昨日告知した、WAダイヤモンドリーグ2020第1戦、ノルウェー・オスロ大会の主な結果です。


◇男子300mH
 ①カルステン・ワルホルム(NOR) 33" 78(WB)

単独走のワルホルムが、特殊種目の世界最高記録を樹立。
従来の記録はクリス・ローリンソン(GBR)が2002年に出した34" 48。ケヴィン・ヤングの400mH世界記録時の300mスプリットタイムは34秒1。

◇女子300mH
 ①サラ・スロット・ペテルセン(DEN) 39" 42
 ②ユエル・アマリエ(NOR) 39" 44
 ③レア・シュプルンゲル(SUI) 39" 86

女子も実力者が出場し、リオ五輪銀メダルのペテルセンが接戦を制しました。ハードル間13歩にチャレンジすると公言したシュプルンゲルは1台目でリズムを崩し、僅差ながら最下位に終わりました。

◇男子2000m/チーム・オスロ
 ①ヤコブ・インゲブリクトセン 4' 50" 01(AR)
 ②ヘンリク・インゲブリクトセン 4' 53" 72
 ③フィリップ・インゲブリクトセン 4' 56" 91
◇男子2000m/チーム・ナイロビ
 ①ティモシー・チェルイヨト 5' 03" 05
 ②エドウィン・メリ 5' 13" 12
 ③イライジャ・マナンゴイ 5' 18" 63

チーム対抗が注目されたこの種目は、どうやらチームごとに別々の場所で同時にレースを走り、3人の合計タイムを競うリモート・レースだったようです。両チームとも、2人のペースメーカーが同走して5人編成です。
ケニア・チームはナイロビ・スタジアムからの参戦。標高1800mの高地の上に雨・強風ということですから、いくら何でも不公平?
勝敗的には、インゲブリクトセン3兄弟の圧勝。コンディションの違いや展開上の機微ということもあるでしょうが、末弟ヤコブのタイムはヨーロッパ新記録ですから、文句なしですね。ちなみに大会記録は、あの懐かしいジョン・ウォーカー(NZL)が持っていた4分51秒52でした。

◇男子25000m
 ①ソンドレ・ノースタット・モーエン(NOR)
   1: 12' 46" 5(AR)

かつて瀬古利彦が世界記録を持っていた特殊種目でヨーロッパ新記録を叩き出したのは、2017年の福岡国際で「白人世界最高記録」をマークしたモーエンです。他に4人の同国選手が出ていましたがいずれもDNF。ペースメーカーだったとも考えられますが、ペース表を見るとモーエンは10000mから、ほぼ独走でこの記録に到達したようです。

◇女子10000m
 ①テレーセ・ヨハウグ(NOR) 31' 40" 67
T,ヨハウグ
 左がヨハウグ。中央はマリット・ビヨルゲン。

個人的に大注目したテレーセ・ヨハウグは、独走で自己ベスト(それまでは32分台)を達成。さすがにクロカン・スキーの世界女王ともなると、このくらいは軽い軽い、というところでしょうか。
考えてみれば、冬のスピードスケート選手が夏の自転車競技に出てくるというのは、橋本聖子大臣の例を見るまでもなく普通にあることなんですが、クロスカントリー・スキーと陸上長距離というのは、なかなかありそうで事例が少ないですね。思い出されるのは、スキーから転向して第一生命などで活躍した野尻あずさ選手くらい。クロカン・スキーでは30秒ごとのインターバル・スタートによるタイムトライアル方式で行うレースもありますから、独走はお手の物でしょう。
この記録ではまだまだ日本選手にも及びませんが、本腰を入れたらどこまで伸びるのか、トライアスロンからマラソンに転向したグエン・ジョーゲンセン(USA)などとともに、今後の動向が楽しみです。

◇男子棒高跳
 ①アルマンド・デュプランティス(SWE) 5m86
 ②ルノー・ラヴィレニ(FRA) 5m81

◇男子円盤投
 ①ダニエル・ストール(SWE) 65m92
 ②シモン・ペテルション(SWE) 64m54

フィールド注目の2種目は、ともにスウェーデン勢の勝利。この状況下で、なかなか仕上げてきていますねえ。

今大会をネット上の情報で見聞する限りでの感想ですが、「勝負と記録」の両面性を持つ陸上競技の新たな一面をプレゼンテーションしてくれたという気がします。
もちろん健全な形で競走種目が開催できればそれに越したことはありません。ですがそれが叶わない現在のような場合、単独走やごく少人数でのレースをタイムトライアル的に行うことで、新しい形の陸上レースが楽しめるのではないか、という興味です。スキーやスケートでは物理的な都合から、こうした形式のレースが主流となっていますが、それを陸上にも応用できるのではないかと。たとえばロードレースをタイムトライアルで行うことで、密集した状況を避けることができます。その形式のレースに独自の強さを発揮する選手というのも現れてくるでしょう。
リモート・レースというのは今回のように条件が違い過ぎるとあまり意味はないようですが、それでも勝敗にこだわる必要がないとなれば、それぞれのレースを満喫する姿を楽しむ、という見方もできます。
柔軟な発想で、選手の活躍の場を提示したオスロの関係者に、またそれに好記録で応えた選手たちに、拍手を送りたいと思います。