その⑤ 男子4×100mリレー代表選考事情
7月2日、オリンピック陸上競技代表選手の全容が発表されましたね。
発表されてみれば、結局のところ個人種目で資格(標準記録突破またはワールドランキング圏内)を持つ選手は、種目あたり3人を超えない限りは全員が、4人目がいる場合は補欠として、すべて代表に選出されたことになります。( 2日以降にWR圏内に入った3000mSCの塩尻選手も、補欠に追加されました)
実はWRでぎりぎりターゲットナンバーに届かず涙を呑んだ選手の何人かは、今後最終エントリーまでの間に出場辞退を表明する選手が出ると、追加で招集される可能性があります。
女子やり投では、今季ブレイクの上田百寧選手が“次点”の33位。佐藤由佳選手が34位。また男子10000mではTN27に対して田澤簾選手が29位と、このあたりは結構な確率でインヴィテーションが来るのではないでしょうか?ただ女子JTの場合、33位と34位はまったくの同ポイント(ビッグポイントの差)で、32位とは僅か1点差。このまま追加がなかったとしたら、日本選手権の結果が悔やみきれないものとなるでしょうね。(日本選手権で1つでも順位を上げていれば、圏内でした)
またリレー代表としては、事前に陸連が提示した「代表選考要領」のとおりにロジカルな手続きを以て、代表選出となりました。
全体として結果を見ると、女子やり投のように順位がポイントにシビアに影響したケース、およびリレーのような特殊ケース以外は、日本選手権の成績はあんまり関係がなかったのかな、というのが率直な感想です。
この中で一般の方々に分かりにくかった点としては、リレー代表の選考過程でしょうね。
まず、3年前の世界選手権で既に代表権を得ていた男子4×100mRと、今年のワールドリレー・シレジア大会で権利を獲得した男子4×400mRおよび女子4×100mRとでは、選考過程が異なります。また、今大会ではリレーのエントリーについてのWA(世界陸連)ルールが変わり、従来の「1カ国6名」から「5名」に、また4×100mRならば100m、4×400mRならば400mの個人種目で代表に選出されている選手は必ずメンバー入りするというように、編成が条件づけられているのです。
男子4×100mRの場合、これに従って日本選手権で100mの代表内定となった多田・山縣の両選手は、リレーメンバーとしても即日内定。7月2日の時点で3人目の100m代表となった小池選手もこれに加わりました。残る2枠には、第2の選考要綱として「第 105 回日本選手権、参考競技会の成績を総合的に判断し、リレーの特性と戦略を考慮して 選考された競技者」とあり、これに沿って桐生・デーデーが選出され、高校生の桝田選手が補欠となりました。
この第2の選考要綱というのが結構曖昧模糊としていて、陸連幹部による「総合的判断」が働いたであろうことは、仕方がないでしょう。
もともと男子4継は金メダルを目標とする最重点種目であり、最終選考会の結果はもとよりそれ以外の要素も勘案したうえで、最高の布陣を築くことが求められています。純粋にロジカルな選考過程を踏まえなければならない一方で、私が本ブログでも再三指摘してきたように、「100mの走力×4人分が400mRの実力ではない」という、奥深い4継理論を具現化するメンバー選びが必要なのです。つまり、
①100m競走の絶対的走力
②実際の4継で個々が担当する距離および走路条件を考慮し、200mの走力および走順適性
③バトンワークの熟練性…経験値と合同練習の頻度
④現時点から本番までの過程における心身のコンディション
⑤その他
と、さまざまな要素を加味して検討していくと、まず個人での参加資格を持ちながら個人種目で代表選出が叶わなかった桐生のメンバー入りは問題なく確定。上記では④にやや不安がありますが、その他の要件としては文句なしの有資格者です。
続いて、最終選考会の順位からいうとデーデー選手。実績としてはサニブラウン選手、さらには200mで追加代表となった飯塚および山下選手の比較ということになりますが、当面のメンバー選出としてはデーデー選手で妥当でしょう。
彼は①についての実績がまだまだ不十分ながら、最終的なメンバー選定への選択肢として残しておくためには、ここで「リレー代表」としておかなければなりません。結果的に、日本選手権の100m上位5人がリレー代表となることで、内外の賛同も得られやすい選考と言えます。
