豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

2018年09月

2018シーズン“世界”のまとめ ④~女子フィールド


ここまでダイヤモンドリーグ実施種目に限定して2018シーズンを振り返ってきましたが、触れることのできなかった種目についても少々言及しておきましょう。
DL非実施種目である10000mやハンマー投、マラソン・競歩のロード種目、混成種目、リレー種目については、それぞれ試合数が少なかったり、まだ試合を残していたりと、現時点でシーズン全体を総括することにあまり意味はありません。
もちろん、世界記録が塗り替えられた男子マラソン・十種競技をはじめ、これらの種目でも例年に増して話題に事欠くことなく、五輪中間年ながら陸上競技界の盛り上がりに大いに寄与していたのは間違いないところです。それらに関しては、また個々に述べる機会もあろうかと思います。

それでは、シリーズ最後のパートとなります「女子フィールド」カテゴリについて、DLファイナルの結果をもとにまとめておきます。
※(Z)はチューリッヒ大会、(B)はブリュッセル大会のリザルト

<女子跳躍>
◇走高跳(Z)
① 1m97 マリア・ラシツケネ(ANA)
② 1m94 ユリヤ・レフチェンコ(UKR)
③ 1m90 マリー-ローレンス・ユングフライシュ(GER)

7月のラバト大会で衝撃の連勝ストップがかかったラシツケネは、ヨーロッパ選手権でもミレラ・デミレヴァ(BUL)に薄氷の勝利と、今季は「絶対女王」の名が揺らぐ場面もありました。2度にわたり女王の座を脅かしたデミレヴァの姿がなかったファイナルでは、記録は低調ながらラシツケネの完勝に終っています。
今季、記録的には2m04を筆頭に9回2mをクリアしたラシツケネの独擅場で、まだまだその優位は来季以降も続きそうです。その他では、26歳にして突如それまでのPB1m91から大幅アップの2m02を跳んだエレナ・ヴァロルティガラ(ITA)、七種競技の種目別世界最高記録を2m01にまで高めたナフィサトゥ・ティアム(BEL)の名が2mリストにあるのみ。この2人は、ラシツケネにとってデミレヴァ以上に気になるところでしょう。

◇棒高跳(Z)
① 4m87 カテリナ・ステファニディ(GRE)
② 4m82 サンディ・モリス(USA)
③ 4m82 アンジェリカ・シドロワ(ANA)

シーズン序盤は「絶不調」の苦悩を見せていたステファニディが、中盤から安定した跳躍を取り戻し、終わってみれば定位置に収まった、という結果です。
上位3名は昨年来のスタンダードですが、今季はベテランのジェニファー・サー(USA)、ニコレッタ・キリアポウロウ(GRE)、ヤリスレイ・シルバ(CUB)、あるいはリオ銅メダルのアイドル・ボウルター、エリザ・マッカートニー(NZL)といった面々が随所で上位に食い込む活躍を見せ、ゲームに厚みと彩りが増した感じがします。華やかな女子空中戦が、もっともっと盛り上がってくれることを期待します。

◇走幅跳(B)
① 6m80(+0.3) カテリン・イバルゲン(COL)
② 6m70(-0.4) シェイラ・プロクター(GBR)
③ 6m68(-0.2) シャキーラー・ソーンダース(USA)

昨年の世界選手権でしのぎを削った「4強」・・・ブリトニー・リーズ(USA)、ダリア・クリシナ(ANA)、ティアナ・バートレッタ(USA)、イヴァナ・スパノヴィッチ(SRB)の名がどれもファイナルのスタート・リストになく、率直に言ってレベルの低い戦いの中で、「鬼(たち)の居ぬ間に」とばかりにイバルゲンが三段跳との2冠を達成しました。
シーズン唯一人の7mジャンパーとなっているロレイン・ユーゲン(GBR)や好調を続けてきたマライカ・ミハンボ(GER)は下位入賞にとどまり、今季この種目の低空飛行ぶりを象徴しています。

◇三段跳(Z)
① 14m56(-0.3) カテリン・イバルゲン(COL)
② 14m55(-0.8) シャニーカ・リケッツ(JAM)
③ 14m47(+0.3) キンバリー・ウィリアムズ(JAM)

こちらは強敵のユリマール・ロハス(VEN)が3月の室内を最後に三段跳の試合に出場せず、イバルゲンの独り舞台…かと思われましたが14m台中盤の記録では意外な苦戦もやむなし、というところでしょう。ここ2年間15mオーバーが見られず、34歳になったイバルゲン、進退のはっきりしないロハス、あるいはこちらもベテランのオルガ・リパコワ(KAZ)…このあたりと好勝負ができる選手が出てこないと、この種目はしばらく地味な存在に陥ってしまうかもしれません。
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<女子投擲>
◇砲丸投
① 19m83 ゴン・リージャオ(CHN)
② 19m64 レイヴン・ソーンダース(USA)
③ 19m50 クリスティナ・シュワニツ(GER)

