あけましておめでとうございます。
このブログも足掛け3年目を迎えることになりました。ここんとこは投稿の頻度が下がって覗きに来ていただいている方々にはご迷惑をおかけしますが、何とか時間を作って続けていきたいと思っていますので、本年も変わらずよろしくお願い申し上げます。

さて、「箱根のミカタ」の構想に時間かけてるうちに、2回書いたところで年が明けちゃいました。もう間もなく、『全日本実業団対抗駅伝』がスタートを迎えてしまいます。こっちの方も何かと展望記事を書きたかったところですが、ちょっと時間的にムリ。
チーム・オーダーを見る限り、昨年の1・2位、旭化成とトヨタ自動車が一歩抜けてるかな、という感じはします。特に旭化成は伝統の純血主義を遂に放棄し、2区に外国人ランナーを起用したことで、「弱点」がなくなりました。日本記録保持者の村山紘太やオリンピック・ランナーの佐々木悟が補欠に回らざるを得ないという贅沢なメンバーで、「補欠」の5人にキャプテン丸山文裕、出口和也、有村優樹あたりを加えれば、優勝候補チームがもう一つ組めそうです。
しかし、意外に駅伝で個々の実力が発揮できていないのがこのチームの本当の「弱点」。同じような豪華メンバーだった前々回やここ数年の九州地区大会(毎日駅伝)など、勝って当たり前のレースで敗れ続けています。やってみないと分かりませんね。

ナンバー10くらいまでのチームは、どこが勝ってもおかしくないと思われます。私が今回「ひょっとしたら3位くらいまで?」と特に注目するのは、前回10位・予選会4位の日立物流。設楽啓太が加入したというだけでなく、メンバーそれぞれが実力をアップさせてきています。1区の栁利幸が、早稲田時代のようにポカをやらかさないかどうかです。
その1区には、旭化成の茂木圭次郎、トヨタの藤本拓はもとより、DeNA上野裕一郎、Honda田口雅也あたりが虎視眈々と区間賞を狙います。下位チームにも、服部弾馬(トーエネック)や遠藤日向(住友電工)といった区間賞候補がいます。面白そうですね。

あ、結局『実業団』の展望に触れちゃいました。
『箱根』については、<すべてがエース区間><クライマー/ダウンヒラー烈伝><出でよスーパールーキー>といったテーマの文章を構想してたんですけど、今回はちょっと角度を変えて、「駅伝TV観戦の楽しみ方」について、私なりの考えを披露させていただくことにします。

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◇駅伝TV中継のありがたみ

駅伝に限らずロードレース全般を、「テレビで存分に楽しむ」という文化が根付いているのは、おそらく日本だけではないか、と察します。
50年以上も前にヘリコプターを移動中継局とすることで「マラソン完全生中継」を実践している日本では、当初から「選手に先行する移動中継車から後ろ向きにカメラを据え、選手グループの正面映像をつぶさに撮影する」という独自の手法を編み出しており、これがレース全体の流れを把握するのに大いに寄与しているのです。
オリンピックのマラソン中継でさえ、1964年の東京でこの手法で中継されてから後、続くメキシコシティやミュンヘンでは要所に設置された固定カメラからの中継のみ、(次のモントリオールは記憶にない)84年のロサンゼルスは完全中継でしたが、バイクをメインとしたカメラのアングルは斜め前方や横から、あるいはヘリコプターによる上空からというものが主体でした。
また海外の中継では、レースの全容を伝える「引き」よりも選手の表情を中心とした「寄り」の映像が多く、それはそれで近年のカメラの精度をアピールするには結構なんですが、いかんせん競技の趨勢がなかなか伝わってこないのでもどかしい。また、スプリットタイムやラップタイムなどのデータ紹介も、遥かに雑です。
2台から3台の中継車を駆使し、加えてバイクからの寄り映像を交えて送り届けられる群馬や箱根路からの中継は、ロードレースが大好きな日本ならではの、創意と技術の粋が尽くされた素晴らしいTV番組だと言えます。

2時間なり5時間なりのレースの中には、じっと見ていれば素人でもそれと気づくような「変化」が次々と、予期せぬタイミングで現れます。それはアクシデントのような顕著な形をとらなくとも、ランナーの動作や表情だったり、途中のタイムに見出せる微細な合図だったり、天候の急変や沿道の観客のざわめきだったり、さまざまです。
中継車が映し出す複数の選手の動きの中から、そうしたちょっとした変化を見つけては、次の展開を想像し、結末を思い描く…駅伝の面白さの一つは、そうした楽しみが区間の数だけ繰り返されることでしょう。退屈などするはずがありません。
それを余すことなく伝えてくれる、テレビ業界の技術というものを、まずは堪能していただきたいものです。

