さてさて、前回の「つづき」もアップしないわ、開幕した『U-20世界選手権』の記事も書かないわでまことに恐縮ですが、どうしても、睡眠時間を削っても書いておきたいことが起きたので、書きます。
あの新谷仁美が現役復帰、しかも復帰2戦目となった『ホクレンディスタンスチャレンジ2018』の深川大会で、5000mA組の日本人1位!タイムは15分35秒19!!
何とも嬉しいビッグニュースです。

実は新谷さん、6月9日に行われた『第264回日本体育大学長距離競技会』で3000mに出場し、吉川侑美(資生堂)に次いで9分20秒74で2位と、実に5年ぶりのレース復帰を果たしていました。
(常々この大会の結果をチェックしていながら、今回に限り多忙にかまけて見逃してしまったのは痛恨の極み)
今日行われた深川のレースでは、夕方の残照が照りつける厳しいコンディションだったように見受けられましたが、グレース・キマンズィ(スターツ)のハイペースに序盤は楽々と対応。日本勢でホネのあるメンバーはといえば、かつてのチームの後輩にあたる木村友香(ユニバーサル)くらいで、その木村のペースが落ちたと見るや一気に交わしてキマンズィを追いかける展開となり、自身も徐々にペースダウンしながらも日本勢の中ではダントツの2位でフィニッシュしました。
もちろんあの輝いていた5年前に比べればまだまだ、体つきを見ても仕上がり具合は50%といったところなんでしょうけど、全盛時には10000mを74秒ペースでグイグイと引っ張った姿を彷彿とさせる、72秒ペースでの序盤の走りは「さすが!」です。

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感想(1件)


私にとっては、大、大、大好きなランナーでした。
走る姿の美しさはもとより、日本人らしからぬ(?)自信に満ち溢れた“男前”なレースぶりに、一目惚れでした。
ロンドン五輪で“JAPANトレイン”の機関車として存在感をアピールした後、翌年に東京・味の素スタジアムで行われた日本選手権を、私ははるばる茨城から実地観戦に出向きました。(本音を言うと、桐生祥秀の出現で「100m9秒台」の機運が大いに高まっていたので、そっち目的でもあったのですが)
ホーム最前列の席で見守る私(ちゃんとTVに映ってます)の目の前で、新谷は2位以下の全員を周回遅れにするという圧巻の独走劇を演じ、名実ともに福士加代子に取って代わる日本の長距離女王の座に君臨する実力を見せてくれました。
そして、2か月後のモスクワ世界選手権で見せた、9500mまでの果敢なフロント・ラン。最後に4人のアフリカ勢に先を越されたとはいえ、30分56秒70は日本歴代3位。
ロンドンから3戦続けて夏のレースで31分00秒前後のタイムで走り、高校時代以来の「大器」はようやく世界と亘り合うレベルの力を身に着けたのだと実感できるレースでしたが、レース後の新谷は泣きべそをかき、悔しさだけを露わにしていたものです。


このレースが新谷の現役生活にピリオドを打つものになろうとは、誰が想像したでしょうか?長距離ランナーとしてはこれから円熟期を迎える25歳という年齢からも、それは耳を疑うニュースでした。
自己ベストを出したレースをラスト・ランにするなど、前代未聞のこと。逆に言えばそれほどに、新谷にとっての故障との戦いと陸上を続けることのストレスは、深刻なものになっていたということなのでしょう。
早すぎる引退…それは私に、かつて世界選手権(1997年アテネ大会)10000m銅メダルを獲得しながらいったん引退を表明した千葉真子さんのケースを思い出させ、「新谷ももしかしたら、いつか…」と淡い期待を抱かずにいられませんでした。
千葉さんのケースは故障を理由の一つにはしていたものの、実情はチーム内の不協和に本当の理由があったらしく、後年小出門下から再出発することで第2の陸上人生を成功させたことはご存知のとおり。
新谷が復帰までに5年近くの歳月を要したということは、それだけ慢性的な故障の緩和(おそらく完治というわけにはいかないでしょう)とレースへの覚悟を決めるのに、時間がかかったということだと思います。

とにかく、この日は「新谷復帰!」の朗報を心から祝わずにはいられない気分です。
かつての力を取り戻す、あるいはそれ以上の高みを目指すところまでいけるかどうかは何とも言えませんが、現在の日本女子長距離界屈指の実力者・木村友香を難なくヒネってみせた走りは、十分にその期待を感じさせるものでした。
鈴木亜由子や鍋島莉奈(ともに日本郵政G.)、松田瑞生(ダイハツ)、福田有以(豊田自動織機)などの一線級とのトラック勝負も楽しみな一方、できればマラソンで、彼女が世界を敵に回すところを見てみたいものだと思います。