この種目も、今季は低調なまま推移し、ランキング(20m38)、DLともに制したのはゴン・リージャオでした。ヴァレリー・アダムズ(NZL)、クリスティナ・シュヴァニツ(GER)、ミシェル・カーター(USA)といった実力者が30代半ばにさしかかって下降線を辿っている現状では、来季のニューカマー到来を期待するしかありません。

◇円盤投
① 65m00 ヤイメ・ペレス(CUB)
② 64m65 アンドレサ・デ-モライス(BRA)
③ 64m31 サンドラ・ペルコヴィッチ(CRO)

女王ペルコヴィッチは今季開幕戦でいきなりセカンド・ベストの71m38を投擲し、その後も好調を維持して円熟期の充実ぶりを見せていましたが、ファイナルでまさかのチョンボを演じてしまい、年間チャンピオンの単独最多記録(8回)を達成するチャンスを棒に振ってしまいました。
毎試合ペルコヴィッチに続く2位の座を堅守してきたペレスが、タナボタの勝利にニンマリ、といったところです。

◇やり投(Z)
① 66m99 タチアナ・ハラドヴィッチ(BLR)
② 66m00 リウ・シイン(CHN)
③ 64m75 カーラ・ウィンガー(USA)

この種目も主役不在の低レベル混戦が続きました。その間隙を縫って、ルー・フイフイとリウ・シインの中国コンビが各大会で上位を賑わし、シーズン後半にアジア大会を制するなど調子を上げたリウがファイナルでも2位に食い込んでいます。優勝したハラドヴィッチは、やや成績にムラが大きいところがまだ「女王」の名に及ばない印象。今季ランキング首位のキャスリン・ミッチェル(AUS)がDL戦線に参加しなかったことも、今一つ盛り上がりを欠いた要因となりました。

(シリーズおわり)

2018シーズン“世界”のまとめ ③~男子フィールド


前回②のアップから少し時間が空きまして、その間に陸上月刊誌なども発売になりましたんで、DL最終戦の結果はそちらを見ていただいたほうが手っ取り早い…しかし当ブログには当ブログの意見や感想がありますんで、まあ気にせず「つづき」を書くことにいたします。
※(Z)はチューリッヒ大会、(B)はブリュッセル大会のリザルト

<男子跳躍>
◇走高跳(B)
① 2m33 ブランドン・スターク(AUS)
② 2m33 マテウス・プルジビルコ(GER)
③ 2m31 ジャンマルコ・タンベリ(ITA)
⑥ 2m26 戸邉 直人(JPN)

◇棒高跳(B)
① 5m93 ティムル・モルグノフ(ANA)
② 5m88 サム・ケンドリクス(USA)
③ 5m83 ショーナシー・バーバー(CAN)

◇走幅跳(Z)
① 8m36(+0.3) ルヴォ・マニョンガ(RSA)
② 8m32(-0.2) ラスウォル・サマーイ(RSA)
③ 8m16(+1.2) ヘンリー・フレイン(AUS)

◇三段跳(B)
① 17m49(+0.5) ペドロ・パブロ・ピチャルド(POR)
② 17m31(0.0) クリスチャン・テイラー(USA)
③ 17m25(-0.2) ドナルド・スコット(USA)

跳躍種目は、ことDLファイナルに関する限り、番狂わせの連続となりました。

男子HJは、開幕戦でいきなり2m40をクリアしたムタズ・エッサ・バルシム(QAT)がシーズン序盤は無敵の強さを誇ったものの、夏を前に足の手術のため戦線離脱。その後を承けローザンヌ、モナコと連勝して記録も2m40の大台に乗せたダニル・リセンコ(ANA)が、ドーピング検査のための所在場所報告義務違反で出場停止(昨年のブライアナ・マクニールと同じ処罰です)となり、アジア大会、DLファイナルはともに主役不在の一戦となりました。
ここがチャンスと意気込んだのが昨年の負傷から復帰してきた“半面ヒゲヅラ男”のタンベリでしたが、伏兵のスタークにあっさりと年間王者を持っていかれガックリ。
日本勢で唯一ファイナルに進出した戸邉は、2m26を一発クリアしたところで首位に立っている状況がTV画面に映されましたが、実況サイドはまったくそれに気づかず。結局一度も画面に映ることなく、6位で競技終了。「あわよくば」の大魚を逃しました。

PVでは、ルノー・ラヴィレニ(FRA)、ケンドリクス、アーマンド・デュプランティス(SWE)の「三世代対決」が盛んに叫ばれながら、ファイナルを制したのは躍進著しかったモルグノフでした。
ギリギリの12位でファイナル出場に滑り込んだモルグノフではありますが、8月のヨーロッパ選手権で6mボウルターの仲間入りを果たし、チューリッヒ大会で行われた番外戦(DL対象外のエキシビション)でも、デュプランティス以外はファイナル同様のメンバーが顔を揃えた中で優勝(5m91)しており、優勝候補の一角に急上昇していたのは確かです。優勝争いがこのレベルになってくると安定感抜群のケンドリクスといえども盤石ではないということで、男子PVは今後、ますますハイレベルでの戦国時代に突入しそうです。
年間を通しては、同じくヨーロッパ選手権でU-20世界記録を大幅に更新する6m05を征服したデュプランティスに、来シーズンのさらなる躍進が期待されます。

