豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

2018年02月

ピョンチャン五輪のミカタ ⑤~ノルディック複合に、日はまた昇るか!?



“本業”の陸上競技のほうでは、『全日本実業団ハーフマラソン』『延岡西日本マラソン』なんてのが行われた日曜日でしたが、どうも結果はパッとせず、ハーフで日本人1位になった村山紘太(旭化成)も何となく煮え切らないレースに終りました。
先週から今週にかけてエリート・レースが集中した九州、中国四国地方は風花舞うお寒い気候で、ちょっとランナーたちの気勢が削がれたような感もあります。
女子の10㎞になかなか面白いメンバーが揃っていたんですが、結果は福田有以(豊田自動織機)が木村友香(ユニバーサル)に28秒差をつけてのブッチギリでした。

さて、すっかり始まってしまっているピョンチャン・オリンピックは第4日目に突入。
ここでご紹介したスピードスケート、ジャンプ、クロスカントリーもひととおり緒戦が行われて、我が日本選手はまだこれといった成果を挙げていないという状況。(髙木美帆の3000m5位入賞、小林陵侑のノーマルヒル7位、石田正子のスキーアスロン14位、いずれもまずまずの結果だとは思いますがね)
「陸上競技ファンが見るべき冬の競技」という視点で私なりの「ミカタ」を語ってきたわけですが、「氷上のトラック競技」=スピードスケート、「雪上の跳躍種目=スキージャンプ」「雪上のロードレース」=クロスカントリー・スキー…とくれば、残るは一つ。
「雪上の混成競技」=ノルディック複合ですね。

◇「雪の混成競技」勝者は“King of Ski”
冬のスポーツには「バイアスロン」という混成競技もありますが、こちらはスキーと射撃というまるで異なる畑のものをいっぺんにやっちゃおうということで、趣旨としては「近代五種競技」に近い。どちらも、戦士の技量比べというところから発祥しているものだと思われます。
デカスロンやヘプタスロンがあくまでも陸上競技の中の競走種目・跳躍種目・投擲種目の混成競技であるように、ノルディック複合もまたノルディック競技の中の、「走る」スキーと「飛ぶ」スキーの組み合わせです。(「アルペン複合」という種目もありますが、こちらはダウンヒルレースの形態を変えた2種目を組み合わせただけで、これまたノルディック複合やデカスロンなどの趣旨とはちと違う)

以前は
「瞬発力を競うジャンプと持久力を競うクロスカントリー、2つの相反する種目を組み合わせた究極の冬季スポーツ。これを制する者こそ“King of Ski”に相応しい」
なーんて言われたもんですが、現在のノルディック複合はジャンプは1回しか飛ばないし、クロスカントリーも10㎞という短い距離(団体では5㎞)で集団走からのスプリント勝負が普通。つまり、速筋派が絶対的に有利な瞬発系スポーツと言えます。
え、昔はそうじゃなかったのかって?
昔はですね、ジャンプが「3飛躍2採用」、つまり1人が3本飛んで、ポイントのいい2本を持ち点にしました。団体も同じです。クロカンは15㎞、団体は1人10㎞×3人です。
とても1日では消化しきれないので、1種目を2日に分けてやっていました。
しかも、ジャンプの得点をクロカンのタイム差に換算する方式が今とは違い、ジャンプで大きな差がつきやすかったんですね。どうかすると、後半のクロカンでどんなに頑張っても到底逆転不能というような大差ができました。

で、日本が団体で2連覇を飾った1994年リレハンメル大会の後に、団体の方式が変わり(3人制から4人制へ)、さらに得点換算方式が変わりました。
「日本があまりにも強過ぎるので、ヨーロッパ勢に有利になるようルールが換えられた」
などと被害妄想意識の強い意見がおバカ・スポーツマスコミを賑わしましたけど、それはどうでしょうかね?
リレハンメルの時など、日本が2位以下にジャンプで7分もの大差をつけてしまったために、後半のクロスカントリー・リレーの中継では、延々と2時間以上にわたり、独走する日本選手と、はるか後方で見えない前を追うノルウェー選手の姿ばかりが映し出されていたんですよ。日本人以外が見たら、面白くも何ともなかったでしょう。FIS(国際スキー連盟)としたら「どげんかせんといかん!」と思うのは至極当然だと思うのですよ。

会場で見るほうとしたって、1つのレースが2日がかりで行われるのでは通して見るわけにいかない観客もいるでしょうし、選手にとっても負担です。
「1日で、それも2~3時間くらいで完結するようにしましょうや」
「そうすると、ジャンプは1本、クロカンは10㎞でいいですな」
てな具合に、今の形が出来上がってきたんだと思います。全員がジャンプを跳び終えるのに1時間弱。少し休憩と準備時間をとって、クロカンが全員ゴールするまで30~40分。トータル2時間半もあれば、1回のトーナメントは終了です。これなら、選手は連戦・転戦にも余裕で耐えていけます。

ポイント換算も、現行ではジャンプの1ポイントがクロカンで4秒のスタート時差。1本のジャンプで2位に10点差をつけたら大したもんですが、それでもリードは40秒に過ぎません。団体戦になるとさらに1ポイントあたりの時差換算が少なくなり、50点差をつけてようやく1分少々ということになります。クロカンの走力は結構個々に差があるので、1分差くらいならあっさりと逆転も起こり得ます。
多くの場合、ジャンプで上位を占めた10人前後がすぐに集団になって、そこからは駆け引きを伴うスリリングなスプリント合戦への準備が開始されます。
むしろ、ジャンプの強弱はあんまり関係ないじゃないか、と思わされることもあるのですが、そこはスタート時差は選手の戦略を微妙に揺らがせるといったこともあって、なかなか面白い影響を及ぼすのですよ。
一つ言えるのは、今のノルディック複合は、スプリントが強くないと勝てないということ。ジャンプで後手を踏まない瞬発力、ゴール前の叩き合いに負けないスパート力、その2つがKing of Skiの絶対条件です。


◇“複合ニッポン”再興の旗手・渡部暁斗

かつて日本には荻原健司というKing of Skiがいて、世界選手権優勝2回、W杯総合3連覇、オリンピックでは個人のメダルこそ逃したものの団体連覇のエースとして君臨していました。
脇を固める存在にも、阿部雅司、河野孝典、三ケ田礼一、荻原次晴とワールドクラスの選手を豊富に揃え、1990年代は日本コンバインド界の黄金時代でした。
2000年代に入って一時期凋落の一途をたどった日本が、世界選手権で久々に団体金メダルを獲得したのが2009年。この時のエースはクロスカントリーに絶対の強さを誇った小林範仁で、メンバーの中にはやはりクロカンに強い、若き渡部暁斗の顔がありました。


その渡部暁がソチ・オリンピックでは個人NHで銀メダルを獲得。オリンピックの個人メダルは、リレハンメルでの河野に続き2人目の快挙となりました。
W杯では2011-12シーズンから6シーズン続けて総合2位または3位を続け、今季はピョンチャン前の前半戦ですでに4連勝を含む5勝をあげ、トップに立っています。

