
前回の続きです。
私なりに「とりあえず」まとめてみた、ロードレース・シーズンの新しいスケジュール案は、
①『マラソン日本選手権』を独立したレースとして新設し、当該シーズンの日本王者決定戦とするとともに、オリンピックなど重要国際大会の最終にして唯一の代表選考会として位置付ける。(=欠場者は選考対象としない)
②上記の実施日程を3月中旬と仮定し、それに伴って既存大会の開催時期を変更・調整する。
③上記変更に際して、実業団連および学連の主催する主要駅伝大会の日程は、原則として変更しない。
という主旨のもとに設計しています。
国内3大レースと呼ばれる男女6大会の日程を単純にずらすだけでも大変な調整作業が必要な上に、一部は国民的行事ともなっている駅伝大会の日程には実業団連や学連の思惑が色濃く反映されていることでもあり、これを動かすことはさらに難しい。また、選手が3大レースのいずれかに臨むにあたって、そうした駅伝大会やハーフ・30km等のロードレースを“トライアル”として効果的に利用できる流れも重要視したいと考えました。
その結果、特に男子の『びわ湖』や女子の『大阪』『名古屋』などは開催時期が大きく動くことになり、また『香川丸亀』や『青梅』といった現状2月に開催されているレースを秋口に、4月に行われている『長野』を『北海道』と並ぶ夏のレースにと、3大レース以外のところでも大きな時期変更を提案させていただいています。
もちろん、これがベスト!などと言うつもりはありませんし、公表された「陸連案」(『選考会』を秋に開催)であれば、より小さな変更で済むというメリットもありそうです。(ただし、「陸連案」では3大レースの開催意義がまったく違うものになり、記録の出にくいレースは敬遠されるという結果が目に見えています。『選考会』自体もぶっつけ本番的なスケジュールとならざるを得ません)
ですが、ひとまずこのスケジュール案を踏まえたところで、私の提案をもう少しご紹介したいと思います。
◆「グレード」と「ポイント」という考え方
さて、前回ご提案したレース・スケジュールの中で、個人のロードレースにはそれぞれ【 】でGなにがしという記号をつけてあります。
競馬などがお好きな方はお察しかと思いますが、これはマラソン界にも「グレード制」を導入してはどうか、という提案です。
すでに国際的には、主要ロードレスに「ゴールド」「シルバー」「ブロンズ」というレーベル制が施行されているのはご承知のとおりです。IAAFによるこのランク分けは、大会の規模や実施体制などを勘案した世界中の主要レースの格付けであるのに対し、私が提案するのは国内大会における、あくまでも「代表選考」を軸としたレースの重要性を基準にするものです。
なぜグレード制を設けるかと言いますと、『日本選手権』出場資格や代表選考の判断材料となる「ポイント制」を施行してはどうか、という考えからです。
GP(グランプリ)…日本選手権
G1 … (男子)福岡国際、びわ湖毎日、東京
(女子)さいたま国際、大阪国際女子、名古屋ウィメンズ
G2 … (男子)北海道、別府大分、香川丸亀国際ハーフ
(女子)北海道、東京、香川丸亀国際ハーフ
G3 … (男子)長野、防府讀賣、延岡西日本、全日本実業団ハーフ、全日本学生ハーフ他
(女子)長野、全日本実業団ハーフ、全日本学生ハーフほか
「ポイント」は、各グレード・レースの着順、およびタイムなどによるボーナスポイントを設定し、2年間を有効期限として累積することで、マラソン・ランナーそれぞれの現有する実力をタイム以外の指標で、ある程度数字化するという試みと思ってください。
数字の設定には細かい分析や検討が必要になりますが、たとえば次のように仮定してみます。
GP … 1位:500pt. 2位:300pt. 3位:200pt. 4位:150pt. 5位:125pt. 6位:100pt. 7位:75pt 8位:50pt.
G1 … 1位:200pt. 2位:120pt. 3位:80pt. 4位:60pt. 以下、50・40・30・20
G2 … 1位:100pt. 2位:60pt. 3位:40pt. 4位30pt. 以下、25・20・15・10
G3 … 1位:50pt. 2位:30pt. 3位:20pt. 以下なし
G1~G3については日本人選手のみを対象にした順位とし、外国人選手を含めた総合順位の1~3位には相応のボーナス・ポイントを加算します。
このほか、「オリンピック/世界選手権」については総合順位のみを対象として、
GSⅠ … 1位:1000pt. 2位:800pt. 3位:400pt. 4位:300pt. 以下、250・200・150・100
「アジア大会」や「海外ゴールドレーベル・フルマラソン大会」については
GSⅡ … GPと同等前後のポイント設定
とします。
加えて、「タイム・ポイント」として、『日本選手権参加標準記録』をたとえば男子:2時間12分、女子:2時間30分と設定し、陸連公認コースまたは海外で行われるフルマラソン・レースでこのタイムをクリアした選手は最低でも10pt.、10秒上回るごとに10pt.を加算したポイントを獲得できます。(男子で2時間9分00秒で走れば180pt.獲得)
ポイントの有効期間は、当該の日本選手権から遡って2年前の成績までが対象。つまり、2020年の日本選手権に出場することになる選手は、2018-19年シーズンと2019-20年シーズンに獲得したポイントの累計が「持ち点」ということになります。
あとは、「スケジュール案」に記載した主要駅伝大会の長距離区間で区間賞を獲得した選手にボーナス・ポイントを付与するなども考えられますが、駅伝の場合は選手の属性によって参加できる、できないが強く出てしまいますので、少し不公平感を持たれるかもしれません。
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◆「ポイント」を、どう使う?
