、それが『全日本実業団対抗女子駅伝』であることは、ご贔屓くださっている皆様にはご承知のとおりです。
ブログオーナー(すなわち私)の好みがスポーツ>陸上競技>女子長距離>…の順に特化されているところからすると、『全日本大学女子駅伝』『全日本実業団女子駅伝』『都道府県対抗全国女子駅伝』(残念ながら今季は中止)こそは、天下の三大駅伝!
さらに>…の先を言うならば、そこには「新谷仁美」の文字が燦然と輝きます。

「帰ってきた新谷仁美」が、引退前に比べて凄まじいばかりのカリスマ性に彩られて、マラソン代表トリオをも上回る眩いオーラに包まれているかに見えるこの1~2年。その姿は、スポーツ・マスコミはもとより、Twitterを通じて、本人、さらには横田真人氏という、コーチとしても情報発信者としても類まれな人物の手によって日々伝えられ、私たちファンの心をときめかせてくれています。
1か月前の予選会、大事なレースを前に「走りたくないよぉ~…」とゴネる彼女の動画に胸を鷲掴みにされたファンが、いったい何人いたことでしょうか。(笑)

そんな新谷が、今年新たに加入した積水化学で、空前の大記録に挑みます。
“華の3区”でのぶっちぎり区間新記録?…まあ、それもありますけど、もっとレアな記録への期待、
それは、「異なる3チームでの全日本実業団女子駅伝優勝」という快挙です。
過去に、「2チームでの優勝」を果たしているランナーはたったの2人。
坂下奈穂美(ワコール/三井海上~三井住友海上)と新谷(豊田自動織機/ユニバーサルエンターテインメント)の2人だけです。
そもそも1つのチームで競走人生を全うすることが「普通」とされる長距離業界にあって、2つのチームで優勝に貢献するという経験は、本人の実力・努力だけで成しえるものではありません。過去には鈴木博美や野口みずき、千葉真子、那須川瑞穂といった実力者が2つ以上のチームを渡り歩きながら、この中ではリクルート時代の鈴木が2度優勝しているだけ。実際には別々のユニフォームを着て本大会を走った経験すらしていない選手がほとんどで、今年の大会で言えば、新谷の他にもう一人、他チームで優勝経験のある高島由香(デンソー/資生堂)が補欠に回ってしまったので、新たな「V2達成者」が出る可能性はなくなっています。
3チーム目となれば、これは文字通りの「優勝請負人」。プロ野球界でも、落合博満さんと工藤公康さんくらいしか思い浮かびませんよ。(ただし落合さんロッテ時代は「前期優勝」のみ)
駅伝の場合、男子でも聞いたことがない。実業団女子駅伝でとなると或いは永遠不滅の記録となるかもしれません。(高校、大学、都道府県対抗などを含めるとどんな記録があるのか、いつか暇があったらちょっと調べてみましょう)

さあ、その新谷仁美が加入した積水化学、果たして優勝のメはあるのか?…
何が起こるか分からない駅伝の予想ほどバカげたものはない、とは毎回思う処ですが、これも性分ということで展望してみたいと思います。
下馬評では「日本郵政と積水の一騎討ち」てな声が強いみたいですが、冷静に考えてみると、「JP絶対優位」は動かしがたいように思えてきます。
何といってもマラソン代表の鈴木亜由子を軸に、女子駅伝史上最強ランナーかもしれない廣中璃梨佳に日本選手権トラック3連覇中の鍋島莉奈がいて、あとの3人も去年の優勝メンバー。関根花観を欠いてこの陣容ですから、机上の観測ではちょっと強過ぎです。