この種目ではここ数年、ドイツが圧倒的な強さを示し、主要大会で全種目制覇、表彰台独占といった縦横無尽ぶりを発揮してきました。
ところが今季はエリック・フレンツェル、ヨハネス・リュゼク、ファビアン・リーズルといった主力が今一つ精彩を欠き、相変わらず層の厚さは誇っていますが独走状態にはなっていません。
もう一つの複合王国・ノルウェーは、クロカンに絶対的な強さを持つマグヌス・モーアン、ミコ・コクスリエンといったあたりが全盛期を過ぎた感があり、これもベテランのヤン・シュミド、若手のヨルゲン・グラーバク、エスペン・アンデルセンらが渡部を追っています。
あとは、ビッグゲームに力を発揮してくるオーストリア勢とフランス勢。かつて絶対エースのハンヌ・マンニネン(昨シーズンから現役復帰しています)を擁し強国の一画にいたフィンランドはここ数年の低迷からようやく上昇気配を見せ始めたところで、個人・団体ともに、優勝争いは日本を含めた5か国の戦いと見られています。

ノルウェー勢は全般にクロカンの強い選手が多いのですが、どちらかというと持久系の強さで、ジャンプで出遅れた選手が後方から一気にまくってくる走力は迫力満点ですが、スプリント合戦になると少々決め手を欠く部分があります。その点、現代の複合競技にマッチしたスプリント力に秀でたドイツ勢が、ジャンプでもクロカンでも隙のない強さを発揮してきたところがあります。
今季に限って言えば、この点で最も隙がないのが日本の渡部。
大いに期待が持てそうです。

夏冬通じてあらゆるオリンピック競技の中で、唯一男子だけで行われているのがノルディック複合、まさに「オトコの競技」です。今回は、個人2種目(NHとLH)、団体の3種目が行われます。団体はツブが揃いきれていない日本にとってはやや苦しいかもしれませんが、個人での渡部暁斗は大注目。
かつて隆盛を誇った競技が一旦どん底状態にまで凋落し、再び復活した例としては、競泳や男子体操が思い出されます。
「日はまた昇りました!」こんなフレーズを、ぜひともアナウンサーさんに叫んでもらいたいところですね。

ピョンチャン五輪のミカタ ④~雪上のロードレース=クロスカントリー・スキーの魅力



開会式に先立って、早くも一部競技が始まりました。
とりあえずはジャンプNH予選で日本選手全員が本戦に進出で、ほっと一安心。(強豪国から何人も出場するW杯と違って、まかり間違っても50位を外す状況ではなかったですね)

さて、陸上競技ファンならば絶対に病みつきにならずにいられない競技、それがノルディックスキーのクロスカントリーです。
残念ながら日本人選手が活躍することは少なく、それゆえ地上波放送ではあまり取り上げてもらえないのがシャクですが、BSでしっかり全種目見せてくれますから、よしとしましょう。
かつては「雪のマラソン」などと表現されたりしましたが、今ではスリリングなスプリント種目などもあり、バラエティに富んだメニューがお楽しみいただけます。
まずは、そんなクロスカントリー・スキーのミカタからひとくさり。

オリンピックで行われるクロスカントリーには、男女それぞれ6つの種目があります。
個人種目が「スプリント」「男子15㎞/女子10㎞時差スタート(タイムトライアル)」「男子30㎞/女子15㎞スキーアスロン」 「男子50㎞/女子30㎞マススタート」。
団体競技が「チーム・スプリント」「男子40㎞/女子20㎞リレー」です。

また、クロスカントリー・スキーには基本的に両脚を平行に滑らせる「クラシカル走法」と、スケーティングが認められる「フリー走法」の2つの走法によるレースがあります。登り坂やカーブで滑り止めをかける時以外はスキーを開かないように走法を制限されるクラシカルのほうが当然スピードが出にくいのですが、こちらを得意とする選手も多くいます。
「スキーアスロン」というのは前半でクラシカル走法を、後半でフリー走法をと、途中でスキー・ストックを交換して行う種目で、またリレーは前半の2走者がクラシカル、後半2走者がフリーで滑ります。
その他の各種目で両走法の部門を別々に実施するわけにもいかないため、大会ごと(オリンピックおよび世界選手権)にどちらの走法かが交互に割り振られます。今回のピョンチャンでは、個人スプリントと男子50㎞/女子30㎞がクラシカルで、チームスプリントと男子15㎞/女子10㎞がフリーで、それぞれ実施されます。

Crosscountry

◇華麗で超過酷なスプリント種目
2000年代になってから導入され、人気を集めている種目が「スプリント」です。
陸上のロードレース並みの距離をこなす従来の種目形態を一新し、少人数でスタジアム近辺の短いコースを1周するレースで、予選からの勝ち抜き方式でチャンピオンを決めるイベントです。
名称はスプリントでも、その実態は陸上競技で言えば中距離競走に当たります。1周の距離は、男子は1.6㎞から1.8㎞、女子は途中をショートカットした1.3㎞から1.5㎞ほどになり、上位の走破タイムはおおよそ3分から4分と、これはまさに陸上の1500mに近いと言えましょう。
オリンピックなどでは、まず時差スタート・タイムトライアルによる予選を行い、上位30人が準々決勝に進出します。準々決勝からは1組6人の一斉スタートでレースを行い、5組各上位2名+タイム上位2名(ラッキー・ルーザーと呼ばれます)の12名が準決勝へ進出、準決勝の2組各上位2名+ラッキールーザー2名が決勝に進出します。

つまり、決勝進出者は合計4本のレースを、おおむね3時間ほどの間にこなすことになります。
陸上ファンの皆さん、考えてもごらんなさい。1500mを1時間おきに4本、全力で走らされることの地獄を。
もちろんスキーとランニングでは違うのでしょうけど、それでもたぶん、この世のスポーツ競技の中で最も過酷なことを平然とやっているのがこの種目だと、断言してよろしいかと思います。
前回のソチでは、決勝に進んだ時点ですっかり疲労困憊してしまった1人の選手が序盤から大きく遅れ、それでも途中で先頭を争っていた3人の選手が玉突き衝突を起こすアクシデントが発生して、一人遅れていた選手が銅メダルに食い込むという、ちょっと珍しいドラマが見られました。


チーム・スプリントというのは、1か国2人の選手が個人と同じコースを1周ずつ交互にリレーし、合計6周走って争う種目です。こちらは準決勝‐決勝というスケジュールで、一人あたり1日6本!個人レースとは違って多少のペース配分はするでしょうが、それでも負けずに過酷な種目です。
せいぜい4分のインターバル・タイム(相棒が滑っている間の休み時間)に懸命にマッサージをしたりバイクを漕いだりと、とにかく皆さん乳酸を散らすのに必死な光景が映し出されたりします。なーにがスプリントだ、と突っ込みたくなりますよね。