◇ツッコミどころ満載、それもお楽しみ
いっぽうで、野球やサッカーの中継と違って、現場が少ないゆえになかなかスタッフやアナウンサーの技量が向上しないのがロードレースの難しいところで、したがって制作クルーとしては経験を積んだベテランほど貴重な戦力となるのですが、そこは会社組織の悲しさでなかなか都合よくは機能しないということになります。
バラエティ番組の感覚で妙な演出を施したり、血気に逸った若手アナウンサーの絶叫によってぶち壊しになりがちなのが、この手の中継の陥りがちな、視る側をイラっとさせるところです。
『箱根』を中継する日テレの場合、アナウンサー自身による取材体制が徹底されている社風があるのでまだ救いがある一方、『ニューイヤー』のTBSは世界選手権のレギュラーBSでありながら、いつまでたっても進歩しないところが見受けられます。

ロードレース中継を実況したり、あるいは私たちが観戦する上で最も肝要なのは、「タイムと距離」の感覚が身についているかどうかです。
たとえば、「1kmを3分ちょうどのペースで走っている」…これは、ペースとして速いか、遅いか?…
この「3分/km」というのはちょうど「60分/20km」、つまり時速20kmというスピードになるため計算がしやすく、また男子マラソンを2時間6分台で走るための平均ペースということになるので、いろいろな状況を想定しやすいんですね。100mあたりでいえば18秒ちょうどです。
「速いか遅いか?」でいえば、「条件やランナーの走力によって異なる」のが正解。
マラソンで「3分/km」であれば、上記のように日本人選手全般にとってはまずまずの好ペースながら、世界のトップランナーにとっては「遅すぎる」と感じられるでしょう。
走破距離が20km程度であれば、大学生のトップクラスにとっても「遅い」となりますが、これが箱根の山中に挑む場面であれば「あり得ないほど速い」ということになります。むろん、気温や風向き・風力などによっても大きく変わります。
このように、距離とタイムと条件とランナーの関係は常に相対的なものであり、同じコースを走ったとしても、過去のコースレコードと比べて単純に「速い」「遅い」を論ずることはまことにナンセンスな話なのです。

また、仮にある選手がある区間をコースレコードよりも早いスプリットタイムで途中地点を通過したとしても、そこからゴールタイムを予測することは、これまたナンセンス。いくらハイペースを刻もうが、いやハイペースであればあるほど、終盤にバテてしまえば簡単にkmあたり3分30秒とか4分とかに失速してしまう可能性は大きくなるのです。
こんなことは、レース経験者ならずとも分かりそうな話なのですが、どうも畑違いの場所から陸上競技の中継現場へと駆り出されたばかりの若手アナなど、その辺の感覚がまったく理解できずに「区間新は間違いありません!」などと暴走してしまうケースが、ままあります。10年ちょっと前の箱根で、
「空前絶後の区間新記録が、いま達成されようとしております!」
とアオった直後にタスキリレーが完了して、
「区間タイムは、なんとっ!…歴代7位の好タイム!」
なーんて実況をやらかした当時の若手アナがいましたっけ。

大震災このかた、「真実を報道しないマスコミ」という話題が取りざたされることが多くなりましたが、一見事実を正確に報道することが使命であるかのようなスポーツ中継でも、実は多くのウソやデマがまかり通っていますし、それが政治的トピックのようには問題視されないために、結構野放しになっていたりします。
それは送り手側の未熟さに起因するものもあれば、小さいものを少しでも大きく見せようという卑俗な意図からのものもあり、またたとえば先の見えた勝負を「まだまだ分かりません!」と実況するような、「お願いだからチャンネル変えないで」の目的から発せられるウソも数多くあります。
まあ言ってみれば、ウソをこくのは必ずしも悪意や官邸の圧力によるだけではなく、未熟な若手に経験を踏ませなければならなかったり視聴率至上命題を抱えていたりする会社組織としてはごくごく自然な成り行きと割り切って、付き合ってあげることだろうと思います。

マラソン中継などでも途中の通過時間から「ゴール予測タイム」などというものが画面に表示されることがいまだに行われていますが、あくまで目安の計算で合って、それを既定の事実のごとくにコメントするのは、時にはコメンテーターの無知なるがゆえ、また時にはこうした意図的な「ウソ」である場合もあります。
まして、毎シーズン必ず一度や二度は聞かれるのですが、「〇時間△分…」と言うべきタイムを「〇分△秒…」と単位を間違えてしばらく気付かずにいるなどというのは、スポーツ競技における計測タイムというものが脳に浸み付いていない証拠でしょう。

などなど、何かとTVから発せられる「余計なメッセージ」にいちいちツッコミを入れながら長時間の観戦を楽しむというのも、また一興です。
ウソが嫌いな陸上ファンは、常にタイムを意識しつつ選手の状態を観察することをお勧めします。画面上のタイマーを利用して(あるいはストップウォッチを手にして)後続の選手とのタイム差を測りながら見ていくと、本当のレースの動きというものが自分なりに見えてくるものですよ。