MGC02

日本国内のマラソン・シーンがここまで世間の注目を集めたのは、いったいいつ以来だったでしょうかね?まさに国民的行事となった『MGS』、素晴らしいイベントでありプロジェクトでした。
何より、男女の有力選手が全員、一堂に会するというのは史上初めてのことです。
男子だけで言えば、たとえば1979年および83年の福岡国際マラソンのように、オリンピック代表候補が全員集合して、結果的に“一発選考”で代表が決まったケースがありました。ただし、当時は国内ビッグレースの三者鼎立という状況にはなっていなかったので、福岡を事実上の代表決定レースとすることは陸連の胸先一つで可能だったのです。今は、そうではありません。その“大人の事情”に雁字搦めになった状況に風穴を開けた陸連の努力と工夫に、拍手を送りたいと思います。

先にスタートした男子は、まさかそこまではという疑念をあっさりと覆す設楽悠太のロケットスタート。「本当に中山竹通を再現するのか?」という展開にワクワクしました。私は9時10分以降はほとんど女子だけを視ていたので、中間の展開はよく分かっていませんが(まだビデオ検証をしてないのです)、次に戦況を見た時にはすでに35㎞過ぎ…疲れ切った表情の設楽に、後続の集団が間近に迫ってきているところでした。
ちょっと思ったんですが、設楽一人ではなくて、設楽と大迫傑が申し合わせるようにして並んで飛び出していたとしたら(それも付いていくには躊躇われるほどのペースで)、どうなっていたでしょうかね?やはり無理でも付いていかざるを得ないからと、服部勇馬以下の有力選手は、縦長の形状で何とか食らいつく集団を形成しますね。先頭の二人は「俺たちにいつまでも付いて来られる筈がない」とばかりにスピードを緩めない、結果的に前の方は後半暑さに全員撃沈して、最初から諦め半分にマイペースを決め込んだ後方の大穴ランナーが(例えては悪いですが、女子の野上恵子選手のように)上位を攫う、というようなことが起きたかもしれません。

それはそうと、中村匠吾(富士通)の優勝、まことに見事でした。終盤にきつい登り坂があるあのコースは、箱根の2区戸塚中継所前を思い起こさせますね。あるいは、中村と大迫の鍔競り合いは、2014年の1区の激闘を思い出させました。この時の東洋大は服部が2区で、1区は田口雅也。区間賞は日体大の山中秀仁で、中村は僅差の2位、田口が3位。大迫は中村に競り潰される形で区間賞争いから脱落し、5位でした。
箱根路を沸かせたスター選手たちがこうした激戦を再現してくれたことに、感慨を覚えます。大迫にとっては、走ったことのない2区の終盤や中村との競り合いの記憶など、気持ちの上でちょっとした不利が重なったかもしれません。
私は、中村が駒大3年生だったその年度、東京・味の素スタジアムで行われた日本選手権の10000mを現地観戦した際に、宇賀地強や深津卓也、窪田忍といった先輩・OBに交じって奮闘する彼の走りに強い印象を受け、「今年の箱根で注目は中村だ!」と周囲に語っていたのを思い出します。彼の3,4年時には、駒大は『箱根』優勝候補筆頭とも言うべき陣容を誇っていたのですが、それが叶わず、卒業後もどちらかというと停滞しているように見受けられました。

つまりその、ずっと気にかかっていた選手の一人ではあったんです。
予想大外しの言い訳です。しかしながら、印をつけた5人中4人が掠りもせずに、3位・14位・23位・25位・27位(ビリ)という体たらくでは、言い訳にもなりゃしませんな。



女子の前田穂南、という本命印は、実はかなり前から決めていました。
結果的には、2位に付けた差が3分47秒、つまりは圧倒的な力の差をもって優勝したわけです。レース展開的にどうのではなく、自力でレースを作ってのその結果ですから、現状で少なくとも夏場のレースでは実力が図抜けていることは明らかで、陸上ファンとしてそこを見抜けないでどうする、というところです。当たったから言うんですけどね。
当ブログで開陳する予想記事には、多分にヒイキ目が混じってくることは間違いありません。私にとって、松田・鈴木・福士というNHKの推す「3強」よりも、前田や安藤に対するヒイキ目が大きかった、その末の予想であったことは確かです。もしも前田彩里が万全の体調で出てきていたら、これもヒイキしてたことでしょう。
予想なんて、そんなもんです。勝負を左右する各個のコンディションや精神状態なんて、私ら外野席には全く伝わってきませんしね。

もう一人、心密かに(でもないか)ヒイキしてた小原怜選手。
4年前が1秒差、今度が4秒差。カワイソ過ぎる。
ファイナルチャレンジのターゲットタイムを見る時、男子の2時間5分49秒はなかなかに高い壁ですが、女子の2時間22分22秒はそうでもありません。現実に、これを上回るPBを持っているのが安藤と福士。松田にしても、PBを1秒でも更新すればOKなのです。
むろん、3つのレース(さいたま・大阪・名古屋)のどれかで出さなければならないとなると、本人の体調、当日の気象条件、レース展開とすべてのお膳立てが整うかどうかは神のみぞ知るところ。狙って出せるものではないでしょうが、それでも今回敗れた7人、出られなかった5人、計12人(むろん小原本人が加われば13人)の誰かがどこかのレースで出す可能性は、少なからずあります。

いやですね。毎年楽しみにしてるこれらのレースを、「記録よ、出るな出るな」と念じながら見つめなければならないなんて。
MGCの、唯一つ罪作りな処が、そこになりました。