いずれにしろ、トラックの1マイル競走が欧米で人気があるように、このあたりの時間で勝負が決まることや、間違いなくゴール前の競り合いがヒートアップすること、観覧席の設けられたスタジアムからレースの大部分を直接見ることができることなどで、今やクロスカントリーを代表する人気種目と言っても言い過ぎではありません。
日本には少し前まで、女子で世界選手権で入賞を果たした夏見円、男子でも恩田祐一といった名選手がいましたが、今回は代表を送ることができませんでした。

刻々と経過する時間との戦いになるタイムトライアル・レース、クラシカルとフリーでの得手・不得手の思惑が交錯するスキーアスロンにも、それぞれ味わい深い見どころがあります。
またリレーは、まさに雪上の駅伝。エース・スキーヤーによるゴボウ抜きや思わぬ選手の活躍、勝負に徹した駆け引きなど、個々の実力の合計値だけでは予測がつかないところは、陸上の駅伝と同様に面白い部分です。
そして、最長距離レースである男子50㎞/女子30㎞は、まさに雪のマラソン。特に男子50㎞は所用時間も2時間少々とマラソンに匹敵し、オリンピックでも世界選手権でも大会最終日に行われるメイン・イベントとして位置付けられます。


◇この選手に注目!

クロスカントリーはノルウェーの国技とも言うべき競技で、毎回すべてのレースで赤と紺色のレーシングスーツが猛威を振るい、観客席では牛の角を象ったヴァイキングの帽子を被るサポーターたちが気勢を上げます。
選手層が厚いだけでなく、代々「金メダル・ハンター」と呼ばれる大エースを輩出しており、近年ではゴール前の競り合いに圧倒的な強さを誇るペテル・ノートグが最長距離からスプリントまでを牛耳っていました。
そのノートグも全盛期を過ぎて今季はW杯ランキングからもその名は消え、代わってエースの座に就いたのが22歳のヨハネス・クラーボ。すでにW杯通算12勝をあげていますが、オリンピックはデビュー戦となります。

ノルウェーに続くのがスウェーデン、フィンランドといった北欧勢。今回は国としての参加はありませんがロシア勢も強力です。
個人で力を持っているのが、スイスのダリオ・コログナです。前回ソチでは2種目で優勝しており、30歳を過ぎて迎えた今季も好調で、直前の15㎞フリー・マススタートを制しています。

女子でもノルウェーの強さは別格で、長らく女王の座に君臨するマリット・ビヨルゲンは、オリンピックで通算6個、世界選手権では18個の金メダルを持っており、スプリントから30㎞、団体戦まですべての種目でタイトルを持っています。まもなく38歳となる今季はランク10位と今一つながら、本番までには確実に調子を上げてくるでしょう。
ビヨルゲンの後継者と期待されていたテレーセ・ヨハウグがドーピングで出場停止中となり、2番手は今季ランク1位のハイディ・ヴェン。これに、ハロッテ・カラー(SWE)、ジェシカ・ディギンズ(USA)、ケルトゥ・ニスカネン(FIN)などが絡みます。オーストリアの美人選手テレサ・スタッドロバーにも注目です。

日本からは、男女1人ずつの代表派遣という過去最小の陣容となりました。
男子の吉田圭伸は31歳。近年50㎞で常に終盤まで先頭集団に食い下がる走りを見せており、2002年ソルトレークシティ大会以来待望の入賞まで、あと一息というところです。
女子の石田正子はビヨルゲンと同世代の大ベテラン。吉田同様に長距離とクラシカルを得意にしており、2010年バンクーバーでは50㎞クラシカルで5位入賞を果たしています。今回はその種目がありますしスキーアスロンにも進化を見せていますから、年齢的にも最後のチャンスとなるでしょう。
ただ、せめて男女のリレー・チームが組めるくらいには選手を派遣できるようになってほしかったところ。2人のベテランが抜けた後の日本クロスカントリーが心配です。

ピョンチャン五輪のミカタ ③~スキージャンプと日の丸飛行隊


あくまでも当ブログは陸上競技専門ブログ、という観点からしますと、ウィンタースポーツの花・スキージャンプは「雪上の跳躍競技」。しかし私がついつい連想してしまうのは、やり投という種目なんですね。
斜め上に向かって力強く飛んでいくやりの姿は、ジャンプ選手のスキー板を横から見たところによく似ていませんか?どちらも上空を漂う上昇気流を捉え、空気に逆らわず叩かれず距離を伸ばしていく飛行曲線、向い風大歓迎という共通点を持っています。今でこそジャンプはHS(ヒルサイズ)130m以上の大きな台で行われることが一般的になりましたが、ノーマルヒルならば飛距離的にもやり投と近いものがあります。

ヨーロッパで非常に人気のある競技ですが、日本人にとっても毎回とても楽しみに見ることのできる種目です。
その割にはまだまだ競技の細かいところが伝わっていないように思えますので、まずはその辺から「ミカタ」を。
Noriaki Kasai


◇ジャンプの“常識”を確認しよう
オリンピックで行われるのは、男子ラージヒル(LH)とノーマルヒル(NH)、団体LH、女子NHの4種目です。
世界選手権ではこのほかに男女混合団体NHが実施されており、またワールドカップ(W杯)では男子フライングヒル(FH)、女子LH、女子NH団体などが行われることもあります。逆に、W杯で男子NHの大会が行われることはありません。男子NHは国際的にはオリンピックと世界選手権だけで実施される、少々特殊な種目となっているのです。
言うまでもなくノーマルヒルとラージヒルの違いはジャンプ台の規模によるもので、HS85mから109mまでのものがNH、110mから145mまでがLHと分類されます。標準的にはNHがHS100m/K点90m前後、LHはHS135m/K点120m前後の台が多い中で、ピョンチャンの会場はNHがHS109m(K点98m)、LHがHS140m(K点125m)と、いずれもかなり大型です。

ちなみに、昔のジャンプ競技では「極限点」を意味する用語として「K点(Kriticher Punct)」という言葉が使われており、着地点の傾斜が緩くなり「これ以上飛ぶと危険」とされる地点を意味していました。K点を超えることすなわちビッグジャンプであり、日常生活でも破格のパフォーマンスを「K点超え」などと例えるようにもなりました。
現在ではこの意味で使われているのが「ヒルサイズ」です。「K点」はKonstruktions Punkt、つまり「建築基準点」の略語で、要はそのジャンプ台の標準的な飛距離、飛距離点の基準値(60点満点)となる距離を指す用語です。



「ノーマルヒルはパワーよりも技術で跳ぶ日本人選手が得意としている」と、どうかするとスポーツ・マスコミなどでも勘違いする向きがあります。1972年の札幌オリンピックで、70m級(現在のNHに相当)は表彰台を独占したのに90m級(同じくLHに相当)は入賞もできない惨敗に終わったことで、そういう整理の仕方が根強く残ってしまったのでしょう。
日本人がどちらに向いているかはともかく、実際のところはNHが瞬発力を要求されるスプリント種目、LHが技術系種目と考えるのが妥当です。助走スピードが速いLHのほうがより正確で熟練したサッツ(踏み切り)を必要としますし、飛行時間が長い分、空中技術によって飛距離を伸ばす余地も大きくなるからです。
日本人選手で比較してみますと、垂直跳び80㎝以上という強靭な脚力を武器にしていた原田雅彦さんはどちらかと言うとNHを得意とし、技術力に定評のあるレジェンド葛西紀明選手はNHよりもLH、さらにはフライングをより得意としています。原田さんなどは、陸上の跳躍種目をやっていたとしても世界的な選手になったのではないか、と思われます。