男子跳躍の中で唯一LJは、“本命”のマニョンガが制覇。ただし、この種目の「超新星」ファン・ミゲル・エチェヴァリア(CUB)の出場回避は残念でした。
マニョンガvs.エチェヴァリアの9mラインを見据えた戦いは、来年もフィールド最大の見どころの一つとなるでしょう。
またかつての“王者”グレッグ・ラザフォード(GBR)が引退し、男子LJは完全に新時代へと移行した感があります。

TJではDL6連覇を続けていたテイラーのホップに斬れがなく、ファイナルで意外な敗北。勝ったのが18mジャンパーのライバル・ピチャルドですから波乱とまでは言えませんが、今季のテイラーはしばしば400mにチャレンジするなどしてどこか本業は上の空、という印象があり、ファイナルの結果にもそれが反映されていたような気がします。
なお、ピチャルドはいつの間にやら、キューバからポルトガルに国籍変更しています。


<男子投擲>
◇砲丸投(Z)
① 22m60 トーマス・ウォルシュ(NZL)
② 22m40 ダレル・ヒル(USA)
③ 22m18 ライアン・クラウザー(USA)

◇円盤投(B)
① 68m67 フェドリク・ダクレス(JAM)
② 67m56 アンドリウス・グドジウス(LTU)
③ 66m74 ダニエル・ストール(SWE)

◇やり投(Z)
① 91m44 アンドレアス・ホフマン(GER)
② 87m57 マグヌス・キルト(EST)
③ 85m76 トマス・レーラー(GER)

男子SPを昨シーズン牛耳っていたのはクラウザーでしたが、世界選手権・DLファイナルともに制覇ならず、今季ファイナルに期するものはあったと思われます。しかし今回も、その世界選手権王者のウォルシュ、DL王者のヒルに屈する結果となりました。
ウォルシュは5月にPB22m67をマークして記録の面でもクラウザー(22m65)を上回り、今やこの種目の第一人者の座を完全に奪い取りました。また、昨年のファイナルで突然大幅PBの22m44をプットして番狂わせを起こしたヒルは、今年も初の22mオーバーがファイナルで出て2位に食い込み、ブリュッセル特設会場との相性は抜群です。
上位の3人はいずれも、ここ2年以内に頭角を顕した選手ばかり。この種目も新世代の競合時代となり、来季は世界記録更新の期待も高まります。

DTはレコード・ランキング(69m72)、DLスタンディングともに首位のダクレスが順当な勝利。“短距離王国”ジャマイカに新たな陸上のヒーローが誕生しました。唯一オスロで8位とチョンボを犯した以外はすべて優勝と、この種目でもかつてのピョートル・マラホフスキ(POL)やハルティング兄弟(GER)らの時代から、ページが一つめくられた感じがします。

レーラー・フェテル・ホフマンのドイツ勢3人による「90mスロー揃い踏み」で開幕(ドーハ大会)した今季、JTのツアー・チャンピオンシップを制したのは“第3の男”ホフマン、記録は「ジャスト100ヤード」でした。
ひところ記録水準が低迷していたこの種目、今や90mスローなくしては優勝は難しいという著しいレベルアップを遂げ、アジアでもチェン・チャオツン(TPE)の91m36(2017年、今季は84m60)やネーラジ・チョプラ(IND)の88m06(2018年アジア大会)と世界に伍するスローが出てきて、期待度の高かった日本勢にとっては厳しい状況となってきています。2年間不振に喘ぐ新井涼平(スズキ浜松AC )には、ぜひとも来季の巻き返しを期待しましょう。

(つづく)

男子マラソン、2時間1分台の時代来たる!


2018-09-16 22.54.48

たった今、『BMWベルリン・マラソン』の留守録を観終わったところです。
毎年のように“歴史的なレース”になっている印象の強いこの大会、今年はとうとう、人類が2時間1分台でフルマラソンを走破する様子を満喫することができました。
2時間01分39秒ーー走り抜けたのは、現在、あるいは史上最強のマラソン・ランナーとも言われるエリウド・キプチョゲ(KEN)です。ご存知リオ五輪の金メダリストで、マラソンはこれで11戦10勝・2着1回・9連勝中という33歳。スタートから一人我が道を往き、ペースメーカーが次々と脱落する中、25㎞以降はまったくの独り旅で達成した記録でした。
2着には2月の『東京マラソン』で設楽悠太(Honda)に競り負けたアモス・キプルト(KEN)で2時間06分23秒、3着はかつて唯一キプチョゲを破った男…「一騎討ち」を予想されていたウィルソン・キプサング(KEN)が2時間06分48秒で入り、2度目のマラソンとなった中村匠吾(富士通)が2時間08分16秒で4位に続いたのはなかなか見事でした。