サニブラウン選手に関しては、①②の実績では抜きん出ていますが③④に大きな問題があって、「最強メンバー」の名を採るか実を採るかというところで、構想からは外れざるを得ないところがありました。
今後、選出された5人および桝田選手を加えた6人以外に飯塚・山下両選手を含めた中から、5人の最終エントリー・メンバーが絞り込まれ、予選・決勝のオーダーが組まれていくものと思われます。
最終的には代表メンバーの5人がそのままエントリーされると思いますし、全員のコンディションに問題がなければ、決勝のオーダーは「多田-小池-桐生-山縣」ということになるのではないか、というのが私の予想です。バトンワークの予行演習とメンバーの調子の確認の意味で、予選もまた同じメンバーとなることでしょう。
飯塚選手にはチームJAPANのリーダーとして、また桝田選手には将来の幹部候補生として、それぞれチーム内での役割を果たしていただけたら、と思います。

その⑥ 男子4×400mR・女子4×100mR選考事情
この両種目の代表選考については、「オリンピック代表候補選手のうち、…」という前提条件が提示されています。この「オリンピック代表候補選手」というのは、「シレジア世界リレー選手権大会(選手権大会ではないんですけど、まあいいか)の日本代表派遣者」および「参考競技会(WAが記録を認定する競技会)でのリレー代表候補選手設定記録突破者」となっており、要は「シレジアでメンバーだったこと」が一つの条件になっています。4×400mRの場合は、混合の代表も含みます。ちなみに後者の「リレー代表候補設定記録突破者」という要件を満たしたのは、女子100mの兒玉選手ただ一人です。
さてここからは、両種目で少し選考要領が異なります。
まず男子マイル継は、「①400m代表選手」「②オリンピックリレー代表候補選手のうち、第105回日本選手権400m/200mの結果から、リレーの特性と戦略を考慮して先行された競技者」となっていて、まず個人枠で代表になったウォルシュ選手が確定。残りの4名は、世界リレーの銀メダル・メンバーがそのまま日本選手権の上位4名を占め、すんなりと決まりました。
もしも5位以下で記録的に図抜けていたり、実績・経験で考慮すべき選手がいれば一考の余地はあったかもしれませんが、まず順当な選出と言えるでしょう。
一方の女子4継は、「①100m代表選手」でこれは該当者なし。で、肝心の②ですが
「オリンピックリレー代表候補選手のうち、シレジア世界リレーに出場し、出場権を獲得した競技者…」云々となっており、これに該当するのが兒玉・鶴田・齋藤・青山の4選手。実際のレース(予選・決勝)に出場できなかった石川選手もまた、代表メンバーです。したがって、こちらもすんなりと、5人のメンバーが確定したと思われます。
ネット・ニュースの書き込み欄などを見ますと、日本選手権100m2位の壱岐あいこ選手や3位の名倉選手が選ばれなかったことについて、「不公正だ」とか「陸連に説明責任を求める」などといったコメントが目につきました。中には「8位の青山選手が選ばれたのはどう考えてもルックス重視」などという声もありましたが、調べればすぐに分かる事情をきちんと調べもしないで、無責任な投稿をするのはいかがなものかと。(とは言うものの、陸連さんの「選考要領」ページ、かなり分かり辛い処にありましたね)
今回、メンバーの1人・鶴田選手が体調万全でなかったために100mを回避、200mで2位になったことで「本番はOK」を証明してみせましたが、もし鶴田選手の脚の状態が深刻なものであれば、100m2位の壱岐(妹)選手は真っ先に選考されたでしょうが、結局補欠登録に留まった事情は、そういうことです。
かつての女王・福島千里選手の全盛期に近い実力を身に着けつつある兒玉芽生選手を筆頭に、学生陣にずらりと実力者が揃う女子短距離は、今季11秒4~5台が7人と、徐々に全体のレベルが上がっています。とりわけ兒玉選手の日本人離れした雄大な(?)下半身や石川、青山両選手の育ち切った(?)長い手足を見ていると、ますます数年後を期待してしまいます。東京大会をステップに、彼女たちが福島選手や髙橋萌木子さん、中村宝子さんらが築いた女子スプリントの財産を受け継いでくれることを、心から願っていますよ!