ジャンプ競技は「飛距離点と飛型点の合計で争われる」というのが常識ですが、現在はこれにウィンドファクター、ゲートファクターという2つの得点要素が加わります。
「向い風大歓迎」と言ったように、ジャンプには上昇気流に変化する向い風が大いに有利に働きます。出場者全員が一斉に跳ぶわけではないので、どうしても飛躍順によって条件の有利・不利が生じてしまうため、これを解消する目的で導入されたのが、台の7か所に設置される風速・風向計によって瞬時に風を測定しこれをポイントに換算する、ウィンドファクターです。TVの画面右下に赤いマイナス表示で数字が出れば向い風、緑色のプラス表示なら不利な追風だったということです。これによって風に助けられた大ジャンプはその分得点を差し引かれることになりますが、選手の多くは「それでも向い風に吹いてほしい」と思うそうです。また、それほど強い風ではなくても、あまりに条件が違う場合は競技が中断されることがあります。

ゲートファクターとは、スタートゲートをずらすことによって助走路の長さを変えた場合に、その変え幅によって得点をプラスマイナスする措置です。
実力的に下位と見られている選手が大きなジャンプを続けた時、そのままでは上位の選手がヒルサイズをオーバーする危険なジャンプをしかねない、あるいは逆に軒並み距離が出ずに競技が盛り上がりを欠く、そんな場合に、競技の途中でジュリー(審判)の判断により助走路を短くしたり長くしたりして助走スピードを調整するのです。選手サイド(判断するのはコーチ)がヒルサイズ・オーバーを懸念して自らゲートを下げる場合もあります。この場合はヒルサイズの95%以上を跳ばないと、ゲートファクターによる加点は得られません。
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◇最後に笑うのはテレマーク

見ていていちばんよく分からないと言われるのが、飛型点です。
単純に「ピタッと決まった美しいフォームで飛ぶ」のが必ずしも高得点になるわけではありません。
まず、少なくともK点超え以上の大きなジャンプをすること。次に着地で正確なテレマーク姿勢(両腕を左右に両脚を前後に開いて軽く膝を曲げた姿勢)を入れること。これによって、1審判あたり18.0以上の飛型点が付けられるようです。HSオーバーのビッグジャンプで着地を決めたならば、多少空中でローリングしようとも19点くらい出ることもあります。少しでも着地でふらついたり腰が落ち過ぎたりすると、18点は望めません。まして両脚を揃えた姿勢だと、大きなジャンプでもせいぜい16点止まりということになります。
審判5人中3人の点を採用(最高点と最低点をカット)しますから、飛距離2点の違いは計6点となり、飛距離にしてLHでは3mの差になります。接戦となった時にこれは大きい!

また、TV画面には、いま飛んでいる選手がここまで飛べばトップに立つ目安となるというバーチャル・ライン(実際に緑色のビームを出して観客にも見せられるようになっている会場もある)が表示されますが、あれはおそらく「飛型点18点平均」を想定して算出された距離だと思われます(確認していないのですが、私の観戦経験上)。したがって、ラインを超えたかに見えても飛型点が悪くてトップに立てないということは、しばしば見られます。
その意味でも、「テレマークが入るかどうか」は大きな見どころになります。

まあ、スキージャンプを観戦する上での基礎知識といったら、こんなところでしょうかね。技術的なことは、私にも解説不能ですんで(笑)。



◇日の丸飛行隊、発進!

さて、それではピョンチャンでの日本選手は、どうでしょう?
男子のほうは残念ながら、御大の葛西紀明が近来にない絶不調。ソチの後もW杯最年長勝利記録を更新し、通算500試合出場という空前絶後の大記録を樹立するなど、レジェンドの名にふさわしい活躍を続けてきていたのですが、今シーズンは上位30人が進出する2回目にも進めない試合が多く、現在ランク27位と重症です。45歳という年齢的なことを言ってしまえばそれまでなんですが、不得意なNHでは下手をすれば明日の予選敗退という最悪の事態もあり得るかと。
葛西とともに長年「助さん・格さん」的な存在だった2人も低迷中。伊東大貴は開幕戦で負傷してつい10日ほど前に戦線復帰したばかり、ピョンチャンはほぼぶっつけで臨みます。竹内拓も、ソチの前に発病した体調が一進一退ということもあって、思うような成績を残せていません。
今季W杯初戦で初勝利、現在もランク8位と独り気を吐いている小林潤志郎、その弟・陵侑に期待がかかりますが、正直なところ、団体でもメダルまでは厳しいところでしょう。

ソチの2冠王、カミル・ストッフ(POL)がその後2シーズンは低迷していましたが、昨季から今季にかけてはまたきっちりと調子を上げてきました。今年の4ヒルズ・トーナメント(年明けをまたいでドイツ・オーストリアで行われる、いわゆる「ジャンプ週間」)では史上2人目の全勝優勝を飾っています。ただピークがそこに来てしまった感もあり、連続2冠へ向けてはさらなる調整が求められます。
スキージャンプの勢力図は、短い時とともに猫の目のように変わります。つい2年前までは、ペテル・プレブツ(SLO)とゼベリン・フロイント(GER)のマッチレースだと思っていたら、昨シーズンはストッフの巻き返しに、落日のオーストリアで孤軍奮闘するシュテファン・クラフトの争い。そして今年はストッフのほか、リヒャルド・フライタークなどのドイツ勢やノルウェー勢が好調なようで、ひところシャンツェを席巻する勢いだったスロベニア勢はもっか低空飛行中…。
つまりまあ、ピョンチャン本番の帰趨も何とも言えません。常に前向きな葛西の言動にも、一抹の期待を寄せないこともないですね。



◇髙梨はもう勝てないのか?

