
※あらかじめお断りしておきますが、当ブログでは『クイーンズ駅伝』とか『プリンセス駅伝』とかいう呼称はいっさい用いません。「クイーンズエイト」だとか、予選会なのに「プリンセス駅伝“優勝”!」なんて言い方もしません。真面目な真面目な陸上ブログですんで、あくまでも『月刊陸上競技』方式の表記でいきます。(『ゲツリク』に「パナソニック初のトップ通過」の見出し、さすがでしたねえ!)

さて今年の女子陸上長距離界も、クライマックスの季節を迎えました。
振り返れば、ひところ毎日のように書きまくっていた当ブログも、前回記事は半年以上も前の、お馴染み・実業団各チームの所属選手名鑑。まったくこれだけで数少ない読者様のご来訪を繋ぎとめているというトホホぶりには呆れますが、ここは開き直って、突然大胆に展望をかましてみたいと思います。
個人的には、ここ十数年、日本の女子長距離は新谷仁美女王様(昨今は「鬼」と呼ばれてらっしゃいます)を中心に回っていると思っておりまして、昨年は(どこも触れてませんでしたが)この女王様によって、「異なる3チームで全日本実業団駅伝優勝」という不滅の大記録が達成されたところ。今回もセキスイの連覇なるかが最大の焦点となるわけですが、いつにも増して百花繚乱、見どころの尽きない一戦となることは間違いなく、注目すべきはFIFAワールドカップなんかの比ではございません!
なお評論につきましては全24チームについて記すべきところ、時間と労力の限界ということで、上位候補と私が勝手に認定した15チームに限らせていただきました。上位候補とは、シード権獲得に絡んでくると思われる、というほどの意味で、このほかにもダイソーやユニクロなんかも強そうなんですが、ここらへんは論評するまでの知識や情報を持たないもんですから、どうもすみません。我が地元チームの日立についても触れたいところでしたが、こちらはどう叩いてもシード入りの芽はなさそうなので…。
記載は、順不同です。・・・嘘です。さりげなく、順位予想してます。駅伝の順位を予想するくらい当てずっぽうなものはないとは重々承知していますが、軽くお遊びということで。
というわけで、最終エントリー発表直前の投稿となってしまいましたが、まずは渾身のオーダー予想の結果から、お楽しみください。
※●→監督 ◎→キャプテン ①→予想出場メンバー(予想走順) ②→その他登録メンバー ③→登録外メンバー ④4月以降の退団選手
※参考記事 → 2022年度実業団女子長距離チーム一覧
◆資生堂
●岩水 嘉孝
①木村 友香/◎樺沢 和佳奈/五島 莉乃
/ジュディ・ジェプングティチ/
一山 麻緒/高島 由香
②佐藤 成葉/前田 海音/大谷 菜南子
/木之下 沙椰/
③干飯 里桜
④永井 智里(東京メトロへ)
五島選手に前回の勢いがあれば、3区でも5区でも区間賞の有力候補。それは新加入の一山選手も同様で、この2枚看板は強力です。となると大望成就は1区の出来次第。切れ味鋭い木村選手か安定感抜群の高島選手か、あるいは1区得意の五島選手、一山選手もあるのかな、と悩むところではあります。総合力ではジュディ選手を擁する分だけ、やや積水を上回るのではないかと考え、今回の「本命」に推すことにします。
◆積水化学
●野口 英盛
①森 智香子/卜部 蘭/佐藤 早也伽/
弟子丸 小春/新谷 仁美/佐々木 梨七
②鍋島 莉奈/田浦 英理歌/長澤 日桜里
/道清 愛紗
③和田 美々里
④飯島 理子
鍋島選手がメンバー入りできる状態か否かが大きな分かれ目になるところですが、現状まだエース級の活躍を期待するのは難しそうです。そうなると初優勝した昨年同様の布陣・オーダーとなることが考えられ、卜部・森・佐藤各選手がやや停滞気味の一方、佐々木(旧姓・木村…改姓の理由が伝えられていないのは、婚姻ではなく家庭の事情によるものと思われます)・弟子丸両選手の成長分、そして新谷選手の好調キープが期待値となりそうです。新谷選手は「4区以外の区間記録を全部作りたい」との発言があるので、3区ではなく5区でのリベンジ戦か?…まあ戦略的には3区でしょうけど。意表をついて、田中希実対策で1区に登場という奇襲作戦はないでしょうね?
ズバリ!連覇の可能性は40%、トップ3には確実に入ってくるか?
