豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

『第105回日本陸上競技選手権』観戦記+α その⑤⑥



その⑤ 男子4×100mリレー代表選考事情

7月2日、オリンピック陸上競技代表選手の全容が発表されましたね。
発表されてみれば、結局のところ個人種目で資格(標準記録突破またはワールドランキング圏内)を持つ選手は、種目あたり3人を超えない限りは全員が、4人目がいる場合は補欠として、すべて代表に選出されたことになります。( 2日以降にWR圏内に入った3000mSCの塩尻選手も、補欠に追加されました)
実はWRでぎりぎりターゲットナンバーに届かず涙を呑んだ選手の何人かは、今後最終エントリーまでの間に出場辞退を表明する選手が出ると、追加で招集される可能性があります。
女子やり投では、今季ブレイクの上田百寧選手が“次点”の33位。佐藤由佳選手が34位。また男子10000mではTN27に対して田澤簾選手が29位と、このあたりは結構な確率でインヴィテーションが来るのではないでしょうか?ただ女子JTの場合、33位と34位はまったくの同ポイント(ビッグポイントの差)で、32位とは僅か1点差。このまま追加がなかったとしたら、日本選手権の結果が悔やみきれないものとなるでしょうね。(日本選手権で1つでも順位を上げていれば、圏内でした)

またリレー代表としては、事前に陸連が提示した「代表選考要領」のとおりにロジカルな手続きを以て、代表選出となりました。
全体として結果を見ると、女子やり投のように順位がポイントにシビアに影響したケース、およびリレーのような特殊ケース以外は、日本選手権の成績はあんまり関係がなかったのかな、というのが率直な感想です。

この中で一般の方々に分かりにくかった点としては、リレー代表の選考過程でしょうね。
まず、3年前の世界選手権で既に代表権を得ていた男子4×100mRと、今年のワールドリレー・シレジア大会で権利を獲得した男子4×400mRおよび女子4×100mRとでは、選考過程が異なります。また、今大会ではリレーのエントリーについてのWA(世界陸連)ルールが変わり、従来の「1カ国6名」から「5名」に、また4×100mRならば100m、4×400mRならば400mの個人種目で代表に選出されている選手は必ずメンバー入りするというように、編成が条件づけられているのです。

男子4×100mRの場合、これに従って日本選手権で100mの代表内定となった多田・山縣の両選手は、リレーメンバーとしても即日内定。7月2日の時点で3人目の100m代表となった小池選手もこれに加わりました。残る2枠には、第2の選考要綱として「第 105 回日本選手権、参考競技会の成績を総合的に判断し、リレーの特性と戦略を考慮して 選考された競技者」とあり、これに沿って桐生・デーデーが選出され、高校生の桝田選手が補欠となりました。
この第2の選考要綱というのが結構曖昧模糊としていて、陸連幹部による「総合的判断」が働いたであろうことは、仕方がないでしょう。

もともと男子4継は金メダルを目標とする最重点種目であり、最終選考会の結果はもとよりそれ以外の要素も勘案したうえで、最高の布陣を築くことが求められています。純粋にロジカルな選考過程を踏まえなければならない一方で、私が本ブログでも再三指摘してきたように、「100mの走力×4人分が400mRの実力ではない」という、奥深い4継理論を具現化するメンバー選びが必要なのです。つまり、
 ①100m競走の絶対的走力
 ②実際の4継で個々が担当する距離および走路条件を考慮し、200mの走力および走順適性
 ③バトンワークの熟練性…経験値と合同練習の頻度
 ④現時点から本番までの過程における心身のコンディション
 ⑤その他
と、さまざまな要素を加味して検討していくと、まず個人での参加資格を持ちながら個人種目で代表選出が叶わなかった桐生のメンバー入りは問題なく確定。上記では④にやや不安がありますが、その他の要件としては文句なしの有資格者です。
続いて、最終選考会の順位からいうとデーデー選手。実績としてはサニブラウン選手、さらには200mで追加代表となった飯塚および山下選手の比較ということになりますが、当面のメンバー選出としてはデーデー選手で妥当でしょう。
彼は①についての実績がまだまだ不十分ながら、最終的なメンバー選定への選択肢として残しておくためには、ここで「リレー代表」としておかなければなりません。結果的に、日本選手権の100m上位5人がリレー代表となることで、内外の賛同も得られやすい選考と言えます。
サニブラウン選手に関しては、①②の実績では抜きん出ていますが③④に大きな問題があって、「最強メンバー」の名を採るか実を採るかというところで、構想からは外れざるを得ないところがありました。

