豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

日記・ニュース

快記録続々!田中・一山も有終の美~ホクレンDC第4戦


『ホクレン・ディスタンスチャレンジ2020』第4戦の千歳大会が行われました。
本ブログでは女子長距離ビイキということで、これまで男子選手の成績についてはほとんど触れてきませんでしたが、最終戦の今回は特に男子のほうで見過ごせない記録が続々と誕生しましたので、そこを交えてお伝えします。
気象コンディションは16時現在で気温16.5度、湿度89%、南西の風3m/s。風はマイクに響くほど吹いていますが、バックストレート側を覆うように林が囲んでいる競技場の特性上、ホームが強い追い風、バックは微風という絶好の条件になっています。
今回も実況は大塚製薬・河野匡監督、解説は前半が川内優輝選手、後半は東海大・両角速監督でした。

◇男子3000mSC
昨年の日本選手権覇者・阪口竜平(東海大)の姿こそありませんが、3位から7位までが揃った今季初戦。先頭を走ると見られたキプラガット(愛三工業)のハナを叩いて楠康成(阿見AC)が速いペースで引っ張ります。後半はキプラガット、山口浩勢(愛三工業)、三浦龍司(順天堂大1)、青木涼真(Honda)の4人に絞られ、ラスト1周の鐘が鳴った時点ではキプラガットと三浦、高校時代からのライバル対決となり、7分15秒での通過。「ラスト1周70秒なら8分25秒!」と気色ばんだ河野監督でしたが、壮絶な競り合いはラスト1周(420m)を64秒にまで押し上げて、強いライバルを競り落とした三浦のタイムは何と8分19秒37。日本歴代2位・国内最高・日本学生新・U-20日本新記録、と、いくつもの肩書が付く快記録が誕生しました。特に日本学生記録は、新宅雅也さん(日体大→エスビー食品)以来、実に41年ぶりの更新です。
3位の山口、4位・青木も大幅なPB更新、多くの選手にとって実りある3000mSCの初戦となったのは祝着でした。
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◇男子5000m
開口一番のE組から13分台が飛び出す出足に、本日の活況への期待が高まります。
B組では「これでB組か?」というコメントが出るほどの有力メンバーの中で、昨年の日本選手権で故障を発症して以来久々のトラック登場となった塩尻和也(富士通)に注目。
13分45秒の設定タイムに多くの選手が追従し、ラストにスプリントが利かない塩尻が残り600でロングスパート。これに食い下がったのが、河合代二(トーエネック)と中学時代から怪童の名を欲しいままにしてきた石田洸介(東農大二高)。最後は深川で10000m27分台に突入し絶好調の伊藤達彦(Honda)が、いったん遅れた位置から猛然と巻き返して1着。
高田康暉(住友電工)に続いて3着に粘り込んだ石川のタイムは13分36秒89。仙台育英高校時代に佐藤悠基(佐久長聖高)と「ダブル佐藤」と言われていた佐藤秀和の記録を約3秒破る、高校新記録を樹立しました。
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続くA組は設定タイムが13分35秒。ペースメーカーよりも前に出た数人の集団に松枝博輝と遠藤日向(住友電工)が食い下がって、時には先頭にも出る勢い。強化選手2人の争いは、残り600で仕掛けた遠藤が制して13分18秒99の大幅PBで2位。5位に入った松枝もPB。そして6位に食い込んだ吉居大和(中央大1)が13分28秒31。これはU-20日本新記録!「ダブル佐藤」の悠基の方が持っていた東海大1年時のタイムを3秒41上回りました。
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◇女子3000m
B組では中距離の第一人者・卜部蘭(積水化学)が和田有菜(名城大)との競り合いを余裕で制して貫禄の1着。9分06秒18は大幅なPBです。
A組には、この2週間フィーバーし続けた田中希実(豊田自動織機TC)が有終の美を飾るべく登場。
今までのレースとは打って変わって先頭グループの後方に控えたのは、連戦の疲れということもあるでしょうが、むしろその状態の中で後半どれだけビルドアップできるかを試すプランだったのだと思います。
虎視眈々、2000mで先頭に並びかけると、残り800mで一気に身体が前に傾きました。スパートというよりは、それまでの2200mが助走でそこから800mのレースをスタートさせたかのように、次の1周を61秒台で突っ走ると、外国人ランナーたちを遥かにぶっちぎってしまいました。
ラスト1周を66秒でまとめて8分51秒49。ラスト1000mは2分43秒、800は2分07秒…世界に通用することになるかもしれない、見事なビルドアップでした。
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◇女子5000m
前田穂南と一山麻緒、マラソン代表の2人が臨む最終戦は、一山の快勝に終わりました。
3戦続けて田中希実と激闘を繰り広げたヘレン・エカラレがPM。しかし高校生のシンシア・バイレ(神村学園高)が70秒ペースで引っ張り、デンソーの外国人2人と一山・前田・矢田みくに・矢野栞(以上デンソー)・三宅紗蘭(天満屋)が追走。
前田は中盤からついていけなくなり、先頭グループに残る日本選手は一山と矢田の2人。3年前のこの大会で高校生ながら快記録を出した矢田が、久々の快走です。
3日前の10000mと同様、速くてもイーブンならば一山の対応力は抜群で、3600mでペースダウンしたシンシアに代わって先頭に立つと、最後は激しいトップ争いも、「高校生に負けるわけにはいかない」とばかりに見事に再逆転を決めて15分06秒66の大ベスト。田中に続いて胸のすくようなレースを見せてくれました。最後の1周は67秒。10日の間に10000を2本走った後のレースとしては、十分以上の結果でした。
前田は今回のペースには対応できず、後続にも抜かれて10位でフィニッシュ。しかしその前田まで、上位全員がPBというハイレベルなレースでした。
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最終レースの男子10000mでも、鈴木健吾(富士通)が最後ヨレヨレになりながらも27分台のPBで、盛況の大会を締め括りました。ちなみに日本選手の上位は洋平(愛三工業)、塁人(SBH)と、「鈴木」が独占です。
コロナ禍このかた、今季初めてとなる全国規模の大会が幾多の困難の中で開催されたことは、選手にとってもファンにとっても大変喜ばしいことでした。世界的に見ても、これだけの人数のアスリートが一堂に会してのイベントは、まだ行われていないと思われます。願わくば、今後2週間程度の様子見を経て、この大会でのウィルス感染者が出ませんように。
関係者の皆様、ありがとうございました。

