豊大先生流・陸上競技のミカタ

陸上競技を見続けて半世紀。「かけっこ」をこよなく愛するオヤジの長文日記です。 (2016年6月9日開設)

ドーハ世界選手権のミカタ ①(序盤の見どころ)


いよいよ2年に1度のお祭り、『第17回IAAF世界陸上競技選手権』が開幕します。
前回ロンドン大会の展望記事を読み返してみますと、「全体的に混戦模様」としながらも6人の“絶対王者”、ほか数名の有力候補の名前を挙げていたことが思い出されました。
今年はどうでしょう?
混戦ぶりは、2年前の比ではありません。どの種目も、優勝者を予測することが極めて困難で、誰に本命印を打ってよいものやらサッパリ…。
私がある程度自信をもって◎印を付けられるのは、男子では200mのノア・ライルズ(USA)くらいのものでしょう。
女子では、走高跳のマリア・ラシツケネ(ANA)だけでしょうか。それも、前回ほどの圧倒的存在、単勝100円元返し、というほどではありません。
女子ではもう1人、200mのショーナ・ミラー-ウィボ(BAH)が大本命と思っていましたが、意外なことにミラーは本来の専門種目である400mに専念、200にはエントリーしませんでした。“本業”の方ではサルワ・イード・ナセル(BRN)の成長が目覚ましく、アミナトウ・セイニ(NIG)という新星も現れて、ミラーと言えども安泰ではないのですが…。
その他の種目に関しては、「2強」「3強」といった図式も一部あるものの、多くが混沌としています。それも、決して記録的に低調というわけではない混戦種目も多く、つまり今回の世界選手権は、まことにスリリングな好勝負が満載、という楽しみな大会となりそうなのです。
今回の記事では、大会序盤の注目種目を中心に、見どころをご紹介していきたいと思います。

◇男女100mは復活のベテランが「台風の目」
ボルトがいなくなってから初めての世界大会となる今回、男子100mでお騒がせの中心となったクリスチャン・コールマン(USA)が無事出場できることになり、本調子であれば頭一つ抜けた存在となることは間違いありません。
最大の強敵と目されたノア・ライルズ(USA)が200m1本に絞り、“分業体制”が確立したところで、ヨハン・ブレイク(JAM)、アンドレ・ドグラス(CAN)、ディヴァイン・オドゥドゥル(NGR)といったポスト・ボルト候補生たちも意外に上がって来ない。むしろ、スー・ビンチャン、シェ・チェンイエの中国勢や我がサニブラウン・ハキーム以下の日本勢に追い立てられる趨勢では、コールマン大本命は揺るぎそうもありません。
ただ不気味なのが、もはや“老境”に差し掛かったかと見えていたジャスティン・ガトリン(USA)のローザンヌおよびモナコでの復活劇。その後故障を発症したとの情報もありますが、軽度であれば前回大会同様、あっと言わせる逆転劇があるかもしれません。
コールマン自身が騒動の影響で調整を狂わせているという事態も十分考えられるだけに、果たしてネクスト・ボルトの座は誰が射止めるのか、予断を許さない状況ですね。
なお、アメリカはライルズが200mに専念するとともに、そのライルズに昨年来
200mで唯一土を付けたマイケル・ノーマンは400mに集中。着実に短距離完全制覇を目論んでいます。

女子の方はというと、リオ以降「2強」を形成するかと思われたエレイン・トンプソン(JAM)とダフネ・スキッパーズ(NED)が揃ってスランプに陥り、ここしばらくは女王不在の様相が続いたところへ、ようやく一歩抜け出したかに見えていたのがディーナ・アッシャー-スミス(GBR)の台頭。
ところがそのアッシャー-スミスも、今季産休からの復活を遂げたシェリー-アン・フレイザー-プライス
(JAM)の前には手もなくヒネられ、改めてこの偉大な女王の実力を思い知らされました。
現状、本命を打つとするならこのフレイザー。対抗は今季WLの10秒73を記録するなどようやく復調途上に乗って来たトンプソン。新旧ジャマイカ女王対決です。昨年この種目をリードしたマリージョゼ・タルー(CIV)や、前回覇者のトリ・ボウイ(USA)らが今季の勢いでは少々足りないか、というところでしょう。
2019-07-22 01.34.35