今後、選出された5人および桝田選手を加えた6人以外に飯塚・山下両選手を含めた中から、5人の最終エントリー・メンバーが絞り込まれ、予選・決勝のオーダーが組まれていくものと思われます。
最終的には代表メンバーの5人がそのままエントリーされると思いますし、全員のコンディションに問題がなければ、決勝のオーダーは「多田-小池-桐生-山縣」ということになるのではないか、というのが私の予想です。バトンワークの予行演習とメンバーの調子の確認の意味で、予選もまた同じメンバーとなることでしょう。
飯塚選手にはチームJAPANのリーダーとして、また桝田選手には将来の幹部候補生として、それぞれチーム内での役割を果たしていただけたら、と思います。
RIO040


その⑥ 男子4×400mR・女子4×100mR選考事情

この両種目の代表選考については、「オリンピック代表候補選手のうち、…」という前提条件が提示されています。この「オリンピック代表候補選手」というのは、「シレジア世界リレー選手権大会(選手権大会ではないんですけど、まあいいか)の日本代表派遣者」および「参考競技会(WAが記録を認定する競技会)でのリレー代表候補選手設定記録突破者」となっており、要は「シレジアでメンバーだったこと」が一つの条件になっています。4×400mRの場合は、混合の代表も含みます。ちなみに後者の「リレー代表候補設定記録突破者」という要件を満たしたのは、女子100mの兒玉選手ただ一人です。

さてここからは、両種目で少し選考要領が異なります。
まず男子マイル継は、「①400m代表選手」「②オリンピックリレー代表候補選手のうち、第105回日本選手権400m/200mの結果から、リレーの特性と戦略を考慮して先行された競技者」となっていて、まず個人枠で代表になったウォルシュ選手が確定。残りの4名は、世界リレーの銀メダル・メンバーがそのまま日本選手権の上位4名を占め、すんなりと決まりました。
もしも5位以下で記録的に図抜けていたり、実績・経験で考慮すべき選手がいれば一考の余地はあったかもしれませんが、まず順当な選出と言えるでしょう。

一方の女子4継は、「①100m代表選手」でこれは該当者なし。で、肝心の②ですが
「オリンピックリレー代表候補選手のうち、シレジア世界リレーに出場し、出場権を獲得した競技者…」云々となっており、これに該当するのが兒玉・鶴田・齋藤・青山の4選手。実際のレース(予選・決勝)に出場できなかった石川選手もまた、代表メンバーです。したがって、こちらもすんなりと、5人のメンバーが確定したと思われます。
ネット・ニュースの書き込み欄などを見ますと、日本選手権100m2位の壱岐あいこ選手や3位の名倉選手が選ばれなかったことについて、「不公正だ」とか「陸連に説明責任を求める」などといったコメントが目につきました。中には「8位の青山選手が選ばれたのはどう考えてもルックス重視」などという声もありましたが、調べればすぐに分かる事情をきちんと調べもしないで、無責任な投稿をするのはいかがなものかと。(とは言うものの、陸連さんの「選考要領」ページ、かなり分かり辛い処にありましたね)
今回、メンバーの1人・鶴田選手が体調万全でなかったために100mを回避、200mで2位になったことで「本番はOK」を証明してみせましたが、もし鶴田選手の脚の状態が深刻なものであれば、100m2位の壱岐(妹)選手は真っ先に選考されたでしょうが、結局補欠登録に留まった事情は、そういうことです。

かつての女王・福島千里選手の全盛期に近い実力を身に着けつつある兒玉芽生選手を筆頭に、学生陣にずらりと実力者が揃う女子短距離は、今季11秒4~5台が7人と、徐々に全体のレベルが上がっています。とりわけ兒玉選手の日本人離れした雄大な(?)下半身や石川、青山両選手の育ち切った(?)長い手足を見ていると、ますます数年後を期待してしまいます。東京大会をステップに、彼女たちが福島選手や髙橋萌木子さん、中村宝子さんらが築いた女子スプリントの財産を受け継いでくれることを、心から願っていますよ!