一山、「世界2位」を奪取!~ホクレンDC第3戦続々報


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『ホクレン・ディスタンスチャレンジ2020』第3戦網走大会のダブル・メインイベントは、女子5000mAに続いて女子10000m。
1週間前の深川では、1戦消化した後の前田穂南(天満屋)の前に、実力差を見せつけられるかのような苦杯を喫した一山麻緒(ワコール)が、今度はローズメリー・ワンジル・モニカ(スターツ)の高速ペースに乗っかり、しぶとく粘った末に、PBとともに前田の記録をも10秒以上更新。30分38秒18でワールドリーダーとなったモニカに続いて31分23秒30、今季世界第2位の快走を見せました。
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スタートしてから一度もペースメーカー(日立のオマレ・ドルフィン)が先頭に立てない…モニカの高速ペースは終始3分03~04秒/㎞で押し通したのですが、一山は迷うことなくPMを追い抜いてこれを追いかけ、4000mまで食い下がります。離れた後もガックリと落ちることなく中盤を3分12秒/㎞前後でガマン。序盤で一山とともにモニカを追った松田瑞生がズルズルと下がったのとは対照的に、8000mを過ぎて再度ペースアップを図ると最後の1000を3分03秒でまとめ、マラソン日本代表として実力のほどを見せつけました。

この大会、試合の機会を奪われ、トレーニングでも制限を受けた中での過ごし方やモチベーションの持ち方が問われるものでしたが、「なるほど」と言いますか、すでに五輪代表が決まっている選手、そこにごく近いところにいる選手の走りが、男子も含め一様に、一味違うという印象があります。女子マラソン代表の前田・一山両選手は、その典型でしょうね。どちらも見ていてうっとりしてしまうような美しい走りが、研ぎ澄まされてきていますよ。一山の好タイムは、好コンディション(放送席の観測では気温15度程度、弱風)に恵まれた結果という要素もあり、直接対決で圧倒した前田が一歩リードの感がありますが。
田中希実フィーバーとは一度も交わることなく、もう一つの極上連続ドラマを見せてもらっているようなこちらのシリーズは、最終戦・千歳大会、5000mAに再び前田、一山、そして安藤友香らが干戈を交えてフィナーレを迎えます。
『ホクレン・ディスタンスチャレンジ』は、夏場の好条件下での記録会という気安さで多くの中長距離選手が活用している大会ですが、年末年始にオーストリア・ドイツで行われるスキージャンプの『4ヒルズ・トーナメント』のようにシリーズ優勝を競う大会になると、もっと盛り上がるかもしれませんね。そこまで行かなくても、「MVR(最高殊勲ランナー)」や「優秀選手賞」「敢闘賞」「新人賞」などを顕彰することを考えてみては、いかがでしょうか?
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田中希実がまた魅せた…14分台は惜しくも逃す~ホクレンDC第3戦・続報