◇名勝負を期待、男子400mH

昨シーズン、圧倒的な強さでDLポイント・レースを全勝し、しかもアジア大会出場のためにファイナルを放棄したアブデルラーマン・サンバ(QAT)が、今季はどういうわけか控え目です。
代わって、そのサンバに世界王者のプライドをズタズタにされたカルステン・ワルホルム(NOR)が絶好調。その走りは「打倒サンバ」の一念に燃える激しいトレーニングの成果を感じさせる素晴らしいもので、DLファイナルではとうとう、記録の上ではサンバを追い越してみせました。
その時のワルホルムに食らいつき、同時に2人が46秒台を記録する史上初めてのレースを繰り広げたライ・ベンジャミン(USA)も、レース数は少ないながらも実力はホンモノ。
2人が追い求める存在のサンバは、今季はせっせと400のフラットレースに精を出し、決してどこか体調が悪いとかではないようなのですが、この種目に関しては様子見を続けています。何と言っても地元開催のこの大会では別格の英雄でしょうから、万全を期してのプランであることは確かでしょう。
サンバかワルホルムか、ベンジャミンか…今大会、最高のビッグ・レースに、日本勢が出場する予選からテンション全開で注目しましょう。

◇出るか夢の9メートル?
突然、「跳躍ニッポン」の話題が花盛りとなった今シーズン。世界ランキング1位に君臨する戸邉直人やDLファイナルを戦った山本聖途などに負けじと名乗りを上げた「走幅跳・花の日本新トリオ」城山正太郎、橋岡優輝、津波響樹。(津波は2センチ足りませんが、オマケで…本番で破ってください)
俄かにメダルも射程内に入ってきたと賑やかな話題の男子走幅跳ですが、本当の注目はこの人、ファン・ミゲル・エチェヴァリア(CUB)でしょう。
2年前から絶対王者の座を築くかに見えたルボ・マニョンガ(RSA)からあっさりと主役の座を奪い取った、異次元のスカイハイ・ロングジャンパー。技術も助走も粗削りで、絶対的な本命に推すことは躊躇われます。それだけにドンピシャに嵌った時の空中遊泳は、他の追随を許さないものがあります。
かつてメキシコシティでボブ・ビーモン(USA)が見せた衝撃を、またルイスとパウエルが9mラインで繰り広げた東京の死闘を、長い時を経てまた見てみたいものです。

◇日本男子3人目の金メダリスト誕生なるか?
過去16回の世界選手権で、金メダルに輝いた日本人選手はマラソンの谷口浩美(91年東京)とハンマー投の室伏広治(11年テグ)の2人だけ。「3人目」の期待が集まるのが、男子50㎞と20㎞の強力な競歩チームです。
大会2日目の深夜(日本時間5時30分)に男女同時スタートする50㎞は、今や日本にメダルをもたらすドル箱種目。今回最大のホープは、20㎞の世界記録保持者にして長い故障から復帰を遂げた鈴木雄介です。これまでのメダリストたちを抑えてともに代表の座を勝ちとった勝木隼人、野田明宏にも期待がかかります。
なにしろ50㎞。調子に乗れば圧倒的に速いヨハン・ディニ(FRA)や勝負に強いマティ・トス(SBK)、誰が誰やらよう分からん中国勢(向こうも日本勢をそう思ってるでしょうが)など、ひしめき合う強敵の中で、誰がトップ・コンディションでレースに臨むのか、誰が勝つレースに一番ハマるのかで、勝負の帰趨はまったく変わってくるでしょう。その中で、「どの選手が暑さに強いかは分からないから、あくまでも自分のペースで行くのみ」と不動の姿勢を吐露する鈴木の事前コメントが何とも頼もしく感じます。
今回はMGCの影響もあり、女子マラソンは何となく盛り上がりませんが、早朝の興奮は、ぜひとも競歩で味わいたいものだと思っています。