女子は、ディフェンディング・チャンピオンのグラディス・チェロノ(KEN)が、13年間大会記録として君臨してきた野口みずきさんの2時間19分12秒を大幅に更新する2時間18分11秒で連覇達成です。
2着は2時間18分34秒でルティ・アガ(ETH)と、昨年と同じワン・ツーとなりました。PB(2時間17分58秒)の更新を公言し中盤で一時単独トップに立っていたティルネッシュ・ディババ(ETH)は、30㎞手前で失速、その後はよく粘って2時間18分55秒の3位。ここまでがコース・レコードを上回りました。

スタート時の気温が15度、ちょうど中間点のあたりから陽光がさしはじめ、後半は20度前後まで上がったのではないかと推察されます。終始無風に近い状態だったのは幸いとして、キプチョゲと女子の上位選手以外は軒並み終盤にペースを崩していることからも、気象コンディションは「絶好」とまではいかなかったのではないでしょうか。
(日本国内のレースのように集団走からのサバイバル戦の様相であれば、気象に関係なくこういうことが起こり得ますが、今回は何十人と配置されたペースメーカーに各自がそれぞれのペース設定で付きレースメイクをしていたので、この終盤の崩れは気象に一因あり?と思ったわけです)
そうした中でのキプチョゲの強さは、まさに異次元。私は(おそらく多くの方がそうだと思いますが)マラソン世界ランカーの9割近くを占めるケニア勢の誰彼がほとんど区別がつかなかったんですけれども、いやはやこの人だけは別格、という感じがします。

日本選手については国内の放送局からライブ・リザルト(インターネットで配信される速報)をチェックしつつ実況する進藤アナの情報だけが頼りで、映像はほとんど入ってこなかった中、唯一中村だけは「Fastest Japanese」のテロップとともに35㎞過ぎとフィニッシュで紹介されました。25㎞までほぼ15分/5㎞のペースを積み上げ、終盤もさほど失速しなかったのは大したものです。現時点で、設楽悠、井上大仁(MHPS)とともに、「箱根の勇者三羽ガラス」とも言うべき存在になってきましたね。
かつての「箱根のスーパースター」佐藤悠基(日清食糞G.)は大崩れこそしなかったものの、2時間09分18秒とPBに及ばず6位、上門大祐(大塚製薬)が2時間11分07秒で8位と、MGC有資格者が上位入賞を果たしています。ワイルドカード(2レース平均タイムが2時間11分以内)でのMGC出場権獲得を狙っていた神野大地(コニカミノルタ)・村山謙太(旭化成)は、ともに目的を果たせませんでした。



女子の日本人選手は、5位でゴール前に姿を現した松田瑞生(ダイハツ)を一瞬カメラが捉えかけましたが、ちょうど並走していた男子の地元選手のほうがフォーカスされてしまい、結局ほとんど映らず。松田は2時間22分23秒と、大阪での優勝タイムを更新する見事な第2戦となりました。
中盤からその松田との差を20秒程度にまで追い上げた前田穂南(天満屋)は、終盤息切れしたか2時間25分23秒の7位。ただこちらもマラソン3戦目で、安定して好成績を残しているのは立派。“マラソン界の不思議ちゃん”にも今後さらに期待です。
初マラソンの上原美幸(第一生命G.)は序盤からマイペースを守ったうえで後半ビルドアップ、2時間25分46秒で9位と、まずまずのデビューになりました。
小原怜(天満屋)は万全の状態ではないという情報もあり、中盤までは後輩の前田とタッグ戦を展開していたようですが、その後崩れて2時間27分29秒で10位。ただこちらは、ワイルドカード要件(2レース平均2時間28分以内)を満たして、新たなMGC出場権獲得者となりました。

余談ですが、TV観戦していて気になったことが2つ。

優勝したキプチョゲは、5㎞ごとのスペシャル・ドリンクを、すべて同じスタッフから手渡されていました。そのスタッフ氏、給水所でキプチョゲにドリンクを渡すと、すぐに自転車に飛び乗り、猛然とキプチョゲを追い越して次の給水ポイントへと向かうのです。これは見ていて面白かった。
ところがどういうわけか、最後の40㎞のポイントにはスタッフ氏の姿はなく、キプチョゲは自力でテーブルからボトルをピックアップしようとして失敗!スタッフ氏、自転車がパンクでもしたんでしょうかね?…

もう一つは、終始キプチョゲの後方を追走していた車に搭載された電光タイマーと画面上のタイマーとが10秒程度異なるランニングタイムを計時していたこと。コース途中に設置された固定タイマーも車と同じ時間を表示していましたから、これは画面が間違っているのかと気が気じゃありませんでした。最後、フィニッシュ・ゲート上に設けられたタイマーは画面のものと同じでひと安心です。
ふつう、TV画面を含めてすべてのタイマーはスタート・ピストルからの信号を受けて統一されているはずなのに、これはまたどうした仕組みでこんなことが起きたんでしょうかね?
どうでもいいことかもしれませんが、すごく気になりました。

2018シーズン“世界”のまとめ ②~女子トラック


続いて、女子の2018世界トラック戦線を振り返ります。
掲載するリザルトはDLファイナル(Zはチューヒッヒ大会、Bはブリュッセル大会)のものです。

<女子・短距離>
◇100m(Z)-0.5
① 11"01 ミュリエル・アウレ(CIV)
② 11"08 ディナ・アッシャー‐スミス(GBR)
③ 11"10 マリー‐ジョゼ・タ・ルー(CIV)