『第105回日本陸上競技選手権』観戦記 その③④



その③ 解けた靴紐
注目中の注目は、第2日・最終レース、男子100m決勝。
実は不謹慎にもSNS友達と「3連単予想」をやってました。ちょうど都合よく、当日のN刊スポーツに「馬柱」を模した出走表が載ってたもんですから。
人気は④枠・山縣選手と⑥枠・多田選手に集中。続いて⑤枠・桐生選手の底力への期待が続きます。順当に来ていれば本命だったかもしれない③枠・サニブラウン選手はやや劣勢。
私の予想は、③と⑤は調整に難ありと見て、④-⑥-⑧(山縣-多田-小池)!
……結果、誰も当たらず⑥-⑤-④の特大万馬券あいや万人券となったのはご承知のとおりです。デーデー選手の2着は予測不能ながら、私の見立てはまあまあだったかなと、自画自賛。

この日の放送は、進行がやや押し気味だったらしく、100mがフィニッシュして代表内定者のインタビューが済むと、解説者(高平さん)とともにじっくりレースを振り返る時間がなくなってしまった感じで、番組終了となりました。
見ていた限り、多田選手は実に素晴らしいレースをしたとはいえ、2着確保は間違いないと見えていた山縣選手がデーデー選手に交わされ、さらに後続の塊に飲み込まれかけたのが、私にはどうにも腑に落ちませんでした。そのあたりの状況をもっと知りたいと思っていたところで、一度だけ再生された横からのスロー映像を見て、私は思わず「あっ!」と声を上げてしまいました。

ゴールまで残り10歩ほど(後でビデオ再生して確認)、ということは80メートル付近でしょうか、山縣選手が一瞬腰を落とし、手足の調和を完全に狂わせています。一瞬で立て直したのはさすがですが、これがあって、一時はサニ選手や桐生選手に1メートル以上つけていたリードが見る間に縮まり、ゴールラインでのあの大混戦となっていたのでした。
「つまずいた?…まさかね」と思いながら、続いて再生された正面からのスローを見て二度ビックリ。なんと、そのガクッときた瞬間から、スパイクから白く細長いモノが飛び出して、ヒラヒラと舞っています。
「靴紐が解けたんだ!むしろそれで、よく3着に粘ったもんだなあ…。」
100mで、これほどのビッグイベントの有力選手が、靴紐が解けた状態でラスト20mを走り切ったのは、前代未聞の珍事と言っていいのではないでしょうか。
20210625_LI
【ファイテンオフィシャルストア】公式通販サイト

このことはTVの生放送中は全く指摘されず、現場のマスコミもほとんど気付いていなかったようで、ようやく翌日になってチラホラと記事になった程度。
何よりも当の山縣自身が一言もそのことに触れず、後に取材されても「影響はなかった」みたいなことをコメントしていたので軽く流されてしまった感がありますけど、いやいやいやいや…!
私みたいな末端の市民ランナーだって、ジョギング中に靴紐が解けたりしたら、走れなくなりますよ。ましてやスピードの限界に挑んでいる最中に、そんなあり得べからざることが起きて、影響がないはずはありません。現に、山縣選手はその瞬間に体勢を崩し、急激に減速してるじゃあありませんか。

当人がそれに触れず、聞かれてもさらりと受け流したのは、理解できます。
だってトップ・スプリンターとしては、実にお恥ずかしい失態ですもの。もしそれで五輪代表を逃していたとしたら、自身は一生後悔するし、「いや靴紐のせいで…」と言ったところで人からは「自業自得」と評価されるしかない、そんな大チョンボですから。

九死に一生を得た山縣選手、これでオリンピック本番では万に一つも、同じチョンボを犯す心配はないでしょう。そのことだけは、万々歳でしたね。



その④ センゴは楽しい
ここのところ、TWOLAPS横田真人氏の活動や情報発信を軸に、中距離界がたいへん賑やかに盛り上がっています。オリンピック選考会ということで言えば、男子の800mも1500mも代表選出は下馬評でもほぼ望み薄の状況ながら、なぜか仲間内で独自の盛り上がりを呈しつつ、白熱の好レースを見せていたのが、面白かったです。
『Track Town JPN』(文化放送Podcast)では、そうした盛り上がりにまつわる、中継映像には映らない裏話をいくつか披露してくれていましたので、ここに簡単にまとめておきましょう。

*なぜ男子1500m予選2組が、いわゆる「死の組」になったのか?…河野匡さん情報によれば、「直前になって“田”の字のつく奴が800一本に絞ることにしたもんで、当初の割り振りが1個ずつずれちゃったんだよ」とのこと。

*その予選、1組の序盤が超スローペースになった瞬間、控えでモニターを見ていた2組の選手全員が、「よっしゃ!」とガッツポーズした。

*1組のタイムが悪かったため、2組は7着まで予選通過の可能性が高まったとは言っても、その順位確保のためには先頭を引っ張りたくないと皆が思っていたところ、高校生の佐藤圭汰選手が果敢にペースを作ってくれた。1着通過の舘澤選手は「高校生に引っ張っていただいた」と敬語になるし、佐藤選手は今や「サンキュー・サトウ」と呼ばれている。決勝でも、サンキュー・サトウは活躍した。