“世紀の一戦”MGCを振り返る


MGC02

日本国内のマラソン・シーンがここまで世間の注目を集めたのは、いったいいつ以来だったでしょうかね?まさに国民的行事となった『MGS』、素晴らしいイベントでありプロジェクトでした。
何より、男女の有力選手が全員、一堂に会するというのは史上初めてのことです。
男子だけで言えば、たとえば1979年および83年の福岡国際マラソンのように、オリンピック代表候補が全員集合して、結果的に“一発選考”で代表が決まったケースがありました。ただし、当時は国内ビッグレースの三者鼎立という状況にはなっていなかったので、福岡を事実上の代表決定レースとすることは陸連の胸先一つで可能だったのです。今は、そうではありません。その“大人の事情”に雁字搦めになった状況に風穴を開けた陸連の努力と工夫に、拍手を送りたいと思います。

先にスタートした男子は、まさかそこまではという疑念をあっさりと覆す設楽悠太のロケットスタート。「本当に中山竹通を再現するのか?」という展開にワクワクしました。私は9時10分以降はほとんど女子だけを視ていたので、中間の展開はよく分かっていませんが(まだビデオ検証をしてないのです)、次に戦況を見た時にはすでに35㎞過ぎ…疲れ切った表情の設楽に、後続の集団が間近に迫ってきているところでした。
ちょっと思ったんですが、設楽一人ではなくて、設楽と大迫傑が申し合わせるようにして並んで飛び出していたとしたら(それも付いていくには躊躇われるほどのペースで)、どうなっていたでしょうかね?やはり無理でも付いていかざるを得ないからと、服部勇馬以下の有力選手は、縦長の形状で何とか食らいつく集団を形成しますね。先頭の二人は「俺たちにいつまでも付いて来られる筈がない」とばかりにスピードを緩めない、結果的に前の方は後半暑さに全員撃沈して、最初から諦め半分にマイペースを決め込んだ後方の大穴ランナーが(例えては悪いですが、女子の野上恵子選手のように)上位を攫う、というようなことが起きたかもしれません。

それはそうと、中村匠吾(富士通)の優勝、まことに見事でした。終盤にきつい登り坂があるあのコースは、箱根の2区戸塚中継所前を思い起こさせますね。あるいは、中村と大迫の鍔競り合いは、2014年の1区の激闘を思い出させました。この時の東洋大は服部が2区で、1区は田口雅也。区間賞は日体大の山中秀仁で、中村は僅差の2位、田口が3位。大迫は中村に競り潰される形で区間賞争いから脱落し、5位でした。
箱根路を沸かせたスター選手たちがこうした激戦を再現してくれたことに、感慨を覚えます。大迫にとっては、走ったことのない2区の終盤や中村との競り合いの記憶など、気持ちの上でちょっとした不利が重なったかもしれません。
私は、中村が駒大3年生だったその年度、東京・味の素スタジアムで行われた日本選手権の10000mを現地観戦した際に、宇賀地強や深津卓也、窪田忍といった先輩・OBに交じって奮闘する彼の走りに強い印象を受け、「今年の箱根で注目は中村だ!」と周囲に語っていたのを思い出します。彼の3,4年時には、駒大は『箱根』優勝候補筆頭とも言うべき陣容を誇っていたのですが、それが叶わず、卒業後もどちらかというと停滞しているように見受けられました。

つまりその、ずっと気にかかっていた選手の一人ではあったんです。
予想大外しの言い訳です。しかしながら、印をつけた5人中4人が掠りもせずに、3位・14位・23位・25位・27位(ビリ)という体たらくでは、言い訳にもなりゃしませんな。



女子の前田穂南、という本命印は、実はかなり前から決めていました。
結果的には、2位に付けた差が3分47秒、つまりは圧倒的な力の差をもって優勝したわけです。レース展開的にどうのではなく、自力でレースを作ってのその結果ですから、現状で少なくとも夏場のレースでは実力が図抜けていることは明らかで、陸上ファンとしてそこを見抜けないでどうする、というところです。当たったから言うんですけどね。
当ブログで開陳する予想記事には、多分にヒイキ目が混じってくることは間違いありません。私にとって、松田・鈴木・福士というNHKの推す「3強」よりも、前田や安藤に対するヒイキ目が大きかった、その末の予想であったことは確かです。もしも前田彩里が万全の体調で出てきていたら、これもヒイキしてたことでしょう。
予想なんて、そんなもんです。勝負を左右する各個のコンディションや精神状態なんて、私ら外野席には全く伝わってきませんしね。

