
『第35回全日本大学女子駅伝対校選手権(杜の都駅伝)』が、仙台市内・6区間38.0㎞のコースで行われました。
先週に続き、台風の通過に伴う天候悪化が心配されたものの、降りしきる雨はともかく風はさほどの影響なく、「大学女子駅伝戦国時代」にふさわしい熱戦が繰り広げられました。
優勝争いは、連覇を狙う松山大、一昨年まで「一校独裁」体制を続けてきた立命館大、戦力充実して2度目のVの呼び声が高い名城大、関西インカレ、関西駅伝を総ナメしてきた古豪・京都産業大あたりが横並びの様相で、まったく予想がつきません。
日本インカレを見る限り、松山に昨年のような勢いがない上に大黒柱の高見澤安珠が故障で戦線離脱、今日になって判明したオーダーははっきり言って平凡な顔ぶれで、苦戦は必至と思われました。
女王奪還を目指す立命館も、4年生の太田琴菜、和田優香里に精彩がなく、これといった大物ルーキーの加入もないという、総合力に疑問符がつきまとう端境期の様相です。
京産大は、前回ルーキーで1区区間賞の橋本奈津が不調で重要区間を任せられずという状況。
こうなると、やはり実績のあるコマを揃える名城大か?
いずれにしろ、もともと駅伝の予想なんて至難の業なところへ持ってきてのこの混戦ぶりですから、今回は個人のパフォーマンスに重点を置いて観戦することに決め込みました。
今年の大学女子は、2年生の当たり年、と言えます。
棟久由貴(東京農業大) …ユニバーシアードHM金メダル、10000m現役最高
佐藤成葉(立命館大) …5000m現役最高記録
関谷夏希(大東文化大) …関東インカレ長距離2冠
山口可純(大東文化大) …ユニバHM代表
高見沢里歩(松山大) …前回4区区間新 →欠場
橋本奈津(京都産業大) …前回1区区間賞
五藤莉乃(中央大) …関カレ・全カレ入賞
向井智香(名城大) …U-20世界選手権出場 →欠場
この中で私が最も期待しているのが“鼻テープ”がトレードマークの関谷。
関カレでの大東大勢というと福内櫻子を思い出しますが、ラストに斬れのあった福内に比べるとスピード不足が課題と言われる一方、速いペースで主導権を握るスタイルは駅伝向き。将来、マラソンを走らせてみたい選手です。
これに対抗するのは4年生の意地。
太田琴菜(立命館大) …2区・5区区間記録保持者
高見澤安珠(松山大) …リオ五輪3000mSC代表 →欠場
細田あい(日本体育大) …ユニバ10000m銅メダル
福居紗希(城西大) …ユニバHM銅メダル
出水田眞紀(立教大) …ユニバHM5位 →予選敗退
清水真帆(大阪学院大) …日本インカレ5000m優勝
今村咲織(順天堂大) …日本インカレ10000m優勝
赤坂よもぎ(名城大)
唐沢ゆり(日本体育大)
この中での“お気に入り”は順大の今村。見た目といい走り方といい、先輩の清水裕子を彷彿とさせます。ぜひ、実業団へ進んで活躍して欲しい選手の一人です。
もちろん、「スーパールーキー」の呼び声高い加世田梨花(名城大)や3年生では松山大の古谷奏(欠場)、緒方美咲、立命館には加賀山姉妹や関紅葉、京産大には関西インカレ2冠の棚池穂乃香などもいますが、総じて今年はニューカマー的人材がイマイチで、余計に2年生の存在感が光っています。

昨年終了時点の展望では、各学年に満遍なく分厚い選手層を築いた松山大の連覇はかなり有力と思われたのですが、主力を欠く陣容でスタートを切ってみれば、1区の緒方がブレーキどころの騒ぎでない墜落ぶりで、早々にお呼びでなくなってしまいました。
京産大も、2区・橋本の急降下で首位戦線離脱。
立命館は1区・加賀山実里が期待を裏切ったものの、2区・佐藤がエースの力量を発揮して挽回、4区ではこれまた2年生の田中綾乃が区間賞の激走でチームとして2年ぶりの首位に躍り出ましたが、最長5区の太田が撃沈して試合終了。
結局、全区間で5位以内と抜群の選手層を誇った名城大が、2005年以来2度目の優勝を飾りました。「戦国」と言われた大会で、駅伝の必勝法であるスキのないオーダーを組むことのできた唯一のチームだった、と言えるでしょう。
私のイチオシ2年生・関谷の快走で2位にまで浮上した大東大が、そのままの順位でゴール。アンカーに渡る時点では関東勢として15年ぶりの優勝がチラついただけに、4回目の2位はあまり嬉しくない結果だったようです。
2003年の初優勝以来、優勝10回・2位4回と一度たりとも3位以下のなかった立命館は、辛うじて3位を死守、1998年以来続いている連続5位以内の記録は20回に伸ばしました。あまり言いたくはないですが、学年が進むにつれて成績を落としていくこの大学ならではの傾向が、頼みとする太田や和田にも顕れてしまったようです。
注目の「個人戦」では、2年生が1区・五藤、2区・佐藤、4区・田中、5区・関谷と4区間で区間賞を攫い、細田・玉城かんな(名城大3)の各1区間に留まった4年生、3年生を圧倒しました。
エース区間の5区で、前評判の高かった棟久、加世田、棚池、清水真、太田らを向こうに回して大差で区間賞を獲った関谷には、この先さらに期待しちゃいます。
また4区の田中については不明にして予備知識がありませんでしたが、身長の割には長い脚がまっすぐ伸びてくる走りが印象的で、特に登り坂を滑るようにしてスイスイ上がっていくところは、富士山のアンカー適性もあり、と見えました。
大学女子駅伝は、この後、年末の『全日本大学女子選抜駅伝(富士山駅伝)』で、再度「戦国」の激戦が待ち受けています。どうやら総合力の高い名城と、この後陣容を立て直してくるはずの立命館との一騎討ちでしょうか…お楽しみに!