対する積水はというと、「前半の3本柱で逃げ切り戦法」とよく言われるように、後半のオーダーがいかにも心許ない。3本柱にしたところで、佐藤早也伽がトップランナーに成長したといっても、相手が廣中ではいかに傷口を少なくするかという戦いを余儀なくされるし、卜部蘭にとって2区の距離短縮は好材料とはいえ、本職が1500mの彼女にぶっちぎりを期待するのは酷。またいくら新谷が規格外のスーパーヒロインでも、10㎞少々で鍋島より1分以上も速く突っ走るとはなかなか考えにくいですよね。
となると、後半を託される3人の奮起と粘りがカギ。積水は後半3区間を予選会とはガラリと組み替えて安定性よりも若い力の一発にイチかバチか賭けているようにも見えます。もう1枚か2枚、松﨑璃子が残っていれば、森智香子にかつての力が戻ってくれば…と思わずにはいられません。
ズバリ、新谷V3の可能性は20%、といったところでしょう。


他の有力チームに目を転じてみると、昨年2位のダイハツは今回もベストメンバーには程遠く、大エース松田瑞生を1区に持ってくる奇襲作戦。廣中の存在を考えればもったいないなという気もしますが、これで機先を制すことができたら2区以降も面白い存在になります。ただ松田個人に関して言えば、視線は完全に2週間後を向いているように思われ、そこを見据えての山中采配ではないでしょうか。

2017-18と連覇したパナソニックは、主力がいずれも故障に苦しむシーズンとなって、今回の目標はシード権が精一杯とのこと。若いチームだけに次回以降に期待しましょう。

オリンピック金メダルを期待される前田穂南を擁する天満屋は、実質的には日本郵政への対抗馬筆頭でしょう。前田・小原・谷本の3本柱は他の強豪チームに決して引けを取らないし、前回5区区間賞の三宅紗蘭も今季5000mで13分30秒を切りました(その後軽い故障をしたようですが)。実績のない大東優奈を5区に持ってきたオーダーも不気味です。

もう一人のマラソン代表・一山麻緒のいるワコールは、「3本柱」は盤石ながら優勝を目指すにはまだコマ不足。

コマ数で言えば、まずまず揃えてきたのは資生堂と大塚製薬です。
資生堂は大黒柱の高島が外れましたが、1区・佐藤成葉、2区・日隈彩美、3区・五島莉乃と並べたルーキーが予選会での奮闘を再現すれば、メリッサ・ダンカン、田中華絵、木村友香という実力者にも火が着きそう。天満屋とのピンク旋風が巻き起こるかもしれません。

大塚は福良郁美、藪田裕衣、棚池穂乃香らが力を付け、大ベテラン伊藤舞が復活。本来ならエースとなる横江里沙を短距離区間に使わざるを得ないのが残念ですが、総合力は着実にシード・クラスに来ています。

さらに、シードの三井住友海上、デンソー、豊田自動織機、予選会上位のヤマダ、九電工、エディオンあたりまでが今年のベスト8を争う候補でしょうか。この中では、やはりコマ数豊富な豊田織機。ここ数年、注目し続けてきているだけに、なんとかここいらでという気分です。

ということで、私の結論。
◎ JP日本郵政グループ
〇 天満屋
▲ 積水化学
△ 資生堂
△ 豊田自動織機

区間賞予想。
1区 ◎廣中璃梨佳 〇萩谷楓
2区 ◎福田有以 〇卜部蘭
3区 ◎新谷仁美
4区 ◎ヘレン・エカラレ 〇パウリン・カムル
5区 ◎鈴木亜由子 〇石井寿美
6区 ◎小原怜 〇大西ひかり

終ってから読んだ方、どうぞお笑いください。

今夜、DL第2戦チューリッヒ大会



2020DLZurich01


2020年の『WANDAダイヤモンドリーグ』第2戦チューリッヒ大会「インスピレーション・ゲームズ」が、日本時間の10日午前3時から行われます。
大会HPがドイツ語版だったりするのでなかなか正確に読解できないのですが、どうも今大会は世界の7会場を結んでのリモート・コンペティションとして行われるもののようです。男女4種目ずつがすべて「チーム・ワールド」「チーム北米」「チーム欧州」の3チームによる対抗戦形式で競われます。まずは、エントリー・リストをご覧ください。