◇200m(B)+0.1
① 22"12 ショーナ・ミラー-ウィボ(BAH)
② 22"53 ダフネ・スキッパーズ(NED)
③ 22"64 ジャミール・サムエル(NED)

◇400m(B)
① 49"33 サルワ・エイド・ナセル(BRN)
② 50"51 フィリス・フランシス(USA)
③ 50"77 シャキマ・ウィンブリー(USA)

今季室内シーズンから女子ショート・スプリントを支配していたのがタルー、アウレのコートジボアール・コンビ。特にタルーは、前年までの“2強”=スキッパーズとエレイン・トンプソン(JAM)の低迷を尻目に白星を積み重ね、今季の女王の座を手中にしかけていましたが、ファイナルは精彩を欠いてしまいました。この2人に、シーズン中盤から急成長を見せたアッシャー-スミスを加えた3人が、100mの新たなリーダーとして並立しているという印象です。
そして、産休明けのシェリー-アン・フレイザー‐プライス(JAM)が戦線に復帰。順調にレースを消化し、ロンドン大会で久々にDLの舞台に登場(ポイント対象外レース)すると、早くも10秒台に入って健在ぶりを見せています。
トンプソン、スキッパーズ、今季いいところのなかったトリ・ボウイやイングリッシュ・ガードナーらのアメリカ勢が復調してくることが予想される来季は、激しい戦国模様となりそうな予感です。

前年200、400の二冠を制したロング・スプリントの女王・ミラー-ウィボは、今年は同日に行われた2つのレースのうちの200mを選択。万全ではないスキッパーズの他はこれといったライバルもなく、悠々と連覇を遂げました。
私には、400で優勝したナセルとの決戦を「避けた」という印象が強かったのですが、どうだったでしょうか?
20歳になったばかりのナセルは、昨年の世界選手権・ミラー-ウィボがG前で急失速したレースで2着に突っ込んできて驚きの世界デビューを飾りました。今季は6月のオスロ大会からDLに登場して金メダリストのフランシス以下に4戦全勝の後、モナコでミラー-ウィボにアタック。このレースは歴代10位になる48秒97で爆走したミラー-ウィボに僅かに及ばなかったものの、自身も49秒08のアジア・レコードをマークしました。アジア大会では男子のA.サンバに比肩する大注目株として登場し、400mで余裕の金メダル、リレーでも銀メダルを獲得しています。
今世紀2人しか果たしていない48秒台突入という会心のレースをしたモナコで0.11秒差に迫られたミラー-ウィボには、ナセルの存在が脅威と映ったに違いありません。こちらも、来年の世界選手権までの軌跡と本番での対決が、非常に楽しみになってきました。
なお、コンティネンタル杯でも400mにミラー-ウィボの出走はなく、セカンド・ベストの49秒32で優勝したナセルに続いたのは49秒62のキャスター・セメンヤ(RSA)。彼女が800の他にもう一つ狙うとしたら400なのか1500なのか、これも成り行きに注目です。

<女子・中長距離>
2018-09-13 18.38.28

◇800m(Z)
① 1'55"27 キャスター・セメンヤ(RSA)
② 1'57"86 アジー・ウィルソン(USA)
③ 1'58"49 ナトヤ・ガウル(JAM)

◇1500m(B)
① 3'58"49 ローラ・ミュアー(GBR)
② 3'58"94 シェルビー・フーリハン(USA)
③ 3'59"41 シファン・ハッサン(TUR)

◇5000m(Z)
① 14'38"39 ヘレン・オビリ(KEN)
② 14'38"77 シファン・ハッサン(NED)
③ 14'40"97 センベレ・テフェリ(ETH)

◇3000mSC(B)
① 8'55"10 ビートリス・チェプコエチ(KEN)
② 8'59"62 ノラ・ジェルト(KEN)
③ 9'01"60 ハイヴィン・キエン(KEN)


800mでのセメンヤの無敵ぶりには、もう何も言うことがありません。むしろ、これまで2位・3位の常連だったフランシーヌ・ニヨンサバ(BDI)やマーガレット・ワンブイ(KEN)のほうが息切れ気味で、上位から陥落することが多くなってきました。無敗記録を続け1分55秒台を連発するセメンヤには、いよいよ35年間破られていない世界記録更新の期待もかかります。しかし一方で、相変わらず強過ぎる彼女の性別疑惑が燻っていることも事実で、今秋にはそれに関するIAAFのルールが改定されるという情報もあります。

ここ数年、最もエキサイティングなレースが見られているのが女子1500mでしょう。昨年の世界選手権、今回のDLファイナル、ともに息を呑むほどの緊迫した熱戦が続き、今回は絶妙のタイミングでロングスパートを放ったミュアーが一昨年に続く2度目のDLトロフィーを手中にしました。
今季はリオ・ロンドンを連覇したフェイス・キピエゴン(KEN)の姿こそありませんでしたが、ミュアー、ハッサン、世界記録保持者のゲンゼベ・ディババ(ETH)、5000mから進出してきたフーリハンやジェニファー・シンプソンのアメリカ勢、そしてセメンヤと、タレントは実に多彩です。来年ドーハでの“決戦”も楽しみにしましょう。

