『ホクレン・ディスタンスチャレンジ2020』第4戦の千歳大会が行われました。
本ブログでは女子長距離ビイキということで、これまで男子選手の成績についてはほとんど触れてきませんでしたが、最終戦の今回は特に男子のほうで見過ごせない記録が続々と誕生しましたので、そこを交えてお伝えします。
気象コンディションは16時現在で気温16.5度、湿度89%、南西の風3m/s。風はマイクに響くほど吹いていますが、バックストレート側を覆うように林が囲んでいる競技場の特性上、ホームが強い追い風、バックは微風という絶好の条件になっています。
今回も実況は大塚製薬・河野匡監督、解説は前半が川内優輝選手、後半は東海大・両角速監督でした。

◇男子3000mSC
昨年の日本選手権覇者・阪口竜平(東海大)の姿こそありませんが、3位から7位までが揃った今季初戦。先頭を走ると見られたキプラガット(愛三工業)のハナを叩いて楠康成(阿見AC)が速いペースで引っ張ります。後半はキプラガット、山口浩勢(愛三工業)、三浦龍司(順天堂大1)、青木涼真(Honda)の4人に絞られ、ラスト1周の鐘が鳴った時点ではキプラガットと三浦、高校時代からのライバル対決となり、7分15秒での通過。「ラスト1周70秒なら8分25秒!」と気色ばんだ河野監督でしたが、壮絶な競り合いはラスト1周(420m)を64秒にまで押し上げて、強いライバルを競り落とした三浦のタイムは何と8分19秒37。日本歴代2位・国内最高・日本学生新・U-20日本新記録、と、いくつもの肩書が付く快記録が誕生しました。特に日本学生記録は、新宅雅也さん(日体大→エスビー食品)以来、実に41年ぶりの更新です。
3位の山口、4位・青木も大幅なPB更新、多くの選手にとって実りある3000mSCの初戦となったのは祝着でした。
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◇男子5000m
開口一番のE組から13分台が飛び出す出足に、本日の活況への期待が高まります。
B組では「これでB組か?」というコメントが出るほどの有力メンバーの中で、昨年の日本選手権で故障を発症して以来久々のトラック登場となった塩尻和也(富士通)に注目。
13分45秒の設定タイムに多くの選手が追従し、ラストにスプリントが利かない塩尻が残り600でロングスパート。これに食い下がったのが、河合代二(トーエネック)と中学時代から怪童の名を欲しいままにしてきた石田洸介(東農大二高)。最後は深川で10000m27分台に突入し絶好調の伊藤達彦(Honda)が、いったん遅れた位置から猛然と巻き返して1着。
高田康暉(住友電工)に続いて3着に粘り込んだ石川のタイムは13分36秒89。仙台育英高校時代に佐藤悠基(佐久長聖高)と「ダブル佐藤」と言われていた佐藤秀和の記録を約3秒破る、高校新記録を樹立しました。
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続くA組は設定タイムが13分35秒。ペースメーカーよりも前に出た数人の集団に松枝博輝と遠藤日向(住友電工)が食い下がって、時には先頭にも出る勢い。強化選手2人の争いは、残り600で仕掛けた遠藤が制して13分18秒99の大幅PBで2位。5位に入った松枝もPB。そして6位に食い込んだ吉居大和(中央大1)が13分28秒31。これはU-20日本新記録!「ダブル佐藤」の悠基の方が持っていた東海大1年時のタイムを3秒41上回りました。
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◇女子3000m
B組では中距離の第一人者・卜部蘭(積水化学)が和田有菜(名城大)との競り合いを余裕で制して貫禄の1着。9分06秒18は大幅なPBです。
A組には、この2週間フィーバーし続けた田中希実(豊田自動織機TC)が有終の美を飾るべく登場。
今までのレースとは打って変わって先頭グループの後方に控えたのは、連戦の疲れということもあるでしょうが、むしろその状態の中で後半どれだけビルドアップできるかを試すプランだったのだと思います。
虎視眈々、2000mで先頭に並びかけると、残り800mで一気に身体が前に傾きました。スパートというよりは、それまでの2200mが助走でそこから800mのレースをスタートさせたかのように、次の1周を61秒台で突っ走ると、外国人ランナーたちを遥かにぶっちぎってしまいました。
ラスト1周を66秒でまとめて8分51秒49。ラスト1000mは2分43秒、800は2分07秒…世界に通用することになるかもしれない、見事なビルドアップでした。
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◇女子5000m
前田穂南と一山麻緒、マラソン代表の2人が臨む最終戦は、一山の快勝に終わりました。
3戦続けて田中希実と激闘を繰り広げたヘレン・エカラレがPM。しかし高校生のシンシア・バイレ(神村学園高)が70秒ペースで引っ張り、デンソーの外国人2人と一山・前田・矢田みくに・矢野栞(以上デンソー)・三宅紗蘭(天満屋)が追走。
前田は中盤からついていけなくなり、先頭グループに残る日本選手は一山と矢田の2人。3年前のこの大会で高校生ながら快記録を出した矢田が、久々の快走です。
3日前の10000mと同様、速くてもイーブンならば一山の対応力は抜群で、3600mでペースダウンしたシンシアに代わって先頭に立つと、最後は激しいトップ争いも、「高校生に負けるわけにはいかない」とばかりに見事に再逆転を決めて15分06秒66の大ベスト。田中に続いて胸のすくようなレースを見せてくれました。最後の1周は67秒。10日の間に10000を2本走った後のレースとしては、十分以上の結果でした。
前田は今回のペースには対応できず、後続にも抜かれて10位でフィニッシュ。しかしその前田まで、上位全員がPBというハイレベルなレースでした。
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最終レースの男子10000mでも、鈴木健吾(富士通)が最後ヨレヨレになりながらも27分台のPBで、盛況の大会を締め括りました。ちなみに日本選手の上位は洋平(愛三工業)、塁人(SBH)と、「鈴木」が独占です。
コロナ禍このかた、今季初めてとなる全国規模の大会が幾多の困難の中で開催されたことは、選手にとってもファンにとっても大変喜ばしいことでした。世界的に見ても、これだけの人数のアスリートが一堂に会してのイベントは、まだ行われていないと思われます。願わくば、今後2週間程度の様子見を経て、この大会でのウィルス感染者が出ませんように。
関係者の皆様、ありがとうございました。