2020DLZurich00

※女子300mHのD.ムハンマドは最新のリストでG.モリーンに変更

右端の欄が、その選手が競技する会場です。各チームの“代表”はいずれも錚々たる世界のスーパースターで、そうした選手たちの元気な近況が垣間見れるだけでも意義深い大会となりそうです。
特殊種目が多い中、男女の棒高跳と男子200m・三段跳は、トップ選手たちによるガチ対決?…長いブランク明けではあっても、トッププロたちの競技力がナマっていないことは前回のオスロ大会でも実証済みですから、記録的にも楽しみなものがあります。アリソン・フェリックスとショーナ・ミラー=ウィボの久々の対決や、エカテリナ・ステファニディとサンディ・モリス、クリスチャン・テイラーとペドロ・パブロ・ピチャルドの勝負など、ワクワクしますね。

リモート・コンペティションがどんな雰囲気のものになるのか、できればLIVE配信をチェックしたいところなんですが、時間が時間なだけに、視聴できますかどうか…。昨年までのG+の中継があれば、留守録でチェックできるんですけどね。

ドーハ世界選手権のミカタ ①(序盤の見どころ)


いよいよ2年に1度のお祭り、『第17回IAAF世界陸上競技選手権』が開幕します。
前回ロンドン大会の展望記事を読み返してみますと、「全体的に混戦模様」としながらも6人の“絶対王者”、ほか数名の有力候補の名前を挙げていたことが思い出されました。
今年はどうでしょう?
混戦ぶりは、2年前の比ではありません。どの種目も、優勝者を予測することが極めて困難で、誰に本命印を打ってよいものやらサッパリ…。
私がある程度自信をもって◎印を付けられるのは、男子では200mのノア・ライルズ(USA)くらいのものでしょう。
女子では、走高跳のマリア・ラシツケネ(ANA)だけでしょうか。それも、前回ほどの圧倒的存在、単勝100円元返し、というほどではありません。
女子ではもう1人、200mのショーナ・ミラー-ウィボ(BAH)が大本命と思っていましたが、意外なことにミラーは本来の専門種目である400mに専念、200にはエントリーしませんでした。“本業”の方ではサルワ・イード・ナセル(BRN)の成長が目覚ましく、アミナトウ・セイニ(NIG)という新星も現れて、ミラーと言えども安泰ではないのですが…。
その他の種目に関しては、「2強」「3強」といった図式も一部あるものの、多くが混沌としています。それも、決して記録的に低調というわけではない混戦種目も多く、つまり今回の世界選手権は、まことにスリリングな好勝負が満載、という楽しみな大会となりそうなのです。
今回の記事では、大会序盤の注目種目を中心に、見どころをご紹介していきたいと思います。

◇男女100mは復活のベテランが「台風の目」
ボルトがいなくなってから初めての世界大会となる今回、男子100mでお騒がせの中心となったクリスチャン・コールマン(USA)が無事出場できることになり、本調子であれば頭一つ抜けた存在となることは間違いありません。
最大の強敵と目されたノア・ライルズ(USA)が200m1本に絞り、“分業体制”が確立したところで、ヨハン・ブレイク(JAM)、アンドレ・ドグラス(CAN)、ディヴァイン・オドゥドゥル(NGR)といったポスト・ボルト候補生たちも意外に上がって来ない。むしろ、スー・ビンチャン、シェ・チェンイエの中国勢や我がサニブラウン・ハキーム以下の日本勢に追い立てられる趨勢では、コールマン大本命は揺るぎそうもありません。
ただ不気味なのが、もはや“老境”に差し掛かったかと見えていたジャスティン・ガトリン(USA)のローザンヌおよびモナコでの復活劇。その後故障を発症したとの情報もありますが、軽度であれば前回大会同様、あっと言わせる逆転劇があるかもしれません。
コールマン自身が騒動の影響で調整を狂わせているという事態も十分考えられるだけに、果たしてネクスト・ボルトの座は誰が射止めるのか、予断を許さない状況ですね。
なお、アメリカはライルズが200mに専念するとともに、そのライルズに昨年来
200mで唯一土を付けたマイケル・ノーマンは400mに集中。着実に短距離完全制覇を目論んでいます。

