今回も、女子のことしか書きません。悪しからず。
女子3000m・田中希実選手の快挙については既報のとおりですが、その他の女子3種目に於いても、好記録・好レースが続出しています。
LIVE配信は前回に引き続き河野匡・大塚製薬監督による実況、場内MCをその他の関係者が交代で務めています。女性の声は、ダイハツの山中美和子監督のようです。河野監督のコメントはよりこなれて滑らかになり、チャットに寄せられたコメントにも時々反応していただけるなど、聴きやすさ・親しみやすさ倍増。ただ、マイク周辺の雑音はほとんど拾わなくなって、ちょっと寂しい。ハード上のトラブルも前回より少なかったみたいです。

◇3000mSC

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今季初となるこの種目のレース。参加は5名と少ないながらも、吉村玲美、石澤ゆかり、藪田裕衣と昨年の日本選手権上位3名、元日本選手権覇者の森智香子が参戦。ただ昨年の趨勢としては世界選手権にまで駒を進めた吉村が、現状の実力、将来性ともに群を抜く感があります。
果たして、序盤から日本記録ペースで主導権をとった吉村が一人、また一人とライバルを振り落として、後半はもはや独擅場。1000mを過ぎてからペースが思うように上がらなかったようですが、最後をまとめて8分53秒50は、気象条件を考えればまずまずのところでしょう。(気温が23度くらいありました)

吉村選手は平地のスピードも一段上ですが、それ以上に障害で着地してからのスピードの乗せ方が、日本のトップクラスの中では上手ですね。石澤選手などは長身で飛越の仕方もスムーズに見えますが、着地してからの1歩、2歩でスッと吉村選手の方が前に出ます。特に水濠障害でその差が顕著に出ます。吉村にとっては大学の大先輩にあたる森選手は、(今回は走りそのものがまったく不調でしたが)相変わらず“垂直落下式”の着地で、障害のたびに止まってしまいます。女子の場合、無理に飛び越そうとしないで軽く足をかける式の飛越にした方が、着地でスピードを乗せられる場合もあるようです。この種目に本腰を入れるのならば、その辺をもっともっと研究していただきたいものです。

◇5000m
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注目は、士別大会の3000mを快勝した佐藤早也伽。ところがローズマリー・ワンジル・モニカが猛然と飛び出し、ペースメーカーのジェロティチ・ウィニー(九電工)のはるか前をスイスイと飛ばしていきます。1000mを2分57秒という、“14分台ペース”で通過すると、あとは1周72秒のラップを着々と刻んで独走態勢。
佐藤は、ターゲットタイムに即した75秒ペースをきっちり刻むPMの背後をピタリ追走して、その後に清水真帆、田村紀薫、大西ひかり、川口桃佳、薮下明音らが差なく追いかける展開。かつての実力者・西原加純は真っ先に集団からこぼれ、調子の上がらない堀優花と最下位争いです。
快調に独走するモニカの優勝は確定的となり、フィニッシュタイムの15分03秒49は彼女のPB。日本勢1番手の座を巡っては75秒ペースにしっかりハマった佐藤と川口の一騎討ち状態から、定評のある佐藤の切り替えが功を奏して、15分26秒66で2着フィニッシュ。士別の3000に続いて日本人のワンツーとなった佐藤、川口ともに、PBです。

佐藤は東洋大1年の頃から、そのベビーフェイスで一部マニアックな向きから人気を得ていた選手ですが、大学時代は鳴かず飛ばず。社会人となって2年目あたりから急速に成長を見せ、今年は初マラソンで2時間23分台と、一躍日本のホープとして注目を集めています。ひょっとすると、オリンピック戦線にまで絡んでくるダークホースとなるやもしれません。
上位陣がまずまず、実力どおりの着順となった一方で、西原・堀に代表されるヤマダ電機勢、パナソニック勢の、特に主力選手の不振ぶりが気がかりです。


◇10000m

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福士加代子(ワコール)こそDNSでしたが、前田穂南・一山麻緒・安藤友香のマラソン3人娘がさながら「3強」の様相。マータ・モカヤ(キヤノンAC九州)とジョアン・キプケモイ(九電工)のダブルPMが作るペースは3分10秒/㎞、76秒/周で、ターゲットタイムは31分40秒。3人にとっては格好の標的です。ただし、暮色に包まれてもなお20度を超える気温と、小雨もパラつく高い湿度が敵となります。
3000mを過ぎて早くも先頭はPMキプケモイと3強の4人に絞られ、ペースは設定どおりから若干アップ気味に推移して、5000mは15分49秒と期待に違わぬ展開に。カメラがしばらく下位グループを追っている間に安藤が遅れ始めて勝負は前田か、一山か?…そして今度は追走する安藤を写したりラップを記入したボードを見せたりしてるうちに、一山が脱落。(カメラワークまったく戦況を読まず)
PMが仕事を終えた8000mからは文字通り一人旅となった前田は、特にビルドアップを図るでもなく、ラストで切り替えるでもなく、まるでマラソンの最初の10㎞地点を通過するような雰囲気のまま、美しい安定したフォームでゴールを駆け抜けました。タイムはPBを39秒も更新するもので、これはまあ、従来のPBが遅すぎたというところでしょうけど、他の選手の出来具合と比較すると、好条件の下であれば31分そこそこが聞かれてもおかしくはないパフォーマンスだったと思われます。

私は、今年東京オリンピックが行われたとしても、前田選手は有力な金メダル候補だったと思っています。(もちろん、高温のレースに滅法強いという得手も考慮に入れて)ですが、MGC以降のロードシーズン、さらにこのホクレン・シリーズを見る限り、その進化ぶりはさらに続いているように見えてなりません。機会にさえ恵まれれば、世界最強の女子マラソンランナーと評価を得る日も、夢ではないのではないでしょうか。
なお、前田の優勝記録31分34秒94は、10000mのレースがまだほとんど行われていない中ではありますが、今季の世界最高記録です!
ちなみに今季第2位は、ノルディックスキー選手のテレーセ・ヨハウグ(NOR)です。(オスロDLの記事参照)
2020070806

さて次戦は7月15日の網走大会。いよいよ真打登場ということで、新谷仁美(積水化学)が同僚にして日本チャンピオンの卜部蘭とともに、1500mに出場予定!…あれ、5000に出る田中希実との対決を避けましたかね?そうだとしても、新谷の1500mというのはこれはこれで楽しみ。
他に、3000mには鍋島莉奈(JP日本郵政G.)、5000mには好調の萩谷、10000mにはワコール・トリオに加えて佐藤早也伽、川口桃佳、松田瑞生(ダイハツ)、萩原歩美(豊田自動織機)などが参戦予定です。