*望み薄でも一応選考会とあって、招集所には予選から独特の張りつめた空気が漂っていた。が、ただ一人ヘラヘラとしてまるで緊張感のない男がいた。他ならぬ、優勝した河村一輝選手である。

*男子1500m決勝。スタート直前から突然の豪雨に見舞われ、客席大移動が始まったため、観客はほとんど誰もスタートを見ていなかった。報道陣も、「この後の男子100m決勝に支障があっては大変」と機材保守に走ったため、ほぼ全員がセンゴを捨てた。その大雨の中、優勝した河村選手がウィニングランを始めたのを、報道陣は呆れて見ていた。日本選手権出場者の中で一番ふざけていたのが河村選手。

その他、細かいヨタ話を含め、パーソナリティの西本武司さん(EKIDEN News主宰・OTT理事)の語り口で大いに脚色されているところもあるでしょうが、捧腹絶倒の一部始終が楽しめます。
 Track Town JPN → https://omny.fm/shows/podcastqr1/playlists/track-town-jpn


大盛り上がりの中距離ブロック、最終日は“田”の字の人こと田母神一喜(阿見AC)と卜部蘭(積水化学)と、800mをTWOLAPS勢がアベック制覇。横田コーチにとっては至福の一日となりました。

『第105回日本陸上競技選手権』観戦記 その②



その② 男子5000m問題
さて、6月24日の初日・最大の話題は、男子5000mがスタート後の1000m少々からフィニッシュ直前まで、まるっきりレースの状況が中継されなかったという珍事への批判でした。
これについては『Track Town JPN』(文化放送Podcast QR)の中でも笑い話として、ただ本音のところでは「何とかならんかねえ…」といったニュアンスで取り上げられていました。

中継をご覧になっていない方のために簡単に説明しますと、男子5000mがスタートしてすぐ、中継がフィールドの方に切り替わりまして、これはまあいつもの、というかよくあるパターン。ところがちょうど、同時進行していた男子走高跳・女子走幅跳ともに大詰めの局面を迎えていたこともあって、両種目をテレコで切り替えていくばかりでなかなかトラックの実況に戻りません。
「5000はどうなったんだ!?」といいかげん視聴者のイライラが募るうちに、とうとうラスト1周を告げる鐘の音がBGMふうにカラカラカラン♪と聞こえてくる始末。ようやく画面が切り替わった時には、先頭のジャクソン・カベサ(Honda=オープン参加)がゴールする瞬間、ということになったわけです。3番手の遠藤日向選手以降に日本勢が雪崩れ込みますが、こう切り替えられてすぐでは誰が誰やら、咄嗟には判別できません。…

この日のシニア決勝種目は、この3つのほか男子円盤投の計4つだけ。プログラム的には男女100m準決勝がメインイベントの扱いでしたが、男子5000mは何といってもトラック・シニア唯一の決勝種目。しかも出場者全員が13分38秒以内の資格記録を持っているというレベルの高さで、標準記録の突破も十分に期待される注目のレースでした。
そして実際のレース内容も、結果的には実らなかったものの遠藤選手の記録への挑戦と、メイン集団でのスリリングな展開があり、見どころ満載の好レースの末に、松枝博輝(富士通)がWRでの五輪出場権をほぼ確実に射止めた結果となったのです。
NHKが“お詫び”のつもりかどうか、HPにフルサイズの動画をアップしていますので、いちおうリンクを貼っておきましょう。(そのうち削除されると思いますが)
https://sports.nhk.or.jp/olympic/video/e7d144eef2b64c8c953db3dcc1d291a5/



なぜこの“事件”が起こったのかについて、『Track Town JPN』では主にプログラムの組み方と中継技術の面から語っていました。特にU-20選手権を併催したことの皺寄せは大きく影響したでしょうし、また分割画面での中継や、NHKなんだからサブチャンネルを使って両方見せれば、などの意見もあると思いますが、技術面や費用面を考えると難しいかも。
放送開始に先立って行われていたライブ配信でも、「メインチャンネル」と「フィールドチャンネル」の2本立てにしておきながら、レース後の選手の表情などよりも記録画面を長々と映したり、頻繁に挟まれる表彰式の映像にイライラしたりと、それでも5年前のライブ中継に比べたら格段の進歩ではありますが、課題は山積といったところでした。
少し話は逸れますが、TV放送の開始とともにライブ配信が打ち切られるのが通例になっているのは、局側の要望ということなんでしょうが視聴者ファーストではありませんね。こういう時のために、またTVが視られない状況にある人のためにも、残しておくべきではないでしょうか。5年前の日本選手権でも、ちょうどTV開始と同時にスタートした女子10000mが、スタジオ・トークによる長い前フリのために全く画面に映らず、ライブ配信も打ち切り済み。ようやく映った時には先頭集団が3人になっていた、なんてことがありましたっけ。