5000mは昨年のロンドン金メダリスト・オビリが、たまに取りこぼしもありながら女王の座をキープしました。今季はディババに精彩なく、2年前の五輪で猛威をふるったアルマズ・アヤナ(ETH)もお休み。そうした中で、着々と力をつけてきているアメリカ勢に、来年は注目してみたいと思います。

今季、女子トラックのMVPは、文句なくDLモナコ大会3000mSCで大幅に世界記録を更新(8分44秒32)したチェプコエチということになるでしょう。
昨年のロンドンでは、コースを間違えたり転倒したりと涙の独り芝居を演じてしまった彼女ですが、もともとケニア選手には珍しい(?)きれいなハードリングには定評のある選手。昨年の「5強」の様相から、一歩・二歩、抜け出す存在となりました。
前世界記録(8分52秒78)保持者のルス・ジェベト(BRN)は、今季1月のクロスカントリー大会で優勝した後は音沙汰がなくなり、どうやら故障休養中かと思われます。
新たに8分台へ突入したジェルト、どうしても突入できない実力者キエン、またロンドン金・銀メダルのエマ・コバーンとコートニー・フレリクス(ともにUSA)、若手のセリフィネ・チェスポル(KEN)と、この種目もまた、多彩です。

<女子・ハードル>
◇100mH(B)+0.1
① 12"61 ブライアナ・マクニール(USA)
② 12"63 ケンドラ・ハリソン(USA)
③ 12"64 ダニエレ・ウィリアムズ(JAM)

◇400mH(Z)
① 53"88 ダリラ・ムハンマド(USA)
② 54"21 シャミーア・リトル(USA)
③ 54"38 ジャニーヴ・ラッセル(JAM)

近年最も人気の高い華やかな種目となっている100mHでは、昨年ドーピング検査義務違反により出場停止になっていたブライアナ・ローリンズ改めマクニールが復帰。リオ五輪金メダルの実力者ぶりを如何なく発揮して12秒36(+0.6)でランキング・トップに立ち、ツアー・チャンピオンも手中にしました。
昨年来、世界新記録をマークした2016年シーズンの切れ味を失っているK.ハリソンは今季もモヤモヤした状態が続き、DLファイナル、コンティネンタル杯ともに「大試合に弱い」ところを露呈してしまった感があります。
長らくトップ集団にいたドーン・ハーパー-ネルソンこそ今季での引退を表明したものの、アメリカ勢は相変わらず人材の宝庫で、しばらくはマクニール、K.ハリソン、シャリカ・ネルビスらによるせめぎ合いの様相が続きそうです。

400mHは実力ナンバーワンのムハンマドが今一つ安定感を欠き、またアメリカ勢2番手のリトルに成長ぶりが伺えた分、混戦模様となりました。ラッセルを含めた3人が、今季のランキング上位記録をほぼ独占する中、52秒75でトップに躍り出たのが19歳のシドニー・マクローリン(USA)です。3年前のU-18世界選手権優勝者で今年の全米学生チャンピオン。DL初見参は来年までのお楽しみとなりましたが、おそらく台風の目となるはずです。

(つづく)

2018シーズン“世界”のまとめ ①~男子トラック


またまた長~い投稿サボリ期間を経過するうちに、『IAAFダイヤモンドリーグ・ファイナル』さらに『IAAFコンティネンタル・カップ』をもって、海外ではおおむねトラック&フィールド・シーズンが終了してしまいました。
開設以来、これらビッグゲームの結果速報やTV観戦記に注力してきた本ブログといたしましては、更新ままならぬ昨今の事情は無念の一言…せめて今シーズンの「総括」くらいはしっかりと記録しておきたいところです。
今年はオリンピックも世界選手権もないということで、陸上界の注目イベントはDLとコンティネンタル杯、そしてアジア大会やコモンウェルズ・ゲームズなどの地域大会に分散しました。
特にDLの場合、選手個々のさまざまな事情があって、世界大会のように有力選手が全員一堂に会するというところまではいかないものの、シーズンを通しての「世界」の勢力図を評定するには最も拠り所となる大会と言ってよいでしょう。
ということで、ここでは『DLファイナル』(8月30日チューリヒ大会・31日ブリュッセル大会)の結果をもとに、男女各種目の2018シーズンを振り返ってみたいと思います。

<男子・短距離> ※(Z)はチューリッヒ大会、(B)はブリュッセル大会での実施
◇100m(B) -0.3
① 9"79 クリスチャン・コールマン(USA)
② 9"93 ロニー・ベイカー(USA)
③ 9"94 ヨハン・ブレイク(JAM)

◇200m(Z) -0.2
① 19"67 ノア・ライルズ(USA)
② 19"98 ラミル・グリエフ(TUR)
③ 20"04 ジェリーム・リチャーズ(TTO)