そうなると、頼みはやはり女子か、ということになるのですが…。
前回ソチで海外ブックメーカーからも「オッズ1.4倍の大本命」とされながら、まさかの4位に終った髙梨沙羅が、その後再び無人野を往くがごとき独走状態を続けていたのが、昨季終盤以降、W杯でまったく勝てなくなってしまいました。
グレゴア・シュリーレンツァウアー(AUT)の持つ通算53勝の記録に僅か20歳で追いつき、近い将来にはスキー競技全体のW杯勝利記録であるインゲマル・ステンマルク(SWE)の86勝をも追い抜くのではないかと思われていたのに、今季の女子W杯を見ていると、このままもう髙梨は勝てないのではないかと思えてくるほどに、今季は様子が違ってしまっています。

いま、女子の世界をリードしているのはマーレン・ルンビ(NOR=昨年までは「ルンビュ」と呼称されていました)とカタリナ・アルトハウス(GER)の「2強」。これに続く3番手、4番手が日本の髙梨と伊藤有希です。
とりわけ10戦7勝、2位3回のルンビの強さは圧倒的です。髙梨が調子を崩しているというよりも(本調子にないのは事実でしょうが)、完全に世界が髙梨に追いつき、追い抜きつつあるのが今年の情勢なのです。
さらに驚いたことには、故障で戦線を離れていたダニエラ・イラシュコ・シュトルツ(AUT)が先月末に復帰してくるや、2強をまとめて破って優勝してしまいました。(この大会に日本選手は不参加)過去には髙梨にとっての唯一のライバルと言われていたイラシュコの参戦は、髙梨のクリアすべきバーがさらに上がったことを物語ります。

ソチで金メダルを獲り、その後2回の世界選手権にも優勝しているカリーナ・フォークト(GER)の存在が、逆に髙梨にとっての勇気の拠り所となるかもしれません。なぜなら、フォークトは過去にW杯で2回しか勝ったことがなく、表彰台も数えるほどにしか経験していない選手だからです。ここ1年近く勝ち星に見放されているからといって、本番では十分にチャンスがあるということです。
もちろんフォークト自身、その類まれなる勝負強さをもって今回も「本命」に推す向きはありますし、例年スロースターターの彼女が今季は開幕から好調を維持しているのも不気味です。

日本の2枚看板と呼ばれるまでに成長した伊藤有希も、有力な金メダル候補の一人であることは間違いありません。2度の世界選手権でフォークトに次ぐ銀メダル。着地姿勢の上手さには定評があり、またピョンチャンの女子バッケンレコード(ジャンプ台記録)である111mを昨年のW杯で飛んだように、一発のビッグジャンプも持っています。
そういえば、プレ・オリンピックとして行われた昨年のW杯ピョンチャン大会では、第1戦で伊藤が優勝し、第2戦で髙梨が通算53勝目を挙げたのでした。日本勢にとって、相性のいい台なのだと思うことにしましょう。

ある調べによれば、日本語の歌の歌詞で最も多いフレーズは「翼(を)ひろげ(て)」なんだそうです。葛西の独特の空中フォームのように、日本選手が大きく翼を広げてピョンチャンの空に舞う姿を楽しみにしましょう。

ピョンチャン五輪のミカタ ②~スピードスケート・後篇


「氷上のトラック競技」スピードスケートは、陸上競技になぞらえることのできる部分がたくさんあるのですが、それ以上に密接な関りを持っているのが、自転車競技です。
最高スピードが近いことはレース展開や戦術に多くの共通点をもたらしますし、使う脚部筋肉の部位も似通っているところから、スケート選手は自転車をトレーニングの重要なパートに組み入れています。
スピードスケートの選手が自転車競技でも活躍する例は少なくありません。
日本人選手で夏冬のオリンピックに出場した選手のうち、女子では現参議院議員の橋本聖子さんが冬に4回、夏に3回オリンピックに出場しているのをはじめ、関ナツエさん、大菅小百合さんなども、いずれも自転車競技で夏冬出場を果たしています。男子ではこういう例はありません(陸上短距離の青戸慎司さんがボブスレーで夏冬出場しています)が、ソルトレイクシティ・オリンピックの短距離2種目に出場した武田豊樹選手は、今や競輪界の押しも押されもせぬトップスターです。
海外選手でも、夏冬でメダルを獲得したクリスタ・ローテンブルガー(GER)や、オランダのボス兄弟などが有名です。

そして、自転車競技を参考に生まれた種目が、2010年から正式種目となった「チーム・パシュート」と今回からの新種目「マススタート」。オリンピックでは行われませんが、ワールドカップではチーム・スプリントなる種目も行われています。

自転車のチーム・パシュートは4㎞の距離(標準的なトラック16周)、1チーム4人、3番目の選手のゴールタイムで争われます。これに対しスピードスケートでは、男子がトラック8周、女子が6周、1チームは3人で、最後尾3番目の選手のタイムをとります。「パシュート」というのは「追い抜き」と訳されますが、本来ホームとバックの対角でスタートした2チームのうち、どちらかがもう一方のチームを追い抜いた時にそこで勝負が決まる、つまり「追いかけっこ」をするニュアンスからそう呼ばれています。実際には、半周の差を詰めて相手を追い抜くほどチームの力量に差があるようなことは、ほとんどありません。
マススタートは、自転車競技のポイントレースとスクラッチをヒントにルールが決められたようです。今後は、より長い距離のレースが検討されるかもしれません。

◇リレーと同じ、団体レースの妙技を見逃すな
さて、今回のオリンピックでメダル量産を期待される日本の女子スピードスケートの中でも、最も大きな期待がかかっているのがこの「チーム・パシュート(団体追抜き)」です。
個人レースでは圧倒的に強いはずのオランダをはじめ、ドイツ、カナダ、ロシア、韓国といった強豪国を相手に、今季ワールドカップでは3戦3勝、それもすべて世界新記録! 「まだまだ進化の途中」と言いながらも、従来の世界記録を5秒も更新し、2位以下には常に3秒前後の大差をつけての圧勝を続けています。

ソチ・オリンピックで銅メダルマッチに敗れて4位となった日本は、翌シーズンの世界距離別選手権でオランダを破って(同走ではありませんでしたが)金メダルを獲得するビッグ・アプセットを達成し、続く2015-16、2016-17シーズンと2年連続4戦3勝でW杯総合優勝、現在W杯6連勝中。
中長距離には異次元の強さと選手層を誇っていたオランダを差し置いてのこの勝ちっぷりには、世界中が瞠目しています。

個々の力では見劣りのする日本チームが、なぜこんなに強いのか…?
おや、なんだかどこかで聞いたようなフレーズですね。そうそう、我らが陸上男子400mリレーの強さと同じく、団体レースにおける日本ならではのチーム・プレイなくしては、この成績は残せないのです。


自転車でもスピードスケートでも、平地で時速60㎞前後の猛スピードで進むレースは、「空気抵抗との闘い」が最大のテーマとなります。
たとえば競輪というプロスポーツは、2人から4人の“味方”どうしが「ライン」と呼ばれる一列棒状のフォーメーションを形成して、他グループとの駆け引きを展開します。ツール・ド・フランスなどの長距離ロードレースでも、一人のエース選手を勝たせるためにチームメイトがさまざまな戦術を駆使してサポートしたり、集団から抜け出した逃げグループが、敵どうしでも協力し合って後続を引き離すべく先頭を交代しながらスピードを維持するといった光景が当たり前に見られます。
そうした「無駄な空気抵抗を避けてレースをする」技術が最大限に発揮されるチーム戦が、チーム・パシュートという種目なのです。
チームパシュート