『日本選手権』の出場資格は、有効ポイントを10pt.以上持っていること、でよろしいかと思います。つまり、どの大会でもいいから「参加標準記録」を突破するか、G2以上の大会で日本人8位以内、もしくはG3大会で3位以内を1度でも記録すれば、参加資格を得ることになります。
これで想定出場有資格者数が何人くらいになるのか、ここ数年の記録や大会順位を精査してみないと何とも言えませんが、「数十名」という適切な人数に落ち着くのではないでしょうか。もし少ないようならば、標準記録を引き下げることで簡単に想定人数を調整できます。
さて、肝心の代表選考レギュレーションをどうするのか?
「日本選手権優勝」あるいは「前年の世界選手権またはオリンピック表彰台」であれば、その年のオリンピックまたは世界選手権、アジア大会の代表に「一発決定」でよろしいかと思いますが、残り1~2枠を選考するに際し、累計ポイントが重要な判断材料となります。
有効期間内にG1レースのどれかで日本人1位になった選手が2位に入ってくれば、累計500pt.。G1の成績が総合3位以内なら、さらに加点。
2年連続2位だったら、それだけで600pt.。前年3位でも500pt.。これも当然引っ掛かってきそうです。いずれにしても、ある程度実績(持ち点)のある選手が当該の日本選手権で2位ならば、選出されることは極めて有望、ということになります。
「前年の日本選手権優勝者」や「海外ゴールドレーベル優勝者」「G1レース1位で標準記録を5分上回った」であれば、少なくとも500pt.を持っているわけですから断然有利。当該年度が8位に終わったとしても、550pt.です。2位(800pt.)や3位(700pt.)なら文句なしに選出でしょう。まあ昨今、日本人選手のゴールドレーベル優勝なんていうのも夢みたいな話になってきていますから、それくらいのアドバンテージをあげても良さそうですね。
「G1レースで2勝(日本人トップ)」の有資格者ならば、400点以上を持っているわけですから、これも3位以内ならまず当確でしょうか。4位とか5位とかの場合に、ちょっと微妙なことになりそうですね。
逆のケースで言えば、日本選手権でいきなり2位や3位に飛び込んできたとしても、それまでの実績が乏しい(持ち点が少ない)場合は厳しいことになりかねない、と考えられます。
◆ポイント争いは面白いことになるかも?
ポイントやその運用レギュレーションの設定の仕方でいかようにも変わりますので、それが当事者や世間全般を納得させる材料になるのかどうかは何とも言えないところがあるものの、時間をかけて設計していけば、そこはクリアできるような気がします。
何よりも、これまでタイム・ランキングや過去のレース内容の印象度だけを頼りに、私のような陸上ヲタクではない一般の方々にはおぼろげにしか見えてこなかった「代表争いの渦中にいる選手たち」が、レースごとに変動するポイント・ランキングの力を借りて、くっきりと見えてくるのではないかと思います。
また、さまざまな競技で「ワールドカップ」「ワールドシリーズ」等の名称のもとに行われているグランプリ方式のポイント争いがそうであるように、マラソン界に新たな興味を喚起するに違いありません。とうぜん、年間(シーズン)のポイント上位者は、陸連により別途表彰されて然るべきでしょう。
で、日本選手権の順位が全てではない(優勝者は即決、欠場者は資格なしとしても)、累計ポイントが全てではない、というところに、日本陸連の「この選手を代表にしたい」という思惑が上手く反映される余地が生まれるとも考えられます。
もう一つのメリットは、選手がポイント獲得のためにレースを選択する判断材料が増える、ということです。特定して申し訳ありませんが、女子のG1レースとなる『さいたま国際マラソン』などは、現況のまま、あるいは「陸連案」のとおりにすれば、トップ選手は寄り付かない有名無実の大会となっていく可能性が高いと思います。(選考会の後に3大レースですと、レース間隔の最も少ない『さいたま』や『福岡』には、有力選手はまず出ないでしょう)
記録が出にくくても順位ポイントが獲りやすい「穴場」だということになれば、そうしたトップ選手の大会離れを防ぐことが可能になると思われるのです。
地方都市が主体となって営々と続けてきたG2、G3クラスの大会にも、思わぬ一流選手の参戦ということが頻繁になるかもしれません。
もちろん、最終的に「代表入り」を目指す選手たちは、すべてのレースに100%の心構えで挑む必要などありません。
「今回はポイントが〇点以上取れればよし」と、肩の力を抜いて、練習の一環くらいのつもりで走るレースをこなしていけばよいのです。シーズンに2度、3度とフルマラソンを走る選手も、増えてくるのではないでしょうか。
「マラソンに日本選手権を!」
「グレード制・ポイント制の導入を!」
なかなか面白そうな試みだとは、思いませんか?