◆日本郵政グループ
●髙橋 昌彦
①和田 優菜/三原 梓/廣中 璃梨佳/
菅田 雅香/大西 ひかり/鈴木 亜由子
②◎太田 琴菜/樽本 知夏/小坂井 智絵
/土井 葉月
③高橋 明日香/山中 菜摘
高卒生え抜きの若手の成長、即戦力の和田選手の加入で、トップ争いの中でもジワリと底力を蓄えてきたチームです。鈴木選手の久々のマラソンでの快走も明るい材料で、誰がメンバー入りしても不思議はない整った戦力が揃いました。何と言っても注目は廣中選手。駅伝不敗伝説が今年も継続されるのかどうか、そしてチームの優勝に決定打となるパフォーマンスを見せられるかどうか、目が離せません。
◆第一生命グループ
●山下 佐知子
①出水田眞紀/古川 結美/小海 遥/
櫻川 響晶/鈴木 優花/田中 華絵
②◎原田 紋里/藤岡 加梨/関谷 夏希/
松本 奈々
④樽本つかさ/佐野 英里佳/山本 晏佳吏
会社の節目(今回は創立120周年)には気合を入れてくる古豪チームは、台風の目かもしれません。予選会は終盤に起用した鈴木・関谷の新旧大東大鉄板エースが不発に終わりましたが、順当ならばおそらくパナソニックの前に行っていたでしょう。関谷選手のスランプは少々深刻ながら、鈴木優花は今度はやるはず。長距離区間も走れる小海選手や古川選手がうまく波に乗れば、イッキに浮上も十分あり得ます。あとはコンディションのいい選手を6人揃えられるかにかかっています。
◆豊田自動織機
●松田 三笠
①田中 希実/後藤 夢/川口 桃佳/
ヘレン・エカラレ/藪下 明音/
小笠原 安香音
②前田 梨乃/城所 日和/磯部 早良/
藤田 あい
③原田 まりん
いよいよ、いよいよ田中希実選手の実業団駅伝デビュー戦!…とはいうものの、しばしば比較の対象となる廣中選手とは対照的に、田中選手は駅伝での区間賞に縁がありません。都大路の1区を何度も走りながら、今年もまた五島選手にちぎられる屈辱に甘んじています。さらにこの宮城路には、田中選手にとってうってつけと思われる区間がなく、どこに使うか迷うところでしょう。京都と同じく登り基調の1区はその京都以上にタフなコースですが、それでもここしかないでしょうね。猛者ぞろいの中を食らいついて、ゴールスプリントで一気に差を開き、相棒の後藤選手へリレー…実力者の川口選手、エカラレ選手と引き継いで、おそらくここまでトップを快走する青写真かと思われます。チームは予選会で苦戦しましたが、多分に各選手の区間適性をテストした気配があり、本戦の豊田は終盤まで上位を掻き回すのではないでしょうか。
◆ダイハツ
●山中 美和子
①西出 優月/武田 千捺/加世田 梨花/
前田 彩里/大森 菜月/松田 瑞生
②◎竹本 香奈子/上田 雪菜/柴田 佑希
/村尾 綾香
④竹山 楓菜/信岡 桃英
ルーキー加世田選手のマラソン快記録の朗報はあった一方、大黒柱・松田選手の動向が結婚のニュース以外、いま一つ伝わってきません。優勝争いの場合を除いて比較的負担の少ないアンカー区間を任されるような気がしています。久々に駅伝を走る前田選手がどこに配置されるかが注目。6月の日本選手権3000mSCでブレイクした西出選手の勢いある走りにも期待しています。
◆パナソニック
●安養寺 俊隆
①内藤 早紀子/堀 優花/信櫻 空/
中村 優希/森田 香織/渡邊 菜々美
②◎森田 詩織/伊藤 南美/川口 幸奈
予選会トップはシード権「下剋上」の一番手ですが、堀選手が本格復帰なれば、優勝争いにも絡める力を持っています。反面、選手層の薄さなど“線が細い”イメージも拭いきれず、ひとつ歯車が狂えば大敗の危険も孕んでいるチームと映ります。完全復活を印象付けた渡邊選手、好調のベテラン内藤選手、成長著しい信櫻選手をどこに配置するか、監督の采配とその結果が見どころです。
◆エディオン
●沢栁 厚志
①萩谷 楓/江口 美咲/細田 あい/
中島 紗弥/矢田 みくに(デンソーより)
/◎西田 美咲
②山本 明日香/工藤 杏華/小倉 稜央/
安 なつ美
④緒方 美咲
予選会ではやや期待外れの順位に終わりましたが、オリンピアン萩谷選手の不調、ロンドンマラソン直後で細田選手不在と、大きく埋め合わせが可能な敗因がありました。移籍したばかりの矢田選手も試運転段階。それらが本領を発揮してくると…確実にシード権入りする戦力と思えてきます。なにしろこの3人とも10000mのPBは31分35秒。トラックシーズン後半からやや精彩を欠いていた萩谷選手の出来如何、というところでしょうか。

◆天満屋
●武富 豊
①小原 怜/翁田 あかり/前田 穂南/
◎大東 優奈/渡邉 桃子/松下 菜摘
②谷本 観月/𠮷薗 栞/立迫 志穂/
高橋 実夢
③干飯 奈桜
④西川さくら/小汲 紋加
顔ぶれの重厚感はトップクラスなんですが、なにせマラソン強豪の多いチームだけに、2区・4区のスピード区間が常に課題。全員が好調ならばもともと中距離ランナーだった小原選手に2区あたりを託すのも一手かと思うのですが、この中では本人の意向もあり1区は外せませんね。1区といえば、4年ぶりに復帰した翁田選手。プロ野球1年目で大活躍した弟に負けじ、の奮闘が期待されますが、短い区間は却って荷が重いでしょうか?