もう一人、心密かに(でもないか)ヒイキしてた小原怜選手。
4年前が1秒差、今度が4秒差。カワイソ過ぎる。
ファイナルチャレンジのターゲットタイムを見る時、男子の2時間5分49秒はなかなかに高い壁ですが、女子の2時間22分22秒はそうでもありません。現実に、これを上回るPBを持っているのが安藤と福士。松田にしても、PBを1秒でも更新すればOKなのです。
むろん、3つのレース(さいたま・大阪・名古屋)のどれかで出さなければならないとなると、本人の体調、当日の気象条件、レース展開とすべてのお膳立てが整うかどうかは神のみぞ知るところ。狙って出せるものではないでしょうが、それでも今回敗れた7人、出られなかった5人、計12人(むろん小原本人が加われば13人)の誰かがどこかのレースで出す可能性は、少なからずあります。

いやですね。毎年楽しみにしてるこれらのレースを、「記録よ、出るな出るな」と念じながら見つめなければならないなんて。
MGCの、唯一つ罪作りな処が、そこになりました。

半年ぶりブログ~世紀の一戦『MSG』を直前大予想


多忙にかこつけて休載状態にしてたら、あっという間に半年が経ってしまいました。
東京五輪前年の今季、日本の陸上界はなかなかに活況を呈しています。記事にしなかったのが今となってはもったいない気がしますけど、諸般の事情により、ということで…。陸上競技を伝えるメディアには相変わらず細かく目を通していますんで、浦島太郎状態ではありません。その点はご心配なく。

さて、いよいよMGC=マラソン・グランド・チャンピオンシップ本番です。
このプロジェクトが世に伝えられた当初は、当ブログでも対案を提示したりするなど、そのプロセスには幾ばくかの疑問も抱いていたのですが、まずまず盛り上がって、何よりも当事者の選手およびその周辺関係者が一様に納得してこの方式を受け容れていることが、最大のメリットだったと思います。
久々のブログは、「ハズレてもともと」のつもりで、このMSG大予想と参りたいと思います。ほんと、直前も超直前で済みません。結果が出てから読んだ人、大笑いしてくださいな…。
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 ※日本陸上競技連盟HPより
【ファイテンオフィシャルストア】公式通販サイト

◇女子
MSGの経緯で一つ残念だったのは、女子の有資格者があまりにも少なかったことでしょう。といって、他に誰が資格者になっていて欲しかったかと言えば、そうそう顔が思い浮かびません。清田真央、田中智美、田中華絵、堀江美里、竹地志帆…といったところでしょうかね。上位争いまではちと難しいが、レースのスケールアップにはなったことでしょう。
それと、新しい人が意外に出てこなかった。資格獲得第1号が前田穂南というフレッシュな名前だっただけに、続々と新規デビュー組の勝ち名乗りに期待したんですが、続いたのは松田瑞生と上原美幸、関根花観(欠場)、一山麻緒くらいで、大森菜月は惜しくも間に合わず。
どうせ復活するんなら、新谷仁美にチャレンジして欲しかったですけどね。