女子の方はというと、リオ以降「2強」を形成するかと思われたエレイン・トンプソン(JAM)とダフネ・スキッパーズ(NED)が揃ってスランプに陥り、ここしばらくは女王不在の様相が続いたところへ、ようやく一歩抜け出したかに見えていたのがディーナ・アッシャー-スミス(GBR)の台頭。
ところがそのアッシャー-スミスも、今季産休からの復活を遂げたシェリー-アン・フレイザー-プライス
(JAM)の前には手もなくヒネられ、改めてこの偉大な女王の実力を思い知らされました。
現状、本命を打つとするならこのフレイザー。対抗は今季WLの10秒73を記録するなどようやく復調途上に乗って来たトンプソン。新旧ジャマイカ女王対決です。昨年この種目をリードしたマリージョゼ・タルー(CIV)や、前回覇者のトリ・ボウイ(USA)らが今季の勢いでは少々足りないか、というところでしょう。
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◇名勝負を期待、男子400mH

昨シーズン、圧倒的な強さでDLポイント・レースを全勝し、しかもアジア大会出場のためにファイナルを放棄したアブデルラーマン・サンバ(QAT)が、今季はどういうわけか控え目です。
代わって、そのサンバに世界王者のプライドをズタズタにされたカルステン・ワルホルム(NOR)が絶好調。その走りは「打倒サンバ」の一念に燃える激しいトレーニングの成果を感じさせる素晴らしいもので、DLファイナルではとうとう、記録の上ではサンバを追い越してみせました。
その時のワルホルムに食らいつき、同時に2人が46秒台を記録する史上初めてのレースを繰り広げたライ・ベンジャミン(USA)も、レース数は少ないながらも実力はホンモノ。
2人が追い求める存在のサンバは、今季はせっせと400のフラットレースに精を出し、決してどこか体調が悪いとかではないようなのですが、この種目に関しては様子見を続けています。何と言っても地元開催のこの大会では別格の英雄でしょうから、万全を期してのプランであることは確かでしょう。
サンバかワルホルムか、ベンジャミンか…今大会、最高のビッグ・レースに、日本勢が出場する予選からテンション全開で注目しましょう。

◇出るか夢の9メートル?
突然、「跳躍ニッポン」の話題が花盛りとなった今シーズン。世界ランキング1位に君臨する戸邉直人やDLファイナルを戦った山本聖途などに負けじと名乗りを上げた「走幅跳・花の日本新トリオ」城山正太郎、橋岡優輝、津波響樹。(津波は2センチ足りませんが、オマケで…本番で破ってください)
俄かにメダルも射程内に入ってきたと賑やかな話題の男子走幅跳ですが、本当の注目はこの人、ファン・ミゲル・エチェヴァリア(CUB)でしょう。
2年前から絶対王者の座を築くかに見えたルボ・マニョンガ(RSA)からあっさりと主役の座を奪い取った、異次元のスカイハイ・ロングジャンパー。技術も助走も粗削りで、絶対的な本命に推すことは躊躇われます。それだけにドンピシャに嵌った時の空中遊泳は、他の追随を許さないものがあります。
かつてメキシコシティでボブ・ビーモン(USA)が見せた衝撃を、またルイスとパウエルが9mラインで繰り広げた東京の死闘を、長い時を経てまた見てみたいものです。