前々回の記事で、田中希実選手(豊田自動織機TC)のハードワークぶりについて触れましたが、今日の実況を聞いていると、「11日には兵庫選手権の1500mが中止になったので、別の所へ行って4分15秒で走った」という話が出て、またまたビックリ!
するてえと、今日の5000mは7月に入って半月で5レース目!

結果は …

◇女子5000mA
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期待どおりにスタートから先頭を譲らず、ラストの強烈なスプリントでエカラレを捻じ伏せる。記録を狙うには1000m以降のペースダウンが惜しまれますが、まあ、過密スケジュールのせい、と言っておきましょう。新谷もスピード練習がしたかったんなら、このレースでPMやればよかったのに!
レースがトレーニングを兼ねるのだとすれば、この2週間で彼女はまた恐ろしく強くなってしまったかもしれません。
ラスト1000mが2分50秒、400mが64秒。日本新を出した先日の3000mの上がりと遜色ないです。記録絶対ではなく、「勝てる」ペース配分を貫いた結果ですから、評価できますね。
常に田中の後塵を拝してはいますけど、萩谷楓の大PB(これまでは15分28秒13)も見事。
最終戦・千歳大会では、田中、萩谷ともに、3000mAに出場します。

※前回で速報したレースのリザルトを掲載しておきます。

◇女子3000mA
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◇女子1500m
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鍋島・卜部・新谷が登場!~ホクレンDC第3戦


『ホクレンディスタンス・チャレンジ2020』第3戦の網走大会が行われています。
先週とは打って変わって好天…に恵まれるのか祟られるのか、その辺はどうでしょうか、気温は22度前後と、先週とあまり変わりません。
今回は、道民限定・先着200名の有観客開催です。少しずつ、正常化への模索が行われているのは結構ですが、くれぐれも、と願うばかりです。
実況席は、手慣れたもんだぜ河野匡・大塚製薬監督。今回はレースごとに解説者も。主に両角速・東海大監督が担当。河野さんが「いずれサプライズ・ゲストも登場」と含みを持たせていたところを、両角さんが「後で瀬古さんが…」とついバラしてしまうハプニングに苦笑いです。

ひとつ苦言を。ライブ配信をYouTubeページで見る(陸連HP→ホクレンDCページのライブ画面→YouTubeのマークをクリック)と、チャット・ボックスがついていますが、ここに品のない荒らしコメントを書き込むのは絶対にやめましょう…なーんて言っても、そういう輩は何を言ったところで理解できる頭がないんだからしょうがないか。それと、荒らしではないんですが、くだらない質問を書き込む人が多過ぎるようです。質問する前に、自分で調べることを学びましょう。選手の出場予定だとか、いま走っている選手の顔ぶれだとか、ひと手間で調べられることばかりですよ。以上、みんなが心地よくLIVEを観戦するために、ジジイのお節介。(全画面にしてしまえば、チャットは目に入りません)

今回も、女子限定で結果速報。
第1レースの女子3000mBから、まずまずの好記録が誕生しています。
3000mAには、故障明けとなる鍋島莉奈(日本郵政G.)が登場。神村学園高校のバイレ・シンシアには圧倒され、ラストでは同じく神村学園の黒川円佳にも交わされたものの、9分15秒前後で復活へ向けた順調な調整ぶりを伺わせました。直線に入ったところで敢えてインコースを開けて黒川さんに前を譲ったようにも見えましたので、プランどおりにレースを終えたという印象でした。