具体的には、3人の選手が縦に一直線に等間隔で並び、手足のリズムをシンクロさせることで、2番手・3番手の選手は抵抗を相当に軽減することができます。また、いちばんチームのスピードが低下すると言われる「先頭交代」の瞬間をいかに効率よく行うかで、タイムロスを防ぐことができます。
リレーのアンダーハンド・パスと同じように、こうした緻密なテクニックを磨き上げることに関しては、日本人はお手のものなんですね。「オランダに同じことされたら勝てなくなるじゃないか」と思う人もいるでしょうけど、真似しようとして一朝一夕にできるものではない、ということなのでしょう。

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◇「大本命」の中核・髙木姉妹

もう一つ、日本チームが今季オランダ以下に圧倒的な大差を築くようになった大きな要因として、エース選手である髙木美帆、そして絶妙のコンビネーションを見せる姉の髙木菜那の存在があります。

髙木美帆はご承知のように、2010年バンクーバー・オリンピックに中学生で代表となり、チーム・パシュートのメンバーにも選出されました。この大会で日本チームは決勝でドイツを僅差に追い詰め銀メダルを獲得するのですが、予選からすべて田畑眞紀・小平奈緒・穂積雅子が固定で出場したため髙木にメダルは授与されず、先輩たちに3つのメダルを掛けられて慰められる光景が話題になりました。
次のソチ大会には姉の菜那が出場したものの、スランプに陥っていた美帆は代表落ち。しかし前述の世界距離別選手権・チームパシュートで菜那とともに金メダルメンバーとなったことが一つの転機となり、ここ1、2シーズンは個人でも飛躍的にレベルアップを果たしました。
昨シーズンにはW杯アスタナ大会で1000mと1500mに初優勝、アジア大会1500m優勝、世界距離別1500m銅メダル。そして今シーズンに入って1500mではW杯4戦全勝、自己記録を4秒も縮める躍進ぶりで、堂々とこの種目の優勝候補ナンバーワンに躍り出てきたのです。
W杯では3000mでもカルガリー大会で大幅なPBとともに初優勝を飾り、今や個人の実力としてもオランダ勢に一歩も引けを取らない大エースへと成長しました。

日本チームが2分50秒87という破格の世界新記録を樹立したソルトレイク大会では、「3人全員が少なくとも1周は先頭を滑る」というルールのもと、実質髙木美がスタートとフィニッシュで合計4周近く先頭を務め、大黒柱ぶりをフルに活かす作戦をとりました。
そして、常に美帆とともにチームの中にあり、姉妹ながらまるで異なる体格をものともせず、一糸乱れぬシンクロぶりを披露するのが髙木菜那。言葉にしなくとも通じ合える存在がチームメイトにいることが、美帆にとってどれだけ精神的な支えとなっているかは測り知れません。

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2015年に世界の頂点に立った時のメンバーは、高木姉妹に1500mと1000mを得意とする菊池彩花。スケート界では有名な「菊池4姉妹」の一人で、妹2人もショートトラックでピョンチャンに参加します。これに中長距離の実力者・押切美沙紀を加えた4人が不動のメンバーでした。
昨シーズンを故障のため棒に振った菊池に代わってメンバー入りしたのが21歳の佐藤綾乃。
押切も一時期故障で戦列を離れたため、当初はやや力不足だった佐藤はレギュラーに昇格。今季、3度の世界新記録のうち1回目と3回目はトリオの一角を担い、個人種目でも3000mとW杯初優勝も経験したマススタートで堂々の代表権を獲得しています。髙木美帆と同様、まさに「チームレースの研磨が個人をも強くする」という、男子ヨンケイ・チームと同じ現象が起きています。
4人目の代表は、W杯2戦目で世界記録メンバーとなった菊池。髙木姉妹、佐藤とともに、世界に冠たる日本人のチームプレイを見せつける顔ぶれが揃いました。


◇指導者変わればこうも変わる!

ここでもう一つ、自転車競技とスピードスケートの共通点をご紹介しましょう。
前のオリンピック(ソチとリオデジャネイロ)を終えて、ともに惨敗の成績に終わった2つの競技団体が、示し合わせたかのように優秀な外国人コーチを招聘し、同時に強化システムの刷新を図りました。

日本スケート連盟が招いたのが、オランダ人のヨハン・デビット・コーチです。
優れたコーチング理論や科学的手法の導入のみならず、ナショナルチームとしての活動を徹底する強化方針が功を奏し、日本のスピードスケート、特に女子、その中でもパシュート・チームは僅か4年の間に飛躍的にレベルアップを遂げました。

スケートに少し遅れて同じような改革に着手した自転車競技でも、ケイリンなどのスプリント種目でブノア・ヴェトゥ、チーム・パシュートなどの中長距離種目でイアン・メルビンというコーチの手腕によって、昨秋からのワールドカップでは複数の優勝者を出すなど、見違えるほどの活況ぶりを呈し始めているのです。

指導者が違うとこうも変わるものか、という実例が、2つの競技で同時進行的に注目を浴び、そして結果を出し続けています。我が陸上競技界も、マラソンなどに多少の改善は見られるとしてもなお残る旧態依然とした体質を一刻も早く見直していただけるよう、ぜひ一考を願いたいものです。

◇注目はこの日!主役はニッポン??
中距離の大エース・髙木美帆は、早くも競技初日の10日(土)に3000mに登場。今季W杯で1勝しておりこの種目でもメダルの期待がかかりますが、まずは肩慣らしの気分でリラックスしてレース慣れするにはちょうどいい日程編成です。
その2日後が、個人の大本命種目1500m。頂点に立つ可能性は短距離の小平奈緒と同等くらいに高いと思いますが、猛威を振るったW杯シリーズからしばらく間が空いているため、この時間を利用して前回表彰台を独占したオランダ勢が調子を上げてくることが予想されます。簡単にはいかないでしょうが、もし金メダルということにでもなれば、日本のスピードスケート界にとっては清水宏保以来2人目、中距離種目では初めてということになります。
さらにその2日後・14日(水)に小平との接戦が予想される1000mがあり、19日(月)にパシュートの準々決勝、21日(水)にその準決勝・決勝が行われます。
3日間とか4日間にスケジュールが凝縮されるW杯や世界距離別選手権に比べて、実に理想的な、ゆったりとしたスケジュールです。

最終日の24日は髙木菜那と佐藤綾乃が出場する新種目マススタート。
20名ほどの出場者が一団となって4周ごとの中間ポイント地点を通過しながら、リンクを16周する長距離レース。
最終的にメダリストはゴールした順番で決まります。
2人1組で滑る通常のスピードスケートとは異なり、レース中の駆け引きが大きなウェイトを占めることになります。1か国の出場は2人までですが、その2人がいかに連携してレースを進められるかが結果に大きく影響する、独特の種目です。
その点、髙木菜那のレース巧者ぶりが如何なく発揮される種目で、過去には妹・美帆はもとより、佐藤とも絶妙の連携を組んで、いずれかが好成績を収めるという結果に大きな役割を果たしています。美帆に比べると一般個人レースの成績はパッとしませんが、スピードスケート史上に残る名バイプレーヤーとして、伝説を残してもらいたいものです。

さあ、短距離の小平と合わせて、ここは6種目でのメダル、大いに期待しちゃいましょう!