さて、その女子。もともと少ない有資格者から3人がドーハ世界選手権代表に回り、さらに残念なことに、ともに穴馬的存在だった関根花観(JP日本郵政G.)と前田彩里(ダイハツ)が故障欠場。たった10人でのフルマラソンという、かつてアジア大会でも見たことのない少人数のレースとなってしまいました。
ここ数日、放送担当局のNHKではしきりに松田瑞生(ダイハツ)・鈴木亜由子(JP日本郵政G.)・福士加代子(ワコール)の3人を取り上げ、あたかも「3強」の様相であるかのように事前告知を煽っていますけど、いやいやそんなに単純じゃあないですよ。だいたい、その絞り込みにはおそらく、珍しくNHKのコメンテーターに起用された増田明美さんの思惑が絡んでいることでしょうから、全然アテにはできません。
(増田さん本人が以前に言っていることですが、「NHKでは技術や戦術の解説を求められるのでお呼びではなく、日テレでは自分以上にアナウンサーらが細かい選手取材をするので声がかからない」んだそうです)
昨今のトラックを含めた長距離戦線の実績、福士の場合は20年近くに及ぶ業績の数々から、「強い!」というイメージが定着しているのがこの3人と言えます。その一方で、松田は5月の日本選手権10000mで好調を伝えられながら惨敗したトラウマがあり、鈴木にはマラソンランナーとしての経験不足、福士には年齢的な衰えという、それぞれに不安を抱えた3人でもあります。
当然、歴代4位のタイムを持つ安藤友香(ワコール)や、マラソンの経験値では一番と言える岩出玲亜(アンダーアーマー)、リオ選考会では代表まで1秒差と大魚を逃した小原怜(天満屋)など、後に控えるのは遜色のない実力者ばかりです。

いずれにしろ、頭数は少なくても予想をするのは非常に難しい中、私は敢えて!と言いますか、ここへ来ての成長度という意味で最も期待するのが、前田穂南(天満屋)です。
MGC切符を獲得した2017北海道マラソンでの鮮烈な初優勝ぶりはともかく、次戦の大阪国際女子マラソンでは高校の先輩である松田を激しく揺さぶり、結果的に優勝は譲ったものの「ホンモノ!」の感を強くしました。大阪薫英女学院高時代は駅伝エースの松田に対して万年補欠という立場だった彼女が、天満屋ならではの“武富マジック”によって見事な成長を遂げていたのです。
その後の駅伝やトラックレースなどでも安定して好位置をキープしており、完全に天満屋のエースとしての地位を不動のものにしつつあります。1年前のベルリンでは再び松田に及ばず、今年の東京では寒さの故か失速しているので評価はイマイチというところでしょうが、マラソンにおける潜在能力は相当のものがある、と私は睨んでいます。

レース展開は、10人という少人数であること、数日前までの猛暑は免れたとはいえ20度を大きく超える暑さの中の戦いであることを考えれば、誰かが飛び出す展開になることはちょっと考えにくい。先頭を買って出る選手がいるとすれば鈴木だと思いますが、それも自重を決め込むと、2004年のアテネ五輪選考会だった大阪の時のように、極端なスローペースに陥ることだって考えられます。
天満屋の坂本直子が優勝したあのレースは、実にスリリングな名勝負でした。そのレースに、私は同じピンクのユニフォームを重ね合わせて想像してしまうのです。そういえば坂本も、千葉真子に2度苦杯をなめさせられた後の3度目の正直で、見事に千葉を破って代表の座を勝ち得たものでした。
いずれにしろ、展開のカギを握るのは鈴木でしょう。スピードランナーと言ってもラスト勝負になるとスプリントが利かないタイプなので、スローでの集団走が続けば勝機は遠のくばかりでなく、あの時の渋井陽子のように走りを狂わされます。中盤にしろ終盤の登り坂にしろ、彼女が仕掛ける場面が必ず訪れる筈です。鈴木がロングスパートを仕掛けた時、誰がそこに付いているか、あるいは誰も付いていけなくなるか…。
終盤までもつれれば、ラストが強いのは松田と安藤。松田の粘り強さはやはりピカイチですし、駅伝1区のスペシャリストだった安藤は、勝負どころの見極めが実に上手い。あとは、ダークホースで一山麻緒(ワコール)の瞬発力も侮れません。残っていられれば、の話ですけどね。
もう一人、レースをメイクする可能性が高いのは、言うまでもなく福士おばさん。ただ、どうなんでしょう。私はもしかしたら、彼女が安藤や一山のサポート役に回ろうと考えるような心境の変化がレース中に訪れる可能性があるんじゃないか、という気がしています。
心情的には小原を応援したい気持ちもあるんですが、決して順調に来ているという雰囲気ではないので、強くは推せません。岩出、上原にも一発の可能性は十分にあります。野上さん、ゴメンナサイ!