◇日本男子3人目の金メダリスト誕生なるか?
過去16回の世界選手権で、金メダルに輝いた日本人選手はマラソンの谷口浩美(91年東京)とハンマー投の室伏広治(11年テグ)の2人だけ。「3人目」の期待が集まるのが、男子50㎞と20㎞の強力な競歩チームです。
大会2日目の深夜(日本時間5時30分)に男女同時スタートする50㎞は、今や日本にメダルをもたらすドル箱種目。今回最大のホープは、20㎞の世界記録保持者にして長い故障から復帰を遂げた鈴木雄介です。これまでのメダリストたちを抑えてともに代表の座を勝ちとった勝木隼人、野田明宏にも期待がかかります。
なにしろ50㎞。調子に乗れば圧倒的に速いヨハン・ディニ(FRA)や勝負に強いマティ・トス(SBK)、誰が誰やらよう分からん中国勢(向こうも日本勢をそう思ってるでしょうが)など、ひしめき合う強敵の中で、誰がトップ・コンディションでレースに臨むのか、誰が勝つレースに一番ハマるのかで、勝負の帰趨はまったく変わってくるでしょう。その中で、「どの選手が暑さに強いかは分からないから、あくまでも自分のペースで行くのみ」と不動の姿勢を吐露する鈴木の事前コメントが何とも頼もしく感じます。
今回はMGCの影響もあり、女子マラソンは何となく盛り上がりませんが、早朝の興奮は、ぜひとも競歩で味わいたいものだと思っています。

半年ぶりブログ~世紀の一戦『MSG』を直前大予想


多忙にかこつけて休載状態にしてたら、あっという間に半年が経ってしまいました。
東京五輪前年の今季、日本の陸上界はなかなかに活況を呈しています。記事にしなかったのが今となってはもったいない気がしますけど、諸般の事情により、ということで…。陸上競技を伝えるメディアには相変わらず細かく目を通していますんで、浦島太郎状態ではありません。その点はご心配なく。

さて、いよいよMGC=マラソン・グランド・チャンピオンシップ本番です。
このプロジェクトが世に伝えられた当初は、当ブログでも対案を提示したりするなど、そのプロセスには幾ばくかの疑問も抱いていたのですが、まずまず盛り上がって、何よりも当事者の選手およびその周辺関係者が一様に納得してこの方式を受け容れていることが、最大のメリットだったと思います。
久々のブログは、「ハズレてもともと」のつもりで、このMSG大予想と参りたいと思います。ほんと、直前も超直前で済みません。結果が出てから読んだ人、大笑いしてくださいな…。
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 ※日本陸上競技連盟HPより
【ファイテンオフィシャルストア】公式通販サイト

◇女子
MSGの経緯で一つ残念だったのは、女子の有資格者があまりにも少なかったことでしょう。といって、他に誰が資格者になっていて欲しかったかと言えば、そうそう顔が思い浮かびません。清田真央、田中智美、田中華絵、堀江美里、竹地志帆…といったところでしょうかね。上位争いまではちと難しいが、レースのスケールアップにはなったことでしょう。
それと、新しい人が意外に出てこなかった。資格獲得第1号が前田穂南というフレッシュな名前だっただけに、続々と新規デビュー組の勝ち名乗りに期待したんですが、続いたのは松田瑞生と上原美幸、関根花観(欠場)、一山麻緒くらいで、大森菜月は惜しくも間に合わず。
どうせ復活するんなら、新谷仁美にチャレンジして欲しかったですけどね。

さて、その女子。もともと少ない有資格者から3人がドーハ世界選手権代表に回り、さらに残念なことに、ともに穴馬的存在だった関根花観(JP日本郵政G.)と前田彩里(ダイハツ)が故障欠場。たった10人でのフルマラソンという、かつてアジア大会でも見たことのない少人数のレースとなってしまいました。
ここ数日、放送担当局のNHKではしきりに松田瑞生(ダイハツ)・鈴木亜由子(JP日本郵政G.)・福士加代子(ワコール)の3人を取り上げ、あたかも「3強」の様相であるかのように事前告知を煽っていますけど、いやいやそんなに単純じゃあないですよ。だいたい、その絞り込みにはおそらく、珍しくNHKのコメンテーターに起用された増田明美さんの思惑が絡んでいることでしょうから、全然アテにはできません。
(増田さん本人が以前に言っていることですが、「NHKでは技術や戦術の解説を求められるのでお呼びではなく、日テレでは自分以上にアナウンサーらが細かい選手取材をするので声がかからない」んだそうです)
昨今のトラックを含めた長距離戦線の実績、福士の場合は20年近くに及ぶ業績の数々から、「強い!」というイメージが定着しているのがこの3人と言えます。その一方で、松田は5月の日本選手権10000mで好調を伝えられながら惨敗したトラウマがあり、鈴木にはマラソンランナーとしての経験不足、福士には年齢的な衰えという、それぞれに不安を抱えた3人でもあります。
当然、歴代4位のタイムを持つ安藤友香(ワコール)や、マラソンの経験値では一番と言える岩出玲亜(アンダーアーマー)、リオ選考会では代表まで1秒差と大魚を逃した小原怜(天満屋)など、後に控えるのは遜色のない実力者ばかりです。