(えっ!?)特集・ピョンチャン五輪のミカタ ①~スピードスケート・前篇


突然ですが、陸上競技専門ブログのはずなのに、来週開幕するピョンチャン・オリンピックのこと書きます。

私は、夏のオリンピックと同様に冬のオリンピックも大好きです。
考えてもごらんなさい。陸上競技が好きだったら、陸上を氷上や雪上に変えただけのスピードスケート、ノルディックスキーなどを見る視点は、トラックレース、ロードレース、跳躍種目を見るそれとほとんど変わらないし、氷や雪ならではの面白さも満載。少しもおかしなことはないでしょう?
あとは、それぞれの競技を見ていくうちに得られる知識やアスリートの情報を、少しずつ蓄積させていくだけのことです。陸上競技に比べてもふだんのメディア露出は多いとは言えないので、オリンピックの時くらいしか見ない、という方が多いと思いますが。

ということで、これから開幕までの間、主だった競技のミニ解説や見どころといった私なりの「ミカタ」を、ご紹介していきたいと思います。
あ、私は採点競技には基本、あんまり興味がないので、フィギュアスケートとかスノボ、フリースタイルスキーなどの「クルクル回って高得点!」系のものはスルーのつもりでいます。そっち方面の情報は、どうか他でお探しください。

今回のピョンチャン大会では、過去に例がないほど日本選手の活躍が期待される種目が目白押しにあります。
過去、日本勢が最も多くのメダルを獲得したのは地元開催の1998年・長野大会で10個(金5、銀1、銅4)。前回の2014年・ソチ大会はそれに次ぐ好成績で、8個(金1、銀4、銅3)を獲得しています。
おバカなマスコミのようにメダルの数をどうこう語るつもりはありませんよ。でも今回は金メダル争いに絡む可能性がある種目が、フィギュアスケート(男子および団体)、ノルディック複合(個人2種目および団体)、スキージャンプ(女子)、スノーボード(男子ハーフパイプ、ビッグエア、女子スロープスタイルなど)、フリースタイルスキー(女子ハーフパイプなど)、カーリング(男女)と、次から次へと思い浮かびます。
とりわけ、優勝候補の大本命を複数種目で抱えるスピードスケートの女子が、今大会では最大の注目を集めるカテゴリーとなることは間違いないでしょう。

これまで、オリンピックにおける女子スピードスケートのメダル獲得は、1500mで橋本聖子の銅(1992年アルベールビル)、5000mで山本宏美の銅(94年リレハンメル)、500mで岡崎朋美の銅(98年長野)、チームパシュート(穂積雅子・小平奈緒・田畑真紀)の銀(2010年バンクーバー)と通算4組しかないところ、今回1大会だけでその数を上回りそうな勢いがあります。どうかすると6種目で、「金メダル」のチャンスがあるんですよ。

◇スピードスケートの花=スプリントのミカタ
その女子の中でも、絶対エースの名を欲しいままにする活躍を続けているのが、500mと1000mの金メダル候補筆頭・小平奈緒選手(相沢病院)です。
過去2度出場したオリンピックでは、前述のように2010年にチーム・パシュートで銀メダルのメンバーになっているものの、個人種目では入賞が精一杯でした。
ソチ大会後に単身でのオランダ長期滞在を敢行し、優れた指導のもとで飛躍的に力をつけた結果、2014-15年シーズンにはワールドカップ500mで総合初優勝、昨シーズンから現在に至るまで、500mでは国内外で24連勝という無敵の強さを続けています。サブ種目の位置付けだった1000mでも、昨年末に世界新記録を叩き出すなど今季4戦3勝(1回は転倒して最下位)と、世界トップの座を揺るぎないものにしました。
パシュートの銀メダルメンバーだったように、もともと中距離をメインとしていたほどの持久力があり、その持ち味が1000mでの開花を呼んだものです。


さて、小平が「大本命」として臨む500mといえば、スピードスケートの中で最も人気があるスプリント種目の花形であり、また日本としても過去に清水宏保や岡崎朋美をはじめ多くのメダリストを輩出している、得意種目です。

ここで、スピードスケートの基本的なルールや進行方法について、ざっと説明しておきましょう。
1周111.12mのトラックを回るショートトラックをも含めて「スピードスケート」と呼ぶ場合がありますが、通常はロングトラックで行われるレースのカテゴリーを指します。
ロングトラック・スピードスケートのトラックは、1周何メートルだかご存知ですか?
「陸上と同じ400mでしょう、常識ですね!」
…惜しい!
内側のレーン(インナーレーン)の内側ラインぎりぎりを計測することを1周の距離とするならば、実は400mに少々足りません。
Speed Skating Long Track

これが、スピードスケートの国際大会が開かれる標準的なトラックの平面図です。(ISU=国際スケート連盟のルールブックより)
陸上競技のそれに比べると直線部分が長く、その分カーブがきつくなっているのがお解りでしょうか。

従来から行われている500m、1000m、1500m、3000m(女子のみ)、5000m、10000m(男子のみ)の各種目では、すべて2人の競技者が1組となってインナーレーンとアウターレーンに分かれてスタートし、バックストレート(図では上の直線部分。ここにはインとアウトの境界線がありません)に差し掛かるごとに、レーンを入れ替わって滑走します。図では、濃い青で描かれた部分(通常は練習用のトラックとなります)の外側に描かれている点線が、ゴール地点(400mという文字が見えます)をインで通過した選手が1周するルートになります。
つまり、選手は1周する間に必ず2つのカーブをイン~アウト、またはアウト~インと、交互に回ることになります。これによって、1周する距離が正確に400mになるように、また双方の選手がインばかり、アウトばかりを周るということがないように、トラックが設計されているのです。
したがって、ずっとインレーンの内側ぎりぎりだけを周るとすれば、距離は400mよりもかなり短くなります。今回やはり日本チームの金メダルが期待されている女子チーム・パシュートはトラック6周で争われますが、この種目の場合は個人レースのようなイン・アウトの区別がなく、ずっとインレーンの部分を滑ってもよいことになります。だから、「6周すなわち2400mの距離で争われる」などという説明をする人がいますけれども、それは間違いです。また、今回からの新種目・個人マススタートは16周で争われますが、インナーレーンのさらに内側の練習トラック部分までを使って行われますので、1周の距離はさらに短いものになります。

ただ、スピードスケートにおける最大速度は陸上競技と比べものにならないほど速いので、選手は小さなカーブで遠心力と戦いながら最短距離を狙って滑るわけですが、スピードの効率を考えた場合にどうしてもカーブの出口では外側へ大きく膨らむラインを滑る(自動車のドライブ用語で言う「アウト・イン・アウト」ですね)ことになります。500mで第2カーブをインナーレーンで滑る選手が、直線の入口でアウターレーンまではみ出してしまうような光景はしょっちゅうです。(アウターレーンの選手を妨害しない限り、失格にはなりません)
したがって実際には、特に短距離では、1周で滑る距離は400mよりも長くなっていることが多いようです。
ちなみに、1周400mという距離は、レーン内側の境界線から50㎝外側のラインを計測し、バックストレートで入れ替わる際の斜めに進む分もちゃんと計算に入れてトラックが設計されています。(陸上競技ではこれまでにもご紹介したように、トラックを形成する縁石の外側30㎝を計測して400mになるよう設計されています)