ということで、私の大予想は
◎前田穂南
〇松田瑞生
▲安藤友香



◇男子

名門旭化成勢の全滅という意外さはあったものの、現有のビッグネームはほぼほぼ揃ってまずは賑やかな顔ぶれとなりました。
大迫傑(NIKE O.P.)、設楽悠太(Honda)、井上大仁(MHPS)、服部勇馬(トヨタ自動車)が「4強」と言われています。1年前に日本記録を更新した大迫、前記録保持者で安定感抜群の設楽、猛暑のジャカルタ・アジア大会を制した井上、9年ぶりに国内3大大会の優勝者となった服部と、それぞれにそう呼ばれるだけの立派な肩書があり、持ちタイムでもトップ4です。

こちらも、スローな滑り出しが予想されるところですが、30人もいれば、走り易いイージー・ペースに持って行こうという動きが自然に発生することが考えられ、巷間伝えられるように設楽が序盤からレースメイクをするようなことでもなければ、3分5秒/㎞程度の安定したペースになるんではないでしょうか?(スタート直後は下り坂が続くので、数字上は速いタイムになると思いますが)
大迫は早大時代に箱根駅伝1区で2年続けてロケットスタートを決めて後続をぶっちぎっていますが、強豪が揃った4年時にはそれも通用せず、もうその手は使わないでしょう。先頭を引くことのデメリットを無視して設楽が引っ張ってくれると、非常に面白くなるところではありますが、果たしてそこまで、往年の中山竹通みたいな大胆不敵さがありますかね?
「自信満々のコメントを発する時の設楽はコケる」というイメージが、私にはあります。こちらもラスト勝負になれば大迫に一日の長があることを知っていますから、早めの仕掛けがあるのは間違いないとして、どうしても早く仕掛けた方が不利になるのが、このレースの悩ましいところだと思えます。

淡々としたペースで進んだ場合、途轍もなく恐ろしい力を秘めているのが佐藤悠基(日清食品G.)ではないでしょうか。
佐久長聖高校時代には「天才」、東海大時代には「化け物」と呼ばれ、社会人となって日本選手権10000mを4連覇した必殺のスプリントは、大迫が3度挑んで返り討ちにあったほどの威力がありました。その佐藤もいつの間にか33歳、「黄金世代」と呼ばれた竹澤健介や木原真佐人、メクボ・モグスらが大成することなく、佐藤自身もマラソンでは苦戦続き、この世代の代表格は川内優輝ということになっています。稀有な素質の開花を阻んできたものは、大学時代から見えていた痙攣などの脚部不安、いわゆる“ガラスの脚”であったかもしれません。夏場のレースは、彼にとって有利な材料となる要素を孕んでいます。
マラソンランナーとしては平凡な実績しかなく、いつも30㎞を待たずに先頭集団から消えていく佐藤が、ここで遂に本領を発揮するのではないか、という期待に胸が躍ります。ただし、佐藤が好走するような展開になった場合に、やはり今の大迫には勝てないんではないかな、とも思います。

オールドファンの私から見て、最もマラソンランナーらしい選手だなと思えるのが井上。コツコツと走り込んで蓄えたスタミナと精神力には自信を持っていることでしょうし、過去の経緯から設楽を徹底マークする戦術が確固としているのも強みです。
他に、やたらと威勢のいいコメントが聞こえてくるのが神野大地(セルソース)です。終盤の登り坂までもつれ込めばしめたものかもしれませんが、果たしてそこまで我慢できるかどうか。むしろ、中団でじっくり構えた時の今井正人(トヨタ自動車九州)の方が、荒れたレースになった時は不気味さを感じます。

で、私の結論は
◎大迫傑
〇井上大仁
▲佐藤悠基
△設楽悠太
△今井正人

男子の方は、さらに予想困難。個人的には、強いと言われる選手が胸を張って先頭を引っ張るレースが見たいですし、3人出しをするトヨタやMHPS、富士通勢のチーム戦略にも興味津々です。

なにぶんにも久々のブログですんで、予想はご愛敬ということでお察しくださいませ。

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