さあ、さあ、今年もやって参りました。
やって来ないかもしれないと薄々怯えつつも、ぎりぎりセーフ!…もし以前のような12月第2週開催であれば、ここ数日の状況からすると急遽中止のやむなきもあり得たかな、と思わされます。
陸上競技年間行事の中でも本ブログ最大の注目イベント、それが『全日本実業団対抗女子駅伝』であることは、ご贔屓くださっている皆様にはご承知のとおりです。
ブログオーナー(すなわち私)の好みがスポーツ>陸上競技>女子長距離>…の順に特化されているところからすると、『全日本大学女子駅伝』『全日本実業団女子駅伝』『都道府県対抗全国女子駅伝』(残念ながら今季は中止)こそは、天下の三大駅伝!
さらに>…の先を言うならば、そこには「新谷仁美」の文字が燦然と輝きます。

「帰ってきた新谷仁美」が、引退前に比べて凄まじいばかりのカリスマ性に彩られて、マラソン代表トリオをも上回る眩いオーラに包まれているかに見えるこの1~2年。その姿は、スポーツ・マスコミはもとより、Twitterを通じて、本人、さらには横田真人氏という、コーチとしても情報発信者としても類まれな人物の手によって日々伝えられ、私たちファンの心をときめかせてくれています。
1か月前の予選会、大事なレースを前に「走りたくないよぉ~…」とゴネる彼女の動画に胸を鷲掴みにされたファンが、いったい何人いたことでしょうか。(笑)

そんな新谷が、今年新たに加入した積水化学で、空前の大記録に挑みます。
“華の3区”でのぶっちぎり区間新記録?…まあ、それもありますけど、もっとレアな記録への期待、
それは、「異なる3チームでの全日本実業団女子駅伝優勝」という快挙です。
過去に、「2チームでの優勝」を果たしているランナーはたったの2人。
坂下奈穂美(ワコール/三井海上~三井住友海上)と新谷(豊田自動織機/ユニバーサルエンターテインメント)の2人だけです。
そもそも1つのチームで競走人生を全うすることが「普通」とされる長距離業界にあって、2つのチームで優勝に貢献するという経験は、本人の実力・努力だけで成しえるものではありません。過去には鈴木博美や野口みずき、千葉真子、那須川瑞穂といった実力者が2つ以上のチームを渡り歩きながら、この中ではリクルート時代の鈴木が2度優勝しているだけ。実際には別々のユニフォームを着て本大会を走った経験すらしていない選手がほとんどで、今年の大会で言えば、新谷の他にもう一人、他チームで優勝経験のある高島由香(デンソー/資生堂)が補欠に回ってしまったので、新たな「V2達成者」が出る可能性はなくなっています。
3チーム目となれば、これは文字通りの「優勝請負人」。プロ野球界でも、落合博満さんと工藤公康さんくらいしか思い浮かびませんよ。(ただし落合さんロッテ時代は「前期優勝」のみ)
駅伝の場合、男子でも聞いたことがない。実業団女子駅伝でとなると或いは永遠不滅の記録となるかもしれません。(高校、大学、都道府県対抗などを含めるとどんな記録があるのか、いつか暇があったらちょっと調べてみましょう)

さあ、その新谷仁美が加入した積水化学、果たして優勝のメはあるのか?…
何が起こるか分からない駅伝の予想ほどバカげたものはない、とは毎回思う処ですが、これも性分ということで展望してみたいと思います。
下馬評では「日本郵政と積水の一騎討ち」てな声が強いみたいですが、冷静に考えてみると、「JP絶対優位」は動かしがたいように思えてきます。
何といってもマラソン代表の鈴木亜由子を軸に、女子駅伝史上最強ランナーかもしれない廣中璃梨佳に日本選手権トラック3連覇中の鍋島莉奈がいて、あとの3人も去年の優勝メンバー。関根花観を欠いてこの陣容ですから、机上の観測ではちょっと強過ぎです。

対する積水はというと、「前半の3本柱で逃げ切り戦法」とよく言われるように、後半のオーダーがいかにも心許ない。3本柱にしたところで、佐藤早也伽がトップランナーに成長したといっても、相手が廣中ではいかに傷口を少なくするかという戦いを余儀なくされるし、卜部蘭にとって2区の距離短縮は好材料とはいえ、本職が1500mの彼女にぶっちぎりを期待するのは酷。またいくら新谷が規格外のスーパーヒロインでも、10㎞少々で鍋島より1分以上も速く突っ走るとはなかなか考えにくいですよね。
となると、後半を託される3人の奮起と粘りがカギ。積水は後半3区間を予選会とはガラリと組み替えて安定性よりも若い力の一発にイチかバチか賭けているようにも見えます。もう1枚か2枚、松﨑璃子が残っていれば、森智香子にかつての力が戻ってくれば…と思わずにはいられません。
ズバリ、新谷V3の可能性は20%、といったところでしょう。


他の有力チームに目を転じてみると、昨年2位のダイハツは今回もベストメンバーには程遠く、大エース松田瑞生を1区に持ってくる奇襲作戦。廣中の存在を考えればもったいないなという気もしますが、これで機先を制すことができたら2区以降も面白い存在になります。ただ松田個人に関して言えば、視線は完全に2週間後を向いているように思われ、そこを見据えての山中采配ではないでしょうか。

2017-18と連覇したパナソニックは、主力がいずれも故障に苦しむシーズンとなって、今回の目標はシード権が精一杯とのこと。若いチームだけに次回以降に期待しましょう。

オリンピック金メダルを期待される前田穂南を擁する天満屋は、実質的には日本郵政への対抗馬筆頭でしょう。前田・小原・谷本の3本柱は他の強豪チームに決して引けを取らないし、前回5区区間賞の三宅紗蘭も今季5000mで13分30秒を切りました(その後軽い故障をしたようですが)。実績のない大東優奈を5区に持ってきたオーダーも不気味です。

もう一人のマラソン代表・一山麻緒のいるワコールは、「3本柱」は盤石ながら優勝を目指すにはまだコマ不足。

コマ数で言えば、まずまず揃えてきたのは資生堂と大塚製薬です。
資生堂は大黒柱の高島が外れましたが、1区・佐藤成葉、2区・日隈彩美、3区・五島莉乃と並べたルーキーが予選会での奮闘を再現すれば、メリッサ・ダンカン、田中華絵、木村友香という実力者にも火が着きそう。天満屋とのピンク旋風が巻き起こるかもしれません。

大塚は福良郁美、藪田裕衣、棚池穂乃香らが力を付け、大ベテラン伊藤舞が復活。本来ならエースとなる横江里沙を短距離区間に使わざるを得ないのが残念ですが、総合力は着実にシード・クラスに来ています。

さらに、シードの三井住友海上、デンソー、豊田自動織機、予選会上位のヤマダ、九電工、エディオンあたりまでが今年のベスト8を争う候補でしょうか。この中では、やはりコマ数豊富な豊田織機。ここ数年、注目し続けてきているだけに、なんとかここいらでという気分です。

ということで、私の結論。
◎ JP日本郵政グループ
〇 天満屋
▲ 積水化学
△ 資生堂
△ 豊田自動織機

区間賞予想。
1区 ◎廣中璃梨佳 〇萩谷楓
2区 ◎福田有以 〇卜部蘭
3区 ◎新谷仁美
4区 ◎ヘレン・エカラレ 〇パウリン・カムル
5区 ◎鈴木亜由子 〇石井寿美
6区 ◎小原怜 〇大西ひかり

終ってから読んだ方、どうぞお笑いください。