◆九電工
●藤野 圭太
①唐沢 ゆり/花房 百伽/◎逸木 和香菜/
キプケモイ・ジョアン・チェプケモイ/
林田 美咲/宮田 梨奈
②小園 彩華/森田 真帆/河内 愛奈
③ジェロティッチ・ウィニー
④中須 瑠菜
予選会2位は、当方の予想以上の躍進でした。逸木選手が頼もしい大黒柱になったこと、林田選手が長距離区間で十分通用する目途が立ったことが大きな収穫。これで、藤野監督が課題に挙げた前半の出遅れの修正が見込まれます。あと1枚、2枚コマが揃えばというところですが、今年は粘り強くシードを伺いに行くレースになるでしょう。
◆ワコール
●市川 武志(監督代理)
①◎谷口 真菜/井手 彩乃/安藤 友香/
宇都 ひなた/柳谷 日菜/柴田 来夢
②坪倉 琴美/枚田 茉優
④清水 萌(三井住友海上へ)
大エースの退団は何とも手痛いものの、若手の底上げは順調でチーム力としては、ぎりシードに滑り込んだ前回とさほど遜色ないようです。ただし周囲も強くなっている分、今のままでは4年続いたシード権を手放すことになりかねません。安藤選手に続くエース格にまで評価を上げている井手選手ですが、長い距離に実績がないだけに使いどころに悩むでしょうね。本来なら1区に起用できればいいのですが。その分、ルーキー柳谷選手に長距離区間を任せられるのは、頼もしいです。
◆デンソー
●荻原 知紀
①小笠原 朱里/小泉 直子/岩出 玲亜
/ブカ・デスタ・ブルカ/
池内 綾乃/川北 陽菜
②平田 歩弓/松本 夢佳/久保 心優/
小山 香子(加入時不明)
③鳥居 華/ロバ・ゼイトナ・フーサン
④松田 杏奈(三井住友海上へ)/
矢田みくに(エディオンへ)/酒井 美玖
ここ1年で激しく選手の入れ替わりがありました。矢野・森林・矢田・松田・酒井といった主力級が抜けて、一旦スタッフ入りした池内綾乃の選手復帰、プロランナー岩出選手の加入はあるものの、やや弱体化の感を免れません。中で、登録メンバーの10人目に突然名前が現れた小山香子というHPにも載っていない謎の選手?かつて順天堂大で活躍しその後アメリカ留学へ進んだという経歴しか分かりません。本戦の秘密兵器となるのでしょうか?…にしても、現状ではシード権死守が当面の課題となるでしょうか。
◆ヤマダホールディングス
●髙木 雅一
①清水 真帆/土田 佳奈/岡本 春美/
星野 輝麗/◎筒井 咲帆/荻野 実夕
②加藤 詩帆加/小指 有未(9月加入)
④野見山 紋圭
ここは辛いですね。主力がゴッソリとシスメックスへ移籍(しかもそのシスメックスは予選敗退)したことで弱体化は明らか。どうも、一般種目部門を併設して以来、チームの運営がスッキリいっていない気がしてなりません。ただ清水選手がタフな1区をこなせる状態に戻っていると思われるので、5区にもエース級を残せることに希望を繋ぎます。3連続シードなるか、微妙!
◆三井住友海上
●鈴木 尚人
①野添 佑莉/清水 萌/松田 杏奈/
カマウ・タビタ・ジェリ/
西山 未奈美/福居 紗希
②◎片貝 洋美/根塚 みのり/黒川 円佳
吉原 あかり
かつての駅伝女王国も毎年のように主力選手を失い、ジリ貧状態が続いていましたが、ここへ来てようやく補強も整ってきたというところです。移籍組に頼らざるを得ないのが実情ながら、それらの奮闘で若い選手が波に乗れるシチュエーションが作れれば、次につながる駅伝ができるはずです。
◆ユニバーサルエンターテインメント
●深山 文夫
①猿見田 裕香/山﨑 夢乃/和久 夢来/
ナオミ・ムッソーニ/白石 由佳子/
鷲見 梓沙
②大西 響/髙木 結加/奥村 沙帆/
中尾 有梨沙(8月加入)
③◎青山 瑠衣/由水 沙季/篠塚 麻衣/
田川 友貴
もともとあまりトラックレースに出てこない社風(?)のせいか、イマイチ状態が掴めないのですが、予想外の健闘でシード入りした前回よりは、計算できるチーム力となっているようです。ただ主力選手の5000mタイムがおしなべて15分50秒台と、大砲不在の状況は変わりありません。どうやら鷲見選手が久々に使えそうだという点に一縷の望みあり、といったところでしょうか。正直、再度のトップ8入りは厳しいでしょう。