いずれにしろ、頭数は少なくても予想をするのは非常に難しい中、私は敢えて!と言いますか、ここへ来ての成長度という意味で最も期待するのが、前田穂南(天満屋)です。
MGC切符を獲得した2017北海道マラソンでの鮮烈な初優勝ぶりはともかく、次戦の大阪国際女子マラソンでは高校の先輩である松田を激しく揺さぶり、結果的に優勝は譲ったものの「ホンモノ!」の感を強くしました。大阪薫英女学院高時代は駅伝エースの松田に対して万年補欠という立場だった彼女が、天満屋ならではの“武富マジック”によって見事な成長を遂げていたのです。
その後の駅伝やトラックレースなどでも安定して好位置をキープしており、完全に天満屋のエースとしての地位を不動のものにしつつあります。1年前のベルリンでは再び松田に及ばず、今年の東京では寒さの故か失速しているので評価はイマイチというところでしょうが、マラソンにおける潜在能力は相当のものがある、と私は睨んでいます。

レース展開は、10人という少人数であること、数日前までの猛暑は免れたとはいえ20度を大きく超える暑さの中の戦いであることを考えれば、誰かが飛び出す展開になることはちょっと考えにくい。先頭を買って出る選手がいるとすれば鈴木だと思いますが、それも自重を決め込むと、2004年のアテネ五輪選考会だった大阪の時のように、極端なスローペースに陥ることだって考えられます。
天満屋の坂本直子が優勝したあのレースは、実にスリリングな名勝負でした。そのレースに、私は同じピンクのユニフォームを重ね合わせて想像してしまうのです。そういえば坂本も、千葉真子に2度苦杯をなめさせられた後の3度目の正直で、見事に千葉を破って代表の座を勝ち得たものでした。
いずれにしろ、展開のカギを握るのは鈴木でしょう。スピードランナーと言ってもラスト勝負になるとスプリントが利かないタイプなので、スローでの集団走が続けば勝機は遠のくばかりでなく、あの時の渋井陽子のように走りを狂わされます。中盤にしろ終盤の登り坂にしろ、彼女が仕掛ける場面が必ず訪れる筈です。鈴木がロングスパートを仕掛けた時、誰がそこに付いているか、あるいは誰も付いていけなくなるか…。
終盤までもつれれば、ラストが強いのは松田と安藤。松田の粘り強さはやはりピカイチですし、駅伝1区のスペシャリストだった安藤は、勝負どころの見極めが実に上手い。あとは、ダークホースで一山麻緒(ワコール)の瞬発力も侮れません。残っていられれば、の話ですけどね。
もう一人、レースをメイクする可能性が高いのは、言うまでもなく福士おばさん。ただ、どうなんでしょう。私はもしかしたら、彼女が安藤や一山のサポート役に回ろうと考えるような心境の変化がレース中に訪れる可能性があるんじゃないか、という気がしています。
心情的には小原を応援したい気持ちもあるんですが、決して順調に来ているという雰囲気ではないので、強くは推せません。岩出、上原にも一発の可能性は十分にあります。野上さん、ゴメンナサイ!