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1500mには新谷仁美・卜部蘭のセキスイ/TWOLAPSコンビが登場。解説席に登場した横田真人代表は、「卜部は今季初レースを思い切って、新谷はスピード練習。前半は2人で引っ張る」とプランを明かしてくれます。卜部は今季初とは言っても、2月ニュージーランドでのレースでは、田中希実を僅差で破りPBに近い記録で走っています。
プランどおりに先頭には卜部。ただ2番手を行こうとした新谷が外側から陣内綾子にポケットされて走り辛そう。このため残り600での卜部のスパートに即応できず、ラスト1周の競り合いとなっては中距離の本職連に対してちと分が悪い…。
結局卜部がPBとほぼ同じ4分14秒94(速報)で快勝、以下高松智美ムセンビ(名城大)、陣内、新谷、和田有菜(名城大)と続きました。新谷の前は3人とも歴代の日本チャンピオンですから、まあ順当ですね。
新谷が1500mを走ったのは、もしかしたら高校生以来かもしれません。WA(世界陸連)のページでは各種目のSB(年次別自己最高記録)が閲覧できるのですが、新谷の1500mのデータがないんですよ。横田代表によれば、PBは4分22秒75だそうです。どうやらそれは破った模様。

苦言をもう一つ。HPにリザルトが発表されるのが、遅いです!
第1戦の時は結構早かったのに、第2戦、今回と、レース終了から1時間以上かかっています。したがって、上記2種目のリザルトは続報にて掲載させていただきます。
ついでにもう一つ。画面にタイマーを表示していただいているのは有難いのですが、公式のタイマーとズレて=遅れてました。それも1秒以上。どうか改善を。

田中希実とメアリー・デッカー…37年の時空を想う



改めて。
田中希実選手(豊田自動織機TC)が『ホクレン・ディスタンスチャレンジ2020』
7月4日、第1戦士別大会1500mで日本歴代2位の4分08秒68、
7月8日、第2戦深川大会3000mでは18年ぶりの日本新記録となる8分41秒35で、
在日外国人選手有数の強豪ヘレン・エカラレ(豊田自動織機)を破って連勝を飾りました。
加えて、12日には兵庫選手権の800mに出場して2分04秒66の兵庫新記録。その前日には豪雨のため中止とはなったものの、1500mの出場も予定していました。これで、15日にはホクレン第3戦の5000mで14分台の自己記録を狙い、18日には3000mで再度の日本新を目論むというのですから、そのハードワークには驚きます。

連戦と種目のマルチぶりについてはさて置き、しばし「1500mと3000m」という話題で、たまたま本ブログにちょっとした偶然の暗合があったものですから、それについて書いてみます。

7月7日に投稿したばかりの『1983年世界陸上競技選手権ヘルシンキ大会』の記事で、大会のヒロインの一人となったメアリー・デッカー選手(USA)について紹介しました。
http://www.hohdaisense-athletics.com/archives/35487640.html
1983HELSINKI09
デッカーはこの大会で、当時のトラック女子最長距離種目だった3000m、続いて1500mを制して2冠女王となり、一躍世界のスター選手として脚光を浴びました。そのレース・スタイルは、徹底した先行逃げ粘り。「私の前を走るのは許さない!」絶対に先頭を渡してなるものかという強気なレースぶりが、人気の理由でもありました。
その優勝タイムは、
1500m 4分00秒90
3000m 8分34秒62
これが37年前の現実です。田中選手の大活躍に水を差すつもりはないのですが、いやー、まだまだ世界は遥か彼方ですね。
いま、2020年の時点で眺めてみると、現在の日本記録がこの大会の優勝記録を上回っている種目は、女子ではマラソンを除き、残念ながら1つもありません。5000m・10000mといった種目があれままた、話は違ってくるでしょうが、前述のように3000mがトラックの最長距離種目でした。銅メダル、というところへハードルを下げてみても、上回るのは走高跳1種目のみ、その走高跳も2001年にようやく83年の銅メダル記録を1㎝上回った後、日本記録の方はまったく更新の気配が見られません。