トラックの構造をお解りいただいたところで、500mではゴールラインのさらに100m手前からスタートし、直線を3回、カーブを2回走る「1周と4分の1」で競われる、というのがご理解いただけるかと思います。
ここで素朴なギモン…「500mでは、インとアウトの入れ替えが1回しかない、それは不公平なことにならないのか?」
鋭い!その通りです。
つまり、インからスタートした選手は第1カーブ(陸上で言うと第1コーナーから第2コーナー)をインで周り、第2カーブ(同じく第3・第4コーナー)をアウトで周る、アウト・スタートはその逆、となります。スタート直後の第1カーブとゴール間近の第2カーブでは、その意味合いがまるで違ってくるので、どっちをインでどっちをアウトで周る方が有利なのか、選手によっては大いに気にすることになりそうです。
500mのインスタートとアウトスタートでは、「まったく同じ条件のレースをすることにはならない」という意味で、公平とは言えない側面があるのは確かです。

むかしは、「よりスピードに乗る反面、脚が疲れてくる第2カーブをアウトで周るイン・スタートの方が有利」という俗説がありましたが、実際のところはカーブワーク自体はどちらでも大差なく、バックストレートで前に目標を捉え、位置関係によっては風除けにも利用できることから、アウト・スタートを好む選手の方が圧倒的に多いようです。(第1カーブの距離の差によって、バックではイン・スタートの選手の方が先行する形になるため)
この“不公平”を解消するために、1998年・長野から前回のソチまでは、500mのレースをイン・アウトそれぞれのスタートで2本滑り、その合計タイムで競う形がとられていました。しかし、「スプリントの王者は一発勝負で決めることがふさわしい」という理念から、また競技時間短縮の意味合いもあるのでしょう、今回からは以前のように、どちらかのスタートで1本勝負という形に戻されました。
トップクラスの選手には「どっちがいい」などというこだわりはないのが普通で、ホンネではあったとしても決して外には漏らさないでしょう。インとアウトではっきりと成績に差がある、というデータも公表されていません。見る方としても、あんまりそこで気を揉まない方がよろしいかと思います。

500mとともに「スプリント種目」に分類されるのが1000m。「スプリント選手権」という大会では、500・1000を各2回ずつ滑って、その合計ポイント(1000mのタイムを2で割ってポイント化する)で競われます。
500から10000までの6種目のうち、唯一直線の中ほどにゴールが設定されています。これは、陸上競技の400mレースのようにコーナーからスタートすると、非常に加速がしにくいというスケート競技ならではの事情によるもので、バックストレートの中間あたりをスタート地点としています。
それでも、イン・スタートとアウト・スタートでは短い直線部分にも差をつけてスタートさせなければならないため、500m以上にイン・アウトに“不公平”が生じます。まあ陸上の400mとか400mリレーを見慣れている身としては、「それくらい気にするなよ」と言ってあげたいところですね。
500mを得意とするスプリンターと、1500mを主戦場にする中距離スケーターの間にある、非常にスリリングな距離感の種目と言えます。

◇「頂点」極めるか、無敵の小平奈緒
両種目ともに現状では「無敵」の小平選手ですが、もちろん「絶対」などという言葉は使えません。特にオリンピックのスケートリンクには、“魔物”がうじゃうじゃいますから。
オールドファンならば、1960年代に世界の第一人者だった鈴木恵一さん(1972年札幌五輪選手団主将)がレース直前に小石を踏んで(当時は屋外で行われていました)ブレードが欠けてしまったり、80年代のエース・黒岩彰さん(88年カルガリー五輪銅メダル)が悪天候のために大幅にレース開始時間が遅れたことでプレッシャーを何倍にも増幅させて敗れ去ったことなどを思い出すでしょう。海外にも、長きにわたって500m実力ナンバーワンと言われながらとうとうオリンピックで勝てなかったダン・ジャンセン(USA)やジェレミー・ウォザースプーン(CAN)といった悲運の強豪がありました。
ちょっとした気の持ちようで、コーナーでバランスを崩す、いつもはしないフライングを取られる(この競技では、2回目以降にフライングした選手は失格…2003~09年頃の陸上競技と同じルールです)、といったアクシデントがいとも簡単に起きてしまうのが500mという種目であり、その可能性は24連勝中の小平にもつきまといます。

そうしたアクシデント抜きとして、小平を脅かす存在がいるとすれば、500mでは4年前の絶対女王であり、地元の大声援をバックにオリンピック3連覇を狙うイ・サンファ(KOR)以外にはいません。
今季は小平が7戦全勝しているW杯で、イは5回2位に付けています。タイム差は最小で0.20秒。最後の対決となった12月9日のソルトレイクシティ大会以降2カ月余りの調整如何によっては、十分に逆転する可能性を秘めています。ただ、ソルトレイクやカルガリーといった高速リンクを得意としているイにとって、ピョンチャンのリンクがどう味方するのか、仇となるのかがポイント。とはいえ何と言っても、地元ですからねえ。
なお、500mでは30歳にしてオリンピック初出場の郷亜里砂(イヨテツク)も今季4回3位に食い込んでおり、有力なメダル候補の一人となっています。


◇1000は日本のワンツーも??

1000mに関しては、小平にとって最大の難敵はチームメイトの髙木美帆(日体大助手)です。前述した「スプリンターと中距離スケーターの激突」が、まさに日本人選手どうしで行われているのが今年の趨勢なのです。
髙木選手については「後篇」でゆっくりとご紹介しますが、1500mの大本命であり、終盤までラップタイムを落とさない驚異的なスタミナと、500mもこなすスピードの持ち主。今季は国内大会を含め小平が全勝していますが、常にその差は僅かです。
W杯ランキング1位のエカテリーナ・シホワは、ロシアの選手ですので出てくるのかどうかの情報が定かでないのですが、出てきたとしても小平には敵いそうにありません。ランク1位にいるのは、小平が2戦欠場し、また1戦転倒して取りこぼしている結果であって、シホワ自身は6戦して一度も優勝していないのです。また今季はイレイン・ブスト、マリット・レーンストラ、ヨリン・テル・モルスといったオランダ選手に精彩がないのも、日本勢にとっては追い風となっています。

本番では、2月14日に1000m、18日に500mが行われます。先に1000mで小平がすんなりと優勝できれば、リラックスして臨める500mをも制する可能性はぐんと高まると思います。
一方、先に得意種目の3000m、1500mを終えて1000mに臨むのが髙木。こちらは21日にチーム・パシュートという大一番を控えていることもあり、どんな心境で「決戦」に挑んでくるのか、たいへんに見ものです。

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