ということで、私の大予想は
◎前田穂南
〇松田瑞生
▲安藤友香



◇男子

名門旭化成勢の全滅という意外さはあったものの、現有のビッグネームはほぼほぼ揃ってまずは賑やかな顔ぶれとなりました。
大迫傑(NIKE O.P.)、設楽悠太(Honda)、井上大仁(MHPS)、服部勇馬(トヨタ自動車)が「4強」と言われています。1年前に日本記録を更新した大迫、前記録保持者で安定感抜群の設楽、猛暑のジャカルタ・アジア大会を制した井上、9年ぶりに国内3大大会の優勝者となった服部と、それぞれにそう呼ばれるだけの立派な肩書があり、持ちタイムでもトップ4です。

こちらも、スローな滑り出しが予想されるところですが、30人もいれば、走り易いイージー・ペースに持って行こうという動きが自然に発生することが考えられ、巷間伝えられるように設楽が序盤からレースメイクをするようなことでもなければ、3分5秒/㎞程度の安定したペースになるんではないでしょうか?(スタート直後は下り坂が続くので、数字上は速いタイムになると思いますが)
大迫は早大時代に箱根駅伝1区で2年続けてロケットスタートを決めて後続をぶっちぎっていますが、強豪が揃った4年時にはそれも通用せず、もうその手は使わないでしょう。先頭を引くことのデメリットを無視して設楽が引っ張ってくれると、非常に面白くなるところではありますが、果たしてそこまで、往年の中山竹通みたいな大胆不敵さがありますかね?
「自信満々のコメントを発する時の設楽はコケる」というイメージが、私にはあります。こちらもラスト勝負になれば大迫に一日の長があることを知っていますから、早めの仕掛けがあるのは間違いないとして、どうしても早く仕掛けた方が不利になるのが、このレースの悩ましいところだと思えます。

淡々としたペースで進んだ場合、途轍もなく恐ろしい力を秘めているのが佐藤悠基(日清食品G.)ではないでしょうか。
佐久長聖高校時代には「天才」、東海大時代には「化け物」と呼ばれ、社会人となって日本選手権10000mを4連覇した必殺のスプリントは、大迫が3度挑んで返り討ちにあったほどの威力がありました。その佐藤もいつの間にか33歳、「黄金世代」と呼ばれた竹澤健介や木原真佐人、メクボ・モグスらが大成することなく、佐藤自身もマラソンでは苦戦続き、この世代の代表格は川内優輝ということになっています。稀有な素質の開花を阻んできたものは、大学時代から見えていた痙攣などの脚部不安、いわゆる“ガラスの脚”であったかもしれません。夏場のレースは、彼にとって有利な材料となる要素を孕んでいます。
マラソンランナーとしては平凡な実績しかなく、いつも30㎞を待たずに先頭集団から消えていく佐藤が、ここで遂に本領を発揮するのではないか、という期待に胸が躍ります。ただし、佐藤が好走するような展開になった場合に、やはり今の大迫には勝てないんではないかな、とも思います。

オールドファンの私から見て、最もマラソンランナーらしい選手だなと思えるのが井上。コツコツと走り込んで蓄えたスタミナと精神力には自信を持っていることでしょうし、過去の経緯から設楽を徹底マークする戦術が確固としているのも強みです。
他に、やたらと威勢のいいコメントが聞こえてくるのが神野大地(セルソース)です。終盤の登り坂までもつれ込めばしめたものかもしれませんが、果たしてそこまで我慢できるかどうか。むしろ、中団でじっくり構えた時の今井正人(トヨタ自動車九州)の方が、荒れたレースになった時は不気味さを感じます。

で、私の結論は
◎大迫傑
〇井上大仁
▲佐藤悠基
△設楽悠太
△今井正人

男子の方は、さらに予想困難。個人的には、強いと言われる選手が胸を張って先頭を引っ張るレースが見たいですし、3人出しをするトヨタやMHPS、富士通勢のチーム戦略にも興味津々です。

なにぶんにも久々のブログですんで、予想はご愛敬ということでお察しくださいませ。

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