◇400m(Z)
① 44"80 フレッド・カーリー(USA)
② 44"93 ネイサン・ストローザー(USA)
③ 44"95 マシュー・ハドソン‐スミス(GBR)

3種目とも、アメリカ勢の完全勝利という結果になりました。

「ネクスト・ボルト」争いが注目された100mでは、シーズン中盤までのWLを9秒88で分け合っていたライルズとベイカー、2人の新進気鋭が中心でしたが、それまで鳴りを潜めていた昨年の世界選手権銀メダリスト・コールマンがDL第13戦のバーミンガム大会で突如復活。ライルズを破り、ファイナルでは歴代7位タイとなる9秒79を叩き出してベイカー以下に大差をつけ圧勝してみせました。
結果的に、100mで今季9秒7~8台で走ったのは、コールマン、ベイカー、ライルズ、マイケル・ロジャーズのアメリカ勢4人だけ。ボルトをはじめとしたジャマイカ勢に対し劣勢が続いていた状況を、完全に覆した感があります。

一方の雄・ライルズは100mでの“決戦”を見送り、「こちらが専門」と主張するかのように200m一本でのファイナル出場、今季4度目となる19秒6台での圧勝となりました。7月のモナコ大会で記録した19秒65(+0.9)は非常にハイレベル。しかしこの種目では3月に19秒69(-0.5)をマークしたクラレンス・ムニャイ(RSA)が一度もDLに出場しなかったために勝負付けが済んでおらず、早くも来季世界選手権での対決が待たれます。
昨年の世界王者・グリエフは、ライルズにこそぶっちぎられましたが、各大会で実力者ぶりを如何なく発揮していたのが印象的でした。

400mはランキングのトップ6がファイナル不出場またはDNF(スティーヴン・ガーディナー=BAH)となり、7番手のカーリーにツアー・チャンピオンの座が転がり込んだというところです。
この種目のWLは、43秒61のマイケル・ノーマン(USA)で、19秒84(-0.6)でパリ大会を制した200mともども、「ロング・スプリントは俺に任せろ」といった勢いが感じられます。今季音沙汰のなかったウェイド・ヴァンニーケルク(RSA)への第一挑戦者と言っていいでしょう。ガーディナーはファイナルで途中リタイアしてしまいましたが、画面から伺える限りでは軽症の様子で、こちらも来季の活躍が期待されます。
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<男子・中長距離>
◇800m(B)
① 1'44"72 エマニュエル・コリル(KEN)
② 1'45"21 マルシン・レヴァンドウスキ(POL)
③ 1'45"28 ファーガソン・ロティッチ(KEN)

◇1500m(Z)
① 3'30"27 ティモシー・チェルイヨト(KEN)
② 3'31"16 エライジャ・マナンゴイ(KEN)
③ 3'31"24 アヤンレー・ソレイマン(DJI)

◇5000m(B)
① 12'43"02 セレモン・バレガ(ETH)
② 12'45"82 ハゴス・ゲブリウェト(ETH)
③ 12'46"79 ヨミフ・ケジェルチャ(ETH)

◇3000mSC(Z)
① 8'10"15 コンセスラス・キプルト(KEN)
② 8'10"19 ソフィアン・エルバカリ(MAR)
③ 8'13"22 エヴァン・ジャガー(USA)

全般的に、中距離はケニア、長距離はエチオピアと、勢力図がくっきりとしてきたのが2018シーズンの様相です。
王者デヴィッド・ルディシャ(KEN)がセミ・リタイア状態となっている現在、800mでは今季DLで負けなしのWL=コリルが一歩抜け出したようです。DLはケニア勢が大挙して出場するためなかなか他国の付け入る隙がありませんが、記録的にはナイジェル・アモス(BOT)、クレイトン・マーフィー(USA)などがランキング上位に頑張り、またこの種目を得意とするポーランド勢などの活躍もあって、まだまだ混戦状態のカテゴリと言えそうです。

1500mもDL5戦全勝となったチェルイヨトが、記録的にも3分28秒41となかなかのタイムでトップにあって、昨年の世界選手権ではマナンゴイに僅かに及ばなかった位置関係を完全に逆転しました。
アフリカ勢以外では、フィリップとヤコブのインゲブリクトセン兄弟(NOR=次男・三男)の健闘が光っています。
ともに1995年生まれのコリルとチェルイヨトが、中距離界の新たなリーダーに躍り出た1年となりました。

5000mでは絶対王者のモハメド・ファラー(GBR)が去って、そのファラーに最後の世界大会で土をつけたムクタル・エドリス(ETH)の天下になるかと思われましたが、今季のエドリスは終盤のペースアップについて行けないというレースが多く、代わって頂上に上り詰めたのが弱冠18歳のバレガでした。ファイナルで記録したタイムは歴代4位で、ケネニサ・ベケレの世界記録まで僅か5秒少々。早くも“新皇帝”の誕生を予想する声が高まっています。
バレガの台頭にあおりを食ったのが、ポスト・ファラーの座を秘かに狙っていたケジェルチャです。ローザンヌ大会では傍らを追い抜こうとするバレガと接触し、思わず相手のパンツを掴んで引き留めようとする(?)醜態をさらし(妨害行為でDQ)、雪辱を期したファイナルでも完全に力負け。長距離界随一のノッポ選手に、今後巻き返しの余地はあるでしょうか?