さて、私が思うにこの「5000m問題」の根本にあるのは、「どうせ長距離種目は視聴者が途中で飽きるから、スタートとゴールだけ見せときゃいい」という、昔から陸上競技の中継放送制作者に根を張っている誤った考え方です。
ご存じのように、『世界陸上』(まず、この略し方がキライ)を独占放送する某民放が、長距離を放送する時には必ず2回以上のCMを平気で挿入します。3000mSCの場合8~9分のレースのうち、4分間がCMです。同局が最初に中継した1997年の世界選手権では、10000mのレース中に90秒CMをなんと5回もぶっこみました。今でも120秒×3回+フィールド挿入が普通です。
「長距離種目は視聴者が飽きる」という先入観を持っているのはNHKとて同じようで、必ずと言っていいほどにフィールド種目の状況が途中挿入されます。
こちらからしてみたら、まあフィールドも気にはなるけど必ずしもリアルタイムである必要はない。それより間を少しでもカットされたら、長距離走の魅力は半減してしまうよ、と言いたい。ここに陸上を愛する視聴者との大きな乖離が生じてしまうのです。
幸い今年は男女10000mのみ別開催となってノーカット版を堪能できましたが、誰か見てて飽きましたか?

スポーツ中継放送にも台本(もしくは簡略化した進行表)というものがあり、たとえばこのタイミングでこの告知をしなければならないとか、競技進行上ここでトラックとフィールドを切り替えてとかの放送予定を決めておかないと、映像と字幕の切り替え、アナウンサーの喋り、VTR挿入といった進行の流れを各スタッフが共有することができません。今回の“事件”は、当然のように5000m序盤を過ぎたらいったんフィールドへ、という台本があったはずです。そうしたら思いがけずも両種目が佳境に入ってしまったため、戻すに戻せなくなった、というところでしょう。
ここの匙加減はディレクター氏の判断によるもので、残念ながら当該ディレクターさんは陸上ファンの気持が分かってなかった、ということになります。

今回の“悲劇”を繰り返さないためには、放送スタッフ(特にディレクター職)が経験を積んで、視聴者の気持を理解した番組構成(台本作り)と現場判断をしていくことが必要です。
ただ、陸上競技の中継というのは非常に現場数が少ない(NHKの場合で織田記念、日本選手権、インターハイ、国体の4大会のみ。それも開催地により現地局の人材が投入されるのだとすれば、経験値はより分散される)ため、その場数がなかなかこなせない。特にディレクター職という立場は組織内の役職が昇進するとすぐにプロデューサー職や他の部署に代わってしまうので、熟練者が育ちにくいというジレンマがあります。(むしろ下請けの制作会社などが行っている場合はスポーツ競技ごとにベテラン・ディレクターが育つ環境となる)
放送スタッフの中では最も経験豊富で競技に精通しているのが、アナウンサー職のベテランですから、そうした方々の意見を十分に参考に、今後の改善を図っていただきたいと思います。
私たちは、熱い競技内容とともに、それを熱く伝えてくれる中継番組を視たい!…ただそれだけであります。

今回も長くなりましたので、「その③」は引き続きということで。

ギャラリー
  • 『第42回全日本実業団対抗女子駅伝』大胆展望
  • <再掲載>連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#3 ~1987年/第22回福岡国際マラソン
  • <再掲載>連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#3 ~1987年/第22回福岡国際マラソン
  • <再掲載>連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#3 ~1987年/第22回福岡国際マラソン
  • <再掲載>連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#3 ~1987年/第22回福岡国際マラソン
  • <再掲載>連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#3 ~1987年/第22回福岡国際マラソン
  • <再掲載>連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#3 ~1987年/第22回福岡国際マラソン
  • <再掲載>連載「懐かしVHS時代の陸上競技」#3 ~1987年/第22回福岡国際マラソン
  • 『第105回日本陸上競技選手権』観戦記+α その⑤⑥
楽天市場
タグ絞り込み検索
  • ライブドアブログ