一方の男子はというと、規格の変わったやり投を除く23種目中、15種目で現在の日本記録が上回っています。
象徴的なのが、長年「世界との距離」を思い知らされてきたスプリント種目で、100mではカール・ルイスの優勝タイムが10秒07(-0.3)。これは近年の日本選手権とほぼ同レベル、と見ることができます。また当時の“高地記録”を除いた世界最高記録が、同じくルイスの9秒97(+1.5)。現在の日本記録がサニブラウン・ハキームの9秒97(+0.8)で、ちょうど「30数年前の世界レベルに追いついた」状況となっています。(やっとそんなもんか、という気もしますけど…)
400mリレーでは、9秒台を2人(ルイス、カルヴィン・スミス)擁したアメリカの優勝記録が37秒86の当時世界新記録。これは2019年の日本チームが同じく9秒台2人(桐生祥秀、サニブラウン)を擁して37秒43と、バトンワークの優位性を物語るように大きく上回っています。
ちなみに、男子でまだ上回れていない種目は、800m・400mH・3000mSC・走幅跳・三段跳・砲丸投・円盤投・十種競技の8つです。
※十種競技もやり投を含んでいるため厳密には現行記録と比較はできないが、現日本記録と83年の優勝記録との隔たりが大きいため、明らかに優劣が判断できるものとしています。

以上のことには、1980年代の陸上競技の記録が東欧圏の選手群を中心とした「推定ドーピング疑惑」に塗れており、その兆候が女子に於いてより顕著だという特殊な事情も関係していると思われますが、本質的には日本の女子アスリートのレベルアップが甚だしく遅れている、もしくはマラソン1種目に特化されている、という厳しい事実の記録的な裏付けだと、解釈されましょう。
日本女性の競技力の向上ぶりは、他のさまざまな競技を見る限りは実に目覚ましいものがあって、近年のオリンピックでの日本選手団の成果は、圧倒的に女子選手による活躍の話題で彩られています。そうした中で、陸上競技だけがいつまで経ってもカヤの外、という状況が、何とも寂しく、もどかしい。どうにかならないものか、というのが陸上ファンの切なる気持ちとしてわだかまり続けているのです。

マラソンを別にすると、オリンピックの歴史上で陸上のメダルを獲得した日本人女性は、人見絹枝さんのみ。(1928年アムステルダム大会800m銀メダル)
同じく世界選手権では、千葉真子さんだけです。(1997年アテネ大会10000m銅メダル)
入賞ということでさえ、指を折って数えるほどしかありません。
子供時代から長期にわたって陸上競技に打ち込む環境、特に文化的な環境が、日本人女性の場合他の様々な要因によって整い切らないという事情があるかもしれません。あるいは、全般的な指導法や組織的な強化方法に、何らかの改革が求められるのではないか、とも言えるでしょう。一概に比較は難しいとはいえ、近年日本人女性が躍進を遂げた多くの競技(スピードスケート、アイスホッケー、バドミントン、自転車、新体操等々)に於いて、外国人指導者の起用や強化体制の見直しが劇的に作用した例があることは、見習うまで行かずとも十分に検討するに値することです。端的なエピソードとしては、MGC方式の考案によって、低迷が続いた男女マラソン界にも一挙に活気が戻りつつある、という身近な実例もあります。

もう一つ、特に中長距離走に於いて確かに言えることは、記録に対する、というより自己実現に対する必要不可欠の要素は、「前へ、前へ!」の姿勢だということです。
ケニア人やエチオピア人ランナーのような柔軟かつ鋭利なスピードを駆使したレースを望むべくもない日本人女子選手が、世界と戦うために採るべき選択肢は、速いペースで押し切る力と最後の粘り腰を磨くこと以外は、今のところありません。ペースメーカーには、「風よけ」以外の使い道を考えるべきではないでしょう。
それを体現しようとしている数少ない選手が田中希実選手であり、新谷仁美選手であり、廣中璃梨佳選手なのです。千葉真子さんもまた、然り。そして、もちろんメアリー・デッカーも。

女子のトラック&フィールドが躍進するためには、技術的にか戦術的にか、精神的にか文化的にか、何らかの改革が必要なことは確かです。その先鞭をつけるべきは、やはり創意と工夫と地道な努力の余地が多く残されている中長距離から、ということになるでしょう。
田中選手には、ぜひその急先鋒となっていただきたいと思います。ホクレン第3戦の網走大会5000m、今度はヘレン・エカラレだけではなく、在日ケニア勢が大挙して相手になります。先頭に立つか否かは相手次第。期するところは頑なに1周72秒。ラスト1000を2分50秒。それだけでいい。

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