3000mSCの王者・キプルトは、今季なかなか調子が上がらない様子で、惨敗するレースもしばしば見られたものの、さすがにファイナルへ向けて仕上げてきました。
ところがこのレースでは、序盤でシューズが片方脱げるという大アクシデント発生!ハードルを跳び越え水濠に着水するレースを片足ハダシで走り切るというのはそれだけでも想像を絶する苦境ですが、大本命のピンチを察した他の選手が優勝を意識して牽制状態になったせいか、さほどペースが上がらなかったことがキプルトに幸いしました。今季好調のエルバカリが「もらった!」とばかりに放ったスパートを、鬼の形相で追い込みフィニッシュ寸前でうっちゃってみせたキプルトの勝負根性は、見事でした。さすがにレース後は、裸足の片足を痛そうに引きずっていましたが。
今季この種目で8分を切ったのはエルバカリ一人のみ(DLモナコ大会・7分58秒15)で、キプルトの、またファイナル3位となったジャガーの悲願である7分台突入は、またもや「おあずけ」となったようです。

<男子・ハードル>
2018-09-13 12.05.39

◇110mH(B)-0.1
① 12"97 セルゲイ・シュベンコフ(ANA)
② 13"10 オーランド・オルテガ(ESP)
③ 13"35 ハンスル・パーチメント(JAM)

◇400mH(Z)
① 48"08 カイロン・マクマスター(IVB)
② 48"10 カルステン・ワルホルム(NOR)
③ 48"73 ヤスマニ・コペリョ(TUR)

リオ五輪、ロンドン世界選手権と世界をリードしてきたオマー・マクレオド(JAM)が今季も序盤は好調を続けてきましたが、ローザンヌで5着と大敗してから歯車が狂ったのか、ファイナルには姿を見せませんでした。
代わってツアー・チャンピオンに輝いたのは、ロシアのシュベンコフ。ファイナルでのタイムと圧勝ぶりも見事でしたし、ランキングでも12秒92(+0.6)で2位のオルテガに0.16秒もの大差をつけています。マクレオドが健在でも、このレースには勝てなかったように思われます。
ただ、ここ数年華やかな話題に少々欠けるのがこの種目。上位の顔ぶれに変化がないことや、3年続けて12秒台が一人だけという状況が、それを物語っています。若手の台頭や少なくとも数人が12秒台で競うシーンを見たいと願う一方、今なら進境著しい日本勢にもチャンスの芽があると言えそうです。

400mHは、何と言ってもアブデルラーマン・サンバ(QAT)。男子全種目を通じて、今季最も輝いたアスリートと言ってよいでしょう。
400mHを始めたのはいつからか不明、公式記録は昨年からのものしかありません。それでいきなりロンドン世界選手権で7位というのも今思えば見事、しかも終盤まで優勝争いを繰り広げながら、最終ハードルにつまづいて転倒しかかっての順位です。それでも、この時点では無名に近い存在だったのは確かなこと。今季の大飛躍を誰が予測し得たでしょうか。
4月に南アフリカの大会で47秒90をマークしたのを皮切りに、以後DL6戦全勝、アジア大会、コンティネンタル杯と制して今季は通算9戦負け知らず。しかも史上2人目となる46秒台突入(46秒98=DLパリ大会)、一番悪い記録が緒戦の47秒90というのですから、この種目ではエドウィン・モーゼス以来の絶対王者ぶりだったと思います。
そのサンバ、アジア大会のスケジュールを優先して何とDLファイナルは不出場。同日にジャカルタで4×400mリレーに出場し、金メダル獲得の立役者となりました。その後サンバは9日後のコンティネンタル杯でも47秒36の大会新で2位に1秒以上の大差をつけ、連戦にもビクともしないタフネスさを見せつけて鮮烈なシーズンをまとめました。

サンバのいないファイナルにいきり立ったのが、ワルホルム。何せ今季は常に前にサンバがいて、しかもゴール前に引き離されるという屈辱の連続で、2017年世界チャンピオンのプライドをズタズタにされてきています。鬼の居ぬ間に、ではないでしょうが、とうぜんここはツアー・チャンピオンのことしか念頭になかったはず。
しかし、ファイナルのワルホルムは見た感じ、どうやら調子が下降気味だったか、終盤の競り合いに勝つことができませんでした。結果的にはマクマスターがV2達成、下馬評に上らなかった前年チャンピオンが最後の最後に意地を見せました。ワルホルムはコンティネンタル杯でも3着に敗れ、屈辱のままシーズンを終えることとなりましたが、彼自身、今季PBを大きく伸ばしているのは、サンバという目標が出現したからこそでしょう。
2年前のオリンピック・チャンピオン、カーロン・クレメント(USA)はファイナルに現れず、かつてのハードル王国・アメリカが両種目ともに精彩を欠いているのは一抹の寂しさを覚えます。

(つづく)

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